特許第6296135号(P6296135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6296135重合性組成物、及び、それを用いたフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6296135
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】重合性組成物、及び、それを用いたフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20180312BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20180312BHJP
   C09K 19/22 20060101ALI20180312BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20180312BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20180312BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180312BHJP
   C08J 5/18 20060101ALN20180312BHJP
   C08J 7/04 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   C08F220/30
   C09K19/38
   C09K19/54 Z
   C09K19/12
   C09K19/30
   C09K19/20
   C09K19/18
   C09K19/34
   C09K19/22
   C08F2/50
   G02F1/13363
   G02B5/30
   !C08J5/18CEY
   !C08J5/18CEZ
   !C08J7/04 ECER
【請求項の数】8
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2016-201723(P2016-201723)
(22)【出願日】2016年10月13日
(62)【分割の表示】特願2015-554384(P2015-554384)の分割
【原出願日】2015年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-25336(P2017-25336A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-128155(P2014-128155)
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-235544(P2014-235544)
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】桑名 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 美花
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09K
G02B
G02F
C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上の重合性密着性付与剤、硬化剤、及び、重合性液晶化合物を含有し、前記重合性密着性付与剤が、1つ以上の重合性官能基と、環数が1〜4個の環式化合物基を有する化合物(I)であり、前記化合物(I)が一般式(I−1−A)
【化1】
(式中、Pは重合性官能基を表し、下記式(P−1)又は式(P−2)を表し、
【化2】
A1は、単結合、炭素原子数1〜16のアルキレン基を表し、該アルキレン基は直鎖状でも分岐基を有していても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、相互に独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
は、下記一般式(I−1−8)
【化3】
(式中、*は、ZA1連結部を意図する。)で表される化合物であり、かつ、前記重合性液晶化合物が一般式(II)
【化4】
(式中、Pは重合性官能基を表し、
は炭素原子数1〜18のアルキレン基を表し(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、−O−、−COO−、−OCO−又は−OCO−O−により置き換えられていても良い。)、
は−O−、又は単結合を表し(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−を含まない。)、
q1は0又は1を表し、
MGは一般式(II−b)
【化5】
(式中、B1、B2及びB3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、2,6−ナフチレン基を表し、置換基として1個以上の炭素原子数1〜8のアルキル基、及び/又は一般式(II−c)
【化6】
(式中、Pは反応性官能基を表し、
は、炭素原子数1〜18のアルキレン基を表し、Xは、−O−、−COO−、又は−OCO−を表し、qは0又は1を表し、qは0又は1を表す。(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−を含まない。))を有していても良く、
Z1及びZ2はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−又は単結合を表し、
r1は0、1又は2を表し、B1、及びZ1が複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。)を表し、
は、水素原子、シアノ基、又は炭素原子数1から12の直鎖アルキル基を表し、該アルキル基は1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−によって置換されても良く、あるいは、Rは、一般式(II−a)
【化7】
(式中、Pは反応性官能基を表し、
は、Sで定義されたものと同一のものを表し、
は、Xで定義されたものと同一のものを表し(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−基を含まない。)、
は0又は1を表す。)、
、P及びPは、それぞれ独立して、下記の式(P−2−1)又は式(P−2−2)
【化8】
で表される基を表す。)
で表される化合物である、重合性液晶組成物。
【請求項2】
前記一般式(II)が、一般式(II−2−2−2)
【化9】
(式中、P及びPはそれぞれ独立して重合性官能基を表し、それぞれ独立して、下記の式(P−2−1)又は式(P−2−2)
【化10】
で表される基を表し、及びSはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し(この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、−O−、−COO−、−OCO−又は−OCO−O−により置き換えられていても良い。)、X及びXはそれぞれ独立して−O−又は単結合を表し(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−を含まない。)、q1及びq2はそれぞれ独立して0又は1を表し、B11、B2及びB3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基2,6−ナフチレン基を表し、置換基として1個以上の炭素原子数1〜8のアルキル基有していても良く、Z11及びZ2はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、又は単結合を表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を重合させることにより得られる重合体。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いてなる光学異方体。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いてなる位相差膜。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いてなる位相差パターニング膜。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いてなる輝度向上フィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の重合性液晶組成物を用いてなる反射防止膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、又は、液晶ディスプレイ等の光学補償に用いられる光学異方体の構成部材として有用な重合性液晶組成物、及び該組成物からなる光学異方体、位相差膜、位相差パターニング膜、輝度向上フィルム、視野角補償膜及び反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性液晶組成物は光学異方体の構成部材として有用であり、光学異方体は、例えば、偏光フィルム、位相差フィルムとして、種々の液晶ディスプレイに応用されている。偏光フィルムや位相差フィルムは、重合性液晶組成物を基材に塗布し、溶剤を乾燥させた後に、配向膜等により重合性液晶組成物を配向させた状態で、加熱、あるいは活性エネルギー線を照射して重合性液晶組成物を硬化することにより得られる。また、重合性液晶組成物にキラル化合物を添加した重合性コレステリック液晶組成物を用いると、円偏光分離素子が得られることが知られており、輝度向上フィルム等への応用が検討されている。
【0003】
これらの重合性液晶組成物は、一般的に、ガラス基材やプラスチック基材上、又は、さらに必要に応じて配向膜を形成した上に塗布し用いられるため、基材や配向膜等の基質への密着性が要求される。しかしながら、重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物を重合して得られる塗布層では、基質との密着性において満足のいくものではなかった。
【0004】
上記問題点を改善する方法として、アルコキシシラン化合物の加水分解物を基質上に塗工する表面処理方法が報告されているが、当該表面処理方法では、基質上に良好な密着性を有する塗膜層を得られるものの、余計な製造工程を要するだけでなく、液晶の配向状態にムラが観察され配向性は十分なものが得られていなかった(特許文献1)。
【0005】
また、表面処理方法を行わずに、基質との密着性を向上させる方法として、重合性液晶組成物中に、1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物を添加する方法(特許文献2)や、分子内に炭素−炭素不飽和結合と活性水素反応性基であるイソシアネート基を有する化合物を添加する方法(特許文献3)が報告されているが、いずれの方法においても、添加する化合物の影響により、重合性液晶組成物の保存安定性が劣るという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−258046号公報
【特許文献2】特開2006−126757号公報
【特許文献3】特開2013−147607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、保存安定性に優れ、且つ、基質への塗膜後、加熱あるいは活性エネルギー線を照射して得られる成膜が基質への密着性に優れる重合性液晶組成物を提供し、併せて、当該重合性組成物を用いた配向性が良好な光学異方体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、重合性液晶組成物に着目して鋭意研究を重ねた結果、本発明を提供するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、重合性密着性付与剤及び、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を提供する。また、本発明の重合性液晶組成物を用いた光学異方体も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合性液晶組成物を用いることで、基質との密着性に優れた光学異方体を得ることができることから、位相差膜等の光学材料の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明による重合性液晶組成物の最良の形態について説明するが、本発明において、重合性液晶組成物の「液晶」とは、重合性液晶組成物を基材に塗布後、有機溶剤を除去した状態において液晶性を示すことを意図する。また、本発明において、重合性液晶化合物の「液晶」とは、用いる重合性液晶化合物1種のみの化合物で液晶性を示すことを意図する場合や、その他の液晶化合物と混合し混合物とした場合に液晶性を示すことを意図する。なお、重合性液晶組成物を紫外線等の光照射、加熱又はそれらの併用によって重合処理を行うことでポリマー化(フィルム化)することができる。
(重合性密着性付与剤)
本発明の重合性液晶組成物には、重合性密着性付与剤を含有することを特徴とする。重合性密着性付与剤とは、重合性液晶組成物中に添加することにより用いられ、基材や必要に応じて用いられる配向膜からなる基質に対する密着性を優位に向上できる化合物を意味する。前記重合性密着性付与剤として具体的には、1つ以上の重合性官能基と、環数が1〜4個の環式化合物基を有する化合物(I)を挙げることができる。
【0012】
前記重合性官能基としては、下記式(P−1)から式(P−20)で表される重合性官能基から選ばれる基を表すのが好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
これらの重合性官能基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合及びアニオン重合により重合する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(P−1)、式(P−2)、式(P−3)、式(P−4)、式(P−5)、式(P−7)、式(P−11)、式(P−13)、式(P−15)又は式(P−18)が好ましく、式(P−1)、式(P−2)、式(P−3)、式(P−7)、式(P−11)又は式(P−13)がより好ましく、式(P−1)、式(P−2)又は式(P−3)がさらに好ましく、式(P−1)又は式(P−2)が特に好ましい。また、化合物(I)中に含まれる重合性官能基数は、1、2又は3であることが好ましいが、保存安定性を考慮した場合、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0015】
前記環数が1〜4個の環式化合物基としては、炭素原子数3〜9で環の数が1つの単一の環構造を持つ単環化合物基、炭素原子数6〜20で2〜4個の単環化合物がそれぞれ単位ごとに1対1で辺を共有する構造の環数が2〜4個の縮合環化合物基、又は、炭素原子数6〜30で1つの単環構造に置換基の直鎖構造部分の両端が結合した化合物の内、1辺を共有する構造を有する前記縮合環化合物を除いた、環数が2〜4個の架橋化合物基を表すのが好ましく、該環化合物中に存在するアルキレン基が有する水素原子は1つ以上の炭素原子数1〜5のアルキル基により置換されていても良く、炭素原子数3〜5の単環化合物基、炭素原子数6〜10の環数が2〜4個の縮合環化合物基、又は炭素原子数6〜12の環数が2〜4個の架橋化合物基がより好ましい。
【0016】
前記環数が1〜4個の環式化合物基として、具体的には、下記式、一般式(I−1−1)〜(I−1−11)で表される基から選ばれる基を表すのがさらに好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、*は、連結部を意図する。一般式(I−1−1)〜(I−1−11)中の1個以上のメチレン基は、互いに独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていても良い、ただし、炭素原子、水素原子以外のヘテロ原子同士の結合は不安定な結合であるため、特に酸素原子同士の結合は避けることが好ましく、前記環式化合物基に直接連結する連結基が酸素原子である場合、当該酸素原子に直接結合する該環式化合物のメチレン基は酸素原子に置換されない。)
前記化合物(I)として、具体的には、以下の一般式(I−1)で表される化合物を挙げることができる。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、Pは重合性官能基を表し、
A1は、単結合、炭素原子数1〜40のアルキレン基を表し、該アルキレン基は直鎖状でも分岐基を有していても良く、該アルキレン基中に存在する1つのCH基又は隣接していない2つ以上のCH基は、相互に独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CH=CH−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
は環数が1〜4個の環式化合物基を表し、
A2は、ヒドロキシル基、カルボキシ基又は炭素原子数1〜16のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状でも分岐基を有していても良く、該アルキル基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は、相互に独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−により置き換えられていてもよく、
mは0、1、2又は3を表すが、mが2又は3を表す場合に複数存在するZA2は同一であっても異なっていても良い。)
特に、Pは上記式(P−1)又は式(P−2)が好ましく、
A1は、単結合、炭素原子数1〜30のアルキレン基を表すことがより好ましく、単結合、炭素原子数1〜20のアルキレン基を表すことがさらに好ましい。また、該アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は、相互に独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、により置き換えられていてもよく、該アルキレン基中に存在するCH基は、置換されていないか、−O−、−COO−、−OCO−により置き換えられていることが好ましく、
A2は、ヒドロキシル基、カルボキシ基又は直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜8のアルキル基を表すことがより好ましく、ヒドロキシル基、カルボキシ基又は直鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基を表すことがさらに好ましく、
mは0、1又は2であることが好ましく、ZA2が、ヒドロキシル基又はカルボキシ基である場合mは1であることが好ましく、ZA2が、アルキル基である場合mは1又は2であることが好ましく、
は上記一般式(I−1−1)〜(I−1−11)で表される基から選ばれる基を表すのが好ましく、一般式(I−1−1)〜(I−1−10)で表される基から選ばれる基を表すのがより好ましく、一般式(I−1−1)〜(I−1−8)で表される基から選ばれる基を表すのがさらに好ましい。また、環数が1個の単環化合物基である一般式(I−1−4)、一般式(I−1−8)〜一般式(I−1−10)で表される基を選択する場合、該環中に含まれる1個以上のメチレン基が、互いに独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、−CO−で置換されていることが好ましく、該環中に含まれる1個又は2個のメチレン基が、互いに独立して、酸素原子同士が相互に直接結合しない形で、酸素原子で置換されていることが特に好ましい。
一般式(I−1)中、−A−(ZA2)mは、具体的には、下記一般式(I−2−1)〜(I−2−22)で表される基から選ばれる基を表すのがより好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
式中、*は、Z連結部を意図する。上記一般式(I−2−1)〜一般式(I−2−22)で表される基のうち、一般式(I−2−1)〜一般式(I−2−20)で表される基から選ばれる基を表すのがより好ましく、一般式(I−2−1)〜一般式(I−2−14)で表される基から選ばれる基を表すのがさらに好ましい。
【0024】
化合物(I)として、より具体的には、以下の一般式(I−3−1)〜一般式(I−3−17)で表される化合物を例示することができる。
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
nは、0〜6の整数を表す。
上記式(I−3−1)〜式(I−3−17)で表される化合物のうち、式(I−3−1)〜式(I−3−14)で表される化合物を用いることが好ましく、式(I−3−1)〜式(I−3−13)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0030】
上記重合性密着付与剤は、1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0031】
重合性密着付与剤の含有量は、重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物、重合性キラル化合物、重合性ディスコチック化合物の合計量100質量部に対して、1〜15質量部とすることが好ましく、1〜12質量部とすることがより好ましく、1〜10質量部とすることがさらに好ましく、2〜8質量部とすることが特に好ましい。重合性液晶組成物中に含有させる重合性密着付与剤の含有量を特定の範囲とすることにより、溶液の保存安定性に優れ、かつ、光学異方体にした場合に配向性に優れる重合性液晶組成物を得ることができる。
(重合性液晶化合物)
本発明において用いられる、重合性液晶化合物としては、単独または他の化合物との組成物において液晶性を示し、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する化合物であれば、特に限定はなく、公知慣用のものを用いることができる。
【0032】
例えば、Handbook of Liquid Crystals(D.Demus,J.W.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiess,V.Vill編集、Wiley−VCH社発行,1998年)、季刊化学総説No.22、液晶の化学(日本化学会編,1994年)、あるいは、特開平7−294735号公報、特開平8−3111号公報、特開平8−29618号公報、特開平11−80090号公報、特開平11−116538号公報、特開平11−148079号公報、等に記載されているような、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の構造が複数繋がったメソゲンと呼ばれる剛直な部位と、ビニル基、アクリル基、(メタ)アクリル基といった重合性官能基を有する棒状重合性液晶化合物、あるいは特開2004−2373号公報、特開2004−99446号公報に記載されているようなマレイミド基を有する棒状重合性液晶化合物が挙げられる。中でも、重合性基を有する棒状液晶化合物が、液晶温度範囲として室温前後の低温を含むものを作りやすく好ましい。
【0033】
重合性液晶化合物は、具体的には以下の一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化10】
【0035】
式中、Pは重合性官能基を表し、Sは炭素原子数1〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基中の水素原子は、1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、−O−、−COO−、−OCO−又は−OCO−O−により置き換えられていても良い。)、Xは−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CH=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。)、q1は0又は1を表し、MGはメソゲン基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよく、該アルキル基は1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良く、あるいはRは、一般式(II−a)
【0036】
【化11】
【0037】
(式中、Pは重合性官能基を表し、Sは、Sで定義されたものと同一のものを表し、Xは、Xで定義されたものと同一のものを表し(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。)、qは0又は1を表す。)を表し、
上記MGで表されるメソゲン基は、一般式(II−b)
【0038】
【化12】
【0039】
(式中、B1、B2及びB3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基、及び/又は一般式(II−c)
【0040】
【化13】
【0041】
(式中、Pは反応性官能基を表し、
は、Sで定義されたものと同一のものを表し、Xは、−O−、−COO−、−OCO−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、又は単結合を表し、qは0又は1を表し、qは0又は1を表す。(ただし、P−S、及びS−Xは、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。))を有していても良く、Z1及びZ2はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−C=N−、−N=C−、−CONH−、−NHCO−、−C(CF−、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数2〜10のアルキル基又は単結合を表し、r1は0、1、2又は3を表し、B1、及びZ1が複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。)で表される。
【0042】
、P及びPは、それぞれ独立して、下記の式(P−2−1)から式(P−2−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0043】
【化14】
【0044】
これらの重合性官能基のうち、重合性を高める観点から、式(P−2−1)、(P−2−2)、(P−2−7)、(P−2−12)、(P−2−13)が好ましく、式(P−2−1)、(P−2−2)がより好ましい。
(単官能重合性液晶化合物)
前記一般式(II)で表される化合物のうち、分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物として、下記一般式(II−2−1)で表される化合物が好ましい。
【0045】
【化15】
【0046】
式中、P、S、X、q1及び、MGは、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表し、R21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良い、炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルケニル基を表し、該アルキル基、アルケニル基の有する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基によって置換されても良く、複数置換されている場合それぞれ同一であっても、異なっていても良い。一般式(II−2−1)の例として、下記一般式(II−2−1−1)〜(II−2−1−4)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0047】
【化16】
【0048】
式中、P、S、X、及び、q1は、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表し、
B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(II−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(II−b)のZ1〜Z3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良い、炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルケニル基を表し、該アルキル基、アルケニル基の有する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基によって置換されても良く、複数置換されている場合それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
【0049】
上記一般式(II−2−1−1)〜(II−2−1−4)で表される化合物としては、以下の式(II−2−1−1−1)〜式(II−2−1−1−26)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0050】
【化17】
【0051】
【化18】
【0052】
【化19】
【0053】
【化20】
【0054】
【化21】
【0055】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは0〜18の整数を表し、nは0又は1を表し、R21は、上記一般式(II−2−1−1)〜(II−2−1−4)の定義と同じものを表すが、R21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、1個の−CH−が−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、によって置換されても良い、炭素原子数1から6の直鎖アルキル基又は炭素原子数1から6の直鎖アルケニル基を表すことが好ましく、
上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。
【0056】
分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、0〜90質量%含有することが好ましく、0〜85質量%含有することがより好ましく、0〜80質量%含有することが特に好ましい。光学異方体の配向性を重視する場合には下限値を5質量%以上にすることが好ましく、10質量%以上にすることがより好ましく、塗膜の硬さを重視する場合には上限値を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましい。
(2官能重合性液晶化合物)
前記一般式(II)で表される化合物のうち、分子内に2個の重合性官能基を有する2官能重合性液晶化合物として、下記一般式(II−2−2)で表される化合物が好ましい。
【0057】
【化22】
【0058】
式中、P、S、X、q1、MG、X、S、q2、Pは、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表す。一般式(II−2−2)の例として、下記一般式(II−2−2−1)〜(II−2−2−4)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0059】
【化23】
【0060】
式中、P、S、X、q1、MG、X、S、q2、Pは、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表し、
B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(II−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(II−b)のZ1〜Z3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。
【0061】
上記一般式(II−2−2−1)〜(II−2−2−4)で表される化合物のうち、一般式(II−2−2−2)〜(II−2−2−4)で表される、化合物中に3つ以上の環構造を有する化合物を用いると、得られる光学異方体の配向性が良好で、かつ硬化性も良好であるため好ましく、化合物中に3つの環構造を有する一般式(II−2−2−2)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
【0062】
上記一般式(II−2−2−1)〜(II−2−2−4)で表される化合物としては、以下の式(II−2−2−1−1)〜式(II−2−2−1−21)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0063】
【化24】
【0064】
【化25】
【0065】
【化26】
【0066】
【化27】
【0067】
式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。
m1、m2はそれぞれ独立して0〜18の整数を表し、n1、n2、n3、n4はそれぞれ独立して0又は1を表す。
【0068】
上記式(II−2−2−1−1)〜式(II−2−2−1−21)で表される化合物において、環状基に置換基を有する化合物の具体例としては、例えば、式(II−2−2−1−4)で表される化合物の場合、下記式(II−2−2−1−4−1)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化28】
【0070】
(式中、R、R、m1、m2、n1、n2、n3、n4はそれぞれ上記式(II−2−2−1−1)〜式(II−2−2−1−21)で表される化合物で定義したものと同一のものを表し、置換基Rは炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基を表す。)
上記一般式(II−2−2−1−1)〜(II−2−2−1−21)で表される化合物のうち、一般式(II−2−2−1−4)〜(II−2−2−1−14)で表される、化合物中に3つの環構造を有する化合物を含有すると得られる光学異方体の配向性が良好で、かつ硬化性も良好であるため好ましく、一般式(II−2−2−1−4)、(II−2−2−1−5)、(II−2−2−1−9)〜(II−2−2−1−13)で表される化合物を含有することがより好ましく、一般式(II−2−2−1−4)、(II−2−2−1−5)で表される化合物を含有することがさらに好ましく、一般式(II−2−2−1−5)で表される化合物を含有することが特に好ましい。
【0071】
2つの重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜5種が好ましく、2種〜5種がより好ましい。
【0072】
分子内に2個の重合性官能基を有する2官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、10〜100質量%含有することが好ましく、15〜85質量%含有することがより好ましく20〜80質量%含有することが特に好ましい。2つの重合性官能基を有する液晶化合物を用いることにより、前記化合物(I)との相乗効果が得られ、基質との密着性に優れた光学異方体を得ることができる。なお、塗膜の硬さを重視する場合には下限値を30質量%以上にすることが好ましく、50質量%以上にすることがより好ましく、光学異方体の配向性を重視する場合には上限値を85質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましい。
(多官能重合性液晶化合物)
3つ以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物としては、3つの重合性官能基を有する化合物を用いることが好ましい。前記一般式(II)で表される化合物のうち、分子内に3個の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物として、下記一般式(II−2−3)で表される化合物が好ましい。
【0073】
【化29】
【0074】
式中、P、S、X、q1、MG、X、S、q2、P、X、q4、S、q3、Pは、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表す。一般式(II−2−3)の例として、下記一般式(II−2−3−1)〜(II−2−3−8)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0075】
【化30】
【0076】
【化31】
【0077】
式中、P、S、X、q1、MG、X、S、q2、P、X、q4、S、q3、Pは、それぞれ、上記一般式(II)の定義と同じものを表し、
B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(II−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(II−b)のZ1〜Z3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。
【0078】
上記一般式(II−2−3−1)〜(II−2−3−8)で表される化合物としては、以下の式(II−2−3−1−1)〜式(II−2−3−1−6)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0079】
【化32】
【0080】
【化33】
【0081】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を表し、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよく、上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。
m4〜m9はそれぞれ独立して0〜18の整数を表し、n4〜n9はそれぞれ独立して0又は1を表す。
【0082】
3個以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができる。
【0083】
分子内に3個以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、0〜80質量%含有することが好ましく、0〜60質量%含有することがより好ましく、0〜40質量%含有することが特に好ましい。光学異方体の剛直性を重視する場合には、下限値を10質量%以上にすることが好ましく、20質量%以上にすることがより好ましく、30質量%以上にすることが特に好ましく、一方、低硬化収縮性を重視する場合には上限値を50質量%以下とすることが好ましく、35質量%以下とすることがより好ましく、20質量%以下とすることが特に好ましい。
(重合性液晶化合物の複数種併用)
本発明の重合性液晶組成物には、上記重合性液晶化合物を複数種混合して用いることが好ましい。上記少なくとも1種以上の単官能重合性液晶化合物と、少なくとも1種以上の2官能重合性液晶化合物及び/又は多官能重合性液晶化合物を併用して用いると得られる光学異方体の硬化性が向上し、かつ基材との密着性も良好となるため好ましく、少なくとも1種以上の単官能重合性液晶化合物と、少なくとも1種以上の2官能重合性液晶化合物を併用することがより好ましい。中でも、本発明の重合性液晶組成物を用いて光学異方体とした時に、より硬化性を向上させたい場合、2官能重合性液晶化合物として、化合物中に3つ以上の環構造を有する上記(II−2−2−2)〜(II−2−2−4)から選択される化合物を用いて重合性液晶化合物の混合物とすることが好ましく、化合物中に3つの環構造を有する上記(II−2−1−2)で表される化合物及び、上記(II−2−2−2)で表される化合物を併用した混合物とすることが特に好ましい。
【0084】
上記単官能重合性液晶化合物と2官能重合性液晶化合物との合計量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、70質量%〜100質量%とすることが好ましく、80質量%〜100質量%とすることが特に好ましい。
(その他の液晶化合物)
また、本発明の液晶組成物には、重合性基を有さないメソゲン基を含有する化合物を添加しても良く、通常の液晶デバイス、例えばSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶や、TN(ツイステッド・ネマチック)液晶、TFT(薄膜トランジスター)液晶等に使用される化合物が挙げられる。
【0085】
重合性官能基を有さないメソゲン基を含有する化合物は、具体的には以下の一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0086】
【化34】
【0087】
MG3で表されるメソゲン基又はメソゲン性支持基は、一般式(5−b)
【0088】
【化35】
【0089】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF、OCF、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基、アルケノイルオキシ基を有していても良く、
Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH CH−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CHCHCOO−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−OCOCHCH−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキレン基又は単結合を表し、
は0、1又は2を表し、
51及びR52はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH基又は隣接していない2つ以上のCH基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)で表される化合物が挙げられる。
【0090】
具体的には、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0091】
【化36】
【0092】
【化37】
【0093】
Ra及びRbはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルケニル基、シアノ基を表し、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0094】
メソゲン基を有する化合物の総含有量は、重合性液晶組成物の総量に対して0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、用いる場合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが好ましく、また、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
(その他の成分)
(キラル化合物)
本発明における重合性液晶組成物には、上記一般式(II)に示す重合性化合物以外の液晶性を示してもよく、非液晶性であってもよい、重合性キラル化合物を含有することもできる。
本発明に使用する重合性キラル化合物としては、重合性官能基を1つ以上有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平11−193287号公報、特開2001−158788号公報、特表2006−52669号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−269640号公報、2009−84178号公報等に記載されているような、イソソルビド、イソマンニット、グルコシド等のキラルな糖類を含み、かつ、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の剛直な部位と、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、また、マレイミド基といった重合性官能基を有する重合性キラル化合物、特開平8−239666号公報に記載されているような、テルペノイド誘導体からなる重合性キラル化合物、NATURE VOL35 467〜469ページ(1995年11月30日発行)、NATURE VOL392 476〜479ページ(1998年4月2日発行)等に記載されているような、メソゲン基とキラル部位を有するスペーサーからなる重合性キラル化合物、あるいは特表2004−504285号公報、特開2007−248945号公報に記載されているような、ビナフチル基を含む重合性キラル化合物が挙げられる。中でも、らせんねじれ力(HTP)の大きなキラル化合物が、本発明の重合性液晶組成物に好ましい。
重合性キラル化合物の配合量は、化合物の螺旋誘起力によって適宜調整することが必要であるが、重合性液晶組成物の内、0〜25質量%含有することが好ましく、0〜20質量%含有することがより好ましく、0〜15質量%含有することが特に好ましい。
重合性キラル化合物の一般式の一例として、一般式(3−1)〜(3−4)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0095】
【化38】
【0096】
式中、Sp3a、及び、Sp3bはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
A1、A2、A3、A4、及びA5はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、n、l及びkはそれぞれ独立して、0又は1を表し、0≦n+l+k≦3となり、
Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及び、Z6はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2 CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n5、及び、m5はそれぞれ独立して0又は1を表し、
3a及びR3bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
あるいはR3a及びR3bは一般式(3−a)
【0097】
【化39】
【0098】
(式中、P3aは重合性官能基を表し、Sp3aはSpと同じ意味を表す。)
3aは、下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0099】
【化40】
【0100】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
【0101】
重合性キラル化合物の具体的例としては、化合物(3−5)〜(3−25)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0102】
【化41】
【0103】
【化42】
【0104】
【化43】
【0105】
【化44】
【0106】
式中、m、n、k、lはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシ基、シアノ基を示す。これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。
(重合性ディスコチック化合物)
本発明の重合性液晶組成物において、上記一般式(II)に示す重合性化合物以外の液晶性を示してもよく、非液晶性であってもよい、重合性ディスコチック化合物を含有することもできる。
本発明に使用する重合性ディスコチック化合物としては、重合性官能基を1つ以上有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平7−281028号公報、特開平7−287120号公報、特開平7−333431号公報、特開平8−27284号公報に記載されているような重合性化合物が挙げられる。
重合性ディスコチック化合物の配合量は、化合物によって適宜調整することが必要であるが、重合性液晶組成物の内、0〜10質量%含有することが好ましい。
重合性ディスコチック化合物の一般式の一例として、一般式(4−1)〜(4−3)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0107】
【化45】
【0108】
式中、Spは炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
は1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、
n5は0又は1を表し、
4aは、−CO−、−CH2 CH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−CH=CHCOO−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COCH2CH2−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
4bは−COO−、−OCO−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、−CONH−、−NHCO−、−OCOO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
あるいはRは一般式(4−a)
【0109】
【化46】
【0110】
(式中、P4aは重合性官能基を表し、Sp3aはSpと同じ意味を表す。)
4aは、下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0111】
【化47】
【0112】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
【0113】
重合性ディスコチック化合物の具体的例としては、化合物(4−4)〜(4−8)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0114】
【化48】
【0115】
【化49】
【0116】
【化50】
【0117】
式中、nは1〜18の整数を表す。
(有機溶剤)
本発明における重合性液晶組成物に有機溶剤を添加してもよい。用いる有機溶剤としては特に限定はないが、重合性液晶化合物が良好な溶解性を示す有機溶剤が好ましく、100℃以下の温度で乾燥できる有機溶剤であることが好ましい。そのような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びクロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできるが、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤のうちのいずれか1種類以上を用いることが溶液安定性の点から好ましい。
【0118】
本発明に用いられる組成物は有機溶媒の溶液とすると基板に対して塗布することができ、重合性液晶組成物に用いる有機溶剤の比率は、塗布した状態を著しく損なわない限りは特に制限はないが、重合性液晶組成物中に含有する有機溶剤の合計量が10〜95質量%であることが好ましく、12〜90質量%であることが更に好ましく、15〜85質量%であることが特に好ましい。
【0119】
有機溶剤に重合性液晶組成物を溶解する際には、均一に溶解させるために、加熱攪拌することが好ましい。加熱攪拌時の加熱温度は、用いる組成物の有機溶剤に対する溶解性を考慮して適宜調節すればよいが、生産性の点から15℃〜110℃が好ましく、15℃〜105℃がより好ましく、15℃〜100℃がさらに好ましく、20℃〜90℃とするのが特に好ましい。
【0120】
また、溶媒を添加する際には分散攪拌機により攪拌混合することが好ましい。分散攪拌機として具体的には、ディスパー、プロペラ、タービン翼等攪拌翼を有する分散機、ペイントシェイカー、遊星式攪拌装置、振とう機、シェーカー又はロータリーエバポレーター等が使用できる。その他には、超音波照射装置が使用できる。
【0121】
溶媒を添加する際の攪拌回転数は、用いる攪拌装置により適宜調整することが好ましいが、均一な重合性液晶組成物溶液とするために攪拌回転数を10rpm〜1000rpmとするのが好ましく、50rpm〜800rpmとするのがより好ましく、150rpm〜600rpmとするのが特に好ましい。
(重合禁止剤)
本発明における重合性液晶組成物には、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物、チオエーテル系化合物、ニトロソ化合物、等が挙げられる。
【0122】
フェノール系化合物としては、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2.2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2.2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4.4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4−メトキシ−1−ナフトール、4,4’−ジアルコキシ−2,2’−ビ−1−ナフトール、等が挙げられる。
【0123】
キノン系化合物としては、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニルベンゾキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等が挙げられる。
【0124】
アミン系化合物としては、p−フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、N.N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−i−プロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1.3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N.N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、4.4'−ジクミル−ジフェニルアミン、4.4'−ジオクチル−ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0125】
チオエーテル系化合物としては、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0126】
ニトロソ系化合物としては、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルナフチルアミン、N−ニトロソジナフチルアミン、p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p−ニトロソジフェニルアミン、α−ニトロソ−β−ナフトール等、N、N−ジメチルp−ニトロソアニリン、p−ニトロソジフェニルアミン、p−ニトロンジメチルアミン、p−ニトロン−N、N−ジエチルアミン、N−ニトロソエタノールアミン、N−ニトロソジ−n−ブチルアミン、N−ニトロソ−N−n−ブチル−4−ブタノールアミン、N−ニトロソ−ジイソプロパノールアミン、N−ニトロソ−N−エチル−4−ブタノールアミン、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、N−ニトロソモルホリン、N−二トロソーN−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、2,4.6−トリーtert−ブチルニトロンベンゼン、N−ニトロソ−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−ニトロソ−N−エチルウレタン、N−ニトロソ−N−n−プロピルウレタン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソー1−ナフトール、1−ニトロソ−2−ナフトール−3,6−スルホン酸ナトリウム、2−ニトロソ−1−ナフトール−4−スルホン酸ナトリウム、2−ニトロソ−5−メチルアミノフェノール塩酸塩、2−ニトロソ−5−メチルアミノフェノール塩酸塩等が挙げられる。
【0127】
重合禁止剤の添加量は重合性液晶組成物に対して0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
(酸化防止剤)
本発明における重合性液晶組成物の安定性を高めるため、酸化防止剤等を添加することが好ましい。そのような化合物として、ヒドロキノン誘導体、ニトロソアミン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、tert−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、和光純薬工業株式会社製の「Q−1300」、「Q−1301」、BASF社の「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425」、「IRGANOX1520」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」等々があげられる。
【0128】
酸化防止剤の添加量は重合性液晶組成物に対して0.01〜2.0質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることがより好ましい。
(光重合開始剤)
本発明における重合性液晶組成物は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は少なくとも1種類以上含有することが好ましい。具体的には、BASFジャパン株式会社製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア907」、「イルガキュア127」、「イルガキュア369」、「イルガキュア379」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア250」、「イルガキュア754」、「イルガキュア784」、「イルガキュアOXE01」、「イルガキュアOXE02」、「ルシリンTPO」、「ダロキュア1173」、「ダロキュアMBF」やLAMBSON社製の「エサキュア1001M」、「エサキュアKIP150」、「スピードキュアBEM」、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアMBP」、「スピードキュアPBZ」、「スピードキュアITX」、「スピードキュアDETX」、「スピードキュアEBD」、「スピードキュアMBB」、「スピードキュアBP」や日本化薬株式会社製の「カヤキュアDMBI」、日本シイベルヘグナー株式会社製(現DKSHジャパン株式会社)の「TAZ−A」、株式会社ADEKA製の「アデカオプトマーSP−152」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーN−1414」、「アデカオプトマーN−1606」、「アデカオプトマーN−1717」、「アデカオプトマーN−1919」等が挙げられる。
【0129】
光重合開始剤の使用量は重合性液晶組成物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜7質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもでき、また、増感剤等を添加しても良い。
(熱重合開始剤)
本発明における重合性液晶組成物には、光重合開始剤とともに、熱重合開始剤を併用してもよい。具体的には、和光純薬工業株式会社製の「V−40」、「VF−096」、日本油脂株式会社(現日油株式会社)の「パーへキシルD」、「パーへキシルI」等が挙げられる。
【0130】
熱重合開始剤の使用量は重合性液晶組成物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
(界面活性剤)
本発明における重合性液晶組成物は、光学異方体とした場合の膜厚むらを低減させるために界面活性剤を少なくとも1種類以上含有してもよい。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類等をあげることができ、特に含フッ素界面活性剤が好ましい。
具体的には、「メガファック F−251」、「メガファック F−444」、「メガファック F−477」、「メガファック F−510」、「メガファック F−552」、「メガファック F−553」、「メガファック F−554」、「メガファック F−555」、「メガファック F−556」、「メガファック F−557」、「メガファック F−558」、「メガファック F−559」、「メガファック F−560」、「メガファック F−561」、「メガファック F−562」、「メガファック F−563」、「メガファック F−565」、「メガファック F−567」、「メガファック F−568」、「メガファック F−569」、「メガファック F−570」、「メガファック F−571」、「メガファック R−40」、「メガファック R−41」、「メガファック R−43」、「メガファック R−94」、「メガファック RS−72−K」、「メガファック RS−75」、「メガファック RS−76−E」、「メガファック RS−90」、(以上、DIC株式会社製)、
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、株式会社ネオス製)、
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−3440」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、
「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)
「N215」、「N535」、「N605K」、「N935」(以上、ソルベイソレクシス社製)等の例をあげることができる。
【0131】
界面活性剤の添加量は重合性組成物に対して、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0132】
また、上記界面活性剤を使用することで、本発明の重合性液晶組成物を光学異方体とした場合、空気界面のチルト角を効果的に減じることができる。
【0133】
本発明における重合性液晶組成物は、光学異方体とした場合の空気界面のチルト角を効果的に減じる効果を持つ、上記界面活性剤以外として、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物が挙げられる。
【0134】
【化51】
【0135】
式中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。
【0136】
一般式(7)で表される好適な化合物として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等を挙げることができる。
【0137】
一般式(7)で表される化合物の添加量は重合性液晶組成物に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
(硬化剤)
本発明における重合性液晶組成物は、硬化剤を併用してもよい。具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、ADEKA社製のEH−235R−2等や、三菱化学社製のjERキュアH3、H30等のケチミン化合物などが挙げられる。
【0138】
上記硬化剤の使用量は重合性液晶組成物に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
(その他の添加剤)
更に物性調整のため、目的に応じて、液晶性のない重合性化合物、チキソ剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
(光学異方体の製造方法)
(光学異方体)
本発明の重合性液晶組成物を用いて作製した光学異方体は、基材、必要に応じて配向膜、及び、重合性液晶組成物の重合体を順次積層したものである。
(基材)
本発明の光学異方体に用いられる基材は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学部品や光学フィルムに通常使用する基材であって、本発明の重合性液晶組成物の塗布後の乾燥時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等の有機材料が挙げられる。特に基材が有機材料の場合、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート(アクリル樹脂)、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート等のプラスチック基材が好ましく、ポリアクリレート、ポリオレフィン、セルロース誘導体等の基材がさらに好ましく、ポリオレフィンとしてCOP(シクロオレフィンポリマー)を用い、セルロース誘導体としてTAC(トリアセチルセルロース)を用い、ポリアクリレートとしてPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いることが特に好ましい。基材の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基材は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0139】
本発明の重合性液晶組成物の塗布性や接着性向上のために、これらの基材の表面処理を行っても良い。表面処理として、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基材表面に有機薄膜、無機酸化物薄膜や金属薄膜等を蒸着など方法によって設ける、あるいは、光学的な付加価値をつけるために、基材がピックアップレンズ、ロッドレンズ、光ディスク、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルター、等であっても良い。中でも付加価値がより高くなるピックアップレンズ、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルターは好ましい。
(配向処理)
また、上記基材には、本発明の重合性液晶組成物を塗布乾燥した際に重合性液晶組成物が配向するように、通常配向処理が施されている、あるいは配向膜が設けられていても良い。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理等が挙げられる。配向膜を用いる場合、配向膜は公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
(塗布)
本発明の光学異方体を得るための塗布法としては、アプリケーター法、バーコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、フレキソコーティング法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディップコーティング法、スリットコーティング法等、公知慣用の方法を行うことができる。重合性液晶組成物を塗布後、必要に応じて乾燥させる。
(重合工程)
本発明の重合性液晶組成物の重合操作については、重合性液晶組成物中の液晶化合物が基材に対して水平配向、垂直配向、又はハイブリッド配向、あるいはコレステリック配向(平面配向)した状態で一般に紫外線等の光照射、あるいは加熱によって行われる。重合を光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性液晶組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。
(重合方法)
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
【0140】
照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。紫外線照射強度は、0.05kW/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、0.2kW/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が0.05kW/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
【0141】
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
【0142】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
【0143】
本発明の重合性液晶組成物を重合させて得られる光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
(位相差膜)
本発明の位相差膜は、本発明の光学異方体と同様にして作成される。重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面内に複屈折性を有する位相差膜が得られる。前記位相差膜は、ホモジニアス液晶フィルムとして使用することができる。重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物、及び、重合性キラル化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面外に複屈折性を有する位相差膜が得られる。重合性ディスコチック化合物を含む重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面内にも面外にも複屈折性を有する位相差膜が得られる。
【0144】
また、基材が位相差を有する場合には、基材の有する複屈折性、及び、本発明の位相差膜の複屈折性を加算した複屈折性を有する位相差膜が得られる。前記位相差膜は、基材の有する複屈折性と位相差膜の有する複屈折性が基材の面内で同じ方向の場合もあれば、異なる方向の場合もある。液晶デバイス、ディスプレイ、光学素子、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、光学フィルム、及び、補償フィルム等の用途に応じて、用途に適した形で適用される。
(位相差パターニング膜)
本発明の位相差パターニング膜は、本発明の光学異方体同様に、基材、配向膜、及び、重合性組成物溶液の重合体を順次積層したものであるが、重合工程において、部分的に異なる位相差が得られるようにパターニングされたものである。パターニングは、線状のパターニング、格子状のパターニング、円状のパターニング、多角形状のパターニング等、異なる方向の場合もある。液晶デバイス、ディスプレイ、光学素子、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、光学フィルム、及び、補償フィルム等の用途に応じて、適用される。
部分的に異なる位相差を得る方法としては、基材に配向膜を設け、配向処理する際に本発明の重合性組成物溶液を塗布乾燥した際に重合性組成物がパターニング配向するように処理する。そのような配向処理は、微細ラビング処理、フォトマスクを介しての偏光紫外可視光照射処理、微細形状加工処理等が挙げられる。配向膜は、公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。微細ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
【実施例】
【0145】
以下に本発明を合成例、実施例、及び、比較例によって説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(重合性液晶組成物の調製)
表1に示す式(A−1)〜式(A−6)、式(B−1)〜式(B−8)、式(C−1)〜式(C−2)で表される化合物合計量100質量部に対し、式(D−1)〜式(D−18)で表される化合物、(E−1)で表される化合物、(F−1)で表される化合物、(G−1)で表される化合物、(G−2)で表される化合物をそれぞれ、表1に示す割合(質量部)で配合し、当該式(A−1)〜式(A−6)、式(B−1)〜式(B−8)、式(C−1)〜式(C−2)、式(D−1)〜式(D−18)で表される化合物、(E−1)で表される化合物、(F−1)で表される化合物、(G−1)で表される化合物、(G−2)で表される化合物の全合計量が重合性液晶組成物中25質量%となるように、有機溶媒であるMEK(メチルエチルケトン)(H−1)を用いて重合性液晶組成物(MEK:75質量%)を調製した。
(重合性液晶組成物(1)の調製)
表1に示す通り、式(A-3)で表される化合物20質量部、式(A-5)で表される化合物20質量部、式(B-5)で表される化合物25質量部、式(B-7)で表される化合物35質量部の合計値100質量部に対して、式(D-1)で表される化合物5質量部、重合開始剤(E-1)5質量部、及び、メチルヒドロキノン(MEHQ)(F−1)0.1質量部用い、これらの化合物の全合計量が25質量%となるように、有機溶媒であるMEK(H−1)を用い、攪拌プロペラを有する攪拌装置を使用し、攪拌速度が300rpm、溶液温度が80℃の条件下で1時間攪拌後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過して重合性液晶組成物(1)を得た。
(重合性液晶組成物(2)〜(46)、(51)〜(75)、比較用重合性液晶組成物(47)〜(50)の調製)
本発明の重合性液晶組成物(1)の調製と同様に、表1に示す(A−1)〜式(A−6)、式(B−1)〜式(B−8)、式(C−1)〜式(C−2)、式(D−1)〜式(D−18)で表される化合物、(E−1)で表される化合物、(F−1)で表される化合物、(G−1)で表される化合物、(G−2)で表される化合物、(J−1)で表される化合物の各化合物をそれぞれ表1〜表4に示す割合に変更した以外は重合性液晶組成物(1)の調製と同一条件で、それぞれ、重合性液晶組成物(2)〜(46)、(51)〜(75)、比較用重合性液晶組成物(47)〜(50)を得た。
【0146】
表1〜表6に、本発明の重合性液晶組成物(1)〜(46)、(51)〜(75)、比較用重合性液晶組成物(47)〜(50)の具体的な組成を示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【化52】
【0154】
【化53】
【0155】
【化54】
【0156】
【化55】
【0157】
nは0〜6を表し、(D−9)の分子量は150−550g/mol
【0158】
【化56】
【0159】
【化57】
【0160】
ラロマーLR−9000((BASFジャパン(株)製:1分子中に2個のイソシアネート基を有するジアクリレート) (D−17)
イルガキュア907(E−1)
MEHQ(F−1)
トリエチレンテトラミン(G−1)
ケチミン化合物(jERキュアH3)(G−2)
メガファック F−554(DIC(株)製)(J−1)
(実施例1)
(保存安定性)
調整した重合性液晶組成物(1)を40℃下で1ヶ月保存した後、組成物中のポリマー成分の増加率(%)を測定した。ポリマー成分の増加率(%)は、保存前と保存後のポリマー成分量を各々測定し、{(保存後のポリマー成分量)−(保存前のポリマー成分量)}/(保存前のポリマー成分量)}×100により算出した。ポリマー成分の測定は、GPC装置により行った。
(密着性)
<密着性評価用フィルムの作製>
調整した重合性液晶組成物(1)を室温で、COPフィルム基材上に垂直配向膜用であるシランカップリング系材料(JNC製:DMOAP)をスピンコート法で塗布し、100℃で1時間焼成して基質を得た。得られた基質にバーコーター#5を用いて塗布し、80℃で2分乾燥した。その後、室温で5分放置した後に、コンベア式の高圧水銀ランプを使用して、照度が500mJ/cmとなるようにセットしてUV光を照射することにより、実施例1のフィルムを得た。
<密着性の評価>
上記により得られたフィルムを、JIS K5600−5−6に則り、カッターを用いたクロスカット法を用いて、カッターで碁盤目状に切り目を入れ、2mm角の碁盤目にし、フィルムの密着性を測定した。
分類0:いずれの基盤目にもはがれがない
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれが確認される(5%未満)。
分類2:塗膜がカットの線に沿って、交差点においてはがれている(5%以上15%未満)。
分類3:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的にはがれている(15%以上35%未満)。
分類4:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に大きくはがれを生じている(35%以上65%未満)。
分類5:分類4以上
(配向性)
調製した重合性液晶組成物(1)を室温で、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム上にバーコーター♯5で塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、室温で15分放置した後に、コンベア式の高圧水銀ランプを使用して、積算光量が500mJ/cmとなるようにセットしてUV光を照射した。
◎:目視で欠陥が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない。
○:目視では欠陥がないが、偏光顕微鏡観察で一部に無配向部分が存在している。
△:目視では欠陥がないが、偏光顕微鏡観察で全体的に無配向部分が存在している。
×:目視で一部欠陥が生じており、偏光顕微鏡観察でも全体的に無配向部分が存在している。
得られた結果を以下の表に示す。
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
【表9】
【0164】
【表10】
【0165】
【表11】
【0166】
【表12】
【0167】
(実施例2〜71、比較例1〜4)
実施例1と同一条件で、重合性液晶組成物(2)〜(75)を用いて、保存安定性、密着性、及び配向性を測定し、結果を実施例2〜71、比較例1〜4とし、上記表に示す。なお、密着性評価用フィルムの基質としては、実施例2〜実施例19、実施例30、実施例63〜実施例68、実施例71及び比較例1〜3では、実施例1と同様に、COPフィルム基材上にシランカップリング系垂直配向膜を積層したものを用い、実施例20〜実施例23、実施例25〜実施例28、実施例42、実施例43、実施例45、実施例46、実施例69、実施例70では、TACフィルム基材を用い、実施例24、及び、実施例44ではPMMAフィルム基材を用い、実施例29、実施例31〜実施例41、実施例47〜実施例62及び、比較例4では、COPフィルム基材(垂直配向膜なし)を用いた。
【0168】
その結果、式(D−1)〜式(D−15)で表される重合性密着性付与剤を用いた重合性液晶組成物(実施例1〜71)は保存安定性に優れ、重合性密着性付与剤を含有しない重合性液晶組成物(比較例1、比較例4)に比べ、基質への密着性に優れ、配向性に優れる光学異方体を得ることができる。なお、式(D−18)で表される重合性密着性付与剤を用いた重合性液晶組成物(実施例71)は、重合性基を2つ有するため、式(D−1)〜式(D−15)で表される重合性基を1つ有する化合物を用いた場合よりは、保存安定性、密着性、及び配向性に低下が見られた。一方、本発明以外の重合性密着性付与剤を用いた重合性液晶組成物(比較例2、比較例3)は、基質への密着性は改善するものの、保存安定性が優れず、配向性が良好な光学異方体を得ることはできない。