(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら光反応性基などの特定の官能基を有するアクリル又はメタクリル化合物誘導体の合成方法として、特定の官能基を含む化合物のヒドロキシ基やアミノ基などの活性水素を有する部位へ、アクリル酸クロリドやメタクリル酸クロリドなどの酸ハロゲン化物、又はアクリル酸無水物やメタクリル酸無水物などの酸無水物を反応させる手法が従来より採用されている。
しかしながらこの方法は、酸クロリドなどとの反応後に副生する塩酸や又はその塩、あるいは酸無水物と発生させた後に生成するアクリル酸やメタクリル酸を除去するために、有機溶媒と水による洗浄工程を組み込む必要がある。この洗浄工程において、水洗作業は作業工程が増えるだけでなく、廃水が発生する等の理由から経済性や環境負荷の面においても負担増につながり、こうした水洗工程を極力回避することが望まれる。
さらに目的物によっては親水性基と疎水性基の双方を含む場合があり、こうした場合には有機層及び水層の両層への親和性の高さから分液不良を起こし、製造日数の増大や回収率の低下を引き起こすことがある。
【0008】
本発明は光反応性基を有するアクリロイル基又はメタクリル基を有する化合物を製造する際において、水洗工程を回避し、ろ過等により析出した結晶をろ過するのみで、簡便に、かつ純度が高く、良好な収率で目的の光反応性基を有するアクリル又はメタクリル化合物を得る製造方法、ならびにその化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意努力した結果、光反応性基を有する化合物の活性水素に対して、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物のイソシアネート基を作用させることにより、水洗工程を必要とせず、ろ過のみで目的物である光反応性基を有する(メタ)アクリル化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるイソシアネート基を有するアクリル酸エステル化合物、又はイソシアネート基を有するメタクリル酸エステル化合物と、下記一般式(2)−a又は(2)−bで表される光反応性化合物とを反応させ、下記一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物を得ることを特徴とする、アクリル化合物又はメタクリル化合物の製造方法、並びにそのアクリル化合物又はメタクリル化合物に関する。
【0011】
一般式(1)で表されるイソシアネート基を有する化合物:
【化1】
[式中、
R
1は水素又はメチル基を表し、
R
2は−O−、−S−、−NH−又は−NR
7−(式中、R
7は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表すか、又は炭素原子数4乃至20の1価の芳香環基又は複素環基を表し、これらは非置換であるか、メチル基、フッ素原子若しくは塩素原子により一置換又は多置換されていてもよい)を表し、
S
3は単結合を表すか、又は、非置換の又はシアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されている、炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、ここで当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して基G
1に置換されていてもよく、ここで、G
1は、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR
7−、−NH−CO−、−CO−NH−,−NR
7−CO−、−CO−NR
7−、−NR
7−CO−O−、−NH−CO−O−、−O−CO−NR
7−、−O−CO−NH−、−NR
7−CO−NR
7−、−NH−CO−NR
7−、−NR
7−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−及び−Si(CH
3)
2−OSi(CH
3)
2−からなる群から選択される基(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表し、但し、酸素原子は互いに直接結合しておらず、
又は、当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して、一般式(Q)で表される基に置換されていてもよく、
【化2】
(式中、
C
1及びC
2は、それぞれ独立して、下記群1に示す基(式中、R
7は上記に示したとおりである)から選択される、非置換の又は置換された炭素原子数2乃至18の非芳香族又は芳香族の炭素環又は複素環からなる2価の基を表し、
【化3】
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH
2(CO)−、−SO−、−CH
2(SO)−、−SO
2−、−CH
2(SO
2)−、−COO−、−OCO−、−COCF
2−、−CF
2CO−、−S−CO−、−CO−S−、−SOO−、−OSO−、−SOS−、−CH
2−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=N−、−C(CH
3)=N−、−N=N−、−O−CO−O−及び単結合からなる群から選択される基を表し、但し、酸素原子は互いに直接結合しておらず、
a1及びa2は、それぞれ独立して、0乃至3の整数を表し、且つa1+a2≦4である。]。
【0012】
一般式(2)−a又は(2)−bで表される化合物:
【化4】
【化5】
[式中、
nは1又は2の整数を表し、
nが1の場合、
R
3は−NH
2、−NHR
7、カルボキシル基、−CH
2COOH、−CHR
7COOH、−C(R
7)
2COOH(式中、R
7は上記に示したとおりであり、同一炭素原子上に2つのR
7が結合している場合は、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい)、ヒドロキシ基又はチオール基を表し、
nが2の場合、
R
3は−NH−、−CH(COOH)−又は−CR
7(COOH)−(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表し、
但し−A−S
2−R
3基又は−E−S
1−B−R
3基において、R
3に直接結合する基がカルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子となる基は除かれるものであり(但しE、S
1、Bが同時に単結合を表すことはない)、
S
2は、独立して、前記S
3で定義されたものと同じ基を表し、
Aは前記群1に示す基(式中、R
7は上記に示したとおりである)から選択される、炭素原子数2乃至18の脂肪族環、芳香環又は複素環からなる2価の基を表すか、又は、それらの環の2乃至3つが、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR
7−、−NR
7−CO−、−CO−NR
7−、−NR
7−CO−O−、−O−CO−NR
7−、−NR
7−CONR
7−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−及び−Si(CH
3)
2−OSi(CH
3)
2−(式中、R
7は上記に示したとおりである)からなる群から選択される2価の基で連結された構造からなる2価の基を表し、但し、酸素原子は互いに直接結合しておらず、なお上記Aの脂肪族環、芳香環又は複素環は、非置換であるか、又は、ハロゲン原子、シアノ基及び炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(該アルキル基は非置換であるか、フッ素原子及び/又は塩素原子により一置換又は多置換されていてもよく、また該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表し、
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20個のアルキル基(該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表し、
Eは、酸素原子、硫黄原子、−C(R
5)R
6−、−NH−、−NR
7−(式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(当該アルキル基は非置換であるか、シアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されていてもよく、ここで該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、ぞれぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表し、R
7は上記に示したとおりである)を表し、
S
1は、独立して、前記S
3で定義されたものと同じ基を表し、
Bは単結合を表すか、又は独立して前記Aで定義されたものと同じ基を表し、
Dは、水素原子、−Si(CH
3)
3、−Si(CH
3)
2−O−Si(CH
3)
3又は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(当該アルキル基は非置換であるか、シアノ基、フッ素原子、塩素原子及び脂環式基からなる群から選択される基により、一置換又は多置換されていてもよく、ここで該アルキル基において、1つ以上の隣接しない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1により代えられていてもよい)を表し、
但しA、B、D、E、S
1、S
2、X、Yの組み合わせにおいて、R
3に示す基が含まれることはない。]。
【0013】
一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物:
【化6】
【化7】
[式中、
R
1、R
2、S
3、S
2、A、X、Y、E、S
1、B、D及びnは上記に示したとおりであり、
nが1の場合、
R
4は、単結合、−CH
2−、−CHR
7−、−C(R
7)
2−(式中、R
7は上記に示したとおりであり、同一炭素原子上に2つのR
7が結合している場合は、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい)、酸素原子、硫黄原子、−NH−、NR
7−(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表し、
nが2の場合、
R
4は、3価の窒素原子、3価のCHまたは3価のCR
7(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表し、
但し−A−S
2−R
4−基又は−E−S
1−B−R
4−基において、R
4に直接結合する基がカルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子となる基は除かれるものである(但しE、S
1、Bが同時に単結合を表すことはない)]。
【発明の効果】
【0014】
本発明は光反応性基を有するアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物を製造する際において、水洗工程を回避し、簡便に光反応性化合物が得られる製造方法を提供することができる。
また本発明は、イソシアネート基と光反応性化合物との反応において、混入している水分が無い条件下では副反応が生じないため、ろ過のみで目的とする化合物が得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の製造方法は、下記のスキームに従って実施される。すなわち、下記一般式(1)で表されるイソシアネート基を有するアクリル酸エステル化合物又はイソシアネート基を有するメタクリル酸エステル化合物と、下記一般式(2)−a又は(2)−bで表される光反応性化合物とを反応させ、下記一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物を得ることを特徴とする、アクリル化合物又はメタクリル化合物の製造方法である。
【化8】
【化9】
【0016】
本発明におけるイソシアネート化合物については、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化10】
【0017】
上記式中、R
1は水素又はメチル基を表す。
R
2は−O−、−S−、−NH−又は−NR
7−(式中、R
7は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表すか、又は炭素原子数4乃至20の1価の芳香環基又は複素環基を表し、これらは非置換であるか、メチル基、フッ素原子若しくは塩素原子により一置換又は多置換されていてもよい)を表す。特にR
2は−O−又は−NH−が好ましい。
【0018】
S
3は単結合を表すか、又は、非置換の又はシアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されている、炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
ここで当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して基G
1に置換されていてもよい。G
1は、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR
7−、−NH−CO−、−CO−NH−,−NR
7−CO−、−CO−NR
7−、−NR
7−CO−O−、−NH−CO−O−、−O−CO−NR
7−、−O−CO−NH−、−NR
7−CO−NR
7−、−NH−CO−NR
7−、−NR
7−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−及び−Si(CH
3)
2−OSi(CH
3)
2−からなる群から選択される基(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表す。但し、酸素原子は互いに直接結合していない。なお本書において“酸素原子は互いに直接結合していない”とは、置換基と置換基の境目で酸素原子が結合しないことを意図するものであり、例えば本項においては、隣接するR
2基が酸素原子であり、S
3の末端のCH
2基がG
1に置換されている場合、G
1が−O−基であったり、R
2との結合側からみてG
1が−O−CO−基であるような場合を除くことを意図したものである。
或いは当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して、一般式(Q)で表される基に置換されていてもよい。
【化11】
上記一般式(Q)中、C
1及びC
2は、それぞれ独立して、下記群1に示す基(式中、R
7は上記に示したとおりである)から選択される、非置換の又は置換された炭素原子数2乃至18の非芳香族又は芳香族の炭素環又は複素環からなる2価の基を表す。
【化12】
中でもC
1及びC
2は、それぞれ独立して、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基又は1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−CH
2(CO)−、−SO−、−CH
2(SO)−、−SO
2−、−CH
2(SO
2)−、−COO−、−OCO−、−COCF
2−、−CF
2CO−、−S−CO−、−CO−S−、−SOO−、−OSO−、−SOS−、−CH
2−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH=N−、−C(CH
3)=N−、−N=N−、−O−CO−O−及び単結合からなる群から選択される基を表す。但し、酸素原子は互いに直接結合していない。
中でも好ましくは、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立して、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−C≡C−、−N=N−及び単結合からなる群から選択される基である。
a1及びa2は、それぞれ独立して、0乃至3の整数を表し、且つa1+a2≦4である。
【0019】
好ましくは、S
3は単結合を表すか、又は、非置換の又はシアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されている炭素原子数1乃至10の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基(ここで当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表す。
【0020】
炭素原子数5〜20の環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロエイコシル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素原子数4〜20の1価の芳香環基又は複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、フェニル基、ビチエニル基、ビピリジル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ナフチル基、アントラニル基等を表す。
【0023】
炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基等が挙げられる。
【0024】
炭素原子数5〜20の環状のアルキレン基としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロエイコシレン基、ノルボルニル基等を表す。
【0025】
炭素原子数4〜20の2価の芳香環基又は複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、フェニル基、ビチエニル基、ビピリジル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ナフチル基、アントラニル基の1価の芳香環基又は複素環基から水素原子を1個除去した基が挙げられる。
【0026】
なかでも、上記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物は、2−イソシアナトエチルメタクリレート又は2−イソシアネトエチルアクリレートであることが好ましい。
【0027】
本発明における光反応性化合物は、下記一般式(2)−a又は(2)−bで表される化合物である。
【化13】
【化14】
【0028】
上記式中、nは1又は2の整数を表し、nが1の場合、R
3は−NH
2、−NHR
7(式中、R
7は上記に示したとおりである)、カルボキシル基、−CH
2COOH、−CHR
7COOH、−C(R
7)
2COOH(式中、R
7は上記に示したとおりであり、同一炭素原子上に2つのR
7が結合している場合は、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい)、ヒドロキシ基又はチオール基を表し、nが2の場合、R
3は−NH−、−CH(COOH)−、−CR
7(COOH)−(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表す。
但し−A−S
2−R
3基又は−E−S
1−B−R
3基において、R
3に直接結合する基がカルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子となる基は除かれる(なおE、S
1、Bが同時に単結合を表すことはない)。
R
3は前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する基であり、下記に定義されるように、一般式(2)−a又は(2)−bにおいて、R
3以外の基の定義に、上記R
3に定義する基は含まれない。
【0029】
また上記一般式(2)−a又は(2)−b中、S
2は、独立して、前記一般式(3)におけるS
3で定義されたものと同じ基を表す。すなわちS
2は単結合を表すか、又は、非置換の又はシアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されている炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基(ここで当該アルキレン基における1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1又は前記一般式(Q)で表される基に置換されていてもよい)を表す。
【0030】
Aは前記群1に示す基(式中、R
7は上記に示したとおりである)から選択される、炭素原子数2乃至18の脂肪族環、芳香環又は複素環からなる2価の基を表すか、又は、それらの環の2乃至3つが、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−NR
7−、−NR
7−CO−、−CO−NR
7−、−NR
7−CO−O−、−O−CO−NR
7−、−NR
7−CONR
7−、−CH=CH−、−C≡C−、−O−CO−O−及び−Si(CH
3)
2−OSi(CH
3)
2−(式中、R
7は上記に示したとおりである)からなる群から選択される2価の基で連結された構造からなる2価の基を表す。但し、酸素原子は互いに直接結合していない。
なお上記Aの脂肪族環、芳香環又は複素環は、非置換であるか、又は、ハロゲン原子、シアノ基及び炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(該アルキル基は非置換であるか、フッ素原子及び/又は塩素原子により一置換又は多置換されていてもよく、また該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表す。
【0031】
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至20の、好ましくは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表す。
【0032】
Eは、酸素原子、硫黄原子、−C(R
5)R
6−、−NH−、−NR
7−(式中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(当該アルキル基は非置換であるか、シアノ基により及び/若しくはハロゲン原子により一置換若しくは多置換されていてもよく、ここで該アルキル基において、1つ以上の隣接していない−CH
2−基は、ぞれぞれ独立して前記基G
1に置換されていてもよい)を表し、R
7は上記に示したとおりである)を表す。
【0033】
S
1は、独立して、前記一般式(1)におけるS
3で定義されたものと同じ基を表す。
【0034】
Bは単結合を表すか、又は独立して前記Aで定義されたものと同じ基を表す。
【0035】
Dは、水素原子、−Si(CH
3)
3、−Si(CH
3)
2−O−Si(CH
3)
3又は炭素原子数1乃至20の環状、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(当該アルキル基は非置換であるか、シアノ基、フッ素原子、塩素原子及び脂環式基からなる群から選択される基により、一置換又は多置換されていてもよく、ここで該アルキル基において、1つ以上の隣接しない−CH
2−基は、それぞれ独立して前記基G
1により代えられていてもよい)を表す。
【0036】
但しA、B、D、E、S
1、S
2、X、Yの組み合わせにおいて、R
3に示す基が含まれることはない。
【0037】
上記Aの具体例としては、下記群2に示すものが挙げられる。式中、−は隣接基との接続結合を表し、Meはメチル基を表し、R
7は上記に示したとおりである。
【化15】
【0038】
なおAにおける群1に示す基のより好ましい例は、下記群3に示す基であり、特に下記群4に示す基が好ましい。式中、−は隣接基との接続結合を表し、Meはメチル基を表し、R
7は上記に示したとおりである。
【化16】
【化17】
【0039】
本発明の製造方法により製造されるアクリル化合物又はメタクリル化合物は、下記一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物である。本発明は下記一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物も対象とするものである。
【化18】
【化19】
【0040】
上記式中、R
1、R
2、S
3、S
2、A、X、Y、E、S
1、B、D及びnは上記に示したとおりである。
そしてnが1の場合、R
4は、単結合、−CH
2−、−CHR
7−、−C(R
7)
2−(式中、R
7は上記に示したとおりであり、同一炭素原子上に2つのR
7が結合している場合は、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい)、酸素原子、硫黄原子、−NH−、NR
7−(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表し、nが2の場合、R
4は、3価の窒素原子、3価のCHまたは3価のCR
7(式中、R
7は上記に示したとおりである)、すなわち、一般式(3)−a又は(3)−b中の括弧内に示す基が2個付加している3価の窒素原子、3価のCHまたは3価のCR
7(式中、R
7は上記に示したとおりである)を表す。
但し−A−S
2−R
4−基又は−E−S
1−B−R
4−基において、R
4に直接結合する基がカルボニル基、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子となる基は除かれる(なおE、S
1、Bが同時に単結合を表すことはない)。
【0041】
上記一般式(3)−a又は(3)−bで表される化合物の例としては、以下に示すようなものが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。なお式中、pは2乃至8の整数を表す。
【化20】
【0042】
上記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物は市販されているか、又は、既知の方法で製造することができる。例えば、化合物中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、かつ第一級アミンを有していれば、ホスゲン又はトリホスゲンを反応させることによって第一級アミンからイソシアネート基を構築でき、目的のイソシアネート化合物が得られる。その他にも、一般的にイソシアネート基を構築する手法としては、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ触媒下、N−置換カルバミン酸エステル骨格を熱分解する方法や、酸アジドからのクルチウス転位を利用する方法、又は、ヒドロキサム酸をロッセン転位させる方法によってもイソシアネート化合物を得ることができる。
【0043】
上記一般式(2)−a又は(2)−bで表される光反応性化合物は市販されているか、又は、既知の方法で製造することができ、例えば米国特許出願公開第2010/0305230号明細書に記載されている方法により合成可能である。
【0044】
前記一般式(1)で表されるイソシアネート基を有するアクリル酸エステル化合物又はイソシアネート基を有するメタクリル酸エステル化合物と、前記一般式(2)−a又は(2)−bで表される光反応性化合物の使用量は特に限定されないが、光反応性化合物の活性水素:1当量に対し、イソシアネート化合物を0.80当量〜1.02当量で使用することが好ましい。さらに好ましくは、イソシアネート化合物を0.98当量〜1.00当量で使用する。イソシアネート化合物が液体の場合は、この数値範囲により多く使用してもよい。
【0045】
反応溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄非プロトン性極性溶媒;ピリジン、ピコリン等のピリジン類等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。好ましくはトルエン、アセトニトリル、酢酸エチルであり、さらに好ましくはトルエン、アセトニトリルである。
【0046】
溶媒の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、溶媒を用いずに反応を実施してもよく、また溶媒を使用する場合には光反応性化合物に対し、0.1〜100質量倍の溶媒を用いてもよい。好ましくは1〜10質量倍であり、さらに好ましくは3〜6質量倍である。
【0047】
反応温度は特に限定されないが、例えば−90〜150℃、好ましくは0〜100℃で、さらに好ましくは20℃から80℃である。
【0048】
反応時間は、通常、0.05ないし200時間、好ましくは0.5ないし100時間である。
【0049】
反応させる際に、重合禁止剤を添加してもよい。そのような重合禁止剤としてはBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)やハイドロキノン、パラ−メトキシフェノールなどを用いることができ、アクリロイル基、メタクリロイル基の重合を阻害するものであれば特に限定はされない。
【0050】
重合禁止剤を添加する場合の添加量は特に限定されないが、イソシアネート基を有するアクリル酸エステル化合物又はイソシアネート基を有するメタクリル酸エステル化合物の総使用量(質量)に対し、0.001wt%〜10wt%であり、好ましくは0.1〜1wt%である。本明細書においてwt%とは質量%を意味する。、
【0051】
反応時間を短縮させるために触媒を添加してもよく、その例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、テトラメチルブタンジアミン、N−メチルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ−2.2.2−オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5等のアミン類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等のビスマス系化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これら触媒は液体であるか、又は、反応溶媒に溶解するものが好ましい。
【0052】
触媒を添加する場合、イソシアネート基を有するアクリル酸エステル化合物又はイソシアネート基を有するメタクリル酸エステル化合物の総使用量(質量)に対し、0.005wt%〜100wt%の量で触媒を使用してもよく、好ましくは0.05wt%〜10wt%、さらに好ましくは0.1wt%〜5wt%である。触媒として有機スズ化合物、チタン化合物、ビスマス系化合物を使用するのであれば、好ましくは同0.005wt%〜0.1wt%である。
本反応は、常圧又は加圧下で行うことができ、また回分式でも連続式でもよい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明における略号はそれぞれ以下の意味を示す。
2−IEM:2−イソシアナトエチルメタクリレート
BHT:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン
CIN1:3−(4−〔6−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ヘキシルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル
CIN2:3−(4−〔3−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]プロピルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル
CIN3:3−(4−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]フェニル)プロパ−2−エン酸メチル
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0054】
[実施例1]
3−(4−〔6−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ヘキシルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN1]の合成(1)
【化21】
【0055】
窒素雰囲気下、3−〔4−[(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ]フェニル〕プロペン酸メチル[1](512.6g、1.841mol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)(5.975g、0.03925mol)と、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(3.008g、0.01365mol)と、トルエン2357gを4つ口フラスコへ加え、55℃まで加温した。その後、2−イソシアナトエチルメタクリレート[2](299.4g、1.930mol)を滴下していき、滴下終了1.5時間後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて原料消失を確認した。その後冷却し、内温が26℃となったところで結晶が析出した。その後、さらに冷却させて内温2℃で1時間攪拌した後に析出した結晶をろ過した。ろ取した結晶を、2℃に冷却させたトルエン867.0gで2回ケーキ洗浄し、その後乾燥させ、3−(4−〔6−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ヘキシルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN1]を得た(698.7g、1.612mol、収率87.6%)。
化合物[CIN1]の構造は、
1H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.65(d,1H),7.46(d,2H),6.88(d,2H),6.31(d,1H),6.12(s,1H),5.61(s,1H)4.92(s,1H),4.23(t,2H),4.08(t,2H),3.98(t,2H),3.79(s,3H),3.48−3.51(br,2H),1.95(s,3H),1.78−1.82(m,2H),1.62−1.67(m,2H),1.42−1.52(m,4H).
【0056】
[実施例2]
3−(4−〔6−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ヘキシルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN1]の合成(2)
窒素雰囲気下、3−〔4−[(6−ヒドロキシヘキシル)オキシ]フェニル〕プロペン酸メチル[1](511.6g、1.837mol)とジブチルスズジラウレート(0.1386g、0.2195mmol)と、ジブチルヒドロキシトルエン(略称BHT)(2.834g、0.01286mol)と、アセトニトリル2345gを4つ口フラスコへ加え、63℃まで加温した。その後、2−イソシアナトエチルメタクリレート[2](299.8g、1.932mol)を滴下していき、滴下終了2時間後に高速液体クロマトグラフィー(略称HPLC)にて原料消失を確認した。その後内温が5℃になるまで冷却し1時間攪拌した後に析出した結晶をろ過した。ろ取した結晶を、2℃に冷却させたトルエン867.0gで2回ケーキ洗浄し、その後乾燥させ、3−(4−〔6−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]ヘキシルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN1]を得た(620.4g、1.431mol、収率77.9%)。
化合物[CIN1]の構造は、
1H−NMR分析により実施例1と同等のスペクトルデータを示した。
【0057】
[実施例3]
3−(4−〔3−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]プロピルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN2]の合成
【化22】
【0058】
窒素雰囲気下、3−〔4−[(3−ヒドロキシプロピル)オキシ]フェニル〕プロペン酸メチル[3](2.50g、10.6mmol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)(0.0448g、0.294mmol)と、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(0.0189g、0.0858mmol)と、トルエン11.5gを4つ口フラスコへ加え、55℃まで加温した。その後、2−イソシアナトエチルメタクリレート[2](2.02g、13.0mmol)を滴下していき、滴下終了1.5時間後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて原料消失を確認した。その後冷却し結晶が析出した。その後、さらに冷却させて内温2℃で1時間攪拌した後に析出した結晶をろ過した。ろ取した結晶を、2℃に冷却させたトルエン4.40gで2回ケーキ洗浄し、その後乾燥させ、3−(4−〔3−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]プロピルオキシ〕フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN2]を得た(3.16g、8.07mmol、収率76.3%)。
化合物[CIN2]の構造は、
1H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.65(d,1H),7.46(d,2H),6.89(d,2H),6.31(d,1H),6.12(s,1H),5.59(s,1H)4.97(s,1H),4.22−4.28(m,4H),4.07(t,2H),3.79(s,3H),3.50(q,2H),2.10−2.15(m,2H),1.94(s,3H).
【0059】
[
参考例4]
3−(4−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN3]の合成
【化23】
【0060】
窒素雰囲気下、3−(4−ヒドロキシ)フェニルプロペン酸メチル[4](8.90g、50.0mmol)とジブチルスズジラウレート(4.30mg、0.00681mmol)と、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(80.0mg、0.363mmol)と、トルエン100mlを4つ口フラスコへ加え、55℃まで加温した。その後、2−イソシアナトエチルメタクリレート[2](8.53g、55.0mmol)を滴下していき、滴下終了1.5時間後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて原料消失を確認した。トルエン100mlを追加し、その後冷却したところ結晶が析出した。その後室温で18時間攪拌した後に析出した結晶をろ過した。ろ取した結晶を、トルエン100mlで2回ケーキ洗浄し、その後乾燥させ、3−(4−[2−(メタクリロイルオキシ)エチルカルバモイルオキシ]フェニル)プロパ−2−エン酸メチル[CIN3]を得た(13.5g、40.5mmol、収率81.0%)。
化合物[CIN3]の構造は、
1H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
1H−NMR(CDCl
3):δ7.67(d,1H),7.52(d,2H),7.16(d,2H),6.38(d,1H),6.17(s,1H),5.63(s,1H),5.43(s,1H),4.31(t,2H),3.81(s,3H),3.66−3.58(m,2H),1.98(s,3H).
【0061】
[実施例5]
<CIN1を用いた共重合体の製造>
上記実施例1で得たCIN1 40.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10.0g、重合触媒としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.2gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)204.8gに溶解し、85℃にて20時間反応させることにより共重合体溶液(固形分濃度20質量%)を得た。得られた共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる数平均分子量:Mnは6,500、重量平均分子量:Mwは12,000であった。
【0062】
なお上記共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803L及びKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1mL/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。
【0063】
<共重合体を含有する硬化膜形成組成物の調製>
例A:
上記共重合体溶液を5g、ポリエステルポリオール(アジピン酸/ジエチレングリコール共重合体、数平均分子量:4,800)を0.8g、ヘキサメトキシメチルメラミンを1.0g、p−トルエンスルホン酸一水和物を0.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテルを41.4g混合し、例Aの硬化膜形成組成物を調製した。
例B:
ポリエステルポリオールの添加量を1.5gとし、プロピレングリコールモノメチルエーテルの添加量を52.4gとした以外は、例Aと同様の手順にて、例Bの硬化膜形成組成物を調製した。
例C:
ポリエステルポリオールに替えてポリカプロラクトントリオール(数平均分子量:2,000)を0.8g添加した以外は、例Aと同様の手順にて、例Cの硬化膜形成組成物を調製した。
【0064】
[密着性の評価]
例A乃至例Cの各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に20mJ/cm
2照射した。
露光後の硬化膜の上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、位相差材を作製した。
得られたフィルム上の位相差材にカッターナイフを用いてクロスカット(1mm×1mm×100マス)を入れ、その後、ニチバン(株)製セロテープ(登録商標)を貼り付け、次いで、そのセロテープ(登録商標)を剥がした時に基板上の膜が剥がれず残っているマス目の個数をカウントした。膜が剥がれず残っているマス目が90個以上残っているものは、密着性が良好であると評価できる。
【0065】
[配向感度の評価]
例A乃至例Cの各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に照射し、配向材を形成した。
フィルム上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、位相差材を作製した。
作製したフィルム上の位相差材をフィルムごと一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、配向材が液晶配向性を示すのに必要な偏光UVの露光量を配向感度とした。
【0066】
[パターン形成性の評価]
例A乃至例Cの各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に100μmのラインアンドスペースマスクを介し、313nmの直線偏光を30mJ/cm
2垂直に照射した。次いでマスクを取り外し、基板を90度回転させた後、313nmの直線偏光を15mJ/cm
2垂直に照射し、液晶の配向制御方向が90度異なる2種類の液晶配向領域が形成された配向材を得た。
このフィルム上の配向材の上に、メルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルム上の塗膜を1000mJ/cm
2で露光し、パターン化位相差材を作製した。
作製したフィルム上のパターン化位相差材を、偏光顕微鏡を用いて観察し、配向欠陥なく位相差パターンが形成されているものを○、配向欠陥が見られるものを×として評価した。
【0067】
[密着耐久性の評価]
例A乃至例Cの各硬化膜形成組成物をTACフィルム上にスピンコータを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度110℃で120秒間、熱循環式オーブン中で加熱乾燥を行い、硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に20mJ/cm
2照射した。
露光後のフィルム上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコータを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルムを1000mJ/cm
2で露光し、位相差材を作製した。
位相差材が形成されたフィルムを温度80℃、湿度90%の条件で100時間保管後、フィルム上の位相差材にカッターナイフを用いてクロスカット(1mm×1mm×100マス)を入れ、その後、セロテープ(登録商標)を貼り付け、次いで、そのセロテープ(登録商標)を剥がした時に基板上の膜が剥がれず残っているマス目の個数をカウントした。100時間保管前に評価した初期の密着性と違いがないものは耐久性が良好であると評価できる。
【0068】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、次の表1に示す。
【表1】
表1に示すように、CIN1より得られる共重合体を含有する硬化膜形成樹脂組成物は、いずれも少ない露光量で液晶配向性を示して高い配向感度を示し、光学パターニングを行うことができた。さらに、高い密着耐久性を示した。