(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の基板及び前記第二の基板における前記液晶組成物層と隣接する面に前記垂直配向膜を有し、前記第一の基板にカラーフィルター層を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
前記画素電極が、画素の中央から4方向に櫛歯状にスリットを有し、前記液晶組成物層中の液晶分子が異なった方向に配向する4つの領域を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
前記液晶組成物が、前記一般式(I)で表される化合物を30〜60質量%含有し、前記一般式(II)で表される化合物を30〜65質量%含有する請求項7に記載の液晶表示素子。
前記液晶組成物が、前記一般式(I)で表される化合物を30〜50質量%含有し、前記一般式(II)で表される化合物を30〜50質量%含有する請求項10又11に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の液晶表示素子及びその製造方法の実施の形態について説明する。
【0026】
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0027】
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、一対の基板の間に挟持された液晶組成物層を有する液晶表示素子であって、液晶組成物層に電圧を印加し、液晶組成物層中の液晶分子をフレデリクス転移させることにより、光学的なスイッチとして働かせる原理に基づくものであり、この点では周知慣用技術を用いることができる。
【0028】
二つの基板は、液晶分子をフレデリクス転移するための電極を有する、通常の垂直配向液晶表示素子では、一般的に、二つの基板間に垂直に電荷を印加する方式が採用される。この場合、一方の電極は共通電極となり、もう一方の電極は画素電極となる。以下に、この方式の最も典型的な実施形態を示す。
【0029】
図1は、本発明の液晶表示素子の一実施形態を示す概略斜視図である。
【0030】
本実施形態の液晶表示素子10は、第一の基板11と、第二の基板12と、第一の基板11と第二の基板12の間に挟持された液晶組成物層13と、第一の基板11における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた共通電極14と、第二の基板12における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた画素電極15と、共通電極14における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた垂直配向膜16と、画素電極15における液晶組成物層13と対向する面上に設けられた垂直配向膜17と、第一の基板11と共通電極14の間に設けられたカラーフィルター18とから概略構成されている。
【0031】
第一の基板11と、第二の基板12としては、ガラス基板又はプラスチック基板が用いられる。プラスチック基板としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状オレフィン樹脂等の樹脂からなる基板が用いられる。
【0032】
共通電極14は、通常、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。
【0033】
画素電極15は、通常、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。画素電極15は、第二の基板12にマトリクス状に配設されている。画素電極15は、TFTスイッチング素子に代表されるアクティブ素子のドレイン電極により制御され、そのTFTスイッチング素子は、アドレス信号線であるゲート線及びデータ線であるソース線をマトリクス状に有している。なお、ここでは、TFTスイッチング素子の構成を図示していない。
【0034】
視野角特性を向上させるために画素内の液晶分子の倒れる方向をいくつかの領域に分割する画素分割を行う場合、各画素内において、ストライプ状やV字状のパターンを有するスリット(電極の形成されない部分)を有する画素電極を設けていてもよい。
【0035】
図2は、画素内を4つの領域に分割する場合のスリット電極(櫛形電極)の典型的な形態を示す概略平面図である。このスリット電極は、画素の中央から4方向に櫛歯状にスリットを有することにより、電圧無印加時に基板に対して略垂直配向している各画素内の液晶分子は、電圧の印加に伴って4つの異なった方向に液晶分子のダイレクターを向けて、水平配向に近づいていく。その結果、画素内の液晶の配向方位を複数に分割できるので極めて広い視野角特性を有する。
【0036】
画素分割するための方法としては、前記画素電極にスリットを設ける方法の他に、画素内に線状突起等の構造物を設ける方法、画素電極や共通電極以外の電極を設ける方法等が用いられる。これらの方法により、液晶分子の配向方向を分割することもできるが、透過率、製造の容易さから、スリット電極を用いる構成が好ましい。スリットを設けた画素電極は、電圧無印加時には液晶分子に対して駆動力を有さないことから、液晶分子にプレチルト角を付与することはできない。しかし、本発明において用いられる配向膜材料を併用することにより、プレチルト角を付与することができるとともに、画素分割したスリット電極と組み合わせることにより、画素分割による広視野角を達成することができる。
【0037】
本発明において、プレチルト角を有するとは、電圧無印加状態において、基板面(第一の基板11および第二の基板12における液晶組成物層13と隣接する面)に対して垂直方向と液晶分子のダイレクターが僅かに異なっている状態を言う。
【0038】
本発明の液晶表示素子は、垂直配向(VA)型液晶表示素子であるので、電圧無印加時に液晶分子のダイレクターは基板面に対して略垂直配向しているものである。液晶分子を垂直配向させるためには、一般的に垂直配向膜が用いられる。垂直配向膜を形成する材料(垂直配向膜材料)としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン等が用いられるが、これらのなかでもポリイミドが好ましい。垂直配向膜材料は、メソゲン性部位を含んでいてもよいが、後述する重合性化合物とは異なり、メソゲン性部位を含まないことが好ましい。垂直配向膜材料がメソゲン性部位を含むと、電圧の印加を繰り返すことにより、分子配列が乱れることに起因する焼き付き等が発生することがある。垂直配向膜がポリイミドからなる場合には、テトラカルボン酸二無水物およびジイソシアネートの混合物、ポリアミック酸、ポリイミドを溶剤に溶解又は分散させたポリイミド溶液を用いることが好ましく、この場合、ポリイミド溶液中におけるポリイミドの含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
一方、ポリシロキサン系の垂直配向膜を用いる場合には、アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコール誘導体及びシュウ酸誘導体を所定の配合量比で混合して加熱することにより製造したポリシロキサンを溶解させた、ポリシロキサン溶液を用いることができる。
【0040】
本発明の液晶表示素子において、ポリイミド等により形成される前記垂直配向膜は、反応性基を有する重合性化合物の重合により形成される重合体を含むものである。この重合性化合物は、液晶分子のプレチルト角を固定する機能を付与するものである。すなわち、スリット電極等を用いて、画素内の液晶分子のダイレクターを電圧印加時に異なった方向にチルトさせることが可能となる。しかし、スリット電極を用いた構成においても、電圧無印加時に、液晶分子は基板面に対してほとんど垂直配向しており、プレチルト角は発生しない。
【0041】
上述のPSA方式の場合、電極間に電圧を印加し、液晶分子を僅かにチルトさせた状態で、紫外線等を照射し、液晶組成物中の反応性モノマーを重合させることにより、適切なプレチルト角を付与している。
【0042】
本発明の液晶表示素子においても、PSA方式と同様に、電極間に電圧を印加し、液晶分子を僅かにチルトさせた状態で、紫外線等を照射し、プレチルト角を付与するが、PSA方式とは異なり、液晶組成物中に重合性化合物を含有していない。本発明にあっては、前記ポリイミド等の垂直配向膜材料に反応性基を有する重合性化合物をあらかじめ含有させ、液晶組成物を基板間に挟持した後、電圧を印加しながら、重合性化合物を硬化させることにより、プレチルト角を付与するものであり、PSA方式とは重合性化合物の相分離を利用しない点で本質的に異なる。
【0043】
本発明において、略垂直とは、垂直配向している液晶分子のダイレクターが垂直方向からやや倒れてプレチルト角を付与した状態を意味する。プレチルト角が完全な垂直配向の場合を90°、ホモジニアス配向(基板面に水平に配向)の場合を0°とすると、略垂直とは、89〜85°であることが好ましく、89〜87°であることがより好ましい。
【0044】
重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜は、垂直配向膜材料に混合した重合性化合物の効果により形成されるものである。従って、垂直配向膜と重合性化合物は複雑に絡み合って、一種のポリマーアロイを形成しているものと推定されるが、その正確な構造を示すことはできない。
【0045】
(重合性化合物)
本発明における垂直配向膜は、下記一般式(1)で表される2種以上の重合性化合物の重合体であり、該2種以上の重合性化合物のうち1種以上は2官能性の重合性化合物である重合体を含むものである。
【0046】
重合性化合物としては、ひとつの反応性基を有する単官能性の重合性化合物と二官能又は三官能等の二つ以上の反応性基を有する多官能性の重合性化合物のいずれを用いてもよいが、下記一般式(1)で表される重合性化合物が好ましく、多官能性の重合性化合物が好ましく、なかでも二官能性の重合性化合物が好ましく、重合性基とメソゲン基の間に何らかの連結基が存在するものが好ましい。このような重合性化合物を含有することで、液晶表示素子に含まれる液晶の誘電率異方性、粘度、ネマチック相上限温度、回転粘度(γ
1)等の諸特性を改善でき、重合性化合物を含有する配向膜に起因する液晶表示素子の焼き付き特性を悪化させず、製造時の滴下痕の発生を防止することができる。これは重合性化合物の反応性が高くなり残留モノマーが少なくなるためと考えられる。また多官能性の重合性化合物を含むことにより液晶表示素子の光透過性を高め、液晶の立下り時間などの応答速度を改善することができる。これは重合後の高分子構造が剛直になり配向規制力が大きくなるためと考えられる。重合性化合物は、メソゲン性部位を含んだ構造の方が配向規制力を大きくすることができるため、高透過率且つ高速応答性に優れた液晶表示素子にすることができる。単官能性または二官能性の重合性化合物は重合後の配向構造が乱れにくく配向規制力を大きく保つことができるため好ましい。従って、高い反応性と重合物の剛直性と配向性を併せ持つ一般式(1)の二官能性の重合性化合物に、一般式(1)の単官能または多官能の重合性化合物を添加して反応性と配向規制力を最適化することが好ましい。
【0047】
重合性化合物における反応性基としては、垂直配向膜材料の熱重合の際に、重合性化合物の反応を抑制できるので、光による重合性を有する反応性基が特に好ましい。また、垂直配向膜の熱重合の際に、反応性基を有する重合性化合物が分解したり、予期しない熱重合が生じたりすることは好ましくなく、そのような現象を避けるため、メソゲン性部位を有する一般式(1)の構造が好ましく、重合基とメソゲン性部位との間に連結基のあるものが好ましい。
【0049】
(式中、P
2は重合性官能基を表し、S
1は炭素原子数1〜18のアルキレン基を表し(該アルキレン基中の水素原子は、1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、−O−、−COO−、−OCO−又は−OCO−O−により置き換えられていても良い。)、X
1は−O−、−S−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CH=CH−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は単結合を表し(ただし、P
2−S
1、及びS
1−X
1は、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。)、q1は0又は1を表し、MGはメソゲン基を表し、R
2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は炭素原子数1から12の直鎖又は分岐アルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよく、該アルキル基は1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良く、あるいはR
2は、一般式(1−a)
【0051】
(式中、P
3は重合性官能基を表し、S
2は、S
1で定義されたものと同一のものを表し、X
2は、X
1で定義されたものと同一のものを表し(ただし、P
3−S
2、及びS
2−X
2は、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。)、q
2は0又は1を表す。)を表し、
上記MGで表されるメソゲン基は、一般式(1−b)
【0053】
(式中、B
1、B
2及びB
3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基、及び/又は一般式(1−c)
【0055】
(式中、P
4は重合性官能基を表し、
S
3は、S
1で定義されたものと同一のものを表し、X
3は、−O−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−OCOCH
2CH
2−、又は単結合を表し、q
3は0又は1を表し、q
4は0又は1を表す。(ただし、P
4−S
3、及びS
3−X
3は、−O−O−、−O−NH−、−S−S−及び−O−S−基を含まない。))を有していても良く、r1は0、1、2又は3を表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH
2 CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−OCOCH
2CH
2−、−C=N−、−N=C−、−CONH−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、−OCH
2CH
2O−、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数2〜10のアルキル基又は単結合を表し、r1が0または1の場合B1、及びZ1が複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。但し、r1が0の場合はZ
2は単結合ではなく、B
1またはB
3の置換基として一般式(1−c)を一つ有する場合はZ
1およびZ
2は単結合ではない。)。
【0056】
P
2、P
3及びP
4は、それぞれ独立して、下記の式(P−2−1)から式(P−2−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0058】
これらの重合性官能基のうち、重合性を高める観点から、式(P−2−1)、(P−2−2)、(P−2−7)、(P−2−12)、(P−2−13)が好ましく、式(P−2−1)、(P−2−2)がより好ましい。
【0059】
(単官能重合性液晶化合物)
前記一般式(1)で表される化合物のうち、分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物として、下記一般式(1−1)で表される化合物が好ましい。
【0061】
式中、P
2、S
1、X
1、q1及び、MGは、それぞれ、上記一般式(1)の定義と同じものを表し、R
21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素原子数1から12の直鎖若しくは分岐アルケニル基を表し、該アルキル基若しくは該アルケニル基の1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良く、また、該アルキル基、該アルケニル基の有する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基によって置換されても良く、複数置換されている場合それぞれ同一であっても、異なっていても良い。一般式(1−1)の例として、下記一般式(1−1−A)〜(1−1−D)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0063】
式中、P
2、S
1、X
1、及び、q1は、それぞれ、上記一般式(1)の定義と同じものを表し、B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(1−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(1−c)のZ1、Z2の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、R
21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は炭素原子数1から12の直鎖若しくは分岐アルケニル基を表し、該アルキル基若しくは該アルケニル基の1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CH=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−によって置換されても良く、また、該アルキル基、アルケニル基の有する1個又は2個以上の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基によって置換されても良く、複数置換されている場合それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
【0064】
上記一般式(1−1−A)〜(1−1−D)で表される化合物としては、以下の式(1−1−1)〜式(1−1−30)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0072】
式中、R
cは水素原子又はメチル基を表し、mは0〜18の整数を表し、nは0又は1を表し、R
21は、上記一般式(1−1−A)〜(1−1−D)の定義と同じものを表すが、R
21は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から6の直鎖アルキル基若しくは炭素原子数1から6の直鎖アルケニル基、又は該アルキル基若しくはアルケニル基の1個の−CH
2−が−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、によって置換されているものが好ましく、上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。
【0073】
分子内に1個の重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、0〜90質量%含有することが好ましく、0〜85質量%含有することがより好ましく、0〜80質量%含有することが特に好ましい。光学異方体の配向性を重視する場合には下限値を5質量%以上にすることが好ましく、10質量%以上にすることがより好ましく、塗膜の硬さを重視する場合には上限値を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましい。
【0074】
(2官能重合性液晶化合物)
前記一般式(1)で表される化合物のうち、分子内に2個の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物(2官能重合性液晶化合物)として、下記一般式(1−2)で表される化合物が好ましい。
【0076】
式中、P
2、S
1、X
1、q1、MG、X
2、S
2、q2、P
3は、それぞれ、上記一般式(1)および(1−a)の定義と同じものを表す。一般式(1−2)の例として、下記一般式(1−2−A)〜(1−2−D)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0078】
式中、P
2、S
1、X
1、q1、MG、X
2、S
2、q2、P
3は、それぞれ、上記一般式(1)および(1−a)の定義と同じものを表し、
B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(1−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(1−c)のZ1、Z2の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。
【0079】
上記一般式(1−2−A)〜(1−2−D)で表される化合物のうち、下記の一般式(1−2−4)〜(1−2−32)で表される、化合物中に3つ以上の環構造を有する化合物を用いると、得られる光学異方体の配向性が良好で、かつ硬化性も良好であるため好ましく、化合物中に3つの環構造を有する一般式(1−2−4)、(1−2−5)、(1−2−6)〜(1−2−13)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
【0080】
上記一般式(1−2−A)〜(1−2−D)で表される化合物としては、以下の式(1−2−1)〜式(1−2−32)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0087】
式中、R
d及びR
eは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。m1、m2はそれぞれ独立して0〜18の整数を表し、n1、n2、n3、n4はそれぞれ独立して0又は1を表す。
【0088】
2つの重合性官能基を有する液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができるが、1種〜6種が好ましく、2種〜6種がより好ましい。
【0089】
分子内に2個の重合性官能基を有する2官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、10〜100質量%含有することが好ましく、15〜85質量%含有することがより好ましく20〜80質量%含有することが特に好ましい。硬化物の剛直性や高反応性を重視する場合には下限値を30質量%以上にすることが好ましく、50質量%以上にすることがより好ましく、光学異方体の配向性を重視する場合には上限値を85質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましい。
【0090】
(多官能重合性液晶化合物)
3つ以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物としては、3つの重合性官能基を有する化合物を用いることが好ましい。前記一般式(1)で表される化合物のうち、分子内に3個の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物として、下記一般式(1−3)で表される化合物が好ましい。
【0092】
式中、P
2、S
1、X
1、q1、MG、X
2、S
2、q2、P
3、X
3、q3、S
3、q4、P
4、q5は、それぞれ、上記一般式(1)の定義と同じものを表す。一般式(1−3)の例として、下記一般式(1−3−A)〜(1−3−P)で表される化合物を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0099】
式中、P
2、S
1、X
1、q1、MG、X
2、S
2、q2、P
3、X
3、q3、S
3、P
4、X
4、S
4、q4、X
5、S
5、q5は、それぞれ、上記一般式(1)および(1−a)の定義と同じものを表し、
B11、B12、B13、B2、B3は、上記一般式(1−b)のB1〜B3の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良く、
Z11、Z12、Z13、Z2は、上記一般式(1−c)のZ1、Z2の定義と同じものを表し、それぞれ、同一であっても、異なっていても良い。
【0100】
上記一般式(1−3−A)〜(1−3−P)で表される化合物としては、以下の式(1−3−1)〜式(1−3−14)で表される化合物を例示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0106】
式中、R
f、R
g及びR
hは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
i、R
j及びR
kはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を表し、これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよく、上記環状基は、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数1〜8のアルカノイル基、炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケノイル基、炭素原子数2〜8のアルケノイルオキシ基を有していても良い。
m4〜m9はそれぞれ独立して0〜18の整数を表し、n4〜n9はそれぞれ独立して0又は1を表す。
【0107】
3個以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物は、1種又は2種以上用いることができる。
【0108】
分子内に3個以上の重合性官能基を有する多官能重合性液晶化合物の合計含有量は、用いる重合性液晶化合物の合計量のうち、0〜80質量%含有することが好ましく、0〜60質量%含有することがより好ましく、0〜40質量%含有することが特に好ましい。光学異方体の剛直性を重視する場合には、下限値を10質量%以上にすることが好ましく、20質量%以上にすることがより好ましく、30質量%以上にすることが特に好ましく、一方、低硬化収縮性を重視する場合には上限値を50質量%以下とすることが好ましく、35質量%以下とすることがより好ましく、20質量%以下とすることが特に好ましい。
【0109】
(液晶組成物)
本発明における液晶組成物において、第一成分として、以下の一般式(I)で表される化合物を25〜70質量%含有することが好ましく、30〜60質量%含有することがより好ましく、35〜50質量%含有することがさらに好ましく、38〜47質量%含有することが最も好ましい。
【0111】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Aは1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、lは1又は2を表すが、lが2の場合二つのAは同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(I)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、
炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、
炭素原子数2〜5のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又は炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基を表すことがより好ましく、
炭素原子数2〜5のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことが特に好ましい。R
1がアルキル基を表す場合においては、炭素原子数1、3又は5のアルキル基が特に好ましい。R
1がアルケニル基を表す場合においては以下の構造が好ましい。
【0113】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
上記構造中、炭素原子数2又は3のアルケニル基であるビニル基又は1−プロペニル基がさらに好ましい。
【0114】
上記一般式(I)において、R
1及びR
2は同一であっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましく、R
1及びR
2が共にアルキル基の場合、相互に異なった原子数の炭素原子数1、3又は5のアルキル基が特に好ましい。
R
1及びR
2の少なくとも一方の置換基が炭素原子数3〜5のアルキル基である、上記一般式(I)で表される化合物の含有量が、上記一般式(I)で表される化合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0115】
また、R
1及びR
2の少なくとも一方の置換基が炭素原子数3のアルキル基である、上記一般式(I)で表される化合物の含有量が、上記一般式(I)で表される化合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0116】
上記一般式(I)において、Aは1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すが、トランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すことが好ましい。また、Aがトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表す、上記一般式(I)で表される化合物の含有量が、上記一般式(I)で表される化合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0117】
上記一般式(I)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(Ia)から一般式(Ik)で表される化合物が好ましい。
【0119】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表すが、一般式(I)におけるR
1及びR
2と同様の実施態様が好ましい。)
上記一般式(Ia)から一般式(Ik)において、一般式(Ia)、一般式(Ib)及び一般式(Ig)が好ましく、一般式(Ia)及び一般式(Ig)がより好ましく、応答速度、焼付き特性の低減、並びに滴下痕の抑制をバランス良く改善するためには、一般式(Ia)が特に好ましいが、応答速度を重視する場合には一般式(Ib)も好ましく、より応答速度を重視する場合には、一般式(Ib)、一般式(Ie)、一般式(If)及び一般式(Ih)が好ましく、一般式(Ie)及び一般式(If)のジアルケニル化合物は特に応答速度を重視する場合に好ましい。
【0120】
これらの点から、上記一般式(Ia)及び一般式(Ig)で表される化合物の含有量が、上記一般式(I)で表される化合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。また、上記一般式(Ia)で表される化合物の含有量が、上記一般式(I)で表される化合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明の液晶組成物において、第二成分として、下記一般式(II)
【0123】
(式中、R
3は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、R
4は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表し、B及びDはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、Z
2は単結合、−OCH
2−、−OCO−、−CH
2O−又は−COO−を表し、mは0、1又は2を表すが、mが2の場合二つのBは同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0124】
式中のmは1又2であることが好ましい。
【0125】
mが1である一般式(II)で表される化合物として、具体的には、以下の一般式(II−1)、一般式(II−1’)及び一般式(II―2)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
(式中、R
3は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、R
4は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表す。)
上記一般式(II−1)及び一般式(II―2)において、R
3は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0128】
上記一般式(II−1)及び一般式(II―2)において、R
4は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
【0129】
上記一般式(II−1)及び一般式(II―2)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(II−1a)及び一般式(II−1b)で表される化合物が好ましい。
【0131】
(式中、R
3は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
4aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
上記一般式(II−1a)において、R
4は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
【0132】
上記一般式(II−1b)において、R
4は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
【0133】
上記一般式(II−1a)及び一般式(II−1b)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(II−1a)が好ましい。
【0134】
上記一般式(II−2a)において、R
4は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
【0135】
上記一般式(II−2b)において、R
4は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
【0136】
上記一般式(II−2a)及び一般式(II−2b)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(II−2a)が好ましい。
【0137】
本発明の液晶組成物において、一般式(II−1)及び一般式(II―2)で表される化合物を5〜30質量%含有することが好ましく、10〜25質量%含有することがより好ましく、12〜20質量%含有することがさらに好ましい。
【0138】
mが1である一般式(II)で表される化合物として、具体的には、以下の一般式(II−3)で表される化合物が挙げられる。
【0140】
(式中、R
5は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、R
6は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表し、Bは1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、Z
2は単結合、−OCH
2−、−OCO−、−CH
2O−又は−COO−を表す。)
上記一般式(II−3)において、R
5は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0141】
上記一般式(II−3)において、R
6は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
【0142】
上記一般式(II−3)において、Bはフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すが、無置換の1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0143】
上記一般式(II−3)において、Z
2は単結合、−OCH
2−、−OCO−、−CH
2O−又は−COO−を表すが、単結合又は−CH
2O−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
【0144】
上記一般式(II−3)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(II−3a)から一般式(II−3f)で表される化合物が好ましい。
【0146】
(式中、R
5は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
6aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表すが、一般式(II−3)におけるR
5及びR
6と同様の実施態様が好ましい。)
上記一般式(II−3a)から一般式(II−3f)において、R
5は一般式(II−3)における同様の実施態様が好ましい。
上記一般式(II−3a)から一般式(II−3f)において、R
6aは炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
【0147】
上記一般式(II−3a)から一般式(II−3f)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(II−3a)又は一般式(II−3e)が好ましく、Δnが大きい組成物においては一般式(II−3b)が好ましい。
【0148】
本発明の液晶組成物において、一般式(II−3)で表される化合物を20〜45質量%含有することが好ましく、25〜40質量%含有することがより好ましく、28〜38質量%含有することがさらに好ましい。
【0149】
本発明の液晶組成物において、第三成分として、以下の一般式(III)で表される化合物を含有することもできる。
【0151】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表し、E、F及びGはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレンを表し、Z
3は単結合、−OCH
2−、−OCO−、−CH
2O−又は−COO−を表し、nは0又は1を表す。)
上記一般式(III)において、R
7は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、
Eがトランス−1,4−シクロヘキシレンを表す場合、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましく、
Eがフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基を表す場合、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数4又は5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
【0152】
上記一般式(III)において、R
8は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数4〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すが、
Gがトランス−1,4−シクロヘキシレンを表す場合、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましく、
Gがフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基を表す場合、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数4又は5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
【0153】
上記一般式(III)において、R
7及びR
8がアルケニル基を表し、結合するF又はGがフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基を表す場合、炭素原子数4又は5のアルケニル基としては以下の式で表される構造が好ましい。
【0155】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
この場合においても、炭素原子数4のアルケニル基がさらに好ましい。
【0156】
上記一般式(III)において、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を表すが、Y
1及びY
2のいずれか一方はフッ素原子を表すことが好ましく、誘電率異方性の絶対値を重要視する場合には、Y
1及びY
2がいずれもフッ素原子を表すことが好ましい。
上記一般式(III)において、E、F及びGはそれぞれ独立して、フッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレンを表すが、無置換の1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレンを表すことが好ましい。
上記一般式(III)において、Z
2は単結合、−OCH
2−、−OCO−、−CH
2O−又は−COO−を表すが、単結合、−CH
2O−又は−COO−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
上記一般式(III)において、nは0又は1を表すが、Z
3が単結合以外の置換基を表す場合、0を表すことが好ましい。
上記一般式(III)で表される化合物は、nが0を表す場合、具体的には、以下の一般式(III−1a)から一般式(III−1h)で表される化合物が好ましい。
【0158】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表すが、一般式(III)におけるR
7及びR
8と同様の実施態様が好ましい。)
上記一般式(III)で表される化合物は、nが1を表す場合、具体的には、以下の一般式(III−2a)から一般式(III−2l)で表される化合物が好ましい。
【0160】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基を表すが、一般式(III)におけるR
7及びR
8と同様の実施態様が好ましい。)
【0161】
本発明の液晶組成物において、一般式(III)で表される化合物を5〜20質量%含有することが好ましく、8〜15質量%含有することがより好ましく、10〜13質量%含有することがさらに好ましい。
【0162】
本発明における液晶組成物は、上記一般式(I)から一般式(III)で表される化合物の組合せで構成されるものであるが、これらの組合せとしては次のような含有量が好ましい。
上記一般式(II−1)、一般式(II−2)及び一般式(II−1’)で表される化合物は共に、誘電率異方性が負であって、その絶対値が比較的大きい化合物であるが、液晶組成物における、これら化合物の合計含有量は、30〜65質量%が好ましく、40〜55質量%がより好ましく、43〜50質量%が特に好ましい。
【0163】
上記一般式(III)で表される化合物は、誘電率異方性については正の化合物も負の化合物も包含しているが、誘電率異方性が負であって、その絶対値が0.3以上の化合物を用いる場合、液晶組成物における、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−1’)及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量は、35〜70質量%が好ましく、45〜65質量%がより好ましく、50〜60質量%が特に好ましい。
また、本発明における液晶組成物は、上記一般式(I)で表される化合物を30〜50質量%含有することが好ましく、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−1’)及び一般式(III)で表される化合物を35〜70質量%含有することが好ましく、
上記一般式(I)で表される化合物を35〜45質量%含有することがより好ましく、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−1’)及び一般式(III)で表される化合物を45〜65質量%含有することがより好ましく、
上記一般式(I)で表される化合物を38〜42質量%含有することが特に好ましく、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−1’)及び一般式(III)で表される化合物を50〜60質量%含有することが特に好ましい。
また、一般式(II−1)、一般式(II−2)、一般式(II−1’)及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量は、液晶組成物全体に対して、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%が特に好ましい。
【0164】
本発明における液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)を幅広い範囲で使用することができるものであるが、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)は60〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましく、70〜85℃であることが特に好ましい。
【0165】
本発明における液晶組成物の誘電率異方性は、25℃において、−2.0〜−6.0であることが好ましく、−2.5〜−5.0であることがより好ましく、−2.5〜−3.5であることが特に好ましい。
【0166】
本発明における液晶組成物の屈折率異方性は、25℃において、0.08〜0.13であることが好ましいが、0.09〜0.12であることがより好ましい。さらに詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合、本発明における液晶組成物の屈折率異方性は、25℃において、0.10〜0.12であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合、本発明における液晶組成物の屈折率異方性は、25℃において、0.08〜0.10であることが好ましい。
【0167】
[液晶表示素子の製造方法]
次に、
図1を参照して、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明する。
【0168】
第一の基板11の共通電極14が形成された面及び第二の基板12の画素電極15が形成された面に、反応性基を有する重合性化合物及び垂直配向材料を含有する配向材料を塗布し、加熱することにより垂直配向膜16,17を形成する。
【0169】
ここでは、まず、第1の高分子化合物となる高分子化合物前駆体(重合性化合物)と、上記一般式(VI)及び一般式(V)で表される化合物の重合性化合物、更に必要に応じて、光重合性および光架橋性を有する化合物を含む配向材料を調製する。
【0170】
第1の高分子化合物がポリイミドの場合には、高分子化合物前駆体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物およびジイソシアネートの混合物や、ポリアミック酸や、ポリイミドを溶剤に溶解あるいは分散させたポリイミド溶液等が挙げられる。このポリイミド溶液中におけるポリイミドの含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0171】
また、第1の高分子化合物がポリシロキサンの場合には、高分子化合物前駆体としては、例えば、アルコキシ基を有するケイ素化合物、ハロゲン化アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコールおよびシュウ酸を所定の配合量比で混合して加熱することによりポリシロキサンを合成し、それを溶剤に溶解させたポリシロキサン溶液などが挙げられる。
なお、配向材料には、必要に応じて、光架橋性を有する化合物、光重合開始剤、溶剤などを添加してもよい。
【0172】
第一の高分子化合物がポリアクリレートやポリビニルアルコール等、溶媒に高分子を溶解した溶液の場合には、特に反応助剤を添加する必要はなく、上記一般式(1)で表される重合性化合物との混合物溶液を調整する。
【0173】
なお、配向材料には、必要に応じて、光架橋性を有する化合物、光重合開始剤、溶剤などを添加してもよい。
【0174】
本発明の重合性化合物を重合させるには、一般には紫外線等の光照射により行う。光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュア184」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュア1116」)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1(BASF社製「イルガキュア907」)。ベンジルメチルケタ−ル(BASF社製「イルガキュア651」)。2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ−ドプレキンソップ社製「カンタキュア−ITX」)とp−ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、アシルフォスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)、などが挙げられる。光重合開始剤の使用量は重合性化合物に対して10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0175】
また、光によりラジカルを発生する液晶性化合物を用いることもできる。このような液晶性化合物としては、アリールオキシカルボニル骨格を有する化合物を使用することが可能であり、液晶表示素子の電気特性を劣化させず好ましい。光によるアリールオキシカルボニル骨格を有する化合物のラジカル発生メカニズムを以下に示す。環Aは1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、アントラセン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基を表し、環Aに存在する水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシル基で置換されても良い。
【0177】
アリールオキシカルボニル骨格を有する化合物としては、以下の一般式(1’)で表される化合物が好ましい。
【0179】
式中、環A、B、Cは1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、アントラセン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基を表し、環A、B、Cに存在する水素原子は、ハロゲン原子、アルコキシル基で置換されても良い。X
1〜X
5はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CO−、−OCO−又は−COO−を表し、Z
1、Z
2は−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−COO−、−OCO−、又は−OCH
2CH
2O−を表す。ただし、X
1〜X
5、Z
1〜Z
2のうち少なくても1つは−COO−、−OCO−、又は−OCH
2CH
2O−であり、かつ−COO−、−OCO−中のカルボニル基中に含まれない酸素原子は1,4−フェニレン基、アントラセン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基に結合している。R
1〜R
5は、それぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜12のアルキレン基を表し、水素または該アルキル中の1個又は2個以上の水素原子は−Pで置換されていても良く、該アルキル中の1個または2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して−CH=CH−,−CO−,−O−、P−で置換されてもよく、Pは重合基を表す。n1〜n3は0、1、2、3又は4を表し、nは0、1、2又は3を表す。なお、上記一般式(1’)に含まれる化合物が、前記した一般式(I)に該当する場合は、当該化合物を前記一般式(I)で表される重合性化合物として使用することができる。
【0180】
前記光によりラジカルを発生する液晶性化合物は、重合性組成物と液晶組成物の全重量に対して0.1〜10質量%含有させることが好ましく、0.5〜5質量%含有させることがさらに好ましく、1.0〜3質量%含有させること特に好ましい。
【0181】
前記光によりラジカルを発生する機能を有する液晶性化合物は、重合性官能基を有しても、有していなくても良いが、素子の安定性・信頼性を確保する観点からは有していることが好ましい。この場合、1分子中に含まれる重合性官能基は1〜6個が好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。このような化合物は、重合性組成物と液晶組成物の全重量に対して0.1〜10質量%にすることが好ましく、1.5〜9%質量%にすることが更に好ましく、2〜8質量%含有することが特に好ましい。また、前記光によりラジカルを発生する機能を有する液晶性化合物は、液晶表示素子の低駆動電圧化を実現する観点からは重合性官能基を持っていない方が好ましい。この場合、最大添加量濃度は重合性液晶組成物中10質量%以下が好ましく、7質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。添加量が多いと液晶表示素子の安定性・信頼性や電圧保持率が悪化してしまう傾向がある。また、前記光によりラジカルを発生する機能を有する液晶性化合物として、重合性官能基を有する化合物と重合性官能基を有していない化合物を併用して使用してもよい。
【0190】
配向材料の調整後、この配向材料を、第一の基板11および第二の基板12のそれぞれに、共通電極14、並びに、画素電極15およびそのスリット部(図示略)を覆うように塗布あるいは印刷した後、加熱などの処理をする。これにより、塗布あるいは印刷された配向材料に含まれる高分子化合物前駆体が、重合および硬化して第1の高分子化合物となり、第1の高分子化合物と重合性化合物とが混在した垂直配向膜16,17が形成される。
【0191】
ここで、加熱処理する場合、その温度は、80℃以上が好ましく、150〜200℃がより好ましい。
【0192】
なお、第1の高分子化合物を含む配向制御部は、この段階において形成される。この後、必要に応じて、ラビングなどの処理を施してもよい。
【0193】
次に、第一の基板11と第二の基板12とを重ね合わせ、それらの間に、液晶分子を含む液晶組成物層13を封止する。
【0194】
具体的には、第一の基板11と第二の基板12のいずれか一方における、垂直配向膜16,17が形成されている面に対して、セルギャップを確保するためのスペーサ突起物、例えば、プラスチックビーズ等を散布すると共に、例えば、スクリーン印刷法によりエポキシ接着剤等を用いて、シール部を印刷する。
【0195】
この後、第一の基板11と第二の基板12とを、垂直配向膜16,17を対向させるように、スペーサ突起物およびシール部を介して貼り合わせ、液晶分子を含む液晶組成物を注入する。
【0196】
その後、加熱するなどして、シール部を硬化することにより、液晶組成物を、第一の基板11と第二の基板12との間に封止する。
【0197】
次に、共通電極14と画素電極15との間に、電圧印加手段を用いて、電圧を印加する。電圧は、例えば、1〜30(V)の大きさで印加する。これにより、第一の基板11における液晶組成物層13と隣接する面(液晶組成物層13と対向する面)、および、第二の基板12における液晶組成物層13と隣接する面(液晶組成物層13と対向する面)に対して所定の角度をなす方向の電場が生じ、液晶分子19が、第一の基板11と第二の基板12の法線方向から所定方向に傾いて配向することとなる。このとき、液晶分子19の傾斜角は、後述の工程で液晶分子19に付与されるプレチルトθと概ね等しくなる。従って、電圧の大きさを適宜調節することにより、液晶分子19のプレチルトθの大きさを制御することが可能である(
図3参照)。
【0198】
さらに、電圧を印加した状態のまま、紫外光UVを、例えば、第一の基板11の外側から液晶組成物層13に照射することにより、垂直配向膜16,17中の重合性化合物を重合させ、第2の高分子化合物を生成する。
【0199】
この場合、照射する紫外光UVの強度は一定であっても、一定でなくてもよく、照射強度を変化させる際の各々の強度における照射時間も任意であるが、2段階以上の照射工程を採用する場合には、2段階目以降の照射工程の照射強度は1段階目の照射強度よりも弱い強度を選択することが好ましく、2段階目以降の総照射時間は1段階目の照射時間よりも長くかつ照射総エネルギー量が大きいことが好ましい。また、照射強度を不連続に変化させる場合には、全照射工程時間の前半部分の平均照射光強度が後半部分の平均照射強度よりも強いことが望ましく、照射開始直後の強度が最も強いことがより望ましく、照射時間の経過と共にある一定値まで常に照射強度が減少し続けることがさらに好ましい。その場合の紫外線UV強度は2mW/cm
−2〜100mW/cm
−2であることが好ましいが、多段階照射の場合の1段階目、または不連続に照射強度変化させる場合の全照射工程中の最高照射強度は10mW/cm
−2〜100mW/cm
−2であること、かつ多段階照射の場合の2段階目以降、または不連続に照射強度を変化させる場合の最低照射強度は2mW/cm
−2〜50mW/cm
−2であることがより好ましい。また、照射総エネルギー量は1J〜300Jが好ましく、10J〜300Jであることが好ましいが、50J〜250Jであることがより好ましく、100J〜250Jであることがさらに好ましい。
【0200】
この場合、印加電圧は交流であっても直流であってもよい。
【0201】
その結果、垂直配向膜16,17の配向制御部と固着した、第2の高分子化合物を含む配向規制部(図示略)が形成される。この配向規制部は、非駆動状態において、液晶組成物層13における垂直配向膜16,17との界面近傍に位置する液晶分子19にプレチルトθを付与する機能を有する。なお、ここでは、紫外光UVを、第一の基板11の外側から照射したが、第二の基板12の外側から照射してもよく、第一の基板11および第二の基板12の双方の基板の外側から照射してもよい。
【0202】
このように、本発明の液晶表示素子では、液晶組成物層13において、液晶分子19が、所定のプレチルトθを有している。これにより、プレチルト処理が全く施されていない液晶表示素子およびそれを備えた液晶表示装置と比較して、駆動電圧に対する応答速度を大幅に向上させることができる。
【0203】
本発明の液晶表示素子において、垂直配向膜16,17を構成する高分子化合物前駆体としては、感光性でないポリイミド前駆体が好ましい。
【0204】
重合性化合物、特に上記一般式(VI)及び一般式(V)で表される化合物の、前記高分子化合物前駆体中における含有量の合計は、0.5〜4質量%であることが好ましく、1〜2質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0205】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0206】
以下の実施例及び比較例において、Tni、Δn、Δε、η、γ
1をそれぞれ下記の通り定義する。
【0207】
T
ni :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Δn :25℃における屈折率異方性
Δε :25℃における誘電率異方性
η :20℃における粘度(mPa・s)
γ
1 :25℃における回転粘度(mPa・s)
以下の実施例及び比較例において、下記の方法により、液晶表示素子の焼き付き、滴下痕、コントラストを評価した。
(焼き付き)
液晶表示素子の焼き付き評価は、表示エリア内に所定の固定パターンを1000時間表示させた後に、全画面均一な表示を行ったときの固定パターンの残像のレベルを目視にて以下の4段階評価で行った。
◎:残像無し
○:残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△:残像有り許容できないレベル
×:残像有りかなり劣悪
(滴下痕)
液晶表示装置の滴下痕の評価は、全面黒表示した場合における白く浮かび上がる滴下痕を目視にて以下の4段階評価で行った。
◎:残像無し
○:残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△:残像有り許容できないレベル
×:残像有りかなり劣悪
なお、実施例において化合物の記載について以下の略号を用いた。
(側鎖)
−nは、−C
nH
2n+1(炭素原子数nの直鎖状アルキル基)を表す。
−Onは、−OC
nH
2n+1(炭素原子数nの直鎖状アルコキシ基)を表す。
(環構造)
【0208】
【化60】
【0209】
(実施例1)
透明な共通電極からなる透明電極層及びカラーフィルター層を具備した第一の基板(共通電極基板)と、アクティブ素子により駆動される透明画素電極を有する画素電極層を具備した第二の基板(画素電極基板)とを作製した。
【0210】
画素電極基板において、各画素電極としては、液晶分子の配向を分割するため、画素電極に電極を有さないスリットが存在するように、ITOをエッチングしたものを用いた。
【0211】
共通電極基板及び画素電極基板のそれぞれに、ポリイミド前駆体及び重合性化合物を含む垂直配向膜材料をスピンコート法により塗布し、その塗布膜を200℃で加熱することにより、垂直配向膜材料中のポリイミド前駆体を硬化させ、各基板の表面に100nmの垂直配向膜を形成した。この段階において、その垂直配向膜において、反応性基を有する重合性化合物は硬化していない。
【0212】
垂直配向膜形成材料としては、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製 )に、以下の式(E−2−1)で表される重合性化合物及び式(E−2−2)で表される重合性化合物を前記ポリイミド前駆体中の含有量がそれぞれ1%となるように添加し、更に、重合性化合物に対して5%の光開始剤イルガキュア907(BASF社製)を添加したものを用いた。
【0213】
【化61】
【0214】
【化62】
【0215】
垂直配向膜を形成した共通電極基板及び画素電極基板に、以下に示す化学式で表される化合物を含有する液晶組成物を挟持した後、シール材を硬化させて、液晶組成物層を形成した。この際、厚さ4μmのスペーサを用いて、液晶組成物層の厚さを4μmとした。
【0216】
なお、以下に示す化学式において、(I)の群に属する化合物は、上記一般式(I)で表される化合物であり、(II)の群に属する化合物は、上記一般式(II)で表される化合物である。
【0217】
【化63】
【0218】
得られた液晶表示素子に、矩形の交流電場を印加した状態で紫外線を照射し、前記反応性基を有する重合性化合物を硬化させた。照射装置としては、ウシオ電機社製UIS−S2511RZと共に、紫外線ランプとして、ウシオ電機社製USH−250BYを用いて、20mWで10分間、液晶表示素子に紫外線を照射し、実施例1の液晶表示素子を得た。この工程により、反応性基を有する重合性化合物の重合体を含む垂直配向膜が形成され、液晶組成物層中の液晶分子にプレチルト角が付与される。
【0219】
ここで、プレチルト角は、
図3に示すように定義される。完全な垂直配向をしている場合、プレチルト角(θ)は90°となり、プレチルト角が付与された場合、プレチルト角(θ)は90°より小さくなる。
【0220】
実施例1の液晶表示素子は、
図2に示すような画素電極のスリットに従って、4つの区画において異なった方向にプレチルト角を有し、前記重合性化合物の硬化後、交流電場を切った状態でもプレチルト角が維持された。維持されたプレチルト角は87°であった。
【0221】
このように得られた実施例1の液晶表示素子は、表1に示すように、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0222】
【表1】
【0223】
(実施例2)
垂直配向膜形成材料として、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製 )に、式(E−2−3)で表される重合性化合物及び式(E−1−1)で表される重合性化合物を前記ポリイミド前駆体中の含有量がそれぞれ1%となる溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の液晶表示素子を得た。
【0224】
【化64】
【0225】
【化65】
【0226】
実施例2の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表2に示す。
その結果、実施例2の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と比較して若干劣るものの、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0227】
【表2】
【0228】
(実施例3)
垂直配向膜形成材料として、ポリイミド前駆体を3%含有するポリイミド溶液(商品名:JALS2131−R6、JSR社製 )に、以下の式(E−2−4)で表される重合性化合物及び式(E−3−1)で表される重合性化合物を前記ポリイミド前駆体中の含有量がそれぞれ2%及び1%となる溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の液晶表示素子を得た。
【0229】
【化66】
【0230】
【化67】
【0231】
実施例3の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表3に示す。
その結果、実施例3の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と比較して若干劣るものの、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0232】
【表3】
【0233】
(実施例4)
表4に示す組成からなる液晶組成物を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の液晶表示素子を得た。
実施例4の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表4に示す。
【0234】
【表4】
【0235】
その結果、実施例4の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と比較して若干劣るものの、比較的優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0236】
(実施例5)
表5に示す組成からなる液晶組成物を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の液晶表示素子を得た。
実施例5の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き、滴下痕及び応答速度を測定した。結果を表5に示す。
【0237】
【表5】
【0238】
その結果、実施例5の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と比較して若干劣るものの、比較的優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0239】
(実施例6)
表6に示す組成からなる液晶組成物を調製し、その液晶組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6の液晶表示素子を得た。
実施例6の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表6に示す。
【0240】
【表6】
【0241】
その結果、実施例6の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と比較して若干劣るものの、比較的優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0242】
(実施例7)
光開始剤イルガキュア907の代わりに重合性化合物RV−3を前記ポリイミド前駆体中の含有量が1%となる溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7の液晶表示素子を得た。
【0243】
実施例7の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表7に示す。その結果、実施例7の液晶表示素子は、実施例1の液晶表示素子と同様に、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0244】
【表7】
【0245】
(実施例8)
光開始剤イルガキュア907の代わりに重合性化合物RV−3を前記ポリイミド前駆体中の含有量が1%となる溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、実施例8の液晶表示素子を得た。
実施例8の液晶表示素子について、実施例2と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表8に示す。その結果、実施例8の液晶表示素子は、実施例2の液晶表示素子と同様に、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0246】
【表8】
【0247】
(実施例9)
光開始剤イルガキュア907の代わりに重合性化合物RV−3を前記ポリイミド前駆体中の含有量が1%となる溶液を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例9の液晶表示素子を得た。
実施例9の液晶表示素子について、実施例3と同様にして、焼き付き及び滴下痕を測定した。結果を表8に示す。その結果、実施例8の液晶表示素子は、実施例3の液晶表示素子と同様に、優れた応答速度を示し、滴下痕が発生し難く、焼き付きの点でも優れていることが明らかとなった。
【0248】
【表9】
【0249】
(比較例1)
重合性化合物として、式(E−2−1)で表される化合物に替えて、一般式(1)を満たさない下記の式(C−1−1)で表される化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の液晶表示素子を得た。
【0250】
【化68】
【0251】
比較例1の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼付き、滴下痕及び応答速度を測定した。結果を表10に示す。
【0252】
【表10】
【0253】
その結果、比較例1で調製した液晶表示素子は実施例1に比べて滴下痕評価、焼付き評価、応答速度において劣っていた。
【0254】
(比較例2)
重合性化合物として、式(E−2−1)及び式(E−2−2)で表される化合物に替えて、式(C−2−1)及び式(E−1−1)で表される化合物をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の液晶表示素子を得た。
【0255】
比較例2の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼付き、滴下痕及び応答速度を測定した。結果を表11に示す。
【0256】
【表11】
【0257】
その結果、比較例2で調製した液晶表示素子は実施例1に比べて滴下痕評価、焼付き評価、応答速度において劣っていた。
【0258】
(比較例3)
重合性化合物として、式(E−2−1)及び式(E−2−2)で表される化合物に替えて、式(E−3−1)及び式(E−1−1)で表される化合物をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の液晶表示素子を得た。
【0259】
比較例3の液晶表示素子について、実施例1と同様にして、焼付き、滴下痕及び応答速度を測定した。結果を表12に示す。
【0260】
【表12】
【0261】
その結果、比較例3で調製した液晶表示素子は実施例1に比べて応答速度が劣っていた。