【実施例】
【0038】
1.新規L-アミノ酸オキシダーゼ生産菌のスクリーニング
本発明者は、リジン側鎖のε位にあたるアミノ基にも充分に作用でき、多種類の蛋白質やペプチドが基質となるL-アミノ酸オキシダーゼを見出すべく、以下のスクリーニングを実施した。
【0039】
スクリーニングの実施にあたり、アミノ酸の酸化によって生成する過酸化水素を定量することで酵素活性を評価した。以下、測定方法を、基質としてβ−ラクトグロブリンを用いた場合を例にとって説明する。適量の酵素抽出液に対し、4 mg/mlのβ−ラクトグロブリン、0.6μmol/mlの4-aminoantipyrine (4-AA)、1.94μmol/mlのN-ethyl-N-(2-hydroxy-3-sulfopropyl)-3-methylaniline sodium salt dehydrate (TOOS)、6.7 ユニット/mlのペルオキシダーゼ、0.1 mmol/mlのリン酸カリウム(pH7.0)を含む溶液を標準反応溶液とした。標準反応溶液に酵素が加えられた時点を測定の開始時とし、30℃、5分間の反応条件下で生成した過酸化水素をペルオキシダーゼの作用により4-AA及びTOOSと酸化縮合反応させる。この反応で得られる生成物は555 nmに極大吸収波長をもつため、555nmの吸光度を測定することで過酸化水素の生成量を求めることができる。1分間当たり1μモルの過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素量を1ユニットと定義し、酵素活性を算出した。基質を他の蛋白質、アミノ酸、アミノ酸誘導体等に換えることで、各基質に対する酵素活性を測定することができる。
【0040】
スクリーニングは以下の通り実施した。N
α-Z-L-リジン培地(培地組成:0.5% N
α-Z-L-リジン、0.5% グルコース、0.2% KH
2PO
4、0.1% Na
2HPO
4、0.05% MgSO
4・7H
2O、pH 7.0)を用いて土壌サンプルの濃縮培養を行なった。濃縮培養により得られた菌株を単離し、5mlのN
α-Z-L-リジン培地にて30℃で3日間、試験管培養を行なった。菌体培養液から菌体を回収した後、マルチビーズショッカー(安井器械株式会社製)にて菌体を5℃、8分間破砕後、菌体破砕液中のL-アミノ酸オキシダーゼ活性を、N
α-Z-L-リジン、β−ラクトグロブリン及びゼラチンを基質にして測定した。結果として、L-アミノ酸オキシダーゼ活性を有する菌株を5株得た。これらの株はN
α-Z-L-リジン、β−ラクトグロブリン、ゼラチンの何れに対してもL-アミノ酸オキシダーゼ活性を示した。この5株の内、No.027と名付けた菌株が、ゼラチンとβ−ラクトグロブリンを基質とした場合に強いL-アミノ酸オキシダーゼ活性を示したため、当該菌株の同定を行うことにした。
【0041】
No.027株の同定のためリボソームDNA解析を行った。No.027株を培養し、菌体を回収した。回収菌体からゲノムDNAを回収し28SリボソームDNAのD1/D2領域の解析を行なった。その結果、No.027株の28SリボソームDNAのD1/D2領域の塩基配列はペニシリウム ステッキイ(Penicillium steckii)NRRL35367ペニシリウム ステッキイ(Penicillium steckii)NRRL35625、ペニシリウム ステッキイ(Penicillium. steckii) NRRL354633及びペニシリウム ステッキイ(Penicillium steckii)KUC1681-1の配列と完全に一致した。また、ペニシリウム トロピカム(Penicillium tropicum) NRRL35470(EU427292)の配列とは99.3%一致した。更に、リボソームDNAのITS-5.8S領域の配列はペニシリウム ステッキイ(Penicillium steckii)NRRL354633及びKUC1681-1と完全に一致し、ペニシリウム ステッキイ(Penicillium steckii)NRRL35367の配列とは99.5%一致した。
【0042】
次に、No.027株の菌体形態学的観察を行った。No.027株をポテトデキストロース寒天培地及びオートミール寒天培地で25℃、7日間培養したところ、良好な増殖を示し、ポテトデキストロース寒天培地上では灰色がかった緑の淡い緑色を呈したビロード状の、オートミール寒天培地上では灰色がかった緑の灰白色を呈したビロード状のコロニーを形成した。更に顕微鏡観察の結果、栄養菌糸には中隔があり、分生子柄は菌糸から生じており、その表面は滑らかであった。また、ほうき状体は二輪生、メトレは分生胞子の頂端から生じており、フィアライドはアンプル形、分生子は準内生型でかつ滑面であった。以上の形態学的な特徴とリボソーム遺伝子の解析結果から、No.027株はペニシリウム ステッキイに属すると結論付けられた。よって、本No.027株をペニシリウム ステッキイAIU 027と命名した。
【0043】
2.ペニシリウム ステッキイAIU 027のL-アミノ酸オキシダーゼ生産条件の検討
ペニシリウム ステッキイAIU 027のスクリーニングは、窒素源としてL-リジンの誘導体であるN
α-Z-L-リジンを用いる特殊な条件で行った。本L-アミノ酸オキシダーゼの生産に窒素源の種類が影響している可能性が考えられたことから、単一窒素源としてL-リジン、N
α-Z-L-リジン、硝酸アンモニウム又は硫酸アンモニアを用い、ペニシリウム ステッキイAIU 027を培養した。培養後に回収した菌体から酵素を抽出し、酵素活性の違いを検討した。N
α-Z-L-リジン培地(培地組成:0.5% N
α-Z-L-リジン、0.5% グルコース、0.2% KH
2PO
4、0.1% Na
2HPO
4、0.05% MgSO
4・7H
2O、pH 7.0)の窒素源をL-リジン、N
α-Z-L-リジン、硝酸アンモニウム又は硫酸アンモニアに置き換えた培地(以下、各培地をL-リジン培地、N
α-Z-L-リジン培地、硝酸アンモニウム培地、硫酸アンモニア培地と呼ぶ)を調製し、ペニシリウム ステッキイAIU 027株を培養し、菌体中の酵素活性をβ−ラクトグロブリンを基質として測定した。その結果、硝酸アンモニウム培地又は硫酸アンモニア培地ではL-アミノ酸オキシダーゼ活性が検出できなかった。L-リジン培地又はN
α-Z-L-リジン培地ではL-アミノ酸オキシダーゼ活性を検出でき、L-リジン培地の場合の方がN
α-Z-L-リジン培地の場合よりも酵素活性が高かった。以上より、ペニシリウム ステッキイ AIU027株のL-アミノ酸オキシダーゼの生産は窒素源の種類に影響を受け、L-リジンやN
α-Z-L-リジンで生産が誘導されることが明らかとなった。
【0044】
3.L-アミノ酸オキシダーゼ生産の経時的変化の検討
ペニシリウム ステッキイAIU 027株のL-アミノ酸オキシダーゼ生産の経時的変化を検討した。ペニシリウム ステッキイAIU 027株を以下の通り培養した。500mlフラスコを用い、150mlのL-リジン培地でペニシリウム ステッキイAIU 027株を30℃、2日間振とう培養(115 strokes/min)した。培養後の培養液200mlを3Lフラスコに移し、2LのL-リジン培地を添加して30℃、4日間培養した。経時的に菌体を回収し、菌体中のL-アミノ酸オキシダーゼ活性をβ−ラクトグロブリンとサケゼラチンを基質として測定した。β−ラクトグロブリンとサケゼラチンを基質とした活性測定のいずれにおいても、L-アミノ酸オキシダーゼ活性は培養開始後1日目から上昇し始め3日目に最大値を示し、4日目には3日目の活性よりも低下した(
図1)。酵素活性の上昇に伴い培地pHは7から次第に低下した。菌体量は酵素活性が最大になった3日目以降も増加し、培養4日目までは低下しなかった。以上より、菌体培養3日目に酵素生産量が最大になると考えられた。
【0045】
4.ペニシリウム ステッキイAIU 027株培養液からの酵素の精製
ペニシリウム ステッキイAIU 027株由来のL-アミノ酸オキシダーゼの酵素学的な特性を解析するため、酵素の精製を行った。菌体の培養と回収は次のように行った。500mlフラスコを用い、150mlのL-リジン培地(0.5% L-リジン、0.5% グルコース、0.2% KH
2PO
4、0.1% Na
2HPO
4、0.05% MgSO
4・7H
2O、pH 7.0)でペニシリウム ステッキイAIU 027株を30℃、2日間振とう培養(115ストローク/分)した。培養後の培養液200mlを3Lフラスコに移し、2LのL-リジン培地を添加し、更に30℃、3日間培養を行った。培養後、菌体をろ過により回収し、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)で洗浄後、−30℃で保存した。38LのL-リジン培地での培養に相当する菌体から酵素を精製した。酵素精製の全操作は5℃〜10℃の温度条件下で行った。また、緩衝液はリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いた。まず最初に菌体(湿潤重量66g)を560 mlの10 mMリン酸カリウム緩衝液に懸濁し、マルチビーズショッカー(安井器械社製)にて破砕した。遠心分離(10,000×g、10分)後、上清を回収し、残った菌体破砕物を500 mlの別の10 mMリン酸カリウム緩衝液に懸濁し、遠心分離により上清を回収した。この操作を繰り返し、合計3回の菌体破砕物からの抽出を行った。得られた抽出物をまとめて合計1,900 mlの溶液とした。この抽出液に対し309 gの硫酸アンモニウムを加えて40%飽和溶液とし、硫安沈殿を行った。沈殿物は遠心分離(10,000×g、10分)により取り除いた。遠心分離の上清を、2.0M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液で平衡化したPhenyl-Toyopearlカラム(20 cm×直径2.5 cm)に供した。2.0M硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液でカラムを洗浄後、吸着成分を1.5M 硫酸アンモニアを含む10 mM リン酸緩衝液で溶出し、酵素活性を確認した。酵素活性が確認された画分を集めてゲルろ過で脱塩処理した。このようにして得られた酵素活性画分を、40mMリン酸緩衝液で平衡化したDEAE-Toyopearlカラム(20 cm×直径2.5 cm)に供した。40mMリン酸緩衝液でカラムを洗浄後、カラムに吸着した酵素成分を40 mM リン酸カリウム緩衝液と0.12 M食塩を含む40mMリン酸カリウム緩衝液を用いた食塩のグラジエントで溶出させた。溶出した酵素画分を30 mMのリン酸緩衝液で透析処理した。次に、透析処理した画分を、50mMリン酸カリウム緩衝液で平衡化されたAminooctyl-Toyopearlカラム(10 cm×直径2.5 cm)に供した。50mMリン酸緩衝液でカラムを洗浄後、カラムに吸着された酵素成分を50 mMリン酸カリウム緩衝液と0.2 M食塩を含む50mMリン酸カリウム緩衝液を用いた食塩のグラジエントで溶出した。酵素活性を示した画分を回収し、10mMリン酸カリウム緩衝液で透析処理を行った。更に、透析処理した酵素画分を、20 mMリン酸緩衝液で平衡化したヒドロキシアパタイトカラム(38 cm×直径1.0 cm)に供した。カラムを20 mMリン酸緩衝液で洗浄後、カラムに吸着された酵素成分を、20 mMリン酸カリウム緩衝液と0.12 M食塩を含む20mMリン酸カリウム緩衝液を用いた食塩のグラジエントで溶出した。酵素活性を示した画分を集め、限外ろ過により0.8mlまで濃縮した。次に、濃縮された酵素画分を、50mMリン酸カリウム緩衝液で平衡化したToyopearl HW-55 カラム(53 cm×直径1.3 cm)に供し、酵素活性を示す画分を回収した。精製結果を
図2の表に示す。
【0046】
5.分子量の測定
精製酵素の分子量を推定するためにSDS-PAGEを実施した。SDS-PAGEはLaemmliの方法(Laemmli, U. K.: Cleavage of structure proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature, 227, 680-685 (1970).)に従い行った。ゲルの染色にはCoomassie Brilliant Blue R-250を用いた。分子量推定に用いるマーカー蛋白質には標準分子量マーカー(Standard markers of molecular mass(Sigma-Aldrich))を用いた。SDS-PAGEの結果を
図3左に示した。SDS-PAGEの分析では、精製酵素は約75.3KDaのフラグメントからなると推察された。
【0047】
更に、ゲルろ過で分子量の解析を進めた。ゲルろ過にはTSK gel G3000SWXLを用いた。マーカータンパク質の移動度から、精製酵素は290KDaの大きさのタンパク質として存在することがわかった(
図3右)。SDS-PAGEの結果と併せ、本酵素は4量体として存在しているものと結論付けられた。
【0048】
6.補酵素の特定
本酵素の補酵素を特定するために精製酵素の吸収波長を調べた。その結果、波長275nm、390nm及び460 nmで吸収を観察した。この結果から、本酵素はフラビンを補酵素として含有すると考えられた。更に、ICPEスペクロメトリーにより、本酵素は鉄原子を含有していると考えられた。
【0049】
7.等電点の分析
Pharmalyteを用いた等電点電気泳動の結果より、精製酵素の等電点はpH 3.2であった。
【0050】
8.ペニシリウム ステッキイ AIU 027株由来L-アミノ酸オキシダーゼのN末端アミノ酸解析
精製酵素のアミノ酸配列を解析した。その結果、アミノ酸配列ENIADVADAMGPWFDGVAYM(配列番号1)を持つ酵素であることが判明した。本配列を有する微生物由来L-アミノ酸オキシダーゼの報告はなく、本酵素が新規の酵素であることが判明した。本配列は本酵素成熟体のN末端配列と考えられた。
【0051】
9.至適pHとpH安定性
本酵素の至適pHとpH安定性を検討した。至適pH検討にはpH5.0〜8.5域では0.2Mリン酸カリウム緩衝液、pH8.5〜9.0では0.2MのH
3BO
3-KCl-NaOH緩衝液を使用した。酵素活性はβ−ラクトグロブリンを基質として測定した。測定結果を
図4に示した。酵素の至適pHは7〜8と推定された。
【0052】
各pHの緩衝液(上記緩衝液を使用)を40℃で30分間加温した後、β−ラクトグロブリンを基質として残存活性を測定することにより、pH安定性を検討した。結果を
図4に示した。本酵素はpH5〜6で安定であると結論した。
【0053】
10.至適温度と温度安定性
至適温度を検討するため、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用い、各温度での酵素活性を測定した。酵素活性はβ−ラクトグロブリンを基質として測定した。結果を
図5に示した。至適温度は50〜55℃であり、60℃で急激に酵素活性を示さなくなった。温度安定性を検討するため、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中、各温度で30分間加熱後、β−ラクトアルブミンを基質として酵素活性を測定した。結果を
図5に示した。20〜40℃で安定であり、活性は80%以上保持されていた。50℃以上で酵素は急激に失活した。
【0054】
11.阻害剤の影響
各種金属、キレート剤又はその他の化合物の酵素活性への影響を調べた。酵素活性測定系に各化合物を1mM濃度で添加後、酵素活性を測定し、各化合物による酵素活性への影響を調べた。結果を
図6の表に示した。12種類の化合物について調べた結果、カルボニル化合物(ヒドロキシルアミンやフェニルヒドラジン)によりL-アミノ酸オキシダーゼ活性が強く阻害された。α,α’-ジピリジル(Dipyridyl)や8-ヒドロキシキノリンなどのキレート剤もまたL-アミノ酸オキシダーゼ活性を阻害した。金属ではFeCl
3がL-アミノ酸オキシダーゼ活性を強く阻害した。
【0055】
12.基質特異性
各種基質に対する本酵素の反応性を調べた。各種アミノ酸誘導体40mM溶液、又は各種アミノ酸基質1mMを用い、様々な基質に対する反応性を調べた。また、ポリ-L-リジン、フィッシュコラーゲンペプチド及びサケゼラチンについても、Toyopearl HW-55カラム(53 cm×直径1.3 cm)を使用してこれらの蛋白質を分画し、メインピークを集めて基質とし、反応性を調べた。ポリ-L-リジン、フィッシュコラーゲンペプチドI、フィッシュコラーゲンペプチドII及びサケゼラチンの分子量はTSK gel G3000SW
XLカラムを用いたゲルろ過で算出した。
【0056】
結果を
図7の表に示した。本酵素はβ−ラクトグロブリン、ミオグロビン、サケゼラチン、L-リジンを含め、各種蛋白質及び各種ペプチドに作用した。また、本酵素はN
α-アセチルL-リジン、N
ε-アセチルL-リジン、そしてN
α-Z-L-オルニチンに良く作用した。一方で、本酵素はN
α-Z-L-グルタミン、N
α-Z-L-アスパラギン及びN
α-Z-L-アルギニンには作用しなかった。フリーアミノ酸については、L-リジン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-アルギニン、L-オルニチン及び芳香族L-アミノ酸に対しては良く反応したが、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-セリン、L-バリン、L-システイン、L-アスパラギン酸、L-プロリン、グリシン、D-アミノ酸、モノアミン、ジアミン及びアミノアルコールに対しても作用しなかった。以上より、本酵素はLアミノ酸に特異的に作用し、アミノ酸のα-アミノ基とL-リジンのε-アミノ基を脱アミドする活性を持つことがわかった。L-リジン、L-リジン誘導体に加え、これらを含むペプチドや蛋白質も基質になることが判明した。
【0057】
13.各種基質に対するKm値の比較
L-リジン、N
α-Z-L-リジン及びN
ε-Z-L-リジンに対するKm値を求め、L-リジンとL-リジン誘導体の各アミノ基(α-アミノ基、ε-アミノ基)に対するKm値を比較した。各種蛋白質、ペプチドにおけるリジン残基に対する作用を検討するためにKmとVmaxを算出した。0.055〜0.66 mMのβ−ラクトグロブリン、0.07〜0.55 mMのポリ-L-リジン、0.0021〜0.025 mMのフィッシュコラーゲンペプチドI、0.0018〜0.018 mMのフィッシュコラーゲンペプチドII、0.6〜20 mMのサケゼラチン、5.0〜80 mMのGly-Lys、5.0〜80 mMのAla-Lysを基質に用い、KmとVmaxを算出した。ポリ-L-リジン、フィッシュコラーゲンペプチド及び サケゼラチンToyopearl HW-55カラム(53 cm×直径1.3 cm)にて分画し、メインピークを集めて基質とした。ポリ-L-リジン、フィッシュコラーゲンペプチドI、フィッシュコラーゲンペプチドII及びサケゼラチンの分子量はTSK gel G3000SW
XLカラムを用いたゲルろ過で算出した。
【0058】
N
ε-Z-L-リジン及びL-リジンに対する見かけのKm値はそれぞれ7.0μM及び10μMと推算され、N
α-Z-L-リジンに対するKm値(26.5 mM)に比べ著しく低かった。L-オルニチンとN
α-Z-L-オルニチンを基質とした場合、見かけのKm値はそれぞれ17μMと56.4 mMと推算され、L-リジンとN
α-Z-L-リジンの場合と同様の傾向であった(
図8の表)。これらの結果より、本酵素はL-リジンのα−アミノ基に優先的に結合し、反応すると考えられた。
【0059】
一方、β-ラクトグロブリン、フィッシュコラーゲンペプチドとサケペプチドに対するKm値は、N
α-Z-L-リジン及びAla-LysやGly-Lysなどのリジンを含むジペプチドに対するKm値よりもはるかに低い値であった(
図8の表)。これらの結果から、本酵素は、N
α-Z-L-リジンや低分子ペプチドのε−アミノ基よりは、分子量の大きなペプチドのε−アミノ基に優先的に結合する性質を有することがわかった。
【0060】
以上の通り、L-リジンを含む蛋白質や高分子ペプチドにおけるリジン残基のε−アミノ基を効率的に酸化するという、ユニークな性質を本酵素が有することが判明した。