【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は鋭意検討の結果、銅粉とアミノシラン水溶液を混合して、アミノシランを銅粉表面に吸着させることで、表面処理後の凝集がなく、焼結遅延性が劇的に向上することを見出して、本発明に到達した。この操作は、非常に簡単であり、高度な技能を必要とせず、作業性に優れ、生産性に優れている。また、このようにして得られた表面処理された銅粉は、粒子の小さい銅粉であるにもかかわらず、高い焼結開始温度を示すものとなっていた。さらに、銅粉以外の金属粉を同様に表面処理した場合にも、アミノシラン以外のカップリング剤によって表面処理した場合にも、同様に優れた特性の表面処理された金属粉を得られることがわかった。
【0016】
したがって、本発明は、次の(1)〜(26)にある。
(1)
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Si厚みが1〜25nmである、表面処理された銅粉。
(2)
Si厚みが、全原子に対するSi原子の存在比が最大となる深さでのSi原子の存在量を100%としたときに、Si原子の存在量が10%以上である範囲である、(1)に記載の銅粉。
(3)
銅粉が、シランカップリング剤で表面処理された銅粉である、(1)又は(2)に記載の銅粉。
(4)
シランカップリング剤がアミノシランである、(3)に記載の銅粉。
(5)
焼結開始温度が400℃以上である(1)〜(4)のいずれかに記載の銅粉。
(6)
(1)〜(5)の何れかに記載の銅粉を熱処理してNを除去した銅粉。
(7)
酸素雰囲気または不活性雰囲気下で(1)〜(6)のいずれかに記載の銅粉を熱処理して得られる銅粉。
(8)
アミノシランの水溶液と銅粉を混合、攪拌後に乾固して得られる(1)〜(7)のいずれかに記載の銅粉。
(9)
銅粉1 gに対して、表面処理に供するアミノシランの量が0.01 mL以上である(1)〜(8)のいずれかに記載の銅粉。
(10)
アミノシランの量が0.05 mL以上で、銅粉との混合、攪拌時間が30分以下である(9)に記載の銅粉。
(11)
アミノシランがモノアミノシラン又はジアミノシランである(1)〜(10)のいずれかに記載の銅粉。
(12)
原料銅粉が湿式法で得られた(1)〜(11)のいずれかに記載の銅粉。
(13)
D50≦1.5μmである(1)〜(12)のいずれかに記載の銅粉。
(14)
D50≦1.0μmである(1)〜(12)のいずれかに記載の銅粉。
(15)
D50≦0.5μm、Dmax≦1.0μmである(1)〜(12)のいずれかに記載の銅粉。
(16)
粒度分布が一山である(1)〜(15)のいずれかに記載の銅粉。
(17)
(1)〜(16)のいずれかに記載の特徴を備えた内部電極用銅粉。
(18)
(1)〜(16)のいずれかに記載の特徴を備えた外部電極用銅粉。
(19)
(1)〜(18)のいずれかに記載の銅粉が、さらに有機化合物で表面処理されてなる、表面処理された銅粉。
(20)
(1)〜(19)のいずれかに記載の銅粉を使用した導電性ペースト。
(21)
(20)のペーストを使用して製造されたチップ積層セラミックコンデンサー。
(22)
内部電極断面に直径が10nm以上のSiO
2が存在している、(21)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(23)
内部電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2が0.5個/cm
2以下で存在している、(21)又は(22)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(24)
(21)〜(23)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを最外層に実装した多層基板。
(25)
(21)〜(23)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを内層に実装した多層基板。
(26)
(24)又は(25)に記載の多層基板を搭載した電子部品。
【0017】
また、本発明は、次の(31)〜(50)にもある。
(31)
銅粉を、アミノシラン水溶液と混合して、銅粉分散液を調製する工程、
を含む、表面処理された銅粉を製造する方法。
(32)
銅粉分散液を撹拌する工程を含む、(31)に記載の方法。
(33)
銅粉分散液を超音波処理する工程を含む、(31)又は(32)に記載の方法。
(34)
超音波処理する工程が、1〜180分間の超音波処理を行う工程である、(33)に記載の方法。
(35)
銅粉分散液をろ過して銅粉を回収する工程、
ろ過して回収された銅粉を乾燥して、表面処理された銅粉を得る工程、
を含む、(31)〜(34)のいずれかに記載の方法。
(36)
乾燥が、50〜90℃で30〜120分間の加熱処理によって行われる、(35)に記載の方法。
(37)
乾燥が、酸素雰囲気又は不活性雰囲気下で行われる、(35)又は(36)に記載の方法。
(38)
銅分散液が、銅粉1gに対してアミノシラン0.025g以上を含んでいる、(31)〜(37)のいずれかに記載の方法。
(39)
アミノシラン水溶液が、次の式I:
H
2N−R
1−Si(OR
2)
2(R
3) (式I)
(ただし、上記式Iにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、C1〜C5のアルキル基であり、
R3は、C1〜C5のアルキル基、又はC1〜C5のアルコキシ基である。)
で表されるアミノシランの水溶液である、(31)〜(38)のいずれかに記載の方法。
(40)
R1が、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の複素環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の芳香族炭化水素の二価基、からなる群から選択された基である、(39)に記載の方法。
(41)
R1が、 −(CH
2)
n−、−(CH
2)
n−(CH)
m−(CH
2)
j-1−、−(CH
2)
n−(CC)−(CH
2)
n-1−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−NH−(CH
2)
j−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−NH−(CH
2)
j− からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)、(39)に記載の方法。
(42)
R1が、−(CH
2)
n−、又は−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−である、(39)に記載の方法。
(43)
n、m、jが、それぞれ独立に、1、2又は3である、(41)〜(42)のいずれかに記載の方法。
(44)
R2が、メチル基又はエチル基である、(39)〜(43)のいずれかに記載の方法。
(45)
R3が、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基である、(39)〜(44)のいずれかに記載の方法。
(46)
銅粉が、湿式法によって製造された銅粉である、(31)〜(45)のいずれかに記載の方法。
(47)
(31)〜(46)のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された銅粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性銅ペーストを製造する方法。
(48)
(31)〜(46)のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された銅粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性銅ペーストを得る工程、
導電性銅ペーストを基材に塗布する工程、
基材に塗布された導電性銅ペーストを加熱焼成する工程、
を含む、電極を製造する方法。
(49)
電極が、チップ積層セラミックコンデンサー用電極である、(48)に記載の方法。
(50)
表面処理された銅粉を、さらに有機化合物で表面処理する工程、
を含む、(31)〜(49)のいずれかに記載の方法。
【0018】
また、本発明は、次の(51)〜(54)にもある。
(51)
(31)〜(46)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、表面処理された銅粉。
(52)
(45)に記載の製造方法によって製造された、導電性銅ペースト。
(53)
(46)に記載の製造方法によって製造された、電極。
(54)
(47)に記載の製造方法によって製造された、チップ積層セラミックコンデンサー用電極。
【0019】
また、本発明は、次の(61)〜(63)にもある。
(61)
(31)〜(46)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、表面処理された銅粉であって、
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Si厚みが1〜25nmであり、
焼結開始温度が400℃以上である、銅粉。
(62)
(61)に記載の表面処理された銅粉が、配合されてなる、導電性銅ペースト。
(63)
(62)に記載の導電性銅ペーストが塗布されて加熱焼成されてなる、電極であって、
電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2が0.5個/cm
2以下で存在している、電極。
【0020】
本発明は、次の(71)〜にもある。
(71)
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれかの厚みが1〜25nmである、表面処理された金属粉。
(72)
金属粉がCu、Pt、Pd、Ag、Niのいずれかである(71)の金属粉。
(73)
Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snをカップリング剤処理で吸着させ(71)または(72)の金属粉。
(74)
カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかである(73)の金属粉。
(75)
末端がアミノ基であるカップリング剤で処理された(74)の金属粉。
(76)
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれかの厚みが1〜25nmである、焼結開始温度が400℃以上である、金属粉。
(77)
(71)〜(76)に記載の表面処理された金属粉が、配合されてなる、導電性金属粉ペースト。
(78)
(77)に記載の導電性金属粉ペーストが塗布されて加熱焼成されてなる、電極であって、
電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2、TiO
2、Al
2O
3が0.5個/μm
2以下で存在している、電極。
【0021】
本発明は、次の(101)〜にもある。
(101)
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれかの厚みが1〜25nmである、表面処理された金属粉。
(102)
金属粉がCu、Pt、Pd、Ag、Niのいずれかの金属粉である、(101)に記載の金属粉。
(103)
金属粉が銅粉である、(101)に記載の金属粉。
(104)
Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snをカップリング剤処理で吸着させた、(101)〜(103)のいずれかに記載の金属粉。
(105)
カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかである、(104)に記載の金属粉。
(106)
末端がアミノ基であるカップリング剤で処理された、(104)〜(105)のいずれかに記載の金属粉。
(107)
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Si厚み、Ti厚み又はAl厚みが1〜25nmである、(101)〜(106)のいずれかに記載の金属粉。
(108)
金属粉が、シランカップリング剤で表面処理された金属粉である、(101)〜(107)のいずれかに記載の金属粉。
(109)
シランカップリング剤がアミノシランである、(108)に記載の金属粉。
(110)
焼結開始温度が400℃以上である、(101)〜(109)のいずれかに記載の金属粉。
(111)
アミノシランが、モノアミノシラン又はジアミノシランである、(109)〜(110)のいずれかに記載の金属粉。
(112)
(101)〜(111)のいずれかに記載の金属粉が、さらに有機化合物で表面処理されてなる、表面処理された金属粉。
(113)
(101)〜(112)のいずれかに記載の金属粉を使用した導電性金属粉ペースト。
(114)
(113)に記載の導電性金属粉ペーストが塗布されて加熱焼成されてなる、電極であって、
電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2、TiO
2、Al
2O
3が0.5個/μm
2以下で存在している、電極。
(115)
(113)のペーストを使用して製造されたチップ積層セラミックコンデンサー。
(116)
内部電極断面に直径が10nm以上のSiO
2、TiO
2、又はAl
2O
3が存在している、(115)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(117)
内部電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2、TiO
2、又はAl
2O
3が0.5個/μm
2以下で存在している、(115又は(116)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(118)
(115)〜(117)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを最外層に実装した多層基板。
(119)
(115)〜(117)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを内層に実装した多層基板。
(120)
(118又は(119)に記載の多層基板を搭載した電子部品。
(121)
金属粉を、カップリング剤水溶液と混合して、金属粉分散液を調製する工程、
を含む、表面処理された金属粉を製造する方法。
(122)
金属粉がCu、Pt、Pd、Ag、Niのいずれかの金属粉である、(121)に記載の方法。
(123)
金属粉が銅粉である、(121)に記載の方法。
(124)
金属粉分散液を撹拌する工程を含む、(121)〜(123)のいずれかに記載の方法。
(125)
金属粉分散液を超音波処理する工程を含む、(121)〜(124)のいずれかに記載の方法。
(126)
超音波処理する工程が、1〜180分間の超音波処理を行う工程である、(125)に記載の方法。
(127)
金属粉分散液をろ過して銅粉を回収する工程、
ろ過して回収された金属粉を乾燥して、表面処理された金属粉を得る工程、
を含む、(121)〜(126)のいずれかに記載の方法。
(128)
乾燥が、酸素雰囲気又は不活性雰囲気下で行われる、(127)に記載の方法。
(129)
金属粉分散液が、銅粉1gに対してカップリング剤0.025g以上を含んでいる、(121)〜(128)のいずれかに記載の方法。
(130)
カップリング剤水溶液が、次の式I:
H
2N−R
1−Si(OR
2)
2(R
3) (式I)
(ただし、上記式Iにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、C1〜C5のアルキル基であり、
R3は、C1〜C5のアルキル基、又はC1〜C5のアルコキシ基である。)
で表されるアミノシランの水溶液である、(121)〜(129)のいずれかに記載の方法。
(131)
R1が、−(CH
2)
n−、−(CH
2)
n−(CH)
m−(CH
2)
j-1−、−(CH
2)
n−(CC)−(CH
2)
n-1−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−NH−(CH
2)
j−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−NH−(CH
2)
j−からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)、(130)に記載の方法。
(132)
カップリング剤水溶液が、次の式II:
(H
2N−R
1−O)
pTi(OR
2)
q (式II)
(ただし、上記式IIにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、直鎖状又は分枝を有する、C1〜C5のアルキル基であり、
p及びqは、1〜3の整数であり、p+q=4である。)
で表されるアミノ基含有チタネートの水溶液である、(121)〜(129)のいずれかに記載の方法。
(133)
R1が、 −(CH
2)
n−、−(CH
2)
n−(CH)
m−(CH
2)
j-1−、−(CH
2)
n−(CC)−(CH
2)
n-1−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
m−NH−(CH
2)
j−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−、−(CH
2)
n-1−(CH)NH
2−(CH
2)
m-1−NH−(CH
2)
j− からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)、(132)に記載の方法。
(134)
金属粉が、湿式法によって製造された銅粉である、(121)〜(133)のいずれかに記載の方法。
(135)
(121)〜(134)のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された金属粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性金属粉ペーストを製造する方法。
(136)
(121)〜(134)のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された金属粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性金属粉ペーストを得る工程、
導電性金属粉ペーストを基材に塗布する工程、
基材に塗布された導電性金属粉ペーストを加熱焼成する工程、
を含む、電極を製造する方法。
(137)
(121)〜(134)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、表面処理された金属粉。
(138)
(135)に記載の製造方法によって製造された、導電性金属粉ペースト。
(139)
(136)に記載の製造方法によって製造された、電極。
(140)
(121)〜(134)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、表面処理された金属粉であって、
STEMで得られる表面近傍のEDSの濃度profileにおいて、Si厚み、Ti厚み又はAl厚みが1〜25nmであり、
焼結開始温度が400℃以上である、金属粉。
(141)
(140)に記載の表面処理された金属粉が、配合されてなる、導電性金属粉ペースト。
(142)
(141)に記載の導電性金属粉ペーストが塗布されて加熱焼成されてなる、電極であって、
電極断面に最大径0.5μm以上のSiO
2、TiO
2、又はAl
2O
3が0.5個/μm
2以で存在している、電極。