特許第6297287号(P6297287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297287ロータリエンコーダおよびこれを備えるマイクロメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297287
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダおよびこれを備えるマイクロメータ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20180312BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20180312BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20180312BHJP
   G01B 3/18 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01D5/20 110H
   G01D5/20 110D
   G01D5/20 110F
   G01B7/30 M
   G01B7/00 101E
   G01B3/18 102
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-192542(P2013-192542)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-59779(P2015-59779A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝三郎
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−174554(JP,A)
【文献】 特開2010−60478(JP,A)
【文献】 特開2007−271604(JP,A)
【文献】 特開2013−36758(JP,A)
【文献】 特開2001−255106(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0018328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 3/00−3/08、
3/11−3/56、
7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される回転に応じて中心軸回りに回転するロータを備え、前記ロータの回転角度を検出するアブソリュート式のロータリエンコーダであって、
円柱状に形成された前記ロータの周面を覆うように所定の間隔を隔てて配設されるステータを備え、
前記ロータは、第1の周期で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期とは異なる第2の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして自己の周面に設けられるパターンを有し、自己の回転に伴って軸方向に沿って進退するように構成され、
前記ステータは、
前記ロータに向かって信号を送信する送信機と、
前記送信機にて送信された信号を前記ロータに設けられたパターンを介して受信する受信機とを有し、
前記ロータリエンコーダは、前記ロータの周方向の回転に伴って前記第1の周期で受信される第1の信号と、前記ロータの軸方向の進退に伴って前記第2の周期で受信される第2の信号とを合成することによって、前記ロータの回転角度の絶対位置を検出し、
前記ステータは、
前記第1の信号を検出する第1のステータと、
前記第2の信号を検出する第2のステータとを有し、
前記第1のステータおよび前記第2のステータは、前記ロータの軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられるとともに複数の前記送信機および前記受信機の組をそれぞれ有し、
前記第1のステータにおける前記送信機および前記受信機の組のそれぞれは、前記第2の周期とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられ、前記第2のステータにおける前記送信機および前記受信機の組のそれぞれは、前記第1の周期とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられることを特徴とするロータリエンコーダ。
【請求項2】
入力される回転に応じて中心軸回りに回転するとともに、この回転に伴って軸方向に沿って進退するスピンドルを備え、前記スピンドルの回転角度を検出することによって、前記スピンドルの軸方向の変位を測定するマイクロメータであって、
請求項1に記載されたロータリエンコーダを備え、
前記ロータは、前記スピンドルに一体的に設けられていることを特徴とするマイクロメータ。
【請求項3】
請求項に記載されたマイクロメータにおいて、
前記スピンドルのねじピッチをpとし、周方向に沿って繰り返すようにして前記ロータの周面に設けられるパターンの数をBとし、前記マイクロメータの測定範囲を基本波長p/Bの整数n倍としたとき、
前記第2の周期λを前記基本波長p/Bよりも大きくする場合には、
λ=n/(n−1)・p/B
の関係を満たすように前記第1の周期λを設計し、
前記第2の周期λを前記基本波長p/Bよりも小さくする場合には、
λ=n/(n+1)・p/B
の関係を満たすように前記第2の周期λを設計することを特徴とするマイクロメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュート式のロータリエンコーダおよびこれを備えるマイクロメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力される回転に応じて中心軸回りに回転するロータを備え、このロータの回転角度を検出するアブソリュート式のロータリエンコーダが知られている。
例えば、特許文献1に記載されたロータリエンコーダは、中心軸回りに回転する円盤状の第1のロータと、この第1のロータの外側に同心状に設けられるとともに、中心軸回りに回転する円盤状の第2のロータと、入力される回転に応じて第1のロータおよび第2のロータを互いに異なる速度で回転させる回転伝達手段としての中継歯車とを備えている。そして、このロータリエンコーダは、第1のロータおよび第2のロータの回転速度の差に基づいて、入力される回転角度の絶対位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−085504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたロータリエンコーダは、中継歯車を介して第1のロータおよび第2のロータを互いに異なる速度で回転させているので、ロータリエンコーダの構造が複雑になってしまうとともに、ロータリエンコーダの大きさが大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、構造を簡素にすることができるとともに、大きさを小型化することができるロータリエンコーダおよびこれを備えるマイクロメータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータリエンコーダは、入力される回転に応じて中心軸回りに回転するロータを備え、ロータの回転角度を検出するアブソリュート式のロータリエンコーダであって、円柱状に形成されたロータの周面を覆うように所定の間隔を隔てて配設されるステータを備え、ロータは、第1の周期で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期とは異なる第2の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして自己の周面に設けられるパターンを有し、自己の回転に伴って軸方向に沿って進退するように構成され、ステータは、ロータに向かって信号を送信する送信機と、送信機にて送信された信号をロータに設けられたパターンを介して受信する受信機とを有し、ロータリエンコーダは、ロータの周方向の回転に伴って第1の周期で受信される第1の信号と、ロータの軸方向の進退に伴って第2の周期で受信される第2の信号とを合成することによって、ロータの回転角度の絶対位置を検出し、ステータは、第1の信号を検出する第1のステータと、第2の信号を検出する第2のステータとを有し、第1のステータおよび第2のステータは、ロータの軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられるとともに複数の送信機および受信機の組をそれぞれ有し、第1のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれは、第2の周期とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられ、第2のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれは、第1の周期とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、円柱状のロータは、第1の周期で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期とは異なる第2の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして自己の周面に設けられるパターンを有し、自己の回転に伴って軸方向に沿って進退するように構成されている。そして、ステータは、ロータの周方向の回転に伴って第1の周期で受信される第1の信号と、ロータの軸方向の進退に伴って第2の周期で受信される第2の信号とをそれぞれ検出することができる。したがって、ロータリエンコーダは、第1の信号と、第2の信号とを合成することによって、ロータの回転角度の絶対位置を検出するので、歯車等の新たな部品を必要とすることはなく、構造を簡素にすることができるとともに、大きさを小型化することができる。
【0009】
また、第1の信号を検出する第1のステータと、第2の信号を検出する第2のステータとをロータの軸方向の異なる位置にそれぞれ設けているので、第1の信号と、第2の信号との干渉を抑制することができる。したがって、本発明のロータリエンコーダによれば、ロータの回転角度の検出精度を向上させることができる。
【0011】
ここで、第1のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれを第2の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けると、ロータに形成されたパターンと対応する位置に送信機および受信機の組がある場合には、受信機にて検出される信号を加算することによって大きな信号を得ることができる。大きな信号を得ることができれば、S/N比を高くすることができるので、ロータの回転角度の検出精度を更に向上させることができる。
【0012】
しかしながら、ロータが軸方向に進退したことによって、ロータに形成されたパターンと対応する位置に送信機および受信機の組がない場合には、受信機にて検出される信号を加算したとしても大きな信号を得ることができないので、ロータの軸方向の位置に応じて信号の強さが異なってしまうという問題がある。
これは、第2のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれを第1の周期で周方向に沿って繰り返すようにして設ける場合も同様であり、ロータの回転角度に応じて信号の強さが異なってしまうという問題がある。
【0013】
本発明によれば、第1のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれは、第2の周期とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられ、第2のステータにおける送信機および受信機の組のそれぞれは、第1の周期とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられるので、ロータの軸方向の位置やロータの回転角度に応じた信号の強さの変動を抑制することができる。したがって、本発明によれば、ロータの軸方向の位置やロータの回転角度に応じた信号の強さの変動を抑制しつつ、ロータリエンコーダの検出精度を向上させることができる。
【0014】
本発明のマイクロメータは、入力される回転に応じて中心軸回りに回転するとともに、この回転に伴って軸方向に沿って進退するスピンドルを備え、スピンドルの回転角度を検出することによって、スピンドルの軸方向の変位を測定するマイクロメータであって、前述したロータリエンコーダを備え、ロータは、スピンドルに一体的に設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、マイクロメータは、前述したロータリエンコーダを備えているので、前述したロータリエンコーダと同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
本発明では、スピンドルのねじピッチをpとし、周方向に沿って繰り返すようにしてロータの周面に設けられるパターンの数をBとし、マイクロメータの測定範囲を基本波長p/Bの整数n倍としたとき、第2の周期λを基本波長p/Bよりも大きくする場合には、λ=n/(n−1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λを設計し、第2の周期λを基本波長p/Bよりも小さくする場合には、λ=n/(n+1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λを設計することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、第2の周期λを基本波長p/Bよりも大きくする場合には、λ=n/(n−1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λを設計し、第2の周期λを基本波長p/Bよりも小さくする場合には、λ=n/(n+1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λを設計するので、マイクロメータの測定範囲に応じて第2の周期λを適切に設計することができる。
なお、第1の周期は、ロータの径と、パターンの数Bとに基づいて設計すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロメータの内部を示す斜視図
図2】ロータを拡大した斜視図
図3】ロータおよびステータを平面状に展開した模式図
図4】第2のステータを第1の周期で設けた状態を示す図
図5】ロータを周方向に第1の周期の半周期分だけ回転させた状態を示す図
図6】第2のステータを第1の周期の3/2倍の周期で設けた状態を示す図
図7】ロータを周方向に第1の周期の半周期分だけ回転させた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロメータの内部を示す斜視図である。
マイクロメータ1は、図1に示すように、入力される回転に応じて中心軸回りに回転するとともに、この回転に伴って軸方向に沿って進退するスピンドル2と、スピンドル2を内部に収容するフレーム3とを備えている。このマイクロメータ1は、スピンドル2の回転角度を検出することによって、スピンドル2の軸方向の変位を測定し、スピンドル2と、アンビル(図示略)との間に挟んだ被測定物の寸法を測定する測定器である。
なお、図1は、スピンドル2の近傍のみを図示し、フレーム3の一部を透過させることによって、スピンドル2を露出させた図である。
【0020】
また、マイクロメータ1は、スピンドル2の回転角度を検出するアブソリュート式のロータリエンコーダ4を備えている。
ロータリエンコーダ4は、スピンドル2に一体的に設けられることによって、入力される回転に応じて中心軸回りに回転するとともに、その回転に伴って軸方向に沿って進退する円筒状のロータ5と、ロータ5の周面を覆うように所定の間隔を隔てて配設されるフレキシブル基板からなるステータ6とを備えている。
【0021】
図2は、ロータ5を拡大した斜視図である。
ロータ5は、図2に示すように、自己の周面に設けられたパターン51を有している。換言すれば、パターン51は、スピンドル2の周面を覆うように巻き付けられたフレキシブル基板からなるロータ5上に形成されている。具体的には、このパターン51は、ロータ5の周方向および軸方向に沿って格子状に設けられた複数の矩形状のスケールコイルである。
【0022】
図3は、ロータ5およびステータ6を平面状に展開した模式図である。なお、図3では、紙面上下方向をロータ5およびステータ6の周方向とし、紙面左右方向をロータ5およびステータ6の軸方向としている。
ロータ5は、図3に示すように、第1の周期λ1で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期λ1とは異なる第2の周期λ2で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられるパターン51を有している。
なお、パターン51における周方向の長さは、λ1/2であり、軸方向の長さは、λ2/2である。
【0023】
ここで、第2の周期λ2は、スピンドル2のねじピッチをpとし、周方向に沿って繰り返すようにしてスピンドル2の周面に設けられるパターン51の数をBとし、マイクロメータ1の測定範囲を基本波長p/Bの整数n倍としたとき、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも大きくする場合には、次式の関係を満たすように設計する。
【0024】
λ2=n/(n−1)・p/B
【0025】
また、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも小さくする場合には、次式の関係を満たすように設計する。
【0026】
λ2=n/(n+1)・p/B
【0027】
なお、本実施形態では、第1の周期λ1で周方向に沿って繰り返すようにロータ5の周面に設けられるパターン51の数Bを6としている。換言すれば、本実施形態では、第1の周期λ1を60度としている。また、本実施形態では、λ1<λ2としている。
【0028】
ステータ6は、ロータ5の周方向の回転に伴って第1の周期λ1で受信される第1の信号を検出する第1のステータ61(紙面左側)と、ロータ5の軸方向の進退に伴って第2の周期λ2で受信される第2の信号を検出する第2のステータ62(紙面右側)とを備えている。すなわち、第1のステータ61および第2のステータ62は、ロータ5の軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられている。
【0029】
第1のステータ61は、自己の周方向(紙面上下方向)に沿って設けられるとともに、ロータ5に向かって信号を送信する4つの送信機61A(61A1〜61A4)と、送信機61Aにて送信された信号をロータ5に設けられたパターン51を介して受信する4つの受信機61B(61B1〜61B4)とを備えている。
第2のステータ62は、自己の軸方向(紙面左右方向)に沿って設けられるとともに、ロータ5に向かって信号を送信する4つの送信機62A(62A1〜62A4)と、送信機62Aにて送信された信号をロータ5に設けられたパターン51を介して受信する4つの受信機62B(62B1〜62B4)とを備えている。
なお、送信機61A,62Aは、それぞれ1本の巻線を巻き回すことによって形成される励磁コイル(ワンループコイル)であり、受信機61B,62Bは、それぞれ1本の巻線を巻き回すことによって形成される検出コイル(ツイストペアコイル)である。
【0030】
このように、第1のステータ61および第2のステータ62は、複数の送信機61A,62Aおよび受信機61B,62Bの組をそれぞれ有している。例えば、送信機61A1に電流を流すと、ロータ5のパターン51に起電流が発生し、受信機61B1に起電流が発生するといったごとくである。すなわち、本実施形態では、ロータリエンコーダ4は、電磁誘導式のロータリエンコーダとして構成されている。
【0031】
ここで、第1のステータ61における送信機61Aおよび受信機61Bの組のそれぞれは、第2の周期λ2とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられている。具体的には、第1のステータ61における送信機61Aおよび受信機61Bの組のそれぞれは、第2の周期λ2の3/2倍の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられている。なお、第2の周期λ2と異なる周期であれば、これ以外の周期を採用してもよい。
【0032】
また、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれは、第1の周期λ1とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられている。具体的には、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれは、第1の周期λ1の3/2倍の周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられている。なお、第1の周期λ1と異なる周期であれば、これ以外の周期を採用してもよい。
【0033】
図4は、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれを第1の周期λ1で周方向に沿って繰り返すようにして設けた状態を示す図である。なお、図4では、説明のため、送信機62Aおよび受信機62Bの組を2つとしている。以下の図面においても同様である。
第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれを第1の周期λ1で周方向に沿って繰り返すようにして設けると、図4に示すように、ロータ5に形成されたパターン51と対応する位置に送信機62Aおよび受信機62Bの組がある場合には、受信機62Bにて検出される信号を加算することによって大きな信号を得ることができる。
【0034】
図5は、ロータ5を周方向に第1の周期λ1の半周期分だけ回転させた状態を示す図である。
これに対して、図5に示すように、ロータ5が周方向に第1の周期λ1の半周期分だけ回転することによって、ロータ5に形成されたパターン51と対応する位置に送信機62Aおよび受信機62Bの組がない場合には、受信機62Bにて検出される信号を加算したとしても大きな信号を得ることができないので、ロータ5の周方向の位置に応じて信号の強さが異なってしまうという問題がある。
【0035】
図6は、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれを第1の周期λ1の3/2倍の周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けた状態を示す図である。図7は、ロータ5を周方向に第1の周期λ1の半周期分だけ回転させた状態を示す図である。
本実施形態では、図6に示すように、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれは、第1の周期λ1の3/2倍の周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられているので、図7に示すように、ロータ5が周方向に第1の周期λ1の半周期分だけ回転した場合であっても、ロータ5に形成されたパターン51と対応する位置に送信機62Aおよび受信機62Bの組があるようにすることができる。具体的には、図6では、図中下段の送信機62Aおよび受信機62Bの組がパターン51と対応する位置にあり、図7では、図中上段の送信機62Aおよび受信機62Bの組がパターン51と対応する位置にある。
【0036】
そして、ロータリエンコーダ4は、ロータ5の周方向の回転に伴って第1の周期λ1で受信される第1の信号と、ロータ5の軸方向の進退に伴って第2の周期λ2で受信される第2の信号とを合成することによって、ロータ5の回転角度の絶対位置を検出する。また、ロータリエンコーダ4は、ロータ5の回転角度の絶対位置を検出してスピンドル2の回転角度の絶対位置を検出することによって、スピンドル2の軸方向の変位を測定し、被測定物の寸法を測定する。
【0037】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)円柱状のロータ5は、第1の周期λ1で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期λ1とは異なる第2の周期λ2で軸方向に沿って繰り返すようにして自己の周面に設けられるパターン51を有し、自己の回転に伴って軸方向に沿って進退するように構成されている。そして、ステータ6は、ロータ5の周方向の回転に伴って第1の周期λ1で受信される第1の信号と、ロータ5の軸方向の進退に伴って第2の周期λ2で受信される第2の信号とをそれぞれ検出することができる。したがって、ロータリエンコーダ4は、第1の信号と、第2の信号とを合成することによって、ロータ5の回転角度の絶対位置を検出するので、歯車等の新たな部品を必要とすることはなく、構造を簡素にすることができるとともに、大きさを小型化することができる。
【0038】
(2)ロータリエンコーダ4は、第1の信号を検出する第1のステータ61と、第2の信号を検出する第2のステータ62とをロータ5の軸方向の異なる位置にそれぞれ設けているので、第1の信号と、第2の信号との干渉を抑制することができる。したがって、ロータリエンコーダ4によれば、ロータ5の回転角度の検出精度を向上させることができる。
(3)第1のステータ61における送信機61Aおよび受信機61Bの組のそれぞれは、第2の周期λ2とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられ、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれは、第1の周期λ1とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられるので、ロータ5の軸方向の位置やロータ5の回転角度に応じた信号の強さの変動を抑制することができる。したがって、ロータリエンコーダ4によれば、ロータ5の軸方向の位置やロータ5の回転角度に応じた信号の強さの変動を抑制しつつ、ロータリエンコーダ4の検出精度を向上させることができる。
【0039】
(4)ロータリエンコーダ4は、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも大きくする場合には、λ2=n/(n−1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λ2を設計し、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも小さくする場合には、λ2=n/(n+1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λ2を設計するので、マイクロメータ1の測定範囲に応じて第2の周期λ2を適切に設計することができる。
【0040】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、ロータリエンコーダ4は、電磁誘導式のロータリエンコーダとして構成されていたが、静電容量式のロータリエンコーダとして構成されていてもよい。
【0041】
前記実施形態では、ステータ6は、第1のステータ61と、第2のステータ62とを備え、第1のステータ61および第2のステータ62は、ロータ5の軸方向の異なる位置にそれぞれ設けられていたが、第1のステータおよび第2のステータは、重ねるようにしてロータの軸方向の同じ位置にそれぞれ設けられていてもよい。このような構成によれば、第1の信号と、第2の信号との干渉は大きくなるが、ロータリエンコーダの大きさを小型化することができる。
【0042】
前記実施形態では、第1のステータ61における送信機61Aおよび受信機61Bの組のそれぞれは、第2の周期λ2とは異なる周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられていたが、同じ周期で軸方向に沿って繰り返すようにして設けられていてもよい。また、前記実施形態では、第2のステータ62における送信機62Aおよび受信機62Bの組のそれぞれは、第1の周期λ1とは異なる周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられていたが、同じ周期で周方向に沿って繰り返すようにして設けられていてもよい。
【0043】
前記実施形態では、ロータリエンコーダ4は、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも大きくする場合には、λ2=n/(n−1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λ2を設計し、第2の周期λ2を基本波長p/Bよりも小さくする場合には、λ2=n/(n+1)・p/Bの関係を満たすように第2の周期λ2を設計していたが、このように設計しなくてもよい。要するに、ロータは、第1の周期で周方向に沿って繰り返すとともに、第1の周期とは異なる第2の周期で軸方向に沿って繰り返すようにして自己の周面に設けられるパターンを有していればよい。
【0044】
前記実施形態では、第1のステータ61は、4つの送信機61Aおよび4つの受信機61Bを備え、第2のステータ62は、4つの送信機62Aおよび4つの受信機62Bを備えていたが、これ以外の個数の送信機および受信機を備えていてもよい。要するに、ステータは、ロータに向かって信号を送信する送信機と、送信機にて送信された信号をロータに設けられたパターンを介して受信する受信機とを有していればよい。
【0045】
前記実施形態では、ロータリエンコーダ4をマイクロメータ1に採用していたが、マイクロメータ以外の他の測定器に採用してもよく、測定器以外の他の産業機器に採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明は、アブソリュート式のロータリエンコーダおよびこれを備えるマイクロメータに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 マイクロメータ
2 スピンドル
3 フレーム
4 ロータリエンコーダ
5 ロータ
6 ステータ
51 パターン
61 第1のステータ
62 第2のステータ
61A,62A 送信機
61B,62B 受信機
λ1 第1の周期
λ2 第2の周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7