(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
洗浄部材を、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させながら一方向に向けて移動させ、洗浄液の存在下で、前記洗浄部材の下端接触面を水平に回転している基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する基板洗浄装置において、
前記洗浄部材は、下端接触面と外周面上の直線とのなす角αが90°<α≦150°の逆円錐台形状を有し、
前記洗浄部材の回転軸を該洗浄部材の移動方向と同じ方向に傾斜させながら、前記洗浄部材の下端接触面の全面を基板に接触させつつ前記洗浄部材を一方向に向けて移動させることを特徴とする基板洗浄装置。
前記洗浄部材の下端接触面が前記基板の回転中心を通り、かつ前記洗浄部材の回転軸が前記基板の回転中心を通らないように前記洗浄部材を一方向に向けて移動させることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
前記洗浄部材の下端接触面が前記基板の回転中心を通り、かつ前記洗浄部材の回転軸が前記基板の回転中心を通らないように前記洗浄部材を一方向に向けて移動させることを特徴とする請求項4に記載の基板洗浄方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的なダマシン配線にあっては、金属としてタングステンが使用され、絶縁膜として酸化膜がそれぞれ使用されていた。タングステン及び酸化膜は、例えば水に対する接触角が15°以下の親水性の表面特性を有している。近年、ダマシン配線にあっては、配線金属として銅が、絶縁膜として、誘電率が低い、いわゆるlow−k膜が採用されるようになってきている。この銅及びlow-k膜は、CMP後の表面特性が、例えば水に対する接触角が30°以上の疎水性であることから、CMPによって、銅及びlow-k膜が露出した基板表面を、洗浄液の存在下、鉛直方向に延びる洗浄部材(ペンシル洗浄部材)を使用したスクラブ洗浄で洗浄しようとすると、基板表面の濡れ性の不均一性が拡大して、基板表面を高い洗浄度で洗浄することが困難となる。
【0007】
洗浄後に基板表面上に残存するスラリ残渣等のパーティクル(ディフェクト)は、半導体デバイスの歩留まり低下を招くことから、表面状態が疎水性である半導体デバイスにおけるCMP研磨後の基板表面のように、たとえ表面状態が疎水性であっても、基板表面を高い洗浄度で洗浄して基板表面に残存するディフェクト数を低減できるようにした基板洗浄装置及び基板洗浄方法の開発が強く望まれている。
【0008】
半導体ウエハ等の基板の表面を、鉛直方向に延びる洗浄部材を自転させつつ一方向に移動させてスクラブ洗浄する、従来の一般的な基板洗浄装置にあっては、洗浄部材の変形に伴う洗浄部材の基板表面に対する接触圧力の変化を考慮したものではないため、基板表面のほぼ全域を高い洗浄度で洗浄することが一般に困難であった。
【0009】
特に、今後シリコンウエハのサイズが、最大でφ300mmからφ450mmの大口径となることから、φ450mmのシリコンウエハ等の基板の表面のほぼ全域を高い洗浄度で洗浄することが更に困難になると考えられる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、たとえ表面特性が疎水性であっても、基板表面のほぼ全域を高い洗浄度で効率的に洗浄して、基板表面に残存するディフェクト数を低減できるようにした基板洗浄装置及び基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の基板洗浄装置
の一態様は、洗浄部材を、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させながら一方向に向けて移動させ、洗浄液の存在下で、前記洗浄部材の下端接触面を水平に回転している基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する基板洗浄装置において、前記洗浄部材は、下端接触面と外周面上の直線とのなす角αが90°<α≦150°の逆円錐台形状を有し
、前記洗浄部材の回転軸を該洗浄部材の移動方向と同じ方向に傾斜させながら、前記洗浄部材の下端接触面の全面を基板に接触させつつ前記洗浄部材を一方向に向けて移動させる。
【0012】
これにより、洗浄部材を一方向に向けて移動させつつ、洗浄部材の下端接触面を基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する時、洗浄部材の回転軸を傾けることにより、該洗浄部材の変形量(撓み量)が変化する場合であっても、洗浄部材の下端接触面の一部が基板表面から浮き上がってしまうことを防止でき、これによって、洗浄部材の基板表面に対する接触圧力を調整して、たとえ表面特性が疎水性であっても、基板表面のほぼ全域を高い洗浄度で効率的に洗浄することができる。
【0013】
前記洗浄部材の回転軸を該洗浄部材の移動方向と同じ方向に傾斜させながら、前記洗浄部材を一方向に向けて移動させる
。例えば、洗浄部材の移動方向が右方向であれば、洗浄部材の回転軸を右方向に傾斜させる。これにより、洗浄部材の移動方向に沿って変形量(撓み量)が大きくなるように洗浄部材を変形させ、洗浄部材の基板表面に対する接触圧力が洗浄部材の移動方向に沿って大きくなるようにして、基板表面を洗浄部材で洗浄することができる。
【0014】
前記洗浄部材を前記基板の回転方向に対して逆方向に回転させることが好ましい。
これにより、洗浄部材の基板の外周側により近い部分の洗浄部材の回転速度と基板の回転速度の相対回転速度を相対的に高めて、基板の外周側領域の洗浄効果を高めることができる。
【0015】
前記洗浄部材の下端接触面が前記基板の回転中心を通り、かつ前記洗浄部材の回転軸が前記基板の回転中心を通らないように前記洗浄部材を一方向に向けて移動させることが好ましい。
これによって、基板の回転中心部を確実に洗浄することができる。
【0016】
本発明の基板洗浄方法は、逆円錐台形状を有し、下端接触面と外周面上の直線とのなす角αが90°<α≦150°の洗浄部材を、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させ
、前記洗浄部材の回転軸を該洗浄部材の移動方向と同じ方向に傾斜させながら、前記洗浄部材の下端接触面の全面を基板に接触させつつ前記洗浄部材を一方向に向けて移動させ、洗浄液の存在下で、前記洗浄部材の下端接触面を水平に回転している基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する。
本発明の基板洗浄装置の他の態様は、洗浄液の存在下で、洗浄部材の下端接触面を基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する基板洗浄装置において、前記洗浄部材は、下端接触面と外周面上の直線とのなす角αが90°<α≦150°の逆円錐台形状を有し、前記洗浄部材を基板の表面に対して傾斜させながら、前記洗浄部材の下端接触面の全面を基板に接触させつつ前記洗浄部材を一方向に向けて移動させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗浄部材を一方向に向けて移動させつつ、洗浄部材の下端接触面を基板の表面に擦り付けて該表面を洗浄する時、洗浄部材の回転軸を傾けることにより、該洗浄部材の変形量(撓み量)が変化する場合であっても、洗浄部材の下端接触面の一部が基板表面から浮き上がってしまうことを防止できる。これによって、洗浄部材の基板表面に対する接触圧力を調整して、表面特性が疎水性であっても、基板表面のほぼ全域を高い洗浄度で効率的に洗浄して、基板表面に残存するディフェクト数を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板洗浄装置を備えた基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図1に示すように、基板処理装置は、略矩形状のハウジング10と、多数の半導体ウエハ等の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート12を備えている。ロードポート12は、ハウジング10に隣接して配置されている。ロードポート12には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0020】
ハウジング10の内部には、複数(この例では4つ)の研磨ユニット14a〜14dと、研磨後の基板を洗浄する第1洗浄ユニット16及び第2洗浄ユニット18と、洗浄後の基板を乾燥させる乾燥ユニット20が収容されている。研磨ユニット14a〜14dは、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット16,18及び乾燥ユニット20も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。本発明の実施形態に係る基板洗浄装置は、第2洗浄ユニット18に適用されている。
【0021】
ロードポート12、該ロードポート12側に位置する研磨ユニット14a及び乾燥ユニット20に囲まれた領域には、第1搬送ロボット22が配置され、研磨ユニット14a〜14dと平行に、搬送ユニット24が配置されている。第1搬送ロボット22は、研磨前の基板をロードポート12から受け取って搬送ユニット24に受け渡すとともに、乾燥後の基板を乾燥ユニット20から受け取ってロードポート12に戻す。搬送ユニット24は、第1搬送ロボット22から受け取った基板を搬送して、各研磨ユニット14a〜14dとの間で基板の受け渡しを行う。
【0022】
第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18の間に位置して、これらの各ユニット16,18との間で基板の受け渡しを行う第2搬送ロボット26が配置され、第2洗浄ユニット18と乾燥ユニット20との間に位置して、これらの各ユニット18,20との間で基板の受け渡しを行う第3搬送ロボット28が配置されている。更に、ハウジング10の内部に位置して、基板処理装置の各機器の動きを制御する制御部30が配置されている。
【0023】
この例では、第1洗浄ユニット16として、洗浄液の存在下で、基板の表面(及び裏面)に、円柱状で長尺状に水平に延びるロール洗浄部材を接触させながら、基板及びロール洗浄部材をそれぞれ一方向に回転させて基板の表面(及び裏面)をスクラブ洗浄するロール洗浄ユニットが使用されている。この第1洗浄ユニット(ロール洗浄ユニット)16は、洗浄液に1MHz付近の超音波を加え、洗浄液の振動加速度による作用力を基板表面に付着した微粒子に作用させるメガソニック洗浄を併用するように構成されている。
【0024】
第2洗浄ユニット18として、本発明の実施形態の基板洗浄装置が使用されている。また、乾燥ユニット20として、水平に回転する基板に向けて、移動する噴射ノズルからIPA蒸気を噴出して基板を乾燥させ、更に基板を高速で回転させ遠心力によって基板を乾燥させるスピン乾燥ユニットが使用されている。
【0025】
図2は、
図1に示す第2洗浄ユニット18として使用される、本発明の実施形態に係る基板洗浄装置の概要を示す斜視図で、
図3は、
図2に示す第2洗浄ユニット18における基板と洗浄部材との関係を示す斜視図である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、本発明の実施形態の基板洗浄装置としての第2洗浄ユニット18は、半導体ウエハ等の基板Wを保持し回転させる基板保持機構40と、基板保持機構40で保持される基板Wの側方に配置された回転自在な支持軸42と、この支持軸42の上端に基部を連結した水平方向に延びる揺動アーム44を備えている。揺動アーム44の自由端(先端)には、例えばPVAスポンジから成り、略鉛直方向に延びる回転軸O
1を中心に回転するペンシル型洗浄部材46が上下動自在かつ自転自在に取付けられている。このペンシル型洗浄部材46の直径は、基板Wの直径より小さく設定されている。更に、基板保持機構40で保持される基板Wの側方かつ上方に位置して、水平に回転している基板Wの表面に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズル48が配置されている。
【0027】
基板保持機構40は、基板Wを水平状態に保持するチャック60を先端に装着した複数本(図示では4本)のアーム62を備えており、このアーム62の基端は、回転軸64と一体に回転する基台66に連結されている。これによって、基板保持機構40のチャック60で保持された基板Wは、矢印E方向に回転するようになっている。
【0028】
ペンシル型洗浄部材46は、支持軸42の回転に伴う揺動アーム44の揺動によって、
図3に矢印Mで示すように、基板Wの略半径方向に沿って、基板Wのほぼ中心から基板の外周縁に向かって移動する。
【0029】
ペンシル型の洗浄部材46は、
図4乃至
図6に詳細に示すように、下端接触面46aの面積(直径D
1)よりも上端面46bの面積(直径D
2)の方が広くなっている(D
1<D
2)。ペンシル型洗浄部材46の中心を通る縦断面図を
図6に示す。
図6に示すように、ペンシル型洗浄部材46は、下端接触面46aと外周面46c上の直線(母線)とのなす角αが90°<α≦150°の逆円錐台形状を有している。この洗浄部材46の下端接触面46aと外周面46c上の直線とのなす角αは、90°<α≦120°であることが好ましく、95°<α≦120°であることが更に好ましい。
【0030】
第2洗浄ユニット18による基板Wの洗浄例を説明する。
図2に示すように、先ず、基板保持機構40のチャック60で基板Wを水平に保持して回転させる。この基板Wの回転方向Eは、例えば
図2及び
図3に示すように、時計回り方向である。この水平に回転している基板Wの表面に洗浄液供給ノズル48から洗浄液を供給する。この時、ペンシル型の洗浄部材46は、基板Wの回転中心近傍の上方である洗浄開始位置A(
図13参照)に位置している。
【0031】
次に、洗浄部材46を基板Wの回転方向Eとは逆の回転方向F(
図2及び
図3参照)に回転させながら下降させ、洗浄部材46の下端接触面46aを基板Wの表面に所定の押圧力で接触させる。そして、下端接触面46aを基板Wの表面に所定の押圧力で接触させながら、揺動アーム44を稼働させて、ペンシル型の洗浄部材46を、
図3に示す、基板Wのほぼ半径方向に沿った移動方向Mに沿って、基板Wの外周縁の洗浄終了位置まで移動させる。これによって、基板Wの全表面の洗浄部材46によるスクラブ洗浄が行われる。
【0032】
ここに、
図7(a)に示すように、洗浄部材46の回転軸O
1が鉛直軸O
2と一致するようにして、回転軸O
1を中心に洗浄部材46を回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って洗浄部材46を移動させても良い。本実施例では、
図7(b)に示すように、洗浄部材46の回転軸O
1を洗浄部材46の移動方向Mと同じ方向に傾斜角θだけ傾斜させた状態で、つまり、洗浄部材46の回転軸O
1を鉛直軸O
2に対して傾斜角θだけM方向に傾斜させた状態で、回転軸O
1を中心に洗浄部材46を回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って洗浄部材46を移動させるようにしている。傾斜角θは、好ましくは1°〜15°である。傾斜角θを大きくしすぎると洗浄部材46と基板Wとの間に洗浄液が入りにくくなり、また洗浄部材46の傾斜により基板に圧力がかかりすぎ、接触面内での圧力分布が偏りすぎるという観点から傾斜角を1°以上15°以下(1°≦α≦15°)に設定している。ここで、傾斜角αは、1°以上でなくとも、洗浄部材46の回転軸O
1が傾斜していない状態すなわち傾斜角が0°より大きければよい。
【0033】
この時、前述のように、
図6において、下端接触面46aと外周面46c上の直線とのなす角αが90°<α≦150°の逆円錐台形状を有している洗浄部材46を使用することで、下端接触面46aの一部が基板Wの表面から浮き上がってしまうことを防止することができる。
【0034】
つまり、
図8(a)に示すように、従来の一般的な円柱状の洗浄部材(以下、比較洗浄部材という)50を、その回転軸O
3が鉛直軸O
4と一致するようにして、回転軸O
3を中心に回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って比較洗浄部材50を移動させる場合には、比較洗浄部材50の下端接触面50aは基板Wの表面から浮き上がることはない。しかし、
図8(b)に示すように、比較洗浄部材50の回転軸O
3を比較洗浄部材50の移動方向Mと同じ方向に傾斜角θだけ傾斜させた状態で、回転軸O
3を中心に比較洗浄部材50を回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って移動させると、比較洗浄部材50の移動方向側の外周面に撓みによるくびれ部分52が発生し、この括れ部分52の下方にある下端接触面50aの部分が基板Wの表面から浮き上がってしまう。
図8において、洗浄部材50の回転方向Fと基板Wの回転方向Eは同じ方向である。
【0035】
このように、比較洗浄部材50の下端接触面50aの一部が基板Wの表面から浮き上がる傾向にあると、比較洗浄部材50と基板Wとの間にパーティクル(ディフェクト)が保持され、この比較洗浄部材50と基板Wとの間に保持されたパーティクルが比較洗浄部材50の外部の基板W上に排出されて基板W上に残ってしまう。
【0036】
本実施例では、洗浄部材46を逆円錐台形状にすることによって、洗浄部材46の回転軸O
1を洗浄部材46の移動方向Mと同じ方向に傾斜角θだけ傾斜させた状態で、回転軸O
1を中心に洗浄部材46を回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って洗浄部材46を移動させても、下端接触面46aの一部が基板Wの表面から浮上ることがない。この場合、
図9に示すように、洗浄部材46の変形量(撓み量)は、下端接触面46aが洗浄部材46の移動方向M側に向かうほど大きくなるため、洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力Pが洗浄部材46の移動方向Mに向かうほど大きくなるようにすることができる。
【0037】
つまり、洗浄部材46の基板Wの外周側により近い部分(
図9において洗浄部材46の右半分部分)では洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力P
1が相対的に大きく、洗浄部材46の基板Wの中心側により近い部分(
図9において洗浄部材46の左半分部分)では洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力P
2が相対的に小さくなる。これによって、洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力Pを調整して、基板Wの表面特性が疎水性であっても、基板Wの表面のほぼ全域を高い洗浄度で効率的に洗浄することができる。
【0038】
このように、洗浄部材46の基板Wの外周側により近い部分(
図9において洗浄部材46の右半分部分)では、
図10(b)に示すように、洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力P
1が相対的に大きく、かつ基板Wと洗浄部材46の相対回転速度が比較的大きくなるようにすることで、この洗浄部材の部分での洗浄効率を高めることができる。一方、洗浄部材46の基板Wの中心側により近い部分(
図9において洗浄部材46の左半分部分)では、
図10(a)に示すように、洗浄部材46の基板Wの表面に対する接触圧力P
2が相対的に小さく、かつ基板Wと洗浄部材46の相対回転速度が比較的小さくなるようにすることで、この洗浄部材の部分での基板Wの洗浄部材46からの逆汚染を少なくすることができる、これにより、高い洗浄性を維持して、基板の外周まで確実に洗浄することができる。
【0039】
一方、
図11に示すように、比較洗浄部材50の回転軸O
3を鉛直軸O
4と一致させ、回転軸O
3を中心に比較洗浄部材50を回転させつつ、基板Wの外周縁に向け、移動方向Mに沿って比較洗浄部材50を移動させると、比較洗浄部材50の変形量(撓み量)が比較洗浄部材50の全域でほぼ一定となって、比較洗浄部材50の基板Wの表面に対する接触圧力P
3が比較洗浄部材50の全域でほぼ一定となる。このため、比較洗浄部材50の基板Wの表面に対する接触圧力P
3を比較洗浄部材50の移動方向Mに沿って次第に大きくなるように調整することができず、特に、特性が疎水性である基板表面のほぼ全域を高い洗浄度で効率的に洗浄することが困難となる。
【0040】
更に、基板Wの回転方向Eと比較洗浄部材50の回転方向Fを互いに同じ方向とすると、比較洗浄部材50の基板Wの中心側により近い部分(
図11において比較洗浄部材50の左半分部分)では、基板Wの回転方向Eと比較洗浄部材50の回転方向Fが互いに逆方向となって、
図12(a)に示すように、両者の相対回転速度が相対的に高く(両回転速度の和)なる。一方、比較洗浄部材50の基板Wの外周側により近い部分(
図11において比較洗浄部材50の右半分部分)では、
図12(b)に示すように、基板Wの回転方向Eと比較洗浄部材50の回転方向Fが互いに順方向となって、両者の相対回転速度が相対的に低く(両回転速度の差の絶対値)なる。
【0041】
このため、比較洗浄部材50の基板Wの中心側に位置する部分では、高い洗浄性を確保できるものの、比較洗浄部材50の基板Wの外周側に位置する部分では、高い洗浄性を確保できず、比較洗浄部材50から基板Wへの逆汚染が生じて、基板Wの外周部での洗浄度が低下してしまう。
【0042】
なお、本実施例では、基板Wと洗浄部材46とを互いに逆方向に回転させているが、同じ方向に回転させてもよい。
【0043】
図13に示すように、洗浄部材46の洗浄開始位置Aは、洗浄部材46が基板Wのほぼ半径方向に沿った移動方向Mに沿って移動する時、基板Wの回転中心O
5付近を確実に通過するように、移動方向Mに沿って基板Wの回転中心O
5より後方の位置に設定されている。つまり、洗浄部材46が洗浄開始位置Aに位置するとき、洗浄部材46の下端接触面46aは、基板Wの回転中心O
5に触れることはなく、洗浄部材46が移動方向Mに沿って移動する時に、下端接触面46aが基板Wの回転中心O
5上を通過するように構成されている。
【0044】
洗浄部材46の洗浄開始位置Aを基板Wの外周縁近傍に設定し、洗浄部材46が基板Wの直径のほぼ全長に亘って移動し、その途中で、下端接触面46aが基板Wの回転中心
O
5上を通過するようにしてもよい。
【0045】
また、洗浄部材46の回転軸O
1を通り、洗浄部材46の移動方向Mに沿って延びる直線S
1と、基板Wの回転中心O
5を通り前記直線S
1と平行な直線S
2との距離Lは、0より大きく、洗浄部材46の下端接触部46aの半径R(=D
1/2)よりも小さく(0<L<D
1/2)設定されている。
【0046】
これにより、洗浄部材46の下端接触面46aが基板Wの回転中心O
5上を通り、かつ洗浄部材46の回転軸O
1が基板Wの回転中心O
5上を通らないようにして、基板Wの回転中心O
5の無回転部分を洗浄部材46で確実に洗浄することができる。
【0047】
洗浄液供給ノズル48として、基板W上に細長い矩形状に洗浄液が分布される洗浄ノズルではなく、基板W上に楕円状に洗浄液が分布される円錐ノズルが使用され、洗浄液供給ノズル48から供給された洗浄液が基板Wの回転中心O
5付近まで直接または洗浄液の流れで達するように、洗浄液供給ノズル48が配置されている。更に、洗浄液供給ノズル48は、洗浄液供給ノズル48の噴射方向、つまり洗浄液供給ノズル48と基板Wの回転中心O
5とを結ぶ直線S
3と前記直線S
2とがなす角度βが、60°〜120°となる位置に配置されている。このように洗浄液供給ノズル48を配置することにより、ペンシル型洗浄部材46が稼働する範囲に多量の新鮮な洗浄液を供給することができる。
ここでは、薬液供給ノズルとして円錐ノズルを使用し、楕円状に洗浄液が分布するようにしているが、ノズル形状や洗浄液の分布形状がこれらに限定されることはない。
【0048】
基板Wの表面に供給された洗浄液は、基板Wが水平に回転していることで遠心力を受けて、基板Wの表面への接触と同時に基板の外周方向に移動しながら、基板Wの全表面に拡がる。このため、前述のように、洗浄液供給ノズル48の洗浄部材46の移動方向Mに対する角度βを60°〜120°とすることで、新鮮で多量の洗浄液を洗浄部材46の下端接触面46aに供給することができる。
【0049】
洗浄液供給ノズル48から供給された洗浄液が基板Wに接触する接触エリアCの基板Wに対する最外周位置と基板Wの回転中心O
5との距離S
4は、基板Wの半径の1/3以上であることが好ましく、このように洗浄液が基板Wに接触した状態で基板Wが回転すると、洗浄液は、基板Wの表面上に遠心力でより均一に拡がる。この接触エリアCの基板Wに対する最外周位置に位置する洗浄液は、基板Wの表面上において、遠心力によって基板Wの外周へ運搬される際、洗浄部材46の最外周位置Bよりも手前で基板Wの外周に排出されることが好ましい。このため、例えば、基板Wの表面が疎水性(接触角≧60°)の場合、基板の回転速度は、200rpm以上に設定される。
【0050】
洗浄液の存在下で基板に洗浄部材を擦り付けて基板をスクラブ洗浄する場合、総合的な洗浄特性は、洗浄液を用いたパーティクル等の除去洗浄特性と洗浄部材の接触による接触洗浄特性の総和になる。この例のように、新鮮で多量の洗浄液を洗浄部材46の下端接触面46aに供給することで、高い洗浄特性を得るとともに、洗浄液の使用効率を高めることができる。
【0051】
図1に示す基板処理装置では、ロードポート12内の基板カセットから取り出した基板の表面を、研磨ユニット14a〜14dのいずれかに搬送して研磨する。そして、研磨後の基板表面を第1洗浄ユニット(ロール洗浄ユニット)16で粗洗浄した後、第2洗浄ユニット(基板洗浄装置)18で仕上げ洗浄する。そして、洗浄後の基板を第2洗浄ユニット18から取り出し、乾燥ユニット20に搬入して乾燥させ、しかる後、乾燥後の基板をロードポート12の基板カセット内に戻す。
【0052】
接触洗浄の総合的な洗浄性は、洗浄部材の接触による汚染と洗浄特性の総和になる。そこで、洗浄部材の接触による基板への汚染を評価するため、表面特性が親水性のサンプル基板表面を、
図2に示す第2洗浄ユニット(基板洗浄装置)18を使用して洗浄し、更に洗浄後のサンプル基板をスピン乾燥させた時に、サンプル基板表面に残った42nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を
図14に実施例1として示す。同様にして、表面特性が疎水性のサンプル基板表面を、
図2に示す第2洗浄ユニット(基板洗浄装置)18を使用して洗浄し、更に洗浄後のサンプル基板をIPA乾燥させた時に、サンプル基板表面に残った42nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を
図14に実施例2として示す。
【0053】
図14には、従来の一般的な洗浄ユニットを使用して、表面特性が親水性のサンプル基板表面を洗浄し、その他は実施例1と同様にして、サンプル基板表面に残った42nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を比較例1として、同様にして、表面特性が疎水性のサンプル基板表面に残った42nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を比較例2として示している。
【0054】
図14において、ディフェクト数は、比較例を100%として、実施例のディフェクト数を比較例に対する百分率で示している。
図15においても同様に示す。
【0055】
図14から、実施例1、2は、比較例1,2に比較して、洗浄後にサンプル基板表面に残存する42nm以上のディフェクト数を格段(親水性表面では70.69%、疎水性表面では0.22%)に減少させて汚染を防止することができることが判る。この効果は、基板表面が疎水性の性状の場合に顕著であることが判る。
【0056】
表面特性が疎水性のlow-k膜(k=2.4)を表面に形成したサンプル基板の該表面(low-k膜)を研磨ユニットで研磨し、研磨後のサンプル基板表面を、前述と同様にして、
図2に示す第2洗浄ユニット(基板洗浄装置)18を使用して洗浄し、更に洗浄後のサンプル基板をIPA乾燥させた時に、サンプル基板表面に残った100nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した時の結果を
図15に実施例3として示す。サンプル基板表面(low-k膜表面)を研磨し、従来の一般的な洗浄ユニットを使用して研磨後のサンプル基板表面を洗浄した。洗浄後のサンプル基板を
IPA乾燥させ、実施例3と同様に100nm以上のパーティクル(ディフェクト)の数を計測した。計測した時の結果を比較例3として
図15に示している。
【0057】
図15から、実施例は、比較例に比較して、洗浄後にサンプル基板表面に残存する100nm以上のディフェクト数を格段(約30%減)に減少させ得ることが判る。
【0058】
本発明によれば、たとえ基板の表面特性が疎水性であっても、基板の表面を高い洗浄度で洗浄することができる。つまり、配線金属として銅を使用し、絶縁膜としてlow−k膜を採用してダマシン配線を形成し、CMPによって、表面が疎水性の銅及びlow−k膜が露出した基板表面であっても、この基板表面を高い洗浄度で洗浄して表面に残存するディフェクト数を低減することができる。
【0059】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。