特許第6298110号(P6298110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6298110-マスク支持体、成膜装置及び成膜方法 図000002
  • 特許6298110-マスク支持体、成膜装置及び成膜方法 図000003
  • 特許6298110-マスク支持体、成膜装置及び成膜方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298110
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】マスク支持体、成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20180312BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-136252(P2016-136252)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-3144(P2018-3144A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年9月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−023359(JP,A)
【文献】 特開2014−114504(JP,A)
【文献】 特開2005−281745(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/150699(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0007767(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/163878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜用のマスクを支持するマスク支持体であって、第一部材と、前記第一部材上に設けられた、複数の部材から構成された第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に設けられた高さ調整具とを有し、前記高さ調整具により、前記第二部材を構成する複数の部材間での高さが調整されており、前記第二部材を構成する複数の部材の表面で前記マスクを支持することを特徴とするマスク支持体。
【請求項2】
成膜用のマスクを支持するマスク支持体であって、複数の部材から構成された第一部材と、前記第一部材上に設けられた第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に設けられた高さ調整具とを有し、前記高さ調整具により、前記第二部材の高さが調整されており、前記第二部材の表面で前記マスクを支持することを特徴とするマスク支持体。
【請求項3】
成膜用のマスクを支持するマスク支持体であって、複数の部材から構成された第一部材と、前記第一部材上に設けられた、複数の部材から構成された第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に設けられた高さ調整具とを有し、前記高さ調整具により、前記第二部材を構成する複数の部材間での高さが調整されており、前記第二部材を構成する複数の部材の表面で前記マスクを支持することを特徴とするマスク支持体。
【請求項4】
成膜材料が収容される成膜源と、基板を支持する基板支持体と、マスクを支持するマスク支持体とを有し、前記基板上に、成膜源から放出された成膜材料をマスクを介して堆積することで成膜する成膜装置であって、前記マスク支持体として請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスク支持体を採用したことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記マスク支持体は真空槽内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
基板上に、成膜源から放出された成膜材料をマスクを介して堆積することで成膜する成膜方法であって、
基板を基板支持体に支持する第1の支持工程と、
マスクをマスク支持体に支持する第2の支持工程とを有し、
前記第2の支持工程は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスク支持体を用いて行い、
この第2の支持工程には、前記高さ調整具により前記マスクを支持する前記第二部材の表面の高さを調整する高さ調整工程を含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク支持体、成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるような、基板支持体に支持される基板上に、成膜源から放出された成膜材料をマスク支持体に支持されるマスクを介して堆積することで成膜する成膜装置においては、マスクが歪んでいると、基板とマスクとの密着度合いの低下を招き、製品不良につながる。
【0003】
そのため、マスクを支持する枠状のマスク支持体の平坦度が重要となることから、マスク支持体には研磨機等を用いた平坦化加工を施して平坦度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−33468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の基板の大型化に伴い、マスク支持体も大型化しており、平坦度を確保するためには、機械加工に多大な時間と費用を要する。
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、大型のマスク支持体であっても簡単にマスク支持面の平坦度を確保することが可能なマスク支持体、成膜装置及び成膜方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
成膜用のマスクを支持するマスク支持体であって、第一部材と、前記第一部材上に設けられた、複数の部材から構成された第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の間に設けられた高さ調整具とを有し、前記高さ調整具により、前記第二部材を構成する複数の部材間での高さが調整されており、前記第二部材を構成する複数の部材の表面で前記マスクを支持することを特徴とするマスク支持体に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のように構成したから、第一部材と第二部材の高さを各々調整することで、大型のマスク支持体であっても簡単にマスク支持面の平坦度を確保することが可能なマスク支持体、成膜装置及び成膜方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の概略説明断面図である。
図2】本実施例の要部の分解説明斜視図である。
図3】別例の概略説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0011】
第一部材3及び第二部材4の少なくともいずれか一方を複数の部材で構成することで、全体としては大型であっても、第一部材3若しくは第二部材4を構成する各部材を、普及品の小型の加工装置に投入できる程度の大きさにすることができ、これらを短時間でコスト安に精度良く平坦化させることができる。
【0012】
また、高さ調整具5を用いて微調整を行うことができるから、第一部材3及び第二部材4の複数の部材で構成していない他方は、ある程度平坦化されていれば良く、例えば他方を枠状の一体成形体としても精密な平坦化加工は不要となり、機械加工にかかる費用と時間を低減できる。
【0013】
即ち、第一部材3と第二部材4とを重ね合わせて多少平坦でない部分があっても、高さ調整具5を用いて第二部材4の表面(マスク支持面)を精度良く平坦化することができる。
【0014】
従って、本発明によれば、大型のマスク支持体2であっても、特注の加工装置等を用いることなく、マスク支持面の平坦度を簡単に確保することが可能となる。
【実施例】
【0015】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施例は、図1に図示したように、真空槽9と、この真空槽9内に設けられる基板7を支持する基板支持体8及び成膜用のマスク1を支持するマスク支持体2と、成膜源6(蒸発源6)とを備えた真空成膜装置に本発明を適用した例である。この真空成膜装置には、蒸発源6から放出された蒸発粒子の蒸発レートをモニタする膜厚モニタ、真空槽9外に設けたモニタした蒸発粒子の量を膜厚に換算する膜厚計、換算された膜厚が所望の膜厚になるように成膜材料の蒸発レートを制御するために蒸発源6を加熱するヒータ用電源等が設けられる。この真空成膜装置は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のための表示パネルの製造に用いられる。
【0017】
基板支持体8は、基板7を移動させてマスク1と基板7との位置調整を行うアライメント機構に接続部10を介して接続されている。
【0018】
マスク支持体2は、第一部材3と、この第一部材3上に設けられる第二部材4と、前記第一部材3及び前記第二部材4の間に設けられる高さ調整具5とを有する構成である。また、前記第一部材3及び前記第二部材4の少なくともいずれか一方を複数の部材で構成し、前記高さ調整具5により高さが調整された前記第二部材4の表面で前記マスク1が支持されるように構成されている。
【0019】
また、第一部材3は真空槽9の天面部に連結部材11を介して吊下げ状態で連結されている。
【0020】
本実施例においては、図2に図示したように、下側の第一部材3を矩形枠状(額縁状)の一体成形体とし、上側の第二部材4を全体として第一部材3より一回り小さい矩形枠状(額縁状)を呈する複数の部材から構成している。
【0021】
本実施例のように上側の第二部材4を複数の部材で構成した場合、複数の部材が各々高さ調整可能であるため、別々に高さが微調整された複数の部材の表面で各々マスク1を支持することができ、よって、マスク支持面の平坦度を確保することができる。
【0022】
なお、第二部材4だけでなく第一部材3も複数の部材で構成しても良い。また、第一部材3を複数の部材で構成し、第二部材4を枠状の一体成形体としても良い。第二部材4を枠状の一体成形体とした場合には、第二部材4が一体物のために生ずる歪みや傾きを高さ調整具5で補正することができ、この場合にもマスク支持面の平坦度を確保することができる。
【0023】
高さ調整具5としては、本実施例では薄板状のシムを採用している。即ち、シムの有無及び厚さの違いを用いて高さを調整できる。なお、高さ調整具5は、どのような形状であっても良く、くさび状のものや、図3に図示した別例のような、第一部材3に設けた螺子穴に螺合する調整ねじ(全ねじ)を採用しても良い。
【0024】
第二部材4は、辺毎に複数の板状の部材で構成されている。本実施例においては、2つの長辺部4aと2つの短辺部4bとから成る構成としている。各部材は枠状でないため機械加工を施し易く、また、より小型の加工装置で加工できる。
【0025】
上述したように、第一部材3は真空槽9内に連結部材を介して吊下げられた状態で設けられており、この第一部材3に第二部材4を重ね合わせた状態で高さ調整具5による高さ調整を行う。
【0026】
例えば第一部材3上の第二部材4の表面の平坦度を確認しながら、第一部材3と第二部材4との間に適宜シムを挿入し、所望の平坦度が得られるまでシムの追加挿入、抜去や取り換え等を行った後、第二部材4を適宜な固定部材で第一部材3に固定し、第二部材4の表面(マスク支持面)にマスク1を支持させ、マスク1と基板7とのアライメント工程や成膜工程等を行う。
【0027】
また、高さ調整具5による高さ調整は、第二部材4の表面の高さを調整することで、最終的に第二部材4の表面に支持されるマスク1の表面を所定の高さにすることを目的として行っても良い。なお、マスク1の表面が高精度に平坦化されることで、これに積層される基板7も平坦化でき、膜ボケを抑制できる。
【0028】
本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0029】
1 マスク
2 マスク支持体
3 第一部材
4 第二部材
5 高さ調整具
6 成膜源(蒸発源)
7 基板
8 基板支持体
9 真空槽
図1
図2
図3