(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298309
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】流量測定装置および流量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
G01F1/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-22784(P2014-22784)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-148571(P2015-148571A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100144842
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥山 満
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和也
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠二
(72)【発明者】
【氏名】南 新吾
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−009931(JP,A)
【文献】
特開昭62−025230(JP,A)
【文献】
特開2008−229584(JP,A)
【文献】
米国特許第05831174(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
G01F 3/36− 3/38
G01F 23/22−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する容器と、前記容器上方から挿入され前記容器内に前記液体を導入する導入管と、前記導入管の下端部に設けられた開口部と、前記開口部から導入される前記液体の流量を測定する測定手段と、を具備し、
前記測定手段が、前記容器内に予め定めた測定下限と測定上限との間の前記液面の上昇速度に基づいて前記流量を測定する流量測定装置であって、
前記測定下限と前記測定上限との間の所定高さにある前記液面を広域部と狭域部とに仮想的に区画する仮想線を設けた場合に、前記仮想線を通る位置に前記導入管が配置されているとともに、前記測定手段が前記広域部側の前記液面の上昇速度を測定するように構成されていることを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記導入管には、前記液体に含まれるガスを排出するガス抜き孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記ガス抜き孔の向きが、前記狭域部方向に配置されていることを特徴とする請求項2記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記導入管の前記開口部が斜めに切り取られており、前記開口部の向きが前記狭域部方向に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記容器の平面形状は、略矩形形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記容器において、前記広域部の液面面積が前記測定下限から前記測定上限に向かって段階的又は連続的に大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流量測定装置。
【請求項7】
液体を貯留する容器に、前記容器上方から挿入され前記容器内に前記液体を導入する導入管が設けられ、前記導入管の下端部に設けられた開口部から前記液体を前記容器内に導入して前記容器内に液体を貯留し、前記容器内に予め定めた測定下限と測定上限との間の前記液体の液面の上昇速度を測定手段により測定する流量測定方法であって、
前記測定下限と前記測定上限との間の所定高さにある前記液面を広域部と狭域部とに仮想的に区画する仮想線を設けた場合に、前記仮想線を通る位置に導入管が配置されているとともに、前記測定手段によって前記広域部側の前記液面の上昇速度を測定することにより前記容器に導入される前記液体の流量を測定することを特徴とする流量測定方法。
【請求項8】
前記容器が、前記広域部の液面面積が前記測定下限から前記測定上限に向かって段階的又は連続的に大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項7記載の流量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダムなどの提体の底を流れる地下水等の流量を測定する装置およびその測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダムの安全性を監視するために、ダム提体の底部を流れる地下水等の流量、温度、圧力等が測定されている。例えば、ダム提体の底部を流れる地下水等の流量が増えると、その揚圧力によりダムが損傷を受ける場合がある。揚圧力とは、ダムが設置されている岩盤に浸透した地下水の水圧によって、ダム提体を浮き上がらせようとする力をいう。揚圧力はダムの貯水量により変化し、揚圧力が高くなると、ダム提体面にかかる水圧と共にダムおよびダム湖への損傷を与える恐れがある。このため、地下水等の流量を測定する必要がある。
【0003】
地下水等の流量測定は、ダム提体内に設けられた監査廊内において、監査廊に設置した揚水孔から揚水される地下水等の流量を測定することにより行う。揚水孔は複数設けられ、揚水孔ごとに流量測定装置が設置され、それら流量測定装置において、複数個所の地下水等の流量が測定される。
【0004】
また、流量測定は、揚水孔から所定時間内に揚水される地下水等の体積や重量を測定することにより行われていた。近年では地下水等を容器に貯留して、その容器の所定部位間の水面上昇速度をセンサにより測定することによって行っている。
【0005】
しかしながら、上述した流量測定では、地下水等を容器に貯留して所定部位間の水面上昇速度をセンサにより測定する場合に、地下水等が容器に貯留されていく際に、水面が乱れてセンサが誤検知する場合があった。水面が乱れる原因としては、地下水等が貯留される際に、水面に発生した波が干渉することが考えられる。それにより、実際には流量が少ないのに増長された波の高い部分(腹)をセンサが検出して流量が多いと誤検知する場合がある。あるいは、波の低い部分(節)も発生するので、その部分をセンサが検出すると、実際には流量が多いのに逆に少ないと誤検知する場合がある。したがって上記流量測定においては、水面をできるだけ安定させることが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−242522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、地下水等の液体を容器に貯留して所定部位間の液面の上昇速度をセンサにより検知して流量を測定する場合に、誤検知を防いで流量の測定精度を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る流量測定装置は、液体を貯留する容器と、前記容器上方から挿入され前記容器内に前記液体を導入する導入管と、前記導入管の下端部に設けられた開口部と、前記開口部から導入される前記液体の流量を測定する測定手段と、を具備し、前記測定手段が、前記容器内に予め定めた測定下限と測定上限との間の前記液面の上昇速度を測定する流量測定装置であって、前記測定下限と前記測定上限との間の所定高さにある前記液面を広域部と狭域部とに仮想的に区画する仮想線を設けた場合に、前記仮想線を通る位置に前記導入管が配置されているとともに、前記測定手段が前記広域部側の前記液面の上昇速度を測定するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る流量測定方法は、液体を貯留する容器に、前記容器上方から挿入され前記容器内に前記液体を導入する導入管が設けられ、前記導入管の下端部に設けられた開口部から前記液体を前記容器内に導入して前記容器内に液体を貯留し、前記容器内に予め定めた測定下限と測定上限との間の前記液体の液面の上昇速度を測定手段により測定する流量測定方法であって、前記測定下限と前記測定上限との間の所定高さにある前記液面を広域部と狭域部とに仮想的に区画する仮想線を設けた場合に、前記仮想線を通る位置に導入管が配置されているとともに、前記測定手段によって前記広域部側の前記液面の上昇速度を測定することにより前記液体の流量を測定することを特徴とする。
【0010】
このような流量測定装置および流量測定方法であれば、導入管が液面の中心に配置されていないので、導入管から導入された液体から生じる波の影響を測定手段が受け難くなり、測定精度が向上する。
すなわち、測定手段が広域部側の液面の上昇速度を測定するように設けられているので、広域部において、地下水等の液体が導入管によって容器内に導入される際に発生する液面の波の高低差が小さくなり、測定精度を向上することができる。
導入管から導入された液体は、広域部と狭域部の双方に拡散して容器内に貯留していく。その際、広域部の表面積は狭域部の表面積よりも広いので、液面に発生する波の高低差は広域部のほうが小さく、つまり液面が安定している。
このように測定下限から測定上限までの間の所定高さにある液面が安定しているため、測定手段が広域部側の液面の上昇速度を測定することにより流量の測定を精度よく行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る流量測定装置および流量測定方法は、前記広域部の液面面積が前記測定下限から前記測定上限に向かって段階的又は連続的に大きくなるように形成されていることを特徴とする。
これならば、容器の形状が測定下限から測定上限において末広がりの形状をしているので、測定下限部のほうが測定上限部より平面積が小さくなる。これにより、測定下限部近辺では液体の流量が少量でも液面の上昇速度が速いので、より早く液体の流量を検出して測定を開始することができる。
また、容器がこのような末広がり形状をしているので、測定上限に向かうほど液体の貯水量が増え、少量の液体から大量の液体まで、幅広く液体の流量を測定することができる。
【0012】
また、段階的に広域部の液面面積が大きくなる場合は、容器に段差構造が生じることとなる。段差構造がある場合、容器内に貯留される液体がその段差を通過するときに液面が広がるので、液面の波の高低差が縮まって液面が安定し、測定手段の測定精度を向上させることができる。
また、連続的に広域部の液面面積が大きくなる場合でも、液体の平面積が広がりながら貯留していくので、液面の波の高低差が徐々に縮まって液面が安定していき、測定手段の測定精度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る流量測定装置は、前記導入管には、前記液体に含まれるガスを排出するガス抜き孔が設けられていることを特徴とする。
地下水等にはガスが含まれていることが多く、地下水が容器に貯留される際に、そのガスが発泡してセンサ部分に泡が付くと、地下水の有無の判断が正確にできなくなり検出精度が落ちる場合があった。さらに、ガスが発泡する際に水滴が飛散し、それをセンサが誤検知してしまうという問題もあった。
しかしながら、上記流量測定装置であれば、導入管にガス抜き孔が設けられているので、地下水等にガスが含まれていてもガス抜き孔からガスを排出することができ、測定手段がガスによる悪影響を受けることが少なくなり、ガスによる誤検知を少なくして測定精度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る流量測定装置は、前記ガス抜き孔の向きが、前記狭域部方向に配置されていることを特徴とする。
これならば、ガス抜き孔が狭域部方向に向いているので、地下水等にガスが含まれていてもガス抜き孔からガスを狭域部方向に排出することができるので、測定手段が広域部側の液面の上昇速度を測定する際にガスによる悪影響を受けることが少なくなり、ガスによる誤検知を少なくして測定精度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る流量測定装置は、前記導入管の前記開口部が斜めに切り取られており、前記開口部の向きが前記狭域部方向に配置されていることを特徴とする。
これならば、導入管から導入される液体が狭域部方向に排出されるので、液体は狭域部を通って広域部に拡散される。これにより、液体が排出される狭域部では液面の波の高低差が大きいが、広域部に拡散することによって液面の波の高低差が小さくなっていき、測定手段が広域部側の液面の上昇速度を測定する際に、液面の波の高低差による悪影響を受けることが少なくなり、誤検知を少なくして測定精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る流量測定装置は、前記容器の平面形状は、略矩形形状であることを特徴とする。
これならば、導入管から導入された液体が容器内に拡散して貯留していく際に、広域部において、導入管から出て容器内壁面に向かって拡散していく際の液体の波と、その液体が容器内壁面にあたって反射する液体の波とが干渉せず、相互にその波を打ち消し合う作用が生じるので、液面が安定し、測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、広域部における液面が安定するので、測定手段が広域部側の液面の上昇速度を検出することにより流量測定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態の測定装置の構成を概略的に示す正面図。
【
図2】同実施形態の液体を貯留する容器の構成を概略的に示すA−A線断面図。
【
図3】同実施形態の液体を貯留する容器の構成を概略的に示す平面断面図。
【
図4】同実施形態の導入管の構成を概略的に示す斜視図。
【
図5】同実施形態の流量測定装置が設置されるダム提体を概略的に示す断面図。
【
図6】同実施形態のガス抜き孔のガス抜き効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る流量測定装置および流量測定方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る流量測定装置100は、例えばダム提体2の底部を流れる地下水の流量を測定する装置である。
図5に示すように、流量測定装置100は、ダム提体2の底部に設けられた監査廊4に設置される。監査廊4には地下水を揚水するための揚水孔6が例えば5m間隔で複数本設けられており、これら揚水孔6に対応して流量測定装置100が各々配置される。
【0021】
次に
図1から
図4を用いて、流量測定装置100の構成について具体的に説明する。流量測定装置100は、流量測定装置本体8とこの流量測定装置本体8を通る配管10と、を備えており、この配管10に揚水孔6が接続されており、これによって地下水が流量測定装置本体8に導入される。また、配管10には、揚水孔6と流量測定装置本体8との間に地下水に混入された異物を除去するストレーナ12が設けられており、ストレーナ12によって異物による測定装置本体8の損傷を防止している。
【0022】
流量測定装置本体8には、配管10から導入される地下水を貯留する容器14が格納される。容器14には、容器14内に地下水を導入する導入管16が上方から挿入され、導入管16の下端部に設けられた開口部18から地下水が容器14内に導入される。また容器14内に地下水の流量を測定する測定手段として、例えば水位センサ20が設けられる。容器14の底部には排水孔22とこの排水孔22に接続される排水管24が設けられ、例えば、地下水の流量測定終了後に、排水孔22および排水管24から容器14内に貯留された地下水が排水される。
さらに、配管10には、揚水孔6と導入管16との間に地下水を排水する排水管26が接続される。この排水管26は流量を測定しないときに地下水を排水するためのものである。なお、配管10、容器14、導入管16、排水管24及び26は透明もしくは半透明の樹脂で形成されていることが好ましい。こうであれば、容器14内の水位の変動が目視でも確認容易となる。また、これらへの付着物の認識が容易となり、その除去作業も容易に行うことができるので、流量測定装置本体8のメンテナンス作業を容易にすることができる。また樹脂で形成されるので、金属より軽く、監査廊4での設置作業において作業者の負担を軽減することができる。さらに、真空成型品で成型して作成できるので、コストも低減できる。
【0023】
導入管16と、排水管24および26とにはそれぞれ開閉弁が設けられ、流量を測定しないときは導入管16の開閉弁28が閉じられ、排水管26の開閉弁30が開けられて地下水が排水される。このとき、排水管24の開閉弁32は開いた状態である。
一方、流量を測定するときは、開閉弁30を閉じ、開閉弁28を開けるとともに開閉弁32を閉じることによって容器14内に地下水を導入して貯留する。流量測定が終了したときは、開閉弁28を閉じ、開閉弁32を開けて容器14内の地下水を排水管24から排水する。
このように、配管10には、揚水孔6、ストレーナ12、排水管26、導入管16がこの順で接続されているが、さらに導入管16の接続部より先には地下水の圧力および温度を測定する圧力計34および温度計36が配置されている。圧力および温度を測定する場合は、開閉弁28および30を閉じることによって圧力計34および温度計36に地下水を通し、これらを計測する。圧力および温度を測定することによって火山活動等の自然現象を監視することもできる。
【0024】
次に
図2および
図3を用いて、容器14内の構造について説明する。
図2は容器14のA−A線断面図であり、
図3は、容器14上部の平面断面図である。本実施形態においては、容器14は多段構造を有しており、下方から上方に向けて段階的又は連続的に末広がりの形状を有している。
図2において、測定手段としての水位センサ20は、地下水の導通によって水位を検知する電極を備えており、共通電極20a、スタート電極20b、低位置電極20c、中間位置電極20d及び高位置電極20eから構成される。これら電極において、共通電極20aの下方端が一番下の方にあり、スタート電極20b、低位置電極20c、中間位置電極20d、高位置電極20eの順に電極下方端の位置が高くなっている。ここでは、共通電極20aの下方端を地下水流量の測定下限とし、高位置電極20eの下方端を地下水流量の測定上限と規定している。なお、測定手段としては他の接触方式のもの、例えば、熱電対式のものでもよく、また、レーザ式、超音波式、電波式などの非接触方式のものでもよい。
【0025】
容器14は上述したように多段構造かつ末広がり形状を有しており、容器の形状が大きく変化する位置を下から順に、段14a、段14b、段14c及び段14dと規定する。共通電極20aおよびスタート電極20bの下方端は段14aと段14bとの間に配置される。また、低位置電極20cは、段14bと段14cとの間に配置され、中間位置電極20dと高位置電極20eは、段14dから容器14の上面14eの間に配置される。
【0026】
さらに、上述した測定下限と測定上限との間において、所定高さにある地下水の液面38を広域部38aと狭域部38bとに仮想的に区画する仮想線40を設けた場合に、この仮想線40を通る位置に導入管16を配置する。本実施形態では、導入管16は、導入管16の中心又は重心が仮想線40を通るように配置されている。この仮想線40は、広域部38aと狭域部38bとを仮想的に区画できるように、いずれかの場所に1本設けられればよい。また、仮想線40は、測定下限から測定上限の間の少なくとも一の測定区間、例えば、低位置電極20c下方端と中間電極20d下方端との間などの任意の所で引けるように設けられればよい。
水位センサ20は、広域部38a側の液面38を測定するように設けられる。こうであれば、広域部38aと狭域部38bとでは広域部38aのほうが液面面積が広いので、広域部38aでの水面の波の干渉が狭域部38bより小さくなり、これにより液面が安定するので、水位センサ20での測定精度を向上させることができる。また、容器14をこのような形状にすることによって、容器14内の上方にスペースができるので、例えば水位センサの本数を増やすことができ、これにより、分解能を上げて測定精度を更に向上させることができる。また、容器14の外側下方に大きなスペースができるので、測定装置本体8内の部品レイアウトを効率良く行うことができる。
【0027】
次に
図2及び
図4を用いて本実施形態における導入管16の構造について説明する。導入管16の下端部には開口部18が設けられており、この開口部18は斜めに切り取られた形状を有し、斜め部分が狭域部38b方向を向いて配置されている。このように配置されているので、地下水がこの開口部18から導入されるとき、まず狭域部38b方向に地下水が流れ、その後広域部38aに拡がっていくので、広域部38aでの水面が安定する。なお開口部18の位置は、最も低い位置の電極である共通電極20aの下方端より下にあるように配置されればよい。
また、導入管16には地下水に含まれるガスを排出するためのガス抜き孔42が設けられる。本実施形態では、ガス抜き孔42が開口部18付近から上方に向けて複数設けられている。例えば、導入管16が内径20mm、外径26mmの場合、所定の位置に設けられたガス抜き孔42の口径は0.5mm程度である。なお、ガス抜き孔間の間隔は15mm程度である。
【0028】
また
図3に示すように、容器14の平面形状は略矩形形状をしているので、導入管16から容器14内に地下水が導入される際に、導入管16から容器14の内壁面に向かう地下水の波と、その反射波の角度が異なる。さらに、導入管16の中心16aから容器14の内壁面までの距離を例えばd1、d2とした場合に、これらd1とd2との距離が異なる。したがって、これらの作用により、導入管16から容器14の内壁面に向かう地下水の波とその反射波とが、相互に打ち消し合う作用を生じて液面を安定することができる。
【0029】
次に本実施形態における流量測定方法について説明する。本実施形態における流量測定装置100の構成は上述した通りであり、地下水の流量を測定する場合は、排水管26の開閉弁30を閉じ、導入管16の開閉弁28を開け、排水管24の開閉弁32を閉じて容器14内に導入管16を通して地下水を導入して貯留する。この際、より好適には、地下水導入当初は容器14の底部の排水管24に設けられた開閉弁32を開けておき、導入される地下水の流量が安定してから開閉弁32を閉じて容器14に地下水を貯留する。
【0030】
容器14に地下水が貯留され、地下水の水位が測定下限すなわち共通電極20aに達すると測定開始の準備段階となる。さらに水位が上昇してスタート電極20bに達すると地下水によって電極間が導通して流量測定が開始される。ここで容器14が末広がり形状をしていることから、流量が少ない場合でも短時間で水位が上昇して低位置電極20cに達することができ、その所要時間と容器14のスタート電極20bから低位置電極20cまでの容量とから地下水の流量を測定することができる。
なお、容量は予め算出されており、その容量を所要時間で除することによって、流量を算出する。また、これらの電極が検知した信号は、例えばコンピュータ(図示せず)などに入力され、所定の処理が行われて流量データとして蓄積されていく。該容量データも予めコンピュータに入力されていれば、所要時間が計測されると、上記計算によって自動的に流量を算出することができる。
【0031】
さらに水位が上昇すると、容器14の多段構造により段14c部から段14d部にかけて液面38が拡がり液面が安定する。また容器14の平面積が拡がることから貯留できる容量も増え、大容量の地下水を貯留することができる。水位が上昇して中間位置電極20dに達すると、上記と同様にして低位置電極20cから中間位置電極20dまでの地下水の流量を測定することができる。
さらに水位が上昇して高位置電極20eに達すると、上記と同様に流量を測定し、その後、流量測定を終了する。流量測定終了後は、導入管16の開閉弁28を閉じるとともに排水管24の開閉弁32を開けて貯留された地下水を排水する。
なお、流量測定が開始されて所定時間が経過しても、例えば低位置電極20cが水位を検出しない場合は、流量が少ない又は誤検知と判断して流量測定を終了し、上記と同様の排水処理を行う。
【0032】
次に
図6を用いて、導入管16のガス抜き孔によるガス抜き効果について説明する。
本実験は、ガス抜き孔がない導入管と、所定のガス抜き孔がある導入管とを用いて、導入管の上方を塞ぎ、流量2.2L/分における導入管内の気体の圧力を測定したものである。グラフは、縦軸が圧力(kPa)で横軸が時間(秒)を表している。2本の折れ線グラフのうち、時間が経過するにつれて圧力が上昇している方がガス抜き孔の無い導入管の方を示しており、圧力の上昇が小さい方がガス抜き孔がある導入管の方を示している。
このグラフから分かるように、ガス抜き孔がある導入管では圧力がほぼ一定以上上がらないことから、ガスが確実に抜けていることが分かり、ガス抜き孔を設けた効果が確認できた。一方、ガス抜き孔がない導入管の場合は、地下水から気泡が生じて液面が安定しなかった。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、容器14が段階的に末広がる形状部分を有するものであったが、これに限らず、液面面積が連続的に大きくなるように形成されていてもよい。このような形状であっても、液面が上昇するにつれて液面面積が拡がるので、液面の波の高低差が小さくなり、水面を安定することができる。
【0034】
また、前記実施形態では、導入管16にガス抜き孔42が複数設けられているが、これに限らず、ガス抜き孔の数は一つでもよく、また口径、形状、位置等はガスが抜け易い構造であればよい。
【0035】
また、前記実施形態では、導入管16の下端部の開口部18が斜めに切り取られた形状をしているが、これに限らず、斜めに切り取られていなくてもよい。こうであっても、地下水が容器14に貯留される際に広域部に拡散していくので、水面が安定し、流量測定を精度よく行うことができる。
【0036】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。