【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の評価は以下のようにして行った。
【0029】
〔共重合体の分子量〕
数平均分子量及び重量平均分子量は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた。GPC装置として、東ソー(株)製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー(株)製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。
【0030】
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度は、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用い、JIS K7121に基づいて測定した。
【0031】
〔酸素透過量〕
MODERN CONTROLS INC.製酸素透過量測定装置MOCONOX−TRAN2/20型を用い、20℃、85%RHの条件でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した。なお、本発明でいう酸素透過度は、PETフィルム基材の上に共重合体(1a)からなる膜を形成した積層フィルムで測定した酸素透過量(単位; ml/m
2 ・day・atm)で示した。PETフィルム単独における酸素透過度は、89.7cm
3/m
2 ・day・atmであった。
〔水蒸気透過量〕
JIS Z2028に記載の方法に準じて、40℃、90%RHの条件で測定した。なお、本発明でいう透湿度は、PETフィルム基材の上に共重合体(1a)からなる膜を形成した積層フィルムで測定した透湿度(単位; cm
3/m
2 ・day・atm)で示した。PETフィルム単独における透湿度は、48.3cm
3/m
2 ・day・atmであった。
【0032】
(合成例)〔メチレンマロン酸ジエチルの合成〕
220gの酢酸溶媒中に、30gのパラホルムアルデヒド、80gのマロン酸ジエチル、5gのCu(OAc)
2、5gのKOAcを添加し、100℃、5時間の条件で合成した。次いで、反応液を50℃、80mmHgの条件で蒸留することで酢酸を除き、次いで、180℃、35mmHgの条件で蒸留することでメチレンマロン酸ジエチルの粗精製物を得た。得られた粗精製物は、200℃、30mmHgの条件で再度蒸留することで18.4gのメチレンマロン酸ジエチルを得た。
【0033】
(重合例1)〔メタクリル酸メチルとメチレンマロン酸ジエチルのラジカル共重合〕
10gのトルエン溶媒中に、8gのメタクリル酸メチルと2gのメチレンマロン酸ジエチルを溶解すると共に、6.63mgのAIBN(重合開始剤)と21.7mgの1−オクタンチオール(連鎖移動剤)を添加し、窒素ガスでバブリングすることで反応液中の酸素を除去した後、100℃、4時間の条件で撹拌し、ラジカル共重合を行った。この反応液を大量のメタノールに注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、3.6gの共重合体を得た。得られた共重合体について
1H−NMR分析(CDCl
3、500MHz)を行ったところ、0.75ppm〜1.25ppm、1.35ppm〜2.40ppm、3.40ppm〜3.70ppmにメタクリル酸メチルに基づくシグナル、1.15ppm〜1.30ppm、1.35ppm〜2.40ppm、3.90ppm〜4.20ppmにメチレンマロン酸ジエチルに基づくシグナルが認められ、上記化合物(I−1)においてRがCH
3、YがCOOC
2H
5で表されるメタクリル酸メチル−2−メチレンマロン酸ジエチル共重合体であると同定した。3.40ppm〜3.70ppmのメチルエステル基のメチルプロトンの積分値と3.90ppm〜4.20ppmのエチルエステル基のメチレンプロトンの積分値との比から、共重合体中のメチレンマロン酸ジエチルの共重合比を求めたところ、18mol%であった。また共重合体について分子量の測定を行った結果、数平均分子量(Mn)が6.5×10
4、分子量分布(Mw/Mn)が2.1であった。
【0034】
(重合例2)〔メタクリル酸メチルとイタコン酸ジメチルの共重合〕
10gのトルエン溶媒中に、7gのメタクリル酸メチルと3gのイタコン酸ジメチルを溶解すると共に、6.63mgのAIBN(重合開始剤)と21.7mgの1−オクタンチオール(連鎖移動剤)を添加し、窒素ガスでバブリングすることで反応液中の酸素を除去した後、100℃、4時間の条件で撹拌し、ラジカル共重合を行った。この反応液を大量のメタノールに注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、3.8gの共重合体を得た。得られた共重合体について
1H−NMR分析を行い、上記化合物(I−1)においてRがCH
3、YがCH
2COOCH
3で表されるメタクリル酸メチル−イタコン酸ジメチル共重合体であると同定し、共重合体中のイタコン酸ジメチルの共重合比は20mol%であった。また共重合体について分子量の測定を行った結果、数平均分子量(Mn)が6.0×10
4、分子量分布(Mw/Mn)が2.2であった。
【0035】
(実施例1)〔ラジカル共重合体の還元反応〕
重合例1で得られた1.8gのラジカル共重合体を18mlの4−メチルモルホリンに溶解したポリマー溶液を、100℃に加熱した18mlの4−メチルモルホリンと18mlの70%濃度の水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Vitiride)トルエン溶液の混合液に滴下し、100℃、5時間の条件で還元反応を行った。この反応液を氷冷し、酢酸エチルを加えて未反応のVitirideをクエンチした後、濃縮して4−メチルモルホリンとトルエンを除いた後、2N−塩酸水溶液を加えてpHを1に調整し、60℃、5時間の条件で撹拌した。得られた固体生成物をろ過により回収し、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。得られた固体生成物にメタノールを添加して溶解した後、H形イオン交換樹脂を充填したカラムを通し、次にOH形イオン交換樹脂を充填したカラムを通して、目的物であるメタリルアルコール−2−メチレンプロパンジオール共重合体(以下、「共重合体(1a)」という。)を得た。この共重合体(1a)について
1H−NMR分析(DMSO−d
6、500MHz)を行ったことろ、エステル結合に基づくシグナルは認められず、水酸基に変換したことが確認され、目的物の共重合体であると同定した。
【0036】
得られた共重合体(1a)についてガラス転移温度を測定した結果、ガラス転移温度は82℃であった。
得られた共重合体(1a)は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール単一溶媒に溶解し、また、上記アルコールと水との混合溶媒に可溶であった。
共重合体(1a)を1−プロパノール:水=55:45(質量比)の混合溶媒に溶解して、3.0質量%の溶液を調製し、厚み12μmのPETフィルム上に約50μmの塗工厚でコーティングし、100℃、5分の条件で熱風乾燥を行い、次に140℃、10分の条件で熱処理を行うことで、厚みが1.6μmの共重合体(1a)の膜を得た。得られたフィルムについて酸素透過量を測定した結果、酸素透過量は1.0cm
3/m
2・day・atmであった。また、得られたフィルムについて水蒸気透過量を測定した結果、共重合体(1a)からなる膜の水蒸気透過量は42.0g/m
2・dayであった。
【0037】
(実施例2)
メタクリル酸メチルとメチレンマロン酸ジエチルのラジカル共重合(重合例1)において、メタクリル酸メチルを7.5g、メチレンマロン酸ジエチルを2.5gにする以外は実施例1と同じ方法でラジカル共重合を行った。共重合体中のメチレンマロン酸ジエチルの共重合比は28mol%であった。また共重合体について分子量の測定を行った結果、数平均分子量(Mn)が5.4×10
4、分子量分布(Mw/Mn)が2.1であった。
実施例1と同じ方法で還元反応を行い、目的物である共重合体(1a)を得た。この共重合体(1a)について
1H−NMR分析を行い、目的物の共重合体であると同定した。
【0038】
得られた共重合体(1a)についてガラス転移温度を測定した結果、ガラス転移温度は91℃であった。
得られた共重合体(1a)は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール単一溶媒に溶解し、また、上記アルコールと水との混合溶媒に可溶であった。
実施例1と同じ方法で厚みが1.6μmの共重合体(1a)の膜を得て酸素透過量を測定した結果、酸素透過量は9.5cm
3/m
2・day・atmであった。また、得られたフィルムについて水蒸気透過量を測定した結果、共重合体(1a)からなる膜の水蒸気透過量は45.0g/m
2・dayであった。
【0039】
(比較例1)
重合度が1700、けん化度が98.5%であるポリビニルアルコールを水に溶解して、3.0質量%の溶液を調製し、実施例1と同様の方法にて酸素透過量を測定した結果、酸素透過量は77.8cm
3/m
2・day・atmであった。
【0040】
(比較例2)
EVOH樹脂(株式会社クラレ製エバールF−101B)を1−プロパノール:水=55:45(質量比)の混合溶媒に溶解して、3.0質量%の溶液を調製し、実施例1と同様の方法にて酸素透過量を測定した結果、酸素透過量は19cm
3/m
2・day・atmであった。
【0041】
実施例の結果から明らかなように、本発明の共重合体は溶液コーティングに適用可能な沸点の低いアルコール溶媒に容易に溶解し、また優れたガスバリア性を示すことが確認された。また、比較例との比較から、本発明の共重合体は、溶液コーティングが可能な既存のガスバリア材料に比べて、ガスバリア性に優れることが確認された。