特許第6299009号(P6299009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299009
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】コレステリック液晶組成物の評価方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20180319BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/26 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20180319BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20180319BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/54 B
   C09K19/30
   C09K19/32
   C09K19/16
   C09K19/18
   C09K19/26
   C09K19/20
   C09K19/14
   G02F1/13 500
   G02F1/137 500
【請求項の数】4
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2013-167086(P2013-167086)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34270(P2015-34270A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】多辺 由佳
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−172634(JP,A)
【文献】 特開2004−204233(JP,A)
【文献】 特開平10−088140(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/095680(JP,A1)
【文献】 特開2011−026384(JP,A)
【文献】 特開2011−042703(JP,A)
【文献】 特開2011−213614(JP,A)
【文献】 特開2011−213790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
G02F 1/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液晶相を示すネマチック液晶組成物と、キラル化合物とからなるコレステリック液晶組成物において、
前記コレステリック液晶組成物は、下記一般式(LC)
【化1】
(一般式(LC)中、RLCは炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、
LC1及びALC2は、それぞれ独立して、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、及び
(c)1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−3,7−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はクロマン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、フッ素原子、塩素原子、CF又はOCFで置換されていてもよく、
LCは単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
LCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子で置換されていてもよく、
aは1〜4の整数を表すが、aが2、3又は4を表し、ALC1が複数存在する場合、複数存在するALC1は、同一であっても異なっていてもよく、ZLCが複数存在する場合、複数存在するZLCは、同一であっても異なっていてもよい。)で表される液晶化合物を少なくとも1種含有し、
前記キラル化合物が、下記一般式(Ch−I)
【化2】
(一般式(Ch−I)中、R100及びR101は互いに独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜30個のキラル若しくはアキラルなアルキル基を含むキラルな基を表すが、該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−又はC≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していてもよいが、R100及びR101の少なくとも一方は、下記式(Ra)、(Rb)、(Rc)、(Rf)、(Rg)又は(Rh)
【化3】
(式中、Rは、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は水素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられていてもよく、
及びXは、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、ただし、XはXと異なる基を表し、
は0〜20の整数を表し、
は0又は1を表す。)で表される、CH基が置換されているキラルなアルキル基を表し、
100及びZ101は互いに独立して、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合を表し、
100及びA101は互いに独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−に置き換えられてもよい。)、又は
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)を表すが、これらの全ての基は、非置換であるか、1個若しくは2個以上の水素原子がF若しくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル若しくはアルコキシカルボニル基で一置換若しくは多置換されていてよく、
11は0を表し、
12は0を表し、
11は0、1、2、3、4又は5を表す。)で表される少なくとも1種の化合物であり、
膜厚がdである薄膜状の前記コレステリック液晶組成物の膜厚方向に、コレステリック−等方相の共存領域において温度勾配ΔTを発生させ、コレステリックドロップレットを回転させたときの回転速度ωを規定する、下記式(i)で表される回転指数λを測定する、コレステリック液晶組成物の評価方法
λ=ω(d/ΔT) ・・・・(i)
【請求項2】
前記回転指数λを示す前記温度勾配が10℃以下である請求項1に記載の方法
【請求項3】
コレステリック−等方相の共存領域を発現する温度幅が0.1℃以上である請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
下記一般式(1F)
【化4】
(式中、R1F及びR2Fはそれぞれ独立して炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基を表し、ただし、R1F及びR2Fの少なくとも一方は前記アルキル基を表し、前記アルキル基中の1つ以上の−CH−は、酸素原子と硫黄原子が直接隣接しないように−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−で置換されていてもよく、前記アルキル基中の1つ以上の水素原子は、シアノ基又は水酸基で置換されていてもよく、前記−CO−N(R)−及び−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、前記炭素原子数1〜4のアルキル基中の1つ以上の−CH−は、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよく、前記炭素原子数1〜4のアルキル基中の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
1F、A2F、A3F及びA4Fは、それぞれ独立して下記式
【化5】
(式中、シクロヘキサン環の1つ以上の−CH−は、酸素原子で置換されていてもよく、ベンゼン環の1つ以上の−CH=は、窒素原子で置換されていてもよく、前記式中の1つ以上の水素原子は、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよい。)のいずれかの基を表し、
1F、X2F及びX3Fは、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、−CHCH−、−CFCF−、−(CH−、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−OCHCH−、−CHCHO−、−OCF−、−CFO−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−CH=CH−CO−O−又は−O−CO−CH=CH−を表し、前記−CO−N(R)−及び−N(R)−CO−におけるRは、水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、
及びmはそれぞれ独立して0又は1を表し、
ただし、R1F、R2F、A1F、A2F、A3F、A4F、X1F、X2F及びXのいずれか1つ以上は、フッ素原子を有する基を表す。)で表される液晶化合物を少なくとも1種含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度勾配により回転するコレステリックドロップレットを含有するコレステリック液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物に対して、その螺旋軸に沿って温度勾配が与えられると、ダイレクターが回転することが報告されており(非特許文献1参照)、この現象はLehmann効果として古くから知られている。その後長らく、この現象についての報告がなかったが、近年、この現象を再現したことが報告された(非特許文献2参照)。
【0003】
一方で、液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に幅広く汎用されるようになってきており、これらに用いるものとして、液晶化合物を含有する種々の液晶組成物がこれまでに開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】O.Lehmann,Ann.Phys.Leipzig 2,649(1900)
【非特許文献2】P.Oswald,Eur.Phys.J.E 28,377−383(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような液晶化合物の回転効果については、その後、それ以上の検討は為されておらず、液晶化合物の回転現象が液晶組成物において有効に利用された例は、これまで知られていない。また、液晶化合物の回転現象と、該液晶化合物を用いた液晶表示素子との品質との関連性についても知られていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、液晶化合物の回転現象を利用し、高品質の表示素子を実現できるコレステリック液晶組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コレステリック液晶組成物において、コレステリックドロップレットの回転現象を再現させ、効果的な回転効率と回転方向の制御について種々検討したところ、コレステリックドロップレットの回転速度が速い液晶組成物は、高品質の表示素子を実現できるなど、コレステリックドロップレットの回転速度と液晶組成物の特性との間に関連性があることを見出した。
【0008】
本発明は、常温で液晶相を示すネマチック液晶組成物と、キラル化合物とからなるコレステリック液晶組成物において、
前記コレステリック液晶組成物は、下記一般式(LC)
【化1】
(一般式(LC)中、RLCは炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、
LC1及びALC2は、それぞれ独立して、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、及び
(c)1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−3,7−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はクロマン−2,6−ジイル基からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、フッ素原子、塩素原子、CF又はOCFで置換されていてもよく、
LCは単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
LCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子で置換されていてもよく、
aは1〜4の整数を表すが、aが2、3又は4を表し、ALC1が複数存在する場合、複数存在するALC1は、同一であっても異なっていてもよく、ZLCが複数存在する場合、複数存在するZLCは、同一であっても異なっていてもよい。)で表される液晶化合物を少なくとも1種含有し、
前記キラル化合物が、下記一般式(Ch−I)
【化2】
(一般式(Ch−I)中、R100及びR101は互いに独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜30個のキラル若しくはアキラルなアルキル基を含むキラルな基を表すが、該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−又はC≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していてもよいが、R100及びR101の少なくとも一方は、下記式(Ra)、(Rb)、(Rc)、(Rf)、(Rg)又は(Rh)
【化3】
(式中、Rは、炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は水素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられていてもよく、
及びXは、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、ただし、XはXと異なる基を表し、
は0〜20の整数を表し、
は0又は1を表す。)で表される、CH基が置換されているキラルなアルキル基を表し、
100及びZ101は互いに独立して、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合を表し、
100及びA101は互いに独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−に置き換えられてもよい。)、又は
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)を表すが、これらの全ての基は、非置換であるか、1個若しくは2個以上の水素原子がF若しくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル若しくはアルコキシカルボニル基で一置換若しくは多置換されていてよく、
11は0を表し、
12は0を表し、
11は0、1、2、3、4又は5を表す。)で表される少なくとも1種の化合物であり、
膜厚がdである薄膜状の前記コレステリック液晶組成物の膜厚方向に、コレステリック−等方相の共存領域において温度勾配ΔTを発生させ、コレステリックドロップレットを回転させたときの回転速度ωを規定する、下記式(i)で表される回転指数λを測定する、コレステリック液晶組成物の評価方法を提供する。
λ=ω(d/ΔT) ・・・・(i)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コレステリックドロップレットの回転速度が速く、高品質の表示素子を実現できるコレステリック液晶組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るコレステリック液晶組成物は、常温で液晶相を示すネマチック液晶組成物と、キラル化合物とからなるコレステリック液晶組成物において、膜厚がdである薄膜状の前記コレステリック液晶組成物の膜厚方向に、コレステリック−等方相の共存領域において温度勾配ΔTを発生させ、コレステリックドロップレットを回転させたときの回転速度ωを規定する、下記式(i)で表される回転指数λが0.01×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることを特徴とする。
λ=ω(d/ΔT) ・・・・(i)
かかるコレステリック液晶組成物は、薄膜状としたときに膜厚方向に温度勾配を発生させることで、コレステリックドロップレットが回転するものであり、このときの回転効率に優れるものである。
【0011】
前記コレステリック液晶組成物は、常温で液晶相を示し、キラル化合物を含有することにより、コレステリック−等方相の共存領域を発現するものである。ここで、常温とは、典型的には15〜25℃の温度を意味する。
【0012】
前記コレステリックドロップレットとは、液晶化合物が集合して形成される集合体であり、偏光顕微鏡等を用いて光学的に観察した場合に、特有の縞模様が観測される。この縞模様の向きは、コレステリックドロップレットの螺旋軸の向きによって、互いに異なる。
また、コレステリックドロップレットは、前記温度勾配によって、螺旋軸を軸として回転し、その回転方向は、液晶組成物の前記温度勾配の向きや、後述するキラル化合物のキラリティなど、温度勾配が発生しているときの液晶組成物の状態に依存して変化し得る。
【0013】
回転指数λ(degree・sec−1・℃−1・m)は、コレステリックドロップレットの回転角速度(degree・sec−1)を温度勾配(℃・m−1)で除したものとして定義され、温度勾配を効率よく回転運動に変換し得る回転効率の指標となるものである。
【0014】
コレステリックドロップレットは、回転指数λが大きいほど、回転速度が速く(回転効率が高く)なり、コレステリックドロップレットの回転速度が速いほど、このような液晶化合物を用いた液晶表示素子は高速応答性に優れたものとなる。
したがって、回転指数λの値は大きいほど好ましいが、0.01×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることで、高速応答性に十分に優れた液晶表示素子が得られる。そして、本発明において、回転指数λは0.1×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることが好ましく、0.2×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることがより好ましく、0.5×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることがさらに好ましく、1.0×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上であることがさらに好ましく、1.0×10−2degree・sec−1・℃−1・m以上であることが最も好ましい。
【0015】
先に挙げた文献「O.Lehmann,Ann.Phys.Leipzig 2,649(1900)」(非特許文献1)、「P.Oswald,Eur.Phys.J.E 28,377−383(2009)」(非特許文献2)では、温度勾配が与えられることにより、液晶化合物のダイレクターが回転すると報告されている。しかしながら、本発明者らは、温度勾配が与えられることにより、ダイレクターが回転するのではなく、コレステリックドロップレット自体が全体として回転することを見出している。そして、本発明における回転指数λの値は、これら2文献の記載内容から同様に前記式(i)に従って具体的に算出される値よりも、桁違いに大きく、コレステリックドロップレットの回転速度が顕著に速い。これは、液晶化合物として、後述する特定のものを選択した場合に特に顕著である。
【0016】
薄膜状のコレステリック液晶組成物の膜厚方向に温度勾配を発生させるとは、薄膜状のコレステリック液晶組成物の2つの主面(面積が最も広い2つの対向する面、又は面積が最も広い面と、この面と対向する、面積が2番目に広い面)の間で、温度差を発生させることを意味し、温度差を発生させるためには、公知の温度調節手段を用いることができる。
薄膜状のコレステリック液晶組成物は、例えば、配向処理が施されたガラス板等の2枚の基板で挟持することにより作製できる。
【0017】
温度勾配を発生させる薄膜状のコレステリック液晶組成物の膜厚は、1μm〜1cmであることが好ましく、2μm〜50mmであることがより好ましく、3μm〜10mmであることが特に好ましい。
【0018】
前記コレステリック液晶組成物は、コレステリックドロップレットの回転効率に優れるものであり、上述の0.01×10−3degree・sec−1・℃−1・m以上の回転指数λを示す前記温度勾配は、コレステリック−等方相の共存領域を示す範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜10℃の範囲に調節される。回転指数λは、コレステリック液晶組成物の含有成分の種類とその量により調節される。
【0019】
前記コレステリック液晶組成物において、コレステリック−等方相の共存領域を発現する温度幅は、組成によって異なるが、例えば、0.1〜10℃の範囲である。
【0020】
前記キラル化合物は、公知のものでよく、例えば、不斉原子を有する化合物、軸不斉を有する化合物、面不斉を有する化合物、及びアトロプ異性体のいずれでもよいが、不斉原子を有する化合物が好ましい。不斉原子を有する化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると、立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。螺旋誘起力が強いことを特に要求される場合には、軸不斉を有する化合物が好ましい。
また、前記キラル化合物は重合性基を有するものでも、重合性基を有しないものでもよい。
前記キラル化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
不斉原子を有する化合物としては、側鎖部分に不斉炭素を有する化合物、環構造部分に不斉炭素を有する化合物及びその両方を満たす化合物が挙げられる。具体的には下記一般式(Ch−I)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化1】
一般式(Ch−I)中、R100及びR101は互いに独立して、水素原子、シアノ基、NO、ハロゲン、OCN、SCN、SF、炭素原子数1〜30個のキラル又はアキラルなアルキル基、重合性基又は環構造を含むキラルな基を表すが、該アルキル基中の1個又は2個以上の隣接していないCH基は互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−又はC≡C−により置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は互いに独立して、ハロゲン又はシアノ基によって置換されていてもよく、該アルキル基は直鎖状であっても、分岐していても又は環構造を含んでいてもよい。
CH基が置換されているキラルなアルキル基
としては、以下の式(Ra)〜(Rk)が好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
式中、R及びRは、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は水素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の−CH−基は酸素原子又は硫黄原子が相互に直接結合しないものとして−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはシアノ基で置き換えられていてもよく、重合性基を有していてもよい。重合性基としては、下記の式(R−1)〜(R−15)で表される構造が好ましい。
【0026】
【化4】
【0027】
また、X及びXは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFであることが好ましい。ただし、一般式(Rc)及び(Rh)において、アステリスク*を付した位置が不斉原子となるためには、XはXと異なる基が選択される。
【0028】
また、nは0〜20の整数であり、nは0又は1であり、
一般式(Rd)及び(Ri)におけるRは、水素原子又はメチル基が好ましく、
一般式(Re)及び(Rj)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられ、
一般式(Rk)におけるkは、0〜5の整数であり、
より好ましくは、R=C、C13、C17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、Xとしては、F、CF、CHが好ましい。
中でも特に、CH基が置換されているキラルなアルキル基としては、
【0029】
【化5】
(式中、oは0又は1であり、nは2〜12、好ましくは3〜8、より好ましくは4、5又は6の整数であり、アステリスク*は、キラルな炭素原子を表す。)が好ましい。
【0030】
一般式(Ch−I)中、Z100及びZ101は互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すが、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CF=CF−、−COO−、−OCO−、−CH−CH−、−C≡C−又は単結合であるのが好ましい。
【0031】
一般式(Ch−I)中、A100及びA101は互いに独立して、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)又は
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、インダン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(これら(c)群の基中に存在する1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−は互いに独立して−O−又は−S−に置き換えられてもよく、これら(c)群の基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)からなる群より選ばれる基を表すが、これらの全ての基は、非置換であるか、ハロゲン、シアノ基、NO又は、1個若しくは2個以上の水素原子がF若しくはClにより置換されていてもよい炭素原子数1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル若しくはアルコキシカルボニル基で一置換若しくは多置換されていてよい。
【0032】
100及びA101は、1,4−フェニレン又はトランス−1,4−シクロヘキシレンが好ましいが、これらの環が、非置換であるか、あるいは1〜4位において、F、Cl、CNあるいは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル又はアルコキシカルボニルで置換されているのが好ましい。
【0033】
一般式(Ch−I)中、n11は0又は1を表し、n11が0のとき、m12は0であり、かつm11は0、1、2、3、4又は5であり、n11が1のとき、m11とm12は各々独立に0、1、2、3、4又は5であり、n11が0のとき、R100及びR101の少なくとも1つは、キラルなアルキル基、重合性基又は環構造を含むキラルな基である。
11及びm12が0のとき、m11は1、2又は3であるのが好ましく、n11が1のとき、m11及びm12は各々独立に1、2又は3であるのが好ましい。
【0034】
一般式(Ch−I)中、Dは、下記式(D1)〜(D3)
【0035】
【化6】
(式中、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、炭素原子数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基又はアルコキシ基の水素原子は任意にフッ素原子に置換されていてもよく、また該アルキル基又はアルコキシ基中のメチレン基は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−又はC≡C−により、酸素原子又は硫黄原子が互いに直接結合しないように置換されていてもよい。)で表される。)で表される置換基である。
【0036】
一般式(Ch−I)における部分構造、−(A100−Z100)m11−(D)n11−(Z101−A101)m12−においてn11が0である場合には、該部分構造は以下の構造が好ましい。
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
(但し、これらの式においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよく、これらの置換基及び窒素原子の導入は結晶性の低下及び誘電異方性の向きや大きさを制御するのに好ましい。Zの定義は式(Ch−I)におけるZ100及びZ101と同じである。)が挙げられる。信頼性の面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環よりもベンゼン環やシクロヘキサン環の方が好ましい。誘電率異方性を大きくするという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことがよいが、その場合には化合物が有する分極性が比較的大きく、結晶性を低下させ液晶性を安定化するために好ましく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物が有する分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
【0040】
11及びm12が0のとき、一般式(Ch−I)で表される化合物の好ましい形態は、以下のとおりである。
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
式中、R100、R101及びZ100は、一般式(Ch−I)におけるR100、R101及びZ100と同じ意味を表し、R100及びR101の少なくとも一つはキラルな基を表し、L100〜L105は各々独立に水素原子又はフッ素原子を表す。
中でも、一般式(Ch−I)で表される化合物は、下記式で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化14】
【0047】
11が1を表すとき、一般式(Ch−I)で表される化合物は環構造部分に不斉炭素を有する構造となるが、キラルな構造Dは式(D2)が好ましい。
Dが式(D2)を表す場合の一般式(Ch−I)で表される化合物は、具体的には以下の式(D2−1)〜(D2−8)
【0048】
【化15】
【0049】
【化16】
(式中、Rは各々独立して、炭素原子数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0050】
軸不斉化合物としては、下記一般式(IV−d4)、(IV−d5)、(IV−c1)及び(IV−c2)で表される化合物が好ましい。ここで軸不斉の軸は、一般式(IV−d4)、(IV−d5)、(IV−c2)の場合、2つのナフタレン環のα位を結ぶ結合であり、一般式(IV−c1)の場合、2つのベンゼン環を結ぶ単結合である。
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0054】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、A71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3、6ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素原子がハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよい。
【0055】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、Z71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0056】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、X71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は−CHCH−を表す。
【0057】
一般式(IV−d4)及び(IV−d5)中、m71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、一般式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、又はX71−(A71−Z71)−R71と同じ意味を表す。
【0058】
一般式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
【0059】
一般式(IV−c1)及び(IV−c2)中、E61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
また、一般式(IV−c1)及び(IV−c2)中、
61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表す。
【0060】
一般式(IV−c1)中、 R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、R66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖、又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
【0061】
螺旋誘起力が強いことを特に要求される場合には、一般式(IV−d4)及び(IV−d5)で表される化合物が特に好ましい。
【0062】
前記コレステリック液晶組成物において、キラル化合物は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0063】
前記コレステリック液晶組成物において、前記キラル化合物の含有量は、前記ネマチック液晶組成物に対して、0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.2〜2質量%であることがさらに好ましい。キラル化合物の含有量がこのような範囲であることで、コレステリックドロップレットの回転速度がより速く(回転指数λがより大きく)なる。
【0064】
前記コレステリック液晶組成物において、等方相としては、液体でもよいし、等方的樹脂を含んでいてもよく、等方的樹脂により形成されていてもよい。等方的樹脂を含む場合には、前記樹脂が、網のように結合した高分子ネットワークを有することが好ましい。高分子ネットワークを有することにより、前記コレステリック液晶組成物は、薄膜状等の形状をより安定して維持でき、取り扱い性がより良好となる。
【0065】
前記コレステリック液晶組成物中の液晶化合物には、コレステリックドロップレットを形成可能なものが含まれていればよい。そして、前記液晶化合物は、誘電率異方性が正のp型、誘電率異方性が負のn型、及び非分極型(p型及びn型のいずれの性質も示さないもの)のいずれでもよい。
【0066】
以下、本発明における好ましい液晶化合物について、より具体的に説明する。
液晶化合物としては、下記一般式(LC)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0067】
【化19】
(一般式(LC)中、RLCは炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、
LC1及びALC2は、それぞれ独立して、
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、及び
(c)1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−3,7−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はクロマン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表すが、上記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、フッ素原子、塩素原子、CF又はOCFで置換されていてもよく、
LCは単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
LCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子で置換されていてもよく、
aは1〜4の整数を表すが、aが2、3又は4を表し、ALC1が複数存在する場合、複数存在するALC1は、同一であっても異なっていてもよく、ZLCが複数存在する場合、複数存在するZLCは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0068】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC1)及び一般式(LC2)
【0069】
【化20】
(式中、RLC11及びRLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、ALC11、及びALC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0070】
【化21】
(該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、CF又はOCFで置換されていてもよい。)を表し、
LC11、XLC12、XLC21〜XLC23はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、CF又はOCFを表し、
LC11及びYLC21はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基、CF、OCHF、OCHF又はOCFを表し、
LC11及びZLC21はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表し、
LC11及びmLC21はそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、ALC11、ALC21、ZLC11及びZLC21が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0071】
LC11及びRLC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがより好ましく、直鎖状であることが更に好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すものが最も好ましい。
【0072】
【化22】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
【0073】
LC11及びALC21はそれぞれ独立して下記の構造が好ましい。
【0074】
【化23】
【0075】
LC11及びYLC21はそれぞれ独立してフッ素原子、シアノ基、CF又はOCFであることが好ましく、フッ素原子又はOCFであることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0076】
LC11及びZLC21はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−であることが好ましく、単結合、−CHCH−、−OCH−、−OCF−又は−CFO−であることがより好ましく、単結合、−OCH−又は−CFO−であることが特に好ましい。
【0077】
LC11及びmLC21はそれぞれ独立して1、2又は3であることが好ましく、低温での保存安定性、応答速度を重視する場合には1又は2であることが好ましく、ネマチック相上限温度の上限値を改善するためには2又は3であることが好ましい。
【0078】
一般式(LC1)で表される化合物は、下記一般式(LC1−a)〜一般式(LC1−c)
【0079】
【化24】
(式中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表し、
LC1a1、ALC1a2及びALC1b1は、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、
LC1b1、XLC1b2、XLC1c1〜XLC1c4はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、CF又はOCFを表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0080】
LC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがより好ましい。
【0081】
LC11〜XLC1c4は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
LC11はそれぞれ独立してフッ素原子、CF又はOCFであることが好ましい。
【0082】
一般式(LC1)で表される化合物は、下記一般式(LC1−d)〜一般式(LC1−m)
【0083】
【化25】
(式中、RLC11、YLC11、XLC11及びXLC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるRLC11、YLC11、XLC11及びXLC12と同じ意味を表し、
LC1d1、ALC1f1、ALC1g1、ALC1j1、ALC1k1、ALC1k2、ALC1m1〜ALC1m3は、それぞれ独立して1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、
LC1d1、XLC1d2、XLC1f1、XLC1f2、XLC1g1、XLC1g2、XLC1h1、XLC1h2、XLC1i1、XLC1i2、XLC1j1〜XLC1j4、XLC1k1、XLC1k2、XLC1m1及びXLC1m2は、それぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、CF又はOCFを表し、
LC1d1、ZLC1e1、ZLC1j1、ZLC1k1、及びZLC1m1は、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0084】
LC11は炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがより好ましい。
【0085】
LC11〜XLC1m2は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
LC11はフッ素原子、CF又はOCFであることが好ましい。
LC1d1〜ZLC1m1は、それぞれ独立して−CFO−、又は−OCH−であることが好ましい。
【0086】
一般式(LC2)で表される化合物は、下記一般式(LC2−a)〜一般式(LC2−g)
【0087】
【化26】
(式中、RLC21、YLC21及びXLC21〜XLC23は、それぞれ独立して前記一般式(LC2)におけるRLC21、YLC21及びXLC21〜XLC23と同じ意味を表し、
LC2d1〜XLC2d4、XLC2e1〜XLC2e4、XLC2f1〜XLC2f4及びXLC2g1〜XLC2g4は、それぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、CF又はOCFを表し、
LC2a1、ZLC2b1、ZLC2c1、ZLC2d1、ZLC2e1、ZLC2f1及びZLC2g1は、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−COO−又は−OCO−を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0088】
LC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であることがより好ましい。
【0089】
LC21〜XLC2g4は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
LC21はフッ素原子、CF又はOCFであることが好ましい。
LC2a1〜ZLC2g4は、それぞれ独立して−CFO−、又は−OCH−であることが好ましい。
【0090】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC3)、一般式(LC4)、一般式(LC4’)及び一般式(LC5)
【0091】
【化27】
(式中、RLC31、RLC32、RLC41、RLC42、RLC51及びRLC52はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子で置換されていてもよく、
LC31、ALC32、ALC41、ALC42、ALC51及びALC52はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0092】
【化28】
(該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子は塩素原子、CF又はOCFで置換されていてもよい。)のいずれかを表し、
LC31、ZLC32、ZLC41、ZLC42、ZLC51及びZLC52はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−COO−、−OCH−、−CHO−、−OCHCH−、−CHCHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、
はCH基又は酸素原子を表し、
LC41は水素原子又はフッ素原子を表し、
LC31、mLC32、mLC41、mLC42、mLC51及びmLC52はそれぞれ独立して0〜3を表し、ただし、mLC31+mLC32、mLC41+mLC42及びmLC51+mLC52は1、2又は3であり、ALC31〜ALC52、及びZLC31〜ZLC52が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0093】
LC31〜RLC52は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すものが最も好ましく、
【0094】
【化29】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
LC31〜ALC52は、それぞれ独立して下記の構造が好ましく、
【0095】
【化30】
LC31〜ZLC51は、それぞれ独立して単結合、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CFO−、−OCF−又は−OCH−であることが好ましい。
【0096】
一般式(LC3)で表される化合物は、下記一般式(LC3−a)及び一般式(LC3−b)
【0097】
【化31】
(式中、RLC31、RLC32、ALC31及びZLC31は、それぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31、RLC32、ALC31及びZLC31と同じ意味を表し、
LC3b1〜XLC3b6はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表すが、XLC3b1及びXLC3b2又はXLC3b3及びXLC3b4のうちの少なくとも一方の組み合わせは共にフッ素原子を表し、
LC3a1は1、2又は3を表し、mLC3b1は0又は1を表し、ALC31及びZLC31が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0098】
LC31及びRLC32は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基であることが好ましい。
【0099】
LC31は、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基であることが好ましく、1,4−フェニレン基、又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることがより好ましい。
【0100】
LC31は単結合、−CHO−、−COO−、−OCO−、又は−CHCH−であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0101】
一般式(LC3−a)としては、下記一般式(LC3−a1)〜一般式(LC3−a4)を表すことが好ましい。
【0102】
【化32】
(式中、RLC31及びRLC32は、それぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
【0103】
LC31及びRLC32は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、RLC31が炭素原子数1〜7のアルキル基であり、RLC32が炭素原子数1〜7のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0104】
一般式(LC3−b)としては、下記一般式(LC3−b1)〜一般式(LC3−b12)を表すことが好ましく、一般式(LC3−b1)、一般式(LC3−b6)、一般式(LC3−b8)、又は一般式(LC3−b11)を表すことがより好ましく、一般式(LC3−b1)又は一般式(LC3−b6)を表すことがさらに好ましく、一般式(LC3−b1)を表すことが最も好ましい。
【0105】
【化33】
(式中、RLC31及びRLC32は、それぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるRLC31及びRLC32と同じ意味を表す。)
【0106】
LC31及びRLC32は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、RLC31が炭素原子数2又は3のアルキル基であり、RLC32が炭素原子数2のアルキル基であることがより好ましい。
【0107】
一般式(LC4)及び一般式(LC4’)で表される化合物は、下記一般式(LC4−a)〜一般式(LC4−c)及び一般式(LC4’−d)、一般式(LC5)で表される化合物は下記一般式(LC5−a)〜一般式(LC5−c)
【0108】
【化34】
(式中、RLC41、RLC42及びXLC41は、それぞれ独立して前記一般式(LC4)及び一般式(LC4’)におけるRLC41、RLC42及びXLC41と同じ意味を表し、
LC51及びRLC52は、それぞれ独立して前記一般式(LC5)におけるRLC51及びRLC52と同じ意味を表し、
LC4a1、ZLC4b1、ZLC4c1、ZLC4d1、ZLC5a1、ZLC5b1及びZLC5c1は、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−COO−、−OCH−、−CHO−、−OCHCH−、−CHCHO−、−OCF−又は−CFO−を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることがより好ましい。
【0109】
LC41、RLC42、RLC51及びRLC52は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基であることが好ましい。
【0110】
LC4a1〜ZLC5c1は、それぞれ独立して単結合、−CHO−、−COO−、−OCO−、又は−CHCH−であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0111】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC6)
【0112】
【化35】
(式中、RLC61及びRLC62は、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子で置換されていてもよく、
LC61〜ALC63はそれぞれ独立して下記のいずれかの構造
【0113】
【化36】
(該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCHCH基は、−CH=CH−、−CFO−、又は−OCF−で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)
を表し、
LC61及びZLC62は、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCH−、−(CH−、−COO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−を表し、
mLC61は0〜3を表す。ただし、前記一般式(LC1)〜一般式(LC5)で表される化合物を除く。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0114】
LC61及びRLC62は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すものが最も好ましい。
【0115】
【化37】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
LC61〜ALC63はそれぞれ独立して下記の構造が好ましく、
【0116】
【化38】
LC61及びZLC62はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−COO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−又は−CFO−が好ましい。
一般式(LC6)で表される化合物は、下記一般式(LC6−a)〜一般式(LC6−m)
【0117】
【化39】
(式中、RLC61及びRLC62は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表す。)
で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であるのがより好ましい。
【0118】
上記のように、本発明においては、前記液晶化合物として種々のものを用いることができるが、これらの中でも、フッ素原子を有する液晶化合物が好ましく、液晶組成物は、フッ素原子を有する液晶化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。このような特定の液晶化合物を用いることで、コレステリックドロップレットの回転速度がより速く(回転効率がより高く)なる。
【0119】
前記コレステリック液晶組成物がフッ素原子を有する液晶化合物を含有する場合、液晶化合物の総含有量に対する、フッ素原子を有する液晶化合物の含有量の比率は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、前記比率の上限値は特に限定されないが、80質量%であることが好ましく、70質量%であることがより好ましい。
【0120】
前記一般式(LC)で表される液晶化合物のうち、フッ素原子を有する液晶化合物としては、下記一般式(1F)
【0121】
【化40】
(式中、R1F及びR2Fはそれぞれ独立して炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基又はシアノ基を表し、ただし、R1F及びR2Fの少なくとも一方は前記アルキル基を表し、前記アルキル基中の1つ以上の−CH−は、酸素原子と硫黄原子が直接隣接しないように−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−で置換されていてもよく、前記アルキル基中の1つ以上の水素原子は、シアノ基又は水酸基で置換されていてもよく、前記−CO−N(R)−及び−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、前記炭素原子数1〜4のアルキル基中の1つ以上の−CH−は、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよく、前記炭素原子数1〜4のアルキル基中の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
1F、A2F、A3F及びA4Fは、それぞれ独立して下記式
【0122】
【化41】
(式中、シクロヘキサン環の1つ以上の−CH−は、酸素原子で置換されていてもよく、ベンゼン環の1つ以上の−CH=は、窒素原子で置換されていてもよく、前記式中の1つ以上の水素原子は、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよい。)のいずれかの基を表し、
1F、X2F及びX3Fは、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−N=N−、−CH=N−N=CH−、−CHCH−、−CFCF−、−(CH−、−COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−OCHCH−、−CHCHO−、−OCF−、−CFO−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−CH=CH−CO−O−又は−O−CO−CH=CH−を表し、前記−CO−N(R)−及び−N(R)−CO−におけるRは、水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、
及びmはそれぞれ独立して0又は1を表し、
ただし、R1F、R2F、A1F、A2F、A3F、A4F、X1F、X2F及びXのいずれか1つ以上は、フッ素原子を有する基を表す。)
で表される化合物が例示できる。
一般式(1F)で表される化合物は、本発明で用いる液晶化合物として、特に好ましいものである。
【0123】
前記コレステリック液晶組成物において、液晶化合物は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0124】
前記コレステリック液晶組成物において、キラル化合物の含有量は、回転指数λが所定の値となる限り特に限定されないが、後述する液晶表示素子の高速応答性の評価をより高精度に行う観点からは、0.05〜10.0質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0125】
前記コレステリック液晶組成物は、薄膜状としたときに膜厚方向に温度勾配を発生させることで、コレステリックドロップレットが回転する。このときの回転効率(回転速度、回転のし易さ、回転指数λ)は、同様の液晶化合物を含有する液晶組成物を電極間に挟持して電圧を印加したときの、液晶化合物の回転効率と相関関係を有する。したがって、本発明に係るコレステリック液晶組成物の回転指数λの値から、同じ液晶化合物を含有する液晶組成物を液晶表示素子へ適用した場合の高速応答性を評価できる。そして、本発明に係るコレステリック液晶組成物は回転指数λの値が大きく、同様の液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて作製した液晶表示素子は、高速応答性に優れたものとなる。
【0126】
評価対象の液晶組成物は、本発明に係るコレステリック液晶組成物と同じ液晶化合物を含有していればよく、組成が本発明に係るコレステリック液晶組成物と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、液晶化合物以外のその他の成分としても、本発明に係る液晶組成物と同じ成分を含有しているものが好ましい。そして、各成分の含有比率は、評価対象の液晶組成物と、本発明に係るコレステリック液晶組成物との間で、誤差が20%以内であることが好ましく、10%以内であることがより好ましく、5%以内であることが特に好ましい。
また、評価対象の液晶組成物の評価時における形状は、本発明に係るコレステリック液晶組成物の場合と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「wt%」は質量%を意味する。
【0128】
<コレステリック液晶組成物の製造、コレステリックドロップレットの回転指数λの測定>
[実施例1]
下記式で表される液晶化合物をそれぞれ下記比率で含有するネマチック液晶組成物を調製し、ここにさらに下記式で表されるキラルドーパント(キラル化合物)を、ネマチック液晶組成物に対して1質量%添加して、コレステリック液晶組成物を調製した。
【0129】
【化42】
【0130】
得られたコレステリック液晶組成物を、自由水平配向処理を施した2枚のガラス板で挟持し、セル厚が20μmのセルを作製した。
偏光顕微鏡を用いて、コレステリック液晶組成物が55〜57℃の領域でコレステリック−等方相の共存領域を有することを確認し、さらに等方相の中に、直径約20μmの縞模様を呈するものが観察され、コレステリックドロップレットの存在が確認された。
作製したセルに対して、一方のガラス板側を高温(71℃)にし、他方のガラス板側を低温(40℃)にして、温度勾配温度勾配を発生させたところ、コレステリックドロップレットが回転する様子が確認され、その回転速度は、3度/秒であった。なお、この回転は、コレステリックドロップレットそのものの回転と考えられた。これは、以降の実施例においても同様である。
式(i)で表される回転指数λを求めたところ、0.3×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0131】
[実施例2]
ネマチック液晶組成物として、上記のものに代えて、下記式で表される液晶化合物をそれぞれ下記比率で含有するものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、1.0×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0132】
【化43】
【0133】
[実施例3]
キラルドーパントの添加量を、1質量%に代えて0.2質量%とした点以外は、実施例2と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、0.5×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0134】
[実施例4]
キラルドーパントの添加量を、1質量%に代えて2質量%とした点以外は、実施例2と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、2.0×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0135】
[実施例5]
上記のネマチック液晶組成物に代えて、下記式で表される液晶化合物を用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、0.25×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0136】
【化44】
【0137】
[実施例6]
ネマチック液晶組成物として、上記のものに代えて、下記式で表される液晶化合物をそれぞれ下記比率で含有するものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、0.2×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0138】
【化45】
【0139】
[実施例7]
上記のネマチック液晶組成物に代えて、下記式で表される液晶化合物を用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、0.25×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0140】
【化46】
【0141】
[実施例8]
ネマチック液晶組成物として、上記のものに代えて、下記式で表される液晶化合物をそれぞれ下記比率で含有するものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、2.6×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0142】
【化47】
【0143】
[実施例9]
ネマチック液晶組成物として、上記のものに代えて、下記式で表される液晶化合物をそれぞれ下記比率で含有するものを用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、2.5×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0144】
【化48】
【0145】
[比較例1]
上記のネマチック液晶組成物に代えて、下記式で表される液晶化合物を用いた点以外は、実施例1と同様にしてセルを作製し、コレステリックドロップレットの回転指数λを求めたところ、0.001×10−3degree・sec−1・℃−1・mであった。
【0146】
【化49】
【0147】
<液晶表示素子の製造及び応答時間の評価>
[実施例10]
実施例2におけるコレステリック液晶組成物を用いた液晶表示素子の応答時間を、テストセル(日産化学工業社製「SE−5300」、セル厚3.5μm)を用いて25℃で測定(τd、4.5V→1Vで測定)したところ、6msであり、応答は極めて速かった。このように、コレステリックドロップレットの回転速度が速い(回転指数λが大きい)液晶組成物は、高速応答性を示すことが確認された。
【0148】
[比較例2]
比較例1におけるコレステリック液晶組成物を用いた点以外は、実施例10と同様に液晶表示素子の応答時間を測定したところ、12msであり、応答は遅かった。