(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。複数の図面に表れる同一符号は同一の部分又は部材を示す。発明を理解しやすくするために、実施形態を分けて説明するが、これらの実施形態はそれぞれ独立するものではなく、共有できるところは他の実施形態の説明を適用する。
【0010】
〔発光素子〕
発光素子は、主として、平面形状が矩形の半導体積層体と、半導体積層体の同一面側に設けられるp側電極及び側電極と、を備える。矩形としては、正方形が好ましい。なお、本実施形態における矩形とは、4つの角の角度について90度±5度の変動が許容されることを意味し、これら矩形に近似する形状をも包含する。
【0011】
(半導体積層体)
半導体積層体は、n型半導体層とp型半導体層とを含む。また、これらの間に活性層を含むものが好ましい。
これらn型半導体層、活性層及びp型半導体層の種類、材料は特に限定されるものではなく、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)等の半導体材料を用いることができる。各層の膜厚及び層構造は、当該分野で公知のものを利用することができる。
【0012】
(露出部)
半導体積層体は、その一部領域において、n型半導体層が露出する複数の露出部を有する。これらの露出部は、平面視でp側電極が配置される領域とは異なる領域に配置される。言い換えると、露出部は、n型半導体層上に積層されたp型半導体層及び活性層が膜厚方向の全てにわたって(任意にn型半導体層の膜厚方向の一部が)除去されることによって画定される。
これら複数の露出部は、後述するn側電極によって一体的に、n型半導体層と電気的に接続するために利用される。
【0013】
露出部の形状、大きさ、位置は、意図する発光素子の大きさ、形状、接続状態等によって適宜設定することができる。
露出部は、全てが同じ形状、同じ大きさで配列されているものがより好ましい。これにより、電流の供給量の均一化を実現することができる。その結果、発光素子の全体として、発光強度を均一化し、輝度ムラを抑制することができる。
各露出部の形状は、平面視において円又は楕円、三角形、矩形、六角形等の多角形等が挙げられ、なかでも、円形又は楕円形が好ましい。各露出部の大きさは、半導体積層体の大きさ、求められる発光素子の出力、輝度等によって適宜調整することができる。露出部は、例えば、直径(一辺)が数十〜数百μm程度の大きさが好ましい。別の観点から、直径が、半導体積層体の一辺の1/20〜1/5程度の大きさであることが好ましい。
【0014】
露出部は、複数の第1露出部と複数の第2露出部とを備える。
第1露出部は、平面視で、半導体積層体の辺に沿って等間隔に配置されている。ここで等間隔とは、第1露出部同士がいずれも同じ間隔で配置されているのみならず、それらの間隔は±5%程度の範囲内でのずれを許容することを意味する。第1露出部間の最短距離aは、各露出部の大きさ、半導体積層体の大きさ、求められる発光素子の出力、輝度等によって適宜調整することができる。第1露出部間の最短距離a(以下、第1露出部及び第2露出部については中心からの距離で示す)は、例えば、露出部の大きさ(例えば、直径)の2〜8倍程度が挙げられ、4〜6倍程度の距離が好ましい。別の観点から、最短距離aは、半導体積層体の一辺の1/30〜1/5程度の距離が挙げられ、1/15〜1/5程度の距離が好ましい。具体的には、1辺が1.4mmの半導体積層体である場合、最短距離aは、50〜300μm程度が挙げられ、100〜250μm程度が好ましい。
【0015】
第1露出部は、半導体積層体の縁部よりも内側に形成されていることが好ましい。第1露出部から半導体積層体の縁部までの最短距離eは、第1露出部間の最短距離aと同程度又は若干の広狭があってもよい。なかでも、最短距離eは第1露出部間の最短距離aよりも短いことが好ましい(e<a)。例えば、1辺が1.4mmの半導体積層体である場合、25〜250μm程度が挙げられ、50〜200μm程度が好ましい。
このように第1露出部に囲まれた領域にある最短距離aよりも、電流密度が低くなる領域の最短距離eを短くすることにより、半導体積層体の端部とそれよりも内側との電流密度の偏りを軽減することができる。
【0016】
第2露出部は、第1露出部よりも後述するp側電極に近接して配置されている。
第2露出部は、例えば、
図1Bに示すように、(i)等間隔に配列された複数の第1露出部18間の最短距離aよりも第1露出部18との最短距離bが長く(a<b)、かつ、(ii)等間隔に配列された複数の第1露出部間の最短距離aよりもp側電極12との最短距離cが短い(a>c)、第2露出部19を含む。この第2露出部19は、1つでもよいが、複数であることが好ましく、第2露出部の全部であることがより好ましい。
上述した(i)及び(ii)を満たす限り、第2露出部とp側電極との最短距離cが第2露出部ごとに異なっていてもよいが、一部又は全部が同じであることが好ましい。なかでも、第2露出部は、上述した(i)及び(ii)を満たし、p側電極12に最も近接して配置された第2露出部19aを複数含むことがさらに好ましい。
【0017】
第2露出部が3つ以上配置される場合、互いに隣接する第2露出部間の最短距離dは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。最短距離dは、第1露出部間の最短距離aよりも長いことが好ましい(a<d)。これにより、第1露出部が均等配置された領域よりも、比較的電流が集中しやすいp側電極近傍に、電流が必要以上に集中するのを軽減することができる。
第2露出部間の最短距離dは、例えば、露出部の大きさ(例えば、直径)の1〜10倍程度が挙げられ、2〜8倍程度が好ましい。別の観点から、最短距離dは、半導体積層体の一辺の1/15〜1/4程度の距離が挙げられ、1/10〜1/4程度の距離が好ましい。具体的には、1辺が1.4mmの半導体積層体である場合、最短距離dは、100〜500μm程度が挙げられ、200〜400μm程度が好ましい。
【0018】
言い換えると、第2露出部はp側電極に隣接する。ここでp側電極に隣接するとは、互いに等間隔で配置された第1露出部とは別個に配置され、第2露出部からp側電極までの最短距離cが、第1露出部からp側電極までの最短距離fよりも短いことを意味する(c<f)。
【0019】
例えば、第2露出部と最も近い第1露出部までの最短距離bは、露出部の大きさ(例えば、直径)の1〜6倍程度が挙げられ、2〜5倍程度が好ましい。別の観点から、最短距離bは、50〜300μm程度が挙げられ、100〜250μm程度が好ましい。
例えば、第2露出部とp側電極との間の最短距離cは、露出部の大きさ(例えば、直径)の1〜10倍程度が挙げられ、1〜8倍程度が好ましい。別の観点から、最短距離cは、20〜200μm程度が挙げられ、20〜150μm程度が好ましい。
例えば、第1露出部とp側電極との最短距離fは、露出部の大きさ(例えば、直径)の1〜20倍程度が挙げられ、2〜15倍程度が好ましい。別の観点から、最短距離fは、50〜400μm程度が好ましい。
【0020】
このような露出部の配置により、つまり、均等配置された第1露出部によって、第2電極から遠い領域で電流を広げることができる。また、比較的電流が集中しやすい第p側電極近傍に、第1露出部から第1露出部の均等配置以上の距離で離れるようにして、第2露出部を配置することにより、p側電極側とその対角側との電流広がりのバランスをとることができる。その結果、第1露出部に囲まれた領域における電流の偏りが緩和され、電流広がりを均一にすることができ、発光輝度分布を向上させることができる。
また、活性層における電流密度のさらなる均一化により、順方向電圧(Vf)をも軽減することができる。
【0021】
(基板)
半導体積層体は、通常、半導体成長用の基板上に形成される。
このような基板は、半導体層をエピタキシャル成長させることができるものであれば良く、例えば、サファイア(Al
2O
3)、スピネル(MgA1
2O
4)のような絶縁性基板等が挙げられる。
【0022】
上述したように半導体積層体が平面視において矩形である場合、基板も同様に矩形であるのが好ましい。特に、基板は、半導体積層体よりも若干大きい平面積を有する、半導体積層体の平面と相同の矩形であることが好ましい。
基板は、半導体積層体からの光を十分に散乱又は回折させて、発光効率を向上させるために、表面に複数の凸部を有するものが好ましい。このような基板の表面の凸部は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。
【0023】
基板は、発光素子の最終形態において、厚み方向の一部又は全部が除去されていてもよい。基板の除去は、レーザリフトオフ法等を利用して行うことができる。ただし、基板は、半導体層から完全に除去されたものに加えて、半導体層の端部又は隅部に若干の基板が残存していてもよい。また、研磨又は研削等によって、厚み方向の一部のみを除去してもよい。
【0024】
(n側電極及びp側電極)
半導体積層体は、それぞれ、n型半導体層と接続されるn側電極と、p型半導体層と接続されるp側電極と、を有する。
これらのn側電極及びp側電極は、半導体積層体の第1主面側(つまり、基板とは反対側)に配置されている。特に、n側電極は、上述した複数の第1露出部及び複数の第2露出部に一体的に接続されている。また、p側電極は、半導体積層体、特に、p型半導体層の一隅に配置されている。
【0025】
第1電極及び第2電極の平面形状は、特に限定されるものではなく、円形,楕円形,多角形,扇形,これらに近い形状,これらに凹みを有する形状等が挙げられる。
【0026】
なかでも、第2電極は、p型半導体の一隅を覆う扇形であることが好ましい。第2電極の扇形の大きさは、特に限定されるものではなく、外部電極と接続するための電気的接続を実現できる程度であればよい。具体的には、50〜300μm程度の一辺を有する扇形状が挙げられ、100〜300μm程度が好ましい。
【0027】
第1電極は、半導体積層体より若干小さい矩形に、第2電極と離間するように扇形に対応する凹みを有する形状であることが好ましい。従って、第1電極は、第1露出部及び第2露出部上のみならず、後述するように絶縁性を確保して、p型半導体層上にも配置される。
第1電極及び第2電極がこのような形状を有することにより、活性層における電流密度が均一となるように電流を印加することが可能となる。
【0028】
n側電極及びp側電極は、例えば、Au,Pt,Pd,Rh,Ni,W,Mo,Cr,Ti,Al,Cu等の金属又はこれらの合金や、亜鉛,インジウム,スズ,ガリウム及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む透光性導電膜等の単層膜又は積層膜によって形成することができる。透光性導電膜としては、ITO,ZnO,IZO,GZO,In
2O
3及びSnO
2等が挙げられる。具体的には、n側電極及びp側電極は、半導体層側からTi/Rh/Au,Ti/Pt/Au,W/Pt/Au,Rh/Pt/Au,Ni/Pt/Au,Al−Cu合金/Ti/Pt/Au,Al−Si−Cu合金/Ti/Pt/Au,Ti/Rh,Ti/Rh/Ti/Pt/Auなどの積層膜によって形成することができる。膜厚は、当該分野で用いられる膜の膜厚のいずれでもよい。
【0029】
(導電層)
n側電極及びp側電極は、n型半導体層及びp型半導体層と直接接触していてもよいし、導電層を通して電気的に接続されていてもよい。導電層としては、特に限定されないが、例えば、n型半導体層又はp型半導体層に接触する反射層及び/又はオーミック電極層が挙げられる。
【0030】
反射層は、n型半導体層及びp型半導体層の双方に接続されていてもよいし、p型半導体層にのみ接続されていてもよい。また、この反射層は、オーミック電極層を介してn型半導体層及び/又はp型半導体層に接続されていてもよい。
反射層としては、銀又は銀合金などを有する層が挙げられる。銀又は銀合金による層は、半導体層に接触して又は半導体層に最も近い位置に配置されていることが好ましい。銀合金としては、当該分野で公知の材料のいずれを用いてもよい。反射層の厚みは、特に限定されるものではなく、半導体積層体から出射される光を効果的に反射することができる厚み、例えば、20nm〜1μm程度が挙げられる。反射層は、n型半導体層又はp型半導体層との接触面積は大きいほど好ましく、例えば、半導体積層体の平面積の50%以上、60%以上、70%以上が挙げられる。
【0031】
導電層として反射層を用いる場合には、銀のマイグレーションを防止するために、その上面(好ましくは、上面及び側面)を被覆するさらなる導電層及び/又は被覆電極を形成することが好ましい。
このようなさらなる導電層又は被覆電極としては、通常、電極材料として用いられている金属及び合金によって形成されるものであればよく、さらなる導電層としては、上述した第1電極及び第2電極の材料として挙げられた金属又は合金等の単層又は積層膜が挙げられる。例えば、Ni/Ti/Ru等が好ましい。被覆電極としては、例えば、アルミニウム,銅,ニッケル等の金属を含有する単層又は積層層が挙げられ、なかでも、AlCu及びAlCuSiなどを用いることが好ましい。さらなる導電層及び被覆電極の厚みは、効果的に銀のマイグレーションを防止するために、それぞれ、数百nm〜数μm程度が挙げられる。
また、被覆電極にかえて、SiNなどの絶縁層を形成することもできる。この場合、反射層の上面で部分的に開口し、かつ反射層の側面を被覆するように絶縁層を形成することによって、銀のマイグレーションを防止することができると共に、n側電極及びp側電極と、反射層とを電気的に接続することができる。
【0032】
オーミック電極層としては、上述した透光性導電膜の中から選択した1種以上の単層膜又は積層膜によって形成することができる。
【0033】
特に、p側電極は、第1導電層又は第2導電層を介してp型半導体層の上面に接続されていることが好ましい。ここで、第1導電層としては、半導体層側から、上述した反射層と、反射層を被覆するさらなる導電層と、被覆電極とが積層された構造が挙げられる。第2導電層としては、オーミック性を確保する(接触抵抗を下げる)ために、半導体層側から、透光性導電膜と、反射層と、反射層を被覆するさらなる導電層と、被覆電極とが積層された構造等が挙げられる。
n側電極は、第1導電層及び第2導電層のいずれをも介することなくn型半導体層に接続されていてもよいし、第1導電層又は第2導電層の何れかを介してn型半導体層に接続されていていることが好ましい。特に、n側電極は、第2導電層を介してn型半導体層に接続されていていることがより好ましい。
【0034】
(絶縁膜)
n側電極及びp側電極及び/又は導電層は、半導体積層体との間に、絶縁膜を部分的に介在していてもよい。
n側電極は、上述した半導体積層体に配置される露出部を通して電気的に接続される。なお、複数の露出部に接続されることが好ましく、全ての露出部に接続されることがより好ましく、これら複数又は全ての露出部を一体的に被覆するように接続されることがさらに好ましい。従って、n側電極は、n型半導体層上のみならず、p型半導体層上にも配置される。この場合、露出部に至る半導体積層体の側面(活性層及びp型半導体層の側面)からp型半導体層上に配置する絶縁膜を介して、n側電極がp型半導体層上に配置される。このように、n側電極が露出部を一体的に被覆することにより、延伸して接続するための電極を設ける必要がなく、シート抵抗を低減することが可能となる。
ここでの絶縁膜は、特に限定されるものではなく当該分野で公知の材料を、電気的な絶縁性を確保し得る厚みで用いることが好ましい。
【0035】
n側電極及びp側電極と、n型半導体層及びp型半導体層とのそれぞれの間に、例えば、上述した第1導電層及び第2導電層において、電気的な接続を阻害しない範囲で、誘電体多層膜、つまり、DBR(分布ブラッグ反射器)膜が含まれていてもよい。つまり、透光性導電膜と、反射層と、さらなる導電層と、被覆電極との間の一部、特に透光性導電膜と反射層との間の一部にDBR膜が配置されていてもよい。
DBR膜は、例えば、任意に酸化膜等からなる下地層の上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる1組の誘電体を、複数組(例えば、2〜5)にわたって積層させた多層構造であり、所定の波長光を選択的に反射するものである。具体的には屈折率の異なる膜を1/4波長の厚みで交互に積層することにより、所定の波長を高効率に反射させることができる。材料として、Si,Ti,Zr,Nb,Ta,Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物または窒化物を含んで形成することができる。
DBR膜を酸化膜で形成する場合、低屈折率層を例えばSiO
2、高屈折率層を例えばNb
2O
5,TiO
2,ZrO
2,Ta
2O
5等とすることができる。具体的には、下地層側から順番に(Nb
2O
5/SiO
2)n、nは2〜5が挙げられる。DBRの総膜厚は0.2〜1μm程度が好ましい。
【0036】
〔発光装置〕
本発明の発光装置は、上述した発光素子と、表面に配線パターンを有する基体とを含んで構成される。
また、この発光装置は、任意に、その側面、上面又は下面(つまり、基体の側面、上面又は下面)に、反射性、透光性、遮光性等を有する樹脂、これらの樹脂に蛍光体、拡散材、着色剤等を含有した樹脂等を配置していてもよい。このような樹脂、蛍光体等は、当該分野で通常使用されているもののいずれをも利用することができる。なかでも、発光装置は、発光素子を被覆する透光性部材を含むものが好ましい。
発光素子は、基体にフリップチップ実装されていることが好ましい。
この場合、通常、発光素子のn側電極及びp側電極が、接合部材によって、上述した基体の配線パターンと接合されている。接合部材は、当該分野で公知の材料のいずれをも用いることができる。
【0037】
(基体)
基体は、例えば、金属、セラミック、樹脂、誘電体、パルプ、ガラス、紙又はこれらの複合材料(例えば、複合樹脂)、あるいはこれら材料と導電材料(例えば、金属、カーボン等)との複合材料等からなる基材の表面に、任意に内部及び/又は裏面に、複数の配線パターンを有する。
【0038】
配線パターンは、発光素子に電流を供給し得るものであればよく、当該分野で通常使用されている材料、厚み、形状等で形成されている。
また、配線パターンは、部分的に、上述した発光素子のn側電極及びp側電極と接続するための実装用の接合部材が配置されていてもよい。
配線パターンは、正負一対のパターンを含むものであれば、これらとは独立して配置されたパターンを有していてもよい。このような配線パターンによって、発光素子における第1の半導体積層体のn側電極と、第2の半導体積層体のp側電極とを接続することができる。
【0039】
(樹脂)
樹脂としては、熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂,これらの変性樹脂又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等などが挙げられる。
また、反射性、透光性及び/又は遮光性等を付与するために、上述した樹脂に、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カーボンブラック、当該分野で公知の蛍光体等を含んでいてもよい。
【0040】
このような樹脂等を、発光素子を被覆する透光性部材として形成するためには、印刷法、電気泳動堆積法、ポッティング、圧縮成型、スプレー、静電塗布法等を利用することができる。特に、透光性部材は、発光素子とともに基体を被覆するものが好ましい。さらに、発光素子を被覆する部位の平面積が、基体を被覆する部位の平面積よりも大きいものがより好ましい。このような形状としては、例えば、四角柱の上に半球が載置された形状が挙げられる。
【0041】
以下に、発光素子及びそれを用いた発光装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0042】
実施形態1:発光素子
実施形態1の発光素子10は、
図1A〜
図1Dに示すように、略正方形の半導体積層体13と、半導体積層体13の同一面側にそれぞれ接続されたn側電極11及びp側電極12を有する。
発光素子10の一辺長さは1.4mmである。
【0043】
半導体積層体13は、表面に凹凸を有する略正方形のサファイア基板17の上に、n型半導体層14、活性層15、p型半導体層16がこの順に積層されて構成されている。
【0044】
半導体積層体13は、その内側において、p型半導体層16及び活性層15の一部が除去されてn型半導体層14が露出した複数の露出部を有している。露出部は、平面視で、半導体積層体13の辺に沿って等間隔に配列された19個の第1露出部18と、3個の第2露出部19とを備える。第1露出部18は、5×5個で等間隔に行列配置されるうちの一隅の6個を除く配置に等しい。第2露出部19は、第1露出部18よりも後述するp側電極12に近接して配置されている。第2露出部19は、いずれも、第1露出部18間の最短距離aよりも第1露出部18との最短距離bが長く、さらに最短距離aよりもp側電極12との最短距離cが短い。ここでは、第2露出部19は、いずれも、p側電極12との最短距離cが同じである。
【0045】
これら第1露出部18及び第2露出部19は、例えば、直径約60μmの円形形状を有する。これによって、n側電極は、半導体積層体13の平面積の5%程度(全露出部の合計平面積)で半導体積層体13と接続されている。
【0046】
図1Bに示すように、平面視において、第1露出部18間の最短距離aは、配列の数に対応して、半導体積層体13の1/6(分母は配列の数+1)よりも小さい間隔(例えば、露出部の半径分小さい間隔)である。具体的には、最短距離aは約250μmである。第1露出部18と第2露出部19との最短距離bは、例えば、約230μmである。最短距離a>最短距離bである。一方、第1露出部18と別の第2露出部19との距離b’は、例えば、約260μmである。別の第1露出部18と別の第2露出部19との距離b”は、例えば、約310μmである。距離b’、b”>最短距離aである。距離b’<距離b”である。
なお、最短距離bと距離b”が略等しい場合には、電流密度が均一となるように、p電電極近傍の電流を均一にできる。
【0047】
第2露出部19とp側電極12との最短距離cは、約170μmである。この最短距離cは、最短距離aよりも短い。最短距離c>最短距離aである。
【0048】
第1露出部18とp側電極12との最短距離fは、第2露出部19とp側電極12との最短距離cよりも広い。具体的には、最短距離fは約330μmである。
第1露出部18と半導体積層体13の縁部からの最短距離eは、第1露出部18間の最短距離aよりも小さい。具体的には、最短距離eは約160μmである。
【0049】
n側電極11は、上述したn型半導体層14が露出した複数の第1露出部18及び第2露出部19と一体的に接続され、p側電極12及びその周辺以外の半導体積層体13、つまりp型半導体層16の上方に、SiO
2からなる絶縁膜20(厚み:約600nm)を介して配置されている。絶縁膜20は、第1露出部18及び第2露出部19に至る半導体積層体13の側面と、第1露出部18及び第2露出部19の一部領域(n型半導体層14上面)上に配置されている。絶縁膜20は、第1露出部18及び第2露出部19におけるn型半導体層14上面を露出する複数の貫通孔20aと、p型半導体層16の一部の上面を露出する1つの貫通孔20bとを有している。n側電極11は、これら絶縁膜20の貫通孔20aを通して、第1露出部18及び第2露出部19と接続されている。
【0050】
n側電極11は、例えば、
図1Dに示すように、半導体層側からAl−Si−Cu合金層31、Ti層32、Pt層33及びAu層34(厚み:約350nm、約300nm、約200nm及び約450nm)の積層膜によって形成されている。
【0051】
p側電極12は、半導体積層体13、つまり、p型半導体層16の一隅に扇形に配置されている。ここでの扇形状の一辺の長さは、半導体積層体13の一辺の長さの1/5程度であり、例えば、約300μmである。p側電極12は、n側電極11と同様に、半導体層側からAl−Si−Cu合金層31、Ti層32、Pt層33及びAu層34(厚み:約350nm、約300nm、約200nm及び約450nm)によって形成されている。
【0052】
p側電極12は、p型半導体層16上の略全面に形成された反射性の導電層21(厚み:約600nm)と、この反射性の導電層21の側面及び上面を被覆するAl−Cu合金からなる被覆電極22(厚み:約2μm)とを介して、p型半導体層16と電気的に接続されている。
反射性の導電層21は、
図1Dに示すように、半導体層側からAg層35、Ni層36、Ti層37及びRu層38(厚み:約100nm、約300nm、約100nm及び約100nm)の積層膜によって形成されている。
これら導電層21及び被覆電極22は、半導体積層体13の平面積の90%程度で半導体積層体13と接続されている。
このような反射性の導電層21によって、活性層から出射される光の取り出し効率を向上させることができる。また、被覆電極22によって、銀のマイグレーションを効果的に用いることができる。
【0053】
実施形態2:発光素子
実施形態2の発光素子40は、
図2A及び2Bに示すように、略正方形の半導体積層体13と、半導体積層体13の同一面側にそれぞれ接続されたn側電極11及びp側電極12を有する。
サファイア基板17及び半導体積層体13の構成は発光素子10と同様である。
第1露出部18及び第2露出部19は、平面視で、実施形態1の発光素子10と同様に配置されている。
【0054】
これら第1露出部18及び第2露出部19上と、p型半導体層16上との略全面に、ITOによって透光性導電膜53(厚み:約0.1μm)が配置されている。
【0055】
半導体積層体13及び透光性導電膜53上にはDBR膜54((Nb
2O
5/SiO
2)
3、厚み:約1μm)が配置されている。DBR膜54は、第1露出部18及び第2露出部19に至る半導体積層体13の側面を被覆し、第1露出部18及び第2露出部19上において、透光性導電膜53を露出している。また、DBR膜54は、p型半導体層16上では、平面視において、等間隔に行列配置された貫通孔54a(直径:約10μm、ピッチ:約50μm)を有している。
【0056】
DBR膜54の上には、第1露出部18、第2露出部19及びp型半導体層16上に、それぞれ、反射性の導電層55(厚み:約600nm)と、この反射性の導電層55の側面及び上面を被覆するAl−Cu合金からなる被覆電極56(厚み:約2μm)が形成されている。反射性の導電層55及び被覆電極56は、第1露出部18及び第2露出部19上でDBR膜54から露出した透光性導電膜53と接続され、n型半導体層14と電気的に接続されている。また、反射性の導電層55及び被覆電極56は、DBR膜54の貫通孔54aを通して、p型半導体層16と電気的に接続されている。
反射性の導電層21及び被覆電極56は、
図1Dに示した積層膜によって形成されている。
【0057】
被覆電極56上には、SiO
2からなる絶縁膜20(厚み:約600nm)が形成されている。絶縁膜20は、第1露出部18及び第2露出部19上方の被覆電極56をほぼ完全に露出し、一方、p型半導体層16上方では、p側電極12と接続する部位以外の被覆電極56の側面及び上面を被覆している。
【0058】
n側電極11は、絶縁膜20から露出した第1露出部18及び第2露出部19上方の被覆電極56と一体的に電気的に接続され、p側電極12及びその周辺以外の半導体積層体13、つまりp型半導体層16の上方に及んで絶縁膜20を介して配置されている。n側電極は、例えば、半導体層側からTi層、Rh層、Ti層、Pt層及びAu層(厚み:約160nm、約100nm、約200nm、約200nm及び約450nm)の積層膜によって形成されている。
n側電極11は、被覆電極56、反射性の導電層55及び透光性導電膜53を通して、n型半導体層14と電気的に接続されている。
【0059】
p側電極12は、半導体積層体13、つまり、p型半導体層16の一隅に扇形状で配置されており、上述したp側電極12と接続する部位で、絶縁膜20から露出した被覆電極56と電気的に接続されている。p側電極12は、n側電極11と同様に、半導体層側からTi層、Rh層、Ti層、Pt層及びAu層(厚み:約160nm、約100nm、約200nm、約200nm及び約450nm)の積層膜によって形成されている。
p側電極12は、被覆電極56、反射性の導電層55及び透光性導電膜53を通して、p型半導体層16と電気的に接続されている。
【0060】
<発光素子の評価>
実施形態1の発光素子10、
図3B及び
図3Cに示す比較のための発光素子100及び発光素子110について、電流密度の分布を、有限要素法を用いたシミュレーションソフトにより解析した。その結果を
図3Aから3Cにそれぞれ示す。
図3Aから3Cにおいて、濃淡が濃い(カラーバーにおける数値が高い)程に電流密度が高いことを示す。
【0061】
発光素子100は、発光素子100のp側電極を通る対角線上において、最もp側電極に近い1つの露出部を除いて、等間隔で配列した21個の露出部を備える。さらに、発光素子100は、発光素子100のp側電極を通る対角線上において、これらの露出部間の間隔よりも若干p側電極から遠ざかるように1個の露出部を備える。
なお、p側電極に近い3個の露出部は、上述した21個の露出部間の最短距離(aに相当)よりも、第1露出部と第2露出部との最短距離bに相当する距離が長く、かつp側電極と第2露出部との最短距離cに相当する距離が長い。
これらの構成以外は、実質的に発光素子10及び40と同様の構成を有する。
【0062】
発光素子110では、p側電極に最も遠い露出部に向かって、各露出部を近づけ、全体的に、p側電極とは反対の方向に露出部を偏在させて配置した。
なお、p側電極に近い3個の露出部は、上述した21個の露出部間の最短距離(aに相当)よりも、第1露出部と第2露出部との最短距離bに相当する距離が長く、かつ、p側電極と第2露出部との最短距離cに相当する距離が長い。
これらの構成以外は、実質的に発光素子10及び40と同様の構成を有する。
【0063】
図3Aから3Cによれば、発光素子10は、発光素子100に比較して、均等配置された第1露出部によって第2電極から遠い領域で電流を広げることができる。
通常、第p側電極近傍は比較的に電流が集中しやすい傾向がある。一方、第1露出部から第1露出部の均等配置以上の距離で離れるように配置してp側電極近傍に第2露出部を配置することにより、p側電極側とその対角側との電流広がりのバランスをとることができる。これにより、第1露出部に囲まれた領域における電流の偏りを緩和し、電流広がりを均一にすることができることが確認された。
さらに、発光素子10は、発光素子110における露出部の偏在に比較して、p側電極側とその対角側との電流広がりのバランスをとることができる。これにより、電流広がりを均一にすることができることが確認された。
【0064】
発光素子10、発光素子100及び発光素子110について、電流350mAの電流を印加して順方向電圧(Vf)を測定した。
その結果、発光素子100に対して発光素子10では、Vf値が約0.6%低減していることが確認された。なお、発光素子110のVf値は、発光素子100と同等であった。
このように、活性層における電流密度をさらに均一にすることにより、順方向電圧(Vf)をも軽減できることが確認された。
【0065】
実施形態3:発光装置
この発光装置60は、
図4A〜4Cに示すように、実施形態1の発光素子10と、表面に配線パターン(図示せず)を有する基体61とを備える。
配線パターンは、正負一対のパターンと、さらにこれらに接続された補助パターンとを有する。
【0066】
発光素子をフェイスダウン実装するために、発光素子10のn側電極11及びp側電極12は、接合部材(図示せず)を介して、基体61の配線パターンと接続されている。
この場合、接合部材は、発光素子10側ではなく、基体61の配線パターン側に形成されたものであってもよい。
【0067】
この発光装置60では、発光素子10が透光性部材63によって被覆されている。透光性部材63は、例えば、蛍光体(例えば、YAG系蛍光体)を含有したシリコーン樹脂によって形成されている。
透光性部材63は、発光素子10とともに基体61の側面をも被覆している。
透光性部材63は、発光素子10を被覆する部位の平面積が、基体61を被覆する部位の平面積よりも大きく設定されており、いわゆるキノコ形状を有している。つまり、発光素子10の側方から上方にかけて、透光性部材は、半球形状の形状を有している。
基体61の裏面には、正負一対の端子62が、ほぼ同じ大きさで配置されている。
このような発光装置は、上述した発光素子を用いているために、輝度分布の偏りがほとんどなく、均一な発光を実現することができる。