(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。本明細書において、数値範囲を表す「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味する。
【0013】
以下、板状体としての磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について説明するが、板状体の種類は多種多様であってよく、磁気記録媒体用以外の用途(例えばフラットパネルディスプレイ用、建築用、車両用など)のガラス板、セラミックス板、シリコンウエハなどでもよい。また、板状体は積層板であってもよく、例えばガラス板同士の間に金属膜、樹脂膜などを含んでもよい。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。磁気記録媒体用ガラス基板は、円盤状であって、中央部に円孔を有する。磁気記録媒体用ガラス基板上に磁性層などを形成することにより、磁気記録媒体が得られる。
【0015】
図1に示すように、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は、素板加工工程(ステップS11)、面取工程(ステップS12)、面取部加工工程(ステップS13)、端面研磨工程(ステップS14)、および主面研磨工程(ステップS15)などを有する。これらの工程の間や、これらの工程の後に、エッチング工程、洗浄工程、乾燥工程などが行われてもよい。
【0016】
素板加工工程(ステップS11)は、ガラス素板を加工することにより、中央部に円孔を有する円盤状のガラス基板を得る。ガラス素板は、例えばフロート法、フュージョン法、プレス成形法、ダウンドロー法、リドロー法などで成形される。
【0017】
面取工程(ステップS12)は、面取砥石でガラス基板の端面(内周端面および外周端面)を研削することにより、ガラス基板の端面に面取部および側面部を形成する。面取部はガラス基板の主面に対して斜めとされてよく、側面部はガラス基板の主面に対して垂直とされてよい。尚、面取部は平面でなくてもよく、丸みを帯びた曲面でもよい。
【0018】
面取部加工工程(ステップS13)は、ゴム砥石で面取部を加工することにより、面取部における加工変質層の厚みを低減する。加工変質層は、面取工程において生じるキズやクラックを含む層である。加工変質層は、面取部および側面部に形成される。
【0019】
端面研磨工程(ステップS14)は、研磨液を供給しながら回転ブラシで面取部および側面部を研磨することにより、面取部や側面部における加工変質層を除去する。回転ブラシによる研磨部位には研磨液が供給される。
【0020】
尚、複数の端面研磨工程が順次行われてもよく、回転ブラシだけで加工変質層を除去しなくてもよい。回転ブラシによるブラシ研磨の他に、スポンジ研磨、粘性流体研磨、磁性流体研磨などが行われてもよい。複数の端面研磨工程の間には、洗浄工程や乾燥工程が行われてよい。
【0021】
主面研磨工程(ステップS15)は、ガラス基板の主面(第1主面および第2主面)を研磨する。主面研磨工程では、ガラス基板の第1主面および第2主面を同時に研磨する両面研磨機が用いられてよい。両面研磨機は、複数のガラス基板を同時に研磨してよい。
【0022】
尚、複数の主面研磨工程が順次行われてもよい。複数の主面研磨工程は、研磨パットの種類や研磨液に含まれる砥粒の粒度を変えて行われる。複数の主面研磨工程の間には、洗浄工程や乾燥工程が行われてよい。
【0023】
尚、
図1に示す各工程の順序は、特に限定されない。例えば、主面研磨工程(ステップS15)の後に、端面研磨工程(ステップS14)が行われてもよい。また、
図1に示す工程以外の工程が行われてもよい。例えば、主面研磨工程の前に、ガラス基板の主面のラップ(例えば遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)が行われてよい。また、端面研磨工程や主面研磨工程の後、主平面研磨工程の間に、化学強化が行われてもよい。化学強化は、ガラス板の表面に含まれる小さなイオン半径のイオン(例えばLiイオンやNaイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えばKイオン)に置換し、表面から所定の深さの強化層を形成する。強化層には圧縮応力が残留するため、傷が付きにくい。
【0024】
次に、
図2〜
図4を参照して面取工程について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による面取砥石と板状体との接触前の状態を示す図である。
図3は、本発明の一実施形態による面取砥石と板状体との接触時の状態を示す図である。
図4は、本発明の一実施形態による面取砥石と板状体との接触後の状態を示す図である。
【0025】
面取工程では、面取砥石20でガラス基板10の内周端面を研削することにより、その内周端面に第1面取部11、第2面取部12および側面部13を形成する。尚、ガラス基板10の外周端面を研削して、その外周端面に面取部や側面部を形成する方法は同様であるので、説明を省略する。
【0026】
面取砥石20は、複数の砥粒および該複数の砥粒を結合する金属を有してよい。砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒、アルミナ砥粒、炭化珪素砥粒などが用いられる。面取砥石20は、砥粒をメッキで固定する電着砥石であってよい。尚、面取砥石20は、砥粒や金属粉末などを焼結してなるメタルボンド砥石でもよい。
【0027】
面取砥石20は、面取砥石20の中心線を中心に回転しながら、ガラス基板10の内周端面を研削する。ガラス基板10は、面取砥石20による研削時に、ガラス基板10の中心線を中心に回転させられてよい。面取砥石20の中心線と、ガラス基板10の中心線とは平行とされる。
【0028】
面取砥石20は、面取砥石20の外周に円環状の研削溝21を有し、研削溝21の壁面でガラス基板10の内周端面を研削することにより第1面取部11、第2面取部12および側面部13を形成する。研削溝21の断面形状は等脚台形状とされる。第1面取部11は第1主面15に対して斜めに接続され、第2面取部12は第2主面16に対して斜めに接続される。側面部13は、第1面取部11と第2面取部12との間に形成され、第1主面15および第2主面16に対して垂直とされてよい。
【0029】
尚、本実施形態では、面取工程において、ガラス基板10の内周端面に第1面取部11と第2面取部12とを形成するが、面取部の数は1つでもよく、側面部13が第1主面15または第2主面16に対して垂直に接続されてもよい。ガラス基板10の外周端面について同様である。
【0030】
次に、説明の都合上、
図7を参照して端面研磨工程について説明する。端面研磨工程の前に行われる面取部加工工程については後で説明する。
【0031】
端面研磨工程では、回転ブラシ40でガラス基板10の内周端面を研磨する。尚、ガラス基板10の外周端面に形成される面取部や側面部を研磨する方法は同様であるので、説明を省略する。
【0032】
回転ブラシ40は、ガラス基板10の第1主面15および第2主面16に対して垂直な回転軸41、および回転軸41の外周に取り付けられるブラシ毛42を有する。回転ブラシ40は、回転軸41を中心に回転しながら、ブラシ毛42で第1面取部11、第2面取部12、および側面部13を研磨する。
【0033】
回転ブラシ40によるガラス基板10の研磨部位には、ノズルから研磨液が供給される。研磨液は研磨材を含み、研磨材としては例えば酸化セリウム砥粒などが用いられる。
【0034】
端面研磨工程では、複数のガラス基板10が積層され、まとめて研磨されてもよい。この場合、ガラス基板10同士の間にはスペーサが配設されてよい。回転ブラシ40は、回転軸41の中心線を中心に回転させられながら、ガラス基板10の積層方向(回転軸41の中心線と平行な方向)に揺動させられる。
【0035】
ガラス基板10の側面部13に比べて、ガラス基板10の第1面取部11および第2面取部12は、回転ブラシ40の回転軸41から遠く、ブラシ毛42で研磨されにくい。特に、第1面取部11のうち第1面取部11と第1主面15との境界17付近、および第2面取部12のうち第2面取部12と第2主面16との境界18付近は、回転ブラシ40の回転軸41から遠く、ブラシ毛42で研磨されにくい。そのため、側面部13の研磨量に比べて、第1面取部11や第2面取部12の研磨量は少ない。
【0036】
そこで、本実施形態では、面取工程の後、端面研磨工程の前に、面取部加工工程が行われる。以下、
図5〜
図6を参照して面取部加工工程について説明する。
図5は、本発明の一実施形態によるゴム砥石と板状体との接触前の状態を示す図である。
図6は、本発明の一実施形態によるゴム砥石と板状体との接触時の状態を示す図である。
【0037】
面取部加工工程は、面取工程の後、端面研磨工程の前に、ガラス基板10の内周端面に形成された第1面取部11および第2面取部12をゴム砥石30で加工する。尚、ガラス基板10の外周端面に形成された面取部を加工する方法は同様であるので、説明を省略する。
【0038】
端面研磨工程では、上述の如く、第1面取部11や第2面取部12の研磨量が側面部13の研磨量よりも少ない。そこで、端面研磨工程の前に、面取部加工工程によって、第1面取部11や第2面取部12における加工変質層の厚みを低減しておく。これにより、ガラス基板10の形状崩れを抑制しつつ、第1面取部11、第2面取部12および側面部13から加工変質層を除去できる。また、端面研磨工程の時間が短く、生産性が良い。端面研磨工程の時間が短いため、回転ブラシ40の摩耗が抑制できる。
【0039】
ガラス基板10の内周端面は、ガラス基板10の外周端面と異なり、回転チャックなどで保持されることがある。本実施形態によれば、ガラス基板10の内周端面の形状崩れが抑制できるため、回転基準面としての内周端面の精度が良い。また、本実施形態によれば、ガラス基板10の内周端面の加工変質層が除去できるため、チャッキングによるガラス基板10の割れが防止できる。
【0040】
面取部工程では、第1面取部11や第2面取部12における加工変質層が完全に除去されなくてもよいし、完全に除去されてもよい。尚、面取部工程では、第1面取部11や第2面取部12が側面部13よりも研磨されやすければよく、側面部13も研磨されてもよい。
【0041】
ゴム砥石30は、複数の砥粒および該複数の砥粒を結合するゴムを有する。ゴム砥石30は、第1面取部11と接触する第1加工面31、および第2面取部12と接触する第2加工面32を有する。ゴム砥石30は、第1加工面31と第2加工面32との組を複数組有してよい。
【0042】
面取部加工工程では、第1加工面31と第2加工面32との間にガラス基板10を挿入して第1加工面31と第2加工面32との間に形成される隙間33を押し広げ、第1加工面31で第1面取部11を加工すると共に、第2加工面32で第2面取部12を加工する。この方法によれば、第1面取部11や第2面取部12が側面部13よりも研磨されやすい。また、この方法によれば、ゴム砥石30が摩耗した場合に、ガラス基板10をより深く挿入することで、第1加工面31で第1面取部11を加工すると共に、第2加工面32で第2面取部12を加工することができる。そのため、長時間の使用が可能である。
【0043】
尚、ゴム砥石30の代わりに、レジンボンド砥石を用いる場合、長時間の使用が困難である。レジンボンド砥石は、結合材として熱硬化性樹脂を含むため、ゴム砥石と異なりほとんど弾性変形しない。レジンボンド砥石の外周には円環状の研削溝が形成され、研削溝の断面形状は等脚台形状とされる。ガラス基板の端面は研削溝の壁面の断面形状に研磨される。そのため、摩耗によって研削溝の壁面の断面形状が崩れると、ガラス基板の端面を目的の形状に加工することが困難となり、長時間の使用が困難である。
【0044】
隙間33は、ガラス基板10の挿入前において、
図5に示すようにゴム砥石30の外周(ガラス基板10の挿入口)から内側に向けて連続的に狭くなってよい。ガラス基板10の挿入をガイドすることができる。
図5に示すように、隙間33の奥の方では、第1加工面31と第2加工面32とが接触してもよい。
【0045】
第1加工面31および第2加工面32には、ガラス基板10の挿入をガイドするガイドテーパ31a、32aが形成されてよい。ガイドテーパ31a、32a同士の間隔は、ガラス基板10の挿入前において、ゴム砥石30の外周から内側に向けて連続的に狭くなる。
【0046】
尚、本実施形態の隙間33は、ガラス基板10の挿入前において、
図5に示すようにゴム砥石30の外周から内側に向けて連続的に狭くなるが、段階的に狭くなってもよい。
【0047】
隙間33の挿入口の間隔Sは、ガラス基板10の挿入前において、ガラス基板10の厚みTよりも小さくてよい。ガラス基板10の挿入時に、隙間33の挿入口が押し広げられるため、ゴム砥石30の弾性復元力が強く、第1加工面31が第1面取部11に密着し、第2加工面32が第2面取部12に密着する。
【0048】
尚、本実施形態の隙間33は、ガラス基板10の挿入前において、
図5に示すようにゴム砥石30の外周(ガラス基板10の挿入口)から内側に向けて狭くなるが、一定でもよい。ガラス基板10の挿入前において、第1加工面31と第2加工面32とが全体的に接触してもよい。
【0049】
ゴム砥石30のゴムは、天然ゴム、合成ゴムのいずれでもよい。天然ゴムは、例えばポリイソプレンを主成分とするゴムである。合成ゴムとしては、例えばブタジエンゴム、クロロプレンゴム、プロピレンゴム、ポリイソブチレンゴムなどが挙げられる。結合材がゴムであるゴム砥石30は結合材が熱硬化性樹脂であるレジンボンド砥石と異なり弾性変形できる。そのため、第1加工面31と第2加工面32との間にガラス基板10を挿入して隙間33を押し広げることができる。
【0050】
ゴム砥石30のSHORE−D硬度(日本工業規格JIS K6253)は、例えば20〜90である。上記SHORE−D硬度は、ゴムのみの硬度ではなく、ゴムで砥粒を結合した物の硬度である。上記SHORE−D硬度が90以下であると、第1加工面31と第2加工面32との間にガラス基板10を挿入して隙間33を押し広げる際にゴム砥石30が弾性変形し易く、ゴム砥石30の破損が抑制できる。また、上記SHORE−D硬度が20以上であると、砥石自体の強度が良好であり、加工変質層の厚みが効率良く低減できる。上記SHORE−D硬度は、好ましくは20〜85、特に好ましくは20〜80である。
【0051】
ゴム砥石30の砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒、アルミナ砥粒、炭化珪素砥粒などが用いられる。
【0052】
ゴム砥石30の砥粒の平均粒径は、例えば18〜125μmである。ゴム砥石30の砥粒の平均粒径が18μm以上の場合、加工変質層の厚みを効率良く低減できる。ゴム砥石30の砥粒の平均粒径が125μm以下の場合、ゴム砥石30の砥粒による新たなキズやクラックの形成が抑制できる。砥粒の平均粒径は、個数平均径であって、電気抵抗法(コールター法)により測定できる。
【0053】
ゴム砥石30に占める砥粒の割合(砥粒とゴムの合計量を100体積%とした場合の砥粒の割合、以下、「砥粒の含有量」という)は、例えば12〜50体積%である。砥粒の含有量が50体積%以下の場合、ゴムによって砥粒を十分に結合できる。砥粒の含有量が12体積%以上の場合、加工変質層の厚みを効率良く低減できる。
【0054】
図8は、本発明の一実施形態による面取砥石およびゴム砥石を含む砥石ユニットを示す断面図である。
【0055】
砥石ユニットは、面取砥石20とゴム砥石30とを含む。面取砥石20の中心線とゴム砥石30の中心線とは同一直線上に配設されてよい。面取砥石20とゴム砥石30とはそれぞれの中心線を中心に同時に回転される。砥石ユニットをその中心線を中心に回転させる機械を用いて、面取工程と面取部加工工程とを行うことができる。
【0056】
面取砥石20は、1次面取砥石部23と2次面取砥石部24とを有してよい。1次面取砥石部23の外周には円環状の研削溝が複数形成され、同様に、2次面取砥石部24の外周には円環状の研削溝が複数形成される。
【0057】
ガラス基板10は、1次面取砥石部23の研削溝に挿入され当該研削溝の壁面で研削された後、2次面取砥石部24の研削溝に挿入され当該研削溝の壁面で研削される。2次面取砥石部24の砥粒の平均粒径は、1次面取砥石部23の砥粒の平均粒径よりも小さくてよい。
【0058】
尚、面取砥石20は3次面取砥石部をさらに有してもよく、面取砥石部の数は限定されない。
【0059】
面取砥石20とゴム砥石30とは脱着自在とされてもよい。例えばゴム砥石30には雄ネジ39が形成され、面取砥石20には雌ネジ29が形成され、雄ネジ39と雌ネジ29との螺合によって面取砥石20とゴム砥石30とが連結される。尚、雄ネジと雌ネジの配置は逆でもよく、ゴム砥石30に雌ネジが形成され、面取砥石20に雄ネジが形成されてもよい。
【実施例】
【0060】
[例1〜6]例1〜6では、それぞれ、中心部に円孔を有する円盤状のガラス基板を用意し、面取工程、面取部加工工程、端面研磨工程をこの順で行うことを100回繰り返し、100枚の磁気記録媒体用カラス基板を作製した。例1〜6では、表1に示す条件以外の条件は同じとした。
【0061】
面取工程では、番手#325の電着ダイヤモンド砥石、および番手#600の電着ダイヤモンド砥石をこの順で用いてガラス基板の内周端面に第1面取部、第2面取部、および側面部を形成した。面取工程によって、板厚が0.9mm、内径が20mm、外径が65mm、面取長さL(
図4参照)が0.18mm、面取角度θ(
図4参照)が45°のガラス基板が得られた。面取工程後のガラス基板の形状、寸法は、各例において1枚目から100枚目まで安定していた。
【0062】
面取部加工工程では、表1に示すように、例1〜4ではゴム砥石を用い、例5ではレジンボンド砥石を用い、例6ではビトリファイドボンド砥石を用いた。例1〜4では、
図6に示すようにゴム砥石の第1加工面と第2加工面との間にガラス基板を挿入して第1加工面と第2加工面との間の隙間を押し広げ、第1加工面で第1面取部を、第2加工面で第2面取部を加工した。例5では、レジンボンド砥石の外周に形成される研削溝の壁面にガラス基板を押し付けて、第1面取部、第2面取部、および側面部を加工した。例6では、ビトリファイドボンド砥石の外周に形成される研削溝の壁面にガラス基板を押し付けて、第1面取部、第2面取部、および側面部を加工した。各例において、1枚目から100枚目まで、ゴム砥石など(レジンボンド砥石、ビトリファイドボンド砥石を含む)の回転中心と、ガラス基板の回転中心との距離は一定とした。
【0063】
ゴム砥石のSHORE−D硬度は、ゴム硬度計(Bareiss社製、デジテストII BS06)により測定した。測定条件は、JIS K6253に準拠した。レジンボンド砥石やビトリファイドボンド砥石は、硬すぎるため、硬度を測定できなかった。
【0064】
ゴム砥石などの砥粒の平均粒子径は、粒度分布測定装置(Beckman Coulter社製、Multisizer3)を用いて測定した。
【0065】
面取部加工工程の後、端面研磨工程の前に、内径測定機(Keyence社製、VM8040)によりガラス基板の内径を測定し、1枚目と100枚目との内径差を内径変化として求めた。内径変化の評価では、1枚目と100枚目の内径差が4μm以下の場合を「A」、4μmよりも大きく8μmよりも小さい場合を「B」、8μm以上の場合を「C」とした。
【0066】
また、面取部加工工程の後、端面研磨工程の前に、第1面取部の表面粗さをレーザ顕微鏡(Olympus社製、LEXT OLS4000)により測定した。対物レンズの倍率は20倍、カットオフ値は0.08mmとした。尚、第1面取部の表面粗さと、第2面取部の表面粗さとは略同一であった。
【0067】
端面研磨工程では、面取部加工後のガラス基板の内周端面を回転ブラシで研磨した。回転ブラシによる研磨部位には、酸化セリウムを含む研磨液を供給した。研磨量は13μmとした。端面研磨工程後、加工変質層の有無を評価した。
【0068】
加工変質層の有無は、端面研磨工程後のガラス基板を、フッ酸を含有する酸性溶液に浸漬して5μmエッチングすることにより調べた。加工変質層が残る場合、キズなどを中心に等方的にエッチングが進み、ディンプルが形成される。このディンプルの有無をレーザ顕微鏡で調べることにより、加工変質層の有無を調べた。加工変質層の有無の評価では、加工変質層が残る場合を「A」、残らない場合を「B」とした。
【0069】
試験結果を、試験条件と共に表1に示す。
【0070】
【表1】
表1から明らかなように、例1〜4では、面取部加工工程においてゴム砥石を用いたため、1枚目と100枚目とでガラス基板の内径差が小さく、面取部の表面粗さRaが0.3μm以下であり、端面研磨工程後に加工変質層が残らなかった。一方、例5では、面取部加工工程においてレジンボンド砥石を用いたため、砥石の摩耗によるガラス基板の形状変化が大きく、1枚目と100枚目とでガラス基板の内径差が大きかった。また、例6では、面取部加工工程においてビトリファイドボンド砥石を用いたため、砥石の摩耗によるガラス基板の形状変化が大きく、1枚目と100枚目とでガラス基板の内径差が大きかった。さらに例6では、ビトリファイドボンド砥石を用いたため、面取部の表面粗さが大きかった。
【0071】
以上、板状体としての磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法の実施形態などを説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0072】
例えば、板状体としての磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法は
図1に示すように素板加工工程(ステップS11)および主面研磨工程(ステップS15)を有するが、板状体の種類によっては、素板加工工程および主面研磨工程がなくてもよい。