(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299580
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/42 20060101AFI20180319BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20180319BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20180319BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20180319BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20180319BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20180319BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20180319BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
C09K19/42
C09K19/12
C09K19/20
C09K19/54 Z
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/32
G02F1/13 500
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-255079(P2014-255079)
(22)【出願日】2014年12月17日
(62)【分割の表示】特願2014-516116(P2014-516116)の分割
【原出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-91983(P2015-91983A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-234705(P2012-234705)
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-237809(P2012-237809)
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】川上 正太郎
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5668895(JP,B2)
【文献】
特開2013−144796(JP,A)
【文献】
特開2011−089082(JP,A)
【文献】
特開2011−105927(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0181478(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0236246(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/148928(WO,A1)
【文献】
特開2006−037053(JP,A)
【文献】
特開2011−012179(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152494(WO,A1)
【文献】
特開2011−202168(JP,A)
【文献】
特開2012−077200(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/144321(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/125379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、一般式(I)
【化1】
(式中、qは0又は1を表し、R
55は炭素原子数炭素原子数2から10のアルケニル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は3から25質量%であり、第二成分として、一般式(II)
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシル基、炭素原子数2から10のアルケニル基又は炭素原子数2から10のアルケニルオキシ基を表し、R
1及びR
2中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立的に−O−及び/又は−S−に置換されても良く、また、R
1及びR
2中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。環Aはトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、環Bは1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表す。pは、0、1又は2を表す。Zは単結合を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項2】
25℃における誘電率異方性(Δε)が−2.0から−8.0の範囲であり、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08から0.14の範囲であり、20℃における粘度(η)が10から30mPa・sの範囲であり、20℃における回転粘性(γ1)が60から130mPa・sの範囲であり、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が60℃から120℃の範囲である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第二成分の含有量が10から90質量%である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
第二成分として、一般式(II)が一般式(II−B2)、一般式(II−B4)又は一般式(II−B5)
【化3】
(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立的に炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、R
3及びR
4中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されても良い。)である請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
一般式(I)が式(I−A4)、式(I−B4)又は式(I−B5)
【化4】
【化5】
で表される化合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
第三成分として、一般式(III−A)から一般式(III−J)
【化6】
(式中、R
5は、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基、R
6は、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシル基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から5のアルケニルオキシ基を表す。ただし、一般式(III−F)で表される化合物において、一般式(I)で表される化合物と同一の化合物は含まない。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
一般式(I)、一般式(II−B2)及び一般式(III−A)を同時に含有する請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
一般式(I)、一般式(II−B4)及び一般式(III−A)を同時に含有する請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項9】
一般式(I)、一般式(II−B2)、一般式(II−B4)及び一般式(III−A)を同時に含有する請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項10】
重合性化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
重合性化合物が一般式(IV)
【化7】
(式中、R
7及びR
8は、それぞれ独立的に式(R−1)から式(R−15)
【化8】
のいずれかを表し、X
1からX
8はそれぞれ独立的にトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、フッ素原子又は水素原子を表す。)である請求項
10に記載の液晶組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたVAモード、PSAモード、PSVAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示材料として有用な誘電率異方性(Δε)が負の値を示すネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としてもスタティック駆動、マルチプレックス駆動、単純マトリックス方式、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等により駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式を挙げることができる。
【0003】
これらの表示方式において、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等は、Δεが負の値を示す液晶材料を用いるという特徴を有する。これらの中で特にAM駆動によるVA型表示方式は、高速で広視野角の要求される表示素子、例えばテレビ等の用途に使用されている。
【0004】
VA型等の表示方式に用いられるネマチック液晶組成物には、低電圧駆動、高速応答及び広い動作温度範囲が要求される。すなわち、Δεが負で絶対値が大きく、低粘度であり、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)が要求されている。また、屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積であるΔn×dの設定から、液晶材料のΔnをセルギャップに合わせて適当な範囲に調節する必要がある。加えて液晶表示素子をテレビ等へ応用する場合においては高速応答性が重視されるため、粘度(η)の低い液晶材料が要求される。
【0005】
これまでは、Δεが負でその絶対値の大きな化合物を種々検討することにより液晶組成物の特性が改良されてきた。
【0006】
Δεが負の液晶材料として、以下のような2,3−ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶化合物(A)及び(B)(特許文献1参照)を用いた液晶組成物が開示されている。
【0007】
【化1】
【0008】
この液晶組成物は、Δεがほぼ0である化合物として液晶化合物(C)及び(D)を用いているが、この液晶組成物は、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては十分に低い粘性を実現するに至っていない。
【0009】
【化2】
【0010】
一方、式(E)で表される化合物を用いた液晶組成物も既に開示されているが、上記の液晶化合物(D)を組み合わせたΔnが小さい液晶組成物(特許文献2参照)や応答速度の改善のために液晶化合物(F)のようにアルケニル基を分子内に有する化合物(アルケニル化合物)を添加した液晶組成物(特許文献3参照)であり、高Δnと高信頼性を両立させるには更なる検討が必要であった。
【0011】
【化3】
【0012】
また、式(G)で表される化合物を用いた液晶組成物は既に開示されている(特許文献4参照)が、この液晶組成物も上記の液晶化合物(F)のようにアルケニル化合物を含む化合物を含有した液晶組成物であるため、焼き付きや表示ムラ等の表示不良が発生し易い弊害があった。
【0013】
【化4】
【0014】
なお、アルケニル化合物を含む液晶組成物の表示不良への影響については既に開示されている(特許文献5参照)が、一般的にはアルケニル化合物の含有量が減少すると液晶組成物のηが上昇し、高速応答の達成が困難になるため、表示不良の抑制と高速応答の両立が困難であった。
【0015】
このようにΔεが負の値を示す化合物と液晶化合物(C)、(D)及び(F)を組み合わせるのみでは、高いΔnと低いηを両立させ、なおかつ、表示不良のない又は抑制されたΔεが負の液晶組成物の開発は困難であった。
また、式(A)及び式(G)にΔεがほぼゼロである式(III−F31)を組み合わせた液晶組成物(特許文献6参照)が開示されている。しかし、液晶表示素子の製造工程では液晶組成物を液晶セルに注入する際の極低圧で、蒸気圧が低い化合物は揮発してしまうため、その含有量を増やすことが出来ないと考えられていた。このため、該液晶組成物は式(III−F31)の含有量を限定してしまっており、大きなΔnを示すものの、粘度が著しく高いという問題があった。
【0016】
【化5】
【0017】
更に、特許文献6や特許文献7において、フッ素置換されたターフェニル構造を有する化合物を用いた液晶組成物も既に開示されている。
【0018】
また、特許文献8において、(式1)で示される指数が大きい液晶材料を使用することでホメオトロピック液晶セルの応答速度を向上させることが開示されているが、十分とは言えるものではなかった。
【0019】
【数1】
【0020】
以上のことから、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)を十分に小さく、回転粘性(γ1)を十分に小さく、弾性定数(K
33)を大きくすることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平8−104869号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0474062号
【特許文献3】特開2006−37054号
【特許文献4】特開2001−354967号
【特許文献5】特開2008−144135号
【特許文献6】WO2007/077872
【特許文献7】特開2003−327965号
【特許文献8】特開2006−301643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明が解決しようとする課題は、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)が十分に小さく、回転粘性(γ1)が十分に小さく、弾性定数(K
33)が大きく、絶対値が大きな負の誘電率異方性(Δε)を有する液晶組成物を提供し、更にこれを用いたVA型等の表示不良がない又は抑制された、表示品位の優れた応答速度の速い液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、種々のビフェニル誘導体及びフルオロベンゼン誘導体を検討し、特定の化合物を組み合わせることにより前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
本発明の液晶組成物は、第一成分として、一般式(I)
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、qは0又は1を表し、R
55は炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は3から25質量%であり、第二成分として、誘電率異方性(Δε)が負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有する液晶組成物を提供し、また、これを用いた液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)が十分に小さく、回転粘性(γ1)が十分に小さく、弾性定数(K
33)が大きく、絶対値が大きな負の誘電率異方性(Δε)を有するため、これを用いたVA型等の液晶表示素子は表示不良がない又は抑制された、表示品位の優れた応答速度の速いものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の液晶組成物は、第一成分として、一般式(I)で表される化合物を3から25質量%含有するが、5から20質量%であることが更に好ましく、5から15質量%であることが特に好ましい。更に詳述すると、高Δnを得るにはその含有量は10から25質量%が好ましいが、低温における析出の抑制を重視する場合にはその含有量は3から15質量%が好ましい。
【0029】
一般式(I)中のR
55は、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表すが、炭素原子数2から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基であることが更に好ましい。
【0030】
一般式(I)中のqは、0又は1を表す。
具体的に一般式(I)の化合物は、式(I−A1)、式(I−A2)、式(I−A3)、式(I−A4)、式(I−A5)、式(I−B1)、式(I−B2)、式(I−B3)、式(I−B4)、(I−B5)又は式(I−B6)
【0035】
であることが好ましく、粘性を重視する場合は、式(I−A1)、式(I−A5)、式(I−B1)又は式(I−B6)であることが好ましく、弾性定数を重視する場合は、式(I−A4)、式(I−B4)又は式(I−B5)であることが特に好ましい。
本発明の液晶組成物は、2種以上の一般式(I)の化合物を含有することも好ましく、その場合、式(I−A4)、式(I−B4)又は式(I−B5)を同時に2種以上含有することが更に好ましい。
【0036】
第二成分として、Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を1種又は2種以上含有するが、その含有量は10から90質量%であることが好ましく、20から80質量%が更に好ましく、30から70質量%が特に好ましい。
【0037】
具体的には、第二成分は一般式(II)
【0039】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシル基、炭素原子数2から10のアルケニル基又は炭素原子数2から10のアルケニルオキシ基を表し、R
1及びR
2中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立的に−O−及び/又は−S−に置換されても良く、また、R
1及びR
2中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。環A及び環Bは、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表す。pは、0、1又は2を表す。Zは、−OCH
2−、−CH
2O−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−又は単結合を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0040】
式中のR
1及びR
2は、それぞれ独立的に直鎖状の炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシル基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から5のアルケニルオキシ基であることが更に好ましく、R
1は炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基、R
2は炭素原子数1から5のアルコキシル基であることが特に好ましい。
【0041】
式中の環A及び環Bは、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であることが更に好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基であることが特に好ましい。
【0042】
式中のpは、それぞれ独立的に0又は1であることが更に好ましい。
【0043】
式中のZは、−CH
2O−、−CF
2O−又は単結合であることが更に好ましく、−CH
2O−又は単結合であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の液晶組成物は、第二成分を1種又は2種以上含有するが、2種から10種含有することが好ましい。
【0045】
一般式(II)で表される化合物は、一般式(II−A1)から一般式(II−A5)及び一般式(II−B1)から一般式(II−B5)
【0048】
(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立的に炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、R
3及びR
4中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されても良い。)から選ばれる化合物であることが好ましく、一般式(II−A1)から一般式(II−A5)の化合物であることが更に好ましく、一般式(II−A1)又は一般式(II−A3)の化合物であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の液晶組成物は、第三成分として、一般式(III−A)から一般式(III−J)
【0051】
(式中、R
5は、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基、R
6は、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシル基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から5のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。但し、一般式(III−F)で表される化合物において、一般式(I)で表される化合物と同一の化合物は含まない。
第三成分は、一般式(III−A)、(III−D)、(III−F)、(III−G)及び(III−H)から選ばれる化合物であることが更に好ましい。また、一般式(III−A)で表される化合物においては、R
5は炭素原子数2から5のアルケニル基、R
6は炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基であることが好ましい。
【0052】
更なる成分として、一般式(V)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0054】
式中、R
21及びR
22はそれぞれ独立的に炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から8のアルコキシル基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から8のアルケニルオキシル基を表すが、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基が好ましい。
【0055】
本発明の液晶組成物は、一般式(I)、一般式(II−A1)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましく、一般式(I)、一般式(II−A3)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましく、一般式(I)、一般式(II−B1)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましく、式(I)、一般式(II−B2)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましく、式(I)、一般式(II−B3)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましく、式(I)、一般式(II−B4)、及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが好ましい。
【0056】
本発明の液晶組成物は、一般式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A3)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、一般式(I)、一般式(II−B1)、一般式(II−B2)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、一般式(I)、一般式(II−B1)、一般式(II−B3)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、一般式(I)、一般式(II−B1)、一般式(II−B4)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、一般式(I)、一般式(II−B2)、一般式(II−B3)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、一般式(I)、一般式(II−B2)、一般式(II−B4)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましい。
【0057】
本発明の液晶組成物は、式(I−A4)、式(I−B5)及び一般式(II)の化合物を同時に含有することも好ましく、この場合、式(I−A4)、式(I−B5)、一般式(II)及び一般式(III−A)の化合物を同時に含有することが更に好ましく、式(I−A4)、式(I−B5)、一般式(II)、一般式(III−A)及び一般式(V)の化合物を同時に含有することが特に好ましい。
【0058】
本発明の液晶組成物は、25℃における誘電率異方性(Δε)が−2.0から−8.0であるが、−2.0から−6.0が好ましく、−2.0から−5.0がより好ましく、−2.5から−4.0が特に好ましい。
【0059】
本発明の液晶組成物は、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08から0.14であるが、0.09から0.13がより好ましく、0.09から0.12が特に好ましい。更に詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合は0.10から0.13であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合は0.08から0.10であることが好ましい。
【0060】
本発明の液晶組成物は、20℃における粘度(η)が10から30mPa・sであるが、10から25mPa・sであることがより好ましく、10から22mPa・sであることが特に好ましい。
【0061】
本発明の液晶組成物は、20℃における回転粘性(γ
1)が60から130mPa・sであるが、60から110mPa・sであることがより好ましく、60から100mPa・sであることが特に好ましい。
【0062】
本発明の液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)が60℃から120℃であるが、70℃から100℃がより好ましく、70℃から85℃が特に好ましい。
【0063】
本発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合性モノマーなどを含有しても良い。
【0064】
例えば、重合性モノマーとしてビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体などの重合性化合物を0.01%から2質量%含有することが好ましい。更に詳述すると、本発明の液晶組成物は、一般式(IV)
【0066】
で表される重合性化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0067】
式中、R
7及びR
8は、それぞれ独立的に式(R−1)から式(R−15)
【0069】
のいずれかを表し、X
1からX
8はそれぞれ独立的にトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、フッ素原子又は水素原子を表す。
【0070】
一般式(IV)におけるビフェニル骨格の構造は、式(IV−11)から式(IV−14)であることが更に好ましく、式(IV−11)であることが特に好ましい。
【0072】
式(IV−11)から式(IV−14)で表される骨格を含む重合性化合物は重合後の配向規制力が最適であり、良好な配向状態が得られる。
【0073】
重合性化合物である一般式(IV)を含有した、本発明の重合性化合物含有液晶組成物は、低い粘度(η)、低い回転粘性(γ
1)及び大きな弾性定数(K
33)が得られるため、これを用いたPSAモード又はPSVAモードの液晶表示素子は高速応答が実現できる。
【0074】
本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、高速応答という顕著な特徴を有用しており、特に、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、PSVAモード、PSAモード、IPSモード又はECBモード用に適用できる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(側鎖)
-n -C
nH
2n+1 炭素数nの直鎖状のアルキル基
n- C
nH
2n+1- 炭素数nの直鎖状のアルキル基
-On -OC
nH
2n+1 炭素数nの直鎖状のアルコキシル基
nO- C
nH
2n+1O- 炭素数nの直鎖状のアルコキシル基
-V -CH=CH
2
V- CH
2=CH-
-V1 -CH=CH-CH
3
1V- CH
3-CH=CH-
-2V -CH
2-CH
2-CH=CH
3
V2- CH
3=CH-CH
2-CH
2-
-2V1 -CH
2-CH
2-CH=CH-CH
3
1V2- CH
3-CH=CH-CH
2-CH
2
(環構造)
【0076】
【化19】
【0077】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0078】
T
ni :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Δn :20℃における屈折率異方性
Δε :25℃における誘電率異方性
η :20℃における粘度(mPa・s)
γ
1 :20℃における回転粘性(mPa・s)
K
33 :20℃における弾性定数K
33(pN)
(比較例1、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4)
LC−A(比較例1)、LC−1(実施例1)、LC−2(実施例2)、LC−3(実施例3)及びLC−4(実施例4)の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。液晶組成物の構成とその物性値の結果は表1のとおりであった。
【0079】
【表1】
【0080】
本発明の液晶組成物LC−1、LC−2、LC−3及びLC−4は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ
1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きく、γ
1/K
33がそれぞれ6.7、6.1、6.0及び6.0であり、比較例であるLC−Aのそれよりも顕著に小さな値であった。これらを使用した液晶表示素子の応答速度を測定したところ、LC−1、LC−2、LC−3及びLC−4は、十分に高速応答であり、LC−Aよりも10%から20%程度高速であった。更に、電圧保持率(VHR)を測定したところ、高いVHRを有していることが確認された。なお、セル厚は3.5um、配向膜はJALS2096であり、応答速度の測定条件は、Vonは5.5V、Voffは1.0V、測定温度は20℃で、AUTRONIC−MELCHERS社のDMS301を用いた。VHRの測定条件は電圧5V、周波数60Hz、温度60℃で、東陽テクニカ株式会社のVHR−1を用いた。
(比較例2、実施例5、実施例6及び実施例7)
LC−B(比較例2)、LC−5(実施例5)、LC−6(実施例6)及びLC−7(実施例7)の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。液晶組成物の構成とその物性値の結果は表2のとおりであった。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明の液晶組成物LC−5、LC−6及びLC−7は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ
1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きく、γ
1/K
33がそれぞれ7.3、6.9及び7.0であり、比較例であるLC−Bのそれよりも顕著に小さな値であった。これらを使用した液晶表示素子の応答速度を測定したところ、LC−5、LC−6及びLC−7は、十分に高速応答であり、LC−Bよりも10%以上高速であった。更に、電圧保持率(VHR)を測定したところ、高いVHRを有していることが確認された。なお、セル厚は3.5um、配向膜はJALS2096であり、応答速度の測定条件は、Vonは5.5V、Voffは1.0V、測定温度は20℃で、AUTRONIC−MELCHERS社のDMS301を用いた。VHRの測定条件は電圧5V、周波数60Hz、温度60℃で、東陽テクニカ株式会社のVHR−1を用いた。
【0083】
以上のことから、本発明の液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)が十分に小さく、回転粘性(γ
1)が十分に小さく、弾性定数(K
33)が大きな、絶対値が大きな負の誘電率異方性(Δε)を有するものであり、これを用いたVA型液晶表示素子は表示品位の優れた応答速度の速いものであることが確認された。
(比較例3、実施例8、実施例9及び実施例10)
LC−C(比較例3)、LC−8(実施例8)、LC−9(実施例9)及びLC−10(実施例10)の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。液晶組成物の構成とその物性値の結果は表3のとおりであった。
【0084】
【表3】
【0085】
本発明の液晶組成物LC−8、LC−9及びLC−10は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ
1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きく、γ
1/K
33がそれぞれ、6.1、6.6及び6.4であり、比較例3であるLC−Cのそれよりも顕著に小さな値であった。これらを使用した液晶表示素子の応答速度を測定したところ、LC−8、LC−9及びLC−10は、十分に高速応答であり、LC−Cよりも20%から30%程度高速であった。更に、電圧保持率(VHR)を測定し、高いVHRを有していることが確認された。なお、セル厚は3.5um、配向膜はJALS2096であり、応答速度の測定条件は、Vonは5.5V、Voffは1.0V、測定温度は20℃で、AUTRONIC−MELCHERS社のDMS301を用いた。VHRの測定条件は電圧5V、周波数60Hz、温度60℃で、東陽テクニカ株式会社のVHR−1を用いた。
【0086】
以上のことから、本発明の液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)が十分に小さく、回転粘性(γ
1)が十分に小さく、弾性定数(K
33)が大きな、絶対値が大きな負の誘電率異方性(Δε)を有するものであり、これを用いたVA型液晶表示素子は表示品位の優れた応答速度の速いものであることが確認された。