(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の開口部は、縦方向に間隔をおいて配設される第1の開口部および第2の開口部と、前記第1の開口部を前記第2の開口部に向けて縦方向に延長した領域および前記第2の開口部を前記第1の開口部に向けて縦方向に延長した領域と接するか一部重なる第3の開口部とを有する、請求項1に記載の電熱窓用板状体。
前記凹部は前記透明導電膜の上辺に形成され、前記上バスバーは前記凹部を含む前記透明導電膜の上辺に沿って形成され、前記第1の領域は、前記上バスバーの凹部と前記下バスバーとで挟まれる帯状の領域であり、前記複数の開口部は、前記第1の領域の下部に形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電熱窓用板状体。
前記複数の開口部は、縦寸法が所定値以上の線状の縦開口部と、横寸法が所定値以上の線状の開口部とが互いに交わる十字開口部が複数配列された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電熱窓用板状体。
前記第1の領域には、縦寸法が所定値以上の線状の縦開口部と、横寸法が所定値以上の線状の開口部とが離間して配列される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電熱窓用板状体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の向きは、記号、数字の向きに対応する。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。また、各図は、窓用板状体の面を対向して見たときの図である。各図は、窓用板状体が車両に取り付けられた状態での車内視の図であるが、車外視の図として参照してもよい。各図上での上下方向が車両の上下方向に相当し、各図の下側が路面側に相当する。また、窓用板状体が車両の前部に取り付けられるフロントガラスである場合、図面上での左右方向が車両の車幅方向に相当する。また、窓用板状体は、フロントガラスに限定されず、車両の後部に取り付けられるリヤガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってもよい。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による電熱窓用板状体を示す図である。
図1において、破線は帯状の第1の領域と帯状の第2の領域との境界、第1の領域と帯状の第3の領域との境界を表す仮想線である。
図2は、本発明の一実施形態による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンを示す図である。
図2において、矢印は電流の経路を表す。電流の経路は必ずしも正確ではないが、便宜的に記載している。
【0012】
電熱窓用板状体10は、車両の窓開口部に取り付けられるものである。電熱窓用板状体10は、例えば、自動車の前部の窓に取り付けられるものでよく、つまり、自動車の運転者の前方に設けられるフロントガラスでよい。
【0013】
電熱窓用板状体10は、
図1に示すように、略台形の窓用板状体15と、窓用板状体15に設けられた略台形の透明導電膜12と、透明導電膜12に電力を供給する上バスバー13および下バスバー14とを備える。なお、略台形とは下辺よりも上辺が短く、好ましくは上辺と下辺の長さが10%以上異なるものであってよい。なお、窓用板状体15および透明導電膜12の形状は、略台形に限定されず、長方形など上辺と下辺の長さが略同一のものであってもよい。
【0014】
窓用板状体15は、複数の透明板、例えばガラス板を樹脂性の中間膜を介して積層して構成されてよい。透明導電膜12、上バスバー13、および下バスバー14は、複数の絶縁性の透明板の間に設けられてよい。この場合、各バスバーに接続された導電シートを窓用板状体15の端面から取り出して電極としてよい。上バスバー13は接地され、下バスバー14は電源に電気的に接続される。透明導電膜12に給電すると、透明導電膜12が発熱し、電熱窓用板状体10に発生した曇りなどを除去でき、車両の乗員の視界が確保される。
【0015】
尚、本実施形態では、上バスバー13は接地され、下バスバー14は電源に電気的に接続されるが、下バスバー14が接地され、上バスバー13が電源に電気的に接続されてもよい。
【0016】
電熱窓用板状体10は、車外側に凸の湾曲形状であってよい。電熱窓用板状体10は、例えば透明導電膜12が成膜された透明板を熱処理によって曲げ成形して作製されてよい。また、電熱窓用板状体10は、曲げ成形された透明板上に、透明導電膜を成膜した樹脂シートを貼り付けて作製されてもよい。
【0017】
透明導電膜12は、例えば、Ag膜などの金属膜、ITO(酸化インジウム・スズ)膜などの金属酸化膜、または導電性微粒子を含む樹脂膜で構成されてよい。透明導電膜12は、複数種類の膜を積層したものでもよい。
【0018】
透明導電膜12は、絶縁性の透明板上に形成されてよい。透明板は、ガラスまたは樹脂などの絶縁性材料で形成されてよい。透明板を形成するガラスとしては、例えば、ソーダライムガラスなどが挙げられる。また、透明板を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。
【0019】
透明導電膜12の成膜方法としては、例えばドライコーティング法が用いられる。ドライコーティング法としては、PVD法、CVD法が挙げられる。PVD法の中でも、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法が好ましく、これらの中でも、大面積の成膜が可能なスパッタ法がより好ましい。
【0020】
尚、本実施形態では、透明導電膜12の成膜方法として、ドライコーティング法が用いられるが、ウェットコーティング法が用いられてもよい。
【0021】
上バスバー13は透明導電膜12の上側端部に接続され、下バスバー14は透明導電膜12の下側端部に接続され、上バスバー13および下バスバー14は透明導電膜12を挟んで設けられ、透明導電膜12に電力を供給する。
【0022】
電熱窓用板状体10は、透明導電膜12と上バスバー13のそれぞれの上辺の一部をそれぞれの上面の残部よりも下方にシフトさせて形成される凹部17を有し、凹部17内に透明導電膜が形成されていない電磁波透過窓16を有する。この電磁波透過窓16を通して車外側と通信する位置に各種機器が配置されてよい。透明導電膜12の凹部17を含む上辺に沿って上バスバー13が形成され、上バスバー13の電磁波透過窓16を形成する領域は上バスバー13の残りの領域よりも上下方向における上バスバー13と下バスバー14との間の距離が狭くなっている。なお、電磁波透過窓16は、本実施形態では透明導電膜12の上辺に形成されているが、透明導電膜12の下辺に形成されてもよい。その場合、透明導電膜12と下バスバーのそれぞれの下辺の一部をそれぞれの下辺の残部よりも上方にシフトさせて凹部を形成させる。
【0023】
次に、
図1および
図2を参照して、透明導電膜12に設けられた複数の開口部の開口パターンについて説明する。ここで、「縦」とは透明導電膜12の上辺に略垂直な方向をいい、「横」とは縦方向に対して垂直な方向をいう。縦方向および横方向は、透明導電膜12の表面に対して略平行な方向であって、透明導電膜12の表面に沿う方向である。
【0024】
透明導電膜12は、
図1に示すように、上バスバー13と下バスバー14とで挟まれた第1〜第3の領域21〜23を有する。第1の領域21は、第2の領域22および第3の領域23よりも上バスバー13と下バスバー14との間の距離が短く、第2の領域22と、第3の領域23とで挟まれている。なお、第1の領域21は、透明導電膜12の上辺または下辺が有する凹部に位置するバスバーと、該凹部に対向するバスバーとで挟まれる帯状の領域であればよい。
【0025】
第1の領域21、第2の領域22、および第3の領域23はそれぞれが隣接しているので、一本の上バスバー13と一本の下バスバー14によって同時に電力が供給され、第1〜第3の領域21〜23の左方から右方にわたって略同じ電圧が印加されることになる。電流は、第1の領域21、第2の領域22、第3の領域23のそれぞれに流れる。
【0026】
第1の領域21には、表面抵抗を調整するため、横寸法H(
図2参照)が所定値以上の開口部41が複数設けられている。複数の開口部41は、同じ形状、同じ寸法を有してよい。開口部41は、透明導電膜12をレーザなどで加工して形成され、透明導電膜12を厚さ方向に貫通している。開口部41は、横に長くてよく、直線状でよい。また、開口部41は、斜め方向に長く形成されていてもよく、また、開口部41は、斜め方向に長く形成されていてもよく、所定値以上の横寸法Hがあればよい。尚、複数の開口部41は、異なる形状、異なる寸法を有してもよい。
【0027】
横寸法Hは、上バスバー13および下バスバー14の一方から他方に向かって第1の領域21内を流れる電流が開口部41を左右方向に迂回することで電流経路が充分に延長されるものであればよい。つまり、横寸法Hは、第1の領域21を流れる電流の電流経路の迂回経路の長さが第2の領域22および第3の領域23を流れる電流の電流経路の長さに近づくように設定されるものであればよい。横寸法Hは、第2の領域22および第3の領域23に流れる電流の経路長によって適宜設定されてよいが、例えば20mm以上、好ましくは25mm以上、より好ましくは30mm以上であり、100mm以下である。
【0028】
複数の横長の開口部41は、車両の前方を見る運転者の視界にかからないように、第1の領域21の上下方向中央部には形成されないことが好ましく、
図1に示すように第1の領域21の下部に形成される。例えば、複数の横長の開口部41は、透明導電膜12の下辺から上方に向かって400mm以内の領域、好ましくは300mm以内、さらに好ましくは200mm以内の領域に形成される。尚、複数の横長の開口部41は、透明導電膜12の上辺または下辺に形成された凹部17よりも、凹部17に対向するバスバー側近くの第1の領域に形成されればよい。
【0029】
横長の開口部41は、
図2に示すように、縦方向から見て隙間なく配列されてよい。縦方向から見て、複数の横長の開口部41が接していてもよいし、一部重なっていてもよい。いずれの場合でも、上バスバー13および下バスバー14の一方から他方に向かって第1の領域21内を流れる電流が縦方向に最短距離で直進するのを防止し、電流経路を迂回させることができる。
【0030】
横長の開口部41は、第1の領域21内を流れる電流が開口部41を迂回して、右方または左方に1回以上は迂回をするように配列されてよい。第1の領域21内を流れる電流の経路が長くなり、第2の領域22や第3の領域23内を流れる電流の経路との差が小さくなる。よって、第1の領域21、第2の領域22、および第3の領域23を同程度に加熱することができる。ここで、電流が「迂回」するとは、電流が左方向および右方向にずれることをいい、電流が左方向にずれた後で右方向にずれること、電流が右方向にずれた後で左方向にずれることのいずれでもよい。電流が「1回以上は迂回」とは、電流が少なくとも1回ずつ左方向および右方向にずれることをいう。左方向にずれる回数と右方向にずれる回数とは同数であっても、同数でなくてもよい。
【0031】
尚、横長の開口部41は、第1の領域21に形成されていればよく、第2の領域22や第3の領域23にも形成されてもよい。例えば、横長の開口部41は、透明導電膜12の左右方向全体にわたって設けられてもよい。この場合、すべての領域において電流経路の長さが長くなるが、横長の開口部41が透明導電膜12に形成されない場合に比べて、第1の領域21の電流経路の長さと第2の領域22または第3の領域23の電流経路の長さとの差が、絶対値としては変わらなくとも割合としては小さくなるため、各電流経路の長さの差による電流集中の影響を減少させることができ、局所的に高温に加熱される問題を改善することができる。
【0032】
なお、第1の領域21の凹部17側の上部に開口部41が形成される場合、凹部17近くの電流が集中しやすい上部の領域でさらに開口部41を迂回する電流同士が合流することとなるため、その部分で電流集中が生じ、局所的に高温に加熱される。
【0033】
次に、
図10を参照して、電流経路を迂回させる開口部の配置について説明する。
図10に示す第1の領域21には、第1の開口部141、第2の開口部142、および第3の開口部143が形成される。第1の開口部141と第2の開口部142は縦方向に間隔をおいて配設される。そして、第3の開口部143は、第1の開口部141を第2の開口部142に向けて縦方向に延長した延長領域(
図10において左下がりの斜線で示す領域)A1と一部重なる。よって、第1の領域21を第1の開口部141に向かって上方から下方に流れる電流の経路は、先ず第1の開口部141に阻まれて右方にずれ、その後、第3の開口部143に阻まれて左方にずれる。また、第3の開口部143は、第2の開口部142を第1の開口部141に向けて縦方向に延長した延長領域(
図18において右下がりの斜線で示す領域)A2と接する。よって、前述の電流の経路は、第3の開口部143に阻まれて左方にずれた後、第2の開口部142に阻まれて右方にずれる。従って、第1の領域21内を流れる電流の経路は、第1の開口部141、第2の開口部142、および第3の開口部143によって上下に少なくとも1回迂回する。
【0034】
尚、電流の経路を左右に迂回させる開口部の配置は、多種多様であってよい。例えば、縦方向に隣り合う第1の開口部141と第2の開口部142との間に、別の開口部が配設されてもよい。また、第3の開口部143は、延長領域A1と接してもよく、延長領域A2と一部重なってもよい。第3の開口部143は、両方の延長領域A1、A2から離れる方向に延設される。
【0035】
次に、
図2を参照して、電流の経路を迂回させる開口部の配置について説明する。
図2に示す第1の領域21には、第1列を形成する第1の開口部41−1および第2の開口部41−1、ならびに第3の開口部41−2を有する。第3の開口部41−2の左端は、第1の開口部41−1を第2の開口部41−1に向けて縦方向に延長した領域、および第2の開口部41−1を第2の開口部41−1に向けて縦方向に延長した領域のそれぞれと接する。第1列の第1の開口部41−1に向かって縦方向に流れる電流の経路は、先ず第1列の開口部41−1に阻まれて右方にずれた後、第3の開口部41−2に阻まれて左方にずれる。また、第3の開口部41−2に向かって縦方向に流れる電流は、先ず第3の開口部41−2に阻まれて左方にずれた後、第1列の開口部41−1に阻まれて右方にずれる。従って、第1の領域21内を流れる電流の経路は第1の開口部41−1、第2の開口部41−1、および第3の開口部41−2によって少なくとも1回は左右に迂回する。
【0036】
図2に示すとおり、複数の開口部41は、各開口部41−1が縦方向に複数個配置された列(第1列)を有し、第1列の開口部41−1から縦方向と横方向にシフトした位置に配置される1つの開口部41−2を有する。
【0037】
開口部から縦方向と横方向にシフトした位置とは、基準となる開口部に対してバスバー間の電流の流れ方向、すなわち縦方向にシフトさせ、さらに電流の流れ方向と直交する方向、すなわち横方向にシフトさせた位置のことをいう。例えば、第1列の各開口部41−1から縦方向と横方向にシフトした位置は、例えば、第1列の2つの開口部41−1の間隙を横方向にシフトさせた位置を含む。対象となる列の開口部が1つの場合、当該開口部から縦方向と横方向にシフトした位置は、当該開口部の横方向両端に接する領域を縦方向にシフトさせた位置を含む。第1列の各開口部41−1と、開口部41−2とは、バスバー間を流れる電流が各開口部41を迂回して、左右に蛇行するように配置されてよい。第1の領域21内を流れる電流の経路が長くなりやすい。開口部41−2は、第1列の開口部41−1から縦方向と横方向にシフトした複数の位置にそれぞれ配置され、縦方向に間隔をおいて並んで列(第2列)を形成してもよい。
【0038】
また、複数の開口部41は、1つの開口部41−2から縦方向と横方向にシフトした位置に各開口部41−3が縦方向に複数個配置された列(第3列)を有してよく、第3列の開口部41−3から縦方向と横方向にシフトした位置に配置される1つの開口部41−4を有してよい。開口部41−4は、第3列の開口部41−3から縦方向と横方向にシフトした複数の位置にそれぞれ配置され、縦方向に間隔をおいて並んで列(第4列)を形成してもよい。さらに、複数の開口部41は、1つの開口部41−4から縦方向と横方向にシフトした位置に各開口部41−5が縦方向に複数個配置された列(第5列)を有してよい。
【0039】
第1領域21には、
図2に示すように、横寸法Hが所定値以上の開口部41が、縦方向に千鳥状に配列されてよい。電流の向きが変わる間隔が短くなり、電流の経路が長くなりやすい。
【0040】
ところで、本実施形態のように窓用板状体15に透明導電膜12が設けられた場合、透明導電膜12の第2の領域22および第3の領域23によって電磁波が遮蔽される。すなわち、第2の領域22や第3の領域23は、車室内に電磁波を透過しないので、車外と通信する機器の電磁波を遮る。
【0041】
しかし、本実施形態の第1の領域21は、
図2のように複数の横長の開口部41を設けることにより、所定の周波数の電磁波を透過させることができる。具体的には、横寸法Hの長さに対応する所定の周波数の偏波面が垂直である電磁波を透過させることができ、第1の領域21を周波数選択表面としても機能させることができる。
【0042】
この場合、透過させる垂直偏波である電磁波の所定の周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ
0とし、電熱窓用板状体10の波長短縮率をkとし、電熱窓用板状体10での波長をλ
g=λ
0・kとして、開口部41の横寸法Hが、(1/2)・λ
g以上であることが好ましい。なお、電熱窓用板状体が2枚のガラス板をポリビニルブチラールからなる中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスである場合、波長短縮率kは約0.51である。例えば、透過させたい所定の周波数が900MHzであった場合、横寸法Hは85mm以上であることが好ましいことになる。また、透過させたい所定の周波数が1.9GHzであった場合、横寸法Hは40mm以上であることが好ましいことになる。
【0043】
次に、
図3を参照して、第1変形例による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンについて説明する。本変形例では、上記実施例と同様に、複数の横長の開口部41が、同じ形状、同じ寸法を有し、第1の領域21において縦方向に千鳥状に配列される。
【0044】
本変形例では、上記実施形態と異なり、第1の領域21に、縦寸法Vが所定値以上の縦開口部31が設けられる。この縦開口部31は、縦に長くてよく、直線状でよい。ところで、上記実施形態の第1の領域21は、横長の開口部41を有しているため、偏波面が垂直である電磁波を透過する周波数選択表面であってよいと説明した。本変形例の第1の領域21は、横長の開口部41だけでなく、縦長の縦開口部31を有することにより、所定の周波数の水平偏波の電磁波を透過させることが可能となり、水平偏波の電磁波を透過できる周波数選択表面として機能できる。
【0045】
この場合、透過させる水平偏波である電磁波の所定の周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ
01とし、電熱窓用板状体10の波長短縮率をkとし、電熱窓用板状体10での波長をλ
g1=λ
01・kとして、縦開口部31の縦寸法Vが、(1/2)・λ
g1以上であることが好ましい。例えば、透過させたい所定の周波数が2.4GHzであった場合、波長短縮率kを0.51とすると、縦寸法Vは32mm以上であることが好ましい。
【0046】
複数の縦長の縦開口部31−1〜31−5は、同じ形状、同じ寸法を有し、第1の領域21において縦方向に千鳥状に配列される。
【0047】
また、本変形例では、第1の領域21において、横長の開口部41と、縦長の縦開口部31とが互いに十字状に交わる十字開口部51が複数配列されている。
図3に示すとおり、複数の十字開口部51は、各十字開口部51−1が縦方向に複数個配置された列(第1列)を有し、第1列の各十字開口部51−1から縦方向と横方向にシフトした位置に配置される1つの十字開口部51−2を有する。十字開口部51−2は、第1列の十字開口部51−1から縦方向と横方向にシフトした複数の位置にそれぞれ配置され、縦方向に間隔をおいて並んで列(第2列)を形成してもよい。また、複数の十字開口部51は、1つの十字開口部51−2から縦方向と横方向にシフトした位置に各十字開口部51−3が縦方向に複数個配置された列(第3列)を有してよく、第3列の十字開口部51−3から縦方向と横方向にシフトした位置に配置される1つの十字開口部51−4を有してよい。十字開口部51−4は、第3列の十字開口部51−3から縦方向と横方向にシフトした複数の位置にそれぞれ配置され、縦方向に間隔をおいて並んで列(第4列)を形成してもよい。さらに、複数の開口部51は、1つの十字開口部51−4から縦方向と横方向にシフトした位置に各十字開口部51−5が縦方向に複数個配置された列(第5列)を有してよい。同じ形状、同じ寸法の十字開口部51が千鳥状に配列されるので、見た目が美しい。
【0048】
次に、
図4を参照して、第2変形例による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンについて説明する。本変形例では、上記第1変形例と同様に、複数の横長の開口部41が、同じ形状、同じ寸法を有し、第1の領域21において縦方向に千鳥状に配列される。縦方向に並ぶ複数の開口部41−1は第1列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−3は第3列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−5は第5列をそれぞれ形成する。第1列と第3列の間に1つの開口部41−2が、第3列と第5列との間に1つの開口部41−4が配設される。開口部41−2や開口部41−4は、それぞれ縦方向に間隔をおいて複数形成されてそれぞれ第2列と第4列を形成してよい。また、複数の縦長の縦開口部31が、同じ形状、同じ寸法を有し、縦方向に千鳥状に配列される。縦開口部31−1は第1列の各開口部41−1の間に配置され、縦開口部31−3は第3列の各開口部41−3の間に配置され、縦開口部31−5は第5列の各開口部41−5の間に配置されてよい。また、縦方向に間隔をおいて並ぶ2つの縦開口部31−2の間に第2列の開口部41−2が、縦方向に間隔をおいて並ぶ2つの縦開口部31−4の間に第4列の開口部41−4がそれぞれ配設される。
【0049】
本変形例では、上記第1変形例と異なり、横長の開口部41−1〜41−5と、縦長の縦開口部31−1〜31−5とが離間しており、交わることがないが、縦寸法が所定値以上の縦長の縦開口部31を備えているので、上記第1変形例と同様に所定の周波数の水平偏波の電磁波を透過させることが可能となり、第1の領域21を水平偏波の電磁波を透過できる周波数選択表面として機能させることができる。また、同じ形状、同じ寸法の横長の開口部41と、同じ形状、同じ寸法の縦長の縦開口部31とがそれぞれが規則的に配列されるので、見た目が美しい。
【0050】
次に、
図5を参照して、第3変形例による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンについて説明する。本変形例では、上記第1変形例と同様に、複数の横長の開口部41が、同じ形状、同じ寸法を有し、第1の領域21において縦方向に千鳥状に配列される。縦方向に並ぶ複数の開口部41−1は第1列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−3は第3列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−5は第5列をそれぞれ形成する。第1列と第3列の間に1つの開口部41−2が、第3列と第5列との間に1つの開口部41−4が配設される。開口部41−2や開口部41−4は、それぞれ縦方向に間隔をおいて複数形成されてそれぞれ第2列と第4列を形成してよい。また、第1の領域21に、縦寸法が所定値以上の縦開口部32が設けられる。この縦開口部32は、縦に長くてよく、直線状でよい。複数の縦長の縦開口部32は、同じ形状、同じ寸法を有している。
【0051】
本変形例では、上記第1変形例と異なり、複数の縦長の縦開口部32が、横方向および縦方向に整列している。そうして、複数の縦長の縦開口部32のうち、一部32−1、32−3、32−5は横長の開口部41と十字状に交わり、残部32−2、32−4は横長の開口部41と離間している。すなわち、第1列を形成する開口部41−1、第3列を形成する開口部41−3、および第5列を形成する開口部41−5は、縦開口部32と交わることで十字開口部52−1、52−3、52−5を形成し、第2列を形成する開口部41−2および第4列を形成する開口部41−4は、縦開口部32−2、縦開口部32−4それぞれと離間して設けられる。このように第1の領域21を形成することにより、上記第1変形例や上記第2変形例と同様の効果が得られる。
【0052】
次に、
図6を参照して、第4変形例による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンについて説明する。本変形例では、上記第1変形例と同様に、複数の横長の開口部41−1〜41−5が、同じ形状、同じ寸法を有し、第1の領域21において縦方向に千鳥状に配列される。縦方向に並ぶ複数の開口部41−1は第1列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−3は第3列を、縦方向に並ぶ複数の開口部41−5は第5列をそれぞれ形成する。第1列と第3列の間に1つの開口部41−2が、第3列と第5列との間に1つの開口部41−4が配設される。開口部41−2や開口部41−4は、それぞれ縦方向に間隔をおいて複数形成されてそれぞれ第2列と第4列を形成してよい。また、第1の領域21に、縦寸法が所定値以上の縦開口部33−1〜33−5が設けられる。この縦開口部33−1〜33−5は、縦に長くてよく、直線状でよい。縦長の縦開口部33を設けることにより、所定の周波数の水平偏波の電磁波を透過させることが可能となり、第1の領域21を水平偏波の電磁波を透過できる周波数選択表面として機能させることができる。複数の縦長の縦開口部33は、同じ形状、同じ寸法を有している。
【0053】
本変形例では、上記第1変形例と異なり、縦長の縦開口部33が、それぞれ、縦方向に間隔をおいて並ぶ複数の横長の開口部41と交わる。このように縦寸法が充分に長い縦開口部33を設けることにより、水平偏波の電磁波が透過する周波数の範囲が広がる。
【0054】
次に、
図7を参照して、第5変形例による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンについて説明する。本変形例では、上記実施形態と同様に、第1の領域21に、横寸法が所定値以上の開口部42が形成される。縦方向に並ぶ複数の開口部42−1が第1列を、第1列の各開口部42−1から縦方向および横方向にシフトした位置に配置され縦方向に並ぶ複数の開口部42−2が第2列を、第2列の各開口部42−2から縦方向および横方向にシフトした位置に配置され縦方向に並ぶ複数の開口部42−3が第3列をそれぞれ形成してよく、以後同様に、開口部42−4〜42−9はそれぞれ第4列〜第9列を形成してよい。
【0055】
本変形例では、上記実施形態と異なり、横寸法が所定値以上の開口部42が、直線状ではなく、円状になっている。円状の開口部42は、縦寸法と横寸法とが等しい。尚、本変形例では、開口部42の形状が円状であるが、楕円形状や、正方形状や長方形などの多角形状でもよい。このように横寸法が所定値以上あり、縦寸法が所定値以上ある複数の開口部を形成させた場合、上記第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0056】
[試験例1〜試験例2]
試験例1〜試験例2では、透明導電膜を有する合わせガラスに対する偏波面が垂直偏波である電磁波の透過特性をFDTD(Finite-difference time-domain method)法による電磁界シミュレーションで解析した。
【0057】
試験例1〜試験例2では、透明導電膜の複数の開口部の開口パターンを変えた以外、同じ条件で、解析を行った。合わせガラスは、ガラス板、中間膜、透明導電膜、中間膜、およびガラス板をこの順で有し、合わせガラスの厚さ方向に垂直偏波が入射するとした。矩形状の透明導電膜(縦300mm×横200mm)の4辺のうち、上辺および下辺には磁気壁を境界条件として設定し、左辺および右辺には電気壁を境界条件として設定した。透過させる電磁波の周波数は0〜3GHzまで変化させた。
【0058】
なお、電磁界シミュレーションでの合わせガラスのモデルは以下のとおりに設定した。
各ガラス板の厚さ:2.0mm
各中間膜の厚さ:0.381mm
透明導電膜の厚さ:0.01mm
各ガラス板の比誘電率:7.0
各中間膜の比誘電率:3.0
透明導電膜の抵抗率:1.0Ω
図8は、試験例1による透明導電膜の複数の開口部の開口パターンを示す図である。
図8において、12は透明導電膜を、41は横長の開口部を、31は縦長の開口部を、それ以外の数字は開口パターンの寸法(mm)を表す。試験例1の開口パターンは、第2変形例の開口パターン(
図4参照)と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0059】
試験例2は、比較例であって、開口部のない透明導電膜を用いたので、透明導電膜の図示を省略する。
【0060】
図9は、試験例1〜試験例2による透明導電膜を有する合わせガラスに対する垂直偏波の透過特性を示す図である。
図9において、実線は試験例1の解析結果を、破線は試験例2の解析結果を表す。
図9の縦軸は透過させる垂直偏波の周波数(GHz)であり、
図9の横軸は入射させた垂直偏波の透過損失であるS21(dB)である。
【0061】
図9から明らかなように、試験例1では縦長の開口部を設けたので、試験例2よりも、垂直偏波が透明導電膜を透過しやすいことがわかる。なお、上記は垂直偏波の透過特性について示したが、横長の開口部と縦長の開口部とを同じ寸法にし等間隔に配列しているので、水平偏波の透過特性についても同様の結果が得られる。
[試験例3〜試験例6]
試験例3〜試験例6では、合わせガラスの電圧印加時の温度分布を発熱シュミレーションによって解析した。試験例3が実施例、試験例4〜試験例6が比較例である。
【0062】
合わせガラスは、解析の簡略化のため、ガラス板、透明導電膜、およびガラス板をこの順で有するとし、中間膜を有しないとした。各構成要素の寸法、物性は下記の通りとした。
【0063】
各ガラス板の厚さ:2.0mm
各ガラス板の熱伝導率:1.0W/(m・K)
各ガラス板の比熱:670J/(kg・K)
各ガラス板の質量密度:2.2g/cm
3
透明導電膜の厚さ:0.002mm
透明導電膜の電気電導率:625000Ω
−1・m
−1
透明導電膜の熱伝導率:420W/(m・K)
透明導電膜の比熱:235J/(kg・K)
透明導電膜の質量密度:1.07g/cm
3
合わせガラスの有限要素解析モデルは、アルテアエンジニアリング社製のソフトウェア(HyperMesh)を用いて作成した。このモデルのバスバー間に電圧を印加したときの温度分布は、汎用有限要素解析プログラムであるダッソー・システムズ社製のソフトウェア(Abaqus/Standard)を用いて求めた。
【0064】
合わせガラスの初期温度は23℃とし、合わせガラスと空気との境界には熱伝達境界条件を設定した。熱伝達境界条件とは、合わせガラスと空気との間で熱伝達が行われるという境界条件である。合わせガラスと空気との熱伝達係数は8.0W/m
2・Kとし、空気の温度は常に23℃とした。バスバー間の電圧は12Vとした。
【0065】
図11は、試験例3による合わせガラスの寸法および形状を示す図である。
図12は、試験例3による合わせガラスの電圧印加時の温度分布を示す図である。
図13は、試験例4による合わせガラスの寸法および形状を示す図である。
図14は、試験例4による合わせガラスの電圧印加時の温度分布を示す図である。
図15は、試験例5による合わせガラスの寸法および形状を示す図である。
図16は、試験例5による合わせガラスの電圧印加時の温度分布を示す図である。
図17は、試験例6による合わせガラスの寸法および形状を示す図である。
図18は、試験例6による合わせガラスの電圧印加時の温度分布を示す図である。
図11、
図13、
図15、
図17において、12は透明導電膜を、13は上バスバーを、14は下バスバーを、17は凹部を、それ以外の数字は寸法(mm)を表す。また、
図12、
図14、
図16、
図18において、数値範囲を表す「−」は、その左側の数値を含み、その右側の数値を含まない。例えば、「20℃−30℃」は、20℃以上30℃未満の範囲を意味する。
【0066】
試験例3〜試験例6では、透明導電膜12の開口パターン以外、同じ条件で解析を行った。試験例3では、
図4に示す開口パターンと同様の開口パターンを、透明導電膜12の上辺の凹部17と透明導電膜12の下辺とで挟まれる領域の下部、およびその領域の左右両側の領域の下部の一部に形成した。試験例4では、透明導電膜12に開口パターンを形成しなかった。試験例5では、透明導電膜12を上下方向に貫通するスリット18を2本形成した。一方のスリット18は凹部17の底の左端部を通り、他方のスリット18は凹部17の底の右端部を通る。試験例6では、
図4に示す開口パターンと同様の開口パターンを、透明導電膜12の上辺の凹部17と透明導電膜12の下辺とで挟まれる領域の上部に形成した。
【0067】
図11〜
図18から明らかなように、試験例3では、透明導電膜12の上辺の凹部17と透明導電膜12の下辺とで挟まれる領域の下部に開口パターンを形成したため、試験例4〜試験例6に比べて、電圧印加時に高温に加熱される領域が小さくなり局所加熱の問題が大幅に改善された。一方、試験例4では、透明導電膜12に開口パターンが形成されていないため、電圧印加時に高温に加熱される領域が大きかった。また、試験例5では、凹部17と透明導電膜12の下辺とで挟まれる領域を他の領域から分離したが、凹部17の側壁に傾斜している部分があり、その凹部17の側壁部分とその他の部分とで電流経路の長さに差が生じ、凹部17の側壁の角部に電流集中が生じるため、電圧印加時に高温に加熱される領域が大きかった。試験例6では、透明導電膜12の上辺の凹部17と透明導電膜12の下辺とで挟まれる領域の上部に開口パターンが形成したが、凹部17近くの電流が集中する上部の領域に開口パターンを設けることで、さらに開口パターンを迂回する電流同士が合流し、電流集中が生じるため、電圧印加時に高温に加熱される領域が大きかった。
【0068】
以上、電熱窓用板状体の実施形態などについて説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態の透明導電膜12は、
図1に示すように、上辺の長さが下辺の長さよりも短いが、上辺の長さが下辺の長さよりも長くてもよい。また、上辺の長さと下辺の長さとは同じでもよい。
【0070】
また、上記実施形態の上バスバー13や下バスバー14は、それぞれ、透明導電膜12の左端から右端まで延びているが、透明導電膜12の左端から右端にかけて複数に分割されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態の複数の開口部は、垂直偏波および水平偏波の他に、円偏波を透過させてもよい。
【0072】
また、上記実施形態の第1の領域21は、第2の領域22や第3の領域23と一体に形成されているが、第2の領域22や第3の領域23と間隔をおいて設けられてもよい。
【0073】
本出願は、2013年1月21日に日本国特許庁に出願された特願2013−008783号に基づく優先権を主張するものであり、特願2013−008783号の全内容を本出願に援用する。