(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、気相成長法によりシリコン単結晶基板の表面にエピタキシャル層(シリコン単結晶薄膜)を形成してシリコンエピタキシャルウェーハが作製される。このように作製したエピタキシャルウェーハは、バイポーラICやMOS−IC等の電子デバイスに広く使用されている。
【0003】
近年、このような電子デバイスは微細化がされ、電子デバイスに用いるエピタキシャルウェーハの薄膜化や大直径化が進められている。その中でエピタキシャルウェーハに形成されたエピタキシャル層の層厚をウェーハの面内方向において均一化することが重要な課題の1つとなっている。
【0004】
そのため、例えば、直径200mmのシリコンエピタキシャルウェーハを製造する際は、複数枚の基板をバッチ処理する方法に代え、層厚分布等の制御が比較的容易な枚葉処理する方法が主流になりつつある。この枚葉処理をする場合は、例えば、反応炉内において、1枚のシリコン単結晶基板をサセプタで水平又は略水平に保持し、反応室の一端から他端に原料ガスを導入してエピタキシャル層を基板上に成長させる。こうして1枚1枚、シリコン単結晶基板にエピタキシャル層を成長させる。
【0005】
シリコン単結晶基板に成長させるエピタキシャル層の成長速度は、温度の影響を強く受けるため、エピタキシャル層の層厚の均一性を向上させるにはシリコン単結晶基板の面内方向における温度分布の制御が重要となる。そして、エピタキシャル層を成長させる加熱方式には様々なものがあり、例えば、上記の枚葉処理に用いる装置の場合には、シリコン単結晶基板の上下からハロゲンランプをヒーターとして加熱する方式を採用することが多い。このハロゲンランプに片口金型ランプを用いる場合には、例えば、サセプタを鉛直方向に貫く軸周りに片口金型ランプが時計の指針のように配置される。具体的には、片口金型ランプの金型側が時計の指針の先端側となるように片口金型ランプが軸回りに放射状に配置される。全体として複数の片口金型ランプがシリコン単結晶基板の上下にそれぞれ一列の円状に配列される。
【0006】
配列されたランプの近傍には、例えば、配列されたランプをサセプタ上の基板との間に挟むようにランプの上方や下方にランプからの熱線を反射して基板に照射するリフレクタが配置される(特許文献1及び2参照)。例えば、特許文献1ではサセプタの上方に配列されたランプをドーナツ状に上から覆うリフレクタが開示され、特許文献2にも同種のリフレクタが開示される。このようなリフレクタ以外にも特許文献1及び2には、サセプタに載置された基板の上下に円筒状のリフレクタが配置される。例えば、基板の下方に位置する円筒状のリフレクタはサセプタを支持する支持軸を保護し、基板の上方に位置する円筒状のリフレクタはサセプタ上の基板の温度を測定するための光路を確保する等のために設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に開示されるリフレクタの表面には金メッキが施され、リフレクタの表面を、例えば、鏡面にすることでランプからの熱線を反射して反応炉内の基板を効率よく加熱する。
【0009】
このような反応炉では、反応炉の上蓋となるアッパードームと反応炉の下蓋となるロワードームを備える。これらのドームは、水冷機能を有するステンレス製のクランプリングによりそれぞれ保持されて固定される。例えば、アッパードームは、クランプリングによりアッパードームの側面から上面の外縁部を環状に覆うように保持される。よって、反応炉の上にはアッパードームの上面とクランプリングの内面により、例えば、凹状の空間が形成され、反応炉の下にも形状は違うが同じように空間が形成される。この空間には反応炉の外部に位置するブロワから風が送り込まれ、ランプにより基板とともに加熱される反応炉を冷却する。つまり、これらの空間は反応炉を冷却するブロワからの風の通り道となり、これらの空間にランプからの熱線を反射するリフレクタが設けられず、反応炉内を効率よく加熱できていない。
【0010】
本発明の課題は、反応炉内を効率よく加熱可能な気相成長装置及びその気相成長装置に用いるリフレクタを提供することにある。
【0011】
本発明の気相成長装置は、
上面、下面及び側面を有する反応炉と、
側面をリング状に囲むとともに、少なくとも上面又は下面の外縁部を覆うように延びて反応炉を保持するリング状のリング保持部と、
リング保持部が保持した反応炉の外側に位置して反応炉内を加熱するランプと、
反応炉の外側に位置するとともに、リング保持部の内側
かつリング保持部と同じ高さ位置に設けられた環状のリフレクタと、
を備え
る。
【0012】
本発明の気相成長装置は、環状のリフレクタが反応炉の外側でリング状のリング保持部の内側
かつリング保持部と同じ高さに位置する。反応炉の外側に位置するリング保持部の内側
かつリング保持部と同じ高さ位置にリフレクタを設けることで、従来、リフレクタが存在しなかった空間にリフレクタを設けることで、反応炉内をより効率よく加熱することが可能となる。
【0013】
本発明の実施態様では、
ランプにより反応炉内とともに加熱される反応炉を冷却する流体を反応炉の外側からリング保持部の内側に導入して反応炉を冷却する冷却機構を備え、
リフレクタとリング保持部の間に第1間隙を有し、かつ、リフレクタと反応炉の間に第1間隙と連なる第2間隙を有して、第1及び第2間隙を流体が流れるようにリフレクタがリング保持部の内側に位置する。
【0014】
リング保持部の内側において、リフレクタとリング保持部の間の第1間隙とリフレクタと反応炉の間の第2間隙が連なり、それらの間隙に冷却用の流体が流れるようにリフレクタがリング保持部の内側に配置される。そのため、冷却用の流体がリング保持部の内側に流入したり、冷却用の流体がリング保持部の内側から流出したりする際に、第1及び第2間隙が1つの通路となる。したがって、リング保持部の内側にリフレクタが位置しても反応炉を冷却することが可能となる。そして、第1及び第2間隙が流体の通路となるため、リング保持部の内側にリフレクタが位置してもリフレクタが冷却用の流体の流れを大きく乱すのを抑制することが可能となる。
【0015】
また、反応炉の外側に位置するリング保持部の内側は、反応炉を冷却して高温(例えば100℃以上)となった流体が通過するとともに、反応炉等からの輻射熱により高温となる空間である。よって、そのような空間にリフレクタを配置すると、高熱の影響でリフレクタが劣化する等の問題が生じる。しかし、上記のように流体の通路を確保することで、リフレクタも冷却されてリフレクタの性能をある程度、維持することが可能となる。
【0016】
本発明の実施態様では、
リフレクタは、環状の本体部と本体部から第1間隙に突出してリング保持部と対向する突出部を有する。
【0017】
これによると、リフレクタが仮に熱膨張しても本体部とリング保持部が近づかないように突出部がつっかえ棒の役割を果すことで、リング保持部と本体部の間に第1隙間を確保することが可能となる。この突出部は、本体部の周方向に複数形成されると、リング保持部と本体部の間に第1隙間を確保するのに効果的である。
【0018】
本発明の実施態様では、
リフレクタが所定の温度以上になるとリフレクタの熱膨張により、突出部は、対向するリング保持部と接触する。
【0019】
これによると、所定の温度以上になるとリング保持部と突出部が接触し、リング保持部と本体部の間に第1隙間を確実に確保できる。所定の温度を、例えば、200℃にすると、エピタキシャル成長中などの高温時においても確実に第1隙間を確保できる。
【0020】
本発明の実施態様では、
本体部は、金薄膜を有する表層部を備える。
【0021】
これによると、リフレクタの反射効率を高めることが可能となる。また、突出部によりリング保持部と本体部との間に第1間隙を有すれば、本体部(金薄膜)とリング保持部とが接触するのが抑制される。よって、高温になるリング保持部と本体部(金薄膜)が接触することで金薄膜が変色するのを防ぎ、金薄膜の反射率の低下を抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の実施態様では、
反応炉は、上面(反応炉の上面)を含む上側蓋部を有し、
リング保持部は、側面(反応炉の側面)をリング状に囲むとともに、上側蓋部の外縁部を覆うように延びて上側蓋部を保持する上側リング保持部を有し、
リフレクタは、上側リング保持部の内側に位置する上側リフレクタを有する。
【0023】
これによると、ランプにより反応炉内を加熱するのに要する電力を低減することができる。
【0024】
更に、反応炉は、下面(反応炉の下面)を含む下側蓋部を有し、
リング保持部は、側面(反応炉の側面)をリング状に囲むとともに、下側蓋部の外縁部を覆うように延びて下側蓋部を保持する下側リング保持部を有し、
リフレクタは、下側リング保持部の内側に位置する下側リフレクタを有する。
【0025】
これによると、より一層、ランプにより反応炉内を加熱するのに要する電力を低減することができる。
【0026】
また、本発明の気相成長装置に用いるリフレクタは、
上面、下面及び側面を有する反応炉と、
側面をリング状に囲むとともに、少なくとも上面又は下面の外縁部を覆うように延びて反応炉を保持するリング状のリング保持部と、
リング保持部が保持した反応炉の外側に位置して反応炉内を加熱するランプ
と、
ランプにより反応炉内とともに加熱される反応炉を冷却する流体を反応炉の外側からリング保持部の内側に導入して反応炉を冷却する冷却機構とを備える気相成長装置に用いるリフレクタであって、
リフレクタは環状に形成され、反応炉の外側に位置するとともに、
リフレクタとリング保持部の間に第1間隙を有し、かつ、リフレクタと反応炉の間に第1間隙と連なる第2間隙を有して、第1及び第2間隙を流体が流れるようにリング保持部の内側かつリング保持部と同じ高さ位置に設けられたことを特徴とする。
【0027】
本発明は、気相成長装置に用いるリフレクタとして構成したものであり(前述の発明は気相成長装置として構成)、前述の気相成長装置の発明と同様に反応炉内をより効率よく加熱することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の一例である枚葉式の気相成長装置1を示す。気相成長装置1により半導体基板である被処理基板にエピタキシャル層が気相成長され、エピタキシャルウェーハが製造される。例えば、シリコン単結晶基板にシリコンエピタキシャル層を成長してシリコンエピタキシャルウェーハが製造される。
【0030】
気相成長装置1は、被処理基板となる円盤状の基板Wを収容する反応炉2を備える。反応炉2は上面、底面及び側面を有する容器状に形成される。反応炉2は、円筒状の本体部3と、本体部3を上から蓋をする上側蓋部4と、本体部3を下から蓋をする下側蓋部5を備える。
【0031】
本体部3は上下に開口3a、3bを有する円筒状に形成され、本体部3には本体部3の外側(
図1の左右)から本体部3の内側に通じる通路3c、3dが形成される。
【0032】
上側蓋部4は、外縁部が隆起して中央部が窪んだ円盤状に形成される。上側蓋部4は、円筒状の本体部3の上方から本体部3の上側の開口3aを塞ぐように位置するアッパードーム4aとして構成され、アッパードーム4aの上面が反応炉2の上面となる。
【0033】
下側蓋部5は椀状に形成される。下側蓋部5は、円筒状の本体部3の下方から本体部3の下側の開口3bを塞ぐように位置するロワードーム5aとして構成され、ロワードーム5aの下面が反応炉2の下面となる。なお、反応炉2の側面は、本体部3、アッパードーム4a及びロワードーム5aの側面により構成される。
【0034】
アッパードーム4a及びロワードーム5aは、リング状に形成されるクランプリング6(リング保持部)により保持されて固定される。クランプリング6は、アッパードーム4aを保持する上側クランプリング6a(上側リング保持部)と、ロワードーム5aを保持する下側クランプリング6b(下側リング保持部)を備える。
【0035】
上側クランプリング6aはリング状に形成され、アッパードーム4aの側面をリング状に囲むとともに、アッパードーム4aの側面からその上面の外縁部をリング状に覆うように延びるように位置する。上側クランプリング6aは、本体部3との間にアッパードーム4a(例えば、アッパードーム4aの外縁部の一部)を挟んだ状態で本体部3とアッパードーム4aを密接させてアッパードーム4aを保持し、固定する。また、下側クランプリング6bは、上側クランプリング6aと同様にロワードーム5aを保持し、固定する。
【0036】
上側及び下側クランプリング6a、6bはステンレス製である。上側及び下側クランプリング6a、6bは、例えば、アッパードーム4aと上側クランプリング6aの間及びロワードーム5aと下側クランプリング6bの間に挟まれる図示しないOリングを冷却する冷却機能を備える。具体的には、上側及び下側クランプリング6a、6bは内部に水等の流体が流通する流路(図示省略)が備わり、この流路を冷却用の流体が流通することで冷却機能が発揮される。
【0037】
上側及び下側クランプリング6a、6bにより保持されて固定された反応炉2の周囲では、反応炉2の上にアッパードーム4aの上面と上側クランプリング6aのリング状の内面で区画される凹状の空間S1が形成される。また、反応炉2の下にロワードーム5aの下面と下側クランプリング6bのリング状の内面で区画される環状の空間S2が形成される。
【0038】
一方、反応炉2の内部には、基板Wを載置するサセプタ7と、サセプタ7を支持する支持部8と、支持部8を通じてサセプタ7を駆動(例えば、軸線O回りに回転)させる駆動部9を備える。
【0039】
反応炉2の外部には、反応炉2の左右にガス導入管10及びガス排出管11が配置されるとともに、反応炉2を収容するように反応炉2を覆うケース12が配置される。
【0040】
ガス導入管10は反応炉2の水平方向の一端側(
図1左側)に位置し、本体部3の通路3cにつながり、反応炉2内に各種のガスを略水平に導入する。ガス導入管10は、気相成長時には通路3cから反応炉2内に気相成長ガスを導入する。
【0041】
ガス排出管11は反応炉2の水平方向の他端側(
図1右側)に位置し、本体部3の通路3dにつながり、反応炉2内に導入されたガス(基板Wを通過した気相成長ガス等)を反応炉2外に排出する。
【0042】
ケース12は、内部に反応炉2を収容するように反応炉2を覆って位置し、ケース12と反応炉2の間に形成される空間にはランプ13とリフレクタ14が配置される。
【0043】
ランプ13は反応炉2の上下に複数配置される。ランプ13としては、例えば、片口金型のハロゲンランプ13aが用いられ、軸線O回りにハロゲンランプ13aが時計の指針のように配置される。具体的には、ハロゲンランプ13aの金型側が時計の指針の先端側となるように軸線O回りに放射状に配置される。全体として、複数のハロゲンランプ13aが反応炉2の上下にそれぞれ一列の円状に配列される。ハロゲンランプ13aは、気相成長時に反応炉2内を加熱して反応炉2内に位置する基板W等の温度を調節する熱源となる。
【0044】
リフレクタ14は、ハロゲンランプ13aからの熱線や反応炉2等からの輻射熱を反射して反応炉2内の基板Wに熱線を照射する反射板である。リフレクタ14は、ハロゲンランプ13aを覆うランプリフレクタ14aと、基板Wの上下に位置する円筒状リフレクタ14bと、空間S1、S2に位置する環状リフレクタ14cを備える。
【0045】
ランプリフレクタ14aは、反応炉2の上下にそれぞれ一列の円状に配列されるハロゲンランプ13aを覆うように反応炉2の上下に位置する。反応炉2の上側に位置するランプリフレクタ14aは、図示(
図1)M字状に配置され、反応炉2の下側に位置するランプリフレクタ14aは、図示逆さM字状に配置される。
【0046】
円筒状リフレクタ14bは基板Wの上下にそれぞれ配置される。基板Wの上方の円筒状リフレクタ14bはサセプタ7に載置された基板Wの温度を測定する放射温度計(図示省略)の光路を確保する役割を果たす。また、基板Wの下方の円筒状リフレクタ14bはサセプタ7を支持する支持部8を保護する役割を果たす。
【0047】
環状リフレクタ14cは、反応炉2の上に位置する凹状の空間S1に配置される上側リフレクタ15と、反応炉2の下に位置する環状の空間S2に配置される下側リフレクタ16を備える。
【0048】
図2A及び
図2Bに示すように上側リフレクタ15は、環状の本体部15aと、本体部15aの外壁の一部から側方に突出する突出部15bと、本体部15aを支持する支持部15cを備える。
図2Bに示すように本体部15aは、環状の上部15a1と、上部15a1から下方に向かうにつれて縮径するテーパー状の下部15a2を有し、全体として環状に形成される。本体部15aの表面には金メッキが施され、本体部15aの表層部には金薄膜が形成される。突出部15bは、本体部15aの上端から側方に突出して本体部15aの上部15a1と下部15a2の境界まで延びるように形成される。突出部15bは、棒状(例えば角棒状)に形成され、
図2Aに示すように環状の本体部15aの周方向に複数形成される。支持部15cは、本体部15aの上端から側方に突出部15bより突出し、環状の本体部15aの周方向に複数(突出部15bの数>支持部15cの数)形成される。
【0049】
上側リフレクタ15と上側クランプリング6aを平面から見た
図3Aに示すように上側リフレクタ15は支持部15cが上側クランプリング6aの上面の内縁部に引っ掛かるように上側クランプリング6aに装着される。この状態で上側リフレクタ15は上側クランプリング6aの内側に位置し、
図3Bに示すように上側クランプリング6aとの間に第1間隙G1、かつ、アッパードーム4aとの間に第1間隙G1と連なる第2間隙G2が形成される。この際、突出部15bと上側クランプリング6aとの間にも第3間隙G3が形成される。即ち、上側クランプリング6aと上側リフレクタ15は支持部15c以外では接触せず(
図3A参照)、アッパードーム4aと上側リフレクタ15は接触しないように上側リフレクタ15は配置される(
図3B参照)。
【0050】
一方、下側リフレクタ16は、
図4A及び
図4Bに示すように環状の本体部16aと、本体部16aを支持する支持部16bを備える。
図4Bに示すように本体部16aは、環状に形成された環状部16a1と、環状部16a1から下方に僅かに縮径して突出するテーパー状の下端部16a2を有し、全体として環状に形成される。本体部16aの表面には金メッキが施され、本体部16aの表層部には金薄膜が形成される。支持部16bは板状に形成され、環状部16a1と下端部16a2の境界から側方に突出し、環状の本体部16aの直径方向の両端にそれぞれ1つ形成される。
【0051】
下側リフレクタ16と下側クランプリング6bを底面から見た
図5Aに示すように下側リフレクタ16は支持部16bが下側クランプリング6bの下面の内縁部に取り付けられる。この状態で下側リフレクタ16は下側クランプリング6bの内側に位置し、
図5Bに示すように下側クランプリング6bとの間に第1間隙G1、かつ、ロワードーム5aとの間に第1間隙G1と連なる第2間隙G2が形成される。
【0052】
図1に戻って、ケース12の外部には、ケース12の側方(図示右側)にダクト17と冷却部18が配置される。
【0053】
ダクト17は、例えば、ケース12の内面に沿って冷気Cを導入する導入通路と、導入した冷気Cをケース12から排出する排出通路を備える。ダクト17の一方にはケース12が接続され、ダクト17の他方にはブロワ、コンプレッサ及び熱交換器等を有する冷却部18が接続される。
【0054】
冷却部18は、ケース12と反応炉2(及びクランプリング6)の間に形成される空間にダクト17を通じて冷気Cを導入し、反応炉2の外壁とリフレクタ14等を冷却する冷却手段として機能する。ケース12内に導入された冷気Cは、例えば、アッパードーム4aやロワードーム5の外面を沿うようにして流れた後、ケース12外に排出され、冷却部18に戻る。これにより、反応炉2やリフレクタ14等が冷却され、ケース12、ダクト17及び冷却部18等により冷却機構が構成される。
【0055】
以上のように構成された気相成長装置1に基板Wを搬入してサセプタ7上に基板Wを載置する。そして、基板Wに気相成長ガスを導入するとともに、ハロゲンランプ13aの出力を調節して基板Wを加熱し、基板Wにエピタキシャル層を成長する。気相成長装置1では、従来、リフレクタが存在しなかった反応炉2の周囲の空間S1に上側リフレクタ15、空間S2に下側リフレクタ16を設けることで、反応炉2内をより効率よく加熱することが可能となる。
【0056】
また、エピタキシャル成長時にはハロゲンランプ13aにより基板Wとともに、反応炉2やリフレクタ14(例えば上側リフレクタ15)が加熱される。ハロゲンランプ13aの熱線や反応炉2等からの輻射熱で上側リフレクタ15が加熱されるにともない上側リフレクタ15が熱膨張する。よって、
図3Aに示すように突出部15bと対向する上側クランプリング6aの間に形成される第3間隙G3が上側リフレクタ15の熱膨張により次第に狭まる。そして、エピタキシャル成長時に上側リフレクタ15の温度が、所定の温度(例えば200℃以上)になると、突出部15bと上側クランプリング6aが接触する(
図6参照)。その際、突出部15bがつっかえ棒となり、上側クランプリング6aと上側リフレクタ15の本体部15aの間に第1間隙G1を確実に確保することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0058】
(実施例)
実施例では、気相成長装置1から上側及び下側リフレクタ15、16を取り外した装置を複数用意した。用意した装置としては、型式が異なる4種類の装置(型式1〜4の装置)を用意した。用意した各装置に上側リフレクタ15を装着、又は、上側及び下側リフレクタ15、16の両方を装着した。次いで、各装置の反応炉2に直径200mmのシリコン単結晶からなる基板Wを搬入し、基板Wの中心温度を所定温度に調節して基板Wにエピタキシャル層を成長させた。そして、基板Wにエピタキシャル層を成長させている(薄膜を堆積させている)間のヒーター(ハロゲンランプ13a)の合計出力(kW)を測定した。
【0059】
実施例1Aでは、型式1の装置に上側リフレクタ15のみ取り付けた装置1Aを用いて基板Wの中心温度を1100℃に調節して加熱した場合のヒーターの出力を測定した。実施例1Bでは、装置1Aとは別に型式1の装置に上側及び下側リフレクタ15、16を取り付けた装置1Bを用いて実施例1Aと同様の条件で測定をした。
【0060】
実施例2Aでは、型式2の装置に上側リフレクタ15のみ取り付けた装置2Aを用いて基板Wの中心温度を1170℃に調節して加熱した場合のヒーターの出力を測定した。実施例2Bでは、装置2Aとは別に型式2の装置に上側及び下側リフレクタ15、16を取り付けた装置2Bを用いて実施例2Aと同様の条件で測定をした。
【0061】
実施例3Aでは、型式3の装置に上側リフレクタ15のみ取り付けた装置3Aを用いて基板Wの中心温度を1100℃に調節して加熱した場合のヒーターの出力を測定した。実施例3Bでは、型式3の装置に上側リフレクタ15のみ取り付けた装置(ただし、装置3Aとは異なる装置3B)を用いて実施例3Aと同様の条件で測定をした。
【0062】
実施例4Aでは、型式4の装置に上側リフレクタ15のみ取り付けた装置4Aを用いて基板Wの中心温度を1100℃に調節して加熱した場合のヒーターの出力を測定した。実施例4Bでは、装置4Aに下側リフレクタ16を取り付けた装置4Bを用いて実施例4Aと同様の条件で測定をした。
【0063】
(比較例)
比較例1A〜4Bでは、実施例で使用した装置から上側リフレクタ15又は上側及び下側リフレクタ15、16を取り外した装置101(
図7参照)を用いる以外は実施例と同様の条件でヒーターの出力を測定した。即ち、比較例では、上側及び下側リフレクタ15、16を装着しない装置101によりヒーターの出力を測定した。なお、比較例1Aは実施例1Aに対応するように比較例は英数字が同一の実施例に対応する。以下では対応する実施例と比較例を一括りに実験とし、例えば、実験1Aは比較例1Aと実施例1Aを示す。
【0064】
図8Aは、各実験でのヒーターの出力の測定結果を示すグラフである。各実験の測定結果から明らかなように、いずれの実験においても比較例より実施例の方がヒーターの出力の合計値(kW)が低減した。
図8Bは測定したヒーターの出力の詳細を示す表であり、測定したヒーターの出力の合計値(kW)、ヒーターの出力の変化量(kW)及びヒーターの出力の変化率(%)を示す。変化量は、各実験における実施例の出力の合計値を対応する比較例の出力の合計値で引いた値(実施例の合計値−比較例の合計値)により取得した。変化率は、取得した変化量をその変化量に対応する比較例の出力の合計値で除した値に100を乗じた値((変化量/比較例)×100)により取得した。
【0065】
上側リフレクタ15を装着した実験1Aよりも上側及び下側リフレクタ15、16を装着した実験1Bの方がヒーターの出力の変化量及び変化率の絶対値が大きくなり、ヒーターの出力の合計値が大きく低減した。また、実験2Aと実験2B及び実験4Aと実験4Bでも同様の結果が得られた。したがって、上側リフレクタ15のみを装着する場合よりも上側及び下側リフレクタ15、16の両方を装着することでヒーターの出力をより一層低減できることが分かる。
【0066】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0067】
上記の説明では、上側及び下側リフレクタ15、16の両方を装着する例及び上側リフレクタ15のみを装着する例を例示したが、下側リフレクタ16のみを装着してもよい。下側リフレクタ16(
図5A)とし、本体部16aと支持部16bを有する例を示したが、上側リフレクタ15の突出部15bに対応して下側リフレクタ16の本体部16aから第1間隙G1に突出する突出部を設けてもよい。