(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。本明細書において、数値範囲を表す「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味する。
【0011】
[ガラス板]
本実施形態のガラス板は、厚さが0.75mm以下のガラス板の場合、ガラス板の第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方は、うねり曲線の十点平均高さが0.2μm以下であり、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.20以上である。研磨前のうねり強度の比は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上である。また、研磨前のうねり強度の比は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.90以下である。
【0012】
また、厚さが0.45mm以下のガラス板においては、ガラス板の第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方は、うねり曲線の十点平均高さが0.2μm以下であり、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.20以上である。研磨前のうねり強度の比は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上である。また、研磨前のうねり強度の比は、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下である。
【0013】
本発明者らは、20mmピッチのうねり高さだけでなく、10〜20mmピッチのうねり高さが、液晶ディスプレイの色ムラに影響を与えることを見出した。また、本発明者らは、うねり曲線の十点平均高さが同じであっても、うねりピッチ(うねり波長)が短いうねり成分を多く含むガラス板ほど研磨しやすいことを見出した。ここで、うねり曲線の十点平均高さとは、計測内のうねり曲線で高い山から10点を抽出し、その平均値を取った値である。
【0014】
図3は、うねりピッチとうねり高さの関係を示した模式図である。本実施形態のうねり波長、うねり強度は、それぞれうねりピッチ、うねり高さのフーリエ変換値である。
【0015】
一般的に測定されるうねりは、複数の波長λの波f(x)の合成波F(ω)である。
【0016】
本実施形態におけるうねり強度A(λ)は、周波数ωとして、以下の数式で算出できる。
【0017】
【数1】
図4は、うねり曲線の十点平均高さを説明する図である。本実施形態のうねり曲線の十点平均高さは、うねり曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものである。
【0018】
本実施形態のガラス板は、研磨前のうねり強度の比が0.20以上だと、研磨しやすい10mmピッチのうねり成分を多く含むため、後述する研磨工程S70の研磨時間を低減させることができる。また、研磨前のうねり強度の比が1.0以下だと、後述する溶解工程S10〜成形工程S30で、研磨前のうねり強度の比を制御しやすい。
【0019】
本実施形態のガラス板は、液晶ディスプレイ用途では、アルカリ金属成分を実質的に含まない無アルカリガラスを用いるのが好ましい。ここで、アルカリ金属成分を実質的に含まないとは、アルカリ金属酸化物の含有量の合量が0.1質量%以下であることを意味する。
【0020】
無アルカリガラスは、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:50〜73%(好ましくは50〜66%)、Al
2O
3:10.5〜24%、B
2O
3:0〜12%、MgO:0〜8%、CaO:0〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、ZrO
2:0〜5%を含有し、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜29.5%(好ましくは9〜29.5%)である。
【0021】
無アルカリガラスは、高い歪点と高い溶解性とを両立する場合、好ましくは、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:58〜66%、Al
2O
3:15〜22%、B
2O
3:5〜12%、MgO:0〜8%、CaO:0〜9%、SrO:3〜12.5%、BaO:0〜2%を含有し、MgO+CaO+SrO+BaO:9〜18%である。
【0022】
無アルカリガラスは、特に高い歪点を得たい場合、好ましくは、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:54〜73%、Al
2O
3:10.5〜22.5%、B
2O
3:0〜5.5%、MgO:0〜8%、CaO:0〜9%、SrO:0〜16%、BaO:0〜2.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜26%である。
【0023】
[ガラス板の製造装置]
本実施形態のガラス板の製造装置に関して、フロートガラス製造装置を例にして説明する。
【0024】
図1は、ガラス板の製造装置を示す断面図である。
図1に示すように、フロートガラス製造装置1は、溶解装置10、溶融ガラス搬送装置20、成形装置30、接続装置40、及び徐冷装置50を有する。
【0025】
溶解装置10は、ガラス原料G1を溶解することで溶融ガラスG2を作製する。溶解装置10は、例えば、溶解炉11と、バーナー12とを有する。
【0026】
溶解炉11は、ガラス原料G1を溶解する溶解室11aを形成する。溶解室11aには溶融ガラスG2が収容される。
【0027】
バーナー12は、溶解室11aの上部空間に火炎を形成する。この火炎の輻射熱によってガラス原料G1が溶融ガラスG2に徐々に溶け込む。
【0028】
なお、溶解装置10は、溶融ガラスG2にガスを吹き込み、溶融ガラスを循環させるバブラー(不図示)を有してもよい。
【0029】
溶融ガラス搬送装置20は、溶融ガラスG2を溶解装置10から成形装置30に搬送し、溶融ガラスG2を成形装置30に供給する。溶融ガラス搬送装置20には、溶融ガラス搬送管21と、溶融ガラスG2を攪拌する攪拌機22とが設けられる。
【0030】
溶融ガラス搬送管21は、白金製又は白金合金製の中空管と、長手方向端部に電極(不図示)とを有し、電極を介して中空管を通電し、溶融ガラスG2を加熱する。
【0031】
攪拌機22は、白金製又は白金合金製であり、回転軸22aと攪拌翼22bとを有しており、攪拌翼22bは回転軸22aに直交して配置される。攪拌機22は溶融ガラスG2を攪拌して均質化する。
【0032】
なお、溶融ガラス搬送装置20は、溶融ガラスG2に含まれる泡を脱泡する清澄装置を有してもよい。
【0033】
成形装置30は、溶融ガラス搬送装置20から供給される溶融ガラスG2を帯板状のガラスリボンG3に成形する。成形装置30は、例えば、成形炉31と、成形ヒータ32とを有する。
【0034】
成形炉31は、溶融ガラスG2を成形する成形室31aを形成する。成形炉31の入口から成形炉31の出口に向かうほど、成形室31aの温度が低くなる。成形炉31は、フロートバス311と、フロートバス311の上方に配設される天井312とを有する。
【0035】
フロートバス311は、溶融金属Mを収容する。溶融金属Mとしては、例えば、溶融スズが用いられる。溶融スズの他に、溶融スズ合金なども使用可能である。溶融金属Mの酸化を抑止するため、成形室31aの上部空間は還元性ガスで満たされる。還元性ガスは、例えば、水素ガスと窒素ガスとの混合ガスで構成される。
【0036】
フロートバス311は、溶融金属Mの表面上に連続的に供給された溶融ガラスG2を、溶融金属Mの液面を利用して帯板状のガラスリボンG3に成形する。ガラスリボンG3は、フロートバス311の上流側から下流側に流動しながら、トップロール33によって幅方向に引き延ばされて徐々に固化され、フロートバス311の下流域において溶融金属Mから引き上げられる。トップロール33は、ガラスリボンG3の粘度が10
3.8〜10
7.65となる成形域に設けられる。ここで、ガラスリボンG3の表面について、溶融金属Mと接触する面とは反対側の面をトップ面、溶融金属Mと接触する面をボトム面という。
【0037】
成形ヒータ32は、天井312から吊り下げられる。成形ヒータ32は、ガラスリボンG3の流動方向に間隔をおいて複数設けられ、ガラスリボンG3の流動方向における温度分布を調整する。また、成形ヒータ32は、ガラスリボンG3の幅方向に間隔をおいて複数設けられ、ガラスリボンG3の幅方向における温度分布を調整する。
【0038】
接続装置40は、成形装置30と徐冷装置50とを接続する。接続装置40と徐冷装置50との間の僅かな隙間には断熱材が詰められてよい。接続装置40は、接続炉41と、中間ヒータ42と、リフトアウトロール43とを有する。
【0039】
接続炉41は、成形炉31と後述する徐冷炉51との間に配設され、搬送されるガラスリボンG3の脱熱を制限する接続室41aを形成することにより、ガラスリボンG3の急冷を防止する。
【0040】
中間ヒータ42は、接続室41aに配設される。中間ヒータ42は、ガラスリボンG3の搬送方向に間隔をおいて複数設けられ、ガラスリボンG3の搬送方向における温度分布を調整する。中間ヒータ42は、ガラスリボンG3の幅方向に分割され、ガラスリボンG3の幅方向おける温度分布を調整してもよい。
【0041】
リフトアウトロール43は、接続室41aに配設される。リフトアウトロール43は、モータなどによって回転駆動され、ガラスリボンG3を溶融金属Mから引き上げ、成形炉31から徐冷炉51に搬送する。リフトアウトロール43は、ガラスリボンG3の搬送方向に間隔をおいて複数設けられる。
【0042】
徐冷装置50は、成形装置30で成形されたガラスリボンG3を徐冷する。徐冷装置50は、徐冷炉51と、徐冷ヒータ52と、徐冷ロール53とを有する。
【0043】
徐冷炉51は、ガラスリボンG3を徐冷する徐冷室51aを形成する。徐冷炉51の入口から徐冷炉51の出口に向かうほど、徐冷室51aの温度が低くなる。
【0044】
徐冷ヒータ52は、徐冷室51aに配設される。徐冷ヒータ52は、ガラスリボンG3の搬送方向に間隔をおいて複数設けられ、ガラスリボンG3の搬送方向における温度分布を調整する。徐冷ヒータ52は、ガラスリボンG3の幅方向に分割され、ガラスリボンG3の幅方向おける温度分布を調整してもよい。
【0045】
徐冷ロール53は、徐冷室51aに配設される。徐冷ロール53は、モータなどによって回転駆動され、徐冷炉51の入口から徐冷炉51の出口に向けてガラスリボンG3を搬送する。徐冷ロール53は、ガラスリボンG3の搬送方向に間隔をおいて複数設けられる。
【0046】
徐冷装置50において徐冷されたガラスリボンG3は、切断機で所定のサイズに切断される。ここで、切断後に得られるガラス板の主面について、ガラスリボンG3のボトム面に相当する面を第1の主面、ガラスリボンG3のトップ面に相当する面を第2の主面という。
【0047】
上記したうねり強度の比を有するガラス板は、この後、研磨装置によって片面又は両面が研磨される。
【0048】
[ガラス板の製造方法]
次に、
図2を参照して、上記構成のフロートガラス製造装置1を用いた、ガラス板の製造方法について説明する。
図2は、ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、ガラス板の製造方法は、溶解工程S10、溶融ガラス搬送工程S20、成形工程S30、徐冷工程S50、切断工程S60、及び研磨工程S70を有する。
【0049】
溶解工程S10では、ガラス原料G1を溶解することで溶融ガラスG2を作製する。
【0050】
溶融ガラス搬送工程S20では、溶融ガラスG2を溶解装置10から成形装置30に搬送する。また、溶融ガラス搬送工程S20において、溶融ガラスG2に含まれる泡を脱泡する清澄工程を有してもよい。
【0051】
成形工程S30では、溶解工程S10により作製した溶融ガラスG2を帯板状のガラスリボンG3に成形する。例えば、成形工程S30では、溶融金属Mの表面上に溶融ガラスG2を連続的に供給し、溶融金属Mの液面を利用して溶融ガラスG2を帯板状のガラスリボンG3に成形する。ガラスリボンG3は、フロートバス311の上流側から下流側に流動しながら、徐々に固化される。
【0052】
徐冷工程S50では、成形工程S30により成形したガラスリボンG3を徐冷する。
【0053】
切断工程S60では、徐冷されたガラスリボンG3を、切断機で所定のサイズに切断し、ガラス板を得る。
【0054】
本実施形態のガラス板のうねり強度の比は、溶解工程S10、溶融ガラス搬送工程S20、又は成形工程30にて制御することができる。
【0055】
溶解工程S10では、ガラス原料G1の粒径を小さくする、バーナー12の燃焼出力を上げて溶解室11aの温度を高くする、バブラーのガス流量を上げる、などの調整を行う。
【0056】
溶融ガラス搬送工程S20では、溶融ガラス搬送管21の通電量を増やして攪拌機22近傍の溶融ガラスG2の温度を高くする、攪拌機22の攪拌速度(回転数)を上げる、溶融ガラスG2に対する攪拌機22の高さを下げる、などの調整を行う。
【0057】
攪拌機22近傍の溶融ガラスG2の温度は、無アルカリガラスの場合、好ましくは1300〜1500℃であり、より好ましくは1350〜1500℃である。また、攪拌機22の回転数は、好ましくは5〜30rpmであり、より好ましくは10〜30rpmである。
【0058】
成形工程S30では、複数対のトップロール33の回転速度を上げる、トップロール33の使用本数を増やす、成形域の下流域でグリップ性に優れたトップロール(高グリップトップロール)を使用する、成形域の下流域の成形ヒータ32の出力を上げる、などの調整を行う。ここで、成形域の下流域とは、ガラスリボンG3の粘度が10
6.5〜10
7.65となる領域をいう。
【0059】
トップロール33の使用本数は、好ましくは10〜30対、より好ましくは15〜30対である。また、高グリップトップロールの使用本数は、好ましくは0〜6対、より好ましくは1〜6対である。ここで、高グリップトップロールとは、ガラスリボンG3と接触する回転部材がセラミックスで形成されるトップロール、回転部材が工具鋼で形成されるトップロール、回転部材の断熱性能を向上させたトップロールなどのことをいう。
【0060】
研磨工程S70では、上記のうねり強度の比を有するガラス板の主面を、研磨スラリを用いて研磨する。研磨スラリは、研磨砥粒として酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、ランタン又はベンガラを含む。ガラス板の第1の主面又は第2の主面のいずれか一方を研磨して、平滑性の高いガラス板に仕上げる。勿論、ガラス板の第1の主面及び第2の主面の両方を研磨してもよい。生産性向上の観点から、研磨量は、好ましくは3.5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
【0061】
研磨工程S70において、厚さが0.75mm以下の場合、ガラス板の第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方を、うねり曲線の十点平均高さが0.07μm以下であり、うねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.03〜0.30となるように研磨する。研磨後のうねり強度の比は、好ましくは0.04〜0.28、より好ましくは0.05〜0.26である。
【0062】
本実施形態においては、第1の主面のみを研磨してよい。この場合、第2の主面は、研磨前のうねり強度の比を保持している。研磨後のうねり強度の比0.03〜0.30は、10mmピッチのうねり成分が20mmピッチのうねり成分に比して充分に研磨されたことを意味する。また、20mmピッチのうねり成分も従来通り研磨されて除去されていることを意味する。
【0063】
研磨工程S70において、厚さが0.45mm以下の場合、ガラス板の第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方を、うねり曲線の十点平均高さが0.07μm以下であり、うねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.03〜0.25となるように研磨する。研磨後のうねり強度の比は、好ましくは0.04〜0.23、より好ましくは0.04〜0.21である。
【0064】
研磨後のうねり強度の比0.03〜0.25は、10mmピッチのうねり成分が20mmピッチのうねり成分に比して充分に研磨されたことを意味する。また、20mmピッチのうねり成分も従来通り研磨されて除去されていることを意味する。
【0065】
本実施形態のガラス板の製造方法によれば、10mmピッチのうねり成分に起因して研磨性が向上し、液晶ディスプレイの色ムラを低減させた高品質なガラス板を製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
図5は、実施例と比較例との関係を示す図であり、(A)はガラス板の厚さが0.70mm、(B)はガラス板の厚さが0.50mm、(C)はガラス板の厚さが0.40mmの実施例および比較例である。
図6は、研磨前のうねり強度の比と研磨時間指数との関係を示す図である。
【0067】
(例1〜18)
例1〜12が実施例、例13〜18が比較例である。
【0068】
図5(A)に示す例1〜18の製造条件で、無アルカリガラス組成のガラス原料G1を溶解室11aにて溶解することで溶融ガラスG2を作製し、フロート法にて溶融ガラスG2を帯板状のガラスリボンG3に成形し、ガラスリボンG3を徐冷して切断し、厚さが0.70mm、幅300mm×長さ300mmのガラス板を計18枚得た。ここで、
図5(A)に示す高グリップトップロールは、回転部材がセラミックスで形成されるトップロールのことである。
図5(B)、
図5(C)についても同様である。
【0069】
各ガラス板のうねりピッチ、うねり高さは、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム)を用い、各ガラス板の筋目に対して直交方向に沿って測定した。各ガラス板のうねり波長、うねり強度は、上述のフーリエ変換により算出した。なお、筋目とは、ガラスリボンG3の幅方向における板厚の変動およびうねりに起因して、ガラスリボンG3の流動方向に生じる筋である。
【0070】
図5(A)に示すように、例1〜12の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.23〜0.93であった。一方、例13〜18の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.12〜0.19であった。
【0071】
次に、各ガラス板の第1の主面を、溝ピッチ4.5mm、溝幅1.5mm、溝深さ1〜1.5mmの溝を有するパッドに酸化セリウムを含む研磨スラリを用いて研磨した。各ガラス板の第1の主面の研磨量は、0.9μmであった。
【0072】
そして、上記研磨を行った後、純水シャワー洗浄、ベルクリン及び水によるスクラブ洗浄、ベルクリン及びアルカリ洗剤によるスクラブ洗浄、ベルクリン及び水によるスクラブ洗浄、純水シャワー洗浄を順次行い、エアブローを行った。
【0073】
研磨後の各ガラス板のうねりピッチ、うねり高さは、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム)を用い、各ガラス板の筋目に対して直交方向に沿って測定した。各ガラス板のうねり波長、うねり強度は、上述のフーリエ変換により算出した。
【0074】
図5(A)〜(C)、
図6に示す研磨時間指数は、フーリエ変換により、研磨後のガラス板のうねり波長スペクトルを、研磨前のガラス板のうねり波長スペクトルで除して得られる波長カット性を用いて算出される。波長カット性は、ガラス板の厚さに応じて変化する。研磨時間指数は、研磨後のガラス板が所望のうねり波長スペクトルとなるように、波長カット性を用いて算出される。研磨時間指数は、値が大きければ研磨時間が長く、値が小さければ研磨時間が短いことを意味する。
【0075】
図5(A)に示すように、例1〜12の研磨時間指数は、0.8〜1.2であった。一方、例13〜18の研磨時間指数は、1.3〜1.5であった。
【0076】
また、例1〜12の研磨後のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.01μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.05〜0.26であった。
【0077】
(例21〜37)
例21〜31が実施例、例32〜37が比較例である。
【0078】
例1〜18と同様に、
図5(B)に示す例21〜37の製造条件で、厚さが0.50mmであり、幅300mm×長さ300mmのガラス板を計17枚得た。例1〜18と同様の方法で、各ガラス板のうねり波長、うねり強度を算出した。
【0079】
図5(B)に示すように、例21〜31の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.25〜0.56であった。一方、例32〜37の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.07〜0.19であった。
【0080】
例21〜37は、各ガラス板の第1の主面の研磨量を2.3μmとした以外は、例1〜18と同様の条件で各ガラス板の研磨、洗浄を行った。研磨量は、研磨後のガラス板が例1〜18と同程度のうねりとなるように、2.3μmとした。例21〜37は、例1〜18と同様の方法で、研磨後の各ガラス板のうねり波長、うねり強度を算出した。
【0081】
図5(B)に示すように、例21〜31の研磨時間指数は、1.9〜2.6であった。一方、例32〜37の研磨時間指数は、2.8〜4.0であった。
【0082】
また、例21〜31の研磨後のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.01μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.05〜0.08であった。
【0083】
(例41〜60)
例41〜52が実施例、例53〜60が比較例である。
【0084】
例1〜18と同様に、
図5(C)に示す例41〜60の製造条件で、厚さが0.40mmであり、幅300mm×長さ300mmのガラス板を計20枚得た。例1〜18と同様の方法で、各ガラス板のうねり波長、うねり強度を算出した。
【0085】
図5(C)に示すように、例41〜52の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.24〜0.70であった。一方、例53〜60の研磨前のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.05μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.09〜0.19であった。
【0086】
例41〜60は、各ガラス板の第1の主面の研磨量を3.4μmとした以外は、例1〜18と同様の条件で各ガラス板の研磨、洗浄を行った。研磨量は、研磨後のガラス板が例1〜18と同程度のうねりとなるように、3.4μmとした。例41〜60は、例1〜18と同様の方法で、研磨後の各ガラス板のうねり波長、うねり強度を算出した。
【0087】
図5(C)に示すように、例41〜52の研磨時間指数は、3.3〜5.3であった。一方、例53〜60の研磨時間指数は、5.5〜7.9であった。
【0088】
また、例41〜52の研磨後のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.01μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.04〜0.11であった。
【0089】
(例61〜72)
例61〜72は、それぞれ例41〜52と同様の製造条件で、厚さが0.40mmであり、幅300mm×長さ300mmのガラス板を計12枚得た。
【0090】
例61〜72の研磨前の各ガラス板は、うねり強度の比が、それぞれ例41〜52と同一である。
【0091】
例61〜72は、各ガラス板の第1の主面の研磨量を1.8μmとした以外は、例41〜52と同様の条件で各ガラス板の研磨、洗浄を行った。研磨量は、研磨後のガラス板が、例41〜52よりもうねりが大きくなるように、1.8μmとした。例61〜72は、例41〜52と同様の方法で、研磨後の各ガラス板のうねり波長、うねり強度を算出した。
【0092】
表1に示すように、例61〜72の研磨後のガラス板は、ガラス板の第1の主面におけるうねり曲線の十点平均高さが0.02μmで、且つうねり波長20mmのうねり強度に対する、うねり波長10mmのうねり強度の比が、0.06〜0.21であった。
【0093】
【表1】
図5(A)〜(C)、
図6の結果から明らかなように、うねり曲線の十点平均高さが同じ場合、研磨前のガラス板のうねり強度の比を大きくすると、研磨時間指数が小さくなることが分かる。特に、うねり強度の比が0.20以上のガラス板を用いることにより、研磨しやすい10mmピッチが優先的に研磨できるため、研磨時間が短縮されて、生産効率を向上させることができる。
【0094】
上述の通り、研磨後、うねり波長10mmのうねり成分は、うねり波長20mmのうねり成分に比して大幅に減少したことが分かる。したがって、従来の20mmピッチのうねり成分だけでなく10mmピッチのうねり成分も除去(研磨)できるので、色ムラの少ない高品質なガラス板を製造することができる。
【0095】
以上、ガラス板及びその製造方法の実施形態や実施例などを説明したが、本発明は上記実施形態や実施例などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。