(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平均化したベクトルの振幅が最大となるフーリエ変換窓を検出し、前記フーリエ変換窓のフレームにおける位置と、前記平均化したベクトルの振幅が最大となる角度に対応した標本点から前記受信信号における前記既知信号の位置を検出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の既知信号検出方法。
X偏波信号を1シンボル遅延した信号と前記X偏波信号との内積と、Y偏波信号を1シンボル遅延した信号と前記Y偏波信号との内積とを加算して前記受信信号を生成するステップを更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の既知信号検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る既知信号検出方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る既知信号検出装置を示す図である。既知信号検出装置は、コヒーレント光通信装置の受信装置に設けられ、受信信号における既知信号の位置を検出する。
【0012】
偏波分離・光電気変換器1は、受信した光信号を偏波分離した後にアナログ電気信号に変換する。サンプリング装置2,3は、それぞれX偏波及びY偏波のアナログ電気信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0013】
検波部4は、X偏波及びY偏波のデジタル信号をそれぞれ差動検波した後に加算して検波信号を得る。相関検出部5は、検波信号と既知信号との相関検出を行って相関信号を算出する。位置検出部6は、相関信号に基づいて、受信信号(検波信号)における既知信号の位置を検出する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1に係る相関検出部を示す図である。
図3及び
図4は、本発明の実施の形態1に係る相関検出部の動作を説明するための図である。
図3に示すように、検波部4から出力された検波信号は、既知信号であるトレーニングシーケンスLP(例えば、256シンボル)を同じ位置に挿入した複数のフレーム(数千〜数万シンボル/フレーム)で構成される。
【0015】
1/2オーバーラップFFT部7は、FFTのサイズを示すN個のサンプリング数毎に検波信号をフーリエ変換(FFT)して第1の算出値X
R(k)を得る。例えば256ポイントのFFT(N=256)が使用される。FFTのサイズには、LP信号のシンボル数と同じシンボル数が好ましくは適応できるが、それに限定されない。第1番目のFFTでは1番目のシンボルから256番目のシンボルに対してFFTが実行され、第2番目のFFTでは129番目のシンボルから384番目のシンボルに対してFFTが実行され、第3番目のFFTでは257番目のシンボルから512番目のシンボルに対してFFTが実行される。
【0016】
この時、1/2オーバーラップFFT部7は、N(FFTのサイズ又はポイント数)の半分ずつオーバーラップしながら検波信号のデータに対してフーリエ変換を行う。例えば1フレーム当たり(128+128×300)シンボルの場合、300回のFFTが行われる。このように検波信号を分割しかつ一部をオーバーラップしてFFTを行うことにより、LP信号が複数のFFTの窓に跨った場合でも検出感度が下がるのを防ぐことができる。なお、オーバーラップはN/2に限定されず、例えばN/3又は2N/3でもよい。
【0017】
第1の算出値X
R(k)は以下の式で算出される。ただし、回路構成ではFFTが使用されるが、論理上はディスクリートフーリエ変換(DFT)となるため、以下の式ではDFT(及びIDFT(インバースDFT,逆DFT))を使用する。なお、X
R(k)は、サンプリング点(標本点)における信号の複素数表現(Re+jIm)である。
【数1】
なお、LP信号に対して、LPFをかけたパターンとすることで波長分散やPMD(偏波モード分散)等の伝送路ひずみに対して強化できる。
【0018】
FFT部8は、1/2オーバーラップFFT部7と同じサイズで、既知信号であるLP信号をフーリエ変換して第2の算出値X
LP(k)を得る。例えば、LP信号がN=256個のサンプリングで表されるとして、LP信号256シンボルに対して256ポイントのFFTが実行される。第2の算出値X
LP(k)は以下の式で算出される。
【数2】
【0019】
除算部9は、第1の算出値X
R(k)を第2の算出値X
LP(k)で除算して第3の算出値X
R(k)/X
LP(k)を得る。なお、この除算は複素数での除算なので、以下のように乗算の形式で行うと効率的な演算が行える。また、ゼロでの除算を避けるため、第1の算出値X
R(k)に第2の算出値X
LP(k)の複素共役を乗算する構成でもよい。
1/(Re+jIm)={1/(Re
2+Im
2)}(Re−jIm)
この場合、第1の算出値X
R(k)に第2の算出値X
LP(k)の複素共役(Re−jIm)のみを乗算する(係数は任意に設定する)と更に効率的な演算が行える。
【0020】
IFFT部10は、第3の算出値X
R(k)/X
LP(k)を逆フーリエ変換して第4の算出値y(n)を得る。この逆フーリエ変換も、検波信号のデータに沿って複数回実施される。
y(n)=IDFT[X
R(k)/X
LP(k)]
IDFTの結果は、256の標本点に対して、それぞれRe部とIm部が出力される。ここで、Re
2+Im
2は第4の算出値y(n)の振幅の二乗を表す。
【0021】
最大値検出部11は、N=256個の標本点における各振幅の最大値Aと、その最大値を得る標本点n
0とを検出する。但し、n
0は0〜N−1である。
【0022】
ここで、検波信号の中にLP信号が含まれていると、
図4に示すように、受信した検波信号のLP信号と、既知信号として比較対象としたLP信号とのずれ分のnの位置に、IFFT部10の出力y(n)がインパルスとなって現れる。
【0023】
上述した最大値検出は、検波信号の1フレームの中でオーバーラップして実施する複数のFFT及びIFFTの出力に対して行われる。ここでは、1フレーム当たり300の最大値とその標本点の組みが検出される。
【0024】
位置検出部6は、最大値を得る標本点から受信信号のフレームにおける既知信号の位置を検出する。
図5は、本発明の実施の形態1に係る位置検出部の動作を説明するための図である。周波数領域での相関は時間域に戻すとインパルスとして検出される。従って、各FFTの窓にLP信号が存在する場合は、IFFT部10の出力y(n)にインパルスが発生する。このため、1フレームの中で最大値検出した複数のFFTのうち最大値を取るFFTにLP信号が存在することになる。そのFFTのうち最大値を得る標本点の位置がLP信号の位置となる。p番目のFFTの標本点n
0でインパルスが検出できた場合、フレームにおけるLP信号の位置は(N/2)×(p−1)+(n
0+1)で算出される。但し、FFTをN/2ずつオーバーラップして実施した場合の例であり、他のオーバーラップの場合でも容易に算出式を構成できる。例えば、3番目のFFTのn
0=50の標本点で最大になった場合、フレームの端から256/2×(3−1)+(50+1)=307番目のシンボルの位置がLP信号の位置と検出できる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態ではFFT及びIFFTを利用することで、従来のようにシンボル単位で時間域で比較する方法と比べて、受信信号における既知信号の位置を簡易な構成で検出でき、計算の規模を低減できる。そして、既知信号として特殊なパターンを用いることなく、偏波分離と伝送特性の補償が完全に行われていない状態でも受信信号における既知信号の位置を確実に検出することができる。
【0026】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る相関検出部を示す図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係る相関検出部の動作を説明するための図である。本実施の形態では、最大値検出までの構成は実施の形態1と同じであり、その後段にベクトル化部12及び平均化部13が追加されている。
【0027】
最大値検出部11は、各フレームのそれぞれのFFTにおいて振幅の最大値Aと、その最大値を得る標本点n
0とを検出する。ベクトル化部12は、以下に示すように、最大値Aを振幅に対応づけ標本点n
0を角度に対応づけたベクトルC(f,m)を生成する。
C(f,m)=Aexp(j2π(n
0/N))
=Acos2π(n
0/N)+jAsin2π(n
0/N)
ここで、fはf番目のFFT、mはm番目のフレームであることを示している。Nは離散フーリエ変換のサイズに該当する。特に、標本点n
0を角度の指標に変換することで、ベクトルの合成により2次元的に平均化を行うことを容易にしている。
【0028】
各フレームで検出した最大値検出結果のベクトルを極座標上で表現すると
図7の下図のようになる。光通信において伝送路特性により検波信号が歪を受けて劣化した場合、既知のLP信号との相関を取ると、雑音の影響を受ける場合がある。
図7において各フレームでほぼ同じような方向に最大値を取る信号が見えるが、雑音によっては大きな相関値を出力する場合もある。このような雑音は以下に説明する平均化によって解消できる。
【0029】
平均化部13は、ベクトルを複数のフレームに渡って平均化する。平均化したベクトルC
AV(f)は下式によって算出される。
C
AV(1)={C(1,1)+C(1,2)+…+C(1,m)}/m
C
AV(2)={C(2,1)+C(2,2)+…+C(2,m)}/m
・
・
・
C
AV(f)={C(f,1)+C(f,2)+…+C(f,m)}/m
【0030】
具体的には次の2つの手法がある。一つめの手法は、最大値検出結果から求めたベクトルを、FFT毎に、m個のフレームに渡って累積加算を行う。具体的には、極座標におけるRe部とIm部とでそれぞれ累積加算をすることで求められる。
それぞれのRe部及びIm部は下式によって算出される。
Re=Acos2π(n
0/N)
Im=Asin2π(n
0/N)
【0031】
累積加算なので、最初のフレームのデータ(Re部及びIm部)に次のフレームのデータ(Re部及びIm部)を加算していけば、メモリも最小限化することができる。なお、平均化の式の最後に「m」で除する計算は、メモリや回路構成から必要に応じて削除または追加が可能である。一般的に、デジタルデータ処理上は、平均化は累積加算と等価である。
【0032】
二つめの手法は、忘却係数を用いたIIR(Infinite Impulse Response)を利用する方法である。この方法によりメモリ量を抑えることができる。IIRフィルタは、フィードバックループを含むが、少ないフィルタ係数の構成で順次的に入力されるデータの平均化行うことができる。即ち、このIIRフィルタでは、過去の値の影響を忘却係数としてフィルタ係数に設定している。忘却係数がゼロに近い程、過去の影響を受けず、逆に1に近い程過去が影響してくる。
【0033】
既知信号がフレーム毎に同じ位置に繰り返し挿入される場合、複数フレームにおいて生成したベクトルの平均化を行う。これにより、ランダム的な信号は低減され、定常的に挿入された既知信号の部分のみが残り、ピークがより鮮明となるため、LP信号の位置を更に高精度に検出することができる。
【0034】
図8は、本発明の実施の形態2に係る位置検出部の動作を説明するための図である。動作原理は実施の形態1と同じである。位置検出部6は、平均化したベクトルの振幅が最大となる角度に対応した標本点からLP信号の位置を検出する。具体的には、まず、平均化したベクトルC
AV(1)〜C
AV(300)の振幅が最大となるフーリエ変換窓を検出する。ここではp番目のFFTで最大値が得られたとする。次に、検出したFFTからn
0を抽出する。フーリエ変換窓のフレームにおける位置と、平均化したベクトルの振幅が最大となる角度に対応した標本点から、実施の形態1と同様に、フレームにおけるLP信号の位置は(N/2)×(p−1)+(n
0+1)で検出される。但し、FFTをN/2ずつオーバーラップして実施した場合の例であり、他のオーバーラップの場合でも容易に算出式を構成できる。
【0035】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る差動検波部を示す図である。差動検波部14は、それぞれX偏波信号X(n)とそれを1シンボル遅延した信号X(n−1)とで内積を求める。差動検波部15は、それぞれY偏波信号Y(n)とそれを1シンボル遅延した信号Y(n−1)とで内積を求める。その手法を以下で説明する。
差動検波部14の出力=X(n)×X(n−1)
*
=[Xi(n)+jXq(n)]×[Xi(n−1)−jXq(n−1)]
=[Xi(n)Xi(n−1)+Xq(n)Xq(n−1)]+j[−Xi(n)Xq(n−1)+Xi(n−1)Xq(n)]
差動検波部15の出力=Y(n)×Y(n−1)
*
=[Yi(n)+jYq(n)]×[Yi(n−1)−jYq(n−1)]
=[Yi(n)Yi(n−1)+Yq(n)Yq(n−1)]+j[−Yi(n)Yq(n−1)+Yi(n−1)Yq(n)]
【0036】
位相変動や周波数オフセットの影響は、隣接シンボル間では、比較的小さいため、1シンボル遅延の差動検波により位相雑音や周波数オフセットの影響を大きく低減できる。差動検波部14,15で各偏波の信号での内積を取り、加算部16で偏波2成分を加算することより、完全に偏波分離が成されていない状態及び線形歪が存在する状態においても、その影響を相殺でき、信号の抽出が可能となる。
【0037】
図10は、本発明の実施の形態3に係る既知信号検出装置を示す図である。Xi[0]〜Xi[511]はX偏波の受信信号のRe部をサンプリングしたデータから512サンプル切り出したデータである。Xq[0]〜Xq[511]はX偏波の受信信号のIm部をサンプリングしたデータから512サンプル切り出したデータである。Yi[0]〜Yi[511]はY偏波の受信信号のRe部をサンプリングしたデータから512サンプル切り出したデータである。Yq[0]〜Yq[511]はX偏波の受信信号のIm部をサンプリングしたデータから512サンプル切り出したデータである。なお、本例では、1シンボル当たり2サンプルのため、シンボルは1つ置きに示される。差動検波の場合は、サンプル511とサンプル509が使用される。この図には記載していないが、サンプル1には隣のサンプル511が使用される。
【0038】
例えば、サンプル511の差動検波は以下の式で示される。
X偏波差動検波出力=[Xi(511)+jXq(511)]×[Xi(509)−jXq(509)]
Y偏波差動検波出力=[Yi(511)+jYq(511)]×[Yi(509)−jYq(509)]
検波信号=X偏波差動検波出力+Y偏波差動検波出力
=Zi(511)+jZq(511)=Z(511)
この場合、受信信号系列に対して、Xi[0]〜Xi[511]、Xq[0]〜Xq[511]、Yi[0]〜Yi[511]、Yq[0]〜Yq[511]に対して、LPFを適用することで、波長分散やPMDなどの伝送路歪みに対して強化できる。その際、LPFにてダウンサンプルも同時に実施することも可能である。LPFの簡易化ケースとして、隣接2サンプルを加算して、1sample/symbolへ変換した上で、
図1の検波部4や
図10の共役複素乗算14、15への入力とする。
【0039】
上述のようにして、検波信号Z(1)〜Z(511)(但し、1、3、・・・509、511)が求まる。これらは、1/2オーバーラップFFT部7である256ptFFTに入力され、DFTが行われる。一方、既知のLP信号に対しても同様に、FFT部8である256ptFFTによりDFTが行われる。それらの計算結果は、除算部9において除算され、除算結果は、FFT部8である256ptIFFTに入力されIDFTが行われる。最大値検出部11は、IDFTが行われた256個のデータについて、振幅の最大値Aと、その最大値を得る標本点n
0とを検出する。128シンボル(256サンプル)ずらして同様の処理を行う。例えば、1フレームにおいて300回のFFTを実行した場合は、それぞれにおいて振幅の最大値Aと、その最大値を得る標本点n
0とを検出する。更に、複数フレームでこれを実行した場合は、ベクトル化部12及び平均化部13で実施の形態2と同様の動作が行われる。最後に、位置検出部6がLP信号の位置を検出する。
【0040】
なお、実施の形態1〜3の既知信号検出方法を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステム又はプログラマブルロジックデバイスに読み込ませ、実行することにより既知信号検出を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。