特許第6299964号(P6299964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6299964磁化材料を用いた高強度コンクリート及び生物活性材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299964
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】磁化材料を用いた高強度コンクリート及び生物活性材
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/14 20060101AFI20180319BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C04B18/14 F
   C04B28/02
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-58723(P2014-58723)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2014-208575(P2014-208575A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-60818(P2013-60818)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】中川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 成
(72)【発明者】
【氏名】早川 幾麻
(72)【発明者】
【氏名】小塚 巧
(72)【発明者】
【氏名】蔡 長梅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基史
(72)【発明者】
【氏名】毛利 佳年雄
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−117767(JP,A)
【文献】 特開2004−067473(JP,A)
【文献】 特開2007−012775(JP,A)
【文献】 特開昭60−235755(JP,A)
【文献】 特開昭61−174152(JP,A)
【文献】 特開昭61−174151(JP,A)
【文献】 特開平10−258406(JP,A)
【文献】 特開2012−131654(JP,A)
【文献】 特開平10−015523(JP,A)
【文献】 特開2014−047111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料を骨材として用いた高強度コンクリートであって、
前記鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分が10〜40質量%であり、
飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下であることを特徴とする高強度コンクリート
【請求項2】
前記鉄鋼スラグの粒径が40mm以下である請求項1に記載の高強度コンクリート
【請求項3】
前記鉄鋼スラグが電気炉酸化スラグである請求項1又は2に記載の高強度コンクリート
【請求項4】
鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料を原材料として用いた生物活性材であって、
前記鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分が10〜40質量%であり、
飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下であり、
生物活性コンクリートであることを特徴とする生物活性材
【請求項5】
前記鉄鋼スラグの粒径が40mm以下である請求項に記載の生物活性材
【請求項6】
前記鉄鋼スラグが電気炉酸化スラグである請求項又はに記載の生物活性材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料を用いた高強度コンクリート及び生物活性材に関する。更に詳しくは、本発明は、鉄鋼スラグを磁化させてなり、特定の飽和磁化、残留磁化及び保磁力を有し、特に土木建築分野等において有用な磁化材料用いてなる各種の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築分野では、建築物の高層化、大型化に伴い、利用空間の確保、資源の有効利用、CO排出量の削減等の観点から、コンクリートの高強度化が強く求められている。また、土木分野においても、同様の観点から、コンクリートの高強度化が強く求められている。更に、将来発生し得る大震災などに備え、コンクリートの耐震性の更なる向上が必要とされており、コンクリートの高強度化も、その手段として期待されている。
【0003】
高強度コンクリートとは、建築分野では圧縮強度(設計基準強度)が36N/mm以上のコンクリートと定義されている。また、土木分野では明確な定義はないが、圧縮強度(設計基準強度)が60N/mm以上のコンクリートと言われている。従来、コンクリートにおいては、製造時の水分量を減らすことで高強度化が図られてきたが、単純に水分を減らすだけでは、コンクリートの流動性が低下し、施工上の問題が生じる。そこで、普通ポルトランドセメント以上のM(中庸熱ポルトランドセメント)、L(低熱ポルトランドセメント)などの高質ポルトランドセメントに、SF(シリカヒューム)などの混和剤や高性能AE減水剤などの化学混和剤を配合し、高流動性を確保しつつ、コンクリートの高強度化を実現している。
【0004】
また、人口増加や新興国の台頭に伴い、世界的に食料問題が深刻化している。更に、いわゆる地球温暖化に伴う気候変動により、農作物の不安定な収穫が価格高騰を引き起こしている。また、森林伐採や緑地の砂漠化により、二酸化炭素が吸収されず、温暖化の進行も進んでいる。即ち、植物や農作物などの生物活性環境の創出が、地球規模で重要視されている。
【0005】
農作物などの植物の生育促進を担うものとしては、肥料及び土壌改良資材が挙げられる。肥料や土壌改良資材は、土壌に施用することで、土壌の化学的性質、物理的性質又は微生物的性質に変化をもたらすものである。肥料は主に土壌の化学的性質を変化させ、土壌改良資材は主に土壌の物理的性質又は微生物的性質を変化させる。また、肥料は、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、その他の微量栄養素を土壌に供給し、この生育に必要な栄養素を、植物が土壌から吸収するものである。一方、土壌改良資材は、土壌の排水性、保水性、保肥性、及び土壌団粒の形成性を改善し、土の三相(気相・液相・固相)の比率を風土や作物に適した状態にするものである。更に、肥料及び土壌改良資材は、直接的又は間接的に土壌中の微生物的性質を変化させることもある。尚、肥料は肥料取締法により定められ、土壌改良資材は地力増進法によって定められているが、それ以外でも植物の生育促進を担うものがある。例えば、有機物を含む植物活性材や微生物資材がそれに当たる。また、上述のもの以外にも、農作物の生育促進を担うものとして、農作物の病気の原因となる害虫や微生物の活動を抑制する農薬などがある。
【0006】
更に、コンクリートに生物活性機能も付与する試みも進んでおり、このようなコンクリートは環境活性コンクリートと呼ばれている。例えば、アミノ酸を練り混んだコンクリートを用いたブロックを海中や河川に設置することで、表面から僅かづつ放出されるアミノ酸が微細藻類の付着量及び生長速度を高めることが確認されている。また、現在では、実証試験などが進み、微細藻類の早期生長・育成効果が促進される藻場の環境条件が整い、増殖礁として魚介類の蝟集機能向上に寄与することが確認されつつある。更に、アミノ酸の一種であるアルギニンを練り混んだコンクリート(例えば、特許文献1参照。)、及び焼酎粕を培養濃縮加工してなるアミノ酸を主体とした有機成分を練り混んだコンクリート(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。
【0007】
一方、超低周波磁界により水の導電率が増大する磁気プロトニクス原理が発見され(例えば、特許文献3参照。)、この原理に基づいて、超低周波磁界を水分に印加することにより、水分中に自由プロトンが増加して加水分解や脱水合成などの化学反応が促進されるという仮説が唱えられ、自由プロトンによるコンクリートの水和結晶化を促進させてコンクリートの高強度化が実現されることが予測されている。
【0008】
更に、コンクリートの粗骨材として従来から用いられているかんらん岩の一部が磁性かんらん岩であり、このかんらん岩を磁化して集合させることで、空間的に周期的パルス列分布の静磁界が発生することが見出されている(例えば、非特許文献1参照。)。そして、この周期的パルス磁界中を水分子が移動することで、相対的に磁気プロトニクス原理が成り立ち、自由プロトンで水和結晶化反応が促進され、コンクリートの硬化が促進されて、コンクリートの高強度化が実現されることが予測されている。
【0009】
また、普通ポルトランドセメントと磁化かんらん岩骨材の混練による高強度コンクリートの製造方法も提案されており、磁化かんらん岩を粗骨材として用いたときに、高強度コンクリートとなることが実証されている。更に、高強度コンクリートのボード上でザー菜苗などの植物を栽培すると、周期パルス磁界によって、生長が促進されるという実験結果も得られている(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/086744号公報
【特許文献2】特開2009−171932号公報
【特許文献3】特開2004−223342号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K. Mohri, T. Uchiyama, M. Yamada, T. Watanabe, Y. Inden, T. Kato, and S. Iwata, Arousal Effect of Physiological Magnetic Stimulation on Elder Person’s Spine for Prevention of Drowsiness During Car Driving, IEEE Transactions on Magnetics, Vol.47, No.10, pp.3066-3069, 2011
【非特許文献2】K. Mohri, M. Sasaki, T. Uemura, Y. Mohri, M. Yamada and T. Kato, Pulse Train Distributed Magnetic Field Generated from High Strength Concrete Using Magnetized Olivine Stone Aggregate, Proceedings of PIERS 2012, Taipei, in press.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、コンクリート製造時に水分量を減らすとともに、混和材等を用いて、高流動性を確保しつつ、コンクリートの高強度化を実現する従来の手法は必然的にコスト高となり、高強度コンクリート普及の阻害要因となっている。また、これらの手法による高強度コンクリートの製造、施工は、その技術レベルの高さから、技術力の高い業者でないと実施することができず、限定された普及に留まっている。更に、上述の従来の高強度コンクリートは、種々の混和材等が添加されてなる微細組織であるため、特に夏季などに早めに枠を撤去した後のひび割れを防止するため、表面層の水分保持の被覆養生などを施す必要があり、取り扱いが面倒である等の問題もある。
【0013】
また、前述の磁化かんらん岩を骨材として用いた高強度コンクリートの製造は、磁化したかんらん岩を骨材として用いるのみで、従来と同様の方法により、高強度コンクリートを製造することができる優れた手法である。しかし、かんらん岩は天然石であるため、その採掘量は限られているうえに、採掘場所も限られている。更に、採掘されたかんらん岩のうち、磁化され得るかんらん岩は全量のうちの約2割と一部のかんらん岩に限られており、磁化かんらん岩としてコンクリートの高強度化に用いることができるかんらん岩は、採掘されたかんらん岩の一部に限られるという問題もある。
【0014】
また、肥糧や土壌改良資材は、土壌に施用し、土壌の化学的性質、物理的性質または生物的性質に変化をもたらし、植物や農作物の育成を促進する有用な資材である。しかし、その成長がより促進される手法があれば、農作物の収穫高の安定・増加、森林の早期再生などとともに、食料問題の解消にも寄与する手法として採用することができる。
【0015】
更に、コンクリートにアミノ酸を練り混んだ環境活性コンクリートは、微細藻類の早期生長・育成、及び魚介類の蝟集機能向上等に寄与する優れたコンクリートである。しかし、有機成分であるアミノ酸類をコンクリートに混入させた場合、コンクリートの圧縮強度が劣化するという問題があり、セメント系固化剤などを同時に配合することで、所定の圧縮強度とすることができるが、コスト面で課題となる。また、アミノ酸の溶出を促すには、海や河川などの水環境が必要であり、その適用範囲が限定され、一般的な農地への適用は難しい。更に、アミノ酸の練り込み量には限界があり、全量が溶出した後は効果が失われてしまう。
【0016】
更に、前述の磁化かんらん岩そのもの、若しくは磁化かんらん岩を用いたコンクリートが、ザー菜苗などの植物の生長を促進することは、食料問題の解消、農作物の収穫高の安定・増加、森林の早期再生などとともに、食料問題の解消が切望される昨今において、極めて優れた手法である。しかし、前述のように、かんらん岩の採掘量は限られており、その優れた生物活性機能を適用することができる用途、期間も限定的になってしまう。また、その採掘により環境破壊を引き起こす可能性も否定できない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述のように、かんらん岩には、採掘量、採掘場所及び磁化の面で問題がある。そこで、製鋼時に発生するスラグを骨材として用いることに着目し、検討した。ここで、スラグとは、金属製造工程において、鉱石やスクラップから金属を還元、溶解、精錬するときなどに、特定の成分が溶融、分離して発生するものであり、鉄鋼スラグと非鉄金属スラグとがあるが、鉄鋼製品の製造工程で大量に発生する鉄鋼スラグを用いることにした。
【0018】
例えば、電気炉酸化スラグの徐冷スラグ及び急冷スラグを磁化した磁化材料の表面磁界分布を測定した結果、磁化かんらん岩群の場合と同等の周期的パルス列分布の静磁界が得られることが見出された。また、電気炉酸化スラグ骨材は、2003年にJIS規格(JIS A 5011−4)が制定され、2005年度にグリーン購入法に基づく特定調達品目に指定されており、コンクリートなどに使用可能な環境資材として高く評価されている(鐵鋼スラグ協会 www.slg.jp/)。更に、高炉スラグ骨材に関しても、JIS規格(JIS A 5011−1)が既に制定されている。
【0019】
また、鉄鋼スラグの年間生成量は、毎年約4000万トンに達しており、電気炉酸化スラグに限っても、その年間生成量は、300万トン程度と極めて多量である。更に、鉄鋼スラグは天然資源ではなく、工場における製造過程で発生するため、スラグ成分などの制御も容易であり、天然資源であって供給量も十分ではなく、磁化される割合も低いかんらん岩より安定な資源として有望であるといえる。
【0020】
また、磁化された鉄鋼スラグの磁性(残留磁化)は半永久的であり、自然環境において消磁されることはない。更に、磁化された鉄鋼スラグを骨材に用いても、コンクリートの圧縮強度が劣化することはなく、寧ろ高強度化を図ることができる。
本発明は上述のような知見に基づいてなされたものである。
【0021】
本発明は以下のとおりである。
1.鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料を骨材として用いた高強度コンクリートであって、
前記鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分が10〜40質量%であり、
飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下であることを特徴とする高強度コンクリート
2.前記鉄鋼スラグの粒径が40mm以下である前記1.に記載の高強度コンクリート
3.前記鉄鋼スラグが電気炉酸化スラグである前記1.又は2.に記載の高強度コンクリート
4.鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料を原材料として用いた生物活性材であって、
前記鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分が10〜40質量%であり、
飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下であり、
生物活性コンクリートであることを特徴とする生物活性材
5.前記鉄鋼スラグの粒径が40mm以下である前記4.に記載の生物活性材
6.前記鉄鋼スラグが電気炉酸化スラグである前記4.又は5.に記載の生物活性材
【発明の効果】
【0022】
磁化材料は、鉄鋼生産に伴って発生し、安定して多量に供給されるとともに、磁化される割合も高く、コスト面でも有利である。そして、高強度コンクリート用の骨材等の多くの用途において有用な原材料として用いることができる。
また、鉄鋼スラグの粒径が40mm以下である場合は、Nd−Fe−B磁石等と接触させることにより、容易に且つ十分に磁化させることができる。
更に、鉄鋼スラグが電気炉酸化スラグである場合は、グリーン購入法に基づく特定調達品目に指定されており、コンクリートなどに使用可能な環境資材である。
また、磁化材料を骨材として用いた本発明の高強度コンクリートによれば、建築物の高層化、大型化に伴う、利用空間の確保、資源の有効利用、CO排出量の削減等に対応可能な高強度コンクリートとすることができる。
更に、磁化材料を原材料として用いた本発明の生物活性材によれば、農作物や水産物などの安定生産、生産拡大、植物の成長促進による地球温暖化の防止、ヒートアイランド現象の抑制などに有用な生物活性材とすることができる。また、その効果は半永久的であり、適用範囲も限定されない。
また、生物活性材が生物活性コンクリートであるため、生物成長促進効果を有する植栽工場の床、屋上緑化、緑化堤防、及び養殖コンクリートプールなどに用いることができる。また、コンクリートの圧縮強度劣化の懸念もないことから、従来のコンクリート構造物と同様な扱いができる。更に、例えば、遊歩道等の歩行路などに用いることで、特に血行促進材等として有効に作用する生物活性コンクリートとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】磁化された電気炉酸化スラグである磁化材料が充填されたポリ塩化ビニル製パイプの表面磁界分布をMI磁気センサで測定した結果を表すチャートである。
図2】急冷した電気炉酸化スラグを磁化させた磁化材料を用いて、図1の場合と同様にしてパイプの表面磁界分布をMI磁気センサで測定した結果を表すチャートである。
図3】全鉄成分(T−Fe)の多い急冷した電気炉酸化スラグを磁化させた磁化材料を用いて、図2の場合と同様にしてパイプの表面磁界分布をMI磁気センサで測定した結果を表すチャートである。
図4】磁化された電気炉酸化スラグを骨材として用いたコンクリートボードについて、打設直後の表面磁界をMI磁気センサで測定した結果を表すチャートである。
図5図4の24時間経過後の表面磁界をMI磁気センサで測定した結果を表すチャートである。
図6】徐冷した電気炉酸化スラグを磁化させた磁化材料の振動試料磁力計による磁化(M)−磁界(H)特性の測定結果を表すチャートである。
図7】急冷した電気炉酸化スラグを磁化させた磁化材料の振動試料磁力計による磁化(M)−磁界(H)特性の測定結果を表すチャートである。
図8】粗骨材として山砂利の20質量%、40質量%、80質量%を磁化材料に置き換えたときのコンクリートの圧縮強度の測定結果を表すグラフである。
図9】粗骨材として山砂利の20質量%、40質量%、80質量%を磁化材料に置き換えたときのコンクリートの静弾性係数の測定結果を表すグラフである。
図10】粗骨材として山砂利を用いたときのコンクリートの表面磁界分布をMI磁気センサにより測定したチャートである。
図11】粗骨材として山砂利80質量%と磁化材料20質量%とを併用したときのコンクリートの表面磁界分布をMI磁気センサにより測定したチャートである。
図12】粗骨材として山砂利60質量%と磁化材料40質量%とを併用したときのコンクリートの表面磁界分布をMI磁気センサにより測定したチャートである。
図13】粗骨材として山砂利20質量%と磁化材料80質量%とを併用したときのコンクリートの表面磁界分布をMI磁気センサにより測定したチャートである。
図14】根の下に磁化材料を敷設し、又は敷設せずにタカノツメを栽培した結果を表す説明図である。
図15図14において磁化材料を敷設して栽培した結果、結実した様子を表す説明図である。
図16図14において磁化材料を敷設せずに栽培した結果、結実しなかった様子を表す説明図である。
図17】磁化材料を粗骨材として用いて作製したコンクリートボードの表面磁界分布をMI磁気センサにより測定したチャートである。
図18図17のような表面磁界分布を有するコンクリートボード、又は木製の板をプランターの下に配設してミニ白菜を栽培した結果を表す説明図である。
図19】粗骨材として山砂利のみを用いたコンクリート円板プレート上、及び粗骨材の80質量%を磁化材料に置き換えたコンクリート円板プレート上でコナツナの発芽・生育試験をした結果を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。
磁化材料は、鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料である。また、鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分が10〜40質量%含有されている。更に、磁気性能としては、飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下である。
【0025】
鉄鋼スラグには、高炉スラグと製鋼スラグとがあり、製鋼スラグには転炉系スラグと電気炉系スラグとがある。また、電気炉系スラグには、電気炉酸化スラグと電気炉還元スラグとがある。鉄鋼スラグは特に限定されないが、製鋼スラグが好ましく、全鉄成分が多い、電気炉酸化スラグ及び転炉スラグがより好ましく、なかでも、全鉄成分が特に多く、酸化による酸化物強磁性結晶が成長し易いため、電気炉酸化スラグが特に好ましい。電気炉酸化スラグには、溶鋼中から酸化除去された酸化鉄、MnO、SiO、Alなどのほか、精錬のために加えられるCaOが含有され、耐火物に由来する少量のMgOも含有されている。これらの酸化物は、通常、結合し、化学的に安定した鉱物相を形成している。
【0026】
一方、電気炉還元スラグは、脱硫を促進するため添加されるCaOの含有量が多く、酸化鉄、MnOの含有量は少ない。また、CaOが多いため、その一部は遊離石灰となっており、水と反応して膨張、崩壊することもある。また、かんらん岩は、(Mg,Fe)SiOを主相とし、Mn、Ni、Ti等も少量含有される。
【0027】
上述のように、電気炉系スラグには、元素としてFe、Mn、Si、Al、Ca、Mg等が含有され、かんらん岩にはMg、Fe、Si、Mn、Ni、Ti等が含有され、いずれも安定した鉱物相が形成される。しかし、含有される元素が異なるため、鉱物相も相違することになる。そのため、磁化したときに異なる磁気特性を有する磁化材料が生成すると推察される。
【0028】
鉄鋼スラグには、鉄鋼スラグを100質量%とした場合に、全鉄成分(T−Fe)が10〜40質量%含有されている。この全鉄成分(T−Fe)は15〜40質量%、特に20〜40質量%含有されていることが好ましい。このように多くの鉄成分が含有されておれば、スラグの多くを磁化させることができ、高強度コンクリートの骨材等として有用な磁化材料を容易に得ることができる。
尚、全鉄成分(T−Fe)は、金属鉄及び酸化物等に含有される鉄元素の合計量であり、発光分光分析法、蛍光X線分析法などにより測定される。
【0029】
鉄鋼スラグが磁化されてなる磁化材料の磁気性能は、飽和磁化が1emu/gr以上、残留磁化が0.1emu/gr以上、保磁力が600エルステッド以下である。ここで、emu/grとは1グラム当たりの磁化、即ち、質量磁化の単位である。また、飽和磁化は2emu/gr以上であることが好ましく、通常、4emu/gr以下である。即ち、飽和磁化は1〜4emu/grであり、2〜4emu/grであることが好ましい。また、残留磁化は0.2emu/gr以上であることが好ましく、通常、1.5emu/gr以下である。即ち、残留磁化は0.1〜1.5emu/grであり、0.2〜1.5emu/grであることが好ましい。更に、保磁力は400エルステッド以下であることが好ましく、通常、10エルステッド以上である。即ち、保磁力は10〜600エルステッドであり、10〜400エルステッドであることが好ましい。
【0030】
安定且つ集団としてパルス列分布磁界発生特性をもつ磁力を有する磁化材料を得るためには、鉄鋼スラグの粒径は40mm以下であることが好ましい。この粒径は20mm以下であることが好ましい。また、鉄鋼スラグを磁化させる操作は磁石との接触のみであるため、磁化の操作により鉄鋼スラグの粒径が変化することは殆どなく、上述の鉄鋼スラグの粒径は、実質的に磁化材料の粒径と同等である。尚、鉄鋼スラグ及び磁化材料ともに塊状であり、不定形であるため、粒径は各々の粒子の最大寸法であるとする。この粒径は、鉄鋼スラグを撮影した写真において各々の粒子の最大寸法を測定し、求めることができる。実際の使用では、最大寸法のメッシュフィルターでふるい分け分級して、所定の粒径の鉄鋼スラグ及び磁化材料を区分することができる。
【0031】
電気炉酸化スラグ等の鉄鋼スラグは、磁石に接触させるのみで容易に磁化させ、磁化材料とすることができる。磁化に用いる磁石は永久磁石でも電磁石でもよい。永久磁石は磁化のための電力を必要とせず、簡易な装置で磁化させることができるため好ましい。また、電磁石は磁化のための電力を必要とし、装置も複雑となる。一方、磁石と接触させ、磁化させた後、磁化材料を磁石から脱離させ、回収するという観点では、通電を停止すれば、磁化材料を容易に磁石から脱離させ、回収することができる電磁石が好ましい。
【0032】
永久磁石の種類は特に限定されないが、磁力の大きい磁石が好ましい。例えば、Nd−Fe−B系、Sm−Co系などの希土類磁石を用いることが好ましく、特に磁力の大きいNdFe14B磁石等のネオジウム系の磁石がより好ましい。更に、永久磁石、電磁石ともに、その磁力は特に限定されないが、表面磁界が0.1テスラ以上であることが好ましい。
【0033】
また、磁化させる装置も特に限定されないが、例えば、ベルトコンベアーの折り返し端部の回転軸部分に、Nd−Fe−B系磁石等の強力磁石を配設し、搬送されるスラグを接触させ、磁化させた後、得られた磁化材料をベルトの移動で自然に磁石から脱離・回収させる仕組みを備える実用的な装置等を用いることができる。
【0034】
鉄鋼スラグを磁化させてなる磁化材料は、各種の製品分野において用いることができる。例えば、コンクリートの骨材、特に粗骨材として用いた場合、高強度コンクリートとすることができる。具体的には、セメント、水、山砂等の細骨材などとともに用いられる山砂利等の粗骨材の一部を磁化材料により置き換えることで高強度コンクリートとすることができる。置き換える割合は特に限定されず、コンクリートの所要強度によって設定することができる。例えば、粗骨材の全量の10質量%以上を磁化材料とすれば、強度を向上させることができ、通常、30質量%以上、特に50質量%以上を磁化材料に置き換えることで、十分な強度を有するコンクリートとすることができる。更に、磁化材料の割合は70質量%以上とすることもでき、粗骨材の全量が磁化材料であってもよい。尚、粗骨材として用いるときの磁化材料の品質は、JIS規格(JIS A 5011−4)コンクリート用スラグ骨材−第4部:電気炉酸化スラグ骨材などのJIS規格で規定される粗骨材であればよい。
【0035】
また、磁化材料は生物活性材の原材料として用いることができる。例えば、農作物や水産物などの安定生産、生産拡大に有用な植物工場の床に、粒状、塊状等の磁化材料を、必要であれば砂、砂利、肥料などとともに散布して用いることができる。更に、養殖コンクリートプール等のコンクリートの粗骨材として用いて生物活性材の原材料とすることもできる。また、地球温暖化の防止、ヒートアイランド現象の抑制に有用な屋上緑化、法面緑化、緑化堤防等の生物活性材のとして原材料として、屋上、法面、堤防等に、粒状、塊状等の磁化材料を、必要であれば砂、砂利、肥料などとともに散布して用いることもできる。更に、磁化材料は、特に人体等の活性化に有用な生物活性コンクリートの骨材としても有用である。例えば、この生物活性コンクリートからなる歩行路等では、特に血行促進材として有効に作用する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
愛知製鋼社製の電気炉酸化スラグを流滓により室温まで徐冷した後、破砕し、最大寸法が5mm〜20mmの塊状の破砕物10kgを、縦横4cm角、厚さ2cmの直方体形状のNd−Fe−B系磁石に接触させ、吸着されるものと吸着されないものとに選別した。その結果、9.54kgが磁石に吸着され、そのうちの0.03kgは金属鉄であり、0.46kgは吸着されなかった。このように、電気炉酸化スラグのうちの重量比で約95%を磁化させることができた。また、最大寸法が5mm〜20mmの塊状のかんらん岩の破砕物10kgを、同様にして磁化させた。
【0037】
図1は、上述の電気炉酸化スラグの破砕物を、Nd−Fe−B系磁石に接触、吸着させ、磁化させた後、内径1.8cm、外径2cm、長さ50cmのポリ塩化ビニル製パイプに充填し、このパイプの表面磁界分布をMI磁気センサで測定したときのチャートである。このチャートの横軸は距離(z)であり、縦軸には、mGの単位表示があるが、より正確には、その距離(z)における検出磁界(B)の勾配dB/dzを示している。パイプの壁厚は2mmであり、パイプ表面と磁気センサヘッドとの距離は約5mmとした。その結果、約200ミリガウスの高さの正負のパルス磁界がパイプ長50cmに亘って21〜24パルスほど発生していた。これは、コンクリート硬化促進機能及び生物活性機能を有する同寸法(最大寸法が5mm〜20mm)の磁化されたかんらん岩集団の発生するパルス列分布磁界とほぼ同一の磁界であった。
【0038】
また、磁化されたかんらん岩の場合との相違は、磁化されたかんらん岩が重量比で全量の約20%とごく一部であったのに対して、徐冷した電気炉酸化磁化スラグでは、全量のうちの約95%が磁化されたことである。これは、全鉄成分(T−Fe)、MnO、SiO、Al、CaOなどのスラグの原料混合体が、電気炉内の酸素雰囲気中で1600℃に加熱されることによって、酸化物強磁性体が生成するためである。この電気炉酸化スラグは、分析の結果、全鉄成分(T−Fe)を21.0質量%含有するほか、SiO:18.8質量%、MnO:7.3質量%、Cr:2.8質量%、Al:12.8質量%、MgO:6.1質量%、CaO:22.8質量%などを含有している。このように、本実施例において用いた電気炉酸化スラグは、磁化材料としての収率が高く、且つ高強度コンクリートの粗骨材として用い得るものであることが分かる。
【0039】
図2は、全鉄成分(T−Fe)が22.4質量%の電気炉酸化スラグを約1300℃から約100℃まで約2分で急冷した後、ふるい分けし、最大寸法が0.2〜2mmの微粒子とし、この微粒子18gを内径6mm、外径7mm、長さ20cmのポリ塩化ビニル製パイプに充填し、上述のようにして磁化させた後、表面磁界分布をMI磁気センサで測定したときのチャートである。このチャートの横軸、縦軸は、図1と同様である。尚、この電気炉酸化スラグは、全鉄成分(T−Fe)を22.4質量%含有するほか、SiO:19.3質量%、MnO:6.7質量%、Cr:2.8質量%、Al:10.9質量%、MgO:4.9質量%、CaO:20.0質量%などを含有している。
【0040】
また、図3は、全鉄成分(T−Fe)が27.7質量%と多い電気炉酸化スラグを約1300℃から約100℃まで約2分で急冷した後、ふるい分けし、最大寸法が0.2〜2mmの微粒子とし、この微粒子18gを内径6mm、外径7mm、長さ20cmのポリ塩化ビニル製パイプに充填し、上述のようにして磁化させた後、表面磁界分布をMI磁気センサで測定したときのチャートである。このチャートの横軸、縦軸は、図1と同様である。尚、この電気炉酸化スラグは、全鉄成分(T−Fe)を27.7質量%含有するほか、SiO:15.4質量%、MnO:8.0質量%、Cr:3.1質量%、Al:9.5質量%、MgO:5.5質量%、CaO:17.2質量%などを含有している。表面磁界分布の測定の結果、20cm当たり、図2では7〜9個、図3では11〜12個の明確な交番パルス磁界を発生しており、図1のチャートで表される徐冷された電気炉酸化スラグのパルス磁界より高さはやや低いものの、高強度コンクリートの細骨材として用い得るものであることが分かる。
【0041】
このように、電気炉酸化スラグを磁化させた磁化材料をコンクリートの骨材として用いた場合、この骨材の集団は、周期的パルス列分布静磁界を永久的に発生し続ける。これにより、コンクリートの水和結晶化による硬化が促進され、高強度コンクリートが形成されると推察される。
【0042】
実施例2
普通ポルトランドセメント、細骨材(山砂)、及び粗骨材(実施例1で製造した徐冷された電気炉酸化スラグを破砕し、磁化させてなる磁性材料)を水道水とともに練り混ぜた。
【0043】
図4,5は、上述のようにして練り混ぜて調製した未硬化コンクリートを用いて、幅20cm、長さ40cm、厚さ2cmのコンクリートボードを作製したときの、長さ方向の中央線上の表面磁界をMI磁気センサにより測定した結果である。尚、このチャートの横軸は距離(z)であり、縦軸には、mGの単位表示があるが、より正確には、その距離(z)における検出磁界(B)の勾配dB/dzを示している。図4は、打設直後に、長さ方向の中央線上を2回測定した結果であり、40cmでパルス数はともに9個である。図5は、打設後1日経過した時点の結果であり、パルス数は13個、15個に増加していた。この現象は、コンクリートの硬化過程でボード面内の圧縮力が増加し、磁歪の逆効果によって磁化ベクトルが面垂直方向へ向くためと考えられる。
【0044】
実施例3
図6は、実施例1における徐冷した電気炉酸化スラグを破砕し、磁化させた磁化材料のM(磁化)−H(磁界)特性を、振動試料磁力計(VSM、理研電子社製、型式「VBH−50」)により測定した結果である。図6は、2個の微小なスラグのM−H特性であり、飽和磁化Msはそれぞれ3.66、2.99emu/gr、残留磁化Mrはそれぞれ0.94、0.49emu/gr、保磁力は、それぞれ273エルステッド、190エルステッドであった。図7は、実施例1の全鉄成分(T−Fe)が27.7質量%と多い急冷した電気炉酸化スラグを用いたほかは同様にして調製したスラグのM−H特性であり、飽和磁化Msは3.15emu/grで徐冷スラグの場合と同程度であるが、残留磁化Mrは0.27emu/grと小さく、保磁力は16.0エルステッドと1桁小さい。これはガスアトマイズ急冷により、酸化強磁性結晶が微細化したためと考えられる。
【0045】
これらの測定で得られた徐冷スラグのMsの平均値3.33emu/gr(0.033T)及び保磁力の平均値231.5エルステッドを用いて、1cmの大きさのスラグ片が隣接スラグ片の磁化反転を起こす臨界条件を計算すると、約5mmとなる。これは、図1、2、4、5のパルス列分布磁界の発生を説明できる条件である。
【0046】
実施例4
電気炉酸化スラグを永久磁石により磁化させた磁化材料を粗骨材として併用し、コンクリートの圧縮強度を評価した。具体的には、普通ポルトランドセメント及び細骨材(愛知県豊田市猿投町産山砂)を一定量とし、粗骨材(愛知県豊田市猿投町産山砂利)、及び同粗骨材の20質量%、40質量%、80質量%を磁化材料により置換した配合とし、水に対するセメントの質量割合を49%として、コンクリートミキサーにより混練した。また、コンクリートの流動性を確保するため、一定量の混和剤(BASFジャパン社製ポゾリスNo.70)をセメントに対する質量の0.25%配合した。表1にコンクリートの配合を記載する。表1において、G100は粗骨材の全量が磁化していない山砂利(G)である。また、山砂利の20質量%を磁化材料(M)に置換したものをM20、山砂利の40質量%を磁化材料(M)に置換したものをM40、山砂利の80質量%を磁化材料(M)に置換したものをM80と表記する。試験体は直径100mm、長さ200mmの円柱体であり、型枠にて製作し、24時間後に脱型し、所定の材齢まで標準養生を実施した。この試験体を用いて圧縮強度及び静弾性係数を測定した。圧縮強度の結果を図8に、静弾性係数の結果を図9に記載する。
【0047】
【表1】
【0048】
図8は、1週間経過後、4週間経過後、13週間経過後の圧縮強度の測定結果である。測定値は3本の試験体の測定値の平均値である。図8によれば、G100、M20、M40、M80ともに、材齢が長くなると圧縮強度が高くなっている。このことはコンクリートの一般的な特徴であるが、1週間、4週間、及び13週間経過後の各材齢ごとの強度を比較すると、いずれの材齢においてもG100<M20<M40<M80の順に強度が高くなっている。このことから、一般的な粗骨材である山砂利を磁化材料に置き換えることで圧縮強度が高くなり、且つ置き換えの割合が高くなるほど、より高強度になることが分かる。
【0049】
図9は、1週間経過後、4週間経過後、13週間経過後の静弾性係数の測定結果である。測定値は3本の試験体の測定値の平均値である。図9よれば、G100、M20、M40、M80ともに、材齢が長くなると静弾性係数が大きくなっている。また、1週間、4週間、及び13週間経過後の各材齢ごとの係数を比較すると、いずれの材齢においてもG100<M20<M40<M80の順に係数が大きくなっている。一般に、コンクリートの静弾性係数は、コンクリートの圧縮強度と比重(密度)との関数で表され、圧縮強度が高くなるほど、また、比重が大きくなるほど、静弾性係数も大きくなる。この試験で用いた山砂利及び磁化材料の各々の表乾比重は、それぞれ2.59及び3.65と磁化材料の比重のほうが大きい。このように、図8における圧縮強度の挙動と、図9における静弾性係数の挙動とは整合していることが分かる
【0050】
ここで重要なことは、一般的な粗骨材である山砂利を磁化材料により置き換えるのみで、静弾性係数の大きいコンクリートが得られることである。例えば、コンクリート製の橋桁の場合、コンクリートの強度とともに曲げに対する剛性が重要になる。コンクリートを高強度化して薄肉のコンクリート橋を設置しようとしても、静弾性係数が同じであれば、曲げに対する剛性を変わらないため、橋桁の撓みが懸念される。一方、高強度であるとともに、静弾性係数が大きくなれば、曲げに対する剛性も高まり、薄肉の軽量なコンクリート橋の実現性がみえてくる。即ち、圧縮強度の上昇と磁化材料の比重が大きいこととが相俟って、静弾性係数が大きくなっており、磁化材料を用いたコンクリートは高強度(圧縮強度が高い)且つ高剛性(静弾性係数が大きい)を併せて実現した優れたコンクリートであるといえる。
【0051】
図10〜13は、圧縮強度及び静弾性係数を測定したのと同じ試験体(φ100mm×200mmの円柱体)の表面磁界分布をMI磁気センサで測定したときのチャートである。図10はG100、図11はM20、図12はM40、及び図13はM80の結果である。この測定では、円柱体側面の長手方向の磁界変化を捉えている。これらの各図の横軸は距離(z)であり、単位はmmである。また、縦軸は検出磁界(B)であり、単位はmGである。尚、図1〜5では、縦軸が距離(z)における検出磁界(B)の勾配dB/dzとなっており、この点で図1〜5とは異なる。
【0052】
図10によれば、粗骨材が山砂利のみのG100の試験体では、磁界が全く検出されていないことが分かる。一方、山砂利の20質量%、40質量%、80質量%を磁化材料に置き換えたM20、M40、M80の試験体では、磁界がパルス状に検出され、その強さ(縦軸の値)は磁化材料の置換量とともに徐々に大きくなっていることが分かる。更に、図1〜5と比べて波形がなだらかにみえるのは、縦軸が検出磁界(B)であり、その距離(z)における勾配dB/dzでないためである。尚、これらのチャートは、円柱体側面の長さ方向の磁界変化の一例であるが、どの側面においても同様なパルス状の磁界が検出されている。
【0053】
実施例5及び比較例1
2個の幅20cm、長さ60cmのプランターに培養土を入れ、タカノツメ(唐辛子)を栽培した。一方のプランターには、3株を植えつける際に、根の下に直径5〜20mmの磁化材料約40個を敷設した(実施例5)。その後、磁化材料を敷設したプランターと、敷設しないプランター(比較例1)の各々に同量の培養土を入れ、2013年4月9日に、寸法のほぼ等しいタカノツメ幼苗3株ずつをそれぞれ植え付けた。また、毎日、等量の給水のみをし、追肥はしなかった。図14は、120日経過後の実施例5(磁化スラグ側)及び比較例1(対照側)の各々の苗であり、実施例5では、3株とも白い花が開花し、151日経過後には、3株の合計で15個の結実が確認された。一方、比較例1(対照側)では、開花もしなかった。また、240日経過後に収穫をしたところ、実施例5では赤い実は45個(結実している様子を表す図15参照)であり、比較例1では僅か4個(図16参照、極めて数が少ないため、この図では実はみられない。)であった。このように、タカノツメの栽培で、磁化材料を敷設することにより、苗の生長と開花・結実において生物活性効果が顕著に発現された。
【0054】
実施例6及び比較例2
2個の幅20cm、長さ60cmのプランターに同量の培養土を入れ、ミニ白菜を栽培した。この栽培試験では、直径5〜20mmの磁化材料を粗骨材とし、幅20cm、長さ38cm、厚さ2cmのコンクリートボード(重量4.5kg)を1枚手練りで作製した。その後、コンクリートボードの生物活性の指標となる表面磁界の発生を、ボード上1cmの高さにおいて長さ方向に磁気センサで測定した(図17参照)。次いで、このボードをプランターの下に配設した(実施例6)。また、同寸法のプランターの下に、上述のコンクリートボードと同寸法の木製の板を配設した(比較例2)。次いで、各々のプランターに同量の培養土を入れ、2013年9月4日に、寸法のほぼ等しいミニ白菜の幼苗3株づつをそれぞれ植え付けた。また、毎日、等量の給水のみをし、追肥はしなかった。図18は植え付けから6ケ月経過後の苗であり、実施例6(磁化スラグボード側)では、特に2株の生長が早く、比較例2(対照側)と比べて明らかに異なっている。尚、実施例5では、磁化材料を栽培土中に埋設したため、磁化材料の成分が溶出した可能性も否定できず、生物活性効果が純粋に磁界の効果のみによるものとは断定できないかもしれないが、この実施例6では、生物活性効果は純粋に磁界によるものと断定することができる。
【0055】
実施例7及び比較例3
実施例4で作製した粗骨材が山砂利のみのG100の試験体(比較例3)、及び山砂利の80質量%を磁化材料に置き換えたM80の試験体(実施例7)(試験体はいずれも直径が100mm、長さが200mmの円柱体である。)から、厚さ10mmの円板プレートを切り出した。その後、各々の円板プレートを発芽・生育試験の試験ポットの下に配置し、コマツナの発芽・生育効果を評価するための幼植物試験を実施した。試験方法は「植物に対する害に関する栽培試験の方法(昭和59年4月18日付59農蚕第1943号農林水産省農蚕園芸局長通知)」に準じているが、試験設計や植物個体の間引等、一部改変して実施した。試験ポットとしては、内径11.3cm、高さ6.5cmの鉢(ノイバウエルポット)を用いた。試験ポット数は実施例7及び比較例3各5個とした。
【0056】
供試土壌としては、土性が壌土の洪積土である黒ボク土を予め風乾させ、目開き2mmの篩下を用いた。また、供試作物として、コマツナ(品種は菜々音)20粒を播種した。肥料としては、全てのポットにアンモニア性窒素(A−N)、可溶性りん酸(S−P)、水溶性加里(W−KO)として50mgに相当する量の硫酸アンモニア、過りん酸石灰及び塩化加里を施用した。試験期間中における栽培温度は、原則として15〜25℃の範囲に保持した。栽培期間は、播種後、3週間とした。具体的には、供試土壌に肥料を均一に混合してポットに詰めたうえで水分調整(最大容水量の60質量%)し、供試作物20粒を播種した。次いで、これらのポットを上述したG100(比較例3)及びM80(実施例7)の円板プレート上に配置した。更に、発芽した個体について、播種後、4日目に8本を間引き、7日目に2本を間引き、残り10本を生育させ、播種から21日後に収穫した。尚、水分は毎日与え、水分調整(最大容水量の60質量%)をした。試験終了後、各ポットで最も生育の良い葉の草丈の測定を行った。
【0057】
図19は、コマツナの発芽・生育試験結果である。外観上は大きな差異は感じられないが、草丈の測定結果では、平均値でG100の円板プレートを配置した比較例3(対照側)では10.1cm(5個のポットの各々の草丈は、10.0cm、9.9cm、10.2cm、10.3cm、10.0cmであった。)、M80の円板プレートを配置した実施例7(磁化スラグ側)では10.5cm(5個のポットの各々の草丈は、10.4cm、10.4cm、10.6cm、10.3cm、10.6cmであった。)と、約5%の差異が確認された。これはデータのばらつきを考慮しても有意な差と言える。
【0058】
尚、本発明においては、上述の具体的な実施例に記載されたものに限らず、目的及び用途に応じて、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、コンクリートの所要強度等によって、転炉スラグや電気炉還元スラグ等の他の鉄鋼スラグを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、鉄鋼スラグ、特に電気炉酸化スラグを磁化してなる磁化材料を骨材として用いた高強度コンクリート及び生物活性材等の技術分野において利用することができる。本発明の磁化材料を用いた高強度コンクリートは、建築物、構造物の耐震性を強化して、防災機能を高め、安全、安心な社会の実現に資するとともに、省資源、省エネルギー、CO排出削減に大きく貢献するものである。
【0060】
また、この高強度コンクリートは生物活性機能を有し、耐震性の高い生物活性防波堤、生物活性堤防、緑化壁、緑化屋上床、植物工場床、養殖コンクリート水槽などの広範な用途において利用することができる。また、この高強度コンクリートは、血行が促進される歩行路、及び各種の健康回復器等に利用することができ、超高齢社会での住生活環境の向上に幅広く貢献するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図17
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