特許第6300744号(P6300744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6300744
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20180319BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180319BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20180319BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180319BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20180319BHJP
   C08K 5/3442 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C08G59/20
   C08L63/00 A
   C08L83/04
   C08K3/00
   C08K5/49
   C08K5/3442
   H01L23/30 R
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-39003(P2015-39003)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160317(P2016-160317A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】長田 将一
(72)【発明者】
【氏名】横田 竜平
(72)【発明者】
【氏名】大石 宙輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 多春
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−233149(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136685(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/053522(WO,A1)
【文献】 特開昭62−084147(JP,A)
【文献】 特開平05−086169(JP,A)
【文献】 特開平04−359921(JP,A)
【文献】 特開2014−156607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08K 3/00−5/59
C08L 63/00−63/10
83/00−83/16
H01L 23/00−23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分〜(F)成分を含む組成物
(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物
【化1】
(式(1)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、m、m及びmは互いに独立に、1または2の整数であり、m、m及びmの個数の合計に対して、整数2であるm、m及びmの個数の合計が20〜100%であり、l=5−mであり、l=5−mであり、l=4−mであり、nは0〜15の整数である)
(B)アルケニル基含有エポキシ化合物とオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により得られる共重合物:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して2〜20質量部
前記アルケニル基含有エポキシ化合物が下記平均式(4)で表される化合物であり、
【化2】
(R2’はアルケニル基を有する、炭素数3〜15の、脂肪族一価炭化水素基であり、R3’はグリシジルオキシ基または−OCHCH(OH)CHOR’で示される基であり、R’はアルケニル基を有する炭素数3〜10の一価炭化水素基であり、kは1であり、kは0または1であり、xは1〜30の正数であり、yは1〜3の正数である)
前記オルガノポリシロキサンが下記のいずれかの式で表される化合物であり、
【化3】
(式中、nは20〜100の整数である)
【化4】
(式中、mは1〜10の整数であり、nは10〜100の整数である)
上記アルケニル基含有エポキシ化合物と上記オルガノポリシロキサンの割合は、エポキシ化合物が有するアルケニル基1個に対するオルガノポリシロキサンが有するSiH基の個数比1.0〜5.0である
(C)下記一般式(3)で表されるフェノール化合物:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して20〜50質量部
【化5】
(式(3)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、p、p及びpは互いに独立に、1または2の整数であり、p、p及びpの個数の合計に対して、整数2であるp、p及びpの個数の合計が20〜100%であり、q=5−pであり、q=5−pであり、q=4−pであり、n’は0〜15の整数である)、
(D)無機充填剤:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して150〜1,500質量部、
(E)トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、及びトリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラp−トリルボレート、テトラトリルホスフィン・テトラフェニルボレート、及び、トリフェニルホスフィン−ベンゾキノン付加物から選ばれる少なくとも1種類の化合物
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部、及び
(F)記式(II)で示される (A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量
【化6】
(式中、R’’は水素原子、または、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、dは1〜3の整数であり、Xはテトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、フェノールイオン、フェノール樹脂イオン、トルエンスルホン酸イオン、ハロゲン化物イオン、及び炭素数1〜10のカルボン酸イオンから選ばれる陰イオンである)。
【請求項2】
(B)成分における前記アルケニル基含有エポキシ化合物が下記平均式で表される化合物である、請求項1記載の組成物。
【化7】
(上記式において、x及びyは、1<x<10、1<y<3で示される正数である)
【請求項3】
(E)成分が、トリフェニルホスフィン及びテトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2記載の組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物を硬化してなる硬化物を備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体封止用樹脂組成物及び該組成物から得られる硬化物を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオード、トランジスタ、IC、LSIなどの半導体装置は樹脂封止型が主流である。エポキシ樹脂は他の熱硬化性樹脂に比べ成形性、接着性、電気特性、機械特性、及び耐湿性等に優れているため、半導体装置用の封止樹脂としてエポキシ樹脂組成物が一般的に使用されてきた。しかし、ここ数年、電子機器の市場では、半導体装置の小型化、軽量化、高性能化及び半導体素子の高集積化がますます進んでいる。また、半導体装置の実装技術革新が促進される中で、半導体封止材として用いられているエポキシ樹脂への要求はますます厳しくなってきている。半導体装置の高性能化、高集積化により半導体素子の発熱量が増え、ジャンクション温度は150〜175℃と高温になる。半導体装置全体としては熱を逃がしやすい構造がとられるが、封止樹脂自身には耐熱特性が求められる。また自動車用途、高耐圧用途の半導体装置は高温環境下に晒されることが多いため、耐熱性に加えて、ガラス転移温度が高いことや高温での機械強度が高いことなどが求められる。
【0003】
一方、半田実装温度の上昇に伴い、半導体装置が吸湿していると実装時にパッケージが割れたり、封止材と金属フレーム、有機基板、半導体素子界面が剥離したりする等の不都合が発生する。そのため、封止樹脂組成物には低吸湿性、及び、金属フレーム、有機基板、または半導体素子との高密着性も求められる。しかし、一般的にガラス転移温度が高い樹脂組成物は吸湿量が大きく、高温保存時の樹脂分解による重量減少が大きくなる。
【0004】
特許文献1はアルケニル基含有エポキシ樹脂とヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンとを付加反応させて得られる共重合体を記載しており、該共重合体を硬化性エポキシ樹脂と硬化剤とを主成分とするエポキシ樹脂組成物に配合することで、耐クラック性に優れた半導体素子封止材を提供できると記載している。しかし該樹脂組成物は耐熱性や低吸湿性が十分ではない。
【0005】
特許文献2は、架橋基にビフェニレン構造を有するフェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂と硬化促進剤とを含有するエポキシ樹脂組成物及び該組成物からなる半導体封止材を記載している。特許文献2は、該組成物はガラス転移温度が高いことを記載している。
【0006】
特許文献3は、1価フェノール類と2価フェノール類とをビフェニレン類によって架橋した化学構造を有するエポキシ樹脂を記載している。該エポキシ樹脂は高いガラス転移温度を有し、耐熱性及び難燃性に優れた硬化物を提供できると記載している。
【0007】
特許文献4には半導体封止用エポキシ樹脂組成物が記載され、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤がそれぞれビフェニル骨格及びフェノール骨格を有することにより低吸湿性かつ優れた靭性を有し、優れた耐リフロークラック性を示す硬化物を与えると記載されている。これは、該樹脂はビフェニレン骨格を有するために架橋点間距離が長く、エポキシ基の濃度が低く、及びベンゼン環の比率が高いためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−212417号公報
【特許文献2】特開2011−252037号公報
【特許文献3】特開2013−43958号公報
【特許文献4】特許第3388537号
【特許文献5】WO2012/053522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献2及び3に記載の封止樹脂組成物は、低吸湿性が不十分である、ガラス転移温度よりも高温の条件下に長期間置くと熱分解により重量減少する、温度サイクル試験でクラックや剥離を生じるという問題を有する。また、特許文献4に記載の封止樹脂組成物はガラス転移温度が低く、高温の条件下では機械強度や電気絶縁性が低下するという問題を有する。さらに特許文献5に記載の封止樹脂組成物は、高いガラス転移温度を有するため高温下での重量減少は少ないが、温度サイクル試験で剥離やクラックが発生するという問題がある。このように、高いガラス転移温度及び高い難燃性を有し、かつ低い吸湿性、並びに高温下での保管安定性、優れた機械的強度及び電気絶縁性を有する樹脂組成物を得ることは困難であった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ガラス転移温度が高く、吸湿性が低く、高温下に長期保管したときの熱分解が少なく、耐ハンダリフロー特性に優れる硬化物を与え、さらには成形性に優れ、且つ、銅リードフレームとの密着性に優れる硬化物を与える樹脂組成物を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ビフェニレン骨格を有するエポキシ化合物及びフェノール化合物を含む組成物において、ビフェニレン骨格を有するエポキシ化合物及びフェノール化合物が、夫々2価のフェノール骨格を特定割合で有し、及び、該組成物がアルケニル基含有エポキシ化合物とオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により得られる共重合物を含有することにより、ガラス転移温度が高く、吸湿性が低く、耐ハンダリフロー特性に優れ、高温下に長期保管したときの熱分解が少なく、さらには成形性に優れる組成物を提供することができることを見出した。さらに本発明者らは、上記組成物が特定の2種類の硬化促進剤を組合せて含むことにより、上記効果を維持しながら、銅リードフレームとの密着性に優れる硬化物を与えることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記(A)〜(F)成分を含有する組成物を提供する。
下記(A)成分〜(F)成分を含む組成物
(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物
【化1】
(式(1)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、m、m及びmは互いに独立に、1または2の整数であり、m、m及びmの個数の合計に対して、整数2であるm、m及びmの個数の合計が20〜100%であり、l=5−mであり、l=5−mであり、l=4−mであり、nは0〜15の整数である)
(B)アルケニル基含有エポキシ化合物とオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により得られる共重合物:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して2〜20質量部
前記アルケニル基含有エポキシ化合物が下記平均式(4)で表される化合物であり、
【化2】
(R2’はアルケニル基を有する、炭素数3〜15の、脂肪族一価炭化水素基であり、R3’はグリシジルオキシ基または−OCHCH(OH)CHOR’で示される基であり、R’はアルケニル基を有する炭素数3〜10の一価炭化水素基であり、kは1であり、kは0または1であり、xは1〜30の正数であり、yは1〜3の正数である)
前記オルガノポリシロキサンが下記のいずれかの式で表される化合物であり、
【化3】
(式中、nは20〜100の整数である)
【化4】
(式中、mは1〜10の整数であり、nは10〜100の整数である)
上記アルケニル基含有エポキシ化合物と上記オルガノポリシロキサンの割合は、エポキシ化合物が有するアルケニル基1個に対するオルガノポリシロキサンが有するSiH基の個数比1.0〜5.0である
(C)下記一般式(3)で表されるフェノール化合物:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して20〜50質量部
【化5】
(式(3)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、p、p及びpは互いに独立に、1または2の整数であり、p、p及びpの個数の合計に対して、整数2であるp、p及びpの個数の合計が20〜100%であり、q=5−pであり、q=5−pであり、q=4−pであり、n’は0〜15の整数である)、
(D)無機充填剤:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して150〜1,500質量部、
(E)トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、及びトリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラp−トリルボレート、テトラトリルホスフィン・テトラフェニルボレート、及び、トリフェニルホスフィン−ベンゾキノン付加物から選ばれる少なくとも1種類の化合物
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部、及び
(F)記式(II)で示される (A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量
【化6】
(式中、R’’は水素原子、または、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、dは1〜3の整数であり、Xはテトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、フェノールイオン、フェノール樹脂イオン、トルエンスルホン酸イオン、ハロゲン化物イオン、及び炭素数1〜10のカルボン酸イオンから選ばれる陰イオンである)。
さらに本発明は上記組成物を硬化して成る硬化物を備える半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物は、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れる硬化物を与える。該硬化物はガラス転移温度以上の高温下にて長期保管しても熱分解による重量減少が少なく、さらには吸湿性が低く、耐半田リフロー性にも優れる。さらに、本発明の組成物から得られる硬化物は銅リードフレームとの密着性にも優れる。そのため、本発明の組成物は特に表面実装タイプの半導体装置の封止樹脂として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0015】
(A)成分は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である。
【化6】
(式(1)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜10の、好ましくは炭素数1〜6の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、m、m及びmは互いに独立に、1または2の整数であり、m、m及びmの個数の合計に対して、整数2であるm、m及びmの個数の合計が20〜100%であり、l=5−mであり、l=5−mであり、l=4−mであり、nは0〜15の整数である)
【0016】
上記(A)エポキシ化合物は、特定割合の1価のフェノール骨格と2価のフェノール骨格とをビフェニレン骨格によって連結した構造を有するフェノール化合物をエポキシ化することにより得られる。該エポキシ化合物は2価フェノール骨格を、上記式(1)において、m、m及びmの合計個数のうち、整数2であるm、m及びmの割合(2価のフェノール骨格の割合)が20〜100%、好ましくは30〜100%で有する。2価のフェノール骨格の割合が上記範囲内にあると、ガラス転移温度が高く、高温保管特性、吸湿性に優れる組成物となる。
【0017】
本発明者らは、エポキシ化合物及び後述するフェノール化合物が上記した特定量の2価フェノール骨格を有することにより、ガラス転移温度を上げる効果が高いエポキシ化合物として知られていたo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などと比較して、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れ、高温保管時に熱分解せず、さらに吸湿性に優れる硬化物を提供できることを見出した。
【0018】
、R及びRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されたものが挙げられる。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0019】
上記エポキシ化合物に併せて、整数1であるm、m及びmの割合(1価のフェノール骨格の割合)が100%であるエポキシ化合物を使用することができる。また、上記式(1)で示される以外の構造を有するエポキシ化合物、例えば、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスA型エポキシ樹脂、ビスF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することもできる。これらのエポキシ化合物の量は、上記式(1)のエポキシ化合物との合計に対して50質量%以下、好ましくは30質量%以下であるのがよい。
【0020】
(B)成分は、アルケニル基含有エポキシ化合物と下記平均式(2)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により得られる共重合化合物である。本発明の組成物は該共重合体を含有することにより、高い耐熱性及び吸湿性を確保することができる。
【化7】
(式中、Rは、互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、aは0.01≦a≦1の正数であり、bは1≦b≦3の正数であり、1.01≦a+b<4である)
【0021】
アルケニル基含有エポキシ化合物は、例えばアルケニル基含有フェノール樹脂をエピクロロヒドリンでエポキシ化したり、従来公知のエポキシ化合物に2−アリルフェノールを部分的に反応させたりすることにより得ることができる。該エポキシ化合物は、例えば、
下記平均式(4)または(5)で表すことができる。
【化8】
(R2’はアルケニル基を有する、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜5の、脂肪族一価炭化水素基であり、R3’はグリシジルオキシ基または−OCHCH(OH)CHOR’で示される基であり、R’はアルケニル基を有する炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜5の一価炭化水素基であり、kは1であり、kは0または1であり、xは1〜30の正数であり、yは1〜3の正数である)
【化9】
(R2’、R3’、k、及びkは上記の通りであり、x’は1〜30の正数であり、y’は1〜3の正数である)
【0022】
上記平均式で表されるエポキシ化合物としては、例えば、下記平均式の化合物が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
(上記式において、x及びyは、1<x<10、1<y<3で示される正数である)
【0023】
上記平均式(2)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のSiH基を有する。式(2)において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、及びシアノエチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0024】
上記平均式(2)で示されるオルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、及び分岐状のいずれでもよい。例えば、下記式(a)〜(c)で表すことができる。
【化13】

上記式において、Rは互いに独立に、置換又は非置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、Rは水素原子またはRの選択肢から選ばれる基であり、Rは下記に示す基である。nは5〜200の整数であり、nは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数であり、nは1または0である。
【化14】
R及びRは上述の通りであり、nは1〜10の整数である。但し、上記式(a)の化合物は1分子中に少なくとも1の、ケイ素原子に結合した水素原子を有する。上記括弧内に示される各シロキサン単位はランダムに結合していても、ブロック単位を形成していてもよい。
【化15】
式(b)において、Rは上記の通りであり、nは1〜10の整数であり、nは1又は2である。上記括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は制限されるものでない。
【化16】
式(c)において、R及びRは上記の通りであり、rは0〜3の整数であり、R10は水素原子または酸素原子を有してよい炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、上記式(c)の化合物は1分子中に少なくとも1の、ケイ素原子に結合した水素原子を有する。
【0025】
上記ハイドロジェンオルガノポリシロキサンとしては、両末端ハイドロジェンメチルポリシロキサン、両末端ハイドロジェンメチルフェニルポリシロキサンなどが好適である。例えば、以下の化合物が好ましい。
【化17】
(式中、nは20〜100の整数である)

【化18】
(式中、mは1〜10の整数であり、nは10〜100の整数である)
【0026】
(B)成分は、上記アルケニル基含有エポキシ化合物とハイドロジェンオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応させることにより得られる共重合体である。ヒドロシリル化反応は従来公知の方法に従えばよい。例えば、塩化白金酸のような白金系触媒の存在下で加熱反応させることにより得ることができる。該ヒドロシリル反応は、特には、ベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトン等の不活性溶剤中で60〜120℃に加熱して行うのがよい。エポキシ化合物とシロキサンの配合割合は、エポキシ化合物が有するアルケニル基1個に対するシロキサンが有するSiH基の個数を1.0以上、好ましくは1.5〜5.0にするのがよい。
【0027】
組成物中の(B)成分の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して2〜20質量部であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0028】
(C)成分は、下記一般式(3)で表されるフェノール化合物である。
【化19】
(式(3)中、R、R及びRは互いに独立に、水素原子、または炭素原子数1〜10の、好ましくは炭素数1〜6の、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、p、p及びpは互いに独立に、1または2の整数であり、p、p及びpの個数の合計に対して、整数2であるp、p及びpの個数の合計が20〜100%、好ましくは30〜100%であり、q=5−pであり、q=5−pであり、q=4−pであり、n’は0〜15の整数である)
【0029】
上記式(3)の化合物は、上述した(A)エポキシ化合物の前駆体となる化合物である。本発明の組成物は、上記した通り(C)フェノール化合物が構造中に特定量の2価フェノール骨格を有することにより、得られる硬化物は、ガラス転移温度が高く、且つ、耐熱性、吸湿性に優れた硬化物となる。
【0030】
、R及びRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されたものが挙げられる。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0031】
上記フェノール化合物に併せて、整数1であるp、p及びpの割合(1価のフェノール骨格の割合)が100%であるフェノール化合物を使用することができる。また、上記式(3)で示される以外の構造を有するフェノール化合物、例えばフェノールノボラック樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等を使用することもできる。これらのフェノール化合物の量は、上記式(3)のフェノール化合物との合計に対して50質量%以下、好ましくは30質量%以下であるのがよい。
【0032】
組成物中の(C)成分の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して20〜50質量部であり、好ましくは30〜45質量部であるのがよい。
【0033】
(D)成分は無機充填剤である。該無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は特に制限されず、用途に応じて選択される。通常、平均粒径は、1〜50μm、特には4〜20μmである。該平均粒径とはシーラスレーザー等レーザー回折粒度分布測定で得られる値である。
【0034】
これらの無機充填剤は、120℃、2.1気圧でサンプル5g/水50gの抽出条件で抽出される不純物として、クロールイオンが10ppm以下、ナトリウムイオンが10ppm以下であることが好適であり、クロールイオンが5ppm以下、ナトリウムイオンが5ppm以下であることが更に好適である。10ppmを超えると組成物で封止された半導体装置の耐湿特性が低下する場合がある。
【0035】
無機充填剤の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して150〜1,500質量部であり、好ましくは250〜1,200質量部である。特には、組成物全体の60〜94質量%、好ましくは70〜92質量%、更に好ましくは75〜90質量%であるのがよい。
【0036】
無機充填剤は、樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン、γ−エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法に従えばよい。
【0037】
本発明の組成物は硬化促進剤として(E)リン系化合物と(F)含窒素複素環式化合物及び/またはその塩を組合せて使用することを特徴とする。(E)リン系化合物とは、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物のテトラフェニルボレート塩、及びホスフィン化合物とキノン化合物の付加物から選ばれる少なくとも1種類の化合物である。(F)含窒素複素環式化合物及び/またはその塩とは、下記式(I)で示される化合物または下記式(II)で示される塩から選ばれる少なくとも1種である。
【化20】

(式中、dは1〜3の整数)

【化21】
(式中、R’’は水素原子、または炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、dは1〜3の整数であり、Xはテトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、フェノールイオン、フェノール樹脂イオン、トルエンスルホン酸イオン、ハロゲン化物イオン、及び炭素数1〜10のカルボン酸イオンから選ばれる陰イオンである)。
【0038】
上記(A)成分〜(D)成分を含む組成物は、ガラス転移温度が高く、吸湿性が低く、耐ハンダリフロー特性に優れ、高温下に長期保管したときの熱分解が少なく、及び成形性に優れる硬化物を与える。本発明は、該(A)成分〜(D)成分を含む組成物にさらに(E)成分と(F)成分とを組合せて配合することを特徴とする。これにより、上記効果を維持しながら、Cuリードフレームとの密着性に優れる硬化物を与える。(A)成分〜(D)成分を含む組成物に硬化促進剤として(E)成分のみを配合した場合、得られる硬化物はCuリードフレームとの密着性が低く、耐ハンダリフロー特性が劣るという問題を有する。また、上記(A)成分〜(D)成分を含む組成物に硬化促進剤として(F)成分のみを配合した場合、得られる硬化物はガラス転移温度が低くなり耐熱性に劣るという問題を有する。以下、(E)成分及び(F)成分について詳細に説明する。
【0039】
(E)成分はリン系化合物であり、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物のテトラフェニルボレート塩、及びホスフィン化合物とキノン化合物の付加物が挙げられる。これらは硬化促進剤として従来公知のものが使用でき、1種単独でも2種以上の併用であってもよい。例えば、有機ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、及びトリ(p−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。また、これら有機ホスフィンと有機ボランとの複合体であってもよく、例えば、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボランが挙げられる。テトラ置換ホスホニウム化合物のテトラフェニルボレート塩としては、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラp−トリルボレート、テトラトリルホスフィン・テトラフェニルボレートが挙げられる。ホスフィン化合物とキノン化合物の付加物としては、トリフェニルホスフィン−ベンゾキノン付加物などが挙げられる。これらは市販品であってよく、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP(登録商標)、北興化学工業株式会社製)及びテトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート(TPP−K(登録商標)、北興化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
(F)成分は、上記式(I)で表される含窒素複素環式化合物または上記式(II)で表される含窒素複素環式化合物の塩であり、1種単独でも2種以上の併用であってもよい。上記式(I)において、dは1〜3の整数であり、好ましくは1または3である。上記式(II)において、R’’は水素原子、または、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。該脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられ、ベンジル基が好ましい。特に好ましくは、R’’は水素原子又はベンジル基である。上記式(II)において、dは1〜3の整数であり、好ましくは1または3である。Xは陰イオンであり、テトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、フェノールイオン、フェノール樹脂イオン、トルエンスルホン酸イオン、ハロゲン化物イオン、炭素数1〜10のカルボン酸イオンから選ばれる1種である。フェノール樹脂イオンとしては、例えば、フェノールノボラック樹脂イオンが挙げられる。トルエンスルホン酸イオンとしてはp−トルエンスルホン酸イオンが挙げられる。ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、及び臭化物イオン等が挙げられる。カルボン酸イオンとしては、オクチル酸イオン、ギ酸イオン、オルソフタル酸イオン、及びトリメリット酸イオン等が挙げられる。中でもXは、好ましくは、テトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、フェノール樹脂イオン、及び炭素数1〜10のカルボン酸イオンから選ばれる1種であり、特には、テトラフェニルボレートイオン(テトラフェニルホウ酸イオン)、またはフェノール樹脂イオンが好ましい。
【0041】
上記式(I)で表される化合物としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)が挙げられる。上記式(II)で表される化合物としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のフェノール樹脂塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のトリメリット酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)のp−トルエンスルホン酸塩、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンのテトラフェニルボレート塩、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)のフェノール樹脂塩、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンのテトラフェニルボレート塩などが挙げられる。これらは市販品であってよく、例えば、サンアプロ株式会社製のU−CAT(登録商標)及びU−CAT(登録商標)SAシリーズが使用でき、例えば、U−CAT SA851、U−CAT 5002、U−CAT SA 102、U−CAT SA 1、及びU−CAT SA 506等が挙げられる。
【0042】
(E)成分及び(F)成分の配合量は、各々、(A)成分〜(C)成分の総量100質量部に対し0.1〜5質量部であり、好ましくは0.3〜1.8質量部であり、特に好ましくは0.5〜1.5質量部である。また(E)リン化合物は事前にフェノール硬化剤やシリカと混合し、使用しても良い。
【0043】
本発明の組成物には、更に必要に応じて離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着性付与剤など各種の添加剤を配合することができる。
【0044】
離型剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えばカルナバワックス、ライスワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、モンタン酸、モンタン酸と飽和アルコール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−エタノール、エチレングリコール、グリセリン等とのエステル化合物等のワックス;ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。離型剤の配合量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.5〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。
【0045】
難燃剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えばホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。難燃剤の配合量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して2〜20質量部であり、好ましくは3〜10質量部である。
【0046】
イオントラップ剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が使用でき、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。イオントラップ剤の配合量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.5〜10質量部であり、好ましくは1.5〜5質量部である。
【0047】
接着性付与剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば上記したカップリング剤が挙げられる。これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。接着性付与剤の配合量は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して0.2〜5質量部であり、好ましくは0.5〜3質量部である。
【0048】
本発明の組成物の製造方法は特に制限されるものでない。例えば、(A)〜(F)成分、及び必要に応じてその他の成分を所定の組成比で配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕すればよい。得られた組成物は成形材料として使用できる。
【0049】
本発明の組成物は、トランジスタ型、モジュール型、DIP型、SO型、フラットパック型、ボールグリッドアレイ型等の半導体装置の封止樹脂として特に有効である。本発明の組成物による半導体装置の封止方法は特に制限されるものでなく、従来の成形法、例えばトランスファー成形、インジェクション成形、注型法等を利用すればよい。特に好ましいのはトランスファー成形である。
【0050】
本発明の組成物の成形(硬化)条件は特に制限されるものでないが、160〜190℃で45〜180秒間が好ましい。さらに、ポストキュアを170〜250℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【0051】
本発明の組成物は、高温下、特には200℃〜250℃下に長期保管した場合の熱分解による重量減少が少なく長期高温信頼性に優れる。また、銅製リードフレームや銀メッキとの密着性に優れ、高い絶縁性を有する。また、該組成物の硬化物で封止された半導体装置は、耐湿性や、耐ハンダリフロー性にも優れる。また、トランスファー成形材料として一般的に使用されているエポキシ樹脂組成物と同様の装置、成形条件を用いることができ、生産性にも優れる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0053】
[A成分]
エポキシ化合物1
下記式(6)で表されるエポキシ化合物:NC−3500(日本化薬株式会社製)
【化22】
上記式において、R〜Rは水素原子であり、1価のフェノールと2価のフェノールの比率=36/64(個数比(%))であり、n=1.4(平均値)であり、エポキシ当量は208である。
【0054】
エポキシ化合物2
攪拌装置、及びコンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、後述のSH−005−04(明和化成株式会社製、1価フェノールと2価フェノールの比率=71/29であるフェノール樹脂55.0g(0.33モル)、エピクロルヒドリン365.6g(4.0モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム13.7g(0.3モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。
【0055】
釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液5.3g(0.03モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで、上記式(6)で表され、R〜R=Hであり、nの値は1.3であるエポキシ化合物2を75g得た。得られたエポキシ化合物のエポキシ当量は224であった。
【0056】
エポキシ化合物3
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、レゾルシン220g(2.0モル)を150gの水に溶解させ、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル125.5g(0.5モル)を仕込み、100℃で3時間反応させた。その後、160℃に昇温し、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニルを全て反応させた。その間、生成するHCl、及び水を留去した。反応終了後、減圧蒸留により未反応レゾルシンを留去することにより1価フェノールと2価フェノールの比率=0/100(個数比(%))であるフェノール樹脂180gを得た。該フェノール樹脂の水酸基当量は115g/eqであった。
【0057】
続いて、上記フェノールノボラック樹脂50.0g(0.41モル)、エピクロルヒドリン451.2g(4.9モル)、メタノール50gを仕込み、均一に溶解させた。50℃で固形の96%水酸化ナトリウム16.9g(0.4モル)を90分かけて分割投入した。その後50℃で2時間反応させ、70℃昇温後さらに2時間反応を継続した。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを減圧下において除去した。釜残にメチルイソブチルケトンを85g投入し溶解させた。25%水酸化ナトリウム水溶液6.5g(0.04モル)を添加し70℃で1時間反応させた。反応終了後、水層が中性になるまで水洗処理を7回繰り返した。加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去することで、上記式(6)で表され、R〜R=Hであり、nの値は1.2であるエポキシ化合物3を67g得た。得られたエポキシ化合物のエポキシ当量は176であった。
【0058】
エポキシ化合物4
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂:NC−3000(日本化薬株式会社製)、1価フェノールと2価フェノールの比率=100/0(個数比(%))、エポキシ当量:272
【0059】
エポキシ化合物5
トリフェニルアルカン型エポキシ樹脂:EPPN−501H(日本化薬株式会社製)1価フェノールと2価フェノールの比率=100/0(個数比(%))、エポキシ当量:165
【0060】
[B成分]
アルケニル基含有エポキシ化合物とオルガノポリシロキサンとの反応により得られる共重合化合物
リフラックスコンデンサー、温度計、撹拌機及び滴下ロートを具備した内容積1リットルの四つ口フラスコへアリルグリシジルエーテルで変性されたフェノールノボラック樹脂(フェノール当量125、アリル当量1100)200g、クロロメチルオキシラン800g、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド0.6gをそれぞれ入れて加熱し、温度110℃で3時間撹拌混合した。これを冷却して温度70℃とし、160mmHgに減圧してから、この中に水酸化ナトリウムの50%水溶液128gを共沸脱水しながら3時間かけて滴下した。得られた内容物を減圧して溶剤を留去し、次いでメチルイソブチルケトン300gとアセトン300gの混合溶剤にて溶解させた後、水洗し、これを減圧下で溶剤留去してアリル基含有のエポキシ樹脂(アリル当量1590、エポキシ当量190)を得た。このエポキシ樹脂とメチルイソブチルケトン170g、トルエン330g、2%の白金濃度の2−エチルヘキサノール変性塩化白金酸溶液0.07gを入れ、1時間の共沸脱水を行ない、還流温度にて下記式(7)で表されるオルガノポリシロキサン133gを滴下時間30分にて滴下した。更に、同一温度で4時間撹拌して反応させた後、得られた内容物を水洗し、溶剤を減圧下で留去したところ白黄色不透明固体の共重合体が得られた。エポキシ当量は280であり、150℃でのICI溶融粘度は800cPであり、珪素含有量31%であった。
【化23】
【0061】
[C成分]
フェノール化合物1
下記式(8)で表される化合物:SH−005−02(明和化成株式会社製)
【化24】
上記式(8)において、R〜Rは水素原子であり、1価フェノールと2価フェノールの比率=36/64(個数比(%))であり、n’=1.4(平均値)であり、水酸基当量は135である。
【0062】
フェノール化合物2
SH−005−04(明和化成株式会社製):上記式(8)で示され、R〜R=H、1価フェノールと2価フェノールの比率=71/29(個数比(%))、水酸基当量169である化合物
【0063】
フェノール化合物3
MEHC−7851SS(明和化成株式会社製):下記式(9)で示され、1価フェノールと2価フェノールの比率=100/0(個数比(%))、水酸基当量203である化合物
【化25】
【0064】
フェノール化合物4
TD−2131(DIC製):下記式(10)で示され、1価フェノールと2価フェノールの比率=100/0(個数比(%))、水酸基当量110である化合物
【化26】
【0065】
[D成分]
無機充填剤:溶融球状シリカ(平均粒径15μm、株式会社龍森製)
【0066】
[E成分]
トリフェニルホスフィン(TPP(登録商標) 、 北興化学工業株式会社製)
テトラフェニルホスフォニウムテトラフェニルボレート (TPP−K(登録商標) 、北興化学工業株式会社製)
【0067】
[F成分]
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のフェノール樹脂塩 (U−CAT(登録商標) SA851、サンアプロ株式会社製)
8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のテトラフェニルボレート塩 (U−CAT(登録商標) 5002、サンアプロ株式会社製)
【0068】
[その他の成分]
カルナバワックス(TOWAX−131、東亜化成株式会社製)
シランカップリング剤:
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越化学工業株式会社製)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業株式会社製)
難燃材:モリブデン担持酸化亜鉛(KEMGARD−911B、シャーウイン ウイリアムズ製)
イオントラップ剤:ハイドロタルサイト化合物(DHT−4A−2、協和化学工業株式会社製)
【0069】
上記成分を、下記表1及び表2に記載の組成に従い配合し、熱2本ロールにて均一に溶融混合、冷却、粉砕して組成物を得た。得られた各組成物を以下に示す方法に従い評価した。結果を表3及び表4に記載する。
【0070】
(イ)スパイラルフロー
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mm、成形時間180秒の条件で測定した。
【0071】
(ロ)ガラス転移温度
各組成物を、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで250℃、4時間ポストキュアすることにより、5×5×15mmの試験片を得た。試験片の、5℃/分の昇温速度における寸法変化を測定(Rigaku TMA8310)し、50〜100℃の接線と270〜290℃の接線の交点よりガラス転移点を求めた。
【0072】
(ハ)高温放置時の重量変化
各組成物を、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで180℃、4時間ポストキュアすることにより、10×100×4mmの試験片を得た。試験片を250℃オーブン中に336時間保管した。保管前の試験片の重量を基に保管により重量減少した率(%)を測定した。
【0073】
(ニ)HTSL特性確認
チップ6mm×6mm、DA剤Ablestick製84−1LMI−SR4、ダイパッド部(8mm×8mm)及びワイヤーボンディング部がAgメッキされたCu合金(Olin C7025)製100pin QFPリードフレームを、各組成物で、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで180℃、4時間ポストキュアすることにより封止した。リードフレームカッターでタイバーを切断し、20mm×14mm×2.7mmのQFPパッケージを得た。このパッケージを200℃オーブン中に1000時間保管し、保管後パッケージクラックの確認及び超音波探傷装置による内部クラック、リードフレームとの剥離を観察した。
【0074】
(ホ)温度サイクル特性確認
チップ6mm×6mm、DA剤Ablestick製84−1LMI−SR4、ダイパッド部(8mm×8mm)及びワイヤーボンディング部がAgメッキされたCu合金(Olin C7025)製100pin QFPリードフレームを、各組成物で、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで180℃、4時間ポストキュアすることにより封止した。リードフレームカッターでタイバーを切断し、20mm×14mm×2.7mmのQFPパッケージを得た。このパッケージについて、−65℃×30分⇔175℃×30分の条件で温度サイクル試験を1500サイクル行い、パッケージクラックの確認及び超音波探傷装置による内部クラック、リードフレームとの剥離を観察した。
【0075】
(ヘ)Cu リードフレームとの密着性試験
厚み0.15mmを有する15mm×15mmのCu合金(Olin C7025)製の100pin QFPリードフレームを、各組成物にて、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、底面積10mm、高さ3.5mmの成形物を得た。ついで、ダイシェアテスター(DAGE製)を用いて成形物にせん断速度 0.2mm/sでせん断力を加え、Cuリードフレームから成型物が剥がれるときのせん断強さを測定した。
【0076】
(ト)吸湿半田リフロー試験
チップ6mm×6mm、DA剤Ablestick製84−1LMI−SR4、ダイパッド部(8mm×8mm)及びワイヤーボンディング部がAgメッキされたCu合金(Olin C7025)製100pin QFPリードフレームを、各組成物で、175℃×120秒間、成形圧6.9MPaの条件でトランスファー成形し、次いで180℃、4時間ポストキュアすることにより封止した。リードフレームカッターでタイバーを切断し、20mm×14mm×2.7mmのQFPパッケージを得た。このパッケージを85℃/65%RH×72hの条件で吸湿させた後、IRリフロー炉(最高温度265℃)に3回通過させ、パッケージクラックの確認及び超音波探傷装置による内部クラック、リードフレームとの剥離を観察した。













【0077】
【表1】



【0078】
【表2】


【0079】
【表3】






【0080】
【表4】
【0081】
(A)成分〜(D)成分を含む組成物に(E)リン系化合物のみを配合した比較例1及び2の組成物から得られる硬化物はCuリードフレームとの密着性が低く、耐ハンダリフロー特性が劣る。また、上記(A)成分〜(D)成分を含む組成物に(F)含窒素複素環式化合物の塩のみを配合した比較例3及び4の組成物から得られる硬化物はガラス転移温度が低く耐熱性に劣る。これに対し、本願発明の組成物から得られる硬化物は、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れ、高温下に長期保管したときの熱分解が少なく、耐ハンダリフロー特性に優れ、且つ、銅リードフレームとの密着性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の樹脂組成物は、ガラス転移温度が高く耐熱性に優れる硬化物を与える。その為、該硬化物を高温下、特には200℃〜250℃に長期保管したときの熱分解(重量減少)が少ない。また本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は、吸湿性が低く、耐半田リフロー性に優れ、且つ、銅リードフレームとの密着性にも優れる。さらに本発明の組成物は成形性が良好である。従って、本発明の組成物は、特に表面実装タイプの半導体装置の封止樹脂として好適である。