特許第6301905号(P6301905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301905
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】シラン末端ポリマー系の組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20180319BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20180319BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20180319BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C08L101/10
   C08L75/04
   C08K5/57
   C08K5/057
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-500879(P2015-500879)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公表番号】特表2015-512452(P2015-512452A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2013055624
(87)【国際公開番号】WO2013139759
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】12160128.0
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ガーツァレ アツァルムギン
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−172744(JP,A)
【文献】 特開平10−036689(JP,A)
【文献】 特開2006−316212(JP,A)
【文献】 特表2003−503564(JP,A)
【文献】 特表2004−536957(JP,A)
【文献】 特開昭60−088052(JP,A)
【文献】 特表2009−513806(JP,A)
【文献】 特開平09−217010(JP,A)
【文献】 特開平05−311063(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0116639(US,A1)
【文献】 特開2008−056932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08G 18/00−18/87
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
C09K 3/10−3/12
C09D 1/00−10/00、101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP;
b)少なくとも1つの有機スズ化合物;及び
c)少なくとも1つのチタネート
を含み、
それぞれ組成物全体に基づいて、有機スズ化合物の割合が、0.01〜0.15wt%であり、チタネートの割合が0.05〜1wt%であり、かつ
前記シラン官能性ポリマーPが、以下から選択される、組成物:
− イソシアネート基に対して反応性がある少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのシランと、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1;
− イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性がある官能性末端基を含むポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP2;又は
− 末端2重結合を有するポリ(メタ)アクリレートポリマー又はポリエーテルポリマーのヒドロシリル化反応によって得られうる、シラン官能性ポリマーP3。
【請求項2】
前記シラン官能性ポリマーPが、以下から選択される、請求項1に記載の組成物:
− イソシアネート基に対して反応性がある少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのシランと、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1;又は
− イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性がある官能性末端基を含むポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP2。
【請求項3】
前記有機スズ化合物が、ジアルキルスズ化合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機スズ化合物の割合が、組成物全体に基づいて0.05〜0.1wt%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記チタネートの割合が、組成物全体に基づいて0.1〜0.6wt%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記チタネートが、少なくとも一つの多座リガンドを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記チタネートが、次の式(VI)のチタネートである、請求項5に記載の組成物:
【化2】
(式中、
21は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
22は、水素原子、又はヘテロ原子を含有していてもよい、1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
23は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルコキシ基を表し、
24は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
nは、1又は2の値である)。
【請求項8】
シラン官能性ポリマーを含有する組成物を水の存在下で架橋するための、触媒又は促進剤系としての、少なくとも一つのチタネートと少なくとも一つの有機スズ化合物との使用であって、それぞれ組成物全体に基づいて、有機スズ化合物の割合が0.01〜0.15wt%であり、チタネートの割合が0.05〜1wt%であり、かつ前記シラン官能性ポリマーPが、以下から選択される、使用:
− イソシアネート基に対して反応性がある少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのシランと、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1;
− イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性がある官能性末端基を含むポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP2;又は
− 末端2重結合を有するポリ(メタ)アクリレートポリマー又はポリエーテルポリマーのヒドロシリル化反応によって得られうる、シラン官能性ポリマーP3
【請求項9】
接着剤、封止剤、又はコーティングとしての、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物から水で硬化した後に得られる、硬化した組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、封止剤、又はコーティング剤として使用することができる、シラン官能性ポリマーに基づく水分硬化性組成物(moisture−curing compositions)に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン官能性ポリマーに基づく水分硬化性組成物は公知であり、接着剤、封止剤、又はコーティング剤として昔から使用されている。
特に有機スズ化合物は、水の存在下で、シラン官能性ポリマーを含有する組成物の架橋のための触媒又は促進剤システムとして使用される。この目的のためにチタネート(titanate)を使用することも知られている。
チタネートで硬化された系は、一般的に顕著な利点を示す有機スズ化合物で硬化された系と比較して、優れた機械的性質を示すことが見出された。
【0003】
一方、このような組成物の欠点は、有機スズ化合物と比較してチタネートの使用が、組成物の硬化反応性の明確な低下を引き起こすという事実にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち本発明の目的は、硬化状態で改善された機械的特性を有し、同時に硬化中に短いスキン形成時間を有する、シラン官能性ポリマー系の水分硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、下記態様1の組成物がこの課題を解決することが発見された。
有機スズ化合物とチタネートとの正確に規定された重量部での使用が、適用プロセス及び加工プロセスで調整を必要とさせるようなスキン形成時間の変化を発生させずに、硬化した状態で改善された機械的特性を与える組成物を提供することを可能にする。
すなわち本発明の実施態様としては以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
a)少なくとも1つのシラン官能性ポリマーP;
b)少なくとも1つの有機スズ化合物;及び
c)少なくとも1つのチタネート
を含み、
それぞれ組成物全体に基づいて、有機スズ化合物の割合が、0.01〜0.15wt%であり、チタネートの割合が0.05〜1wt%である、組成物。
《態様2》
前記シラン官能性ポリウレタンポリマーPが、以下から選択される、態様1に記載の組成物:
− イソシアネート基に対して反応性がある少なくとも1つの基を含む少なくとも1つのシランと、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1;
− イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性がある官能性末端基を含むポリマーとを反応させることにより得られうる、シラン官能性ポリウレタンポリマーP2;又は
− 末端2重結合を有するポリマーのヒドロシリル化反応によって得られうる、シラン官能性ポリマーP3。
《態様3》
前記有機スズ化合物が、ジアルキルスズ化合物である、態様1又は2に記載の組成物。
《態様4》
前記有機スズ化合物の割合が、組成物全体に基づいて0.05〜0.1wt%である、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
《態様5》
前記チタネートの割合が、組成物全体に基づいて0.1〜0.6wt%、特に0.1〜0.3wt%である、態様1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
《態様6》
前記チタネートが、少なくとも一つの多座リガンドを有する、態様1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
《態様7》
前記チタネートが、次の式(VI)のチタネートである、態様5に記載の組成物:
【化1】
(式中、
21は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
22は、水素原子、又はヘテロ原子を含有していてもよい、1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
23は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルコキシ基を表し、
24は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、
nは、1又は2の値である)。
《態様8》
シラン官能性ポリマーを含有する組成物を水の存在下で架橋するための、触媒又は促進剤系としての、少なくとも一つのチタネートと少なくとも一つの有機スズ化合物とを共に用いる使用であって、それぞれ組成物全体に基づいて、有機スズ化合物の割合が0.01〜0.15wt%であり、チタネートの割合が0.05〜1wt%である、使用。
《態様9》
接着剤、封止剤、又はコーティングとしての、態様1〜7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
《態様10》
態様1〜7のいずれか1項に記載の組成物から水で硬化した後に得られる、硬化した組成物。
【0006】
本発明の主題は、
a)少なくとも1つのシラン官能性ポリマーPと、
b)少なくとも1つの有機スズ化合物と、
c)少なくとも1つのチタネートと、
を含む組成物であって、
それぞれ組成物全体に基づいて、有機スズ化合物の割合が0.01〜0.15wt%であり、チタネートの割合が0.05〜1wt%である組成物である。
【0007】
本明細書においてポリオール又はポリイソシアネートなどの「ポリ」で始まる物質名は、その化学式が、1分子につきその名前の2つ又はそれ以上の官能基を含有する物質を指す。
【0008】
本明細書において用語「ポリマー」は、一方で、重合度、分子量、及び鎖の長さが異なる化学的に均一な高分子の群を含み、重反応(polyreaction)(重合、重付加、重縮合)により調製される。この用語はまた、重反応からのそのような高分子群の誘導体を包含し、したがって既存の高分子上の官能基の付加又は置換などの反応により調製され、かつ化学的に均一な又は化学的に不均一な化合物を包含する。さらに、この用語はいわゆるプレポリマーを包含し、すなわち、その官能基が高分子の構成に含まれる反応性オリゴマープレ付加物を包含する。
【0009】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネート重付加法により調製されるすべてのポリマーを含む。これはまた、実質的に又は完全にウレタン基を含まないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリエステル−ポリ尿素、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドである。
【0010】
本明細書において用語「シラン」及び「有機シラン」は、一方では、Si−O結合を介して直接ケイ素原子に結合した、少なくとも1つの、通常2つ又は3つのアルコキシ基又はアシルオキシ基を有し、他方では、Si−C結合を介して直接ケイ素原子に結合した有機基を有する化合物を意味する。このようなシランはまた、当業者には有機アルコキシシラン及び有機アシルオキシシランとして知られている。
【0011】
対応して用語「シラン基」は、Si−C結合を介してシランの有機基に結合したケイ素含有基を示す。シラン又はシラン基は、水分と接触すると加水分解する特徴を有する。このプロセスにおいて、有機シラノール、すなわち1種又はそれ以上のシラノール基(Si−OH基)を含有する有機ケイ素化合物が形成され、次の縮合反応で、有機シロキサン、すなわち1種又はそれ以上のシロキサン基(Si−O−Si基)を含有する有機ケイ素化合物が形成される。用語「シラン官能性」は、シラン基を含有する化合物を示す。すなわち「シラン官能性ポリマー」は、少なくとも1つのシラン基を有するポリマーである。
【0012】
「アミノシラン」及び「メルカプトシラン」は、有機残基がアミノ基とメルカプト基とを含有する有機シランに適用される用語である。「1級アミノシラン」は、1級アミノ基、すなわち有機基に結合したNH基、を有するアミノシランを示す。「2級アミノシラン」は、2級アミノ基、すなわち2つの有機基に結合したNH基、を有するアミノシランである。
【0013】
本明細書において「分子量」は、常に平均分子量M(重量平均)として定義される。
本明細書において「室温」は、23℃の温度として定義される。
【0014】
本発明の組成物は、少なくとも1つのシラン官能性ポリマーPを含み、これは、特に次の式(I)の末端基を有する:
【化1】
【0015】
ここで、R基は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐した1価炭化水素基、特にメチル基又はエチル基を表す。
基は、1〜5個の炭素原子を有するアシル基、又は直鎖の又は分岐した1価炭化水素基、特にメチル基、エチル基又はイソプロピル基を表す。
添え字aは、0又は1又は2の値を表し、特に0の値を表す。
【0016】
基は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐した2価炭化水素基を表し、これは、任意選択的に環状及び/又は芳香族部分を有し、任意選択的に1種又はそれ以上のヘテロ原子、特に1種又はそれ以上の窒素原子を有する。
【0017】
式(I)のシラン基内で、R及びRは、それぞれ互いに独立に、記載された基を表す。例えば、エトキシジメトキシ末端基である式(I)の末端基を有する化合物(R=メチル、R=メチル、R=エチル)が可能である。
【0018】
第1の態様において、シラン官能性ポリマーPは、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1であり、これは、イソシアネート基に対して反応性のある少なくとも1つの基を含むシランに、イソシアネート基を含むポリウレタンポリマーを反応させることにより得ることができる。この反応は好ましくは、イソシアネート基に対して反応性の基とイソシアネート基との化学量論比が1:1で、又はイソシアネート基に対して反応性の基がわずかに過剰な量で行われ、したがって得られるシランシラン官能性ポリウレタンポリマーP1は、イソシアネート基を全く含まない。
【0019】
イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基を含有するシランと、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーとの反応において、シランは、好ましくはないが、理論的に準化学量論で使用することができ、したがってシラン基とイソシアネート基との両方を有するシラン官能性ポリマーが得られる。
【0020】
イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基を有するシランは、例えばメルカプトシラン又はアミノシラン、特にアミノシランである。
【0021】
好ましくは、アミノシランは、次の式(II)のアミノシランASである:
【化2】
式中、R、R、R及びaは、すでに上記され、Rは、水素原子、若しくは1〜20個の炭素原子を有し、任意選択的に環状部分を有する直鎖の又は分岐した1価炭化水素基を表すか、又は次の式(III)の基を表す:
【化3】
【0022】
ここで、R及びR基は、それぞれ互いに独立に、水素原子、又は−R、−COOR及び−CNからなる基からの基を表す。
【0023】
基は、水素原子、又は−CH−COOR、−COOR、−CONHR、−CON(R、−CN、−NO、−PO(OR、−SO及び−SOORからなる群からの基を表す。
【0024】
基は、任意選択的に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0025】
適切なアミノシランASの例は、1級アミノシラン、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、2級アミノシラン、例えばN−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;1級アミノシラン、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどの、マイケルアクセプター、例えばアクリロニトリル、(メト)アクリル酸エステル、(メト)アクリル酸アミド、マレイン酸及びフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、例えばN−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−アミノコハク酸ジメチル及びジエチルエステルなどへのマイケル型付加(Michael−type addition)からの生成物;及び、ケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基又はイソプロポキシ基を有する上記したアミノシランの類似体である。アミノシランASとして特に適しているのは、2級アミノシラン、特に、式(II)中のRがHとは異なるアミノシランASである。マイケル型付加物、特にN−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−アミノコハク酸ジエチルエステルが好ましい。
【0026】
本明細書において用語「マイケルアクセプター」は、これらが含有し、電子アクセプター基により活性化される2重結合のために、マイケル付加と同様の方法(ヘテロマイケル付加)で、1級アミノ基(NH基)と求核付加反応を受けることができる化合物を示す。
【0027】
シラン官能性ポリウレタンポリマーP1を調製するためのイソシアネート基含有ポリウレタンポリマーの例は、少なくとも1種のポリオールに少なくとも1種のポリイソシアネート、特にジイソシアネートを反応させて得られるポリマーを含む。ポリオールとポリイソシアネートが、通常の方法で、例えば50℃〜100℃の温度で、任意選択的に適切な触媒を使用して、反応するように作られている点で、この反応が起き、ここで、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在するような割合で添加される。
【0028】
特に、ポリオールのすべてのヒドロキシル基の反応後、生じるポリウレタンポリマーが、ポリマー全体に基づいて、0.1〜5wt%、好ましくは0.1〜2.5wt%、特に好ましくは0.2〜1wt%の残存遊離イソシアネート基含量を有するように、過剰のポリイソシアネートが選択される。
【0029】
任意選択的にポリウレタンポリマーは、可塑剤の同時使用により調製することができ、ここで、使用される可塑剤はイソシアネートに対して反応性の基を含有しない。
【0030】
NCO:OH比が1.5:1〜2.2:1のジイソシアネートと高分子量ジオールとの反応から得られる、上記した遊離イソシアネート基含量を有するポリウレタンポリマーが好ましい。
【0031】
ポリウレタンポリマーを調製するのに特に適したポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール、並びにこれらのポリオールの混合物である。
【0032】
ポリオキシアルキレンポリオール又はオリゴエテロールとも呼ばれる特に適切なポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−又は2,3−ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、又はそれらの混合物の重合生成物であり、任意選択的に2つ以上の活性水素原子を有するスターター分子、例えば水、アンモニア、又は数個のOH又はNH基を有する化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、並びに上記化合物の混合物を使用して重合される重合生成物であるものである。いわゆる2重金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて調製される、低不飽和度[ASTM D2849−69に従って測定され、ポリオール1gあたりの不飽和のミリ当量(mEq/g)で報告される]を有するポリオキシアルキレンポリオールと、例えば、NaOH、KOH、CsOH又はアルカリアルコラートなどのアニオン性触媒を用いて調製される、高不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールとの両方を、使用することができる。
【0033】
特に適しているのは、ポリオキシエチレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、及びポリオキシプロピレントリオールである。
【0034】
特に適しているのは、不飽和度が0.02mEq/g未満で分子量が1,000〜30,000g/molの範囲であるポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、並びに分子量が400〜20,000g/molのポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシレンプロピレントリオールである。また、特に適しているのは、いわゆるエチレンオキシド末端(「EO末端キャップ化」、エチレンオキシド末端キャップ化)ポリオキシプロピレンポリオールである。これらは、特にポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールであり、例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオール及びトリオールが、エチレンオキサイドとのポリプロポキシル化反応終了後に、さらにアルコキシル化され、したがって1級ヒドロキシル基を有するという点で得られる。この場合好適なのは、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレントリオールである。
【0035】
また、適しているのは、ヒドロキシル基末端ポリブタジエンポリオール、例えば1,3−ブタジエンとアリルアルコールの重合、又はポリブタジエンの酸化により調製されるもの、並びにそれらの水素添加生成物である。
【0036】
また、適しているのは、スチレン−アクリロニトリル−グラフト化ポリエーテルポリオールであり、例えばElastogran GmbH, GermanyのLupranol(商標)の商品名で市販されているものである。
【0037】
ポリエステルポリオールとして特に適しているのは、少なくとも2つのヒドロキシル基が結合したポリエステルで、公知の方法により調製されるものであり、特にヒドロキシカルボン酸と、又は脂肪族及び/又は芳香族ポリカルボン酸と、2価又は多価アルコールとの重縮合によって調製されるポリエステルである。
【0038】
特に適しているのは、2価〜3価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、又は上記アルコールの混合物と、有機ジカルボン酸又はその無水物もしくはエステル、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、脂肪酸二量体、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物、又は上記酸の混合物と、から調製されるポリエステルポリオール、並びにεカプロラクトンなどのラクトンからのポリエステルポリオールである。
【0039】
特に適しているのはポリエステルジオールであり、特に、ジカルボン酸としての、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、脂肪酸二量体、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸から調製されるもの、又はε−カプロラクトンなどのラクトンから調製されるもの、及び二価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、脂肪酸ジオール二量体及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから調製されるものである。
【0040】
ポリカーボネートポリオールとして特に適しているのは、例えばポリエステルポリオールを作成するために使用される上記アルコールを、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、又はホスゲンと反応させることにより得られるものである。特に適しているのは、ポリカーボネートジオール、特に非晶質のポリカーボネートジオールである。
【0041】
追加の適したポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0042】
さらに適しているのは、ポリヒドロキシ官能性油脂であり、例えば天然油脂、特にヒマシ油、又は天然油脂の化学修飾によって得られるいわゆる油脂化学ポリオール、例えば不飽和油のエポキシ化と引き続くカルボン酸とアルコールによる開環により得られるエポキシポリエステル及びエポキシポリエーテル、又は不飽和油のヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオールである。さらに適しているのは、天然油脂から、アルコール分解又はオゾン分解などの分解プロセスと以後の化学結合、例えばこうして得られた分解生成物又はその誘導体のエステル交換又は二量体化により得られるポリオールである。天然油脂の適切な分解生成物は、特に、脂肪酸及び脂肪アルコール、並びに脂肪酸エステル、特にメチルエステル(FAME)であり、これは、例えばヒドロホルミル化及び水素化により誘導体化して、ヒドロキシ脂肪酸エステルを調製することができる。
【0043】
また適しているのは、オリゴヒドロカルボノール(oligohydrocarbonol)とも呼ばれるポリ炭化水素ポリオール、例えばポリヒドロキシ官能性エチレン−プロピレン−、エチレン−ブチレン−、又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体、例えばKraton polymers, USA製のもの、又は1,3−ブタジエン又はジエンの混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリル又はイソブチレンなどのビニルモノマーとから作成されるポリヒドロキシ官能性共重合体、又はポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール、例えば1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって調製されるものであり、これらはまた、水素化することができる。
【0044】
また適しているのは、ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、例えばエポキシド又はアミノアルコールから調製することができる共重合体、及びEmerald Performance Materials, LLC, USAから商品名HYpro(商標)(以前はHycar(商標))CTBNで市販されている、カルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエン共重合体である。
【0045】
上記したこれらのポリオールは、好ましくは250〜30,000g/mol、特に1,000〜30,000g/molの平均分子量を有し、1.6〜3の範囲の平均OH官能度を有する。
【0046】
特に適したポリオールは、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、好ましくはポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0047】
上記したこれらのポリオール以外に、少量の低分子量の二価又は多価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−及び1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトールもしくはマンニトール、スクロースなどの糖、他の多価アルコール、上記2価及び多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、並びに上記アルコールの混合物を、末端イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーの製造において、添加することができる。
【0048】
市販のポリイソシアネート、特にジイソシアネートを、ポリウレタンポリマーを製造するためのポリイソシアネートとして使用することができる。
【0049】
適切なジイソシアネートの例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチル−ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リジン及びリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナート3,3,5−トリメチル−5−イソシアナートメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナート2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−及び1,4−ビス−(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、m−及びp−キシレンジイソシアネート(M−及びp−XDI)、m−及びp−テトラメチル−1,3−キシレンジイソシアネート、m−及びp−テトラメチル−1,4−キシレンジイソシアネート、ビス−(1−イソシアナート1−メチルエチル)−ナフタレン、2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナートベンゼン、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナートジフェニル(TODI)、上記イソシアネートのオリゴマーとポリマー、並びに上記イソシアネートの任意の混合物である。
【0050】
適切なシラン官能性ポリマーP1の例は、Hanse Chemie AG, Germanyから商品名polymer ST(例えばpolymer ST50)で、並びにBayer MaterialScience AG, Germanyから商品名Desmoseal(商標)で市販されている。
【0051】
第2の態様において、シラン官能性ポリマーPは、イソシアナートシランISと、イソシアネート基に対して反応性の官能性末端基、特にヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はアミノ基を有するポリマーと、の反応により得られるシラン官能性ポリウレタンポリマーP2である。この反応を、イソシアネート基とイソシアネート基に対して反応性の官能性末端基との化学量論比1:1で起こすか、又はイソシアネート基に対して反応性の官能性末端基のわずかに過剰な量で、例えば20℃〜100℃の温度で、随意に触媒を添加して起こす。
【0052】
適切なイソシアナートシランISは、次の式(IV)の化合物である:
【化4】
(式中、R、R、R及びaは、上述されている)。
【0053】
式(IV)の適切なイソシアナートシランISの例は、イソシアナートメチルトリメトシラン、イソシアナートメチルジメトキシメチルシラン、3−イソシアトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジメトキシメチルシラン、及び、ケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基又はイソプロポキシ基を有するその類似体である。
【0054】
好ましくは、このポリマーは、イソシアネート基に反応性の官能性末端基としてヒドロキシル基を有する。
【0055】
一方でヒドロキシル基含有ポリマーとして適しているのは、すでに記載した高分子量ポリオキシアルキレンポリオール、好ましくは0.02mEq/gの不飽和度と4,000〜30,000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオール、特に8,000〜30,000g/molの範囲の分子量を有するものである。
【0056】
また、他方で式(IV)のイソシアナートシランISとの反応に適しているのは、ヒドロキシル基含有、特にヒドロキシ末端ポリウレタンポリマーである。このようなポリウレタンポリマーは、少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応により得ることができる。この反応は、ポリオールとポリイソシアネートが通常の方法を使用して、例えば50℃〜100℃の温度で、任意選択的に適切な触媒を添加して、反応するようになっていることで反応が起き、ここで、ポリオールは、そのヒドロキシル基が、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して化学量論的過剰で存在するような速度で添加される。好適なのは、ヒドロキシル基対イソシアネート基が1.3:1〜4:1、特に1.8:1〜3:1の割合である。
【0057】
望む場合には、可塑剤を追加的に使用してポリウレタンポリマーを調製することができ、ここで、使用される可塑剤はイソシアネートに対して反応性の基は含まないものである。
【0058】
この反応で適切なのは、シラン官能性ポリウレタンポリマーP1を調製するために使用されるイソシアネート基含有ポリウレタンポリマーを調製するのに適しているとして上記したものと同じポリオールとポリイソシアネートである。
【0059】
例えば、適切なシラン官能性ポリマーP2は、Momentive Performance Materials Inc., USAから商品名SPUR+(商標)1010LM、1015LM及び1050MMで、並びにWacker Chemie AG, Germanyから商品名Geniosil(商標)STP−E15、STP−10及びSTP−E35で市販されている。
【0060】
第3の態様において、シラン官能性ポリマーPは、末端2重結合を有するポリマーのヒドロシリル化反応によって得られるシラン官能性ポリマーP3、例えばポリ(メタ)アクリレートポリマー又はポリエーテルポリマーであり、特にUS3971751号及びUS6207766号(その全開示は本明細書に組み込まれる)に記載されているアリル末端ポリオキシアルキレンポリマーである。
【0061】
例えば、適切なシラン官能性ポリマーP3は、Kaneka Corp.、Japanから商品名MS polymer(商標)S203H、S303H、S227、S810、MA903及びS943で、Silyl(商標)SAX220、SAX350、SAX400及びSAX725で、Silyl(商標)SAT350及びSAT400で、並びにXMAP(商標)SA100S及びSA310Sで、並びにAsahi Glass Co, Ltd., Japanから商品名Excestar(商標)S2410、S2420、S3430、S3630、W2450及びMSX931で市販されている。
【0062】
シラン官能性ポリマーPは、組成物全体に基づいて、通常10〜80wt%の量、特に15〜70wt%の量、好ましくは20〜40wt%の量で存在する。
【0063】
さらに本発明の組成物は、少なくとも1つの有機スズ化合物を含む。
【0064】
好適な有機スズ化合物は、ジアルキルスズ化合物であり、例えばジメチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、ジメチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズ−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジ−n−ブチルスズジカプリレート、ジ−n−ブチルスズジ−2,2−ジメチル−オクタノエート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジステアレート、ジ−n−ブチルスズジマレエート、ジ−n−ブチルスズジオレエート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジオキシド、ジ−n−オクチルスズ−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジ−n−オクチルスズジ−2,2−ジメチルオクタノエート、ジ−n−オクチルスズジマレエート、及びジ−n−オクチルスズジラウレートからなる群から選択されるようなものでなる。
【0065】
当然ながら、異なる有機スズ化合物の混合物を使用することが、ある場合には可能であるか好適でさえある。
有機スズ化合物の割合は、組成物全体に基づいて、0.01〜0.15wt%、特に0.05〜0.1wt%になる。
【0066】
さらに本発明の組成物は、少なくとも1つのチタネートを含有する。
【0067】
チタネート又は有機チタネートは、酸素原子を介してチタン原子に結合した少なくとも1つのリガンドを有する化合物に与えられた名称である。酸素−チタン結合を介してチタン原子に結合した適切なリガンドは、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボン酸基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロリン酸基、アセトアセテート基及びアセチルアセトネート基からなる群から選択されるものを含む。好適なチタネートは、例えば、テトラブチル又はテトライソプロピルチタネートである。
【0068】
特に適切なチタネートは、キレートリガンドとも呼ばれる、少なくとも一つの多座リガンドを有する。特に、多座リガンドは2座リガンドである。
【0069】
好ましくは、2座リガンドは、次の式(V)のリガンドである。
【化5】
【0070】
ここで、R21基は、水素原子、又は1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基、特にメチル基を表す。
22基は、水素原子、又は随意にヘテロ原子を有し、1〜8個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基を表し、特に水素原子を表す。
23基は、水素原子、又は1〜8個、特に1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜8個、特に1〜3個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルコキシ基を表す。
【0071】
チタネートは、特に好ましくは、次の式(VI)のチタネートである:
【化6】
【0072】
21、R22及びR23基は、上述されている。
24基は、2〜20個の炭素原子を有する直鎖の又は分岐したアルキル基、特にイソブチル−又はイソプロピル基を表す。
nは、1又は2の値、特に2を表す。
【0073】
好適なのは、R21基がメチル基を表し、R22基が水素原子を表し、R23基がメチル基又はメトキシ基もしくはエトキシ基を表し、かつR24基がイソブチル又はイソプロピル基を表す式(VI)のチタネートである。
【0074】
適切なチタネートは、Dorf Ketalから商品名Tyzor(商標)AA、GBA、GBO、AA−75、AA−65、AA−105、DC、BEAT、IBAYで市販されているか、又はBoricaから、商品名Tytan(商標)PBT、TET、X85、TAA、ET、S2、S4又はS6で市販されている。
【0075】
当然ながら、異なるチタネートの混合物を使用することが、ある場合には可能であるか好適でさえある。
チタネートの割合は、組成物全体に基づいて、0.05〜1wt%、好ましくは0.1〜0.6wt%、特に0.1〜0.3wt%になる。
【0076】
さらに、この組成物はまた、好ましくは少なくとも1種の充填剤を含有する。充填剤は、未硬化組成物のレオロジー特性、並びに硬化組成物の機械的特性や表面質感に影響を与える。適切な充填剤は、例えば、任意選択的に脂肪酸、特にステアリン酸で被覆された重質又は沈降炭酸カルシウム、硫酸バリウム(BaSO、バライタ又は重晶石としても知られている)、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、特に熱分解プロセスからの高度分散性の二酸化ケイ素、カーボンブラック、特に工業的に製造されたカーボンブラック、PVC粉末又は中空ビーズである。好適な充填剤は、炭酸カルシウム、焼成カオリン、カーボンブラック、高度分散二酸化ケイ素、及び難燃性充填剤、例えば水酸化物又は水和物、特にアルミニウムの水酸化物又は水和物、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0077】
異なる充填剤の混合物を使用することが、可能であるか有利でさえある。
充填剤の適切な量は、組成物全体に基づいて、例えば20〜60wt%、好ましくは30〜60wt%の範囲である。
【0078】
さらに、本発明の組成物はまた、他の成分を含んでもよい。このような成分の例は、可塑剤、例えば有機カルボン酸のエステル又はそれらの無水物、例えばフタル酸塩、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル又はフタル酸ジイソデシル、アジピン酸塩、例えばアジピン酸ジオクチル、アゼライン酸塩及びセバシン酸塩、ポリオール、例えばポリオキシアルキレンポリオール又はポリエステルポリオール、有機リン酸及び有機スルホン酸エステル又はポリブテン;溶媒;例えばポリエチレン製の繊維;染料;顔料;レオロジー改質剤、例えば増粘剤又はチキソトロープ剤、例えばWO02/48228A2号の第9〜11頁で「チキソトロピー付与剤(thixotropy endowing agent)」として記載されている種類の尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト又は熱分解法二酸化ケイ素;接着促進剤、例えばエポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、アンヒドリドシラン、又は1級アミノシランを有する上記シランの付加物、並びにアミノシラン又は尿素シラン;架橋剤、例えばシラン官能性オリゴマー及びポリマー;乾燥剤、例えばビニルトリメトキシシラン、α−官能性シラン、例えばN−(シリルメチル)−O−メチル−カルバメート、特にN−(メチルジメトキシシリルメチル)−O−メチル−カルバメート、(メタクリルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、N−フェニル−、N−シクロヘキシル−及びN−アルキルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム又はモレキュラーシーブ;例えば熱、光及び紫外線に対する例えば安定剤;難燃性物質;界面活性物質、例えば湿潤剤、平滑剤、脱気剤又は消泡剤;殺生剤、例えば殺藻剤、殺真菌剤又は真菌増殖抑制物質;並びに習慣的に水分硬化性組成物に使用される追加の物質である。
【0079】
さらに、組成物の硬化中に、特にシラン基との反応によりポリマーマトリックス中に結合されるいわゆる反応性希釈剤を使用することができる。
【0080】
組成物の保存寿命が、そのような成分の存在によって悪影響を受けないように、すなわち、保存中に特に塗布及び硬化特性が変化しないか又はわずかしか範囲しないように、組成物中に任意選択的に存在する上記成分のすべてを選択することが有利である。これは、記載した組成物の、特にシラン基の化学的硬化を引き起こす反応が、保存中に有意な程度には起きないことを意味する。したがって、言及された成分が、保存中に水を全く含まないか又は多くても微量しか含まないか又は放出しないことが、特に有利である。したがって、いくつかの成分を組成物中に混合する前に、これらを化学的又は物理的に乾燥させることが有利となることがある。
【0081】
上記の組成物は、好ましくは水分の排除下で製造され保存される。典型的には、組成物は保存安定性であり、すなわち、その塗布特性又は硬化後の特性が、その使用に関係する程度に変化することなく、ドラム、バッグ又はカートリッジなどの適切なパッケージ又は構成で、水分の排除下で数ヶ月から1年以上保存することができる。通常、保存安定性は、粘度又は押し出し力を測定することによって決定される。
【0082】
少なくとも1つの固体又は物品への記載された組成物の塗布中に、組成物に含まれるシラン基は水分と接触する。シラン基は、水分と接触すると加水分解する特性を有する。このプロセスでは、有機シラノールが生成し、その後、しかしそれに続く縮合反応で、有機シロキサンが生成する。触媒又は促進剤の使用を介して促進することができるこれらの反応の結果として、この組成物は最終的に完全に硬化する。このプロセスは、架橋として知られている。
【0083】
硬化に必要な水は、空気(大気湿度)に由来し得るか、又は前述の組成物を、例えば平滑剤の場合には、例えば塗装により、又は噴霧により、水含有成分と接触させることができ、又は水含有成分は、例えば静的ミキサーを使用して、例えば混入された水含有ペーストの形態で、例えば塗布時に、組成物に添加することができる。大気中の水分による硬化時に、組成物は外側から内側に硬化する。ここで硬化速度は、水の拡散速度、温度、大気湿度及び結合の幾何学的形状などのさまざまな要因によって決定され、一般に、硬化が進行するにつれて速度は低下する。
【0084】
さらに本発明は、水の存在下で、シラン官能性ポリマーを含有する組成物の架橋のための触媒又は促進剤系として、少なくとも一つのチタネートと共に少なくとも一つの有機スズ化合物の使用を含み、ここで、各場合に、有機スズ化合物の割合は組成物全体に基づいて0.01〜0.15wt%、チタネートの割合は0.05〜1wt%となる。
【0085】
特定の触媒又は促進剤系の使用は、硬化状態でシラン官能性ポリマーを含む組成物が、改善された機械的特性を有するが、それにもかかわらず、硬化中に短いスキン形成時間を有するという利点を有する。
【0086】
典型的には、本発明の組成物は、硬化状態で、すなわちこの場合、23℃で相対湿度50%で組成物を7日間硬化後に、≧2MPaの引張強度、≧450%の、特に≧500%の破壊伸び率、及び≧1.5MPaの引張せん断強度を有する。示された条件下での硬化中、スキン形成時間は典型的には2時間未満、特に1時間未満である。
示された値のための測定方法は、態様の枠組みの中で説明されている。
【0087】
さらに本発明は、水分硬化性接着剤、封止剤又はコーティングとして、特に建設部材封止剤としての、上記した組成物の使用を含む。接続又は拡張ジョイント用の低ヤング率建設部材封止剤としての使用を含む。
【0088】
本発明の組成物は、特に、2つの基質S1とS2を結合させる方法であって、
i)基質S1及び/又は基質S2に上記組成物を塗布する工程と、
ii)組成物のオープン時間内に、塗布された組成物上で、基質S1とS2とを接触させる工程と、
iii)組成物を水で硬化させる工程と、
を含み、基質S1とS2は互いに同じか又は異なる、方法で使用される。
【0089】
さらに、本発明の組成物はまた、封止又はコーティング方法であって、
i)基質S1上に、及び/又は2つの基質S1とS2との間に、前記組成物を塗布する工程と、
ii)組成物を、特に湿度の形態の水で硬化する工程と、
を含み、基質S1とS2は互いに同じか又は異なる、方法で使用することもできる。
【0090】
S1及び/又はS2として特に適しているのは、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、自然石、例えば花崗岩又は大理石、ガラス、ガラスセラミック、金属又は金属合金、木材、プラスチック及びラッカーからなる群から選択される基質である。
【0091】
本発明の組成物は、好ましくは構造的に粘性を有するペースト状稠度を有する。この種の組成物は、好ましくはビーズの形態で、適当な器具を用いて基質に塗布され、ここで、この有利な器具は基本的に丸いか又は三角形の断面積を有する。組成物を塗布するための適切な方法は、例えば、市販のカートリッジから、用手法で操作するか又は圧縮空気を使用して、又はドラム又はバケツから送達ポンプ又は押出機を用いる、任意選択的に塗布ロボットを用いる、塗布である。良好な塗布特性を有する本発明の組成物は、負荷と短いつるし状態の下で高い安定性を有する。すなわち、塗布後、これは塗布形態のままで維持され、したがって流れ去らず、塗布器具を除いた後に、ストリングは全く生成されないか又は非常に短いストリングのみが生成され、したがって基質は汚れない。
【0092】
本発明の組成物は、5〜45℃の温度範囲、好ましくは室温の範囲で塗布され、これらの条件下でさえ硬化される。
【0093】
さらに本発明は、水分、特に大気湿度の形態の水分での硬化後に、上記に記載の組成物から得られる硬化した組成物に関する。
【0094】
本発明の組成物により結合、封止、又は被覆される物品は、特に建造物、特に地上又は地下建物、工業的に製造された製品又は消費者製品、特に窓、家電、輸送手段、又は搬送手段のための付属品である。
記載された発明をさらに説明するために、以下に例が提示される。当然ながら、本発明は記載されたこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0095】
《試験方法》
0〜5%伸びでの弾性率、引張強度、及び破壊伸び率は、DIN53504(クロスヘッド速度:200mm/分)に従って、23℃で相対湿度50%で7日間硬化させた2mmの層厚さを有する膜で測定した。
【0096】
引張剪断強度は、ISO4587/DINEN1465に従って、Zwick/Roell Z005で測定し、ここで、各場合に、2つの同一のガラス基板を接合させ(接合表面12x25mm;層の厚さ4.0mm;測定速度20mm/分;温度23℃(特に明記しない限り))。組成物の硬化は、23℃、相対湿度50%で7日間行われた。
【0097】
ショアA硬度は、23℃、相対湿度50%で7日間硬化させた6mmの層厚を有する試験片で、DIN53505に従って、測定した。
【0098】
スキン形成時間(「不粘着時間」)は、23℃、相対湿度50%で測定した。スキン形成時間を決定するため、室温で接着剤の小さな部分を、約2mmの層厚で厚紙に塗布し、LDPEピペットで接着剤の表面を軽くたたいた時、ピペットに初めて残留物が残らなくなるまでに必要な時間を測定した。
【0099】
引裂伝播抵抗は、23℃、相対湿度50%で7日間硬化した2mmの層厚の膜で、DIN53515に従って、測定した。
【0100】
《シラン官能性ポリウレタンポリマーSHの製造》
窒素雰囲気下で、1000gのポリオールAcclaim(商標)12200(Bayer MaterialScience AG,Germany;低モノールポリオキシプロピレンジオール;OH価11.0mgKOH/g;含水量約0.02wt%)、46.17gのイソホロンジイソシアネート(Vestanat(商標)IPDI)、261.72gのフタル酸ジイソデシル(Palatinol(商標)Z)、及び0.14gのジ−n−ブチルスズジラウレート(Metatin(商標)K712、Acima AG、Switzerland)を、絶えず攪拌しながら90℃に加熱し、この温度で保持した。1時間の反応時間の後、0.70%(滴定)の遊離イソシアネート基含量が達成された。次に69.88gのN−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−アミノ−コハク酸ジエチルエステルを添加し、90℃でさらに撹拌を2〜3時間続けた。赤外分光法(2275〜2230cm−1)によってそれ以上の遊離イソシアネートを測定することができなくなると、直ちに反応を止めた。生成物を室温(23℃)まで冷却し、水分の排除下で保存した(理論的ポリマー含量=90%)。このようにして製造したシラン官能性ポリウレタンポリマーSHは、室温で液体である。
【0101】
以下のようにN−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−アミノ−コハク酸−ジエチルエステルを作成した:51.0gの3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(Silquest(商標)A−1110、Momentive Performance Materials Inc.、USA)を容器に入れた。充分な撹拌下で、49.0gのマレイン酸ジエチルエステル(Fluka Chemie GmbH、Switzerland)を室温でゆっくり加え、混合物を室温で2時間攪拌した。
【0102】
《接着剤の製造》
真空ミキサー中で、表1〜3に示した重量部に対応して、シラン官能性ポリマーSH、ジイソデシルフタレート(DIDP)、及びビニルトリメトキシシラン(乾燥剤、Momentive Performance Materials Inc.、USAからのSilquest(商標)A−171)を5分間よく混合した。その後乾燥させ、沈殿したチョーク(Socal(商標)U1S2、Solvay SA、Belgium)を60℃で15分間混練した。ヒーターをオフにし、N−(2−アミノエチル)−(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(接着促進剤、Momentive Performance Materials Inc.からのSilquest(商標)A−1120)、ジ−n−ブチル−スズジラウレート(DBTDL、Metatin(商標)K712、10%のDIDP溶液として加えられた)、及び/又はチタネート(Dorf KetalからTyzor(商標)IBAY)を、真空下で10分間処理して、均質なペーストを作成した。次に、これを内部にラッカー塗装したアルミニウム拡大プランジャーカートリッジ(internally lacquered aluminum expanding plunger cartridge)に充填した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】