特許第6302144号(P6302144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人千歳科学技術大学の特許一覧 ▶ 国立大学法人北海道大学の特許一覧 ▶ 株式会社 東北テクノアーチの特許一覧

特許6302144ゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法
<>
  • 特許6302144-ゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法 図000002
  • 特許6302144-ゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法 図000003
  • 特許6302144-ゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6302144
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20180319BHJP
   B60C 13/04 20060101ALI20180319BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20180319BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180319BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B60C13/04 Z
   B60C13/00 D
   B60C1/00 B
   B29D30/06
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-538752(P2017-538752)
(86)(22)【出願日】2017年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2017017216
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-92388(P2016-92388)
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506056871
【氏名又は名称】学校法人千歳科学技術大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】899000035
【氏名又は名称】株式会社 東北テクノアーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】下村 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】平井 悠司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 保孝
(72)【発明者】
【氏名】有田 稔彦
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−289334(JP,A)
【文献】 特開2015−218242(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/086363(WO,A1)
【文献】 特開昭63−302031(JP,A)
【文献】 特開2003−246209(JP,A)
【文献】 特開2001−279020(JP,A)
【文献】 特開2012−250575(JP,A)
【文献】 特開2012−056466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/02
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
B60C 1/00
B60C 13/00
C08L 9/00
C08K 3/04
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部に、型からの転写により形成され、微細凹凸部が一定の配列周期で配列された微細凹凸構造を有し、前記微細凹凸構造が設けられた領域が、構造色により他の領域と異なる色で視認されるゴム部材の製造方法であって、
前記一定の配列周期でパターン構造が配置されたマスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスクを金属または半導体材料で形成された基板上に配置し、前記基板をエッチングするエッチング工程と、
前記基板に未加硫ゴムを着接し、前記未加硫ゴムを加硫してゴム表面に前記微細凹凸構造を転写する転写工程と、
を含むことを特徴とするゴム部材の製造方法。
【請求項2】
前記構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて前記微細凹凸部の前記配列周期を決定する配列周期決定工程を更に備え、
前記マスク形成工程では、前記パターン構造の周期を前記配列周期決定工程で決定した前記配列周期に基づいて決定する、
ことを特徴とする請求項記載のゴム部材の製造方法。
【請求項3】
前記配列周期決定工程では、前記微細凹凸部の前記配列周期を650nm以下に決定する、
ことを特徴とする請求項2記載のゴム部材の製造方法。
【請求項4】
前記構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて前記微細凹凸部の凹凸高さを決定する凹凸高さ決定工程を更に備え、
前記エッチング工程では、前記基板のエッチング時間を制御することにより前記微細凹凸部の前記凹凸高さを前記凹凸高さ決定工程で決定した前記凹凸高さと一致させる、
ことを特徴とする請求項記載のゴム部材の製造方法。
【請求項5】
前記凹凸高さ決定工程では、前記微細凹凸部の前記凹凸高さを650nm以下に決定する、
ことを特徴とする請求項4記載のゴム部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造色により発色する領域を有するゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤをはじめとしたゴム製品の表面に文字やマーク等の情報を付加する場合、インクジェットプリンタ等でゴム表面にインクを付着させて印刷を行っている。
一方で、光の波長またはそれ以下の寸法の微細構造により発色が生じる構造色が知られており、各種の分野へと応用されている。
例えば、下記特許文献1には、構造色による発色を用いたカラーフィルタが開示されている。また、下記特許文献2には、構造色の発色の変化(波長変化)を測定することにより物体の歪を算出する技術が開示されている。特許文献1では、構造色を発生させる微細構造を型押しにより形成しており、特許文献2では、弾性体材料表面に微粒子を周期的に配列することにより構造色を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192676号公報
【特許文献2】特許4925025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のように、インクジェットプリンタによりタイヤに印刷を行った場合、走行中のゴムの伸縮(たわみ)によりゴム表面からインクが剥がれていくため、印刷した情報を長期間に渡って視認可能とするのが困難である。
また、上述のように構造色は各種の分野に応用されているが、特許文献1にように構造色を発生させる微細構造を型押しにより形成する方法や、複数の層を積層して構造色を発色させる方法などは、カラーフィルタ等の薄膜構造を有する製品に適用されており、またそのほとんどが透過光(回折光)に構造色を発生させるものであり、タイヤ等の透明度の低いゴム部材にそのまま適用することはできない。
また、特許文献2のように微粒子の配列により構造色を発生させる方法は、タイヤ製造時の加硫処理のように部材の変形を伴う加熱処理を行う必要がある部材には適用が困難である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ゴム部材の表面に長期に渡って視認可能な情報を付加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかるゴム部材の製造方法は、表面の少なくとも一部に、型からの転写により形成され、微細凹凸部が一定の配列周期で配列された微細凹凸構造を有し、前記微細凹凸構造が設けられた領域が、構造色により他の領域と異なる色で視認されるゴム部材の製造方法であって、前記一定の配列周期でパターン構造が配置されたマスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクを金属または半導体材料で形成された基板上に配置し、前記基板をエッチングするエッチング工程と、前記基板に未加硫ゴムを着接し、前記未加硫ゴムを加硫してゴム表面に前記微細凹凸構造を転写する転写工程と、を含むことを特徴とする。
請求項2の発明にかかるゴム部材の製造方法は、前記構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて前記微細凹凸部の前記配列周期を決定する配列周期決定工程を更に備え、前記マスク形成工程では、前記パターン構造の周期を前記配列周期決定工程で決定した前記配列周期に基づいて決定する、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかるゴム部材の製造方法は、前記配列周期決定工程では、前記微細凹凸部の前記配列周期を650nm以下に決定する、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかるゴム部材の製造方法は、前記構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて前記微細凹凸部の凹凸高さを決定する凹凸高さ決定工程を更に備え、前記エッチング工程では、前記基板のエッチング時間を制御することにより前記微細凹凸部の前記凹凸高さを前記凹凸高さ決定工程で決定した前記凹凸高さと一致させる、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかるゴム部材の製造方法は、前記凹凸高さ決定工程では、前記微細凹凸部の前記凹凸高さを650nm以下に決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
発明によれば、ゴム部材の少なくとも一部を構造色により他の領域と異なる色で表示するので、インクなどを用いて描画するよりも、ゴム表面の表示の耐久性を向上させる上で有利となる。
発明によれば、微細凹凸部の配列周期または凹凸高さを適宜変更することにより、ゴム部材の表面に任意の色で表示を行うことができる。
発明によれば、赤色をはじめとする任意の色で表示を行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる車両用タイヤ10の側面図である。
図2】ロゴマーク204部分の拡大図である。
図3】本発明と従来技術の耐久試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るゴム部材、タイヤおよびゴム部材の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態では、本発明に係るゴム部材を車両用タイヤに適用した例について説明する。
図1は、実施の形態にかかる車両用タイヤ10の側面図である。
車両用タイヤ10は、路面へ接地するトレッド面を有するトレッド部14、図示しないホイールと係合されるビード部16、それらトレッド部14とビード部16とを接続しタイヤ側面となるサイドウォール部12を含んで構成される。
トレッド部14が耐摩耗性を重視されるのに対して、サイドウォール部12は走行中の荷重による変形に耐えることが重視されており、その組成もトレッド部14とは異なっている。
より詳細には、本実施の形態では、サイドウォール部12は、ジエン系ゴムと、カーボンブラックと、シリカとを含有し、ジエン系ゴムは30〜70質量%の天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを含有し、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は20〜60m/gであり、カーボンブラックの含有量はジエン系ゴム100質量部に対して5〜45質量部であり、シリカの含有量はジエン系ゴム100質量部に対して15〜55質量部であり、カーボンブラックとシリカとの合計含有量はジエン系ゴム100質量部に対して30〜60質量部となっている。
【0009】
また、サイドウォール部12には、各種の情報が表示されている。
サイドウォール部12に表示される情報の一例としては、例えば車両用タイヤ10を製造するメーカー名202、メーカーのロゴマーク204、タイヤのブランド名206、タイヤの寸法208、ユニフォミティマーク214、軽点マーク216などが挙げられる。また、この他タイヤの製造番号や回転方向表示なども記載される。
【0010】
このうち、ユニフォミティマーク214および軽点マーク216は、タイヤの完成後(加硫後)、個々のタイヤを検査した上でインク等を用いて付される。
また、メーカー名202、メーカーのロゴマーク204、タイヤのブランド名206、タイヤの寸法208等は、車両用タイヤ10を加硫する際の金型(モールド)に形成された凹凸を、加硫時に転写することによって付される。
これら金型の凹凸によって転写される情報のうち、ロゴマーク204以外は車両用タイヤ10全体と同色であり、サイドウォール部12の表面に対する凹凸によって各情報を視認可能となっている。
一方、ロゴマーク204は、例えばメーカーのコーポレートカラー等、車両用タイヤ10の色とは異なる色で視認されるように形成されている。
【0011】
図2は、ロゴマーク204部分の拡大図であり、図2Aは斜視図、図2BはA−A断面図である。
ロゴマーク204の全域には微細凹凸構造30が設けられている。
微細凹凸構造30は、タイヤ表面32に微細凹凸部34が一定の配列周期で配列されて構成されている。この微細凹凸構造30が設けられた領域が、構造色により他の領域と異なる色で視認される。
ここで微細凹凸部とは、構造色を得るために用いられる突起や孔など従来公知の様々な構造であり、本実施の形態では曲面(あるいは平面)であるタイヤ表面32から突出する微細な突起である。
また、配列周期とは、本実施の形態では隣り合う微細な突起の中心間の距離、すなわちピッチである。ピッチは、図2Bの符号Lに示すように、ゴム部材(タイヤ)表面に沿った突起と凹部との長さの合計と一致する。
また、一定の配列周期とは、構造色を得るために用いられる従来公知の様々な周期(ピッチ)であり、微細凹凸構造30の全体において均一の値の場合もあり、連続的にあるいは段階的に変化させる場合もある。
微細凹凸部34の配列周期または凹凸高さは、構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて決定される。すなわち、可視光に分類される波長帯から、構造色として表現したい色に対応する波長を選択し、共鳴格子の原理により微細凹凸部34の配列周期または凹凸高さの具体的な寸法を決定する。
本実施の形態では、微細凹凸部34の配列周期または凹凸高さは、例えば650nm以下で構成される。これは、本願発明者らの実験の結果、微細凹凸構造30の配列周期または凹凸高さが650nm以下の範囲で構造色が認められたためである。
【0012】
本実施の形態では、微細凹凸部34はタイヤ表面32に対して直交する方向に延びる円柱である。円柱の上面3402は正円形であり、その直径Rはおよそ5μmである。また、隣り合う円柱間の距離Sは1μmであり、配列周期Lはおよそ6μmである。なお、図2では図示の便宜上、実際の寸法とは異なる比率で図示している。
ここで、本願発明者らは、微細凹凸部34の配列周期や円柱状の微細凹凸部34の直径は固定したまま、微細凹凸部34のタイヤ表面32からの高さ(凹凸高さ)Hを変更して複数のゴム部材を作成した。その結果、視認される面積が大きい順に以下のような構造色が視認された。複数の色が視認されるのは、構造色は観察角度によって色が異なるためである。
凹凸高さ650nm:赤、赤紫
凹凸高さ607nm:赤紫、赤、橙
凹凸高さ577nm:赤紫、橙
凹凸高さ536nm:橙、赤紫
凹凸高さ500nm:黄、緑、橙
以下、凹凸高さを小さくするほど青みが強くなる傾向にあった。
このように、微細凹凸部34の配列周期または凹凸高さを調整することにより、ゴム表面に任意の色で情報を表示することができる。例えばロゴマーク204部分を赤色で表示したい場合、凹凸高さを650nm程度にすればよい。
【0013】
つぎに、構造色を有するゴム部材の製造方法について説明する。
以下に説明するゴム部材の製造方法は、微細なパターン構造を有する鋳型を形成する工程(工程1および工程2:鋳型形成工程)と、鋳型に未加硫ゴムを着接し、未加硫ゴムを加硫してゴム表面に微細凹凸構造を転写する(工程3:転写工程)とによって構成される。
なお、以下の工程に先立って、ゴム部材上に形成したい構造色の色を決め、当該色(ゴム部材上で構造色として視認される色)に対応する可視光の波長に基づいて微細凹凸部記配列周期または凹凸高さを決定しておく(配列周期決定工程または凹凸高さ決定工程)。
【0014】
(工程1)ゴム表面に微細凹凸構造30を形成するため、一定周期でパターン構造が配置されたマスクを形成する(マスク形成工程)。
まず、マスク形成用基板(シリコン基板)にスパッタリング装置を用いてクロム(Cr)を約80nm成膜する。つぎに、クロム膜上にポジ型電子線レジストをスピンコート(300rpmで3秒、のち4000rpmで60秒)する。その後、150℃のホットプレートで3分間プリベークを行い、電子線レジストをコートした基板に電子線描画装置を用いて露光、パターニング後、現像液に60秒浸漬して現像を行う。なお、構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて微細凹凸部の配列周期を決定した場合、つまり構造色の発色を決めるパラメータとして微細凹凸部の配列周期を用いた場合、パターニング時のパターン構造の配列周期を配列周期決定工程で決定した配列周期に基づいて決定する。現像後、混酸クロムエッチング液に約60秒浸し、露出しているCrのみを選択的に溶かすことでマスク(フォトマスク)を作製した。
【0015】
(工程2)マスクを金属または半導体材料で形成された基板上に配置し、基板をエッチングする(エッチング工程)。
本実施の形態では、上記基板として単結晶シリコン基板を使用する。この基板をアセトン、メタノールの順に5分間超音波で洗浄し、基板上にポジ型フォトレジストをスピンコート(300rpmで3秒、のち5000rpmで60秒)する。つぎに、95℃のホットプレートで90秒プリベークする。これにより、レジストに含まれる有機溶剤を蒸発させて基板との密着性を向上させることができる。つづいて、フォトレジストをコートした基板にマスクアライナーと工程1で作製したフォトマスクを用いて露光を行い、現像液に浸すことで露光した箇所を溶出させてパターニングを行う。
パターニング後、ドライエッチング装置(パッシベーションガス:C,80sccm,エッチングガス:SF,130sccm,ボッシュプロセス)を用いて、基板のエッチングを行い、鋳型(シリコン鋳型)を作製する。なお、構造色として視認される色に対応する可視光の波長に基づいて微細凹凸部の凹凸高さを決定した場合、つまり構造色の発色を決めるパラメータとして微細凹凸部の凹凸高さを用いた場合、基板のエッチング時間を適宜制御することにより、微小凹凸部の凹凸高さを凹凸高さ決定工程で決定した凹凸高さと一致させることができる。
また、上記工程1および工程2(鋳型形成工程)では、フォトリソグラフィ技術を用いて微細凹凸構造を有する鋳型を作製する場合について説明したが、本発明にかかるゴム部材の製造方法はこれに限らず、従来公知の様々な手法を適用可能である。
【0016】
(工程3)エッチングした基板(鋳型)に未加硫ゴムを着接し、未加硫ゴムを加硫してゴム表面に微細凹凸構造を転写する(転写工程)。
シリコン鋳型に未加硫のゴムを載せ、80℃で10分間軟化させた後にプレスし、160℃で10分程度加硫した。
加硫後、シリコン鋳型から剥がしとり、ゴム表面に微細凹凸構造が転写されていることを確認した。微細凹凸構造が形成されている領域は、ゴム表面上の他の領域(平坦面領域)とは異なる色、すなわち微細凹凸構造による構造色で視認された。
【0017】
このように構造色で形成したロゴマーク204と、従来技術のようにインクジェットプリンタによる印字で形成したロゴマークとの耐久試験を実施した。具体的には、それぞれの方法で形成したロゴマーク表面(ゴム表面)を綿布で100回こすり、その表面状態および色の変化を目視観察した。
図3に耐久試験結果を示す。図3の表には、上から順に試料番号、発色方法、凹凸高さ、視認される色(発色)、および耐久試験結果を示した。耐久試験結果の欄では、表面状態および色が、共に変化がないものを○、色の脱落が観察されたものを×と表記した。
図3に示すように、インクジェットプリンタによる印字で形成したロゴマーク(比較例2)は耐久試験後にはインクが剥離して視認できなくなったが、構造色で形成したロゴマーク(実施例1〜3および比較例1)は耐久試験後にも視認状態に変化がなかった。
なお、構造色で形成したロゴマークのうち比較例1は、その凹凸高さが680nmであり、上述した構造色を発生する範囲(650nm以下)を外れているため、発色は認められなかった。
【0018】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両用タイヤ10は、ゴム部材の少なくとも一部を構造色により他の領域と異なる色で表示するので、インクなどを用いて描画するよりも、ゴム表面の表示の耐久性を向上させる上で有利となる。
また、微細凹凸部34の配列周期または凹凸高さを適宜変更することにより、ゴム部材の表面に任意の色で表示を行うことができる。
【0019】
なお、本実施の形態では、微細凹凸部34の形状を円柱形の突起としたが、これに限らず、構造色を表示するための構造として知られる従来公知の様々な形状を適用可能である。例えば微細凹凸部34の形状を、円錐状の突起や格子状の突起としてもよい。また、微細凹凸構造30をゴム表面に形成された孔や格子状の溝としてもよい。この場合も、孔の形状は例えば円筒形や円錐形などであってもよく、さらには円錐形に形成した孔の底部(円錐の頂点)に微粒子等を配置してもよい。
また、本実施の形態では、本発明に係るゴム部材を車両用タイヤに適用した例について説明したが、これに限らず、従来公知の様々なゴム部材、特に製造工程で加硫を行う部材に適している。
また、本実施の形態では、ロゴマーク204のみを構造色で表示するものとしたが、これに限らず、車両用タイヤ10のサイドウォール部12に表示される他の情報についても構造色で表示するようにしてもよい。また、ゴム部材の全体に微細凹凸構造30を形成し、ゴム部材全体が構造色で視認されるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、車両用タイヤ10のサイドウォール部12に表示される情報に本発明を適用したが、これに限らず車両用タイヤ10の他の箇所に表示される情報に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
10……車両用タイヤ、12……サイドウォール部、14……トレッド部、16……ビード部、30……微細凹凸構造、32……タイヤ表面、34……微細凹凸部、202……メーカー名、204……ロゴマーク、206……ブランド名、208……寸法、214……ユニフォミティマーク、216……軽点マーク。
【要約】
ゴム部材の一例である車両用タイヤ10は、その表面の少なくとも一部に、型からの転写により形成され、微細凹凸部34が一定の配列周期で配列された微細凹凸構造30を有し、微細凹凸構造30が設けられた領域が、構造色により他の領域と異なる色で視認される。微細凹凸構造30は車両用タイヤ10のサイドウォール部12に形成されており、微細凹凸構造30が設けられた領域は、ロゴマーク204等の情報を示す形状で形成されている。これにより、ゴム部材の表面に長期に渡って視認可能な情報を付加することができる。
図1
図2
図3