特許第6302157号(P6302157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302157
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ヒンダードフェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/68 20060101AFI20180319BHJP
   C07C 49/83 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20180319BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C07C45/68CSP
   C07C49/83 Z
   C09K15/08
   C09K19/54 C
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-242720(P2012-242720)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-91697(P2014-91697A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月17日
【審判番号】不服2017-5284(P2017-5284/J1)
【審判請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】門本 豊
(72)【発明者】
【氏名】楠本 哲生
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 冨永 保
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−33130(JP,A)
【文献】 特開平6−239782(JP,A)
【文献】 特表平6−506223(JP,A)
【文献】 特表平11−501664(JP,A)
【文献】 特開平5−301865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)を使用するアシルフェノール(D)の製造方法において、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)から選ばれる2種の混合物(E)及び有機溶媒に、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち混合物(E)の成分となっていない1種を加えるか、又は、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)から選ばれる1種である化合物(F)及び有機溶媒に、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち化合物(F)以外の2種を加えて、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)が反応する際に有機溶媒存在させ
フェノール(A)が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、Y及びYがtert−ブチル基を表し、Y、Y及びYが水素原子を表す。)で表される化合物であり、
カルボン酸(B)が、下記一般式(II)
【化2】
(式中、Gは炭素原子を表し、Rは下記一般式(III)
【化3】
(式中、Spは炭素原子数1から12のアルキレン基を表し、Xは単結合を表し、Aは無置換若しくは、各々独立してフッ素原子、炭素原子数1から5のアルキル基若しくは炭素原子数1から3のアルコキシ基によって置換されていてもよい1,4−フェニレン基、又は無置換若しくは、各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基若しくは炭素原子数1から3のアルコキシ基によって置換されていてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、Zは炭素原子数1から8のアルキレン基又は単結合を表し、nは0からの整数を表し、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)で表される基であり、mは2を表すが
数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物であり、
カルボン酸無水物(C)がトリフルオロ酢酸無水物であり、
有機溶媒がクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタンから選ばれる1種又は2種以上の有機溶媒である製造方法。
【請求項2】
フェノール(A)、カルボン酸(B)及び有機溶媒に対し、カルボン酸無水物(C)を加えることによる請求項記載の製造方法。
【請求項3】
フェノール(A)、カルボン酸無水物(C)及び有機溶媒に対し、カルボン酸(B)を加えることによる請求項記載の製造方法。
【請求項4】
カルボン酸(B)、カルボン酸無水物(C)及び有機溶媒に対し、フェノール(A)を加えることによる請求項記載の製造方法。
【請求項5】
反応温度が−100℃から200℃である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
反応温度が−20℃から100℃である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
反応温度が0℃から60℃である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒンダードフェノール骨格を有する化合物の製造法、当該製造法により得られた化合物から製造される化合物、当該製造法により得られた化合物を含有する組成物及び当該組成物を用いた樹脂、オイル、オイルフィルター、油脂、インキ、医薬品、化粧品、洗剤、液晶材料、農薬、ポリマー、樹脂、顔料、染料、粘着剤接着剤、印刷物、食品、光学異方体、表示素子又は電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
TFT液晶表示素子の課題として、同一の表示を長時間継続した場合に発生する「焼き付き」などの信頼性の問題がある。焼き付きには種々の原因が挙げられるが、その一つに液晶材料の光や熱による劣化によって引き起こされる電圧保持率の低下がある。通常、このようなTFT液晶材料の劣化を抑制する目的で、液晶材料に酸化防止剤を添加している。
【0003】
製造が容易な酸化防止剤として、カルボニル基が連結したヒンダードフェノールが知られている。これらの酸化防止剤は、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールとカルボン酸を用いて、酸無水物存在下、Friedel−Crafts反応によって製造される。しかしながら、従来報告されてきた反応条件によって製造された酸化防止剤は、液晶材料に添加しパネル化した場合に、熱又は光によってパネルの電圧保持率を低下させやすいといった問題があった(特許文献1、非特許文献1〜2)。この原因として、従来の反応条件によって酸化防止剤を製造した場合、通常の精製によって除去することが困難な極微量の副生成物が生じてしまうことが挙げられる(特許文献1、非特許文献1〜2)。その結果、特に高品質が求められるTFT液晶表示素子用材料において、この微量の不純物の影響によって電圧保持率の低下が引き起こされたものと考えられる。
【0004】
当該反応は分子間反応であるため、生産性向上のため反応時間を短縮するためには、反応液の濃度が高いことが好ましい。
【0005】
さらに、当該反応において使用する試薬、特にカルボン酸は、酸無水物への溶解性は比較的高いものの、酸無水物に対し不活性な有機溶媒への溶解性が極めて低い。そのため、ニートで混合する場合と比較し、有機溶媒を使用する場合では、反応系中に溶存するカルボン酸の濃度を大きく低下させてしまうと考えられ、生産性の観点から好ましくなかった。このことから、当該反応においては、各試薬をニートで混合しスラリー状混合物とした後に、撹拌を容易にするために極少量のジクロロメタンを潤滑剤として添加する製造方法(特許文献1)、及び各試薬をニートで混合しスラリー状混合物とした後にそのまま撹拌を行う製造方法(非特許文献1〜2)が知られていたにすぎなかった。
【0006】
このように、公知の製法によって製造した酸化防止剤は、上記のような問題があったため、TFT液晶表示素子用材料に添加した場合に、通常の精製工程のみで製造可能な、パネルの電圧保持率を低下させにくい酸化防止剤の製法の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5684204号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The Journal of Organic Chemistry、1982年、47巻、12号、2278−2285頁
【非特許文献2】Tetrahedron Letters、1981年、22巻、52号、5293−5296頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明が解決しようとする課題は、高品質なヒンダードフェノールの製造方法及び、当該製造方法により得られる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)を使用するアシルフェノール(D)の製造方法において、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)が反応する際に有機溶媒が存在する製造方法及び、当該製造方法により得られる化合物を提供し、更に当該化合物を中間体とする化合物並びに、当該化合物を使用した組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の製造方法により製造されるヒンダードフェノール骨格を有する化合物は、液晶材料等の組成物に添加した場合に、組成物の変質防止効果が高いことから、種々の組成物の構成部材として有用である。また、本願発明の製造方法により製造される化合物を含有する組成物は樹脂、オイル、オイルフィルター、油脂、インキ、医薬品、化粧品、洗剤、液晶材料、農薬、ポリマー、樹脂、顔料、染料、粘着剤接着剤、印刷物、食品、光学異方体、表示素子又は電子デバイスの用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)を使用するアシルフェノール(D)の製造方法において、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)が反応する際に有機溶媒が存在する製造方法を提供する。
【0013】
これらの実施形態において、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)から選ばれる2種の混合物(E)及び有機溶媒に、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち混合物(E)の成分となっていない1種を加えることが好ましい。フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち混合物(E)の成分となっていない1種を加える際、ニートのまま加えても良く、溶媒に溶解させた溶液で加えても良く、懸濁液で加えても良い。その際使用する溶媒は、混合物(E)と混合させるために用いた有機溶媒と同一であっても良く、異なっていても良い。
【0014】
さらにこれらの実施形態において、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)から選ばれる1種である化合物(F)及び有機溶媒に、フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち化合物(F)以外の2種を加えることが好ましい。フェノール(A)、カルボン酸(B)及びカルボン酸無水物(C)のうち化合物(F)以外の2種を加える際、2種の化合物を混合せず順次加えても良く、2種の化合物を混合せず同時に加えても良く、2種の化合物を混合して加えても良い。また、2種の化合物をニートのまま加えても良く、溶媒に溶解させた溶液で加えても良く、懸濁液で加えても良い。その際使用する溶媒は、化合物(F)と混合させるために用いた有機溶媒と同一であっても良く、異なっていても良い。
【0015】
さらにこれらの実施形態において、操作の容易さの観点からフェノール(A)、カルボン酸(B)及び有機溶媒に対し、カルボン酸無水物(C)を加えること、フェノール(A)、カルボン酸無水物(C)及び有機溶媒に対し、カルボン酸(B)を加えること、若しくは、カルボン酸(B)、カルボン酸無水物(C)及び有機溶媒に対し、フェノール(A)を加えることが好ましく、フェノール(A)、カルボン酸(B)及び有機溶媒に対し、カルボン酸無水物(C)を加えることがより好ましい。
【0016】
さらに、フェノール(A)が、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、Y、Y、Y、Y及びYは各々独立して、水素原子、炭素原子数1から18のアルキル基、炭素原子数1から18のアルケニル基又は炭素原子数1から18のアルキニル基を表すが、これら基中の水素原子が各々独立してフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基で置換されても良く及び/又はこれら基中の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−で置換されても良く、Y、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つの基は水素原子を表す。)
また、カルボン酸(B)が、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、Gは4価の有機基を表し、Rは下記一般式(III)
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、Spは1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−又は−S−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Xは−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY11=CY11−(式中、Y11は各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−又は単結合を表し、Aは1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、これらの基は無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良いが、このアルキル基は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、このアルキル基上の1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY21=CY21−(式中、Y21は各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)又は−C≡C−に置換されても良く、Zは−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCF−、−CFCH−、−CFCF−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−COO−CH−、−OCO−CH−、−CH−COO−、−CH−OCO−、−CY31=CY31−(式中、Y31は各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY41=CY41−(式中、Y41は各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)又は−C≡C−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、nは0から5の整数を表し、Aが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、Zが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)で表される基であり、mは1から4の整数を表すが、Rが複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。)
さらに一般式(I)で表される化合物は合成の容易さ、反応効率及び、液晶材料に使用する場合には液晶材料との相溶性の観点から、Yが炭素原子数1から8のアルキル基である場合が好ましく、Y及びYが炭素原子数1から8のアルキル基である場合がより好ましく、Yがイソプロピル基又はtert−ブチル基で、Yが炭素原子数1から8のアルキル基である場合がさらに好ましく、Yがイソプロピル基又はtert−ブチル基で、Yが炭素原子数1から8のアルキル基で、Yが水素原子を表す場合がさらにより好ましく、Y及びYがイソプロピル基又はtert−ブチル基で、Yが水素原子を表す場合がさらに好ましく、Y及びYがイソプロピル基又はtert−ブチル基で、Y、Y及びYが水素原子を表す場合がさらにより好ましく、Y及びYがtert−ブチル基で、Y、Y及びYが水素原子を表す場合が特に好ましい。
【0023】
また、一般式(II)で表される化合物は合成の容易さ、反応効率及び、液晶材料に使用する場合には液晶材料との相溶性の観点から、Gは炭素原子を表す場合が好ましく、Spは1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す場合が好ましく、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基を表す場合がより好ましく、炭素原子数1から20のアルキレン基を表す場合がさらに好ましく、炭素原子数1から12のアルキレン基を表す場合がさらにより好ましく、炭素原子数1から7のアルキレン基を表す場合がさらにより好ましく、炭素原子数1から3のアルキレン基を表す場合が特に好ましく、Xは各々独立して−O−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−又は単結合を表す場合が好ましく、各々独立して−O−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−又は単結合を表す場合がより好ましく、各々独立して−O−、−COO−、−OCO−又は単結合を表す場合がさらに好ましく、Aは各々独立して無置換又は、各々独立してハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルフラニル基又は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子により置き換えられても良く、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)又は−C≡C−に置換されても良い炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良い、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表す場合が好ましく、各々独立して無置換又は、各々独立してフッ素原子、塩素原子又は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良く、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−、−OCO−に置換されても良い炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良い、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表す場合がより好ましく、各々独立して無置換又は、各々独立してフッ素原子又は各々独立して1個以上の水素原子がフッ素原子により置き換えられても良く、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−、−OCO−に置換されても良い炭素原子数1から10のアルキル基によって置換されていても良い、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基を表す場合がさらに好ましく、各々独立して無置換又は、炭素原子数1から5のアルキル基、アルコキシ基又はアルカノイル基によって置換されていても良い、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基を表す場合がさらにより好ましく、各々独立して無置換又はメチル基、メトキシ基によって置換されていても良い1,4−フェニレン基若しくは無置換の1,4−シクロヘキシレン基を表す場合が特に好ましく、Zは各々独立して−O−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CHCH−、−OCO−CHCH−、−CHCH−COO−、−CHCH−OCO−、−CY=CY−(式中、Yは各々独立して水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又はシアノ基を表す。)、−C≡C−、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−、−OCO−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す場合が好ましく、各々独立して−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、1個の−CH−又は隣接していない2個以上の−CH−が各々独立して−O−、−COO−、−OCO−で置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す場合がより好ましく、各々独立して−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す場合がさらに好ましく、各々独立して−COO−、−OCO−、炭素原子数1から10のアルキレン基又は単結合を表す場合がさらにより好ましく、各々独立して−COO−、−OCO−、炭素原子数2から8のアルキレン基又は単結合を表す場合がさらにより好ましく、各々独立して−COO−、−OCO−、炭素原子数2から6の偶数のアルキレン基又は単結合を表す場合がさらにより好ましく、各々独立して−COO−、−OCO−又は単結合を表す場合がさらにより好ましく、各々独立して単結合を表す場合が特に好ましく、nは0から3の整数を表す場合が好ましく、0から2の整数を表す場合がより好ましく、0又は1を表す場合がさらに好ましく、0を表す場合がさらにより好ましく、
mは1から3の整数を表す場合が好ましく、1又は2を表す場合がより好ましい。
【0024】
カルボン酸無水物(C)はハロゲン原子によって置換されても良いアルキルカルボン酸無水物であることが好ましく、フルオロアルキルカルボン酸無水物であることがより好ましく、トリフルオロ酢酸無水物であることがさらに好ましい。
【0025】
以下にさらに具体的な実施形態を記載する。
【0026】
反応温度は、−100℃から200℃であることが好ましく、収率及び反応速度の観点から、−20℃から100℃であることがより好ましく、0℃から60℃であることがさらに好ましく、0℃から40℃であることがさらにより好ましく、0℃から室温以下であることが特に好ましい。
【0027】
反応溶媒としては有機溶媒であることが好ましく、非プロトン性の有機溶媒であることがより好ましい。具体的な反応溶媒としては例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、二硫化炭素、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、クロロベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸2−メトキシエチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、ピリジン、1−メチル−2−ピロリジノン、1,1,1−トリクロロエタン、トルエン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘプタン、ベンゼン、メチルイソブチルケトン、tert−ブチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリットが挙げられるが、収率、後処理及び入手の容易さの観点から、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロロエタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリットが好ましく、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−クロロブタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロロエタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテルがより好ましく、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−クロロブタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘプタンがさらに好ましい。また、反応溶媒は単一の溶媒であっても前記溶媒を2種類以上混合して用いても構わない。
【0028】
反応溶媒の量は、反応によって生じる反応熱を十分に逃がすことのできる量であれば特に制限は無いが、溶媒の量が少なすぎると反応熱が反応系に蓄積し副生成物を生じやすくなってしまう。特に、蓄積した反応熱により反応生成物がさらに過剰に反応してしまうと、高分子量の不純物を副生成してしまう。これら高分子不純物は極めて微量であることから通常の分析手法では直接定量することが困難である。また、分子構造が目的物と類似しているため、通常の精製操作によって除去することが困難である。しかしながら、極めて微量であっても、液晶材料に添加した場合、熱又は光によって電圧保持率を大きく低下させてしまうため、なるべく高分子量不純物が副生成しない反応条件が好ましい。また、反応試薬を全て混合する前に溶媒を加えておくことが、高分子量不純物の抑制に有効であると考えられる。一方、溶媒の量が多すぎると反応物の濃度が低下し、反応速度が著しく低下してしまう。以上の観点から、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒の量が0.01ミリリットルから100リットルであることが相応しく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が0.1ミリリットルから10リットルであることがより相応しく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が0.15ミリリットルから1リットルであることがさらに相応しく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が0.2ミリリットルから500ミリリットルであることが好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が0.4ミリリットルから100ミリリットルであることがより好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が0.5ミリリットルから50ミリリットルであることがさらに好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が1ミリリットルから20ミリリットルであることがさらにより好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が2ミリリットルから15ミリリットルであることがさらにより好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が2.5ミリリットルから10ミリリットルであることがさらにより好ましく、フェノール(A)1グラムに対し、溶媒が3ミリリットルから8ミリリットルであることが特に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。以下、区別が容易になるように、本願発明の製造方法によって製造した化合物を「I−1」のように表記し、公知の製造方法によって製造した同一の構造を有する化合物を「I−1C」のように末尾に「C」を付けて表記する。化合物の純度はGC又はUPLCによって分析した。分析条件は以下の通りである。
(GC分析条件)
カラム:Agilent Technologies,J&W Column DB−1HT,15m×0.25mm×0.10μm
温度プログラム:100℃(1分間)−(20℃/分間)−250℃−(10℃/分間)−380℃−(7℃/分間)−400℃(2.64分間)
注入口温度:350℃
検出器温度:400℃
(UPLC分析条件)
カラム:Waters ACQUITY UPLC BEH C18,2.1×100mm,1.7μm
溶出溶媒:アセトニトリル/水(90:10)
流速:0.5mL/min
検出器:UV,210nm
カラムオーブン:40℃
(実施例1)式(I−1)で表される化合物の製造
【0030】
【化4】
【0031】
撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、式(I−1−1)で表される化合物 60.00g(0.291モル)、式(I−1−2)で表される化合物 25.83g(0.148モル)、ジクロロメタン 180mLを加えた。氷冷しながらトリフルオロ酢酸無水物 67.19g(0.32モル)を15℃以下で滴下した。室温で20時間撹拌した後、水500mLに注いだ。ジクロロメタン100mLを加え、分液処理した。有機層を5回食塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製し、濃縮液が217gになるまで溶媒を留去した。ヘキサン400mLを加え、−20℃で静置した後、濾過した。アセトン180mLを加え加熱し懸濁させた後、氷冷し、ヘキサン180mLを加え、−20℃で静置した後、濾過することにより、目的の式(I−1)で表される化合物 63.03gを得た。
H NMR(CDCl)δ 1.45(m,40H),1.75(quin,4H),2.92(t,4H),5.70(s,2H),7.85(s,4H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 24.6,29.4,30.1,34.3,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
融点 172℃
LRMS(EI)m/z 550
(比較例1)式(I−1C)で表される化合物の製造
【0032】
【化5】
【0033】
撹拌装置及び滴下ロートを備えたフラスコに、式(I−1−1)で表される化合物 6.00g(0.029モル)、式(I−1−2)で表される化合物 2.58g(0.015モル)を加えた。氷冷しながらトリフルオロ酢酸無水物 6.72g(0.032モル)を加えた。室温で5時間撹拌した後、ジクロロメタン50mLで希釈し、水50mLに注いだ。有機層を5回食塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製し、同様の操作で懸濁洗浄し、目的の式(I−1C)で表される化合物 6.30gを得た。
H NMR(CDCl)δ 1.45(m,40H),1.75(quin,4H),2.92(t,4H),5.70(s,2H),7.85(s,4H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 24.6,29.4,30.1,34.3,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
融点 172℃
LRMS(EI)m/z 550
(実施例2)式(I−2)で表される化合物の製造
【0034】
【化6】
【0035】
撹拌装置を備えた反応容器に、式(I−2−1)で表される化合物 1.43g(12.1ミリモル)及び1,2−ジクロロエタン 20mLを加えた。式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)及びトリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)を加えた。室温で18時間撹拌した後、水100mLに注いだ。ジクロロメタン100mLを加え、分液処理した。有機層を5回食塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製し、ヘキサンで分散洗浄することにより、目的の式(I−2)で表される化合物 4.91gを得た。
H NMR(CDCl)δ 1.47(s,36H),2.92(t,4H),5.70(s,2H),7.85(s,4H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 30.1,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
LRMS(EI)m/z 494
(比較例2)式(I−2C)で表される化合物の製造
【0036】
【化7】
【0037】
撹拌装置を備えた反応容器に、式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)、式(I−2−1)で表される化合物 1.43g(12.1ミリモル)、トリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)を加えた。その後、ジクロロメタン 0.5mLを添加し、室温で6時間撹拌した。ジクロロメタン50mL、水50mLを加え、分液処理した。有機層を5回食塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製し、ヘキサンで分散洗浄することにより、目的の式(I−2C)で表される化合物 5.02gを得た。
H NMR(CDCl)δ 1.47(s,36H),2.92(t,4H),5.70(s,2H),7.85(s,4H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 30.1,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
LRMS(EI)m/z 494
(実施例3)式(I−3)で表される化合物の製造
【0038】
【化8】
【0039】
撹拌装置及び滴下ロートを備えた反応容器に、式(I−3−1)で表される化合物 3.15g(24.2ミリモル)、トリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)、ヘキサン 30mLを加えた。氷冷しながら式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)をジクロロメタン15mLに溶解させた溶液を滴下した。室温で2日間撹拌した後、水100mLに注いだ。トルエン100mLを加え、分液洗浄処理した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製することにより、目的の式(I−3)で表される化合物 6.01gを得た。
H NMR(CDCl)δ 0.89(t,3H),1.38(m,8H),1.47(s,18H),2.92(t,2H),5.70(s,1H),7.85(s,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 14.1,22.7,29.4,29.6,30.1,34.3,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
LRMS(EI)m/z 318
(比較例3)式(I−3C)で表される化合物の製造
【0040】
【化9】
【0041】
撹拌装置を備えた反応容器に、式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)、式(I−3−1)で表される化合物 3.15g(24.2ミリモル)、トリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)を加えた。室温で6時間撹拌した後、水50mLを加えた。トルエン50mLを加え、分液洗浄処理した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製することにより、目的の式(I−3C)で表される化合物 6.21gを得た。
H NMR(CDCl)δ 0.89(t,3H),1.38(m,8H),1.47(s,18H),2.92(t,2H),5.70(s,1H),7.85(s,2H)ppm.
13C NMR(CDCl)δ 14.1,22.7,29.4,29.6,30.1,34.3,38.0,125.7,128.9,135.6,158.2,199.9ppm.
LRMS(EI)m/z 318
(実施例4)式(I−4)で表される化合物の製造
【0042】
【化10】
【0043】
撹拌装置を備えた反応容器に、式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)、トリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)、ジクロロメタン 15mLを加えた。式(I−4−1)で表される化合物 5.15g(24.2ミリモル)を加えた。室温で2日間撹拌した後、水100mLに注いだ。ジクロロメタン100mLを加え、分液洗浄処理した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製することにより、目的の式(I−4)で表される化合物 7.75gを得た。
LRMS(EI)m/z 400
(比較例4)式(I−4C)で表される化合物の製造
【0044】
【化11】
【0045】
撹拌装置を備えた反応容器に、式(I−1−1)で表される化合物 5.00g(24.2ミリモル)、式(I−4−1)で表される化合物 5.15g(24.2ミリモル)、トリフルオロ酢酸無水物 5.09g(24.2ミリモル)を加えた。5分間撹拌した後、ヘキサン0.5mLを加えた。室温で6時間撹拌した後、水50mLを加えた。ジクロロメタン50mLを加え、分液洗浄処理した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アルミナ)により精製することにより、目的の式(I−4C)で表される化合物 7.80gを得た。
LRMS(EI)m/z 400
(実施例5)式(I−5)で表される化合物の製造
【0046】
【化12】
【0047】
実施例4記載の製造方法において式(I−1−1)で表される化合物に換えて式(I−5−1)で表される化合物を用い、式(I−4−1)で表される化合物に換えて式(I−5−2)で表される化合物を用いる以外は同様にして、式(I−5)で表される化合物を得た。
LRMS(EI)m/z 298
(比較例5)式(I−5C)で表される化合物の製造
【0048】
【化13】
【0049】
比較例4と同様の方法によって、式(I−5C)で表される化合物を得た。
LRMS(EI)m/z 298
(実施例6)式(I−6)で表される化合物の製造
【0050】
【化14】
【0051】
実施例4記載の製造方法において式(I−1−1)で表される化合物に換えて式(I−6−1)で表される化合物を用い、式(I−4−1)で表される化合物に換えて式(I−6−2)で表される化合物を用いる以外は同様にして、式(I−6)で表される化合物を得た。
LRMS(EI)m/z 230
(比較例6)式(I−6C)で表される化合物の製造
【0052】
【化15】
【0053】
比較例4と同様の方法によって、式(I−6C)で表される化合物を得た。
LRMS(EI)m/z 230

(実施例7〜12及び比較例7〜12)
下記化合物によって構成される液晶組成物を調製し、母体液晶(X)とした。
【0054】
【化16】
【0055】
この母体液晶(X)に、実施例1〜6及び比較例1〜6で製造した評価対象の化合物0.1%を添加し溶解させた。この評価対象の液晶組成物を、セルギャップ3.5μmでホメオトロピック配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに真空注入法で注入することにより、評価対象の垂直配向性液晶表示素子(XI−1)から(XI−12)を作製した。下記表に評価対象の化合物と液晶表示素子の関係を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
[電圧保持率(VHR)の測定方法]
測定装置は東陽テクニカ社製の多チャンネル液晶表示装置「Model6254」を使用した。測定温度25℃、±1Vの矩形波からなるソース電圧を液晶デバイスに64マイクロ秒印加したのち遮断し、16.67m秒間中の電圧の減衰量を測定し、減衰が全くない場合を100%とした場合の、これに対する面積比率をそれぞれ電圧保持率(VHR(初期)(%))として算出した。また、表示素子を80℃で2時間加熱した後に測定した電圧保持率をVHR(加熱)(%)、ウシオ電機社製超高圧水銀ランプUSH−500Dで30分間UV照射した後に測定した電圧保持率をVHR(UV)(%)とした。結果を下表に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
このように、本願発明の製造方法によって製造された化合物を含有する液晶表示素子は初期の電圧保持率が比較例と同等若しくはそれ以上であり、保持率低下を引き起こす不純物含有量が少ないことがわかる。また、本願発明の製造方法によって製造された化合物を含有する液晶表示素子は、加熱後及び光照射後の電圧保持率が比較例よりも高いことから、本願発明の製造方法によって製造された化合物は、熱又は光に対する耐久性が高いことがわかる。比較例の製造方法によって製造された化合物はいずれも、正確な定量は困難であったが、詳細な分析によって高沸点不純物を含有することが示唆された。一方の本願発明の製造方法によって製造された化合物はいずれも、同様に正確な定量は困難であったが、詳細な分析によって高沸点不純物を全く含有していないか又はほとんど含有していないことが示唆された。以上の結果から、本願発明の製造方法によって製造された化合物を含有する表示素子は電圧保持率の低下を引き起こしにくいことから、液晶表示素子用の材料として有用である。