(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)オルガノポリシロキサンが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)2,000以上10,000以下を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、詳細に説明する。
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分は、下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【化2】
(1)
(式(1)中、R
1は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜12の、不飽和結合を有してもよい一価脂肪族炭化水素基であり、R
3は炭素数7〜50の一価脂環式エポキシ基であり、RはR
1、R
2、及びR
3のための選択肢から選ばれる基であり、0≦k<0.5、0.1≦m≦0.5、0≦n<0.8、0.01≦p≦0.5、0≦q<0.6であり、k+m+n+p+q=1であり、但し、k及びnは同時に0でない。上記括弧内にある各シロキサン単位の結合順序は制限されないが、−O
1/2Xの少なくとも2つは末端に結合されており、Xは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、rは−O
1/2Xの個数であり、q=0のときrは2であり、q≠0のときrは(RSiO
3/2)単位の個数+2である)
【0011】
上記式(1)において、R
1は炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜9の一価芳香族炭化水素基である。該一価芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基や、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられる。中でも好ましくは、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、及び2−フェニルプロピル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0012】
上記式(1)において、R
2は炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6の、不飽和結合を有してよい、一価脂肪族炭化水素基である。該一価脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基などの飽和一価脂肪族炭化水素基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基などが挙げられる。中でも好ましくは飽和一価脂肪族炭化水素基であり、特にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、及びヘプチル基が好ましく、更に好ましくはメチル基である。
【0013】
上記式(1)において、R
3は炭素数7〜50、好ましくは炭素数7〜40、さらに好ましくは炭素数7〜30の一価脂環式エポキシ基である。該脂環式エポキシ基は、例えば、下記構造で表される。
【化3】
上記構造中、R’は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。上記において、R
4は炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等のオキシアルキレン基(即ち−OR
5−、ここでR
5はアルキレン基でありシクロヘキサン環に結合する)、カルボニル基、及びオキシカルボニル基(即ち−OC(=O)−であり、カルボニル基側がシクロヘキサン環に結合する)が挙げられる。
【0014】
中でも、下記式(2)で表される脂環式エポキシ基が好ましい。
【化4】
(2)
(R
4は好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくはエチレン基である。)
特に好ましくは下記構造の脂環式エポキシ基(β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル基)である。
【化5】
【0015】
上記式(1)において、Rは、上記R
1、R
2、及びR
3の為に記載した選択肢から選ばれる基である。
【0016】
上記式(1)は組成式であり、k、m、n、p、及びqは、各シロキサン単位の個数比(モル比)を示す。0≦k<0.5、0.1≦m≦0.5、0≦n<0.8、0.01≦p≦0.5、及び0≦q<0.6であり、k+m+n+p+q=1である。但し、k及びnは同時に0でない。上記括弧内にある各シロキサン単位の結合順序は制限されない。
【0017】
pは脂環式エポキシ基含有D単位(即ち、(R
3R
2SiO
2/2)単位)の含有量(モル比)を示す。好ましくは0.03≦p≦0.5であり、さらに好ましくは0.05≦p≦0.5であり、特に好ましくは0.05≦p≦0.4である。pの値が上記範囲内にあることにより、低粘度を有するオルガノポリシロキサンを提供することができる。
【0018】
mは一価芳香族炭化水素基を2つ有するシロキサン単位(即ち、(R
12SiO
2/2)単位)の含有量(モル比)を示す。mは好ましくは0.12≦m≦0.5、さらに好ましくは0.14≦m≦0.48であり、特には0.15≦m≦0.45である。mの値が上記範囲内にあることにより、優れた低ガス透過性を有する硬化物を提供することができる。
【0019】
本発明において低ガス透過性及び低粘度を両立するためには、上記(R
12SiO
2/2)単位に併せて、(R
22SiO
2/2)単位及び(R
1R
2SiO
2/2)単位の少なくとも1つを含むことが必要である。当該単位を含まないとオルガノポリシロキサンの低ガス透過性及び低粘度を両立できない。従って、n及びkは共に0であってはいけない。nの好ましい範囲は0<n≦0.7、さらに好ましくは0.5≦n≦0.78、特には0.6≦n≦0.7である。kの好ましい範囲は0<k≦0.45、さらに好ましくは0.1≦k≦0.38、特には0.2≦k≦0.35である。
【0020】
(R
12SiO
2/2)単位を(R
1R
2SiO
2/2)単位との組合せで含む場合、mは好ましくは0.12≦m≦0.2、さらに好ましくは0.14≦m≦0.19、特には0.15≦m≦0.18であり、nは好ましくは0.5≦n≦0.78、さらに好ましくは0.6≦n≦0.7であるのがよい。当該組合せで含むことにより低ガス透過性及び低粘度を良好に達成することができる。
【0021】
(R
12SiO
2/2)単位を(R
22SiO
2/2)単位との組合せで含む場合、mは好ましくは0.3≦m≦0.5、さらに好ましくは0.35≦m≦0.48、特には0.38≦m≦0.45であり、kは好ましくは0.1≦k≦0.45、さらに好ましくは0.2≦k≦0.38であるのがよい。当該組合せで含むことにより低ガス透過性及び低粘度を良好に達成することができる。
【0022】
本発明のオルガノポリシロキサンはT単位(分岐)を有してよい。上記においてqで示す単位はT単位(即ち、(RSiO
3/2)単位)の含有量(モル比)を示す。qの値は、好ましくは0≦q≦0.5であり、さらに好ましくは0≦q≦0.3、特に好ましくは0≦q≦0.1である。
【0023】
上記オルガノポリシロキサンは末端が−O
1/2Xで封鎖されている。Xは水素原子または、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。rは1分子中に含まれる−O
1/2Xの個数を意味する。q=0のときrは2であり、q≠0のときrは(RSiO
3/2)単位の個数+2である。Xは好ましくは水素原子またはメチル基であり、特にはメチル基である。
【0024】
上記オルガノポリシロキサンにおいて一価芳香族炭化水素基(R
1)の個数は、R、R
1、R
2、及びR
3の合計個数のうち40%以上95%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは45%以上75%以下であり、特に好ましくは50%以上65%以下である。当該範囲内であることにより、耐熱性、耐UV性及び低ガス透過性をより向上することができる。一価芳香族炭化水素基の含有量が上記上限値より大きいと組成物の粘度が非常に高く、作業性が悪くなる。一価芳香族炭化水素基の含有量が上記下限値より小さいと、十分な低ガス透過性を有する硬化物が形成できない。上記一価芳香族炭化水素基(R
1)は好ましくはフェニル基である。
【0025】
上記オルガノポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)2,000以上10,000以下が好ましく、より好ましくは2,500以上6,000以下である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば作業性が良好な組成物となり、光半導体素子を封止する際に取り扱いやすい。また当該組成物から得られる硬化物は光半導体封止材として十分な機械的特性を有する。
【0026】
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記式で示される構造が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
上記各式において、k、m、n、p、q、及びrは上記の通りである。上記括弧内にある各シロキサン単位の結合順序は制限されない。Meはメチル基を示す。Xは水素原子またはメチル基である。
【0027】
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの製造方法は特に制限されるものではない。(R
22SiO
2/2)単位、(R
12SiO
2/2)単位、(R
1R
2SiO
2/2)単位、(R
3R
2SiO
2/2)単位、及び(RSiO
3/2)単位の原料となる、シラノール基またはアルコキシシリル基を1分子中に少なくとも2個有する有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒存在下、縮合反応させることによって得られる。R
1、R
2、R
3、及びRは上記の通りである。原料化合物の反応比率は、各シロキサン単位のモル比が上記した範囲となるように適宜調整されればよい。
【0028】
(R
12SiO
2/2)単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば下記式で示すジフェニルシランジオールが挙げられる。
【化9】
【0029】
(R
3R
2SiO
2/2)単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式で示す脂環式エポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【化10】
(式中、R
2は上記の通りであり、好ましくはメチル基である)
【0030】
(R
3SiO
3/2)単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば、下記式で示す脂環式エポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【化11】
【0031】
(R
22SiO
2/2)単位、及び(R
1R
2SiO
2/2)単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば下記式(7)で示すオルガノ(ポリ)シロキサンが挙げられる。
【化12】
(7)
(式(7)中、R
6はR
1またはR
2であり、R
1及びR
2は上記の通りであり、Xは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。eは1〜20の整数である)
【0032】
上記式(7)で表されるシラン化合物としては下記式で示すメチルジアルコキシシランが挙げられる。好ましくはジメトキシシランである。
【化13】
(上記式においてX及びR
6は上述の通りであり、好ましくは、Xは水素原子またはメチル基であり、R
6はメチル基またはフェニル基である。)
【0033】
上記式(7)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、繰返し単位数2〜10を有する、下記式で示すジアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
【化14】
(上記式においてX及びR
6は上述の通りであり、好ましくは、Xは水素原子またはメチル基であり、R
6はメチル基またはフェニル基である。e''は2〜10の整数である。)
【0034】
(RSiO
3/2)単位の原料となる有機ケイ素化合物としては、例えば下記式(8)で示すオルガノ(ポリ)シロキサンが挙げられる。
【化15】
(8)
(式(8)中、Rは上記の通りであり、R
7は炭素数1〜12の一価脂肪族炭化水素基あるいは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、少なくとも1のR
7は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Xは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。eは1〜20の整数である)
【0035】
上記式(8)で表されるシラン化合物としては下記式で示すトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくはトリメトキシシランである。
【化16】
(上記式においてX及びRは上述の通りであり、好ましくは、Xは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはフェニル基である。)
【0036】
上記式(8)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、1分子中に加水分解性基を3つ以上有し、繰返し単位数2〜5を有する、下記に示すトリアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。
【化17】
(上記式においてX及びRは上述の通りであり、好ましくは、Xは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはフェニル基である。e''は2〜5の整数である。)
【0037】
上記オリゴマーの中でも、反応性、作業性、低ガス透過性の観点から、ジメトキシシランのオリゴマーが特に好適である。
【0038】
上記縮合反応は従来公知の触媒を使用して行えばよい。例えば、フェニル基を含有する両末端シラノール基及び/又はアルコキシ基を有するオルガノ(ポリ)シロキサンと、脂環式エポキシ基等の置換基を有するアルコキシシラン化合物との縮合反応として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びテトラメチルアンモニア水酸化物、ジアザビシクロウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど強塩基類を用いる方法がある。しかし当該方法は、縮合反応中にシロキサン結合(Si−O−Si)の切断および再配列を起こす恐れがある。また当該製造方法ではフェニル基を有する環状シロキサンが大量に生成するという問題もある。
【0039】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造方法としては、オルガノポリシロキサン鎖の再配列を最小限に留め、構造を制御できる方法が望ましい。従って、例えば、下記特許文献3〜6に記載されるような特定の触媒を使用するのが好ましい。
【特許文献3】特開平2−235933号公報
【特許文献4】特開平3−197486号公報
【特許文献5】特表2006−508216号公報
【特許文献6】特開2014−55234号公報
【0040】
特許文献3には、ナトリウムまたはカリウムのホウ酸塩またはリン酸塩を触媒として用いる、オルガノシリコーン縮合生成物の製造方法が記載されている。特許文献4には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、酸化物あるいは塩基性金属塩から選ばれる少なくとも1種の触媒を用いる、ポリオルガノシロキサンの製造方法が記載されている。特許文献5には、プロトン性溶媒の存在下でマグネシウムおよびカルシウムの水酸化物を触媒としてシラノール基含有シロキサンとアルコキシシランの縮合反応を行うことが記載されている。特許文献6には、周期表第2族元素の水酸化物、前記水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種をシランカップリング剤で表面処理して得られたものを触媒として使用する、オルガノシリコーン縮合物の製造方法が記載されている。これらの製造方法を使用することにより、オルガノポリシロキサン鎖の構造を好適に制御することができる。
【0041】
上記特許文献3〜6に記載される触媒は固体であるため、得られるオルガノポリシロキサンから触媒を濾過により容易に除去することができる。当該利点は、例えば光学材料や電子材料など、使用する材料に精密な制御を必要とする分野や残留不純物が許容されない分野において有利である。従って、当該方法で製造されるオルガノポリシロキサンは光半導体素子封止用樹脂組成物に好適に使用できる。
【0042】
本発明のオルガノポリシロキサンを製造するための特に好ましい触媒としては、周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、第2族元素の化合物と称す)が挙げられる。第2族元素の化合物は、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の縮合反応を進行することができる触媒機能を有する化合物であればよい。例えば、水酸化ラジウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化バリウム八水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化ストロンチウム八水和物、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムなどが挙げられる。中でも、水酸化バリウム八水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム、酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化ストロンチウム八水和物が好ましく、特には、水酸化バリウム、及び水酸化ストロンチウムが好ましい。
【0043】
触媒の量は、縮合反応に供する原料有機ケイ素化合物の合計モル量に対する触媒のモル量が、0.0001〜20mol%となる量、好ましくは0.01〜10mol%となる量、より好ましくは0.1〜1mol%となる量がよい。触媒の量が上記範囲内であれば、縮合反応において十分な触媒効果を得ることができ、また、反応後に濾過により触媒を除去する工程において、濾紙が目詰まりすることなく目的の化合物を効率良く得ることができるため好ましい。
【0044】
(B)硬化剤
硬化剤は、エポキシ基と反応性の官能基を有する従来公知の硬化剤を使用すればよい。例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤が挙げられる。本発明において「エポキシ基と反応性を有する官能基」とは、アミン系硬化剤が有するアミノ基、フェノール系硬化剤が有するフェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤が有する酸無水物基を意味する。尚、酸無水物系硬化剤における酸無水物基は−CO−O−CO−で表される。中でも酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0045】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物などを挙げることができ、これらのうち、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその誘導体が好ましい。
【0046】
(B)硬化剤の配合量は、(A)成分中のエポキシ基の合計数に対する(B)成分中のエポキシ基と反応性を有する官能基の個数の比が0.3〜1となる量、好ましくは0.4〜0.8となる量である。上記下限値以上であれば、硬化物の耐熱性、及び透明性が向上する。また上記上限値以下であれば硬化物の機械特性が向上するため好ましい。
【0047】
(C)硬化触媒
硬化触媒は特に制限されるものでなく、シリコーン樹脂組成物に従来使用されている硬化触媒から選択すればよい。例えば、テトラブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどの第四級ホスホニウム塩、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 フェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 オクチル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7p−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 ギ酸塩等の第四級アンモニウム塩、オクチル酸亜鉛、ナフチル酸亜鉛等の有機カルボン酸塩、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミキレート化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。中でも第四級ホスホニウム塩、及び第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0048】
硬化触媒の配合量は特に制限されず(A)成分と(B)成分の反応を促進する有効量(触媒量)であればよい。好ましくは(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.05〜1.5質量部であるのがよい。硬化触媒の配合量が前記下限値より少ないと、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果が十分得られないおそれがある。また硬化触媒の配合量が前記上限値より多いと、硬化時やリフロー試験時の変色の原因となるおそれがある。
【0049】
(D)酸化防止剤
本発明のシリコーン樹脂組成物はさらに酸化防止剤を含有するのが好ましい。該酸化防止剤としては、亜リン酸化合物、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。特にはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、N,N’−プロパン−1,3−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−チオジ−p−クレゾール、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、2,2’−エチリデンビス[4,6−ジ−tert−ブチルフェノール]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−シ゛−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−シ゛−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、6,6’−ジ−tert−ブチル−4,4’−チオジ−m−クレゾール、ジフェニルアミン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−1−ベンゾピラン−6−オール、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネートが例示される。
【0050】
(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して、0.1〜0.5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3質量部である。酸化防止剤の配合量が上記上限値を超えると、残存する酸化防止剤が硬化後の樹脂の表面に析出するおそれがある。また上記下限値未満では得られる硬化物の耐熱性及び透明性が低下するおそれがある。
【0051】
本発明のシリコーン樹脂組成物は上記成分(A)〜(D)の他に、従来公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光又は熱劣化防止剤、蛍光体、熱可塑剤、及び希釈剤などを含有してもよい。紫外線吸収剤としては例えばヒンダードアミン系紫外線吸収剤が好適に使用できる。蛍光体はシリコーン樹脂組成物の硬化物により封止される光半導体素子が発する光の波長を変更するために添加される。該蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y
2O
2S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、及び緑色発光蛍光体等が挙げられる。これら添加剤の配合量は、従来公知の技術に従い、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択することができる。
【0052】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、上記各成分および必要により各種の添加剤を溶解または溶融混合することで製造することができる。溶融混合は、公知の方法で行えばよい。例えば、上記各成分をリアクターに仕込み、バッチ式にて溶融混合してもよい。また、上記各成分をニーダーや熱三本ロールなどの混練機に投入して、連続的に溶融混合することもできる。特には(C)硬化触媒は(B)硬化剤に予め加熱溶解混合し、混合の最終段階で(A)成分及び(D)成分等と分散混合することが好ましい。
【0053】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、JIS K 7117−1:1999に準拠しB型粘度計により測定された23℃での粘度0.5Pa・s以上30Pa・s以下、より好ましくは2Pa・s以上20Pa・s以下を有する。粘度が上記上限値より大きいと、組成物の作業性が悪くなる。粘度が上記下限値より小さいと、該組成物にて封止するときにブリードなどが起こるおそれがある。
【0054】
シリコーン樹脂組成物の硬化は目的とする装置に応じて適宜設定すればよい。例えばシリコーン樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止する場合は、通常、100℃で1〜2時間程度加熱(プレキュア)し、さらに150〜200℃で0.1〜2時間加熱(アフターキュア)するのがよい。
【0055】
本発明のシリコーン樹脂組成物は低粘度であり取り扱い性に優れ、且つ、低ガス透過性に優れる硬化物を与える。そのため本発明のシリコーン樹脂組成物は光半導体素子封止用の樹脂組成物として好適に使用でき、信頼性に優れた光半導体装置を提供する。光半導体装置の製造方法は、光半導体素子の種類に応じて公知の方法を採用すればよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記中の「部」は質量部を意味し、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0057】
下記実施例及び比較例に示した重量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。以下に測定条件を示す。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcоlumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D ×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D ×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D ×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μl(試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0058】
[合成例1]
[β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシランの合成]
2Lのセパラブルフラスコに0.5質量%塩化白金酸トルエン溶液0.39g、メタノール10g、セロキサイド2000(1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ダイセル化学工業株式会社製)546gを入れ、攪拌した後、内温を50℃まで上昇させた。その後、ジメトキシメチルシラン 425gを3時間かけて滴下し、70℃で3時間反応させた。トルエンを減圧蒸留した後、アンテージW−500(2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−ターシャルブチルフェノール)、川口化学工業株式会社製)0.9gとアクセルDM(2−ベンゾチアゾイル−ジサルファイド、川口化学工業株式会社製)0.9gを添加、攪拌した。溶解したのを確認した後、減圧蒸留(110℃、5mmHg)を行うことで、下記式(14)で示される化合物568g(収率63%)を得た。
【化18】
(14)
【0059】
実施例用オルガノポリシロキサン1〜4の合成
[合成例2]
[オルガノポリシロキサン1の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール216g、XO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均7である)486g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン230gを入れ、攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(15)で表される、直鎖状のオルガノポリシロキサン1を得た。
【化19】
(15)
上記式(15)において、m、n、及びpは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.18、n=0.64、p=0.18であった。−O
1/2Xの数(r)は2個であり、両末端に存在する。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は50%であった。
得られたオルガノポリシロキサン1の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は2500であり、エポキシ当量は885g/eqであった。
【0060】
[合成例3]
[オルガノポリシロキサン2の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール195g、XO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均7である)583g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン115gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(16)で表される、直鎖状のオルガノポリシロキサン2を得た。
【化20】
(16)
上記式(16)において、m、n、及びpは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.15、n=0.69、p=0.16であった。−O
1/2Xの数(r)は2個であり、両末端に存在する。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は50%であった。
得られたオルガノポリシロキサン2の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は2600であり、エポキシ当量は959g/eqであった。
【0061】
[合成例4]
[オルガノポリシロキサン3の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール216g、XO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均7である)486g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン115g、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303、信越化学工業株式会社製)123gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(17)で表される、分岐構造を有するオルガノポリシロキサン3を得た。
【化21】
(17)
上記式(17)において、m、n、p、及びqは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.18、n=0.64、p=0.09、q=0.09であった。−O
1/2Xの数(r)はT単位の数+2個である。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は52%であった。
得られたオルガノポリシロキサン3の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は2800であり、エポキシ当量は878g/eqであった。
【0062】
[合成例5]
[オルガノポリシロキサン4の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール281g、XO―(Me
2SiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは2〜5の整数であり平均は3.5である)55g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン230gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(18)で表される、直鎖状のオルガノポリシロキサン4を得た。
【化22】
(18)
上記式(18)において、k、m、及びpは、各シロキサン単位のモル比として、k=0.23、m=0.44、p=0.33であった。−O
1/2Xの数(r)は2個であり、両末端に存在する。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は53%であった。
得られたオルガノポリシロキサン4の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3100であり、エポキシ当量は513g/eqであった。
【0063】
比較例用オルガノポリシロキサン5〜8の合成
[合成例6]
[オルガノポリシロキサン5の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール216g、XO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均は7である)486g、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303、信越化学工業株式会社製)246gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(19)で表される、分岐を有するオルガノポリシロキサン5を得た。
【化23】
(19)
上記式(18)において、m、n、及びqは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.18、n=0.64、q=0.18であった。−O
1/2Xの数(r)はT単位の個数+2個である。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は50%であった。
得られたオルガノポリシロキサン5の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3200であり、エポキシ当量は871g/eqであった。
【0064】
[合成例7]
[オルガノポリシロキサン6の合成]
2LのセパラブルフラスコにXO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均は7である)486g、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303、信越化学工業株式会社製)123gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン600gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(20)で表される、分岐を有するオルガノポリシロキサン6を得た。
【化24】
(20)
上記式(20)において、n及びqは、各シロキサン単位のモル比として、n=0.88、q=0.12であった。−O
1/2Xの数(r)はT単位の個数+2個である。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は47%であった。
得られたオルガノポリシロキサン6のGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は5400であり、エポキシ当量は1171g/eqであった。
【0065】
[合成例8]
[オルガノポリシロキサン7の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール216g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン345gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(21)で表される、直鎖状のオルガノポリシロキサン7を得た。
【化25】
(21)
上記式(21)において、m及びqは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.4、p=0.6であった。−O
1/2Xの数(r)は2個であり、両末端に存在する。Xは水素原子またはメチル基である。
上記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は40%であった。
得られたオルガノポリシロキサン7のGPCで測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量は2300であり、エポキシ当量は426g/eqであった。
【0066】
[合成例9]
[オルガノポリシロキサン8の合成]
2Lのセパラブルフラスコにジフェニルシランジオール108g、XO―(MePhSiO)
a―X(Xは水素原子またはメチル基であり、aは3〜10の整数であり平均は7である)971g、合成例1で得られたβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン230gを攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、触媒として水酸化ストロンチウム2.4gを加え、80℃でメタノールを留去しながら4時間反応させた。反応終了後、トルエン900gを加え、攪拌した後、0.8μmのフィルターを用いて加圧ろ過を行い、触媒を除去した。その後、得られた反応溶液を熱水で水洗した後、共沸脱水し、トルエンを減圧蒸留することで、下記式(22)で表される、直鎖状のオルガノポリシロキサン8を得た。
【化26】
(22)
上記式(22)において、m、n、及びpは、各シロキサン単位のモル比として、m=0.06、n=0.82、p=0.12であった。−O
1/2Xの数(r)は2個であり、両末端に存在する。Xは水素原子またはメチル基である。
記括弧内に示す各単位の結合順序は特に制限されない。
フェニル基、メチル基、及び脂環式エポキシ基の合計個数に対するフェニル基の含有量は47%であった。
得られたオルガノポリシロキサン8の、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3000であり、エポキシ当量は1140g/eqであった。
【0067】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
下記表1に示す組成及び配合(質量部)でシリコーン樹脂組成物を調製した。表1に記載の各成分は以下のとおりである。また、表中、空欄は「0」を意味する。
(B)硬化剤:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドMH)
(C)硬化触媒:第四級ホスホニウム塩(サンアプロ株式会社製、U−CAT5003)
(D)酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](株式会社ADEKA社製、アデカスタブAO−60)
【0068】
[評価試験]
下記において組成物の硬化は、100℃で1時間加熱し、次いで150℃で4時間加熱して行った。各組成物及び各硬化物を以下の方法で評価した。
(1)粘度
各組成物の粘度を、東機産業製B型回転粘度計(製品名:TVB−15M)にて、23℃で測定した。結果を表1に示す。
(2)硬度
上記方法により各組成物を硬化して棒状硬化物を作成した。各硬化物の硬度(タイプD)をJIS K6301に準拠して測定した。結果を表1に示す。
(3)耐UV性
上記方法により各組成物を硬化して1mm厚のシート状硬化物を作成した。該硬化物の波長450nmにおける光透過率(T
0)を、分光光度計U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。次いで、365nmバンドパスフィルターを装備したUV照射装置(照度100mW/cm
2)にて該硬化物に24時間UV照射した。UV照射後の各硬化物の光透過率(T
1)を上記と同じ方法で測定した。T
1/T
0(%)の値を表1に示す。
(4)耐熱性
上記方法により各組成物を硬化して1mm厚のシート状硬化物を作成した。該硬化物の波長450nmにおける光透過率(T
0)を分光光度計U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。次いで、該硬化物を150℃×400時間加熱した。加熱後の各硬化物の光透過率(T
1)を上記と同じ方法で測定した。T
1/T
0(%)の値を表1に示す。
(5)水蒸気透過率
上記方法により各組成物を硬化して1mm厚のシート状硬化物を作成した。各硬化物の水蒸気透過率をJIS K 7129に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
比較例1のシリコーン樹脂組成物は、オルガノポリシロキサンがジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、及び脂環式エポキシ基を有するT単位を有するが、脂環式エポキシ基を有するD単位を有さない。該オルガノポリシロキサンを含む組成物は粘度が高すぎる。
比較例2のシリコーン樹脂組成物はジフェニルシロキサン単位を有さない。該オルガノポリシロキサンを含む組成物は低ガス透過性に劣る。
比較例3のシリコーン樹脂組成物は、オルガノポリシロキサンがジフェニルシロキサン単位及び脂環式エポキシ基含有D単位を有するが、ジメチルシロキサン単位及びメチルフェニルシロキサン単位を有さない。該オルガノポリシロキサンを含む組成物は粘度が高すぎる。
比較例4のシリコーン樹脂組成物は、オルガノポリシロキサンがジフェニルシロキサン単位、フェニルメチルシロキサン単位、及び脂環式エポキシ基含有D単位を有するが、ジフェニルシロキサン単位の含有比率が小さすぎる。該オルガノポリシロキサンを含む組成物は低ガス透過性に劣る。
これに対し本発明のシリコーン樹脂組成物は粘度が低く作業性に優れ、且つ、低ガス透過性に優れた硬化物を与え、さらに耐熱性及び耐UV性に優れる。