(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303511
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】グラビア塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/08 20060101AFI20180326BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20180326BHJP
H01M 2/16 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
B05C1/08
B05C11/10
!H01M2/16 L
!H01M2/16 P
!H01M2/16 M
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-2271(P2014-2271)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-128758(P2015-128758A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】前田 聡
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−221204(JP,A)
【文献】
特開2000−24565(JP,A)
【文献】
特開2009−178687(JP,A)
【文献】
実開昭63−63158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−3/20
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に塗工液を転写するグラビアロールと、前記グラビアロールに塗工液を塗布するチャンバーを有する塗工ユニットと、を備え、
前記グラビアロールは、グラビアロール周面に沿って螺旋状溝を有しており、
前記グラビアロールに塗工液を塗布した後であって、かつ、前記グラビアロール上の塗工液を前記基材の表面に転写する前に、前記グラビアロール上の塗工液の一部を除去する除去装置を備え、
前記除去装置は、前記基材に転写する前記グラビアロール上の塗工液の内、基材端部に転写される塗工液の一部を除去するための流体を吹き出す流体吹き出し装置を備え、
前記流体吹き出し装置から吹き出される前記流体の吹き出し方向は、グラビアロール幅の中央からグラビアロール幅の端方向であることを特徴とするグラビア塗工装置。
【請求項2】
前記基材端部は、前記グラビアロールを所定方向に回転させた場合の前記グラビアロールの螺旋状溝の進行方向側であることを特徴とする請求項1に記載のグラビア塗工装置。
【請求項3】
前記流体吹き出し装置から吹き出される前記流体は、気体であることを特徴とする請求項1または2に記載のグラビア塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗工液を転写するグラビア塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、グラビアロールにより基材に塗工液を塗布することが行われており、グラビアロールには塗工液を保持する所定のセルパターンがその周面に設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1にはセルパターンとして螺旋状溝が設けられたグラビアロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−10750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、螺旋状溝が設けられたグラビアロールを用いると、基材にグラビアロールの塗工液を転写した際に、基材の片方の端部の塗工層が盛り上がるといった現象が起こりやすく、厚みが均一な塗工層を形成することが困難であった。また、塗工液を転写した基材をロール状に巻き取る際に、基材端部の塗工層の盛り上がりにより、基材が伸びたり、シワが発生するなど、ロール巻き取りする際の問題となっていた。
【0006】
本発明の目的は、基材に厚みが均一な塗工層を形成できるグラビア塗工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、グラビアロール上の塗工液の一部を、基材に転写する前に除去することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、
(1) 基材の表面に塗工液を転写するグラビアロールと、前記グラビアロールに塗工液を塗布するチャンバーを有する塗工ユニットと、を備え、前記グラビアロールは、グラビアロール周面に沿って螺旋状溝を有しており、前記グラビアロールに塗工液を塗布した後であって、かつ、前記グラビアロール上の塗工液を前記基材の表面に転写する前に、前記グラビアロール上の塗工液の一部を除去する除去装置を備え、前記除去装置は、前記基材に転写する前記グラビアロール上の塗工液の内、基材端部に転写される塗工液の一部を除去することを特徴とするグラビア塗工装置、
(2) 前記基材端部は、前記グラビアロールを所定方向に回転させた場合の前記グラビアロールの螺旋状溝の進行方向側であることを特徴とする(1)に記載のグラビア塗工装置、
(3) 前記除去装置は、前記グラビアロール上の塗工液の一部を除去するための流体を吹き出す流体吹き出し装置を備え、前記流体吹き出し装置から吹き出される前記流体の吹き出し方向は、グラビアロール幅の中央からグラビアロール幅の端方向であることを特徴とする(1)または(2)に記載のグラビア塗工装置、
(4) 前記流体吹き出し装置から吹き出される前記流体は、気体であることを特徴とする(3)に記載のグラビア塗工装置、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材に厚みが均一な塗工層を形成できるグラビア塗工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るグラビア塗工装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係るグラビアロールとエアー吹き出し装置の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るグラビア塗工装置について説明するが、本発明はこの形態に限定されるものでは無い。以下の説明では、リチウムイオン二次電池用のセパレータを製造するにあたって、基材であるセパレータ基材に、塗工液を塗布することを例に挙げる。
【0012】
図1に示すように、グラビア塗工装置2は、搬送されるセパレータ基材100に塗工液を連続塗布するものであって、セパレータ基材100の表面に接触して塗工液を転写するグラビアロール4と、グラビアロール4に塗工液を塗布する密閉式のチャンバー6を有する塗工ユニット8と、塗工液が塗布されたグラビアロール4から塗工液の一部を除去するエアー吹き出し装置10とを備えている。塗工ユニット8のチャンバー6には、図示しない塗工液供給手段から塗工液供給口6aを介して塗工液が供給され、塗工液返送口6bを介して塗工液供給手段に塗工液が返送される。チャンバー6には、グラビアロール4の周面に対向する側に、グラビアロール4の軸方向に延びる開口部が形成されている。グラビアロール4の回転方向下流のチャンバー6の開口端部には、例えばPETなどの樹脂製のドクターブレード12がグラビアロール4の周面に当接するように配置され、グラビアロール4の回転方向上流のチャンバー6の開口端部には、例えばPETなどの樹脂製のシールプレート14がグラビアロール4の周面に当接するように配置されている。
【0013】
ドクターブレード12の先端部およびシールプレート14の先端部は、それぞれグラビアロール4の周面に圧接されることにより、開口部の上端部および下端部をシールしてチャンバー6を密閉状態に維持するように構成されている。
【0014】
ドクターブレード12は、チャンバー内においてグラビアロール4の周面に塗布された余分な塗工液を掻き取ることにより、グラビアロール4の周面に塗工される塗工液の厚みを調節する機能を有している。
【0015】
このグラビア塗工装置2においては、グラビアロール4の上下に、テンションバックアップロール16がグラビアロールに対向するように設置されており、このテンションバックアップロール16とグラビアロール4との間にセパレータ基材100が導入される。そして、導入されたセパレータ基材100を下方から上方に搬送すると共に、セパレータ基材100の搬送方向と逆方向にグラビアロール4を回転駆動しつつ、グラビアロール4をセパレータ基材100に当接させることにより、セパレータ基材100の表面に塗工液が転写される。
【0016】
図2に、グラビア塗工装置2を
図1の矢印20の方向から見た場合におけるグラビアロール4及びエアー吹き出し装置10を示す。グラビアロール4の周面には、螺旋状溝のセルパターン18が形成されている。グラビアロール4が矢印30の方向に回転する場合、セパレータ基材100とグラビアロール4が接する箇所では、グラビアロール4上の塗工液は矢印40の方向に流動する。
【0017】
エアー吹き出し装置10は、グラビアロール4上に塗布された塗工液の内、前記グラビアロールを所定方向に回転させた場合の前記グラビアロールの螺旋状溝の進行方向側、すなわち、塗工液の進行方向(矢印40)側の基材端部に転写される塗工液の一部をグラビアロール4上から除去するように配置されている。ここで、エアー吹き出し装置10から吹き出されるエアーの吹き出し方向は、グラビアロール幅の中央からグラビアロール幅の塗工液の進行方向(矢印40)側の端に向かうように設定される。
【0018】
前記の基材端部に転写されるグラビアロール上の塗工液を除去する割合としては、基材に転写された塗工層が均一となるように除去すればよい。すなわち、塗工液を除去した後の基材端部に転写されるグラビアロール上の塗工液の最小厚みは、グラビアロールの幅中央におけるグラビアロール上の塗工液厚みに対し、通常1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは30%以上であって、通常100%未満、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは70%以下である。
前記グラビアロール上の塗工液の最小厚みが前記範囲にあると、基材にグラビアロールの塗工液を転写した際に、基材の片方の端部の塗工層が盛り上がることを抑制することができる。
【0019】
なお、エアー吹き出し装置10から吹き出されるエアーの量や圧力を調整バルブ11により制御し、グラビアロール4上の塗工液の一部を除去する程度を調整できるようにしても良い。
【0020】
このグラビア塗工装置2によれば、セパレータ基材100の表面に塗工液を転写する場合には、螺旋状溝のセルパターン18が形成されたグラビアロール4上に塗布された塗工液の内、塗工液の進行方向(矢印40)側の基材端部に転写される塗工液の一部を、セパレータ基材100に転写する前に、エアー吹き出し装置10からエアーを吹き付けることで除去することができる。そのため、セパレータ基材100にグラビアロール4の塗工液を転写した際に、セパレータ基材100の端部の塗工層が盛り上がるといった現象が生じず、厚みが均一な塗工層を形成することができる。
【0021】
セパレータ基材100としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含む微多孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;など公知のものを用いることができる。
【0022】
セパレータ基材100に塗工する塗工液の粘度は、セパレータ基材に均一に塗工できる観点から、好ましくは10cP以上、より好ましくは50cP以上、特に好ましくは100cP以上であり、好ましくは500cP以下、より好ましくは300cP以下、特に好ましくは200cP以下である。塗工液の粘度は、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスHAAKE RS6000、英弘精機株式会社製)を用いて、温度23℃、せん断速度領域1000(1/s)時の粘度である。
【0023】
塗工液には、セパレータに機能性を付与する物質、及び溶媒、必要に応じてその他物質を含む。セパレータに機能性を付与する物質は、二次電池用セパレータに付与したい機能に応じて適宜選択でき、例えば、セパレータに耐熱性を付与したい場合には、塗工液に耐熱性の物質を含む塗工液を選択する。
【0024】
耐熱性の物質としては、例えば無機粒子、有機粒子を使用することができる。 無機粒子としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、BaTiO
2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコーン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子等が用いられる。これらの粒子は必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等されていてもよく、また単独でも2種以上の組合せからなるものでもよい。これらの中でも、非水系電池を製造した際の電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子であることが好ましい。
【0025】
有機粒子としては、その溶融温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは180℃以上である。具体的には、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミド等の耐熱性高分子粒子などが例示できる。また、これらの有機粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
【0026】
セパレータに機能性を付与する物質の平均粒子径(体積平均のD50平均粒子径)は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。平均粒子径を前記範囲とすることにより、分散状態の制御と均質な所定の厚さの膜が得られ易くなる。
【0027】
溶媒としては、塗工液中の固形分を均一に分散し得るものであれば特に制限されない。溶媒としては、水および有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、クロロホルム、ピリジン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、n−ブチルフタレート、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチルアセテート、二硫化炭素、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリドン等が例示される。これらの溶媒は単独でも混合溶媒でも使用することができる。
【0028】
塗工液の固形分濃度は、塗工液を塗工可能な粘度となる濃度であれば特に限定されないが、通常10質量%以上60質量%以下である。
【0029】
塗工液を均一に混合調整する混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定はされず、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができる。
【0030】
なお、上述の実施の形態においては、エアーを吹き付けてグラビアロール上に塗布された塗工液の一部を除去しているが、エアーは液体であっても良い。
【0031】
なお、上述の実施の形態においては、エアー吹き出し装置を用いてグラビアロール上に塗布された塗工液の一部を除去しているが、エアー吹き出し装置に代えて、ブレード等を用いて物理的に塗工液の一部を除去する構成としても良い。
【0032】
なお、エアー吹き出し装置を用いると、連続的に塗工液を除去し易く、かつ、塗工液を除去した周辺箇所の塗工液組成も変化し難いため、ロングランで基材に均一な塗工層を形成できるため好ましい。
【符号の説明】
【0033】
2…グラビア塗工装置、4…グラビアロール、6…チャンバー、8…塗工ユニット、10…エアー吹き出し装置、11…調整バルブ、12…ドクターブレード、14…シールプレート、16…テンションバックアップロール、18…セルパターン、30…グラビアロールの回転方向、40…塗工液の進行方向、100…セパレータ基材