(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記準備工程において、さらに、前記最大領域を囲んで隣接する他の検知領域の前記相関補正値を、当該他の検知領域による囲みの外側で当該他の検知領域に隣接する外側検知領域の前記相関補正値に基づいて補正する請求項3記載のタッチパネルのタッチ位置検出方法。
前記次タッチ位置取得工程において、前記繰り返された前記最大値探索工程で探索された最大値の、最初に前記最大値探索工程において探索された最大値に対する比率が予め設定された基準比率に満たないとき、新たなタッチ位置を取得しない請求項3又は4に記載のタッチパネルのタッチ位置検出方法。
前記相関値は、処理対象の検知領域である注目領域に対応して定められた注目領域相関値と、前記注目領域に対して行方向又は列方向に隣接する各第1検知領域に対応して定められた第1相関値と、前記注目領域に対して斜め方向に隣接する各第2検知領域に対応して定められた第2相関値とを含み、
前記第1相関値は、前記注目領域相関値よりも小さく、
前記第2相関値は、前記第1相関値よりも小さく、
前記補正工程は、前記各検知領域を順次前記注目領域に割り当てつつ、前記注目領域の検出値と前記注目領域相関値との乗算値と、前記各第1検知領域の検出値と前記第1相関値との各乗算値と、前記各第2検知領域の検出値と前記第2相関値との各乗算値とを加算することにより、前記注目領域の相関補正値を算出する工程である請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチパネルのタッチ位置検出方法。
前記補正工程において、前記複数の検知領域のうち前記タッチ面の端縁に位置する検知領域の前記相関補正値を、これら端縁に位置する検知領域の内側に隣接する検知領域の前記相関補正値と等しくする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネルのタッチ位置検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、各検知領域の静電容量値の重心位置をタッチ位置として検出する方法では、タッチ位置の検出精度が低いという、不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、タッチ位置の検出精度を向上させることができるタッチパネルのタッチ位置検出方法、この方法を用いたタッチパネル検査方法、及びタッチパネル検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチパネルのタッチ位置検出方法は、二次元座標が設定されたタッチ面に格子状に複数の検知領域が配置されたタッチパネルのタッチ位置検出方法であって、前記各検知領域で検出された検出値を取得する検出処理工程と、
前記各検知領域の検出値に対して前記各検知領域に隣接する他の検知領域の検出値が与える影響
が反映されるように予め設定された相関値に基づいて前記各検出値を補正することにより前記各検知領域に対応する相関補正値を算出する補正工程と、前記各相関補正値のうちの最大値を探索する最大値探索工程と、前記最大値に対応する検知領域を最大領域とし、当該最大領域と、当該最大領域に隣接する他の検知領域とを含む領域について前記相関補正値に基づく重心位置を算出し、当該算出された重心位置を、タッチ位置として取得するタッチ位置取得工程とを含む。
【0007】
この構成によれば、タッチパネルの各検知領域で検出された検出値に対して、各検知領域に隣接する他の検知領域の検出値が与える影響
が反映されるように予め設定された相関値に基づいて補正が実行され、各検知領域の相関補正値が算出される。このようにして得られた各相関補正値のうちの最大値が探索され、その最大値に対応する最大領域と、当該最大領域に隣接する他の検知領域とを含む領域について相関補正値に基づく重心位置が算出され、その重心位置がタッチ位置として取得される。これによれば、各検知領域に隣接する他の検知領域の影響が考慮された相関補正値に基づきタッチ位置が取得されるので、タッチ位置の検出精度を向上させることができる。
【0008】
また、前記タッチ位置取得工程により前記タッチ位置が取得された後、前記最大領域の前記相関補正値を減少させる準備工程と、前記準備工程の実行後に再び前記最大値探索工程と前記タッチ位置取得工程とを繰り返すことにより、新たなタッチ位置を取得する次タッチ位置取得工程とをさらに含むことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、相関補正値に基づき複数のタッチ位置を検出することができるので、いわゆるマルチタッチ機能を実現することが可能となる。
【0010】
また、前記準備工程において、さらに、前記最大領域を囲んで隣接する他の検知領域の前記相関補正値を、当該他の検知領域による囲みの外側で当該他の検知領域に隣接する外側検知領域の前記相関補正値に基づいて補正することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、新たなタッチ位置を探索するにあたって、検出済みのタッチ位置に対するタッチの影響を、より精度よく排除することが可能となる。
【0012】
また、前記次タッチ位置取得工程において、前記繰り返された前記最大値探索工程で探索された最大値の、最初に前記最大値探索工程において探索された最大値に対する比率が予め設定された基準比率に満たないとき、新たなタッチ位置を取得しないことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、最初に探索された最大値、すなわちタッチにより生じた検出値に基づき得られた相関補正値に対する比率が基準比率に満たない検知領域を、誤ってタッチ位置として検出するおそれが低減される。
【0014】
また、前記相関値は、処理対象の検知領域である注目領域に対応して定められた注目領域相関値と、前記注目領域に対して行方向又は列方向に隣接する各第1検知領域に対応して定められた第1相関値と、前記注目領域に対して斜め方向に隣接する各第2検知領域に対応して定められた第2相関値とを含み、前記第1相関値は、前記注目領域相関値よりも小さく、前記第2相関値は、前記第1相関値よりも小さく、前記補正工程は、前記各検知領域を順次前記注目領域に割り当てつつ、前記注目領域の検出値と前記注目領域相関値との乗算値と、前記各第1検知領域の検出値と前記第1相関値との各乗算値と、前記各第2検知領域の検出値と前記第2相関値との各乗算値とを加算することにより、前記注目領域の相関補正値を算出する工程であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、注目領域に対する接線が長く、注目領域に対する影響が大きい第1検知領域の第1相関値の方が、注目領域に対してわずかに接する第2検知領域の第2相関値より大きい。その結果、注目領域に及ぼす影響の程度が、第1及び第2相関値に適切に反映される。
【0016】
また、前記補正工程において、前記複数の検知領域のうち前記タッチ面の端縁に位置する検知領域の前記相関補正値を、これら端縁に位置する検知領域の内側に隣接する検知領域の前記相関補正値と等しくすることが好ましい。
【0017】
タッチ面の端縁に位置する検知領域は、隣接する他の検知領域の数が少ない。そのため、タッチ面の内側に位置する検知領域と同様にして端縁に位置する検知領域の相関補正値を算出すると、妥当な相関補正値が得られないおそれがある。そこで、この構成によれば、タッチ面の端縁に位置する検知領域の相関補正値は、これら端縁に位置する検知領域の内側に隣接する検知領域の相関補正値と等しい値にされるので、端縁に位置する検知領域の相関補正値の妥当性が向上する。
【0018】
また、本発明に係るタッチパネル検査方法は、二次元座標が設定されたタッチ面に格子状に複数の検知領域が配置されたタッチパネルの前記タッチ面に、1又は複数の疑似指を接触させるタッチ処理工程と、前記タッチパネルに対して、上述のタッチパネルのタッチ位置検出方法を実行するタッチ位置検出工程と、前記タッチ位置検出工程により検出された1又は複数のタッチ位置と、前記タッチ処理工程において前記1又は複数の疑似指が前記タッチ面に接触された1又は複数の接触位置との各ずれ量のうち少なくとも一つが、予め設定された基準量を超えるか否かを判定する判定工程とを含む。
【0019】
この構成によれば、上述のタッチパネルのタッチ位置検出方法によって精度よく検出されたタッチ位置と、疑似指が接触された接触位置とのずれ量が基準量を超えるか否かが判定されるので、タッチパネルの検査精度を向上することができる。
【0020】
また、本発明に係るタッチパネル検査装置は、二次元座標が設定されたタッチ面に格子状に複数の検知領域が配置されたタッチパネルの前記タッチ面に、1又は複数の疑似指を接触させるタッチ機構と、前記タッチパネルに対して、上述のタッチパネルのタッチ位置検出方法を実行するタッチ位置検出部と、前記タッチ位置検出部により検出された1又は複数のタッチ位置と、前記タッチ機構によって前記1又は複数の疑似指が前記タッチ面に接触された1又は複数の接触位置との各ずれ量のうち少なくとも一つが、予め設定された基準量を超えるか否かを判定する判定部とを備える。
【0021】
この構成によれば、上述のタッチパネルのタッチ位置検出方法によって精度よく検出されたタッチ位置と、疑似指が接触された接触位置とのずれ量が基準量を超えるか否かが判定されるので、タッチパネルの検査精度を向上することができる。
【0022】
また、本発明に係るタッチパネル検査装置は、二次元座標が設定されたタッチ面に格子状に複数の検知領域が配置されたタッチパネルの前記タッチ面に、1又は複数の疑似指を接触させるタッチ機構と、前記各検知領域で検出された検出値を取得する検出処理部と、前記各検知領域の検出値に対して前記各検知領域に隣接する他の検知領域の検出値が与える影響
が反映されるように予め設定された相関値に基づいて前記各検出値を補正することにより前記各検知領域に対応する相関補正値を算出する補正部と、前記各相関補正値のうちの最大値を探索する最大値探索部と、前記最大値に対応する検知領域を最大領域とし、当該最大領域と、当該最大領域に隣接する他の検知領域とを含む領域について前記相関補正値に基づく重心位置を算出し、当該算出された重心位置を、タッチ位置として取得するタッチ位置取得部と、前記タッチ位置取得部により検出された1又は複数のタッチ位置と、前記タッチ機構によって前記1又は複数の疑似指が前記タッチ面に接触された1又は複数の接触位置との各ずれ量のうち少なくとも一つが、予め設定された基準量を超えるか否かを判定する判定部とを備える。
【0023】
この構成によれば、上述のタッチパネルのタッチ位置検出方法と同様、各検知領域に隣接する他の検知領域の影響が考慮された相関補正値に基づきタッチ位置が取得されるので、タッチ位置の検出精度を向上させることができる。そして、精度よく検出されたタッチ位置と、疑似指が接触された接触位置とのずれ量が基準量を超えるか否かが判定されるので、タッチパネルの検査精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
このような構成のタッチパネルのタッチ位置検出方法、タッチパネル検査方法、及びタッチパネル検査装置は、タッチ位置の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る、タッチパネルのタッチ位置検出方法を用いたタッチパネル検査装置の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すタッチパネル検査装置1は、水平なベース板90の上に設置されている。
【0027】
タッチパネル検査装置1は、基台51と、ワークホルダ52と、疑似指21a,21b,21cと、疑似指駆動機構2(タッチ機構)とを備えている。疑似指駆動機構2は、XY移動機構53と、Z移動機構54と、疑似指機構55とを備えている。基台51の上面は水平に形成されており、この面に平行な面内において、互いに直交するX軸とY軸がそれぞれ定義されている。また、XY平面に垂直な向きにZ軸が定義されている。
【0028】
ワークホルダ52は、基台51で、検査対象物である平板状のタッチパネル100を、その表面を上に向けた状態で保持する。タッチパネル100は略矩形状を有している。タッチパネル100のタッチ面には、略格子状に複数の検知領域が配置されている。各検知領域は、二次元座標により指定可能にされている。
【0029】
検査対象のタッチパネル100は、静電容量方式や抵抗膜方式等であってよく、タッチパネル検査装置1は、種々の方式のタッチパネルを検査可能である。以下、タッチパネル100が静電容量方式であった場合を例に、説明する。タッチパネル100のタッチ面には、例えば、Y方向(列方向)に延び、X方向に沿って所定間隔で配列された複数のX電極102と、X方向(行方向)に延び、Y方向に沿って所定間隔で配列された複数のY電極103とが形成されている(
図2)。
【0030】
タッチパネル100のタッチ面には、格子状に複数の検知領域が配置されている。各検知領域は、X電極102とY電極103との組み合わせにより選択可能にされている。X電極102とY電極103とを一つずつ選択し、その電極間の静電容量を測定すると、そのX電極102とY電極103とで指定される座標の検知領域の静電容量値(検出値)が測定される。なお、例えば抵抗膜方式のタッチパネルであれば、抵抗値が検出値として検出されることとなる。
【0031】
ユーザがタッチ面をタッチすると、ユーザがタッチした検知領域の静電容量が増大する。従って、X電極102とY電極103とを順次選択し、各検知領域の静電容量値を測定することにより、ユーザがタッチした検知領域が判る。すなわち、ユーザがタッチしたタッチ位置を検出することができる。このとき、タッチ位置の検知領域の周辺に位置する検知領域でも、ユーザのタッチ位置からの距離に応じて、静電容量値が変化する。
【0032】
そこで、複数の検知領域で検出された静電容量値に基づき演算処理を施すことで、各検知領域の大きさよりも高い分解能で、タッチ位置を検出可能にされている。従来、背景技術に記載のように、複数の検知領域で検出された静電容量値に基づき重心位置を算出することにより、タッチ位置を検出することが行われている。
【0033】
本発明者らは、各検知領域において、ユーザの指との間で生じる静電容量に加えて、他の検知領域において生じた静電容量が各検知領域の静電容量値に影響を与えていることを見出した。そして、重心法によってタッチ位置を算出すると、検知領域間で生じる影響により、タッチ位置の算出精度が低下することを見出した。特に、複数の指でタッチ面をタッチするマルチタッチを行った場合に検知領域間での影響が顕著となり、各指のタッチ位置の検出精度が低下し、各指のタッチ位置を検出することが困難になることを見出した。
【0034】
また、タッチパネルは機器に組み込まれて使用されるときには、通常、タッチパネルの検出値からタッチ位置を求めるIC(Integrated Circuit)チップがタッチパネルに実装される。しかしながら、タッチパネルの検査を行う場合、このようなICチップを実装後に検査を行ったのでは、タッチパネルに不良があった場合、そのICチップが無駄になってしまう。
【0035】
そこで、タッチパネル検査装置1は、タッチ位置を算出するICチップが実装されていない状態のタッチパネルに対してタッチ位置検出方法を実行し、タッチ位置を検出可能にされている。タッチパネル検査装置1は、このようにして得られたタッチ位置に基づいて、タッチパネルを検査する。
【0036】
基台51上には、2軸平面移動機構であるXY移動機構53が配置されている。このXY移動機構53は、基台51の面(後述するタッチパネル100の面)に平行なXY平面内の任意の位置に、疑似指機構55を移動させることができる。XY移動機構53には、Z移動機構54が取り付けられている。Z移動機構54は、疑似指機構55を、XY平面と直交するZ軸方向に移動可能にされている。
【0037】
具体的には、XY移動機構53は、Y軸に平行に延設されたリニアガイド66,66と、X軸に平行に延び、リニアガイド66,66に沿ってY軸方向に平行移動可能な第1キャリッジ63と、第1キャリッジ63に支持され、第1キャリッジ63に沿ってX軸方向に直線移動可能な第2キャリッジ65とを備えている。
【0038】
第2キャリッジ65は、ブラケット67をZ軸方向に駆動可能に支持する。ブラケット67には疑似指機構55が取り付けられている。これにより、第2キャリッジ65は、疑似指機構55をZ軸方向に沿って移動可能にされている。
【0039】
疑似指機構55は、例えば3本の疑似指21a,21b,21cを直線状に等間隔に並べて保持している。疑似指21a,21b,21cは、Z軸方向に延びる棒状の部材である。疑似指機構55は、疑似指21a,21b,21cをそれぞれタッチパネル100に向けて突出させ、タッチ(接触)させる。疑似指機構55としては、例えばエアシリンダやソレノイド等、種々のアクチュエータが用いられる。
【0040】
疑似指機構55は、Z軸方向に延びる旋回軸を介してブラケット67に支持され、この旋回軸を中心に回転可能にされている。これにより、疑似指21a,21b,21cが並ぶ角度を変更可能にされている。
【0041】
なお、XY移動機構53によって疑似指21a,21b,21cを移動させる例に限らない。例えば、XYテーブルを用いてタッチパネル100を移動させる構成としてもよい。
【0042】
図2は、
図1に示すタッチパネル検査装置1の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すタッチパネル検査装置1は、疑似指駆動機構2と、静電容量測定回路3と、Xライン接続回路31と、Yライン接続回路32と、表示部4と、制御部10(タッチ位置検出部)とを備えている。
【0043】
疑似指駆動機構2は、制御部10からの制御信号に応じて、疑似指21a,21b,21cをタッチパネル100上の任意の座標位置にタッチさせる。Xライン接続回路31は、タッチパネル100の複数のX電極102と接続されている。
【0044】
Xライン接続回路31は、制御部10からの制御信号に応じて複数のX電極102のうち一つを選択し、その選択されたX電極102を静電容量測定回路3に接続する切り替え回路である。Yライン接続回路32は、制御部10からの制御信号に応じて複数のY電極103のうち一つを選択し、その選択されたY電極103を静電容量測定回路3に接続する切り替え回路である。
【0045】
静電容量測定回路3は、Xライン接続回路31により選択されたX電極102とYライン接続回路32により選択されたY電極103とで指定される検知領域101の静電容量を測定し、その静電容量値を制御部10へ出力する。
【0046】
表示部4は、例えば液晶表示器やLED(Light Emitting Diode)等の表示装置である。表示部4は、タッチパネル100の検査結果を表示する。
【0047】
制御部10は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。
【0048】
制御部10は、例えばROMに記憶された制御プログラムを実行することによって、タッチ処理部11、検出処理部12、補正部13、最大値探索部14、タッチ位置取得部15、準備部16、次タッチ位置取得部17、及び判定部18として機能する。
【0049】
タッチ処理部11は、疑似指駆動機構2によって、疑似指21a,21b,21cを、タッチパネル100の各検査座標にタッチ(接触)させるタッチ処理工程を実行する。本実施形態では、タッチ処理部11は、疑似指駆動機構2によって、疑似指21aをタッチパネル100の検査座標TP1にタッチさせ、疑似指21cをタッチパネル100の検査座標TP2にタッチさせる。
【0050】
検出処理部12は、Xライン接続回路31及びYライン接続回路32によって、各検知領域101を順次選択させ、静電容量測定回路3によって各検知領域101の静電容量値を測定させる。これにより、検出処理部12は、各検知領域101で検出された静電容量値を取得する。
【0051】
補正部13は、各検知領域101の静電容量値に対して各検知領域101に隣接する他の検知領域101の静電容量値が与える影響を数値化した相関値テーブルに基づいて、各静電容量値を補正することにより各検知領域101に対応する相関補正値を算出する補正工程を実行する。
【0052】
最大値探索部14は、各相関補正値のうちの最大値を探索する最大値探索工程を実行する。
【0053】
タッチ位置取得部15は、最大値に対応する検知領域を最大領域とし、当該最大領域と、当該最大領域に隣接する他の検知領域とを含む領域について相関補正値に基づく重心位置を算出し、当該算出された重心位置を、タッチ位置として取得するタッチ位置取得工程を実行する。
【0054】
準備部16は、タッチ位置取得部によりタッチ位置が取得された後、前記最大領域の相関補正値を減少させる準備工程を実行する。また、準備部16は、準備工程において、前記最大領域を囲んで隣接する他の検知領域の相関補正値を、当該他の検知領域による囲みの外側で当該他の検知領域に隣接する外側検知領域の相関補正値に基づいて補正する。
【0055】
次タッチ位置取得部17は、準備工程の実行後に再び前記最大値探索工程と前記タッチ位置取得工程とを繰り返すことにより、新たなタッチ位置を取得する。
【0056】
判定部18は、タッチ位置検出工程により検出された1又は複数のタッチ位置と、前記タッチ処理工程において前記1又は複数の疑似指が前記タッチ面に接触された1又は複数の接触位置との各ずれ量のうち少なくとも一つが、予め設定された基準量を超えたとき、不良と判定する。
【0057】
図3〜
図5は、
図2に示すタッチパネル検査装置1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、タッチ処理部11は、疑似指駆動機構2によって、タッチパネル100の検査座標TP1と検査座標TP2とに、疑似指21aと疑似指21cとをタッチさせる(ステップS1:タッチ処理工程)。
【0058】
次に、検出処理部12は、静電容量測定回路3によって各検知領域101の静電容量値を測定させ、各検知領域101で検出された静電容量値を取得する(ステップS2:検出処理工程)。
図6は、ステップS2の検出処理工程で検出された静電容量値の一例を示す説明図である。
図6に示すように、タッチパネル100には、X方向に0〜8の9列、Y方向に0〜14の15行、計135個の検知領域101が配置されている。各検知領域101は、座標(X,Y)で指定可能にされている。
【0059】
図6に示す例では、ステップS2の検出処理工程において各検知領域101で検出された静電容量値(pF)が各検知領域を示す枡目に記載されている。例えば座標(0,0)の検知領域101には、X座標0.00〜0.99、Y座標0.00〜0.99の座標範囲が含まれ、例えば座標(5,2)の検知領域101には、X座標5.00〜5.99、Y座標2.00〜2.99の座標範囲が含まれている。
【0060】
次に、補正部13は、ステップS3〜S6において、補正工程を実行する。まず、補正部13は、各検知領域101のいずれかを注目領域に設定する(ステップS3)。次に、補正部13は、注目領域及び注目領域に隣接する他の検知領域の静電容量値と、相関値テーブルとに基づいて、注目領域の相関補正値を算出する(ステップS4)。
【0061】
具体的には、補正部13は、例えば座標(1,1)の検知領域101を注目領域として選択し、注目領域に隣接する他の検知領域101を含むマトリクス状の9つの検知領域101を、処理対象領域104として抽出する。
【0062】
図7は、相関値テーブル6の一例を示す説明図である。
図7に示す相関値テーブル6は、注目領域の座標が(n,m)であった場合、座標(n,m)を中心とする処理対象領域104の各検知領域101に対応する相関値を示している。相関値テーブル6では、注目領域に対応する注目領域相関値60が1.0、注目領域に対して行方向又は列方向に隣接する検知領域である第1検知領域に対応する第1相関値61が0.7、注目領域に対して斜め方向に隣接する検知領域である各第2検知領域に対応する第2相関値62が0.5に定められている。
【0063】
すなわち、第1相関値61は注目領域相関値60よりも小さく、第2相関値62は第1相関値61よりも小さい値にされている。注目領域相関値60、第1相関値61、及び第2相関値62は、注目領域に隣接する他の検知領域101の検出値が与える影響が大きいほど数値が大きくなるように、例えば実験的に求められてその値が設定されている。
【0064】
補正部13は、座標(X,Y)の静電容量値をDATA(X,Y)、相関値テーブル6における座標(X,Y)の相関値をMAT(X,Y)、注目領域の座標を(n,m)としたとき、下記の式(1)に基づき、注目領域すなわち座標(n,m)の検知領域の相関補正値C(n,m)を算出する。
【0065】
C(n,m)=MAT(n-1,m-1)×DATA(n-1,m-1) + MAT(n,m-1)×DATA(n,m-1) +MAT(n+1,m-1)×DATA(n+1,m-1) + MAT(n-1,m)×DATA(n-1,m) + MAT(n,m)×DATA(n,m) + MAT(n+1,m)×DATA(n+1,m) + MAT(n-1,m+1)×DATA(n-1,m+1) + MAT(n,m+1)×DATA(n,m+1) + MAT(n+1,m+1)×DATA(n+1,m
+1) ・・・(1)
【0066】
次に、補正部13は、全ての検知領域101について、相関補正値が取得されたか否かを確認する(ステップS5)。まだ相関補正値が取得されていない検知領域101があれば(ステップS5でNO)、補正部13は、注目領域を、まだ相関補正値が取得されていない他の検知領域101に変更し(ステップS6)、再びステップS4,S5を繰り返す。
【0067】
このようにして、
図6に示す静電容量値から、
図8に示す相関補正値が算出される。ここで、
図6に示すタッチパネル100の端部に位置する検知領域101、すなわちX=0,8、Y=0、14の端部検知領域については、これらの端部検知領域を注目領域にすると、処理対象領域104の一部がタッチパネル100のタッチ面の外となり、静電容量値が得られない。そのため、例えば式(1)において静電容量値が得られない座標の項をゼロにして計算すると、相関補正値が小さな値となって、妥当でない場合がある。
【0068】
そこで、ステップS4において、端部検知領域を除いた領域105についてのみ式(1)を用いて相関補正値C(n,m)を算出し、
図9に破線で示す端部検知領域については、各端部検知領域の内側に隣接する検知領域101の相関補正値を、各端部検知領域の相関補正値として取得することが好ましい。
【0069】
このようにして、全ての検知領域101について、相関補正値が取得された場合(ステップS5でYES)、補正部13は、ステップS11へ移行する。
【0070】
次に、ステップS11において、最大値探索部14は、変数iに1を代入し(ステップS11)、全相関補正値のうちの最大値MAXを探索する(ステップS12:最大値探索工程)。例えば、
図9に示す例では、座標(4,9)の108.4が最大値MAXとなり、座標(4,9)が最大領域となる。
【0071】
次に、次タッチ位置取得部17は、変数iが1か否かをチェックする(ステップS13:次タッチ位置取得工程)。変数iが1であれば(ステップS13でYES)、ステップS12で探索された最大値MAXは、最初に探索された最大値MAXであるから、次タッチ位置取得部17は、この最大値MAXを初期最大値MAX0とし(ステップS14:次タッチ位置取得工程)、ステップS16へ移行する。
【0072】
次に、ステップS16において、タッチ位置取得部15は、最大領域と、最大領域に隣接する他の検知領域とを含む抽出領域について相関補正値に基づき重心位置を算出する(ステップS16:タッチ位置取得工程)。
【0073】
図10は、タッチ位置取得工程における重心位置算出方法を説明するための説明図である。例えば
図9に示す座標(4,9)が最大領域であった場合、
図10に示すように、座標(4,9)の最大領域と、最大領域に隣接する他の検知領域とを含む抽出領域106が抽出される。
【0074】
タッチ位置取得部15は、タテ方向(Y方向)に並ぶ座標(3,8)、(3,9)、(3,10)の相関補正値の合計を、タテ合計値Aとして算出し、タテ方向に並ぶ座標(4,8)、(4,9)、(4,10)の相関補正値の合計を、タテ合計値Bとして算出し、タテ方向に並ぶ座標(5,8)、(5,9)、(5,10)の相関補正値の合計を、タテ合計値Cとして算出する。また、タッチ位置取得部15は、ヨコ方向(X方向)に並ぶ座標(3,8)、(4,8)、(5,8)の相関補正値の合計を、ヨコ合計値Dとして算出し、ヨコ方向に並ぶ座標(3,9)、(4,9)、(5,9)の相関補正値の合計を、ヨコ合計値Eとして算出し、ヨコ方向に並ぶ座標(3,10)、(4,10)、(5,10)の相関補正値の合計を、ヨコ合計値Fとして算出する。
【0075】
タッチ位置取得部15は、重心位置のX座標Jを以下の式(2)〜(4)に基づき算出し、重心位置のY座標Kを以下の式(5)〜(7)に基づき算出する。なお、最大領域の座標は(G、H)であるとする。
【0076】
S=(A−2×B+C)/2=(267.5−2×292.9+212)/2=−53.15 ・・・ (2)
【0077】
T=(C−A)/2=(212−267.5)/2=−27.75 ・・・(3)
【0078】
重心位置のX座標J=(−T/S/2)+G={−(−27.75)/(−53.15)/2}+4=3.74 ・・・(4)
【0079】
U=(D−2×E+F)/2=(255.1−2×287.1+230.2)/2=−44.45 ・・・(5)
【0080】
V=(F−D)/2=(230.2−255.1)/2=−12.45 ・・・(6)
【0081】
重心位置のY座標K=(−V/U/2)+H={−(−12.45)/(−44.45)/2}+9=8.86 ・・・(7)
【0082】
以上、式(2)〜(7)により、重心位置の座標(J,K)=(3.74,8.86)が得られる。
【0083】
次に、タッチ位置取得部15は、このようにして得られた重心位置の座標(J,K)=(3.74,8.86)を、タッチ位置P(i)として取得する(ステップS17:タッチ位置取得工程)。この場合、ステップS3〜S6において、相関値テーブル6を用いて各検知領域に隣接する他の検知領域101の影響が考慮された相関補正値が算出され、その相関補正値に基づきタッチ位置P(i)が取得されるので、タッチ位置P(i)の位置精度が向上する。
【0084】
次に、準備部16によって、ステップS18〜S20の準備工程が実行される。まず、準備部16は、最大領域の相関補正値を0にする(ステップS18)。
図11に示す例では、座標(4,9)の相関補正値が0にされる。なお、ステップS18では、ステップS15でタッチ位置と判断されない程度に最大領域の相関補正値を減少させればよく、必ずしも0にする例に限らない。例えば最大領域の相関補正値を1/2にしてもよい。
【0085】
次に、準備部16は、
図11に示すように、最大領域(4,9)に対応する第1検知領域(4,8)、(3,9)、(5,9)、(4,10)の相関補正値を、抽出領域106の外側で第1検知領域にそれぞれ隣接する検知領域(4,7)、(2,9)、(6,9)、(4,11)の相関補正値にする(ステップS19)。
【0086】
次に、準備部16は、
図11に示すように、最大領域(4,9)に対応する第2検知領域(3,8)、(5,8)、(3,10)、(5,10)の相関補正値を、各第2検知領域に対して抽出領域106の外側で行方向及び列方向に隣接する2つの検知領域(3,7)と(2,8)、(5,7)と(6,8)、(2,10)と(3,11)、(6,10)と(5,11)のそれぞれの相関補正値の平均値にする(ステップS20)。
【0087】
次に、次タッチ位置取得部17は、変数iに1を加算し(ステップS21)、再びステップS12へ移行する。ステップS12において、最大値探索部14は、全相関補正値のうちの最大値MAXを探索する(ステップS12:最大値探索工程)。例えば、
図12に示す例では、座標(5,2)の85.7が新たな最大値MAXとなり、座標(5,2)が新たな最大領域となる。
【0088】
ステップS13において、i=2なので、iは1ではないから(ステップS13でNO)、次タッチ位置取得部17は、ステップS15へ移行する。ステップS15において、次タッチ位置取得部17は、初期最大値MAX0に基準比率0.7を乗じた値と、新たな最大値MAXとを比較する(ステップS15)。最大値MAXがMAX0×0.7以上であれば(ステップS15でNO)、次のタッチ位置が存在していると考えられるので、次タッチ位置取得部17は、再びステップS16以降の処理を実行させる。その結果、ステップS17において、
図13に示すように、二つ目のタッチ位置P(2)=(4.82,2.43)が得られる。
【0089】
以下、ステップS18〜S21が実行され、再びステップS12が実行される。ステップS12において、次の最大値MAXは、座標(4,7)の70.2となる。この場合、ステップS15において、70.2>MAX0×0.7となる(ステップS15でYES)。すなわち、座標(4,7)の相関補正値は、初期最大値MAX0と比べて小さすぎるので、次(三つ目)のタッチ位置は存在しないと考えられる。そこで、次タッチ位置取得部17は、最大値MAXがMAX0×0.7に満たなければ(ステップS15でYES)、タッチ位置の検出処理を終了し、タッチパネル100の良否判定を行うべくステップS31へ移行する。
【0090】
次に、ステップS31(判定工程)において、判定部18は、ステップS17で検出されたタッチ位置の数が、ステップS1においてタッチされたタッチ数と一致するか否かを判定する。具体的には、ステップS1に示す例では、タッチ数は2である。また、タッチ位置の検出数が2のとき、変数iの値は3になる。そこで、判定部18は、変数iが3か否かを判定し、変数iが3でなければ(ステップS31でNO)、ステップS1でタッチされたタッチ数を正しく検出できなかったことになるから、タッチパネル100は不良であると判定してその判定結果を表示部4に表示させ(ステップS37)、処理を終了する。
【0091】
一方、変数iが3であれば(ステップS31でYES)、ステップS1でタッチされた2カ所のタッチ数を正しく検出できたことになるから、判定部18は、さらにタッチ位置の検出精度を判定するべくステップS32へ移行する。
【0092】
次に、判定部18は、検査座標TP1とタッチ位置P(1)とのずれ量D1を算出する(ステップS32:判定工程)。具体的には、検査座標TP1の座標が(Xt1,Yt1)、タッチ位置P(1)の座標が(X1,Y1)のとき、ずれ量D1は、例えば下記の式(8)で求められる。
【0093】
D1=√{(Xt1−X1)
2+(Yt1−Y1)
2} ・・・ (8)
【0094】
次に、判定部18は、タッチパネル100のタッチ位置検出誤差の許容範囲として予め設定された基準量Refと、ずれ量D1とを比較する(ステップS33:判定工程)。そして、ずれ量D1が基準量Refを超えていれば(ステップS33でYES)、タッチパネル100のタッチ位置検出精度が許容範囲外であることを意味するから、判定部18は、タッチパネル100は不良であると判定してその判定結果を表示部4に表示させ(ステップS37)、処理を終了する。
【0095】
一方、ずれ量D1が基準量Ref以下であれば(ステップS33でNO)、判定部18は、次のタッチ位置について判定するべくステップS34へ移行する。ステップS34において、判定部18は、検査座標TP2とタッチ位置P(2)とのずれ量D2を算出する(ステップS34:判定工程)。具体的には、検査座標TP2の座標が(Xt2,Yt2)、タッチ位置P(2)の座標が(X2,Y2)のとき、ずれ量D2は、例えば下記の式(9)で求められる。
【0096】
D2=√{(Xt2−X2)
2+(Yt2−Y2)
2} ・・・ (9)
【0097】
次に、判定部18は、基準量Refと、ずれ量D2とを比較する(ステップS35:判定工程)。そして、ずれ量D2が基準量Refを超えていれば(ステップS35でYES)、タッチパネル100のタッチ位置検出精度が許容範囲外であることを意味するから、判定部18は、タッチパネル100は不良であると判定してその判定結果を表示部4に表示させ(ステップS37)、処理を終了する。
【0098】
一方、ずれ量D2が基準量Ref以下であれば(ステップS35でNO)、判定部18は、タッチパネル100は良品であると判定してその判定結果を表示部4に表示させ(ステップS36)、処理を終了する。
【0099】
なお、判定部18は、ステップS32,S34において、必ずしも式(8)、式(9)を用いてずれ量D1,D2を算出する例に限らない。例えば、X方向のずれ量とY方向のずれ量とをそれぞれ基準量と比較するようにしてもよい。
【0100】
以上、ステップS31〜S37の処理により、ステップS17で取得された高精度のタッチ位置に基づいてタッチパネル100の良否判定を行うことができるので、タッチパネル100の検査精度を向上することができる。
【0101】
なお、タッチパネル検査装置1は、疑似指を3本備える例を示したが、疑似指の数は3本に限らない。また、ステップS1において、タッチパネル100の2カ所にタッチする例を示したが、タッチする箇所は1カ所であってもよく、3カ所以上であってもよい。タッチ箇所数に応じて、ステップS31〜S35の処理を適宜変更すればよい。