(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の疑似指は、前記タッチ面と交差する方向に沿って伸縮自在にされており、前記各疑似指の前記タッチ面と接触する先端部を、前記タッチ面方向へ向けて弾性的に付勢する付勢部をさらに備え、
前記押圧部は、前記板状部材と前記タッチ面との対向距離を変化させることにより、前記各疑似指の前記押圧力を一括して変化させる請求項1記載のタッチパネル検査装置。
前記押圧部によって互いに異なる複数の前記押圧力を加えさせ、当該各押圧力に対応する前記情報を、前記情報取得部によって前記各設定位置に対応してそれぞれ取得させる押圧力制御部をさらに備え、
前記判定部は、前記各押圧力及び前記各設定位置に対応して取得された前記各情報に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定する請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネル検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の検査装置では、タッチパネル全体を検査するためにはプローブの位置を、タッチ面全体にまんべんなく移動させて、当接と検査とを繰り返す必要がある。そのため、タッチパネルの検査に時間がかかるという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、検査時間を短縮することができるタッチパネル検査装置、及びタッチパネル検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチパネル検査装置は、面状に拡がるタッチ面を有し、前記タッチ面にタッチされた位置に応じた情報を出力可能なタッチパネルの検査を行うタッチパネル検査装置であって、前記タッチ面の複数箇所をタッチする複数の疑似指と、前記タッチ面が前記複数の疑似指によりタッチされた状態で前記タッチパネルから前記情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得された前記情報に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定する判定部とを備える。
【0007】
また、本発明に係るタッチパネル検査方法は、面状に拡がるタッチ面を有し、前記タッチ面にタッチされた位置に応じた情報を出力可能なタッチパネルの検査を行うタッチパネル検査方法であって、複数の疑似指で前記タッチ面の複数箇所をタッチするタッチ工程と、前記タッチ面が前記複数の疑似指によりタッチされた状態で前記タッチパネルから前記情報を取得する情報取得工程と、前記情報取得工程により取得された前記情報に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定する判定工程とを含む。
【0008】
これらの構成によれば、複数の疑似指を、タッチ面の複数箇所にタッチさせた状態で、タッチされた位置に応じた情報が取得され、その情報に基づいて、タッチパネルの良否が判定されるので、背景技術のようにタッチ面の各所にプローブを移動させることなく、タッチ面に同時に複数の疑似指を当接させて、タッチ面全体の検査を行うことができる。その結果、検査に際してプローブの移動時間が不要となるので、タッチパネルの検査時間を短縮することができる。
【0009】
また、前記疑似指の数は、4以上であることが好ましい。
【0010】
疑似指の数が、4以上であれば、疑似指を面状に略均等に分布させてタッチ面にタッチさせるように配置することが容易となる。
【0011】
また、前記疑似指の数は、5以上であることが好ましい。
【0012】
疑似指が5以上有れば、検査しようとするタッチ位置を取り囲むように少なくとも上下左右に他のタッチ位置を配置し、周囲の他のタッチ位置の影響を評価することが可能となる。従って、他のタッチ位置の影響を受けやすいためにタッチ検出の精度が低下する不良モードの検査を行うことが容易となる。
【0013】
また、前記疑似指の数は、9以上であることが好ましい。
【0014】
疑似指が9以上有れば、疑似指を検査しようとするタッチ位置の上下左右、左上、右上、左下、及び右上に他のタッチ位置を配置し、周囲の他のタッチ位置の影響を評価することが可能となる。さらに、疑似指を格子の交点上に9以上配置すれば、矩形状の領域全体にタッチ位置を分布させることができる。従って、他のタッチ位置の影響を受けやすいためにタッチ検出の精度が低下する不良モードの検査精度がより向上する。
【0015】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面の少なくとも一部の領域に対して、略均等に分布するように配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、タッチ面の少なくとも一部の領域に対して、複数の疑似指をまんべんなく同時にタッチさせることができる。その結果、当該少なくとも一部の領域について、むらなく検査を行うことが可能となる。
【0017】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面の略全面に対して、略均等に分布するように配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、タッチ面の略全面に対して、複数の疑似指をまんべんなく同時にタッチさせることができる。その結果、タッチ面全体を、一括してむらなく検査を行うことが可能となる。
【0019】
また、前記複数の疑似指は、略格子状の交点に対応するように配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、複数の疑似指を、略均等に分布させることができる。
【0021】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面と対向配置される板状部材の、前記タッチ面と対向する面から前記タッチ面へ向かって突出するように形成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、板状部材をタッチ面へ近づけることによって、複数の疑似指を、一括してタッチ面にタッチさせることができる。
【0023】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面と交差する方向に沿って伸縮可能にされており、前記各疑似指の前記タッチ面と接触する先端部を、前記タッチ面方向へ向けて弾性的に付勢する付勢部をさらに備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、複数の疑似指をタッチ面にタッチした状態で複数の疑似指の位置を、タッチ面と交差する方向に沿って変位させることにより、疑似指によりタッチ面を押圧する押圧力を変化させることができるので、押圧力を変化させることが容易である。
【0025】
また、前記タッチ面上には、複数の設定位置が設定されており、前記タッチパネルは、前記設定位置毎に加えられた押圧力に応じた前記情報を出力し、前記タッチパネル検査装置は、前記複数の疑似指を前記タッチ面にタッチさせ、前記各疑似指による前記タッチ面の押圧力を変更可能な押圧部をさらに備え、前記情報取得部は、前記押圧部によって前記押圧力が加えられた状態で、前記タッチパネルから前記各設定位置にそれぞれ対応して前記情報を取得し、前記判定部は、前記各設定位置にそれぞれ対応して取得された前記情報に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、複数の疑似指により、タッチ面に圧力をかけた状態で、タッチパネルの良否を判定することができるので、圧力が加えられた場合に現象が現れる不良を検出することが可能となる。
【0027】
また、前記押圧部によって互いに異なる複数の前記押圧力を加えさせ、当該各押圧力に対応する前記情報を、前記情報取得部によって前記各設定位置に対応してそれぞれ取得させる押圧力制御部をさらに備え、前記判定部は、前記各押圧力及び前記各設定位置に対応して取得された前記各情報に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定することが好ましい。
【0028】
この構成によれば、疑似指の押圧力に依存して発現する不良を検出できる確実性が向上する。
【0029】
また、前記複数の押圧力のうち一つを基準押圧力とし、前記設定位置毎に、前記複数の押圧力のうち前記基準押圧力を除く他の押圧力に対応する前記情報と前記基準押圧力に対応する前記情報との差を演算する差演算部をさらに備え、前記判定部は、前記各設定位置に対応して前記差演算により演算された前記差に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定することが好ましい。
【0030】
前記情報には、タッチ面にタッチされた位置に応じた成分と、疑似指の押圧力の差に応じて生じた成分とが重畳されている。そのため、前記情報に基づいて、疑似指の押圧力の差に応じて生じる不良を判断することが容易でない。そこで、この構成によれば、タッチ位置は変化させずに複数の押圧力のうち基準押圧力を除く他の押圧力に対応する情報と基準押圧力に対応する情報との差を演算することで、タッチ面にタッチされた位置に応じた成分が低減された情報を前記差として得ることができる。そして、その差に基づいて、タッチパネルの良否を判定するので、疑似指の押圧力に依存して発現する不良の検出精度が向上する。
【0031】
また、前記他の押圧力は、複数設定されていることが好ましい。
【0032】
疑似指の押圧力に依存して発現する不良は、押圧力が高いほど発現しやすいとは限らず、中間的な押圧力でのみ発現する場合がある。そこでこの構成によれば、複数の押圧力を加えて検査を行うことができるので、中間的な押圧力でのみ発現する不良を検出できる確実性が向上する。
【0033】
また、前記基準押圧力は、実質的に0であることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、タッチ面に押圧力がほとんど加わらないタッチ状態で得られる情報を基準にして、押圧力が加わったときの情報との差に基づいて、タッチパネルの良否が判定されるので、疑似指の押圧力に依存して発現する不良の検出精度が向上する。
【0035】
また、前記判定部は、さらに、前記各設定位置にそれぞれ対応して取得された前記情報に基づいて、前記各設定位置のうち不良状態の設定位置を判定することが好ましい。
【0036】
この構成によれば、不良内容を詳細に知ることができる。
【0037】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面と対向配置される板状部材の、前記タッチ面と対向する面から前記タッチ面へ向かって突出するように形成されており、前記押圧部は、前記板状部材を前記タッチ面へ押圧することにより、前記押圧力を生じさせることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、押圧部は、板状部材をタッチ面方向へ押圧することにより、複数の疑似指を一括してタッチ面に押圧させることができる。
【0039】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面と交差する方向に沿って伸縮自在にされており、前記各疑似指の前記タッチ面と接触する先端部を、前記タッチ面方向へ向けて弾性的に付勢する付勢部をさらに備え、前記押圧部は、前記板状部材と前記タッチ面との対向距離を変化させることにより、前記各疑似指の前記押圧力を一括して変化させることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、押圧部は、板状部材とタッチ面との対向距離を変化させることにより、各疑似指の前記押圧力を一括して変化させることができるので、押圧部の構成を簡素化することが容易である。
【0041】
また、前記複数の疑似指は、前記タッチ面における予め設定された複数のタッチ位置にタッチされ、前記タッチパネル検査装置は、前記情報取得部により取得された前記情報から得られる複数のタッチ検出位置と、前記複数のタッチ位置との各ずれ量を算出する位置ずれ量演算部をさらに備え、前記判定部は、前記位置ずれ量演算部により算出された前記各ずれ量に基づいて、前記タッチパネルの良否を判定することが好ましい。
【0042】
この構成によれば、複数の疑似指を複数のタッチ位置にタッチさせるので、実際にタッチさせた位置と、タッチパネルにより検出されたタッチ検出位置とのずれを、背景技術のようにプローブを移動させることなく、複数箇所において一括して取得することができる。その結果、タッチパネルの検査時間を短縮することができる。
【0043】
また、前記タッチパネルは、一方向に沿って延びる複数の行電極と、前記一方向と交差する方向に延び、前記複数の行電極と対向配置された複数の列電極とを備え、前記情報取得部は、前記複数の行電極のうち一の行電極を選択し、前記複数の列電極のうち一の列電極を選択し、当該選択された一の行電極と一の列電極とを除く他の前記行電極及び前記列電極を回路グラウンドに接続し、当該一の行電極と当該一の列電極とが交差する設定位置に対応する静電容量を前記情報として取得することが好ましい。
【0044】
この構成によれば、静電容量方式のタッチパネルを検査することができる。
【発明の効果】
【0045】
このような構成のタッチパネル検査装置、及びタッチパネル検査方法は、検査時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第1実施形態)
【0048】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、タッチパネル検査方法を用いたタッチパネル検査装置の構成の一例を模式的に示す正面図である。
図1に示すタッチパネル検査装置1は、大略的に、基台2と、押圧部材3と、昇降機構4(押圧部)とを備えている。基台2は、平坦な上面を有している。基台2の上面には、検査対象のタッチパネルPが載置される。タッチパネルPの上面は、略矩形のタッチ面Psとされている。基台2の上面には、図略の位置決め機構が設けられており、基台2は、予め設定された検査位置にタッチパネルPを保持する。
【0049】
押圧部材3は、基台2の上方の昇降機構4に取り付けられている。押圧部材3は、基台2の検査位置に載置されたタッチパネルPと対向するように配設されている。昇降機構4は、押圧部材3を昇降させる。これにより、昇降機構4は、押圧部材3とタッチ面Psとの対向距離を変化させ、後述する複数の疑似指32がタッチパネルPに押圧される押圧力を、一括して変更可能にされている。
【0050】
図2は、押圧部材3の構成の一例を示す斜視図である。
図2に示す押圧部材3は、例えば、板状部材31と、板状部材31の下面から突出するように形成された円柱状の複数の疑似指32とを備えている。
【0051】
板状部材31の外形は、検査対象のタッチパネルPのタッチ面Psと対応するように、タッチ面Psと略同一の矩形形状、又はタッチパネルPよりも大きい形状にされている。複数の疑似指32は、板状部材31の下面、すなわちタッチ面Psと対向する側の面全体に、略格子状の交点に対応して略均等に分布するように配置されている。なお、複数の疑似指32は、略均等に分布していればよく、格子状の交点に対応して配置される例に限らない。
【0052】
図2に示す例では、8行×12列の96本の疑似指32が、タッチ面Psの略全面に対して、略均等に分布するように配置される例を示している。複数の疑似指32をこのように配置することによって、タッチ面Psの全域に、一括して(同時に)複数の疑似指32をまんべんなく当接させることが可能とされている。これにより、タッチ面全体を検査するために、背景技術のようにタッチ面の各所にプローブを移動させることなく、タッチ面Psの全域に、同時に複数の疑似指32を当接させて、タッチ面Ps全体の検査を行うことができる。その結果、検査に際してプローブの移動時間が不要となるので、タッチパネルPの検査時間を短縮することが可能となる。
【0053】
なお、複数の疑似指32は、必ずしもタッチ面Psの略全面に対して、略均等に分布するように配置される例に限らない。押圧部材3は、例えば複数の疑似指32が、タッチ面の少なくとも一部の領域に対して略均等に分布するように配置された構成であってもよい。そして、押圧部材3を、タッチ面Psに沿ってX−Y方向に移動可能としてもよい。これにより、押圧部材3を移動させつつ一部の領域毎に、押圧部材3をタッチ面Psに当接させ、複数回検査を行うことで、タッチ面Ps全体を検査するようにしてもよい。
【0054】
例えば、疑似指32の数を4以上とし、タッチ面Psを格子状に12の領域に分割して、各領域に対向する位置に押圧部材3を移動させ、これらの領域毎に検査を行ってもよい。疑似指32の数が4以上であれば、疑似指32を面状に略均等に分布させて配置することが容易となるので好ましい。
【0055】
本発明者らは、同時に複数のタッチ位置を検知可能ないわゆるマルチタッチ機能を有するタッチパネルにおいて、複数箇所タッチされた場合に、あるタッチ箇所の検知動作が他のタッチ箇所の影響を受ける場合があることを見出した。具体的には、例えばマルチタッチに対応した静電容量方式のタッチパネルにおいて、各タッチ位置でユーザの指により生じる静電容量に加えて、他のタッチ位置において生じた静電容量が各タッチ位置の静電容量値に影響を与えていることを見出した。そして、このような他のタッチ位置の影響を受けやすいためにタッチ検出の精度が低下する不良モードが存在することを見出した。
【0056】
しかしながら、背景技術のように疑似指32(プローブ)が1本の場合、他のタッチ位置の影響を検査することはできない。また、疑似指32が2本の場合、検査しようとするタッチ位置に対して、一方の側にしか他のタッチ位置が存在しないので、他のタッチ位置の影響を十分に評価することができない。また、疑似指32が3〜4本の場合であっても、検査しようとするタッチ位置に対して、他のタッチ位置が配置されていない方向が生じるため、他のタッチ位置の影響を十分に評価することができない。
【0057】
これに対し、疑似指32が5本以上有れば、検査しようとするタッチ位置を取り囲むように少なくとも上下左右に他のタッチ位置を配置し、周囲の他のタッチ位置の影響を評価することが可能となる。従って、他のタッチ位置の影響を受けやすいためにタッチ検出の精度が低下する不良モードの検査を行うために、疑似指32が5本以上あることが好ましい。
【0058】
さらに、疑似指32が9本以上有れば、疑似指32を格子の交点上に配置した上で、検査しようとするタッチ位置の上下左右、左上、右上、左下、及び右上に他のタッチ位置を配置し、周囲の他のタッチ位置の影響を評価することが可能となる。さらに、疑似指32を格子の交点上に9本以上配置すれば、矩形状の領域全体にタッチ位置を分布させることができる。従って、他のタッチ位置の影響を受けやすいためにタッチ検出の精度が低下する不良モードの検査を行うと共に、タッチ面Ps全体を検査するために、疑似指32が9本以上あることが好ましい。
【0059】
図3は、
図2に示す疑似指32の構成の一例を示す断面図である。
図3に示す疑似指32は、板状部材31の下面から下方へ延びる円筒状の筒体321と、先端が球面形状にされた円柱状の先端部材322と、コイルばね323(付勢部)とを備えている。先端部材322の後端外周部には、外向きに突出する鍔部322aが形成されている。先端部材322は、先端を下向きにして筒体321に挿入され、筒体321内で上下方向に進退可能にされている。
【0060】
筒体321の下端開口部には、鍔部322aと係合する係合部321aが、当該下端開口部の内周に、内側へ突出するように形成されている。これにより、先端部材322が、筒体321から抜け落ちないようにされている。
【0061】
コイルばね323は、先端部材322を、下方(タッチパネルPのタッチ面Ps方向)へ向けて弾性的に付勢する。これにより、先端部材322が、コイルばね323の付勢力に抗して押圧されると先端部材322が筒体321内に押し込まれ、疑似指32が縮む。一方、先端部材322が押圧されなければコイルばね323の付勢力により先端部材322が筒体321内から押し出され、疑似指32が伸びる。
【0062】
ここで、タッチパネルPのタッチ面Psに先端部材322の先端を当接させ、タッチ面Psでの押圧力で押圧されて筒体321内に先端部材322が押し込まれる変位距離をx、コイルばね323のばね定数をkとすると、タッチ面Psの押圧力Fは、下記の式(1)で表される。
【0064】
従って、押圧部材3によれば、昇降機構4によってタッチパネルPと板状部材31の対向距離を調節して変位距離xを調節することで、複数の疑似指32によりタッチパネルPのタッチ面Psに加えられる押圧力を一括して調節することができる。
【0065】
なお、付勢部はコイルばね323に限らない。例えばゴムなどの弾性部材を付勢部として用いてもよい。例えば、疑似指32全体をゴムなどの弾性部材によって構成し、疑似指32自体が付勢部として機能する構成であってもよい。
【0066】
図4は、
図1に示すタッチパネル検査装置1と、タッチパネルPとの電気的構成の一例を示すブロック図である。タッチパネルPは、横方向に沿って延びる複数の行電極A1,A2,A3,A4,A5と、縦方向に沿って延び、行電極A1,A2,A3,A4,A5と対向配置された複数の列電極B1,B2,B3,B4,B5とを備えている。なお、行電極及び列電極がそれぞれ5つずつの例を示したが、行電極、列電極は、6つ以上であってもよく、4つ以下であってもよい。
【0067】
図4に示すタッチパネルPは、いわゆる静電容量方式のタッチパネルであり、タッチされた位置の静電容量が変化する。タッチパネルPは、行電極A1,A2,A3,A4,A5のうち一つと、列電極B1,B2,B3,B4,B5のうち一つとを選択することで、当該二つの電極が交差する位置に対応する静電容量を、外部から測定可能にされている。
【0068】
行電極A1と列電極B1の交差する位置を設定位置(1,1)、行電極A1と列電極B2の交差する位置を設定位置(1,2)、行電極Amと列電極Bnの交差する位置を設定位置(m,n)、行電極A5と列電極B5の交差する位置を設定位置(5,5)とする。すなわち、タッチパネルPのタッチ面Ps上には、設定位置(1,1)〜(5,5)の25個の設定位置が予め設定されている。
【0069】
また、タッチ面Psには、行電極Aの電極番号1〜5をX座標の座標値とし、列電極Bの電極番号1〜5をY座標の座標値とするX−Y座標が設定されている。これにより、例えば、設定位置(1,1)は座標(1,1)で表され、設定位置(2,2)は座標(1,1)で表され、設定位置(1,1)と設定位置(2,2)との中央位置は、座標(1.5,1.5)で表される。
【0070】
図4に示すタッチパネル検査装置1は、交流信号供給用のスイッチSA1〜SA5、信号検出用のスイッチSB1〜SB5、行電極A1〜A5を回路グラウンドに接続するための接地スイッチSAg1〜SAg5、列電極B1〜B5を回路グラウンドに接続するための接地スイッチSBg1〜SBg5、交流信号源5、交流電流計6、及び制御部7を備えている。
【0071】
交流信号源5は、例えば発振回路を用いて構成されている。交流信号源5は、予め設定された周波数の交流信号を、スイッチSA1〜SA5を介して行電極A1〜A5へ供給する。
【0072】
スイッチSA1〜SA5の一方の端子は、図略のコネクタを介して行電極A1〜A5と接続され、他方の端子は交流信号源5に接続されている。スイッチSB1〜SB5の一方の端子は、図略のコネクタを介して列電極B1〜B5と接続され、他方の端子は交流電流計6を介して回路グラウンドに接続されている。接地スイッチSAg1〜SAg5の一方の端子は、図略のコネクタを介して行電極A1〜A5と接続され、他方の端子は回路グラウンドに接続されている。接地スイッチSBg1〜SBg5の一方の端子は、図略のコネクタを介して列電極B1〜B5と接続され、他方の端子は回路グラウンドに接続されている。
【0073】
スイッチSA1〜SA5、SB1〜SB5、接地スイッチSAg1〜SAg5、SBg1〜SBg5は、制御部7からの制御信号に応じてオンオフする。スイッチSA1〜SA5がオンすると、それぞれに対応する行電極へ、交流信号源5から出力された交流信号を供給する。スイッチSB1〜SB5がオンすると、それぞれに対応する列電極が交流電流計6に接続される。
【0074】
接地スイッチSAg1〜SAg5がオンすると、それぞれに対応する行電極が回路グラウンドに接続され、接地スイッチSBg1〜SBg5がオンすると、それぞれに対応する列電極が回路グラウンドに接続される。
【0075】
制御部7は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶部、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。制御部7は、例えば記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより、押圧力制御部71、静電容量測定部72(情報取得部)、差演算部73、及び判定部74として機能する。
【0076】
押圧力制御部71は、昇降機構4によって押圧部材3を昇降させて、互いに異なる複数の押圧力を押圧部材3によりタッチ面Psに加えさせ、当該各押圧力に対応する静電容量を、静電容量測定部72によって測定させる。複数の押圧力としては、例えば、基準押圧力F0、押圧力F1、押圧力F2、及び押圧力F3が用いられる。
【0077】
基準押圧力F0は、実質的に圧力0であり、各疑似指32の先端をタッチ面Psに無加重で軽くタッチさせる状態に対応している。基準押圧力F0は、昇降機構4による押圧部材3の位置決め精度やコイルばね323のバラツキ等を考慮して、例えば5g以下の実質的に0と考えられる微少な圧力とされている。押圧力F1は例えば50g、押圧力F2は例えば150g、押圧力F3は例えば250gとされている。
【0078】
静電容量測定部72は、昇降機構4によって押圧部材3がタッチ面Psにタッチされた状態で、設定位置(1,1)〜(5,5)に対応する静電容量を測定する。具体的には、設定位置(m,n)の静電容量を測定するときは、静電容量測定部72は、スイッチSAmをオン、接地スイッチSAgmをオフ、スイッチSAm以外のスイッチSAをオフ、接地スイッチSAgm以外の接地スイッチSAgをオンする。これにより、行電極Amが選択され、行電極Am以外の行電極Aが回路グラウンドに接続される。また、交流信号源5からスイッチSAmを介して行電極Amへ交流信号が供給される。
【0079】
また、静電容量測定部72は、スイッチSBnをオン、接地スイッチSBgnをオフ、スイッチSBn以外のスイッチSBをオフ、接地スイッチSBgn以外の接地スイッチSBgをオンする。これにより、列電極Bnが選択されて交流電流計6に接続され、列電極Bn以外の列電極Bが回路グラウンドに接続される。その結果、交流信号源5から行電極Amへ供給された交流信号が、設定位置(m,n)の静電容量と列電極Bnとを介して交流電流計6に流れる。
【0080】
交流電流計6は、流れる電流の電流値を測定し、その電流値を静電容量測定部72へ送信する。この場合、交流電流計6に流れる電流は、設定位置(m,n)の静電容量に応じて変化し、設定位置(m,n)の静電容量が大きいほど、交流電流計6で測定される電流値が大きくなる。静電容量測定部72は、交流電流計6で測定された電流値から、設定位置(m,n)の静電容量を算出する。以下、設定位置(m,n)の静電容量を、静電容量(m,n)と称する。
【0081】
静電容量測定部72は、スイッチSA1〜SA5、接地スイッチSAg1〜SAg5、スイッチSB1〜SB5、及び接地スイッチSBg1〜SBg5を順次切り替えて、押圧部材3の各疑似指32によってタッチ面Psがタッチされた位置に応じた静電容量(1,1)〜(5,5)を取得する。
【0082】
差演算部73は、基準押圧力F0のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、押圧力F1のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、押圧力F2のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3のときの静電容量(1,1)〜(5,5)に基づいて、設定位置毎に、基準押圧力F0のときの静電容量(1,1)〜(5,5)と、押圧力F1,F2,F3のときの静電容量(1,1)〜(5,5)との差を、押圧力F1に対応する差(1,1)〜(5,5)、押圧力F2に対応する差(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3に対応する差(1,1)〜(5,5)として算出する。
【0083】
図5〜
図7は、押圧力F1,F2,F3に対応する差の一例を三次元的に表したグラフである。
図5は押圧力F1(=50g)に対応する差を示し、
図6は押圧力F2(=150g)に対応する差を示し、
図7は押圧力F3(=250g)に対応する差を示している。
図5〜
図7におけるX軸、Y軸は、タッチ面Psに設定されたX−Y座標に対応し、すなわちタッチ面Ps上の位置を示している。Z軸は、差(1,1)〜(5,5)を示している。
【0084】
判定部74は、差演算部73によって算出された、押圧力F1に対応する差(1,1)〜(5,5)、押圧力F2に対応する差(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3に対応する差(1,1)〜(5,5)に基づいて、タッチパネルPの良否を判定する。具体的には、例えば押圧力F1に対応する差(1,1)〜(5,5)、押圧力F2に対応する差(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3に対応する差(1,1)〜(5,5)を、それぞれ予め設定された基準範囲と比較し、当該各差のうちいずれかが基準範囲外のとき、タッチパネルPが不良であると判定する。なお、基準範囲は、押圧力F1,F2,F3のそれぞれに対応して異なる値の範囲が設定されていてもよい。
【0085】
次に、上述のように構成されたタッチパネル検査装置1により実行されるタッチパネル検査方法について説明する。
図8、
図9は、
図1に示すタッチパネル検査装置1により実行されるタッチパネル検査方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートにおいて、同一の処理には同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0086】
まず、押圧力制御部71は、昇降機構4によって、押圧部材3を下降させ、基準押圧力F0で各疑似指32の先端部をタッチ面Psに当接させる(ステップS1:タッチ工程)。次に、押圧力制御部71は、静電容量測定部72によって、基準押圧力F0に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)を取得させる(ステップS2:情報取得工程)。
【0087】
次に、押圧力制御部71は、昇降機構4によって、押圧部材3をわずかに下降させ、押圧力F1で各疑似指32の先端部をタッチ面Psに押圧させる(ステップS3)。次に、押圧力制御部71は、静電容量測定部72によって、押圧力F1に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)を取得させる(ステップS4:情報取得工程)。
【0088】
次に、押圧力制御部71は、昇降機構4によって、押圧部材3をわずかに下降させ、押圧力F2で各疑似指32の先端部をタッチ面Psに押圧させる(ステップS5)。次に、押圧力制御部71は、静電容量測定部72によって、押圧力F2に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)を取得させる(ステップS6:情報取得工程)。
【0089】
次に、押圧力制御部71は、昇降機構4によって、押圧部材3をわずかに下降させ、押圧力F3で各疑似指32の先端部をタッチ面Psに押圧させる(ステップS7)。次に、押圧力制御部71は、静電容量測定部72によって、押圧力F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)を取得させる(ステップS8:情報取得工程)。
【0090】
次に、差演算部73は、基準押圧力F0のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、押圧力F1のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、押圧力F2のときの静電容量(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3のときの静電容量(1,1)〜(5,5)に基づいて、設定位置毎に、基準押圧力F0のときの静電容量(1,1)〜(5,5)と、押圧力F1,F2,F3のときの静電容量(1,1)〜(5,5)との差を、押圧力F1に対応する差(1,1)〜(5,5)、押圧力F2に対応する差(1,1)〜(5,5)、及び押圧力F3に対応する差(1,1)〜(5,5)として算出する(ステップS9:差演算工程)。
【0091】
ステップS2,S4,S6,S8において取得された、基準押圧力F0、押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)は、タッチ面Psの同じ位置に各疑似指32が接した状態で測定された静電容量である。従って、基準押圧力F0、押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)のいずれもが、同一のタッチ位置に各疑似指32がタッチされた状態の静電容量を表しており、各疑似指32のタッチ位置に応じた静電容量の変化量が大きいのに対し、圧力差に伴う静電容量の変化は比較的小さい。
【0092】
一方、押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)には、各疑似指32のタッチ位置に応じた静電容量と、圧力差に伴う静電容量の変化量とが重畳されている。そのため、押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)に基づいて、圧力差に伴う静電容量の変化量が正常か否かを判定する場合、判定精度が低下する。そこで、ステップS9において、押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)から基準押圧力F0のときの静電容量(1,1)〜(5,5)を差し引くことによって、各疑似指32のタッチ位置に応じた静電容量を排除することができる。その結果、主に圧力差に伴う静電容量の変化量が反映された、差(1,1)〜(5,5)を押圧力F1,F2,F3に対応して算出することにより、差(1,1)〜(5,5)に基づいて、圧力差に伴う静電容量の変化量が正常か否かを判定する判定精度が向上する。
【0093】
図5〜
図7に示す例では、押圧力F1(50g)の
図5、押圧力F2(150g)の
図6、及び押圧力F3(250g)の
図7は、
図6及び
図7においてピークGが生じていることを除いて、略同様の差を示していることが判る。
【0094】
次に、判定部74は、押圧力F1,F2,F3に対応する差(1,1)〜(5,5)のうちいずれかが、基準範囲外であるか否かを判定する(ステップS11:判定工程)。
図5〜
図7に示す例では、押圧力F2,F3(
図6,
図7)のとき、ピークGで差が基準範囲外となり(ステップS11でYES)、判定部74は、タッチパネルPが不良であると判定し(ステップS12)、例えば図略の液晶表示器やLED(Light Emitting Diode)等の表示装置にその判定結果を表示する。
【0095】
次に、判定部74は、その基準範囲外となったピークGの座標位置、及びそのときの押圧力を含む判定結果情報を、例えばHDD等の記憶部に累積的に記憶し(ステップS13)、処理を終了する。なお、判定結果情報には、座標位置及び押圧力のいずれか一方のみが含まれていてもよい。
【0096】
一方、押圧力F1,F2,F3に対応する差(1,1)〜(5,5)のうちいずれもが基準範囲内であった場合(ステップS11でNO)、判定部74は、タッチパネルPが正常であると判定し(ステップS14)、処理を終了する。
【0097】
図5〜
図7に示す例では、押圧力F2,F3(
図6,
図7)のとき、ピークGで差が基準範囲外となり(ステップS11でYES)、タッチパネルPの不良を検出することができる。一方、押圧力F1(
図5)のとき、ピークGは生じていない。従って、もし仮に、ステップS5〜S8を実行せず、ステップS9で押圧力F2,F3に対応する差(1,1)〜(5,5)を算出しなかった場合、
図5〜
図7に示すような不良を検出することができない。
【0098】
一方、タッチパネル検査装置1によれば、ステップS1〜S12の処理により、
図5〜
図7に示すような、疑似指32の押圧力に依存する不良を検出することができるので、不良の判定精度を向上することができる。
【0099】
また、複数の疑似指32により、タッチ面Psの複数箇所に同時にタッチして、タッチ面Psの全領域を検査することができるので、背景技術のように、一本のプローブを移動させながら検査を行う場合よりも検査時間を短縮することができる。また、複数の疑似指32により、タッチ面Psの複数箇所に同時にタッチして、タッチ面Psの全領域を検査することにより、静電容量(1,1)〜(5,5)や差(1,1)〜(5,5)には、タッチパネルPが均一でない歪みが反映される。その結果、タッチパネルPの歪みを不良として検出することが可能となる。
【0100】
また、ステップS13において、基準範囲外となったピークGの座標位置、及びそのときの押圧力を含む判定結果情報が累積的に記憶されるので、複数枚のタッチパネルPを検査した場合、各タッチパネルPの判定結果情報が記憶部に累積的に記憶される。従って、記憶部に記憶された判定結果情報を統計的に処理することにより、例えば基準範囲外となる座標位置が特定の座標位置に集中していたり、特定の押圧力で基準範囲外となっていたりというような、タッチパネルPの生産ロットの傾向を把握することが可能となる。このような生産ロットの傾向から、タッチパネルPの生産工程を改善することが容易となる。
【0101】
なお、必ずしも複数の押圧力F1,F2,F3に対応する差(1,1)〜(5,5)を用いて判定を行う必要はなく、一つの押圧力F3と一つの基準押圧力F0のみを用いて例えばステップS3〜S6を実行しなくてもよい。しかしながら、不良は、必ずしも押圧力が高いほど発現しやすいとは限らない。例えば押圧力F2のときにピークGが現れて不良が発現し、押圧力F3のときにはピークGが小さく、あるいは現れずに不良が発現しない場合がある。このような場合、一つの基準押圧力F0と一つの押圧力F3のみを用いる構成では、タッチパネルPの不良を検出できないおそれがある。そこで、ステップS3〜S6を実行し、一つの基準押圧力F0と例えば複数の押圧力F1,F2,F3を用いる構成は、タッチパネルPの不良検出精度を向上できる点でより好ましい。
【0102】
また、基準押圧力F0は、必ずしも実質的にゼロである必要はない。例えば、基準押圧力F0は50g、押圧力F1が実質的にゼロ、押圧力F2が150g、押圧力F3が250gであってもよい。
【0103】
また、差演算部73を備えず、ステップS9を実行せず、ステップS11において、基準押圧力F0及び押圧力F1,F2,F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)のうちいずれかが基準範囲外か否かを判定する構成としてもよい。また、差演算部73を備えず、例えばステップS2〜S6,S9を実行せず、ステップS11において、一つの押圧力、例えば押圧力F3に対応する静電容量(1,1)〜(5,5)のうちいずれかが基準範囲外か否かを判定する構成としてもよい。
【0104】
また、タッチパネルPは、必ずしも静電容量方式に限らない。タッチパネルPは、例えば抵抗膜方式等、他の方式であってもよい。例えば抵抗膜方式では、抵抗値が情報として用いられ、タッチパネルPが採用する方式に応じたパラメータが、情報として用いられる。例えば、タッチパネルPが、静電容量や抵抗値等の位置検出用の物理量を計測する回路を内蔵し、その計測値をデジタル値で出力する構成であってもよい。この場合、その計測値を示すデジタル値が情報として用いられる。また、タッチパネルPが、タッチ位置を検出する回路を内蔵し、タッチ位置を示す位置データを出力する構成であってもよい。この場合、その位置データが情報として用いられる。
(第2実施形態)
【0105】
次に、本発明の第2実施形態に係るタッチパネル検査方法を用いたタッチパネル検査装置1aについて説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係るタッチパネル検査装置1aの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図10に示すタッチパネル検査装置1aと
図4に示すタッチパネル検査装置1とでは、制御部7aの構成が異なる。その他の構成は
図4に示すタッチパネル検査装置1と同様であるのでその説明を省略し、以下本実施形態の特徴的な点について説明する。
【0106】
制御部7aは、制御部7とは、差演算部73の代わりに位置ずれ量演算部73aを備える点、及び昇降制御部71a、判定部74aの構成が異なる。
【0107】
昇降制御部71aは、昇降機構4によって押圧部材3を昇降させて、タッチ面Psにタッチさせ、当該各押圧力に対応する静電容量を、静電容量測定部72によって測定させる。このとき、押圧部材3をタッチ面Psにタッチさせる押圧力は、例えば実質的に0であってもよく、50g、150g、250g等であってもよい。
【0108】
上述の記憶部には、押圧部材3をタッチ面Psにタッチさせることにより複数の疑似指32がタッチされることになるタッチ面Ps上の複数の位置座標が、複数の基準タッチ位置として予め記憶されている。各基準タッチ位置は、例えば誤差が100μm〜900μm以下となるように、予め高精度で計測され、記憶されている。
【0109】
位置ずれ量演算部73aは、静電容量測定部72により取得された静電容量(1,1)〜(5,5)から、複数の疑似指32のタッチ位置をタッチ検出位置として算出する。そして、位置ずれ量演算部73aは、複数の疑似指32のタッチ検出位置と、複数の基準タッチ位置との各ずれ量を算出する。
【0110】
ところで、複数の基準タッチ位置は、必ずしも設定位置(1,1)〜(5,5)と一致していない。例えば、設定位置(1,1)と設定位置(2,2)の間などに疑似指32が当接される場合もある。そこで、位置ずれ量演算部73aは、設定位置(1,1)〜(5,5)で検出された静電容量値に基づき演算処理を施すことで、設定位置(1,1)〜(5,5)の間隔よりも高い分解能で、複数の疑似指32の各タッチ検出位置を算出する。このような各タッチ検出位置の演算方法としては、例えば特開2013−134698号公報に記載されている重心法等を用いることができる。
【0111】
図11は、位置ずれ量演算部73aにより算出されたずれ量の一例を三次元的に表したグラフである。X軸、Y軸は、タッチ面Psに設定されたX−Y座標に対応し、すなわちタッチ面Ps上の位置を示している。Z軸はずれ量を示している。
図11に示す例では、タッチ面Psの周縁近傍でずれ量が大きくなっている。タッチパネルPは、一般に、タッチパネルのひずみによって、タッチ面Psの周縁近傍でずれ量が大きくなる傾向がある。
【0112】
判定部74aは、位置ずれ量演算部73aにより算出された各ずれ量に基づいて、タッチパネルPの良否を判定する。例えば、各ずれ量の最大値が、予め設定された基準値以上であれば不良と判定する。基準値は、例えば5mmとすることができる。
【0113】
次に、上述のように構成されたタッチパネル検査装置1aにより実行されるタッチパネル検査方法について説明する。
図12は、
図10に示すタッチパネル検査装置1aにより実行されるタッチパネル検査方法の一例を示すフローチャートである。
【0114】
まず、昇降制御部71aは、昇降機構4によって、押圧部材3を下降させ、各疑似指32の先端部をタッチ面Psに当接させる(ステップS21:タッチ工程)。次に、昇降制御部71aは、静電容量測定部72によって、静電容量(1,1)〜(5,5)を取得させる(ステップS22:情報取得工程)。
【0115】
次に、位置ずれ量演算部73aは、静電容量(1,1)〜(5,5)に基づいて、例えば重心法を用いて各疑似指32のタッチ位置をタッチ検出位置として算出する(ステップS23)。次に、位置ずれ量演算部73aは、複数の疑似指32のタッチ検出位置と、複数の基準タッチ位置との各ずれ量を算出する(ステップS24)。これにより、例えば
図11に示すような、タッチ面Ps上の位置座標に対応したずれ量のデータが得られる。
【0116】
次に、判定部74aは、各ずれ量を基準値(例えば5mm)と比較し、各ずれ量のうちいずれかが基準値以上であるか否か(各ずれ量の最大値が基準値以上か否か)を判定する(ステップS25:判定工程)。各ずれ量のうちいずれかが基準値以上のとき(ステップS25でYES)、判定部74aは、タッチパネルPが不良であると判定し(ステップS26)、例えば図略の液晶表示器やLED(Light Emitting Diode)等の表示装置にその判定結果を表示する。
【0117】
次に、判定部74aは、ずれ量が基準値以上となった基準タッチ位置、タッチ検出位置、及びそのときのずれ量を含む判定結果情報を、例えばHDD等の記憶部に累積的に記憶し(ステップS27)、処理を終了する。なお、判定結果情報には、基準タッチ位置、タッチ検出位置、及びそのときのずれ量のうち一部が含まれていてもよい。
【0118】
一方、各ずれ量のいずれもが基準値に満たないとき(ステップS25でNO)、判定部74aは、タッチパネルPが正常であると判定し(ステップS28)、処理を終了する。
【0119】
以上、ステップS21〜S28の処理によれば、複数の疑似指32により、タッチ面Psの複数箇所に同時にタッチして、タッチ面Psの全領域を検査することができるので、背景技術のように、一本のプローブを移動させながら検査を行う場合よりも検査時間を短縮することができる。
【0120】
また、ステップS27において、ずれ量が基準値以上となった基準タッチ位置、タッチ検出位置、及びそのときのずれ量を含む判定結果情報が累積的に記憶されるので、複数枚のタッチパネルPを検査した場合、各タッチパネルPの判定結果情報が記憶部に累積的に記憶される。従って、記憶部に記憶された判定結果情報を統計的に処理することにより、例えばずれ量が基準値以上となる座標位置が特定の座標位置に集中している等というような、タッチパネルPの生産ロットの傾向を把握することが可能となる。このような生産ロットの傾向から、タッチパネルPの生産工程を改善することが容易となる。
【0121】
なお、
図4に示すタッチパネル検査装置1において、差演算部73、判定部74の代わりに位置ずれ量演算部73a、判定部74aを用い、
図13、
図14に示すタッチパネル検査方法を実行してもよい。すなわち、
図13において、ステップS1〜S8を実行後、ステップS23aにおいて、位置ずれ量演算部73aは、基準押圧力F0、押圧力F1,F2,F3にそれぞれ対応する静電容量(1,1)〜(5,5)に基づいて、例えば重心法を用いて各疑似指32のタッチ位置を、基準押圧力F0、押圧力F1,F2,F3にそれぞれ対応するタッチ検出位置として算出する(ステップS23a)。
【0122】
次に、位置ずれ量演算部73aは、基準押圧力F0、押圧力F1,F2,F3にそれぞれ対応する、各タッチ検出位置と、複数の基準タッチ位置との各ずれ量を算出する(ステップS24a)。
【0123】
以下、ステップS25,S26を実行し、ステップS27aで、判定部74aは、ずれ量が基準値以上となった基準タッチ位置、タッチ検出位置、そのときのずれ量、及び押圧力を含む判定結果情報を、例えばHDD等の記憶部に累積的に記憶し(ステップS27)、処理を終了する。なお、判定結果情報には、基準タッチ位置、タッチ検出位置、そのときのずれ量、及び押圧力のうち一部が含まれていてもよい。
【0124】
以上、
図13、
図14に示すタッチパネル検査方法によっても、ステップS1〜S13の場合と同様、タッチパネルの不良検出精度を向上させることができる。また、複数の疑似指32により、タッチ面Psの複数箇所に同時にタッチして、タッチ面Psの全領域を検査することにより、静電容量(1,1)〜(5,5)には、タッチパネルPが均一でない歪みが反映される。その結果、タッチパネルPの歪みがタッチ検出位置と、基準タッチ位置のずれ量にも反映されるので、タッチパネルPの歪みを不良として検出することが可能となる。