特許第6304044号(P6304044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304044
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】感放射線樹脂組成物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20180326BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20180326BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 5/28 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G03F7/004 502
   G03F7/004 501
   G03F7/40 501
   C08L101/00
   C08K5/28
【請求項の数】6
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-559797(P2014-559797)
(86)(22)【出願日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2014052408
(87)【国際公開番号】WO2014119777
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-19167(P2013-19167)
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聡
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆志
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−272495(JP,A)
【文献】 特開2009−122650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
C08K 5/28
C08L 101/00
G03F 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)、アジド化合物(B)、架橋剤(C)、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を含有してなる感放射線樹脂組成物。
【請求項2】
酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)をさらに含有する請求項1に記載の感放射線樹脂組成物。
【請求項3】
前記硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)が、硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄原子を含有するセミヒンダードフェノール系酸化防止剤、および硫黄原子を含有するレスヒンダードフェノール系酸化防止剤から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の感放射線樹脂組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する、前記硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の含有量が、0.1〜20重量部であり、
前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する、前記硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)の含有量が、0.1〜15重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の感放射線樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品。
【請求項6】
請求項5に記載の電子部品の製造方法であって、前記感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を形成し、前記樹脂膜をパターン化した後に、酸化雰囲気で焼成する工程を備える電子部品の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線樹脂組成物およびこの感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品に係り、さらに詳しくは、露光感度が高く、焼成後の形状保持性に優れ、酸化性雰囲気で焼成した後も高い透明性を有する樹脂膜を与えることができる感放射線樹脂組成物およびこの感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子や液晶表示素子などの各種表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、カラーフィルター、ブラックマトリックス等の電子部品には、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜等として種々の樹脂膜が設けられている。また、有機EL素子には、発光体部を分離するために画素分離膜としての樹脂膜が設けられており、さらに、薄膜トランジスタ型液晶用の表示素子や集積回路素子等の素子には、層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜としての樹脂膜が設けられている。
【0003】
従来、これらの樹脂膜を形成するための樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料が汎用されていた。近年においては、配線やデバイスの高密度化に伴い、これらの樹脂材料にも、低誘電性等の電気特性に優れた新しい樹脂材料の開発が求められている。
【0004】
これらの要求に対応するため、例えば、特許文献1には、環状オレフィン系重合体、架橋剤、感放射線化合物、フェノール系老化防止剤及び非フェノール系老化防止剤を含有してなる感放射線樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載の感放射線樹脂組成物によれば、酸化性雰囲気で焼成した後も高い透明性を有する樹脂膜を得ることができるものの、得られる樹脂膜は、放射線に対する露光感度が低く、そのため、生産性の向上という観点より、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、露光感度が高く、焼成後の形状保持性に優れ、酸化性雰囲気で焼成した後も高い透明性を有する樹脂膜を与えることができる感放射線樹脂組成物、および、このような感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、バインダー樹脂、感放射線化合物、および架橋剤とともに、特定の2種類の酸化防止剤、具体的には、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤と、硫黄含有フェノール系酸化防止剤とを併用して配合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕バインダー樹脂(A)、感放射線化合物(B)、架橋剤(C)、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を含有してなる感放射線樹脂組成物、
〔2〕酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)をさらに含有する前記〔1〕に記載の感放射線樹脂組成物、
〔3〕前記硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)が、硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄原子を含有するセミヒンダードフェノール系酸化防止剤、および硫黄原子を含有するレスヒンダードフェノール系酸化防止剤から選択される少なくとも一種である前記〔1〕または〔2〕に記載の感放射線樹脂組成物、
〔4〕前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する、前記硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の含有量が、0.1〜20重量部であり、前記バインダー樹脂(A)100重量部に対する、前記硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)の含有量が、0.1〜15重量部である前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の感放射線樹脂組成物、
〔5〕前記感放射線化合物(B)が、アジド化合物である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の感放射線樹脂組成物、
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品、ならびに、
〔7〕前記感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を形成し、前記樹脂膜をパターン化した後に、酸化雰囲気で焼成する工程を経て製造される前記〔6〕に記載の電子部品、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、露光感度が高く、焼成後の形状保持性に優れ、酸化性雰囲気で焼成した後も高い透明性を有する樹脂膜を与えることができる感放射線樹脂組成物、および該感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を備える電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感放射線樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)、感放射線化合物(B)、架橋剤(C)、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を含有してなる。
【0011】
(バインダー樹脂(A))
本発明で用いるバインダー樹脂(A)としては、特に限定されないが、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A1)、アクリル樹脂(A2)、カルド樹脂(A3)、ポリシロキサン(A4)またはポリイミド(A5)であることが好ましく、これらの中でも、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A1)が特に好ましい。 これらのバインダー樹脂(A)は、それぞれ単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0012】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A1)(以下、単に「環状オレフィン重合体(A1)」とする。)としては、1または2以上の環状オレフィン単量体の重合体、または、1または2以上の環状オレフィン単量体と、これと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられるが、本発明においては、環状オレフィン重合体(A1)を形成するための単量体として、少なくともプロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)を用いることが好ましい。
【0013】
ここで、プロトン性極性基とは、周期律表第15族又は第16族に属する原子に水素原子が直接結合している原子を含む基をいう。周期律表第15族または第16族に属する原子のなかでも、周期律表第15族または第16族の第1または第2周期に属する原子が好ましく、より好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0014】
このようなプロトン性極性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基等の酸素原子を有する極性基;第一級アミノ基、第二級アミノ基、第一級アミド基、第二級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等の硫黄原子を有する極性基;等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有するものが好ましく、より好ましくはカルボキシ基である。 本発明において、プロトン性極性基を有する環状オレフィン樹脂に結合しているプロトン性極性基の数に特に限定はなく、また、相異なる種類のプロトン性極性基が含まれていてもよい。
【0015】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)(以下、適宜、「単量体(a)」という。)の具体例としては、2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−カルボキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−メトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−エトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−プロポキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ブトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ペンチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−シクロヘキシルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−フェノキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ナフチルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ビフェニルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ベンジルオキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−2−ヒドロキシエトキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ペンチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ナフチルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ビフェニルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ベンジルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヒドロキシエトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニル−3−ヒドロキシカルボニルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−メチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−カルボキシメチル−4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、N−(ヒドロキシカルボニルメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルペンチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシカルボニルエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシカルボニルプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルフェネチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(ヒドロキシカルボニル)エチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシカルボニルフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のカルボキシ基含有環状オレフィン;2−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、4−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(ヒドロキシエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、3−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4,8−ジエン、3−ヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4,8−ジエン、4−ヒドロキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−ヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジヒドロキシメチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(ヒドロキシエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、N−(ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、等の水酸基含有環状オレフィン等が挙げられる。これらのなかでも、得られる樹脂膜の密着性が高くなるという点より、カルボキシ基含有環状オレフィンが好ましく、4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エンが特に好ましい。これら単量体(a)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
環状オレフィン重合体(A1)中における、単量体(a)の単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜90モル%である。単量体(a)の単位の含有割合が少なすぎると、本発明の樹脂組成物に感放射線性化合物を添加した際における、感放射線性が不十分となったり、現像時に溶解残渣が発生したりするおそれがあり、多すぎると、環状オレフィン重合体(A1)の極性溶剤への溶解性が不十分となるおそれがある。
【0017】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A1)は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)とを共重合して得られる共重合体であってもよい。このような共重合可能な単量体としては、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)、極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)、および環状オレフィン以外の単量体(b3)(以下、適宜、「単量体(b1)」、「単量体(b2)」、「単量体(b3)」という。)が挙げられる。
【0018】
プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)としては、たとえば、N−置換イミド基、エステル基、シアノ基、酸無水物基またはハロゲン原子を有する環状オレフィンが挙げられる。
【0019】
N−置換イミド基を有する環状オレフィンとしては、たとえば、下記式(1)で表される単量体、または下記式(2)で表される単量体が挙げられる。
【化1】
(上記式(1)中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜16のアルキル基またはアリール基を表す。nは1ないし2の整数を表す。)
【化2】
(上記式(2)中、Rは炭素数1〜3の2価のアルキレン基、Rは、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基を表す。)
【0020】
上記式(1)中において、Rは炭素数1〜16のアルキル基又はアリール基であり、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基等の直鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基等の環状アルキル基;2−プロピル基、2−ブチル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−メチルトリデシル基、1−メチルテトラデシル基などの分岐状アルキル基;などが挙げられる。また、アリール基の具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性および極性溶剤への溶解性により優れることから、炭素数6〜14のアルキル基およびアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアルキル基およびアリール基がより好ましい。炭素数が4以下であると極性溶剤への溶解性に劣り、炭素数が17以上であると耐熱性に劣り、さらに樹脂膜をパターン化した場合に、熱により溶融しパターンを消失してしまうという問題がある。
【0021】
上記式(1)で表される単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アダマンチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルブチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ブチルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルペンチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルヘプチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−プロピルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(5−メチルノニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−エチルオクチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルウンデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルドデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルトリデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルテトラデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−メチルペンタデシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボキシイミド、N−(2,4−ジメトキシフェニル)−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボキシイミド等が挙げられる。なお、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
一方、上記式(2)において、Rは炭素数1〜3の2価のアルキレン基であり、炭素数1〜3の2価のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびイソプロピレン基が挙げられる。これらの中でも、重合活性が良好であるため、メチレン基およびエチレン基が好ましい。
【0023】
また、上記式(2)において、Rは、炭素数1〜10の1価のアルキル基、または、炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基である。炭素数1〜10の1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜10の1価のハロゲン化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基およびパーフルオロペンチル基などが挙げられる。これら中でも、極性溶剤への溶解性に優れるため、Rとしては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0024】
なお、上記式(1)、(2)で表される単量体は、たとえば、対応するアミンと、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とのイミド化反応により得ることができる。また、得られた単量体は、イミド化反応の反応液を公知の方法で分離・精製することにより効率よく単離できる。
【0025】
エステル基を有する環状オレフィンとしては、例えば、2−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−アセトキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、2−エトキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、2−プロポキシカルボニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、4−アセトキシテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−エトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−プロポキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−ブトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等が挙げられる。
【0026】
シアノ基を有する環状オレフィンとしては、例えば、4−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−シアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4,5−ジシアノテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、2−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−メチル−2−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2,3−ジシアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、等が挙げられる。
【0027】
酸無水物基を有する環状オレフィンとしては、例えば、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−カルボキシメチル−2−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン無水物、等が挙げられる。
【0028】
ハロゲン原子を有する環状オレフィンとしては、例えば、2−クロロビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−(クロロフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、4−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン、4−メチル−4−クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン等が挙げられる。
【0029】
これら単量体(b1)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
極性基を持たない環状オレフィン単量体(b2)としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(「ノルボルネン」ともいう。)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(「テトラシクロドデセン」ともいう。)、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10.04,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、インデン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10.04,8]ペンタデカ−12−エン等が挙げられる。これら単量体(b2)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
環状オレフィン以外の単量体(b3)の具体例としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン、及びこれらの誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましい。これら単量体(b3)は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
これら単量体(b1)〜(b3)のなかでも、本発明の効果がより一層顕著となるという観点より、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン単量体(b1)が好ましく、N−置換イミド基を有する環状オレフィンが特に好ましい。
【0033】
環状オレフィン重合体(A1)中における、共重合可能な単量体(b)の単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜90モル%である。共重合可能な単量体(b)の単位の含有割合が少なすぎると、環状オレフィン重合体(A1)の極性溶剤への溶解性が不十分となるおそれがあり、多すぎると、本発明の樹脂組成物に感放射線性化合物を添加した際における、感放射線性が不十分となったり、現像時に溶解残渣が発生したりするおそれがある。
【0034】
なお、本発明においては、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン系重合体に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入することで、環状オレフィン重合体(A1)としてもよい。プロトン性極性基を有しない重合体は、上述した単量体(b1)および(b2)のうち少なくとも一種と、必要に応じて単量体(b3)とを任意に組み合わせて重合することによって得ることができる。
【0035】
なお、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A1)は、上述した単量体を開環重合させた開環重合体であってもよいし、あるいは、上述した単量体を付加重合させた付加重合体であってもよいが、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、開環重合体であることが好ましい。
【0036】
開環重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、メタセシス反応触媒の存在下に開環メタセシス重合することにより製造することができる。製造方法としては、たとえば、国際公開第2010/110323号の[0039]〜[0079]に記載されている方法等を用いることができる。 一方、付加重合体は、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体(a)および必要に応じて用いられる共重合可能な単量体(b)を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
【0037】
また、本発明で用いる環状オレフィン重合体(A1)が、開環重合体である場合には、さらに水素添加反応を行い、主鎖に含まれる炭素−炭素二重結合が水素添加された水素添加物とすることが好ましい。環状オレフィン重合体(A1)が水素添加物である場合における、水素化された炭素−炭素二重結合の割合(水素添加率)は、通常50%以上であり、耐熱性の観点から、70%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
【0038】
また、本発明で使用するアクリル樹脂(A2)は、特に限定されないが、アクリル基を有するカルボン酸、アクリル基を有するカルボン酸無水物、またはエポキシ基含有アクリレート化合物およびオキセタン基含有アクリレート化合物から選ばれる少なくとも1つを必須成分とする単独重合体または共重合体が好ましい。
【0039】
アクリル基を有するカルボン酸の具体例としては、(メタ)アクリル酸〔アクリル酸および/またはメタクリル酸の意。以下、メチル(メタ)アクリレートなども同様。〕、クロトン酸、マイレン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、フタル酸モノ−(2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル)、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アクリル基を有するカルボン酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物等が挙げられる。
エポキシ基含有アクリレート化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
オキセタン基含有アクリレート化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルオキセタン−3−イル)エチル、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)エチル、(メタ)アクリル酸(3−クロロメチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(オキセタン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−メチルオキセタン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−エチルオキセタン−2−イル)メチル、(1−メチル−1−オキセタニル−2−フェニル)−3−(メタ)アクリレート、(1−メチル−1−オキセタニル)−2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリレート、及び(1−メチル−1−オキセタニル)−4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等が好ましい。
【0040】
アクリル樹脂(A2)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物およびエポキシ基含有不飽和化合物から選ばれる少なくとも一つと、その他のアクリレート系単量体またはアクリレート以外の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
【0041】
その他のアクリレート系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1 − アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]−3−デセン−8−イル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]−3−デセン−9−イル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、5 − テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル( メタ) アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル、2−[トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]デカン−8−イルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]−3−デセン−8−イルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ] −3−デセン−9−イルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2 ,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−アセチルフェニル) マレイミド、N −(4−ヒドロキシフェニル) マレイミド、N−(4−アセトキシフェニル)マレイミド、N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(1−アニリノナフチル−4)マレイミド、N−[4−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミド、N−(9−アクリジニル)マレイミド等;が挙げられる。これらのなかでも、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0 2 , 6 ]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミド等が好ましい。
【0042】
アクリレート以外の共重合可能な単量体としては、上記アクリル基を有するカルボン酸、アクリル基を有するカルボン酸無水物またはエポキシ基含有アクリレート化合物と共重合可能な化合物ならば特に制限はないが、例えば、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、クロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−アセトキシスチレン、p−カルボキシスチレン、4−ヒドロキシフェニルビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、イソブテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記単量体の重合方法は、常法に従えばよく、例えば、懸濁重合法,乳化重合法,溶液重合法等が採用される。
【0043】
本発明で用いるカルド樹脂(A3)は、カルド構造、すなわち、環状構造を構成している4級炭素原子に二つの環状構造が結合した骨格構造、を有する樹脂である。カルド構造の一般的なものはフルオレン環にベンゼン環が結合したものである。
環状構造を構成している4級炭素原子に二つの環状構造が結合した骨格構造の具体例としては、フルオレン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスアミノフェニルフルオレン骨格、エポキシ基を有するフルオレン骨格、アクリル基を有するフルオレン骨格等が挙げられる。
本発明で用いるカルド樹脂(A3)は、このカルド構造を有する骨格がそれに結合している官能基間の反応等により重合して形成される。カルド樹脂(A3)は、主鎖と嵩高い側鎖が一つの元素で繋がれた構造(カルド構造)をもち、主鎖に対してほぼ垂直方向に環状構造を有している。
【0044】
カルド構造の一例として、エポキシグリシジルエーテル構造を有するカルド構造の例を、下記式(3)に示す。
【化3】
(上記式(3)中、nは0〜10の整数である。)
【0045】
カルド構造を有する単量体は、例えば、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂;ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とアクリル酸との縮合物;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノ−ル類;9,9−ビス(シアノメチル)フルオレン等の9,9−ビス(シアノアルキル)フルオレン類;9,9−ビス(3−アミノプロピル)フルオレン等の9,9−ビス(アミノアルキル)フルオレン類;等が挙げられる。
カルド樹脂(A3)は、カルド構造を有する単量体を重合して得られる重合体であるが、その他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
上記単量体の重合方法は、常法に従えばよく、例えば、開環重合法や付加重合法等が採用される。
【0046】
本発明で用いるポリシロキサン(A4)としては、特に限定されないが、好ましくは下記式(4)で表されるオルガノシランの1種または2種以上を混合、反応させることによって得られる重合体が挙げられる。
(R−Si−(OR4−m (4)
【0047】
上記式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または炭素数6〜15のアリール基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも置換基を有していてもよく、また置換基を有していない無置換体であってもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。
【0048】
また、上記式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、または炭素数6〜15のアリール基であり、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお、これらのアルキル基、アシル基はいずれも置換基を有していてもよく、また置換基を有していない無置換体であってもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としてはフェニル基が挙げられる。
【0049】
さらに、上記式(4)中、mは0〜3の整数であり、m=0の場合は4官能性シラン、m=1の場合は3官能性シラン、m=2の場合は2官能性シラン、m=3の場合は1官能性シランとなる。
【0050】
上記式(4)で表されるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シラン;が挙げられる。
これらのオルガノシランのうち、得られる樹脂膜の耐クラック性や硬度の点から3官能性シランが好ましく用いられる。これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明で用いるポリシロキサン(A4)は、上述のオルガノシランを加水分解および部分縮合させることにより得られる。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、混合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、加熱攪拌する。攪拌中、必要に応じて蒸留によって加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)や縮合副生物(水)を留去してもよい。
【0052】
本発明で用いるポリイミド(A5)は、テトラカルボン酸無水物とジアミンを反応させて得たポリイミド前駆体を熱処理することで得ることができる。ポリイミドを得るための前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリイソイミド、ポリアミド酸スルホンアミド等が挙げられる。
【0053】
本発明で用いるポリイミド(A5)は公知の方法によって合成される。すなわち、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを選択的に組み合わせ、これらをN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン等の極性溶媒中で反応させる等、公知の方法によって合成される。
【0054】
ジアミンを過剰に用いて重合した際、生成したポリイミド(A5)の末端アミノ基にカルボン酸無水物を反応させ、末端アミノ基を保護することができる。また、テトラカルボン酸無水物を過剰に用いて重合した際、生成したポリイミド(A5)の末端酸無水物基にアミン化合物を反応させ、末端酸無水物基を保護することもできる。
【0055】
このようなカルボン酸無水物の例としてはフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、無水マレイン酸、ナフタル酸無水物、水素化フタル酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等を、アミン化合物の例としてはアニリン、2−ヒドロキシアニリン、3−ヒドロキシアニリン、4−ヒドロキシアニリン、2−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン等を挙げることができる。
【0056】
本発明で使用されるバインダー樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは1,500〜100,000、より好ましくは2,000〜10,000の範囲である。
また、バインダー樹脂(A)の分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)比で、通常、4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。
バインダー樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として求められる値である。
【0057】
(感放射線化合物(B))
感放射線化合物(B)は、紫外線や電子線等の放射線の照射により、化学反応を引き起こすことのできる化合物である。本発明において感放射線化合物(B)は、樹脂組成物から形成されてなる樹脂膜のアルカリ溶解性を制御できるものが好ましく、特に、光酸発生剤を使用することが好ましい。
【0058】
このような感放射線化合物(B)としては、例えば、アセトフェノン化合物、トリアリールスルホニウム塩、キノンジアジド化合物等のアジド化合物等が挙げられるが、好ましくはアジド化合物、特に好ましくはキノンジアジド化合物である。
【0059】
キノンジアジド化合物としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を有する化合物とのエステル化合物を用いることができる。キノンジアジドスルホン酸ハライドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物の代表例としては、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等が挙げられる。これら以外のフェノール性水酸基を有する化合物としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー等が挙げられる。
【0060】
また、光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物の他、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、α,α’−ビス(スルホニル)ジアゾメタン系化合物、α−カルボニル−α’−スルホニルジアゾメタン系化合物、スルホン化合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物等、公知のものを用いることができる。
これらの感放射線化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の感放射線樹脂組成物中における感放射線化合物(B)の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部であり、より好ましくは15〜70重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。感放射線化合物(B)の含有量をこの範囲とすることにより、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の露光感度、焼成後の形状保持性、および透明性をより良好なものとすることができる。
【0062】
(架橋剤(C))
本発明で用いる架橋剤(C)は、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成するものや、バインダー樹脂(A)と反応して樹脂分子間に架橋構造を形成するものであり、具体的には、2以上の反応性基を有する化合物が挙げられる。このような反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基が挙げられ、より好ましくはアミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基であり、アミノ基及びエポキシ基が特に好ましい。
【0063】
架橋剤(C)の分子量は、特に限定されないが、通常、100〜100,000、好ましくは300〜50,000、より好ましくは500〜10,000である。架橋剤(C)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、特に、2種以上組み合わせて用いることにより、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の露光感度、焼成後の形状保持性、および透明性をより良好なものとすることができる。
【0064】
架橋剤(C)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォン等のアジド類;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等のポリアミド類;N,N,N’,N’,N’’,N’’−(ヘキサアルコキシアルキル)メラミン等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいメラミン類(商品名「サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル232、サイメル235、サイメル272、サイメル212、マイコート506」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ、マイコートシリーズ);N,N’,N’’,N’’’−(テトラアルコキシアルキル)グリコールウリル等のメチロール基やイミノ基等を有していてもよいグリコールウリル類(商品名「サイメル1170」{以上、サイテックインダストリーズ社製}等のサイメルシリーズ);エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル、エポキシアクリレート重合体等のエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0065】
エポキシ化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンを骨格とする3官能性のエポキシ化合物(商品名「XD−1000」、日本化薬社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(シクロヘキサン骨格及び末端エポキシ基を有する15官能性の脂環式エポキシ樹脂、商品名「EHPE3150」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ビス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状3官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT301」、ダイセル化学工業社製)、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)、1,2:8,9−ジエポキシリモネン(商品名「セロキサイド3000」、ダイセル化学工業社製)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名「Z−6043」、東レ・ダウコーニング社製)等の脂環構造を有するエポキシ化合物;
【0066】
芳香族アミン型多官能エポキシ化合物(商品名「H−434」、東都化成工業社製)、イソシアヌル酸トリス(2,3−エポキシプロピル)(トリアジン骨格を有する多官能エポキシ化合物、商品名「TEPIC」、日産化学工業社製)、クレゾールノボラック型多官能エポキシ化合物(商品名「EOCN−1020」、日本化薬社製)、フェノールノボラック型多官能エポキシ化合物(エピコート152、154、ジャパンエポキシレジン社製)、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ化合物(商品名EXA−4700、DIC株式会社製)、鎖状アルキル多官能エポキシ化合物(商品名「SR−TMP」、阪本薬品工業株式会社製)、多官能エポキシポリブタジエン(商品名「エポリードPB3600」、ダイセル化学工業社製)、グリセリンのグリシジルポリエーテル化合物(商品名「SR−GLG」、阪本薬品工業株式会社製)、ジグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−DGE」、阪本薬品工業株式会社製、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル化合物(商品名「SR−4GL」、阪本薬品工業株式会社製)、グリシドキシプロピルトリメチルシラン(商品名「Z−6040」、東レ・ダウコーニング社製)等の脂環構造を有さないエポキシ化合物;を挙げることができる。
【0067】
本発明の感放射線性樹脂組成物中における架橋剤(C)の含有量は、格別制限されず、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜に求められる耐熱性の程度を考慮して任意に設定すればよいが、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、通常、5〜80重量部、好ましくは20〜75重量部、より好ましくは25〜70重量部である。架橋剤(C)が多すぎても少なすぎても耐熱性が低下する傾向がある。
【0068】
(硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D))
また、本発明の感放射線樹脂組成物は、上述したバインダー樹脂(A)、感放射線化合物(B)および架橋剤(C)に加えて、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有する。
【0069】
硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤は、硫黄原子を実質的に含有しないセミヒンダードフェノール系の酸化防止剤、すなわち、フェノール構造を有し、硫黄原子を実質的に含有しておらず、かつ、フェノール構造を構成するOH基(フェノール性水酸基)のオルト位の一方が、嵩高の基(たとえば、t−ブチル基)であり、他方がメチル基である酸化防止剤である。
【0070】
また、硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤は、硫黄原子を実質的に含有しないレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤、すなわち、フェノール構造を有し、硫黄原子を実質的に含有しておらず、かつ、フェノール構造を構成するOH基(フェノール性水酸基)のオルト位の一方が、嵩高の基(たとえば、t−ブチル基)であり、他方が水素である酸化防止剤である。なお、本発明においては、「硫黄非含有」とは、実質的に硫黄原子を含有していないことを意味するものであり、たとえば、不純物量程度であれば含有していても差支えない。
【0071】
硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、3,9−ビス[2−{3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(例えば、商品名「アデカスタブAO−80」、ADEKA社製)、エチレンビス(オキシエチエレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](例えば、商品名「イルガノックス245」、BASF社製)、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](例えば、商品名「アデカスタブAO−70」、ADEKA社製)などが挙げられる。
また、硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン(例えば、商品名「アデカスタブAO−30」、ADEKA社製)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(例えば、商品名「アデカスタブAO−40」、ADEKA社製)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(例えば、商品名「スミライザーWX−R」、住友化学社製)などが挙げられる。
これらの硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明の感放射線樹脂組成物中における硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。架橋剤硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の含有量をこの範囲とすることにより、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の露光感度、焼成後の形状保持性、および透明性をより良好なものとすることができる。
【0073】
(硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E))
さらに、本発明の感放射線樹脂組成物は、上述したバインダー樹脂(A)、感放射線化合物(B)および架橋剤(C)、ならびに、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)に加えて、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を含有する。
【0074】
硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)は、硫黄原子を含有するフェノール系の酸化防止剤である。硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)の具体例としては、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾール、4,6−ビス[(ドデシルチオ)メチル]−オルト−クレゾール、亜りん酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)などが挙げられる。
硫黄含有フェノール系酸化防止剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の露光感度、焼成後の形状保持性、および透明性の向上効果が高いという点より、硫黄原子を含有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄原子を含有するセミヒンダードフェノール系酸化防止剤、および硫黄原子を含有するレスヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0075】
本発明の感放射線樹脂組成物中における硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)の含有量をこの範囲とすることにより、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の露光感度、焼成後の形状保持性、および透明性をより良好なものとすることができる。
【0076】
(酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F))
また、本発明の感放射線樹脂組成物は、上述した各成分に加えて、酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)を含有していてもよい。酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物は、酸性基または加熱により酸性基を生じる熱潜在性酸性基を有するものであればよく、特に限定されないが、好ましくは脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物であり、さらに好ましくは芳香族化合物、複素環化合物である。 これらの酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)を配合することにより、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜の焼成後の形状保持性をより高めることができる。
【0077】
酸性基を有する化合物の酸性基の数は、特に限定されないが、2つ以上の酸性基を有するものが好ましい。酸性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
酸性基としては、酸性の官能基であればよく、その具体例としては、スルホン酸基、リン酸基等の強酸性基;カルボキシ基、チオール基およびカルボキシメチレンチオ基等の弱酸性基;が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基、チオール基またはカルボキシメチレンチオ基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。また、これらの酸性基の中でも、酸解離定数pKaが3.5以上5.0以下の範囲にあるものが好ましい。なお、酸性基が2つ以上ある場合は第一解離定数pKa1を酸解離定数とし、第一解離定数pKa1が上記範囲にあるものが好ましい。また、pKaは、希薄水溶液条件下で、酸解離定数Ka=[H][B]/[BH]を測定し、pKa=−logKaにしたがって、求められる。ここでBHは、有機酸を表し、Bは有機酸の共役塩基を表す。なお、pKaの測定方法は、例えばpHメータを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出することができる。
【0078】
また、酸性基を有する化合物は、酸性基以外の置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基のほか、ハロゲン原子;アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基;アルキル基又はアリール基又は複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基;等のプロトンを有しない極性基、これらのプロトンを有しない極性基で置換された炭化水素基、等を挙げることができる。
【0079】
このような酸性基を有する化合物(F)の具体例としては、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、グリコール酸、グリセリン酸、エタン二酸(「シュウ酸」ともいう。)、プロパン二酸(「マロン酸」ともいう。)、ブタン二酸(「コハク酸」ともいう。)、ペンタン二酸、ヘキサン二酸(「アジピン酸」ともいう。)、1、2―シクロヘキサンジカルボン酸、2−オキソプロパン酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシプロパントリカルボン酸、メルカプトこはく酸、ジメルカプトこはく酸、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2,3−トリメルカプトプロパン、2,3,4−トリメルカプト−1−ブタノール、2,4−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、1,3,4−トリメルカプト−2−ブタノール、3,4−ジメルカプト−1,2−ブタンジオール、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン等の脂肪族化合物;
【0080】
安息香酸、p−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、o−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、3−フェニルプロパン酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(「フタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(「イソフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(「テレフタル酸」ともいう。)、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸、2−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、ジフェノール酸、2−メルカプト−6−ナフタレンカルボン酸、2−メルカプト−7−ナフタレンカルボン酸、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン等の芳香族化合物;
【0081】
ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フロ酸、ピロール−2,3−ジカルボン酸、ピロール−2,4−ジカルボン酸、ピロール−2,5−ジカルボン酸、ピロール−3,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,4−ジカルボン酸、イミダゾール−2,5−ジカルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ピラゾール−3,4−ジカルボン酸、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸等の窒素原子を含む五員複素環化合物;チオフェン−2,3−ジカルボン酸、チオフェン−2,4−ジカルボン酸、チオフェン−2,5−ジカルボン酸、チオフェン−3,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,4−ジカルボン酸、チアゾール−2,5−ジカルボン酸、チアゾール−4,5−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,4−ジカルボン酸、イソチアゾール−3,5−ジカルボン酸、1,2,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジカルボン酸、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルスルファニル)こはく酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルスルファニル)こはく酸、(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)酢酸、(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)酢酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)プロピオン酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)プロピオン酸、3−(5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−3−イルチオ)コハク酸、2−(5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)コハク酸、4−(3−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸、4−(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオブタンスルホン酸等の窒素原子と硫黄原子を含む五員複素環化合物;
【0082】
ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,4−ジカルボン酸、ピリダジン−3,5−ジカルボン酸、ピリダジン−3,6−ジカルボン酸、ピリダジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−2,4−ジカルボン酸、ピリミジン−2,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,5−ジカルボン酸、ピリミジン−4,6−ジカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、ピラジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、トリアジン−2,4−ジカルボン酸、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジプロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン等の窒素原子を含む六員複素環化合物;が挙げられる。
これらの中でも、得られる硬化膜の密着性をより高めることができるという観点から、酸性基の数は、2つ以上であることが好ましい。
【0083】
熱潜在性酸性基を有する化合物は、加熱により酸性の官能基を生じる基であればよく、その具体例としては、スルホニウム塩基、ベンゾチアゾリウム塩基、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、ブロックカルボン酸基等が挙げられ、これらの中でも、スルホニウム塩基が好ましく、例えば、六フッ化リン系や六フッ化アンチモン系のスルホニウム塩基を用いることができる。このようなスルホニウム塩基としては、例えば、サンエイドSIシリーズ(100L,110L,150、180L、三新化学工業社製)等を用いることができる。
【0084】
本発明の感放射線樹脂組成物中における酸性基又は熱潜在性酸性基(F)を有する化合物の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜45重量部、さらに好ましくは2〜40重量部、特に好ましくは3〜30重量部の範囲である。酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)の使用量を上記範囲とすることで、得られる樹脂膜の焼成後の形状保持性を適切に高めることができる。
【0085】
(その他の配合剤)
本発明の感放射線性樹脂組成物には、さらに、溶剤が含有されていてもよい。溶剤としては、特に限定されず、樹脂組成物の溶剤として公知のもの、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノンなどの直鎖のケトン類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコールエーテル類;ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのジエチレングリコール類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトンなどの飽和γ−ラクトン類;トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは10〜10000重量部、より好ましくは50〜5000重量部、さらに好ましくは100〜1000重量部の範囲である。なお、樹脂組成物に溶剤を含有させる場合には、溶剤は、通常、樹脂膜形成後に除去されることとなる。
【0086】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、所望により、界面活性剤、カップリング剤またはその誘導体、増感剤、光安定剤、消泡剤、顔料、染料、フィラー等のその他の配合剤;等を含有していてもよい。これらのうち、たとえばカップリング剤又はその誘導体、増感剤、光安定剤は、特開2011−75609号公報に記載されたものなどを用いることができる。
【0087】
界面活性剤は、ストリエーション(塗布筋あと)の防止、現像性の向上等の目的で使用される。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、メタクリル酸共重合体系界面活性剤、アクリル酸共重合体系界面活性剤などを挙げることができる。
【0088】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、「SH28PA」、「SH29PA」、「SH30PA」、「ST80PA」、「ST83PA」、「ST86PA」、「SF8416」、「SH203」、「SH230」、「SF8419」、「SF8422」、「FS1265」、「SH510」、「SH550」、「SH710」、「SH6040」、「SH8400」、「SF8410」、「SH8700」、「SF8427」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、商品名「KP−321」、「KP−323」、「KP−324」、「KP−340」、「KP−341」(以上、信越化学工業株式会社製)、商品名「TSF400」、「TSF401」、「TSF410」、「TSF4440」、「TSF4445」、「TSF4450」、「TSF4446」、「TSF4452」、「TSF4460」(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、商品名「BYK300」、「BYK301」、「BYK302」、「BYK306」、「BYK307」、「BYK310」、「BYK315」、「BYK320」、「BYK322」、「BYK323」、「BYK331」、「BYK333」、「BYK370」「BYK375」、「BYK377」、「BYK378」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)などを挙げることができる。
【0089】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フロリナート「FC−430」、「FC−431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、サーフロン「S−141」、「S−145」、「S−381」、「S−393」(以上、旭硝子株式会社製)、エフトップ(登録商標)「EF301」、「EF303」、「EF351」、「EF352」(以上、株式会社ジェムコ製)、メガファック(登録商標)「F171」、「F172」、「F173」、「R−30」(以上、DIC株式会社製)などを挙げることができる。
ポリオキシアルキレン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートポリオキシエチレンジアルキルエステル類などを挙げることができる。
これらの界面活性剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
本発明の感放射線樹脂組成物中における界面活性剤の含有量は、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜1重量部である。界面活性剤の含有量が上記範囲にあると、ストリエーション(塗布筋あと)の防止効果をより高めることができる。
【0091】
本発明の感放射線樹脂組成物の調製方法は、特に限定されず、感放射線樹脂組成物を構成する各成分を公知の方法により混合すればよい。
混合の方法は特に限定されないが、感放射線樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散して得られる溶液又は分散液を混合するのが好ましい。これにより、感放射線樹脂組成物は、溶液又は分散液の形態で得られる。
【0092】
感放射線樹脂組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散する方法は、常法に従えばよい。具体的には、攪拌子とマグネティックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパー、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロール等を使用して行なうことができる。また、各成分を溶剤に溶解又は分散した後に、例えば、孔径が0.5μm程度のフィルター等を用いて濾過してもよい。
【0093】
(電子部品)
次いで、本発明の電子部品について、説明する。本発明の電子部品は、上述した本発明の感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を有する。
【0094】
本発明の電子部品としては、たとえば、基板上に半導体素子が実装された構成を有するものなどが挙げられ、具体的には、アクティブマトリックス基板、有機EL素子基板、集積回路素子基板、および固体撮像素子基板などが挙げられ、上述した本発明の感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜を形成することによる特性向上効果が特に顕著であるという観点より、アクティブマトリックス基板、および有機EL素子基板が好ましい。
【0095】
本発明の電子部品の一例としてのアクティブマトリックス基板としては、特に限定されないが、基板上に、薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチング素子がマトリックス状に配置されると共に、該スイッチング素子を駆動するためのゲート信号を供給するゲート信号線、および該スイッチング素子に表示信号を供給するためのソース信号線が互いに交差するよう設けられている構成を有するものなどが例示される。また、スイッチング素子の一例としての薄膜トランジスタとしては、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極を有する構成などが例示される。
【0096】
さらに、本発明の電子部品の一例としての有機EL素子基板としては、たとえば、基板上に、陽極、正孔注入輸送層、半導体層としての有機発光層、電子注入層、および陰極などから構成される発光体部と、該発光体部を分離するために画素分離膜とを有する構成を有するものなどが例示される。
【0097】
たとえば、本発明の電子部品が、アクティブマトリックス基板である場合には、上述した本発明の感放射線樹脂組成物からなる樹脂膜は、アクティブマトリックス基板の表面に形成される保護膜や平坦化膜、アクティブマトリックス基板を構成する薄膜トランジスタの半導体層(たとえば、アモルファスシリコン層)と接触して形成されるゲート絶縁膜とすることができる。あるいは、本発明の電子部品が、有機EL素子基板である場合には、有機EL素子基板の表面に形成される封止膜とすることができる。
【0098】
本発明の電子部品において、樹脂膜を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いることができる。
【0099】
塗布法は、例えば、感放射線樹脂組成物を、塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去する方法である。感放射線樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、回転塗布法、バー塗布法、スクリーン印刷法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて異なるが、通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃で、通常、0.5〜90分間、好ましくは1〜60分間、より好ましくは1〜30分間で行なえばよい。
【0100】
フィルム積層法は、感放射線樹脂組成物を、樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後に加熱乾燥により溶剤を除去してBステージフィルムを得、次いで、このBステージフィルムを、積層する方法である。加熱乾燥条件は、各成分の種類や配合割合に応じて適宜選択することができるが、加熱温度は、通常、30〜150℃であり、加熱時間は、通常、0.5〜90分間である。フィルム積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0101】
樹脂膜の厚さとしては、特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、樹脂膜が、アクティブマトリックス基板用の保護膜や平坦化膜、または有機EL素子基板用の封止膜である場合には、樹脂膜の厚さは、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜30μmである。
【0102】
次いで、このようにして形成した樹脂膜を、所定のパターンでパターン化する。樹脂膜をパターン化する方法としては、たとえば、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて、パターン化前の樹脂膜を形成し、パターン化前の樹脂膜に活性放射線を照射して潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させることによりパターンを顕在化させる方法などが挙げられる。
【0103】
活性放射線としては、感放射線樹脂組成物に含有される感放射線化合物(B)を活性化させ、感放射線化合物(B)を含む感放射線樹脂組成物のアルカリ可溶性を変化させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、紫外線、g線やi線等の単一波長の紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線;電子線のような粒子線;等を用いることができる。これらの活性放射線を選択的にパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、常法に従えばよく、例えば、縮小投影露光装置等により、紫外線、g線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等の光線を所望のマスクパターンを介して照射する方法、または電子線等の粒子線により描画する方法等を用いることができる。活性放射線として光線を用いる場合は、単一波長光であっても、混合波長光であってもよい。照射条件は、使用する活性放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、波長200〜450nmの光線を使用する場合、照射量は、通常10〜1,000mJ/cm、好ましくは50〜500mJ/cmの範囲であり、照射時間と照度に応じて決まる。このようにして活性放射線を照射した後、必要に応じ、樹脂膜を60〜130℃程度の温度で1〜2分間程度加熱処理する。
【0104】
次に、パターン化前の樹脂膜に形成された潜像パターンを現像して顕在化させる。現像液としては、通常、アルカリ性化合物の水性溶液が用いられる。アルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン、アンモニウム塩を使用することができる。アルカリ性化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよい。これらの化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア水;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N−メチルピロリドン等の環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
アルカリ水性溶液の水性媒体としては、水;メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤を使用することができる。アルカリ水性溶液は、界面活性剤等を適当量添加したものであってもよい。
潜像パターンを有する樹脂膜に現像液を接触させる方法としては、例えば、パドル法、スプレー法、ディッピング法等の方法が用いられる。現像は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜30℃の範囲で、通常、30〜180秒間の範囲で適宜選択される。
【0106】
このようにして目的とするパターンが形成された樹脂膜は、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により除去する。
さらに、必要に応じて、感放射線樹脂組成物に含有させた感放射線化合物(B)を失活させるために、電子部品全面に、活性放射線を照射することもできる。活性放射線の照射には、上記潜像パターンの形成に例示した方法を利用できる。照射と同時に、または照射後に樹脂膜を加熱してもよい。加熱方法としては、例えば、電子部品をホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。温度は、通常、100〜300℃、好ましくは120〜200℃の範囲である。
【0107】
このようにして形成された樹脂膜は、パターン化した後に、架橋反応を行なうことができる。このような架橋は、感放射線樹脂組成物に含有させた架橋剤(C)の種類に応じて適宜方法を選択すればよいが、通常、加熱により行なう。加熱方法は、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。加熱温度は、通常、180〜250℃であり、加熱時間は、樹脂膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択され、例えばホットプレートを用いる場合は、通常、5〜60分間、オーブンを用いる場合は、通常、30〜90分間の範囲である。加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、酸素を含まず、かつ、樹脂膜を酸化させないものであればよく、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。特に、酸素含有量が0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下の不活性ガス、特に窒素が好適である。これらの不活性ガスは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
このようにして、パターン化された樹脂膜を備える電子部品は製造することができる。
なお、本発明の電子部品が、アクティブマトリックス基板や有機EL素子基板である場合には、このようにしてパターン化された樹脂膜を形成した後に、さらに別の構成要素(たとえば、ITO電極や、配向膜など)の焼き固めを行うために、大気中などの酸化雰囲気における焼成が行われる。この際における焼成温度は、通常、150〜350℃、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜250℃である。なお、この際においては、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られたパターン化された樹脂膜も、同様に、酸化雰囲気で焼成されることとなる。しかしその一方で、このようにして形成される樹脂膜は、上述した本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られるものであるため、このように酸化性雰囲気で焼成した後も高い透明性を実現できるものであり、そのため、アクティブマトリックス基板や有機EL素子基板などの各種電子部品用途に好適である。また、これに加えて、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、露光感度が高いものであるため、製造時における放射線の照射量を低減することができ、これにより生産性を向上せることができる。さらには、本発明の感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、焼成後の形状保持性に優れるものであるため、微細なパターンを高精度に形成することができ、これにより、電子部品の小型・高性能化に資することもできる。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
なお、各特性の定義および評価方法は、以下のとおりである。
【0110】
<露光感度>
ガラス基板(コーニング社、製品名コーニング1737)上に、感放射線性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚3μmの樹脂膜を形成した。次いで、樹脂膜をパターニングするために、5μmのコンタクトホールパターンを形成可能なマスクを用いて、100mJ/cmから250mJ/cmまで50mJ/cm毎に露光量を変化させることにより、露光工程を行った。次いで、0.4重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で120秒間現像処理を行ったのち、超純水で30秒間リンスすることにより、露光量の異なるコンタクトホールパターンを有する樹脂膜と、ガラス基板とからなる積層体を得た。
そして、光学顕微鏡を用いて、得られた積層体のコンタクトホール形成部分を観察し、各露光量で露光された部分の樹脂膜のコンタクトホールパターンの最長部の長さをそれぞれ測定した。そして、各露光量と、対応する露光量において形成された樹脂膜のコンタクトホールパターンの最長部の長さの関係から近似曲線を作成し、コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量を算出し、その露光量を露光感度として算出した。コンタクトホールパターンが5μmとなる時の露光量が低いほど、低いエネルギーで、又は短い時間でコンタクトホールを形成できることができるため、好ましい。
【0111】
<耐熱透明性>
ガラス基板(コーニング社、製品名コーニング1737)上に、感放射線性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚3μmの樹脂膜を形成した。次いで、この樹脂膜について、0.4重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で120秒間浸漬処理を行ったのち、超純水で30秒間洗浄を行い、次いで、365nmにおける光強度が5mW/cmである紫外線を、300秒間、空気中で照射した。そして、紫外線を照射した樹脂膜について、ホットプレートを用いて、110℃で10分間加熱するミドルベークを行い、次いで、オーブンを用いて、N雰囲気下、230℃で60分間加熱するポストベークを行うことで、樹脂膜が形成されたガラス基板からなる試験用試料を得た。そして、このようにして得られた試験用試料について、オーブンを用いて、大気中において、230℃で60分間加熱する酸化性雰囲気下でのベークをさらに行った。そして、酸化性雰囲気下でのベークを行った試料の透過率を、分光光度計V−560(日本分光社製)を用いて400nmから700nmの波長で測定を行った。なお、樹脂膜の光線透過率は、樹脂膜が付いていないガラス基板をブランクとして、樹脂膜の厚みを2μmとした場合の換算値で算出した。そして、得られた光線透過率に基づいて、以下の基準で透明性を評価した。
A:光線透過率が85%以上
B:光線透過率が80%以上、85%未満
C:光線透過率が75%以上、80%未満
D:光線透過率が75%未満
【0112】
<焼成後形状保持性>
ガラス基板(コーニング社、製品名コーニング1737)上に、感放射線性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚3μmの樹脂膜を形成した。次いで、この樹脂膜について、3μm×3μmのホールパターンのマスクを介して、365nmにおける光強度が5mW/cmである紫外線を、露光感度として算出された露光量を、空気中で照射した。次いで、0.4重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で120秒間浸漬処理を行ったのち、超純水で30秒間洗浄を行い、次いで、365nmにおける光強度が5mW/cmである紫外線を、300秒間、空気中で照射した。そして、紫外線を照射した樹脂膜について、ホットプレートを用いて、110℃で10分間加熱するミドルベークを行い、次いで、N雰囲気下、230℃で60分間加熱するポストベークを行うことで、コンタクトホールが形成された樹脂膜を備えるガラス基板からなる試験用試料を得た。そして、このようにして得られた試験用試料について、光学顕微鏡により、コンタクトホールの観察を行い、以下の基準に従って、焼成後のホール形状の評価を行った。
A:コンタクトホールの基板からの立ち上がり部分の角度が60°以上で、かつ、コンタクトホールの上端部分の形状に丸みが認められない。
B:コンタクトホールの基板からの立ち上がり部分の角度が60°以上であるが、コンタクトホールの上端部分が丸みを帯びた形状となっている。
C:コンタクトホールの基板からの立ち上がり部分の角度が50°以上、60°未満
D:コンタクトホールの基板からの立ち上がり部分の角度が50°未満
【0113】
《合成例1》
<プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A1a)の調製>
N−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%、および4−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン(TCDC)60モル%からなる単量体混合物100部、1,5−ヘキサジエン2.8部、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年 に記載された方法で合成した)0.02部、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。
【0114】
そして、得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、環状オレフィン重合体(A1a)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A1a)の重合転化率は99.8%、ポリスチレン換算重量平均分子量は5,098、数平均分子量は3,227、分子量分布は1.58、水素添加率は、99.9%であった。また、得られた環状オレフィン重合体(A1a)の重合体溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0115】
《合成例2》
<プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体(A1b)の調製>
N−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド40モル%の代わりに、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(NEHI)40モル%を使用し、1,5‐ヘキサジエンの使用量を2.8部から2.0部に変更した以外は、合成例1と同様にして、重合および水素化を行い、環状オレフィン重合体(A1b)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A1b)の重合転化率は99.7%、ポリスチレン換算重量平均分子量は7,150、数平均分子量は4,690、分子量分布は1.52、水素添加率は、99.7%であった。
【0116】
《合成例3》
<アクリル樹脂(A2)の調製>
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)7部とジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部とを仕込んだ。引き続き、メタクリル酸16部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート16部、2−メチルシクロヘキシルアクリレート20部、メタクリル酸グリシジル40部、スチレン10部及びα−メチルスチレンダイマー3部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。次いで、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持することによってアクリル樹脂(A2)を含む重合体溶液を得た。アクリル樹脂(A2)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は8,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また、得られたアクリル樹脂(A2)溶液の固形分濃度は34.4重量%であった。
【0117】
《合成例4》
<カルド樹脂(A3)の調製>
還流冷却器付き四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とアクリル酸との等当量反応物(固形分濃度50%、固形分換算の酸価1.28mgKOH/g、エポキシ当量21,300。新日鐵化学社製、製品名「ASF−400」溶液)の50%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液198.53部と、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物39.54部、コハク酸無水物8.13部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート48.12部及びトリフェニルホスフィン0.45部を仕込み、120〜125℃に加熱下に1時間撹拌し、更に75〜80℃で6時間の加熱撹拌を行い、その後、グリシジルメタクリレート8.6部を投入し、さらに80℃で8時間攪拌し、カルド樹脂(A3)を得た。
【0118】
《合成例5》
<ポリシロキサン(A4)の調製>
三ツ口フラスコにメチルトリメトキシシラン74.91部、フェニルトリメトキシシラン69.41部、およびジアセトンアルコール150.36部を仕込み、室温で攪拌しながら水55.8部にリン酸0.338部(仕込みモノマーに対して0.2重量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに漬けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(この間、内温は100〜110℃であった)。副生成物であるメタノール及び水を合計115部留出した。得られたポリシロキサンのジアセトンアルコール溶液に、固形分濃度が34.4%となるようにジアセトンアルコールを加えてポリシロキサン(A4)溶液を得た。
【0119】
《実施例1》
バインダー樹脂(A)として、合成例1で得られた環状オレフィン重合体(A1a)の重合体溶液291部(環状オレフィン重合体(A1a)として100部)、感放射線化合物(B)として、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2.5モル)との縮合物(B1)40部、架橋剤(C)として、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−シクロヘキセニルメチル)修飾ε−カプロラクトン(脂肪族環状4官能性のエポキシ樹脂、商品名「エポリードGT401」、ダイセル化学工業社製)40部、同じく架橋剤(C)として、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製)10部、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)として、3,9−ビス[2−{3−(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名「アデカスタブAO−80」、ADEKA社製)6部、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)として、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「Irganox 1035」、BASF社製)2部、酸性基又は熱潜在性酸性基を有する化合物(F)として、PF系スルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−110L」、三新化学工業社製)4部、フタル酸7部、カップリング剤として、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名「SH6040」、東レ・ダウコーニング社製)5部、および、溶剤として、エチレングリコールジメチルエーテル750部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して感放射線樹脂組成物を調製した。
【0120】
そして、上記にて得られた感放射線樹脂組成物を用いて、露光感度、耐熱透明性、および焼成後形状保持性の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
《実施例2〜42》
感放射線樹脂組成物を調製する際に、表1〜表3に示す各化合物を、表1〜表3に示す配合量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、感放射線樹脂組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0122】
なお、表1〜表3中、各化合物は以下の通りである。
・「環状オレフィン重合体(A1b)」は、合成例2で得られた環状オレフィン重合体(A1b)である。
・「アクリル樹脂(A2)」は、合成例3で得られたアクリル樹脂(A2)である。
・「カルド樹脂(A3)」は、合成例4で得られたカルド樹脂(A3)である。
・「ポリシロキサン(A4)」は、合成例5で得られたポリシロキサン(A4)である。
・「感放射線化合物(B2)」は、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド(2モル)との縮合物(感放射線化合物(B))である。
・「架橋剤(サイメル370)」は、メチロール基型メチル化メラミン樹脂(商品名「サイメル370」、サイテックインダストリーズ社製、架橋剤(C))である。
・「硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO−40)」は、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(商品名「アデカスタブAO−40」、ADEKA社製)である。
・「硫黄非含有ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox 1010)」は、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名「Irganox 1010」、BASF社製)である。
・「硫黄含有フェノール系酸化防止剤(スミライザーWX−R)」は、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(商品名「スミライザーWX−R」、住友化学社製)である。
・「非フェノール系老化防止剤(スミライザーTPL−R)」は、ジラウリル-3,3’−チオジプロピオネート(商品名「スミライザーTPL−R」、住友化学社製)である。
・「非フェノール系老化防止剤(Irgafos 168)」 は、亜りん酸トリス(2,4-ジ-t−ブチルフェニル)(商品名「Irgafos 168」、BASF社製)である。
・「SbF系スルホニウム塩(SI−150L)」は、SbF系スルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−150L」、三新化学工業社製)である。
・「SbF系スルホニウム塩(SI−100L)」は、SbF系スルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−100L」、三新化学工業社製)である。
【0123】
《比較例1〜7》
感放射線樹脂組成物を調製する際に、表3に示す各化合物を、表3に示す配合量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、感放射線樹脂組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表1〜表3に示すように、バインダー樹脂(A)、感放射線化合物(B)、架橋剤(C)、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を含有してなる感放射線樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜は、露光感度が高く、耐熱透明性(酸化性雰囲気で焼成した後における透明性)および焼成後の形状保持性に優れたものであった(実施例1〜42)。
【0128】
一方、硫黄含有フェノール系酸化防止剤(E)を配合しなかった場合や、代わりに、非フェノール系老化防止剤を用いた場合には、得られる樹脂膜は、耐熱透明性(酸化性雰囲気で焼成した後における透明性)に劣るものであった(比較例1,5,6)。
また、硫黄非含有セミヒンダードフェノール系酸化防止剤および/または硫黄非含有レスヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を配合しなかった場合や、代わりに、硫黄非含有ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いた場合には、得られる樹脂膜は、露光感度に劣るものであった(比較例2〜4)。
さらに、架橋剤(C)を配合しなかった場合には、得られる樹脂膜は、耐熱透明性(酸化性雰囲気で焼成した後における透明性)、および焼成後の形状保持性に劣るものであった(比較例7)。