特許第6304089号(P6304089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304089アルゴンガスの精製方法及びアルゴンガスの回収精製装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304089
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】アルゴンガスの精製方法及びアルゴンガスの回収精製装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 23/00 20060101AFI20180326BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C01B23/00 L
   C30B29/06 502Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-60405(P2015-60405)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179916(P2016-179916A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 靖志
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 秀明
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184287(JP,A)
【文献】 特開2012−229151(JP,A)
【文献】 特開2013−155091(JP,A)
【文献】 特開2014−034493(JP,A)
【文献】 特開平02−282682(JP,A)
【文献】 特開2012−106904(JP,A)
【文献】 特開2011−173769(JP,A)
【文献】 特開昭59−039800(JP,A)
【文献】 特開昭59−046473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00−23/00
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つ以上を不純物として含有するアルゴンガスに、酸素を添加して触媒塔において触媒反応を用いて前記アルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素を水と二酸化炭素に転換するか、又は水素を添加して前記触媒塔において触媒反応を用いて前記アルゴンガスに含有される酸素を水に転換することにより、前記アルゴンガスから水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つ以上を除去するアルゴンガスの精製方法であって、
前記触媒塔の出口側で水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターする工程と、
前記触媒塔の出口側で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合には前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに酸素を添加する工程と、前記触媒塔の出口側で酸素が検出された場合には前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに水素を添加する工程の少なくともいずれかを有し、
前記アルゴンガスが前記触媒塔に連続的に供給されるのに対して、前記触媒塔に添加される酸素又は水素の添加を間欠的に行うことにより前記アルゴンガスに含まれる水素、一酸化炭素、及び酸素のうちいずれか一つ以上を除去し、
前記触媒塔の下流において、前記触媒反応で余剰となった酸素を金属との酸化反応により除去する工程、及び前記触媒反応で余剰となった水素を金属との還元反応により除去する工程を有さないことを特徴とするアルゴンガスの精製方法。
【請求項2】
前記精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較し、前記水素と一酸化炭素の合計量が前記酸素の量に対してモル当量比で2倍を超える場合は添加するガスを酸素とし、2倍未満の場合は添加するガスを水素とすることを特徴とする請求項1に記載のアルゴンガスの精製方法。
【請求項3】
前記精製されるアルゴンガスを、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルゴンガスの精製方法。
【請求項4】
前記間欠的に添加する酸素又は水素の量を、酸素及び水素を添加しなかった時間に、前記触媒反応で不足する酸素又は水素の化学量論量と等しくすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルゴンガスの精製方法。
【請求項5】
水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくとも一つ以上を不純物として含有するアルゴンガスの回収精製装置であって、
前記アルゴンガスに酸素を添加して、前記アルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素を触媒反応により水と二酸化炭素に転換する触媒塔、及び前記アルゴンガスに水素を添加して、前記アルゴンガスに含有される酸素を触媒反応により水に転換する触媒塔の少なくともいずれかと、
前記触媒塔の出口側で水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターする検出手段と、
前記触媒塔の出口側で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合に前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに酸素を添加する酸素添加手段、及び前記触媒塔の出口側で酸素が検出された場合に前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに水素を添加する水素添加手段の少なくともいずれかを有し、
前記酸素添加手段及び前記水素添加手段は、前記アルゴンガスが連続的に前記触媒塔に供給されるのに対して、酸素又は水素を間欠的に添加するものであり、
前記触媒塔の下流において前記触媒反応で余剰となった酸素を金属との酸化反応で除去する金属塔、及び前記触媒反応で余剰となった水素を金属との還元反応で除去する金属塔を有さないものであることを特徴とするアルゴンガスの回収精製装置。
【請求項6】
前記精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較し、前記水素と一酸化炭素の合計量が前記酸素の量に対してモル当量比で2倍を超える場合は酸素を添加し、2倍未満の場合は水素を添加するものであることを特徴とする請求項5に記載のアルゴンガスの回収精製装置。
【請求項7】
前記精製されるアルゴンガスが、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のアルゴンガスの回収精製装置。
【請求項8】
前記間欠的に添加する酸素又は水素の量が、酸素及び水素を添加しなかった時間に、前記触媒反応で不足する酸素又は水素の化学量論量と等しくするものであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のアルゴンガスの回収精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素、酸素、一酸化炭素を不純物として微量に含むアルゴンガスの精製方法及びアルゴンガスの回収精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(Czochralski)法やFZ(Floating zone)法でシリコン単結晶を製造する際に用いられるシリコン単結晶製造装置においては、アルゴンガスが炉内雰囲気ガスとして使用されている。アルゴンガスは、空気中に少量含まれるガスであり酸素や窒素などのガスに比べて高価なガスである。そのため、上記装置から排出されるアルゴンガス(以下では廃アルゴンガスと言う)を回収・精製・再利用するための設備が考案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
単結晶シリコンの製造では品質向上のために、高純度アルゴンガスが用いられるが、シリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスは、水素、酸素、一酸化炭素、窒素などの混入により、純度が低下しており、そのままでは再利用することは出来ない。そのため精製する必要があり、その精製方法もさまざまな方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
アルゴンガス中の不純物の精製において一般的な方法はゼオライトなど吸着剤を用いた不純物の吸着法により行われるが、水素、酸素、一酸化炭素などの不純物は、吸着されにくい。このため、吸着工程の前段において水素や酸素を添加し、白金触媒などを用いて反応させることにより、水素、酸素、一酸化炭素を水、及び二酸化炭素といった吸着材に吸着しやすい物質に転換することが行われる。
【0005】
前記廃アルゴンガス中に含まれる水素、酸素、一酸化炭素の水素、酸素添加による水、二酸化炭素への触媒反応による転換工程においては、触媒の表面において次のような化学式による触媒反応が行われていると考えられている。
+ (1/2)O → HO (1)
CO + (1/2)O → CO (2)
この反応により、廃アルゴンガス中に含まれる水素、酸素、一酸化炭素を全て水と二酸化炭素に転換し、触媒反応工程より後段に水素、酸素、一酸化炭素が残らないようにするためには、この化学式の化学量論比の通り過不足なく水素、酸素を添加する必要がある。
【0006】
しかし、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガス中の水素、酸素、一酸化炭素の量は常に変動しており、その変動量に応じて水素、酸素の添加量を調整することは非常に困難である。そこで、一般的には、あらかじめ想定される廃アルゴンガス中に含まれる水素、酸素、一酸化炭素の量に比べて過剰な量の水素、酸素を添加して触媒反応を実施して、その後、触媒反応にて余った余剰水素、又は余剰酸素を別法にて除去する方法が用いられる。
【0007】
特許文献1には、不純物として水素、酸素、一酸化炭素が含まれる廃アルゴンガスに対して、過剰な水素を添加して、酸素を水に触媒反応させて、その後、余剰水素と余剰一酸化炭素を酸化銅を用いて、320℃の温度で以下の反応により水と二酸化炭素に転換する方法が記載されている。
+ CuO → HO + Cu (3)
CO + CuO → CO + Cu (4)
【0008】
特許文献2には、不純物として水素、酸素、一酸化炭素が含まれる廃アルゴンガスに対して、過剰な酸素を添加して、水素と一酸化炭素を触媒反応により水と二酸化炭素に転換させて、その後、余剰酸素を金属を用いて250℃の温度で以下の反応により除去する方法が記載されている。
+ 金属 → 金属酸化物 (5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−119104号公報
【特許文献2】特開2012−229151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シリコン単結晶製造装置において炉内雰囲気ガスとして用いられる高純度アルゴンガスとしては、水素濃度1モルppm以下、酸素濃度1モルppm以下、一酸化炭素濃度1モルppm以下程度の高純度のものが用いられる。もちろん、排出される廃アルゴンガスを回収・精製・再利用する場合もこの程度の純度になるように不純物を精製除去する必要がある。
【0011】
しかしながら、本発明者らのシリコン単結晶製造の実績によれば、シリコン単結晶製造装置においては、廃アルゴンガス中の水素、酸素、一酸化炭素濃度は、数モルppm〜100モルppm程度であり、さらに、それらの濃度は数10モルppmの範囲内において変動している。
【0012】
そのため、例えば、流量が500Nm/hの廃アルゴンガス中に含まれる水素の濃度が100モルppmで、精製後アルゴンガス中の水素濃度をほぼゼロ(1モルppm以下)とする場合を仮定し、この水素を酸素添加による触媒反応により100%水に転換するためには、前述の(1)式に基づいて以下の酸素添加量(A)が必要となる。
A=500Nm/h×100モルppm×1/2=0.025Nm/h
=0.417NL/min
【0013】
また、1モルppmの水素を100%水に転換するための酸素添加量(B)は以下のように計算される。
B=500Nm/h×1モルppm×1/2=0.00417NL/min
このことは、触媒反応後の酸素濃度を1モルppm以下になるようにするためには、廃アルゴンガス中の水素濃度の変動に対して、添加する酸素の量を0.00417NL/min以下の精度で常時過不足なく制御する必要があることを意味している。これは技術的に非常に困難である。
【0014】
そのため、廃アルゴンガスの精製においては、廃アルゴンガスに含有されるガスと添加ガスの触媒反応だけによるのではなく、触媒反応後の余剰ガスを酸化された金属、又は還元された金属を用いることにより除去する方法が考案されている。余剰ガスが水素、一酸化炭素である場合は、図6に示すように触媒塔の下流側に酸化された金属を準備して、金属に結合された酸素により水素、一酸化炭素を酸化して水、二酸化炭素に転換し(特許文献1を参照)、余剰ガスが酸素の場合は、図7に示すように還元された金属を準備して酸化金属を生成させることにより、酸素を除去する方法が用いられている(特許文献2を参照)。図6では酸化された金属がCuO、図7では還元された金属がCuの例を示している。
【0015】
しかし、この金属を用いる方法は、250℃以上の高温で反応させる必要があるため、一般的には電気ヒーターを用いるが、エネルギー的に不利な方法である。また、精製装置の運転の途中で、金属を再生する操作が必要となる。たとえば、酸化された金属を用いて水素を水に転換する場合、塔内(以下では金属塔と言う)にあるすべての金属が還元されてしまうと、それ以上は有効に働かないため、再生操作(酸素導入と高温反応)により再び酸化金属にしてやることが必要になる。そのため、再生用の設備が必要となり、設備コストが高くなる原因にもなっている。
【0016】
さらに、例えば酸化金属による水素の水生成を実施している場合、反応が進んで金属塔内に還元された金属が多く存在する状態で、シリコン単結晶製造装置の廃アルゴンガス中に想定される酸素濃度を超える酸素が混入してしまうと、還元された金属の酸化反応が急激に発生することがある。この場合、大量の反応熱が放出されるため、金属塔内が極端な高温になり、金属塔の故障につながる可能性があるため、常に過剰な酸素が混入しないように管理する必要があり、さらに装置コストが上昇する原因になる。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つ以上を不純物として含有するアルゴンガスに、酸素及び水素を添加することによって、アルゴンガスに含まれる不純物の量が変動する場合であっても過不足なく酸素と水素を供給し、余剰の酸素や水素を取り除くための金属塔が不要となり、設備コストが安く故障の起きにくいアルゴンガスの精製方法及びアルゴンガスの回収精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つ以上を不純物として含有するアルゴンガスに、酸素を添加して触媒塔において触媒反応を用いて前記アルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素を水と二酸化炭素に転換するか、又は水素を添加して前記触媒塔において触媒反応を用いて前記アルゴンガスに含有される酸素を水に転換することにより、前記アルゴンガスから水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つ以上を除去するアルゴンガスの精製方法であって、
前記触媒塔の出口側で水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターする工程と、
前記触媒塔の出口側で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合には前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに酸素を添加する工程と、前記触媒塔の出口側で酸素が検出された場合には前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに水素を添加する工程の少なくともいずれかを有し、
前記アルゴンガスが前記触媒塔に連続的に供給されるのに対して、前記触媒塔に添加される酸素又は水素の添加を間欠的に行うことにより前記アルゴンガスに含まれる水素、一酸化炭素、及び酸素のうちいずれか一つ以上を除去することを特徴とするアルゴンガスの精製方法を提供する。
【0019】
このように、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターし、酸素及び水素を間欠的に添加することによって、アルゴンガス中に含まれるこれら不純物の量が変動しても、過不足なく酸素と水素を供給することができ、継続的にアルゴンガスの精製を行うことができる。
【0020】
このとき、前記触媒塔の下流において、前記触媒反応で余剰となった酸素を金属との酸化反応により除去する工程、及び前記触媒反応で余剰となった水素を金属との還元反応により除去する工程を有さないことが好ましい。
このように余剰酸素を金属との酸化反応で除去する工程、及び余剰水素を金属との還元反応で除去する工程を有さなければ、触媒塔の下流側の金属塔が不要であり、設備構成が簡単になり、設備コストを安くすることができるとともに、金属塔における金属の酸化還元による再生が不要であり、金属塔に起因する設備故障の発生もなくすことができる。また、エネルギー消費量も少なくすることができる。
【0021】
このとき、前記精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較し、前記水素と一酸化炭素の合計量が前記酸素の量に対してモル当量比で2倍を超える場合は添加するガスを酸素とし、2倍未満の場合は添加するガスを水素とすることが好ましい。
このように精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較することで、添加するガスを酸素とするか、又は水素とするかをあらかじめ決定できるので、一種類の触媒塔のみを有する精製装置でアルゴンガスを精製することができる。
【0022】
このとき、前記精製されるアルゴンガスを、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスとすることが好ましい。
このように、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスを上記方法により精製することにより、シリコン単結晶製造装置の運転コストを低く抑えることができる。
【0023】
このとき、前記間欠的に添加する酸素又は水素の量を、酸素及び水素を添加しなかった時間に、前記触媒反応で不足する酸素又は水素の化学量論量と等しくすることが好ましい。
このように触媒反応で不足する化学量論量の水素又は酸素を添加することで、余剰の酸素及び水素が発生しないようにすることができる。
【0024】
さらに、上記目的を達成するために、本発明では、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくとも一つ以上を不純物として含有するアルゴンガスの回収精製装置であって、
前記アルゴンガスに酸素を添加して、前記アルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素を触媒反応により水と二酸化炭素に転換する触媒塔、及び前記アルゴンガスに水素を添加して、前記アルゴンガスに含有される酸素を触媒反応により水に転換する触媒塔の少なくともいずれかと、
前記触媒塔の出口側で水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターする検出手段と、
前記触媒塔の出口側で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合に前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに酸素を添加する酸素添加手段、及び前記触媒塔の出口側で酸素が検出された場合に前記触媒塔の入口側で前記アルゴンガスに水素を添加する水素添加手段の少なくともいずれかを有し、
前記酸素添加手段及び前記水素添加手段は、前記アルゴンガスが連続的に前記触媒塔に供給されるのに対して、酸素又は水素を間欠的に添加するものであることを特徴とするアルゴンガスの回収精製装置を提供する。
【0025】
このように、酸素添加手段により酸素を、水素添加手段により水素を間欠的に添加することによって、アルゴンガス中に含まれる不純物の量が変動しても、過不足なく酸素と水素を供給することができ、継続的にアルゴンガスの精製を行うことができる。
【0026】
このとき、前記触媒塔の下流において前記触媒反応で余剰となった酸素を金属との酸化反応で除去する金属塔、及び前記触媒反応で余剰となった水素を金属との還元反応で除去する金属塔を有さないものであることが好ましい。
このように金属塔を有さないアルゴンガスの回収精製装置であれば、設備構成が簡単になり、設備コストを安くすることができるとともに、金属塔における金属の酸化還元による再生が不要であり、金属塔に起因する設備故障の発生もなくすことができる。また、エネルギー消費量も少なくすることができる。
【0027】
このとき、前記精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較し、前記水素と一酸化炭素の合計量が前記酸素の量に対してモル当量比で2倍を超える場合は酸素を添加し、2倍未満の場合は水素を添加するものであることが好ましい。
このように精製されるアルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素の合計量と酸素の量を比較することで、添加するガスを酸素とするか、又は水素とするかをあらかじめ決定できるので、一種類の触媒塔のみを有するアルゴンガスの回収精製装置とすることもできる。
【0028】
このとき、前記精製されるアルゴンガスが、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスであることが好ましい。
このように、シリコン単結晶製造装置から排出される廃アルゴンガスを上記アルゴンガスの回収精製装置で精製することにより、シリコン単結晶製造装置の運転コストを低く抑えることができる。
【0029】
このとき、前記間欠的に添加する酸素又は水素の量が、酸素及び水素を添加しなかった時間に、前記触媒反応で不足する酸素又は水素の化学量論量と等しくするものであることが好ましい。
このように触媒反応で不足する化学量論量の水素又は酸素を添加することで、余剰の酸素及び水素が発生しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、不純物として微量な水素、酸素、一酸化炭素を含むアルゴンガスの精製を行う場合において、間欠的に水素、酸素を添加することにより触媒塔の下流側に設置される余剰水素及び余剰酸素を処理するための除去設備が不要になり、アルゴンガスの回収精製装置をコストダウンすることができ、装置の安定稼働が可能になり、エネルギー消費量も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】廃アルゴンガスに酸素を添加し触媒反応させることを示す模式図である。
図2】本発明のアルゴンガスの精製方法により酸素を間欠的に添加する場合の酸素添加流量の模式図である。
図3】触媒表面での酸素保持機能を示す模式図である。
図4】触媒表面に保持された酸素とアルゴンガス中の水素及び一酸化炭素が反応して水及び二酸化炭素に転換されることを示す模式図である。
図5】本発明による、シリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスの精製フローの一例を示す模式図である。
図6】従来技術(特許文献1)による、シリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスの精製フローの一例を示す模式図である。
図7】従来技術(特許文献2)による、シリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスの精製フローの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以上説明したように、装置コストが安く、安定に稼働し、エネルギーコストも低いアルゴンガスの回収精製装置とアルゴンガスの精製方法が求められている。
本発明者らは、シリコン単結晶製造装置などの廃アルゴンガスの精製にあたって、廃アルゴンガス中の水素、酸素、一酸化炭素不純物に水素、酸素を添加して触媒反応を行う時に、添加した水素、酸素量と触媒塔から出てくる余剰水素、余剰酸素の量に時間のズレがあることに注目した。
【0033】
例えば、触媒塔の入口側の水素濃度が一定な場合に、まず添加する酸素流量を一定に保ち、その後添加酸素流量を急激に化学量論比以上に増加させた場合、触媒塔の出口側に余剰酸素が現れるのは、入口の酸素流量を増加させてから数分〜数10分の遅れ時間があることが分かった。
【0034】
また、触媒塔の入口側の酸素濃度が一定で水素を添加する場合も同様に、水素の過剰添加を始めてから、触媒塔の出口側に水素が現れるまでに数分〜数10分の時間遅れがあることが分かった。このことは、触媒塔には、酸素及び水素の保持機能が存在することを推測させるものである。
【0035】
本発明者らは、前述の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、触媒による酸素及び水素の保持機能を応用して間欠的に酸素及び水素を触媒塔に添加することで、従来から用いられている金属塔を不要とできることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は余剰水素や余剰酸素を除去するための触媒塔後段の金属塔を不要とし、設備費の削減、省エネルギー化、装置故障の発生の頻度の低下を可能とするものである。
【0036】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
[アルゴンガスの回収精製装置]
アルゴンガスの回収精製装置について、以下に図1から図5を参照して説明する。
図1は、廃アルゴンガスに酸素を添加し触媒反応させることを示す模式図であり、触媒塔の入口側で酸素を添加・注入する場合の図である。廃アルゴンガスは、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくとも一つ以上を不純物として含有している。この場合、間欠的に酸素を添加・注入することによって、添加された酸素が触媒の表面に到達するまの間に十分均一に廃アルゴンガスに混合されている必要がある。
図2は、本発明により酸素を間欠的に添加する場合の酸素添加流量の模式図である。添加流量は化学量論比に対して十分大きくとる必要があり、かつ触媒塔の下流に酸素が流れ出さないようにするために、触媒の酸素保持量を下回る量でなければならない。このため、触媒の量と酸素保持可能量の関係をあらかじめテストすることにより調べておく必要がある。触媒の量が少なすぎると、酸化反応が不十分になったり、酸素添加間隔が短すぎて現実的にならないことがあるので注意を要する。
【0038】
図3は、本発明者らが推定する触媒表面での酸素保持機能のイメージを表した模式図である。酸素が触媒表面にどのような状態で保持されているのかは不明であるので、保持された酸素を仮に記号「O」として表現した。間欠的に添加・注入する酸素の量は触媒表面に保持することのできる酸素の量を超えるものであってはならない。また、触媒塔の出口側に現出する余剰(未反応)水素及び余剰(未反応)一酸化炭素を監視(モニター)するための水素濃度計及び一酸化炭素濃度計(検出手段)は触媒塔の途中に設置するか、又は触媒塔を2段で設置してその中間に設置すると、触媒塔からの水素成分の漏れだしや、触媒塔出口側の濃度計の遅れ時間への対応が可能になる。
【0039】
図4は本発明者らが推定する、アルゴンガス中に水素、一酸化炭素、酸素が含まれる場合における触媒表面に保持された酸素とアルゴンガス中の水素及び一酸化炭素の反応のイメージを示す模式図である。アルゴンガス中にあらかじめ存在する酸素は触媒表面に一旦保持される。そして既に触媒表面に保持されている酸素と同様にアルゴンガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水及び二酸化炭素が生成される。
尚、図3及び図4による説明は触媒塔内で起こる現象を解りやすく解説するための本発明者らの推定を記したものである。この推定の正誤は本発明の有効性に影響を与えるものではない。
【0040】
そして、この状態が継続すると、触媒表面に保持された酸素が全て反応により消費され酸素不足の状態になり、触媒塔の出口側に未反応水素及び未反応一酸化炭素が現出するようになる。このような状態になったら、再び間欠的に酸素を添加・注入して触媒表面に酸素を保持させる。以上を繰り返し行っていくのである。
【0041】
図5は本発明による、シリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスの精製フローの一例を示す模式図であるが、従来技術(図6及び図7)による、廃アルゴンガスの回収精製装置に存在する触媒塔の下流側の金属塔は不要である。図5において、破線で囲った部分が、廃アルゴンガスの回収精製装置である。単結晶製造装置から排出された廃アルゴンガスは、加圧装置で所定の圧力まで加圧された後、廃アルゴンガスの回収精製装置10に送られる。本発明の廃アルゴンガスの回収精製装置は、アルゴンガスに酸素を添加して、アルゴンガスに含有される水素と一酸化炭素を触媒反応により水と二酸化炭素に転換する触媒塔、及び前記アルゴンガスに水素を添加して、アルゴンガスに含有される酸素を触媒反応により水に転換する触媒塔の少なくともいずれかを有しているが、図5では水素と一酸化炭素に酸素を添加して水と二酸化炭素に転換する触媒塔のみを有する例を示している。
【0042】
本発明の廃アルゴンガスの回収精製装置は触媒塔の出口側に、水素、一酸化炭素、及び酸素の少なくともいずれか一つをモニターする検出手段を備えている。図5に示した廃アルゴンガスの回収精製装置10では、水素と一酸化炭素の検出手段を備えている。
【0043】
さらに、本発明の廃アルゴンガスの回収精製装置は触媒塔の出口側で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合に前記触媒塔の入口側でアルゴンガスに酸素を添加する酸素添加手段、及び触媒塔の出口側で酸素が検出された場合に触媒塔の入口側でアルゴンガスに水素を添加する水素添加手段の少なくともいずれかを備えている。図5に示した廃アルゴンガスの回収精製装置10では、酸素添加手段を備える例が示されている。
【0044】
検出手段で水素及び一酸化炭素のいずれかが検出された場合は、即座に酸素添加手段により、所定の大流量の酸素を短時間、触媒塔に添加する。それにより、触媒塔内の触媒に酸素が再び保持される。
【0045】
この触媒塔の後に設置される吸着塔は触媒塔により生成された水、二酸化炭素、及び窒素を吸着除去できれば良く、従来と同じものを用いても良いし、その他の物でも良い。図5に示した本発明のアルゴンガスの回収精製装置の例では、図6及び図7に示した従来技術と同様に、第一吸着塔で水と二酸化炭素を吸着除去し、第二吸着塔で窒素を吸着している。水と二酸化炭素、及び窒素の吸着剤については、例えば特許文献1にそれぞれゼオライト及びモルデナイト型ゼオライトが開示されており、これらを用いることができる。
【0046】
また、以上説明した形態は全て、廃アルゴンガス中の不純物量が化学量論的に(水素と一酸化炭素の合計量)>(酸素量)の場合であり、触媒塔前の添加は酸素だけで良く、水素の添加手段は設けていない例である。本発明者らによるテスト結果によれば、触媒表面での水素の保持機能も酸素と同じように存在するので、廃アルゴンガス中の不純物量が化学量論的に(水素+一酸化炭素の合計量)<(酸素量)の場合は、添加・注入するガスを水素に変更して同様な装置構成とすることができる。図5に示したアルゴンガスの回収精製装置10との相違は、酸素添加手段に代わり、水素添加手段が設けられている点及び検出するガスが酸素である点である。
尚、モル当量で表した場合には、廃アルゴンガス中の水素と一酸化炭素の合計量が酸素の量に対してモル当量比で2倍を超える場合は酸素添加手段により酸素を添加し、2倍未満の場合は水素添加手段により水素を添加すると言い換えることができる。
また、廃アルゴンガス中の不純物の濃度が経時的に変動し、添加するガスを変更する必要がある場合には、酸素添加手段と水素添加手段の両方を備えるようにするのが好ましい。
【0047】
本発明の廃アルゴンガスの回収精製装置においては酸素及び水素を添加しなかった時間に、触媒塔における触媒反応で不足する酸素又は水素の化学量論量と等しい量の酸素又は水素を添加することになるので、余剰の酸素や水素が発生するのを防ぐことができる。
【0048】
[アルゴンガスの精製方法]
図5に示したアルゴンガスの回収精製装置を用いたアルゴンガスの精製方法について以下に説明する。
まず、図1に示すような廃アルゴンガスの精製において、水素、一酸化炭素を添加酸素により触媒塔を用いて水、及び二酸化炭素に転換する場合、添加酸素を化学量論比に対して過剰に短時間(ピーク的に)添加・注入して触媒塔の中に酸素を保持させる。触媒塔の出口側では、水素及び一酸化炭素が継続的にモニターされる。その後、触媒塔の出口側に水素又は一酸化炭素が出現するまでの間は、水素、一酸化炭素は触媒塔内に保持された酸素と反応し水、二酸化炭素が生成されている。そして、触媒塔の出口側で水素又は一酸化炭素が検出されたら、再び、化学量論比に対して過剰の酸素を触媒塔に注入(添加)する操作を行う。この状況は図2に示すように、過剰の酸素の短時間注入を間欠的に行うことにより、全体としては化学量論量の酸素を添加することを意味し、廃アルゴンガスの精製を継続的に進めることができることになる。
【0049】
また、廃アルゴンガス中に含有される水素、一酸化炭素濃度が変化した場合も、結果として短時間注入の間隔が変化するだけ、すなわち、水素、一酸化炭素濃度が上昇した場合は、触媒塔の出口側に水素、一酸化炭素が現出する時間間隔が短くなり、濃度が低下した場合は触媒塔の出口側に水素、一酸化炭素が現出する時間間隔が延びるだけであり、酸素の添加量に関するわずらわしい調整を行う必要は無く、自動制御も簡単に実現可能である。
【0050】
廃アルゴンガス中に含有される酸素に対しても、上記酸素の添加を水素の添加に変更して、酸素の現出をモニターすることにより、同様な精製方法が適用できる。
【0051】
以上のように、除去対象のガスが水素、一酸化炭素、及び酸素の場合、添加するガスが二種類になるため、除去対象のガスの濃度が大きく変化する場合には、それぞれ独立に触媒を2段に設ける必要がある(水素・一酸化炭素除去用触媒及び酸素除去用触媒)。しかしながら、通常のシリコン単結晶製造装置からの廃アルゴンガスの場合には、水素と一酸化炭素の合計量と、酸素の量の大小関係は一定であることが多く、少ない方は多い方により触媒反応に使われてしまうだけなので、通常は酸素添加手段又は水素添加のどちらかの手段を設置すれば良いことになる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
シリコン単結晶製造装置(CZ装置)からの廃アルゴンガスを本発明のアルゴンガスの回収精製装置及びアルゴンガスの精製方法により精製した(図5に示した精製フローによる)。
【0053】
以下にアルゴンガスの回収精製装置10の装置運転条件を示す。
・廃アルゴンガス流量: 500Nm/h
・廃アルゴンガス中の不純物濃度
水素: 5〜20モルppm
酸素: 20〜30モルppm
一酸化炭素: 60〜100モルppm
窒素: 50〜100モルppm
尚、この廃アルゴンガスは常に、化学量論的に(水素と一酸化炭素の合計量)>(酸素量)であった。
・触媒: Pt触媒
・添加ガス: 酸素(1回の間欠注入にて4NLの酸素を注入)
間欠注入量4NLはあらかじめ触媒の保持能力を実測して求めた。
【0054】
上記の廃アルゴンガス中の不純物(水素、酸素、一酸化炭素)の濃度の最小(Min)値、平均(Ave)値、最大(Max)値に対して、各濃度を計算により流量に換算した値と、それらを用いて間欠添加間隔を計算により求めた結果を表1に示す。また、廃アルゴンガス流量が487Nm/h、水素濃度が7モルppm、酸素濃度が23モルppm、一酸化炭素濃度が65モルppmの場合(実施例1)と、廃アルゴンガス流量が498Nm/h、水素濃度が3モルppm、酸素濃度が27モルppm、一酸化炭素濃度が95モルppmの場合(実施例2)についても、不純物流量と間欠添加間隔を計算により求め、表1に記載した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の計算値について、濃度の最小値(Min)のカラムを例に取り説明する。
水素の濃度は5モルppmであるから、流量は0.04167NL/min(=500Nm/h×5モルppm=0.0025Nm/h=0.04167NL/min)となる。
同様の計算により、酸素の濃度は20モルppmであるから、流量は0.16667NL/min、一酸化炭素の濃度は60モルppmであるから、流量は0.50000NL/minとなる。
【0057】
表1中に記載した「廃アルゴンガス中の差分」は、ガスを添加しない場合に、触媒塔での触媒反応の結果残るガスの濃度である。水素と一酸化炭素は区別せずに合計量で扱うことができる。「廃アルゴンガス中の差分」は以下の計算式により計算される。
廃アルゴンガス中の差分=水素濃度+一酸化炭素濃度―2×酸素濃度 (6)
濃度の最小値の場合では、(6)式に従い、廃アルゴンガス中の差分は25モルppm(=5+60−2×20)となる。
【0058】
また、表1中に記載した「間欠添加間隔」は以下の式により計算される。
間欠添加間隔=間欠酸素注入量÷{(1/2)×(水素流量+一酸化炭素流量)−酸素流量} (7)
濃度の最小値の場合では、(7)式に従い、間欠添加間隔は38.4min(=4÷{0.5×(0.04167+0.50000)−0.16667})となる。他のケースの不純物の流量及び間欠添加間隔についても、同様にして計算することができる。
表1に記載した全ての計算結果において、触媒反応後の差分(余剰の水素と一酸化炭素の合計量、又は余剰の酸素量)はゼロとなる。
【0059】
表1中に記載した実施例1と実施例2の廃アルゴンガスの場合について、計算により求めた不純物の流量と、図5に示した本発明のアルゴンガスの回収精製装置10を用いて精製を行った場合の実測した間欠添加間隔と触媒反応後の差分を表2に示した。触媒反応後の差分の符号がプラスの場合は酸素が余剰であり、符号がマイナスの場合は水素と一酸化炭素の合計量が余剰であることを示している。
【0060】
【表2】
【0061】
次に、表2中の実施例1と実施例2のカラムに示した廃アルゴンガスの精製後のアルゴンガス中の不純物濃度を測定したところ、結果はいずれも以下のようになった。
・精製されたアルゴンガス中の不純物濃度
水素 ≦1モルppm
酸素 ≦1モルppm
一酸化炭素 ≦1モルppm
二酸化炭素 ≦1モルppm
窒素 ≦2モルppm
このように、精製されたアルゴンガスはシリコン単結晶製造装置において再利用するために十分な純度を有するものであった。
【0062】
以上で説明したように、本発明のアルゴンガスの回収精製装置とアルゴンガスの精製方法は、シリコン単結晶製造装置(CZ装置、FZ装置)における炉内雰囲気ガスとしてのアルゴンガスを回収・精製・再利用するためのものであり、その回収精製装置のコストダウンを図り、装置を安定稼働させ、かつ省エネルギーに貢献することが可能である。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
10…アルゴンガスの回収精製装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7