(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気化学素子電極用複合粒子の体積平均粒子径は10〜150μmであって、前記メッシュの開口径は前記電気化学素子電極用複合粒子の体積平均粒子径の1.1〜6.0倍であることを特徴とする請求項2記載の電気化学素子電極用複合粒子の製造方法。
前記移送工程は、磁性を有する材料または磁化され得る材料の少なくとも一方を含む配管を用いて前記水系スラリー組成物を移送することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電気化学素子電極用複合粒子の製造方法。
前記スラリー製造工程および/または前記移送工程は、さらに前記水系スラリー組成物から磁気により金属異物を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電気化学素子電極用複合粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る電気化学素子電極用複合粒子の製造方法について説明する。
図1に示すように、本発明の電気化学素子電極用複合粒子の製造方法は、電極活物質及び粒子状結着剤を含む水系スラリー組成物を得るスラリー製造工程(S1)と、前記水系スラリー組成物を噴霧機に移送する移送工程(S2)と、前記噴霧機を用いて噴霧、乾燥することにより造粒粒子を得る造粒工程(S3)と、前記造粒粒子から粗大粒子を分離する分離工程(S5)とを含む電気化学素子電極用複合粒子の製造方法であって、前記造粒工程により得られた前記造粒粒子から磁気により金属異物を除去する第1除去工程(S4)および/または前記分離工程より前記粗大粒子が除去された前記造粒粒子から磁気により金属異物を除去する第2除去工程(S6)を含むことを特徴とする。
【0015】
(スラリー製造工程(S1))
本発明のスラリー製造工程(S1)においては、電極活物質及び粒子状結着剤を含む水系スラリー組成物が製造される。また、スラリー製造工程(S1)において得られる水系スラリー組成物は、後述する増粘剤を含有するのが好ましく、必要に応じて導電材および添加剤等のその他の成分を含んでもよい。
【0016】
(電極活物質)
本発明で用いる電極活物質は、製造される電気化学素子用電極の種類によって適宜選択される。たとえば、製造される電気化学用素子用電極が、リチウムイオン二次電池用の正極である場合、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、燐酸鉄リチウム、燐酸マンガンリチウム、燐酸バナジウムリチウム、バナジン酸鉄リチウム、ニッケル−マンガン−コバルト酸リチウム、ニッケル−コバルト酸リチウム、ニッケル− マンガン酸リチウム、鉄−マンガン酸リチウム、鉄−マンガン−コバルト酸リチウム、珪酸鉄リチウム、珪酸鉄− マンガンリチウム、酸化バナジウム、バナジン酸銅、酸化ニオブ、硫化チタン、酸化モリブデン、硫化モリブデン、等を挙げることができる。なお、上記にて例示した正極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリキノンなどのポリマーが挙げられる。これらのうち、リチウム含有金属酸化物を用いることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明においてドープとは、吸蔵、担持、吸着または挿入を意味し、正極にリチウムイオンおよび/ 又はアニオンが入る現象、あるいは負極にリチウムイオンが入る現象と定義する。また、脱ドープとは、放出、脱着、脱離をも意味し、上記ドープの逆の現象をいうものと定義する。
【0018】
また、製造される電気化学用素子用電極が、上述したリチウムイオン二次電池用の正極の対極としての負極である場合には、負極活物質としては、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、活性炭、熱分解炭素などの低結晶性炭素(非晶質炭素)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ、あるいはこれら物理的性質の異なる炭素の複合化炭素材料、錫やケイ素等の合金系材料、ケイ素酸化物、錫酸化物、バナジウム酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物、ポリアセン等が挙げられる。なお、上記に例示した電極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0019】
リチウムイオン二次電池電極用の電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。また、リチウムイオン二次電池用の正極活物質及び負極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.8〜20μmである。さらに、リチウムイオン二次電池用の正極活物質及び負極活物質のタップ密度は、特に制限されないが、正極では2g/cm
3以上、負極では0.6g/cm
3以上のものが好適に用いられる。
【0020】
あるいは、製造される電気化学用素子用電極が、リチウムイオンキャパシタの正極である場合、正極用活物質としては、アニオン及び/又はカチオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な活性炭、ポリアセン系有機半導体(PAS)、カーボンナノチューブ、カーボンウィスカー、グラファイト等が挙げられる。これらのなかでも、活性炭、カーボンナノチューブが好ましい。
【0021】
また、製造される電気化学用素子用電極が、上述したリチウムイオンキャパシタの正極の対極としての負極である場合には、負極活物質としては、リチウムイオン二次電池用の負極活物質として例示した材料をいずれも使用することができる。
【0022】
リチウムイオンキャパシタ用の正極活物質及び負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.8〜20μmである。また、リチウムイオンキャパシタ用の正極活物質として活性炭を用いる場合、活性炭の比表面積は、30m
2/g以上、好ましくは500〜3,000m
2/g、より好ましくは1,500〜2,600m
2/gである。比表面積が約2,000m
2/gまでは比表面積が大きくなるほど活性炭の単位重量あたりの静電容量は増加する傾向にあるが、それ以降は静電容量は然程増加せず、かえって電極活物質層の密度が低下し、静電容量密度が低下する傾向にある。また、活性炭が有する細孔のサイズは電解質イオンのサイズに適合していることがリチウムイオンキャパシタとしての特徴である急速充放電特性の面で好ましい。従って、電極活物質を適宜選択することで、所望の容量密度、入出力特性を有する電極活物質層を得ることができる。
【0023】
また、製造される電気化学用素子用電極が、電気二重層キャパシタ用の正極又は負極である場合には、正極活物質及び負極活物質としては、上述したリチウムイオンキャパシタ用の正極活物質として例示された材料をいずれも使用することができる。
【0024】
(粒子状結着剤)
本発明で用いる粒子状結着剤としては、上述した電極活物質を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はないが、本発明においては、溶媒に分散する性質を有する分散型の粒子状結着剤が好ましい。分散型の粒子状結着剤としては、たとえば、シリコン系重合体、フッ素含有重合体、共役ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等の高分子化合物が挙げられ、これらのなかでもフッ素系含有重合体、共役ジエン系重合体及びアクリレート系重合体が好ましく、共役ジエン系重合体及びアクリレート系重合体がより好ましい。
【0025】
共役ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、又はそれらの水素添加物である。前記単量体混合物における共役ジエンの割合は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
【0026】
アクリレート系重合体は、一般式(1):CH
2=CR
1−COOR
2(式中、R
1は水素原子又はメチル基を、R
2はアルキル基又はシクロアルキル基を表す。R
2はさらにエーテル基、水酸基、カルボン酸基、フッ素基、リン酸基、エポキシ基、アミノ基を有していてもよい。)で表される化合物由来の単量体単位を含む重合体、具体的には、一般式(1)で表される化合物の単独重合体、又は前記一般式(1)で表される化合物を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及び(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等のカルボン酸含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸リン酸エチル等のリン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。
【0027】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸n―ブチルやアルキル基の炭素数が6〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらを選択することにより、電解液に対する膨潤性の低くすることが可能となり、サイクル特性を向上させることができる。
【0028】
さらに、アクリレート系重合体は、たとえば、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類、芳香族ビニル系単量体、アミド系単量体、オレフィン類、ジエン系単量体、ビニルケトン類、複素環含有ビニル化合物などの、共重合可能な単量体を共重合することもできる。また、α,β−不飽和ニトリル化合物や酸成分を有するビニル化合物を共重合することもできる。
【0029】
アクリレート系重合体中における(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合は、得られる電気化学素子用電極の柔軟性を向上させることができ、割れに対する耐性を高いものとする観点から、好ましくは50〜95重量%であり、より好ましくは60〜90重量%である。
【0030】
また、アクリレート系重合体としては、上述した(メタ)アクリル酸エステルと、これと共重合可能な単量体との共重合体であってもよく、このような共重合可能な単量体としては、たとえば、α,β−不飽和ニトリル化合物、酸成分を有するビニル化合物などが挙げられる。
【0031】
α,β−不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0032】
アクリレート系重合体中におけるα,β−不飽和ニトリル化合物単位の含有割合は、結着剤としての結着力をより高める観点から、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0033】
また、酸成分を有するビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましく、特に、メタクリル酸とイタコン酸とを併用して用いることが好ましい。
【0034】
アクリレート系重合体における酸成分を有するビニル化合物単位の含有割合は、水系スラリー組成物とした際における安定性を向上させる観点から、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1.5〜5.0重量%である。
【0035】
さらに、アクリレート系重合体としては、上述した各単量体と共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよく、このような他の単量体としては、たとえば、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類、芳香族ビニル系単量体、アミド系単量体、オレフィン類、ジエン系単量体、ビニルケトン類、複素環含有ビニル化合物などが挙げられる。
【0036】
本発明で用いる分散型の粒子状結着剤は、粒子状であることにより、結着性が良く、また、作製した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができる。粒子状結着剤としては、例えば、ラテックスのごとき粒子状結着剤が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られるものが挙げられる。
【0037】
本発明で用いる分散型の粒子状結着剤の体積平均粒子径は、水系スラリー組成物とした際における安定性を良好なものとしながら、得られる電気化学素子用電極の強度及び柔軟性が良好となる観点から、好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nmである。
【0038】
粒子状結着剤の含有量は、電極活物質層と集電体との密着性が充分に確保でき、かつ、内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100重量部に対して、乾燥重量基準で好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0039】
(増粘剤)
水系スラリー組成物には、電極活物質及び粒子状結着剤に加えて、増粘剤を含有するのが好ましい。増粘剤は、電極用複合粒子を構成する各成分を、溶媒に分散又は溶解させて水系スラリー組成物とする際に、各成分を溶媒中に均一に分散させる作用を有する成分である。増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸エステル、ならびにアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸(又はメタクリル酸)ナトリウムなどのポリアクリル酸(又はメタクリル酸)塩、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロース又はそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。本発明において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
【0040】
これらの増粘剤の使用量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは0.8〜2重量部である。
【0041】
(その他の成分)
また、水系スラリー組成物には、電極活物質、粒子状結着剤及び増粘剤に加えて、必要に応じて、導電材、界面活性剤等を含有させてもよい。
【0042】
(導電材)
導電材としては、導電性を有する粒子状の材料であればよく、導電材の具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックが好ましい。導電材の平均粒子径は、特に限定されないが、より少ない使用量で十分な導電性を発現させる観点から、電極活物質の平均粒子径よりも小さいものが好ましく、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。
【0043】
導電材を添加する場合における、導電材の含有割合は、得られる電気化学素子の容量を高く保ちながら、内部抵抗を十分に低減する観点から、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。
【0044】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、ノニオニックアニオン等の両性の界面活性剤が挙げられるが、アニオン性又はノニオン性界面活性剤で熱分解しやすいものが好ましい。界面活性剤の配合量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0045】
(水系スラリー組成物の製造方法)
本発明に用いる水系スラリー組成物は、水を溶媒として用いたスラリーであり、上述の電極活物質、粒子状結着剤、増粘剤及び導電材等の必要に応じて用いられるその他の成分を水中で混合することにより得ることができる。なお、粒子状結着剤が溶媒としての水に分散された水分散体として得られる場合には、粒子状結着剤を水に分散させた状態で添加することができる。
電極活物質、粒子状結着剤、増粘剤及び導電材等の必要に応じて用いられるその他の成分を溶媒中に混合する方法、順序は、特に限定されない。
【0046】
また、水系スラリー組成物の製造方法としてはたとえば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合装置を用いる方法が挙げられる。混合は、好ましくは室温〜80℃で、10分〜数時間行う。
【0047】
また、水系スラリー組成物の粘度は、造粒工程の生産性を上げる観点から、室温において、好ましくは10〜3,000mPa・s、より好ましくは30〜1,500mPa・s、さらに好ましくは50〜1,000mPa・sである。
【0048】
(移送工程(S2))
本発明の移送工程(S2)では、混合装置等において得られた上記水系スラリー組成物を後述するスプレーやアトマイザー等の噴霧機に移送する。
【0049】
また、移送工程(S2)において、配管を介して上記水系スラリー組成物を噴霧機に移送することが好ましい。配管の材料は、特に制限されないが、移送中に配管の材料が摩耗等により削られ、水系スラリー組成物中に混入した場合でも後述する磁気フィルタにより除去が可能である観点から、磁性を有する材料、あるいは磁気フィルタによって磁化され得る材料が好ましく、経済的であり、磁気フィルタによる磁化のされやすさの観点から、SUS304が最も好ましい。また、これらの材料を用いる場合に配管は、これらの材料のうちの一種類のみを含んでもよいし、二種類以上を含んでいてもよい。
【0050】
(造粒工程(S3))
本発明の造粒工程(S3)では、スプレー、アトマイザー等の噴霧機を用いて上記水系
スラリー組成物を噴霧、乾燥することにより造粒粒子を得る。
【0051】
本発明の造粒粒子は、少なくとも電極活物質及び粒子状結着剤を含んでなる。ここで、造粒粒子においては、電極活物質及び粒子状結着剤のそれぞれが個別に独立した粒子として存在するのではなく、構成成分である電極活物質、粒子状結着剤を含む2成分以上によって一粒子を形成するものである。具体的には、前記2成分以上の個々の粒子の複数個が結合して二次粒子を形成しており、複数個(好ましくは数個〜数十個)の電極活物質が、粒子状結着剤によって結着されて粒子を形成しているものが好ましい。
【0052】
また、造粒粒子の形状は、流動性の観点から実質的に球形であることが好ましい。すなわち、複合粒子の短軸径をL
s、長軸径をL
l、L
a=(L
s+L
l)/2とし、(1−(L
l−L
s)/L
a)×100の値を球形度(%)としたとき、球形度が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。ここで、短軸径L
s及び長軸径L
lは、走査型電子顕微鏡写真像より測定される値である。
【0053】
さらに、造粒粒子の体積平均粒子径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。複合粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
【0054】
次に、このような造粒粒子の具体的な製造方法について説明する。本発明で用いる造粒粒子は、噴霧乾燥造粒法によって得ることができる。噴霧乾燥造粒法を用いることにより、造粒粒子を容易に得ることができる。
【0055】
噴霧乾燥造粒法においては、得られた水系スラリー組成物を噴霧、乾燥して造粒する。噴霧乾燥は、熱風中に水系スラリー組成物を噴霧して乾燥する方法である。水系スラリー組成物の噴霧に用いる噴霧機としては、アトマイザーが挙げられる。アトマイザーとしては、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置が挙げられ、回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央に水系スラリー組成物を導入し、円盤の遠心力によって水系スラリー組成物が円盤の外に放たれ、その際に水系スラリー組成物を霧状にする方式である。回転円盤方式において、円盤の回転速度は円盤の大きさに依存するが、好ましくは5,000〜30,000rpm、さらに好ましくは15,000〜30,000rpmである。円盤の回転速度が低いほど、噴霧液滴が大きくなり、得られる複合粒子の平均粒子径が大きくなる。
【0056】
回転円盤方式のアトマイザーとしては、ピン型とベーン型が挙げられる。ピン型アトマイザーは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧機の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円上に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成されている。水系スラリー組成物は噴霧盤中央から導入され、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。また、ベーン型アトマイザーは、噴霧盤の内側にスリットが切ってあり、水系スラリー組成物がその中を通過するように形成されている。一方、加圧方式は、水系スラリー組成物を加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式であり、加圧ノズル方式や、加圧二流体ノズル方式などが挙げられる。
【0057】
噴霧される水系スラリー組成物の温度は、好ましくは室温であるが、加温して室温より高い温度としてもよい。また、噴霧乾燥時の熱風温度は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜200℃である。噴霧乾燥法において、熱風の吹き込み方法は特に制限されず、たとえば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔頂部で噴霧され熱風と共に下降する方式、噴霧した滴と熱風が向流接触する方式、噴霧した滴が最初熱風と並流し次いで重力落下して向流接触する方式等が挙げられる。
【0058】
噴霧乾燥造粒法によれば、以上の製造方法によって、電極活物質、粒子状結着剤、増粘剤及び導電材等の必要に応じて添加されるその他の成分を含む造粒粒子を得ることができる。
【0059】
(第1除去工程(S4))
本発明の第1除去工程(S4)においては、上述のように得られた造粒粒子から磁気により金属異物を除去する。なお、第1除去工程(S4)は、造粒粒子から粗大粒子を分離する分離工程(S5)を行う前に行われる。
【0060】
造粒粒子から磁気により金属異物を除去する方法としては、特に制限はないが、たとえば磁気フィルタを用いて金属異物を除去することが好ましい。この場合には、磁性を有する金属異物(以下、「磁性異物」ということがある。)が含有されている造粒粒子が磁気フィルタを通過する際に、磁気フィルタの作用により磁性異物が除去される。
【0061】
ここで、造粒粒子に磁性異物が含有されている状態とは、造粒粒子の集合体(粉体)の中に磁性異物が含有されていることを意味し、造粒粒子中において電極活物質や粒子状結着剤で包囲(一部包囲されている場合も含む)された空隙中に磁性異物が存在している場合、造粒粒子を形成する電極活物質や粒子状結着剤のそれぞれの表面や表面近傍などに磁性異物が付着等により存在している場合、造粒粒子とは別個に造粒粒子の粉体中に磁性異物が混入している場合、など、本発明における磁気フィルタで補集可能な全ての状態を含む。
【0062】
磁気フィルタは、造粒粒子に混入する可能性のある磁性異物を捕集できる磁束密度の磁場を形成すればよいが、磁束密度としては、造粒粒子に磁性異物が含有されている場合に、磁性異物を適切に吸着除去する観点から、好ましくは200ガウス以上、より好ましくは400ガウス以上、さらに好ましくは1000ガウス以上である。磁束密度の上限は特に限定されないが、好ましくは、電極活物質等の、異物ではない材料が捕集される磁束密度よりも100ガウス以上低い磁束密度以下である。
【0063】
磁気フィルタにより除去する磁性異物としては、特に限定されないが、鉄粉、ステンレス粉などが代表的に挙げられる。上記した磁性異物は、摩耗等、異物の発生の仕方によって様々な態様の粒状の形態を示し、鋭利な角を有する粒子も存在する。磁性異物の除去を実施しない場合、造粒粒子に上記した鋭利な角を有する磁性異物粒子が混入することにより電気化学素子用電極に異物が混入することはもとより、後述するように複合粒子を含む電極材料を用いて電極活物質層を成形する時点において磁性異物粒子の鋭利な角を有する部分(鋭角部)が集電体を傷つけ破断させるおそれがある。集電体の破断は電極成形工程における工程不良となり、電気化学素子用電極の生産上好ましくない。従って、磁気フィルタの設置による磁性異物の除去は、電気化学素子用電極への異物混入の抑制という観点だけでなく、電極成形工程における生産性の向上という観点においても効果的である。
【0064】
(分離工程(S5))
本発明の分離工程(S5)においては、造粒粒子から粗大粒子を分離する。造粒粒子から粗大粒子を分離する方法としては、特に限定されないが、メッシュにより粗大粒子を分離する方法が好ましい。
【0065】
ここで、本発明において、粗大粒子とは、得られる複合粒子の体積平均粒子径に対して好ましくは5倍以上、より好ましくは4倍以上、さらに好ましくは3倍以上である。即ち、分離工程により造粒粒子から粗大粒子を分離することにより電気化学素子電極用複合粒子(以下、単に「複合粒子」ということがある。)を得ることができる。
【0066】
メッシュにより粗大粒子を分離する場合に用いるメッシュの開口径は、得られる複合粒子の体積平均粒子径に対して好ましくは1.1〜6.0倍、より好ましくは1.1〜5.0倍、さらに好ましくは1.1〜4.0倍である。
【0067】
また、メッシュにより粗大粒子を分離する場合に用いるメッシュの素材としては、特に制限はないが、通常、樹脂製、金属製、磁性材料製の中から選択され、金属製が好ましい。
【0068】
樹脂製メッシュとしては、ポリオレフィン系樹脂製のメッシュ、エンジニアリングプラスチック系樹脂製のメッシュ、フッ素系樹脂製のメッシュ等が挙げられる。
金属製メッシュとしては、通常ステンレス製メッシュが用いられ、タンタル製メッシュ、モリブデン製メッシュを用いてもよい。また、ステンレス製メッシュの中でも、造粒粒子との接触による摩耗により削られたり、破損したりすることにより、複合粒子中に混入した場合でも後述する磁気フィルタにより除去が可能である観点から、磁気フィルタによって磁化され得る材料が好ましく、経済的であり、磁気フィルタによる磁化のされやすさの観点から、SUS304が最も好ましい。
磁性材料製メッシュとしては、磁性を帯びているメッシュであれば特に制限はないが、磁性材料製メッシュに用いられる磁性材料としては、SUS430、SUS440C、SUS420J2、SUS410S、磁性ステンレス鋼ダーマロイ、マグネステン等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、分離工程(S5)においてさらに金属異物を除去することができる観点から、磁性材料製メッシュを用いることが好ましい。
【0070】
メッシュの運動形態としては、特に制限はないが、振動式、面内運動式、超音波式等の運動形態を用いることができる。振動式の場合は、水平方向にのみ振動するものが好ましい。
【0071】
(第2除去工程(S6))
本発明の第2除去工程(S6)においては、上述のように分離工程(S5)により粗大粒子が分離された造粒粒子から磁気により金属異物を除去する。造粒粒子から磁気により金属異物を除去する方法としては、特に制限はないが、上記第1除去工程(S4)に用いることができる方法と同様の方法を用いることができる。
【0072】
(その他の除去工程)
本発明の上記スラリー製造工程(S1)および/または上記移送工程(S2)において、水系スラリー組成物から磁気により金属異物を除去してもよい。水系スラリー組成物から金属異物を除去する方法としては、特に制限はないが、たとえば磁気フィルタを用いて金属異物を除去することができる。即ち、磁性異物が含有されている水系スラリー組成物が磁気フィルタを通過する際に、磁気フィルタの作用により磁性異物が除去される。
磁気フィルタとしては、上記第1除去工程(S4)に用いることができる磁気フィルタと同様の磁気フィルタを用いることができる。
【0073】
以上の各工程において、水系スラリーや造粒粒子が接触し得る部分であって金属材料で構成されている部分は、前記移送工程(S2)における配管の材料や、前記分離工程(S5)におけるメッシュの材料と同様に、摩耗や破壊等により、水系スラリー組成物中や複合粒子中等に混入した場合でも後述する磁気フィルタにより除去が可能である観点から、磁性を有する材料、あるいは磁気フィルタによって磁化され得る材料が好ましく、経済的であり、磁気フィルタによる磁化のされやすさの観点から、SUS304が最も好ましい。
磁性を有する材料あるいは磁気フィルタによって磁化され得る材料で構成するのが好ましい前記部分を含む装置等としては、例えば、スラリー製造工程(S1)における水系スラリーの混合装置として例示した前記各混合装置、造粒工程(S3)における水系スラリーの噴霧に用いる噴霧機として例示した前記各噴霧機、分離工程(S5)におけるメッシュ等を組み込んだ分離装置及び除去工程(S4、S6)における、磁気フィルタを組み込んだ除去装置などが挙げられる。これらの装置等の中でも特に、水系スラリーや造粒粒子等が接触する内壁部分が磁性を有する材料あるいは磁気フィルタによって磁化され得る材料で構成されているのが好ましい。
【0074】
(電気化学素子電極用複合粒子)
本発明に係る複合粒子は、少なくとも上記造粒工程(S3)、上記分離工程(S5)及び上記第1除去工程(S4)および/または上記第2除去工程(S5)を行うことにより得られる。
【0075】
即ち、上述の実施の形態においては、
図1に示すS1〜S7の工程を行う構成としたが、第1除去工程(S4)または第2除去工程(S6)の何れかを省略してもよい。
【0076】
本発明の電気化学素子電極用複合粒子の製造方法により得られる複合粒子の体積平均粒子径は、好ましくは10〜150μm、より好ましくは10〜130μm、さらに好ましくは10〜120μmである。複合粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、マイクロトラック:日機装製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
【0077】
(電気化学素子電極)
本発明の複合粒子を用いた電気化学素子電極(以下、単に「電極」ということがある。)は、複合粒子を含む電極活物質層を集電体上に積層してなる。電極に使用される集電体用材料としては、例えば、金属、炭素、導電性高分子などが挙げられ、好適な材料としては金属が挙げられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、その他の合金等が挙げられる。これらの中で導電性、耐電圧性の面からアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。また、高い耐電圧性が要求される場合には特開2001−176757号公報等で開示されるような高純度のアルミニウムを好適に用いることができる。集電体は、フィルムまたはシート状であり、その厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
【0078】
電極活物質層は、複合粒子を含む電極材料をシート状に成形し、次いで集電体上に積層しても良いが、集電体上で複合粒子を含む電極材料を直接成形し活物質層を形成することが好ましい。電極材料からなる電極活物質層を形成する方法としては、加圧成形法などの乾式成形方法、および塗布方法などの湿式成形方法があるが、乾燥工程が不要で高い生産性で電極を製造することが可能であり、かつ厚い活物質層を均一に成形することが容易な乾式成形法が好ましい。乾式成形法としては、加圧成形法、押出成形法(ペースト押出ともいう。)などがある。加圧成形法は、電極材料に圧力を加えることで電極材料の再配列、変形により緻密化を行い、電極活物質層を成形する方法である。押出成形法は、電極材料を押出成形機で押し出しフィルム、シートなどに成形する方法であり、長尺物として電極活物質層を連続成形することができる方法である。これらのうち、簡略な設備で行えることから、加圧成形を使用することが好ましい。加圧成形としては、例えば、複合粒子を含んでなる電極材料をスクリューフィーダー等の供給装置でロール式加圧成形装置に供給し、電極活物質層を成形するロール加圧成形法や、電極材料を集電体上に散布し、電極材料をブレード等でならして厚みを調整し、次いで加圧装置で成形する方法、電極材料を金型に充填し、金型を加圧して成形する方法などが挙げられる。
【0079】
これら加圧成形のうち、ロール加圧成形が好適である。この方法において、集電体を電極材料の供給と同時にロールに送り込むことによって、集電体上に電極活物質層を直接に積層してもよい。成形時の温度は、電極活物質層と集電体との密着性を十分なものとする観点から、好ましくは0〜200℃であり、複合粒子に含まれる粒子状結着剤のガラス転移温度よりも20℃以上高い温度とすることがより好ましい。ロール加圧成形においては、電極活物質層の厚みの均一性を向上させる観点から、成形速度を好ましくは0.1〜40m/分、より好ましくは1〜40m/分にして行う。またロール間のプレス線圧を好ましくは0.2〜30kN/cm、より好ましくは0.5〜10kN/cmにして行う。
【0080】
成形した電極の厚みのばらつきを無くし、電極活物質層の密度を上げて高容量化をはかるために、必要に応じて更に後加圧を行っても良い。後加圧の方法は、ロールによるプレス工程が一般的である。ロールプレス工程では、2本の円柱状のロールをせまい間隔で平行に上下にならべ、それぞれを反対方向に回転させて、その間に電極をかみこませ加圧する。また、ロールは加熱又は冷却等、温度調節して用いてもよい。
【0081】
(電気化学素子)
上記電気化学素子用電極を用いて電気化学素子を得ることができる。電気化学素子としては、鉛蓄電池、アルカリ電池、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスが挙げられ、エネルギー密度と出力密度に優れるリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタが好ましい。
電気化学素子用電極以外の他の構成要素としては、セパレータおよび電解液が挙げられる。
【0082】
(セパレータ)
セパレータは、電気化学素子用電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや芳香族ポリアミド、レーヨンもしくはガラス繊維製の微孔膜または不織布;一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コートなどを用いることができる。セパレータは、上記一対の電極活物質層が対向するように、電気化学素子用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0083】
(電解液)
電解液には、電解液溶媒に電解質が溶解されている。リチウムイオン二次電池、およびリチウムイオンキャパシタの場合には、電解液溶媒には、例えば、非プロトン性極性溶媒を使用することができる。かかる非プロトン性極性溶媒は、非プロトン性有機電解質溶液を形成する。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ -ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、ジメチルサルフェート、スルホラン等が挙げられる。さらに、これら非プロトン性極性溶媒の二種以上を混合した混合液を用いても構わない。負極の活物質に黒鉛を用いる場合にはエチレンカーボネートを含むことが好ましい。
【0084】
電解液に溶解される電解質としては、リチウムイオンを生成し得る電解質を含むことが必須である。例えば、LiClO
4、LiAsF
6、LiBF
4、LiPF
6、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiBC
4O
8、LiCF
3SO
3等が挙げられる。また、電解質は単独あるいは混合して使用してもよい。なお、上記に例示した様に電解液にリチウムイオンを生成し得る電解質を含んでいれば、特性に悪影響を及ぼさない程度にカチオンが4級アンモニウムカチオンやスピロ−(1,1')−ビピロリジニウムカチオンとなる電解質を電解液に含んでいてもよい。
【0085】
さらに、特性改善のための添加剤としてビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、メチルアセテート、ビニルアセテート等の各種添加剤を電解液に添加しても構わない。さらに、ホスライト(日本化学工業株式会社製)などの難燃化のための添加剤等を添加しても構わない。
【0086】
上記の電極およびセパレータに電解液を含浸させて、電気化学素子が得られる。具体的には、上記の電極およびセパレータを必要に応じ捲回、積層または折るなどして容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。また、上記電極およびセパレータに予め電解液を含浸させたものを容器に収納してもよい。容器としては、コイン型、円筒型、角型などの公知のものをいずれも用いることができる。
【0087】
本実施の形態に係る電気化学素子電極用複合粒子の製造方法によれば、造粒粒子から金属異物を除去した複合粒子を得ることができる。また、造粒粒子から粗大粒子を分離した複合粒子を得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下に挙げる実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0089】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。実施例及び比較例における評価は以下のように行った。
【0090】
(1)複合粒子中の残留金属異物量
実施例および比較例で調製した正極用複合粒子及び負極用複合粒子について酸で煮沸することで溶解し、ICP(Inductively Coupled Plasma)高周波プラズマ発光分析により金属異物含有量として、鉄含有量を測定し、下記の基準により評価した。結果を表1に示した。
A:鉄含有量が30ppm未満
B:鉄含有量が30ppm以上35ppm未満
C:鉄含有量が35ppm以上45ppm未満
D:鉄含有量が45ppm以上55ppm未満
E:鉄含有量が55ppm以上
【0091】
(2)電池特性:自己放電特性
ラミネート型のリチウムイオン二次電池について25℃で0.1Cの定電流法によって、満充電し、24時間25℃で放置し、電圧低下の割合を測定し、結果を表1に示した。値が小さいほど自己放電特性に優れることを示す。
【0092】
(実施例1)
(カルボキシメチルセルロース水溶液の作製)
カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ということがある。)として、溶液粘度が8000mPa・sであるCMC(第一工業製薬株式会社製「セロゲンBSH−12」)を用い、CMCの1%水溶液を調整した。
【0093】
(負極用水系スラリー組成物の製造)
負極活物質として天然黒鉛100部を入れ、これに上記CMC1%水溶液を固形分相当で1.0部加え、イオン交換水で固形分濃度35%に調整した後、25℃で60分ディスパー混合した。次に、粒子状結着剤(BM−400B)を固形分で2部入れ、さらに10分混合して負極用水系スラリー組成物を得た。作製した負極用水系スラリー組成物をエイシン社製高磁力マグ・フィルター(1.7T)に通した。
【0094】
(負極用複合粒子の製造)
次に、マグ・フィルターを通した負極用水系スラリー組成物を、スプレー乾燥機(大川原化工機社製)に供給し、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用いて、回転数25,000rpm、熱風温度150℃、粒子回収出口の温度90℃の条件にて、噴霧乾燥造粒を行い、負極用造粒粒子を得た。得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性メッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。さらにエイシン社製格子マグ・フィルターに通し体積平均粒子径が75μmの負極用複合粒子を得た。ICPにより、得られた負極用複合粒子の鉄の含有量を測定したところ、A判定であった。
【0095】
(負極の製造)
上記にて得られた負極用複合粒子を、ロールプレス機(押し切り粗面熱ロール、ヒラノ技研工業社製)のロール(ロール温度100℃、プレス線圧4.0kN/cm)に、集電体としての電解銅箔(厚さ:20μm)とともに供給し、成形速度20m/分で、集電体としての電解銅箔上に、シート状に成形し、厚さ80μmの負極活物質層を有する負極を得た。
【0096】
(正極用水系スラリー組成物の製造)
ディスパー付プラネタリーミキサーに、LCO(「LiCoO
2」の略称)系正極活物質を100部、アセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を4.0部、CMCの1%水溶液(第一工業製薬社製「BSH−12」)を固形分相当で1.0部加え、イオン交換水で全固形分濃度が85%(水分率15%)となるように調製して混合物を得た。得られた混合物を、プラネタリーミキサーを用いて、25℃で60分間混練した。そこに、アクリル系粒子状結着樹脂の40%水分散液を固形分相当で2.0部加え、イオン交換水で全固形分濃度が75%(水分率25%)となるように調製して混合し、正極用スラリー組成物を得た。得られた正極用スラリー組成物の粘度を測定したところ、830mPa・sであった。
【0097】
(正極用複合粒子の製造)
上記で得た正極用スラリー組成物を、スプレー乾燥機(大川原化工機社製「OC−16」)に供給し、回転円盤方式のアトマイザー(直径65mm)を用いて回転数25000rpm、熱風温度150℃、粒子回収出口温度90℃の条件にて、噴霧乾燥造粒を行い、正極用造粒粒子を得た。得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性メッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去し、さらにエイシン社製格子マグ・フィルターに通し体積平均粒子径は67μmであった。ICPにより、得られた正極用複合粒子の鉄の含有量を測定したところA判定であった。
【0098】
(正極の製造)
上記で得られた正極用複合粒子を、定量フィーダ(ニッカ社製「ニッカスプレーK−V」)を用いてロールプレス機(ヒラノ技研工業社製「押し切り粗面熱ロール」)のプレス用ロール(ロール温度100℃、プレス線圧500kN/m)に供給した。プレス用ロール間に、厚さ20μmのアルミニウム箔を挿入し、定量フィーダから供給された上記正極用複合粒子をアルミニウム箔(集電体)上に付着させ、成形速度1.5m/分で加圧成形し、正極活物質層を有する正極を得た。
【0099】
(リチウムイオン二次電池の製造)
電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記で得られた正極を、4.6×4.6cm
2の正方形に切り出し、正方形の正極を得た。この正方形の正極を、その集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。正方形の正極の正極活物質層側の面上に、正方形のポリプロピレン製多孔膜からなるセパレータを配置した。
上記で得られたプレス後の負極を、5×5cm
2の正方形に切り出し、正方形の負極を得た。この正方形の負極を、上記の正方形のセパレータ上に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比(25℃)、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入し、さらに、150℃のヒートシールをしてアルミ外装を閉口し、アルミ包材の開口を密封した。これにより、リチウムイオン二次電池を製造した。得られたリチウムイオン二次電池について、得られたリチウムイオン二次電池の自己放電特性を測定したところ0.10%であった。
【0100】
(実施例2)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性メッシュにより粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに体積平均粒子径73μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0101】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性メッシュにより粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに体積平均粒子径65μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0102】
(実施例3)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに、磁性メッシュにより粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径77μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0103】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに、磁性メッシュにより粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径66μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0104】
(実施例4)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径75μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0105】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径67μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0106】
(実施例5)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに体積平均粒子径73μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0107】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した後、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに体積平均粒子径65μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0108】
(実施例6)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径77μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0109】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さずに、磁性を有しないメッシュ(開口径125μm)により粗大粒子を除去した。その後エイシン社製格子マグ・フィルターに通して体積平均粒子径66μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0110】
(比較例1)
負極用水系スラリー組成物の製造において作製した負極用水系スラリー組成物をエイシン社製高磁力マグ・フィルターに通さなかった以外は、実施例1と同様に負極用水系スラリー組成物の製造を行った。
【0111】
負極用複合粒子の製造において、上記のようにして得られた負極用水系スラリー組成物を噴霧乾燥造粒することにより負極用造粒粒子を得た。この負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さず、さらに、磁性を有しないメッシュにより粗大粒子を除去して体積平均粒子径73μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0112】
正極用水系スラリー組成物の製造において作製した正極用水系スラリー組成物をエイシン社製高磁力マグ・フィルターに通さなかった以外は、実施例1と同様に正極用水系スラリー組成物の製造を行った。
【0113】
また、正極用複合粒子の製造において、上記のようにして得られた正極用水系スラリー組成物を噴霧乾燥造粒することにより正極用造粒粒子を得た。この正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さず、さらに、磁性を有しないメッシュにより粗大粒子を除去して体積平均粒子径65μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0114】
(比較例2)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した。その後磁性メッシュを用いた粗大粒子の除去を行わずに体積平均粒子径73μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造を行った。また、実施例1と同様に負極の製造を行ったところ、負極を製造することができなかった。
【0115】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通した。その後磁性メッシュを用いた粗大粒子の除去を行わずに体積平均粒子径66μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造を行った。また、実施例1と同様に正極の製造を行ったところ、正極を製造することができなかった。
【0116】
(比較例3)
負極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた負極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さず、さらに、磁性を有しないメッシュにより粗大粒子を除去して体積平均粒子径73μmの負極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に負極用複合粒子の製造及び負極の製造を行った。
【0117】
また、正極用複合粒子の製造において、噴霧乾燥造粒により得られた正極用造粒粒子をエイシン社製格子マグ・フィルターに通さず、さらに、磁性を有しないメッシュにより粗大粒子を除去して体積平均粒子径67μmの正極用複合粒子を得た以外は、実施例1と同様に正極用複合粒子の製造及び正極の製造を行った。
上述のようにして得られた負極および正極を用いて実施例1と同様にリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示すように、電極活物質及び粒子状結着剤を含む水系スラリー組成物を得るスラリー製造工程と、前記水系スラリー組成物を噴霧機に移送する移送工程と、前記噴霧機を用いて噴霧、乾燥することにより造粒粒子を得る造粒工程と、前記造粒粒子から粗大粒子を分離する分離工程とを含む電気化学素子電極用複合粒子の製造方法であって、前記造粒工程により得られた前記造粒粒子から磁気により金属異物を除去する第1除去工程および/または前記分離工程より前記粗大粒子が除去された前記造粒粒子から磁気により金属異物を除去する第2除去工程を含むこの複合粒子の製造方法により得られた複合粒子の残留金属異物量は少なく、また、自己放電特性も良好であった。