(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含フッ素ゴム(a)が、テトラフルオロエチレンに基づく単位35〜70モル%、プロピレンに基づく単位20〜55モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜40モル%からなる共重合体である、請求項1に記載の含フッ素エラストマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<含フッ素エラストマー組成物>
本発明の含フッ素エラストマー組成物(以下、「本発明の組成物」という場合がある。)は、含フッ素ゴム(a)と、含フッ素共重合体(b)と、必要に応じてエポキシ基を含有するエチレン共重合体(c)とを含有する。
なお、以下の説明において、各成分を構成する単位のモル比は、
13C−NMR、FT−IR、フッ素含有量分析法等を用いて測定されるモル比である。
「その他のモノマーに基づく単位」とは、当該重合体を構成する単位として必須の単位を形成するモノマー(たとえばTFE/P共重合体におけるテトラフルオロエチレン及びプロピレン、ETFEにおけるエチレン及びテトラフルオロエチレン)以外のモノマーに基づく単位を示す。
【0012】
(含フッ素ゴム(a))
含フッ素ゴム(a)(以下、「(a)成分」という場合がある。)は、フッ素原子を含む共重合体であって、融点を持たない弾性共重合体(含フッ素エラストマー)である。
(a)成分としては、例えば、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。(a)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
(a)成分としては、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体(TFE/P共重合体)がより好ましい。
【0014】
TFE/P共重合体は、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という場合がある。)に基づく単位と、プロピレン(以下、「P」という場合がある。)に基づく単位とを有する弾性共重合体である。
TFE/P共重合体において、TFEに基づく単位と、Pに基づく単位とのモル比[TFE/P]は、典型的には、25/75〜90/10であり、好ましくは40/60〜70/30である。
TFE/P共重合体は、TFE及びP以外のその他のモノマーに基づく単位をさらに有してもよい。
【0015】
TFE/P共重合体としては、TFEに基づく単位35〜70モル%、Pに基づく単位20〜55モル%、及びその他のモノマーに基づく単位0〜40モル%からなる共重合体が好ましい。ここで、その他のモノマーに基づく単位0〜40モル%とは、その他のモノマーに基づく単位を含まないか、含む場合は、0.01〜40モル%であることを意味する。
TFE/P共重合体を構成する全単位中に占めるTFEに基づく単位の割合は、40〜70モル%であることがより好ましく、50〜65モル%であることがさらに好ましく、52〜60モル%であることが特に好ましい。TFEに基づく単位の割合が35モル%以上であることにより、本発明の組成物は、機械的特性、耐薬品性、柔軟性等に優れる。また、TFEに基づく単位の割合が70モル%以下であることにより、Pに基づく単位を充分な割合で有することができる。
TFE/P共重合体を構成する全単位中に占めるPに基づく単位の割合は、25〜55モル%であることがより好ましく、30〜55モル%であることがさらに好ましく、35〜50モル%であることが特に好ましく、40〜48モル%であることが最も好ましい。Pに基づく単位の割合が20モル%以上であることにより、本発明の組成物は、成形加工性、柔軟性に優れる。また、Pに基づく単位の割合が55モル%以下であることにより、TFEに基づく単位を充分な割合で有することができる。
TFE/P共重合体を構成する全単位中に占める、その他のモノマーに基づく単位の割合は、0〜20モル%であることがより好ましく、0〜15モル%であることがさらに好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。ここで、その他のモノマーに基づく単位0〜20モル%とは、上記と同様に、その他のモノマーに基づく単位を含まないか、含む場合は、0.01〜20モル%であることを意味する。以下、同様とする。
その他のモノマーに基づく単位を含む場合は、その下限は、0.1モル%が好ましく、0.5モル%がより好ましい。その他のモノマーに基づく単位の割合が、40モル%以下であることにより、TFEとPに基づく単位を充分な割合で有することができる。
【0016】
その他のモノマーとしては、TFE以外の含フッ素モノマー、P以外の炭化水素モノマー、架橋性モノマー等が挙げられる。
TFE以外の含フッ素モノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)等が挙げられる。含フッ素モノマーは1種単独又は2種以上を併用してもよい。
TFE以外の含フッ素モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の低温柔軟性などを改善することができる。
【0017】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)中のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。パーフルオロアルキル基の具体例としては、CF
3基、C
2F
5基、C
3F
7基が好ましい。
パーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)中のパーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基の炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基におけるエーテル性酸素原子の数は、4個以下が好ましく、2個以下がより好ましい。パーフルオロ(アルキルオキシアルキル)基の具体例としては、CF
3OCF(CF
3)CF
2−基、C
2F
5OC
2F
4−基、C
3F
7OC
3F
6−基、C
3F
7OC
3F
6OC
3F
6−基が好ましい。
【0018】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及びパーフルオロ(アルキルオキシアルキルビニルエーテル)の具体例としては、CF
2=CFOCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
3CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
4CF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2OCF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
3OCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
3、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2CF
2O)
2CF
2CF
3、CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
2CF
3、CF
2=CFO[CF
2CF(CF
3)O]
2(CF
2)
2CF
3等が挙げられる。
【0019】
P以外の炭化水素モノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ノナン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、ブテン、イソブテン等のα−オレフィン(Pを除く)等が挙げられる。炭化水素モノマーは1種単独又は2種以上を併用してもよい。
P以外の炭化水素モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の成形加工性などを改善することができる。
【0020】
その他のモノマーとして、含フッ素モノマー、炭化水素モノマー、又はそれらの混合物を用いる場合、TFEとPに基づく単位の合計のモル数に対して、その他のモノマーに基づく単位の含有量は、0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.3〜10モル%が特に好ましい。
【0021】
架橋性モノマーとは、同一分子内に架橋性基を1個以上有するモノマーをいう。架橋性モノマー中の架橋性基としては、炭素−炭素二重結合基、ハロゲン原子等が挙げられる。
架橋性モノマーとしては、1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、1−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。架橋性モノマーは1種単独又は2種以上を併用してもよい。
架橋性モノマーに基づく単位の含有量は、TFE/P共重合体を構成する全単位中に、0.001〜8モル%が好ましく、0.001〜5モル%がより好ましく、0.01〜3モル%が特に好ましい。
架橋性モノマーに基づく単位を含有することにより、本発明の組成物の機械的特性や圧縮永久歪などを改善することができる。
【0022】
(a)成分のムーニー粘度(ML
1+10,121℃)は、20〜200が好ましく、30〜150がより好ましく、40〜120が最も好ましい。ムーニー粘度は、分子量の尺度であり、JIS K6300−1:2000に準じて測定される。この値が大きいと分子量が大きいことを示し、小さいと分子量が小さいことを示す。ムーニー粘度が20〜200の範囲にあると、本発明の組成物は機械的特性、成形性に優れる。
(a)成分の市販品の例としては、「AFLAS150CS」(旭硝子社製)等が挙げられる。
【0023】
(含フッ素共重合体(b))
含フッ素共重合体(b)(以下、「(b)成分」という場合がある。)は、TFEに基づく単位(A)と、エチレン(以下、「E」という場合がある。)に基づく単位(B)とを含有する。
(b)成分における単位(A)と単位(B)とのモル比[(A)/(B)]は、25/75〜80/20であり、50/50〜62/38が好ましく、51/49〜61/39がより好ましく、53/47〜60/40が最も好ましい。(A)/(B)が25/75である場合よりも、単位(A)と単位(B)との合計100モルに対する単位(B)の割合が25モル未満であると、電線・ハーネス用途で期待される機械的強度に対して不足が生じ、50モルより多いと、電線・ハーネス用途で期待される耐熱性に対して不足が生じる。つまり、この範囲であると、機械的強度に優れ、耐熱性にも優れる。
【0024】
(b)成分は、単位(A)及び(B)に加えて、CH
2=CH(CF
2)
QF(ここで、Qは2〜10の整数)に基づく単位(C)をさらに含有することが好ましい。単位(C)を含有することにより、耐ストレスクラック性を改善したり、若しくはフッ素樹脂の生産性を良好に保ったりすることができる。
CH
2=CH(CF
2)
QFにおいて、Qは2〜6の整数であることが好ましい。
【0025】
(b)成分が単位(C)を含有する場合、単位(A)と単位(C)とのモル比[(A)/(C)]は85/15〜99.9/0.1であることが好ましく、86/14〜99.8/0.2であることがより好ましく、88/12〜99.7/0.3であることがさらに好ましく、90/10〜99.5/0.5であることが最も好ましい。単位(C)の割合が好ましい下限値以上であれば、本発明の組成物の耐ストレスクラック性、加工性等の特性が向上する。また、(b)成分の結晶化温度を低くすることができる。
【0026】
(b)成分は、TFE、E及びCH
2=CH(CF
2)
QF以外のその他のモノマーに基づく単位(D)をさらに含有してもよい。単位(D)を含有することによって、(b)成分の結晶化温度が低くなる。
その他のモノマーは、含フッ素モノマーでも非含フッ素モノマーでもよい。
その他のモノマーとしての含フッ素モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下「VDF」という場合がある。)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下「HFP」という場合がある。)、クロロトリフルオロエチレン等の含フッ素オレフィン(ただしTFE及びCH
2=CH(CF
2)
QFを除く。)、CF
2=CFOR
1(ここで、R
1は、エーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のフルオロアルキル基を表す。)等のフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF
2=CFOR
2SO
2X
1(ここで、R
2はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のフルオロアルキレン基を表し、X
1はハロゲン原子又は水酸基を表す。)、CF
2=CFOR
3CO
2X
2(ここで、R
3はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のフルオロアルキレン基を表し、X
2は水素原子又は炭素数3以下のアルキル基を表す。)、CF
2=CF(CF
2)
POCF=CF
2(ここで、Pは1又は2を表す。)、CH
2=CX
3(CF
2)
QX
4(ここで、X
3は水素原子又はフッ素原子を表し、Qは2〜10の整数を表し、X
4は水素原子又はフッ素原子を表す。)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。含フッ素モノマーは1種単独又は2種以上を併用してもよい。
R
1は、炭素数1〜10のフルオロアルキル基であることが好ましい。
R
1における炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。フルオロアルキル基としては、CF
3基、C
2F
5基、C
3F
7基等のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
R
2〜R
3は、それぞれ、炭素数1〜10のフルオロアルキレン基である。
R
2〜R
3における炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。フルオロアルキレン基としては、CF
2基、C
2F
4基、C
3F
6基、C
4F
8基等のパーフルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0027】
前記フッ素含有モノマーとしては、VDF、HFP、CF
2=CFOR
1、CH
2=CX
3(CF
2)
QX
4等が好ましく、HFP、CF
2=CFOR
1、CH
2=CX
3(CF
2)
QX
4等がより好ましい。
CF
2=CFOR
1の具体例としては、CF
2=CFOCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
8F等が挙げられ、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3が好ましい。
CH
2=CX
3(CF
2)
QX
4の具体例としては、CH
2=CH(CF
2)
2F、CH
2=CH(CF
2)
3F、CH
2=CH(CF
2)
4F、CH
2=CF(CF
2)
3H、CH
2=CF(CF
2)
4H等が挙げられ、CH
2=CH(CF
2)
4F、CH
2=CH(CF
2)
2F等が好ましい。
【0028】
その他のモノマーとしての非含フッ素モノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;P、ブテン、イソブテン等のα−オレフィン(ただしEを除く。);カルボニル基含有モノマー等が挙げられる。
カルボニル基含有モノマーとしては、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ノナン酸ビニル等のビニルエステル;イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、シトラコン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水イタコン酸(以下、「IAH」という場合がある。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水シトラコン酸、無水マレイン酸等の不飽和酸無水物;等が挙げられる。
非含フッ素モノマーは1種単独又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
(b)成分は、耐熱性を下げることなく結晶化温度を下げられる点で、単位(D)として、HFPに基づく単位を含有することが好ましい。
HFPに基づく単位を含有する場合、(b)成分が含有する単位(D)は、HFPに基づく単位のみでもよく、HFPに基づく単位以外の単位をさらに含有してもよい。
【0030】
(b)成分が単位(D)を含有する場合、単位(A)と単位(D)とのモル比[(A)/(D)]は70/30〜99.9/0.1であり、75/25〜98/2であることが好ましく、80/20〜95/5であることがより好ましく、82/18〜90/10であることがさらに好ましい。単位(D)の好ましい割合が、下限値以上であれば、(b)成分の結晶化温度が充分に低くなり、本発明の効果がより優れたものとなる。
【0031】
(b)成分としては、E/TFE系共重合体、E/TFE/HFP系共重合体、E/P/TFE系共重合体、E/P/TFE/CH
2=CH(CF
2)
QF系共重合体、及びE/TFE/HFP/CH
2=CH(CF
2)
QF系共重合体からなる群より選択される少なくとも一種(以下、(b1)成分ともいう。)が好ましい。
【0032】
(b1)成分のうち、HFPに基づく単位が含まれる含フッ素共重合体において、HFP以外のモノマーに基づく単位/HFPに基づく単位のモル比は、90/10〜94/6が好ましく、91/9〜93/7がより好ましい。HFP以外のモノマーに基づく単位のモル比が90より少ないと、重合が困難になると同時に耐熱性が低下し、94より多いと、融点が高くなり成形性が悪くなる。この範囲内にあると、生産性(重合)と耐熱性に優れ、成形性にも優れる。
【0033】
(b1)成分のうち、Pに基づく単位が含まれる含フッ素共重合体において、P以外のモノマーに基づく単位/Pに基づく単位のモル比は、80/20〜94/6が好ましく、85/15〜93/7がより好ましい。P以外のモノマーに基づく単位のモル比が80より少ないと、耐熱性が低下し、94より多いと、融点が高くなり成形性が悪くなる。この範囲内にあると、生産性(重合)と耐熱性に優れ、成形性にも優れる。
【0034】
(b1)成分には、さらに、カルボニル基を含有するモノマーに基づく単位が含まれていてもよい。
カルボニル基を含有するモノマーとしては、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
カルボニル基を含有するモノマー以外のモノマーに基づく単位/カルボニル基を含有するモノマーに基づく単位とのモル比は、90/10〜99.99/0.01が好ましく、92/8〜99.95/0.05がより好ましく、95/5〜99.92/0.08がさらに好ましく、96/4〜99.9/0.1が最も好ましい。カルボニル基を含有するモノマーに基づく単位の割合が、全単位の合計に対して10モル%以下であることにより、組成物は、力学物性に優れる。
【0035】
(b)成分の結晶化温度は、100〜210℃であり、120〜205℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。(b)成分の結晶化温度が210℃以下であると、(a)成分と(b)成分との相溶性が向上するため、成形温度を下げることが可能となり、組成物は、耐熱変色性、及び成形性に優れたものとなる。(b)成分の結晶化温度が100℃以上であると、耐熱変色性が向上する。
(b)成分の結晶化温度は、(b)成分中の単位(A)及び単位(B)以外の他の単位(単位(C)、(D)等)の含有量によって調整できる。例えば他の単位の含有量が多いほど、(b)成分の結晶化温度が低くなる傾向がある。
(b)成分の結晶化温度は、後述の実施例に示す測定方法により測定される。
【0036】
(b)成分のメルトフローレイト(以下、「MFR」という場合がある。)は、0.1〜1000g/10分であり、0.1〜500g/10分が好ましく、0.1〜200g/10分がより好ましく、0.2〜100g/10分が最も好ましい。MFRは分子量の目安である。前記MFRが上記範囲の下限値以上であれば、組成物の熱溶融によるフッ素樹脂同等の成形加工が設備的に可能となる。前記MFRが上記範囲の上限値以下であれば、成形加工品が実用途に使用可能な強度を有する。
なお、本発明におけるMFRは、測定対象物(含フッ素共重合体、含フッ素エラストマー組成物等)の結晶化温度の20〜50℃高い温度で、荷重49Nにて測定される値である。具体的には、高化式フローテスターにおいて、設定温度で、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出する樹脂の質量(g/10分)である。
MFRを測定する際の設定温度は、測定対象物の結晶化温度によって各々変わってくるが、実施例で用いた(b)成分のMFRは、温度220℃、荷重49Nの条件で測定される値であり、実施例の組成物、比較例で用いた(b)成分(比較品)、及び比較例の組成物のMFRはそれぞれ、温度297℃、荷重49Nで測定される値である。
【0037】
(エポキシ基を含有するエチレン共重合体(c))
本発明の組成物は、エポキシ基を有するエチレン共重合体(c)(以下、「(c)成分」という場合がある。)をさらに含有することが好ましい。(c)成分を含有することにより、本発明の効果がより優れたものとなる。(c)成分は、上述した(a)成分と(b)成分との相溶性を高める働きをしていると考えられる。
(c)成分としては、Eに基づく単位、及びエポキシ基を有するモノマーに基づく単位とからなる共重合体;Eに基づく単位、エポキシ基を有するモノマーに基づく単位、及びその他のモノマーに基づく単位からなる共重合体;等のエチレン共重合体が挙げられる。(c)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
エポキシ基を有するモノマーとしては、不飽和グリシジルエーテル類(例えば、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなど。)、不飽和グリシジルエステル類(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなど。)等が挙げられる。これらの中では、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させる(c)成分が得られることから、メタクリル酸グリシジルが好ましい。エポキシ基を有するモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
その他のモノマーとしては、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなど。)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど。)、酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、E以外のαオレフィン類等が挙げられる。これらの中では、エチレン不飽和エステル、すなわち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、脂肪酸ビニルエステル類等が好ましい。その他のモノマーとしてこれらのモノマーを用いると、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させる(c)成分が得られる。その他のモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(c)成分としては、Eに基づく単位とメタクリル酸グリシジルに基づく単位とを有する共重合体が好ましい。該共重合体を用いると、得られる含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、柔軟性、耐油性、成形性などの特性がより優れる。このような共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
また、Eに基づく単位、メタクリル酸グリシジルに基づく単位及びエチレン不飽和エステルに基づく単位とからなる共重合体も、成形性、機械的特性の点で好ましい。このような共重合体の具体例としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体等が好ましい。
【0041】
(c)成分を構成する全単位中に占めるEに基づく単位の含有量は、55〜99.9モル%が好ましく、70〜94モル%がより好ましい。Eに基づく繰返し単位が55モル%以上であると、組成物は耐熱性や靭性に優れる。
(c)成分を構成する全単位中に占める、エポキシ基を有するモノマーに基づく単位の含有量は、0.1〜15モル%が好ましく、1〜10モル%がより好ましい。エポキシ基を有するモノマーに基づく単位の含有量が0.1モル%以上であると、組成物は、成形性、機械的特性に優れる。
(c)成分が、その他のモノマーに基づく単位を有する場合には、(c)成分を構成する全単位中に占めるその他のモノマーに基づく単位の含有量は、1〜30モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。
各単位の含有量が上記範囲内の(c)成分を用いると、(a)成分と(b)成分との相溶性をより向上させることができる。その結果、得られる含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、柔軟性、耐油性、耐熱変、成形性などの特性がより優れる。
【0042】
(c)成分の市販品としては、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体である「ボンドファストE(商品名、住友化学社製)」、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体である「ボンドファスト7M(商品名、住友化学社製)」等が挙げられる。
【0043】
(配合比)
本発明の組成物における(a)成分と(b)成分との質量比[(a)/(b)]は、80/20〜20/80であり、75/25〜25/75が好ましく、70/30〜28/72がより好ましく、65/35〜30/70がさらに好ましく、60/40〜40/60が最も好ましい。
(a)成分の配合比が上記範囲の下限値以上であると、優れた柔軟性、成形性が得られる。一方、(b)成分の配合比が上記範囲の下限値以上であると、優れた耐油性、耐熱変色性が得られる。
【0044】
本発明の組成物が(c)成分を含有する場合、本発明の組成物における(b)成分と(c)成分との質量比[(b)/(c)]は、100/0.1〜100/10であり、100/0.3〜100/7が好ましく、100/0.5〜100/5がより好ましい。
(c)成分の配合比が上記範囲の下限値以上であると、含フッ素エラストマー組成物の架橋物は、熱変色の問題が生じにくい。これは、(a)成分と(b)成分との相溶性が向上するためであると考えられる。
(c)成分の配合比が上記範囲の上限値を超えると、相対的に(a)成分及び(b)成分の割合が低くなり、耐油性が低下すると共に、耐熱性も不充分となるおそれがある。
【0045】
本発明の組成物全体を100質量%とした場合の、(a)〜(c)成分の合計含有量[((a)+(b)+(c))/含フッ素エラストマー組成物]は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、特には30〜90質量%が好ましい。
【0046】
本発明の組成物は、上記(a)〜(c)成分以外の他の成分(以下、他の任意成分ともいう。)を含有してもよい。
他の任意成分としては、架橋剤、架橋助剤、充填剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、加工助剤、滑剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられ、必要に応じて1種以上を含有できる。
本発明の組成物が架橋される場合には、これら配合剤のうち、架橋剤又は架橋助剤を含有することが好ましい。
【0047】
架橋剤としては、従来公知のものはすべて使用できるが、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、加熱、酸化還元の存在下で容易にラジカルを発生するものであれば使用できる。有機過酸化物を用いて架橋された含フッ素エラストマー組成物は耐熱性に優れる。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキシン−3、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。中でもα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。これらの有機過酸化物は、含フッ素エラストマー組成物の架橋性に優れる。
有機過酸化物の含有量は、本発明の組成物中の(a)〜(c)成分の合計含有量の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が最も好ましい。含有量がこの範囲にあると、有機過酸化物の架橋効率が高い。
【0048】
架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート等が挙げられ、中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。架橋助剤は1種以上を使用できる。
本発明の組成物が架橋助剤を含有する場合、架橋助剤の含有量は、(a)成分の100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。架橋助剤の含有量が上記範囲の下限値以上であると、架橋速度が大きく、充分な架橋度が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、本発明の組成物が架橋してなる架橋物の伸びなどの特性が良好となる。
【0049】
充填剤としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど。)等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、フッ素ゴムの充填剤として用いられているものであれば制限なく使用できる。その具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、ファーネスブラックが好ましい。ファーネスブラックとしては、HAF−LS、HAF、HAF−HS、FEF、GPF、APF、SRF−LM、SRF−HM、MT等が挙げられ、これらのなかではMTカーボンがより好ましい。充填剤は1種以上を使用できる。
【0050】
本発明の組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、(a)成分の100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲の下限値以上であると、本発明の組成物の架橋物は強度が優れ、カーボンブラックを配合したことによる補強効果が充分に得られる。また、上記範囲の上限値以下であると、架橋物の伸びも優れる。このようにカーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、架橋物の強度と伸びとのバランスが良好となる。
【0051】
本発明の組成物がカーボンブラック以外の充填剤を含有する場合、その含有量は、(a)成分の100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
なお、充填剤としては、カーボンブラックとそれ以外の充填剤とを併用してもよい。
本発明の組成物が、カーボンブラックとそれ以外の充填剤とを含有する場合、それらの合計の含有量は、(a)成分の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。
【0052】
安定剤としては、ヨウ化銅、酸化銅、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、五酸化リン等が挙げられる。
加工助剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等が挙げられ、具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。加工助剤の含有量は、(a)成分の100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましく、1〜3質量部がさらに好ましい。加工助剤は1種以上を使用できる。
滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等が挙げられ、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。滑剤の含有量は、含フッ素エラストマー組成物中の(a)〜(c)成分の合計含有量の100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がさらに好ましい。
上記高級脂肪酸の金属塩の金属としては、加工助剤、滑剤のいずれの場合も、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、バリウム、又はアルミニウムが好ましく、カルシウム又はナトリウムが特に好ましい。
【0053】
(含フッ素エラストマー組成物の特性)
本発明の組成物のメルトフローレイト(MFR)は、1〜100g/10分が好ましく、4〜50g/10分がより好ましく、5〜40g/10分がさらに好ましく、6〜35g/10分が最も好ましい。MFRがこの範囲にあると成形性及び機械的特性が優れている。
本発明の組成物の曲げ弾性率は、10〜800MPaが好ましく、10〜600MPaがより好ましく、50〜400MPaがさらに好ましく、70〜300MPaが最も好ましい。曲げ弾性率は、柔軟性の指標となる値である。曲げ弾性率が大きいと柔軟性が低いことを示し、小さいと柔軟性が高いことを示す。
【0054】
(含フッ素エラストマー組成物の製造方法)
本発明の組成物は、(a)成分と(b)成分とを混練することによって製造される。
本発明の組成物が(c)成分を含む場合、(c)成分は、(a)成分及び(b)成分とともに混練する。本発明の組成物が他の任意成分を含む場合、他の任意成分は、(a)成分と(b)成分と必要に応じて(c)成分とを混練する工程で、これら各成分とともに添加されてもよいし、(a)成分と(b)成分と必要に応じて(c)成分とを混練した後に添加されてもよい。
各成分の混練は、インターナルミキサー、一軸混練機、二軸混練機、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の公知の混練機構を有する機器を用いて行うことができる。中でも、二軸押出機、多軸押出機等の押出成形機を用いて混練することが好ましい。
【0055】
各成分の混練は、100〜240℃の加熱下に行う溶融混練であることが好ましい。加熱温度は、120〜240℃がより好ましく、140〜240℃がさらに好ましい。混練温度がこの範囲内であると、(a)成分と(b)成分の溶融粘度の比が1に近くなり、分散性に優れる含フッ素エラストマー組成物が得られ、それから得た成形体は、表面平滑性に優れる。加熱温度を結晶化温度との関係で示すと、加熱温度は、結晶化温度+20℃〜80℃が好ましく、+25℃〜75℃がより好ましく、+30℃〜70℃がさらに好ましい。
【0056】
溶融混練によって、(a)成分と(b)成分とが溶融し、互いに相溶化し、均一な分散状態となる。実際、走査型電子顕微鏡にて観察されるモルフォロジー(Morphology)観察の結果において、分散相が小粒径化することにより確認できた。分散状態の均一性は、(c)成分を含む場合に特に顕著である。また、(c)成分と(b)成分とが相溶することは、(b)成分の動的粘弾性測定におけるTanδのピーク温度を観察の結果において、ガラス転移点が変化することにより確認できた。
【0057】
溶融混練に用いる装置としては、二軸押出機又は混練効果の高いスクリューを備えた単軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましく、混練効果の高いスクリューを備えた二軸押出機が最も好ましい。混練効果の高いスクリューとしては、組成物に充分な混練効果を有し、かつ、過剰なせん断力を与えないものを選択することがより好ましい。
せん断速度は、上述の温度範囲において、上記組成物の溶融粘度に応じて設定することが好ましい。
溶融混練における押出成形機のスクリューの回転数は、好ましくは50〜1000rpm、より好ましくは100〜500rpmである。スクリューの回転数が小さすぎるとせん断により得られる組成物の分散性が低い場合があり、大きすぎると共重合体の分子鎖の切断により得られる組成物の伸びが低い場合がある。この範囲にあると、相溶化反応が最適に進み、強度と伸びとのバランスが良好である。
相溶化の進行は、混練時間、混練温度、せん断速度等のパラメータを調整することにより制御できる。特に、(c)成分を配合する場合、(b)成分と(c)成分との溶融粘度差の条件を出来るだけ狭めるせん断速度条件とすることにより、(b)成分の分散粒子がより小粒径化する。
【0058】
溶融混練は、組成物の粘度が一定になるまで実施する。組成物の溶融混練中の粘度変化は、スクリューを介してトルクメーターによる回転トルクの経時変化により観測できる。「組成物の粘度が一定になるまで」とは、回転トルクの値の変動が一定時間以上中心値から5%以内にある状態となるまで溶融混練することを意味する。
溶融混練に要する時間は、溶融混練を行う温度、組成物の組成、スクリュー形状により変わり得るが、経済性と生産性の点で、1〜30分が好ましく、1〜20分がより好ましく、2〜10分が最も好ましい。
例えば、溶融粘度が2.3kPa・sの(a)成分と、溶融粘度が2.4kPa・sの(b)成分とを質量比50/50として270℃で混練する場合、キャピラリーレオメーター(東洋精機社製)を用いるのであれば、溶融混練の時間は2〜7分が好ましい。また、二軸押出成形機を用いるのであれば、1〜5分の滞留時間が好ましい。上記滞留時間は、ラボプラストミル(東洋精機社製)などのバッチ式二軸混練機を用いて、粘度の経時変化を予め測定しておき、その経時変化のデータに基づき設定できる。
【0059】
溶融混練に用いる(b)成分の形態としては、粉体が好ましい。粉体としては、粒子径の小さいものがより好ましい。粒径が小さいと、溶融混練を行う際、混練が容易となるうえ、均一な溶融混練状態を得られやすい。特に、粉体としては、溶液重合で得られたETFEスラリーを乾燥して得られた粉体が好ましい。
また、(a)成分の形態としては、クラム(crumb)が好ましい。特に、乳化重合で得られたTFE/P共重合体のラテックスを凝集して得られたTFE/P共重合体のクラム(crumb)を乾燥して用いることが好ましい。
上記溶融混練の前に、上記TFE/P共重合体のクラム(crumb)及びETFEの粉体を、従来公知の装置を用いて加熱せずに混合することも好ましい。また、溶融混練時に両共重合体を押出成形機内で混合することも好ましい。
【0060】
(作用効果)
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、耐熱変色性、及び成形性に優れる。
また、本発明の含フッ素エラストマー組成物は、柔軟性、自動変速機油等の潤滑油に対する耐油性等も良好である。電線・ハーネス用途、特に、自動車のエンジンルームのハーネスに用いられるエラストマー材料には、ハーネスの配線自由度を確保するため優れた柔軟性が求められる。本発明の含フッ素エラストマー組成物によれば、電線・ハーネス用途において充分な柔軟性及び潤滑油に対する耐油性を両立し得る。
上記の効果は、ETFEとして結晶化温度が100〜210℃の(b)成分を用いることによって、(a)成分と(b)成分との相溶性が高まるためと考えられる。
すなわち、従来、電線・ハーネス用途で汎用されているETFEは、結晶化温度が210℃超250℃以下程度であり、かかるETFEと(a)成分とでは、分散不良の問題が生じやすい。これは、両者が非相溶であり、これら2成分のみを混練したときに、該混練が加熱下(溶融混練)であっても、局部的に分散が不充分となるためであると考えられる。
本発明においては、(a)成分と(b)成分との相溶性が良好で、これらを混練したときに分散不良が生じにくい。特に、(a)成分と(b)成分の質量比が55/45〜45/55の場合は、両共重合体が連続相になる場合がある。そのようなモルフォロジーが固定化されることにより、含フッ素エラストマー組成物の柔軟性や耐熱性が保持できるものと考えられる。このようなモルフォロジーの固定化によって、分散不良の発生を抑え、伸びなどの機械的特性に優れた成形体を得ることができると考えられる。
また、(c)成分をさらに加えることにより、含フッ素エラストマー組成物の特性がさらに優れたものとなる。これは、(c)成分により相溶性が高められるためと考えられる。
【0061】
<成形体及び架橋物>
本発明の成形体は、本発明の含フッ素エラストマー組成物を成形してなる成形体である。成形方法としては、射出成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、圧縮成形、インフレーション成形、トランスファー成形又はカレンダー成形等が挙げられる。
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、引取速度を大きく設定でき、成形加工性に優れる。
本発明の架橋物は、本発明の含フッ素エラストマー組成物を架橋したものである。架橋は、成形と共に、又は成形の後に行われる。
本発明の架橋物の曲げ弾性率は、10〜600MPaが好ましく、50〜400MPaがより好ましく、70〜300MPaが最も好ましい。
【0062】
本発明の成形体又は架橋物は、例えば電気部品の被覆材などの電気絶縁性材料とすることができる。具体的な用途としては、後述の被覆電線における被覆材の他、電線を保護するためのシース(sheath)材や、ケーブルの絶縁被覆材及びシース材などが挙げられる。
また、架橋物は、例えばホース、チューブなどの筒状製品とすることもできる。筒状製品は、含フッ素エラストマー組成物を筒状に押出成形し、その後、架橋することにより製造される。
本発明の架橋物は、ガスケット、パッキン、ダイヤフラムなど、自動車分野、産業ロボット分野、熱機器分野などの各種産業分野で使用される各種部品とすることもできる。
【0063】
架橋物を得る際の架橋方法は特に限定されず、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物を架橋剤として使用した化学架橋法、X線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、α線、β線等の電離性放射線を使用した照射架橋法などが挙げられる。
電線などの電気部品の被覆材用途においては、電離性放射線として電子線を用いる電子線架橋が好ましく、ホース、チューブなどの筒状製品用途においては、有機過酸化物を用いる化学架橋法が好ましい。
【0064】
<被覆電線>
本発明の被覆電線は、導体と、該導体を被覆する被覆材とを備えるものであって、前記被覆材が、本発明の含フッ素エラストマー組成物又は架橋物である被覆電線である。
導体としては、特に限定されず、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、スズメッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の各種メッキ線、より線、超電導体、半導体素子リード用メッキ線などが挙げられる。
被覆材が本発明の含フッ素エラストマー組成物である被覆電線は、導体を本発明の含フッ素エラストマー組成物で被覆することにより製造できる。含フッ素エラストマー組成物による導体の被覆は、公知の方法により行うことができる。
被覆材が本発明の架橋物である被覆電線は、導体を本発明の含フッ素エラストマー組成物で被覆した本発明の被覆電線に電子線を照射し、含フッ素エラストマー組成物を架橋することにより製造できる。
電子線の照射線量は、50〜700kGyが好ましく、80〜400kGyがより好ましく、100〜250kGyが最も好ましい。電子線の照射時の温度は、0〜300℃が好ましく、10〜200℃がより好ましく、20〜100℃が最も好ましい。
本発明の含フッ素エラストマー組成物は、原料の(a)成分よりも溶融粘度が低いことから、引取速度を大きく設定でき、成形加工性に優れる。そのため、本発明の被覆電線は、高速で製造できる。また、(a)成分を含有しているので、熱可塑性である(b)成分のみを用いて得られた被覆電線に比べて、高温での連続使用が可能であり、かつ、柔軟性にも優れるため、省スペースへの配線が必要な自動車用被覆電線等への利用に好適である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定して解釈されない。
以下において、(b)成分及び含フッ素エラストマー組成物のMFR、(b)成分の結晶化温度は、以下の手順で測定した。
また、各例において使用した材料を下記に示す。
【0066】
<MFR>
MFRの測定には、2種類の条件を用いた。
単に「MFR」と表記されている場合は、メルトインデクサーを用いて、温度297℃、荷重49N下に、直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出する組成物、共重合体の質量(g)を測定し、MFRとした。
「MFR(220)」と表記されている場合は、メルトインデクサーを用いて、温度220℃、荷重49N下に、直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出する組成物、共重合体の質量(g)を測定し、MFR(220)とした。
【0067】
<結晶化温度>
結晶化温度は、示差走査熱量計(SII社製、DSC−7020)を用い、試料約5mgを乾燥空気流通下に300℃で10分保持した後、100℃まで10℃/分の降温速度で降温したときの結晶化ピークを記録し、極大値に対応する温度を結晶化温度とした。
【0068】
<使用材料>
〔(a)成分〕
(150C)
TFE/Pの2元共重合体である、旭硝子社製「AFLAS 150C」を用いた。
TFEに基づく単位とPに基づく単位とのモル比(TFE/P)は56/44、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は57質量%、ムーニー粘度ML
1+10(121℃)は120、ガラス転移温度(Tg)は−3℃、融点(Tm)は無い。
【0069】
〔(b)成分〕
(b−1)
以下の手順で製造した含フッ素共重合体1の造粒物を用いた。
内容積が430リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン(以下、C6Hという場合がある。)の237.2kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下、AK225cbという場合がある。)の49.5kg、HFPの122kg、及びCH
2=CH(CF
2)
4Fの1.31kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11の初期モノマー混合ガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤として、tert−ブチルペルオキシピバレートの2質量%C6H溶液の2.5Lを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように、TFE/Eのモル比で54/46のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して1モル%に相当する量のCH
2=CH(CF
2)
4Fと、0.4モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始9.3時間後、モノマー混合ガスの29kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体1」という。)を、水の300kgを仕込んだ850Lの造粒槽に投入し、撹拌下に室温から105℃まで昇温して、溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体1の造粒物の33.2kgが得られた。
含フッ素共重合体1についての、溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素共重合体1は、TFEに基づく単位/HFPに基づく単位/CH
2=CH(CF
2)
4Fに基づく単位/IAHに基づく単位/Eに基づく単位の比が、46.2/9.4/1.0/0.4/43.0(モル比)の共重合体であることが確認できた。また、含フッ素共重合体1の結晶化温度は174℃であり、MFR(220)は8g/10分であった。
【0070】
(b−2)
以下の手順で製造した含フッ素共重合体2の造粒物を用いた。
内容積が430リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、C6Hの390.6kg、AK225cbの121.5kg、及びCH
2=CH(CF
2)
2Fの1.645kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11の初期モノマー混合ガスで、1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの20.5gを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように、TFE/Eのモル比で59/41のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して2.15モル%に相当する量のCH
2=CH(CF
2)
2Fと、0.15モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始4.00時間後、モノマー混合ガスの34.5kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体2」という。)を、水の300kgを仕込んだ850Lの造粒槽に投入し、撹拌下に室温から105℃まで昇温しつつ、溶媒を留出除去して造粒した(所要時間140分)。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体2の造粒物の35.0kgが得られた。
含フッ素共重合体2についての、溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素共重合体2は、TFEに基づく単位/CH
2=CH(CF
2)
2Fに基づく単位/IAHに基づく単位/Eに基づく単位の比が56.5/3.0/0.2/40.3(モル比)の共重合体であることが確認できた。また、含フッ素共重合体2の結晶化温度は221℃であり、MFRは26.1g/10分であった。
【0071】
(b−3)
以下の手順で製造した含フッ素共重合体3の造粒物を用いた。
内容積が430リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、C6Hの390.6kg、AK225cbの121.5kg、及びCH
2=CH(CF
2)
2Fの1.645kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11の初期モノマー混合ガスで、1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの82.3gを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように、TFE/Eの59/41モル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して2.15モル%に相当する量のCH
2=CH(CF
2)
2Fと、0.6モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始3.85時間後、モノマー混合ガスの34.5kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素共重合体(以下「含フッ素共重合体3」という。)を、水の300kgを仕込んだ850Lの造粒槽に投入し、撹拌下に室温から105℃まで昇温しつつ、溶媒を留出除去して造粒した(所要時間156分)。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、含フッ素共重合体3の造粒物の35.5kgが得られた。
含フッ素共重合体3についての、溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素共重合体3は、TFEに基づく単位/CH
2=CH(CF
2)
2Fに基づく単位/IAHに基づく単位/Eに基づく単位の比が55.5/1.9/0.8/41.8(モル比)の共重合体であることが確認できた。また、含フッ素共重合体3の結晶化温度は222℃であり、MFRは25.2g/10分であった。
【0072】
(b−4)
TFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/Eの3元共重合体である、旭硝子社製「Fluon LM−730AP」を用いた。
この3元共重合体の組成比は、TFEに基づく単位/CH
2=CH(CF
2)
2Fに基づく単位/Eに基づく単位のモル比で、57/3/40であった。結晶化温度は212℃であり、MFRは25g/10分であった。
【0073】
〔(c)成分〕
(BF−7M)
エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体である、住友化学社製「ボンドファスト 7M」を用いた。
Eに基づく単位の含有量は67モル%、アクリル酸メチルに基づく単位の含有量は27モル%、メタクリル酸グリシジルに基づく単位の含有量は6モル%であり、MFRは7g/10min、Tgは−33℃、Tmは52℃である。
【0074】
[実施例1〜6、及び比較例1〜9]
インターナルミキサーを用いて、上記の各材料を、表1〜4にそれぞれ示した配合部数(質量基準)で充分に混練(溶融混練)し、各例の含フッ素エラストマー組成物を得た。
混練の温度は混錬状態が良くなるように設定した。具体的には、混練の温度及び時間は、実施例1〜6においては240℃×10分間、比較例1〜16においては270℃×10分間とし、ローター回転数は全ての例で150rpmとした。
次いで、得られた含フッ素エラストマー組成物を250℃×15分、10MPaの条件にてプレス成形し、厚さ約1mmのシートを作製した。その後、各シートを照射線量120kGyで電子線架橋し、各例の架橋サンプルを作製した。
【0075】
[含フッ素エラストマー組成物の観察]
実施例1、実施例5、比較例2、及び比較例6の含フッ素エラストマー組成物を、走査型電子顕微鏡(倍率6,000倍)にて観察した。結果を
図1〜4に示す。
図1及び2に示すように、実施例1及び5において、(a)成分と(b)成分が分離することなく連続相を形成しており、(b)成分が微細な分散相となって、(a)成分中に良好に分散していることが観察された。
これに対し、(b)成分の種類が異なる以外は実施例1と組成が同じである比較例2においては、実施例1に比べて、表面が荒れていた。また、(b)成分の種類が異なる以外は実施例5と組成が同じである比較例6においては、実施例5に比べて、表面が荒れており、相溶状態が悪い状態であった。
【0076】
[含フッ素エラストマー組成物の耐熱変色性の評価]
耐熱変色性の指標として、含フッ素エラストマー組成物の全光線透過率と色座標b*を測定した。結果を表1〜4に示す。
全光線透過率は、JISK 7375:2008に準拠して求めた。全光線透過率が高いほど、混錬時の熱による変色が少ないことを示す。
色座標b*は、JIS Z8729:2004に準拠して求めた、CIE1976のb*の値を比較に用いた。b*の数値がプラス側に振れると黄色が強くなり、マイナス側に振れると青色が強くなり、0が無色となる。色座標b*が小さいほど、混錬時の熱による変色が少ないことを示す。色座標b*の指標としては、着色性の自由度を考えると5未満が好ましい。
【0077】
[架橋サンプルの評価]
各例の架橋サンプルについて、ASTM D638−V及びJIS K6257:2010に準拠して、常態物性(初期の引張強度、及び初期の引張伸度)、耐熱老化性(引張強度残率、及び引張伸度残率)を評価した。また、各例の架橋サンプルの耐ATF性(165℃で120時間、自動変速機油に晒した際の体積変化率)を、浸漬時間以外はJIS K6258:2003に準拠して評価した。結果を表1〜4に示す。
なお、耐熱老化性の引張強度残率は、250℃で96時間放置した後における引張強度の、初期の引張強度に対する割合であり、耐熱老化性の引張伸度残率は、250℃で96時間放置した後における引張伸びの、初期の引張伸びに対する割合である。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
上記結果に示すように、実施例1〜6の含フッ素エラストマー組成物は、いずれも、全光線透過率が高く、色座標b*が5未満であり、熱変色しにくいものであった。
また、実施例1〜6の含フッ素エラストマー組成物は、MFRが6〜35g/10分の範囲にあり、加工性に優れるものであった。
また、実施例1〜6の架橋サンプルは、いずれも、初期の引張強度が31〜41MPa、引張伸びが340〜372%と、適度な常態物性を有しており、柔軟性に優れていた。また、耐熱老化性評価での引張強度、引張伸びの低下も抑制されており、耐熱性に優れていた。
また、実施例1〜6の架橋サンプルは、いずれも、体積変化率が5%以下であり、耐ATF性に優れていた。
【0083】
一方、比較例1、2、及び8の含フッ素エラストマー組成物は、(b)成分の種類が異なる以外は同じ組成(以下、対応する組成ともいう。)の実施例1に比べて、全光線透過率が低く、かつ色座標b*が大きく、熱変色しやすいものであった。
同様に、比較例6、及び9の含フッ素エラストマー組成物は、対応する組成の実施例5に比べて、全光線透過率が低く、かつ色座標b*が大きく、熱変色しやすいものであった。
また、比較例3、4、5、及び7の含フッ素エラストマー組成物は、それぞれに対応する組成の実施例2、3、4、及び6に比べて、全光線透過率が低く、かつ色座標b*が大きく、熱変色しやすいものであった。
【0084】
以上の結果から、本発明の含フッ素エラストマー組成物は、成形性、柔軟性、耐熱性、及び潤滑油に対する耐油性を充分に備えるとともに熱変色しにくい、非常に優れたものであることが確認できた。