(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の軸線から一定半径の外周面に沿って電子デバイス用のパターンが設けられた回転可能な円筒マスクを、長尺方向に送られる基板の表面に近接させて走査露光する基板処理方法であって、
前記第1の軸線と並行に配置される軸線周りに回転する2つの搬送ローラの間に掛け回した無端状のベルト部に前記基板を接触保持させた状態で、前記ベルト部の裏面に配置される案内ステージの案内面で前記基板を平面状に支持して、前記搬送ローラの回転によって前記ベルト部と前記基板を前記長尺方向に送る搬送段階と、
前記円筒マスクの前記第1の軸線の方向の両端側に前記第1の軸線から所定の半径で設けられる環状の転動体を、前記ベルト部の一部に当接させることにより、前記基板の表面と前記円筒マスクの外周面とを所定のギャップ量に設定しつつ、前記円筒マスクに前記第1の軸線の回りの回転力を与える回転段階と、
を含む基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の基板処理装置の第1実施形態を、
図1ないし
図4参照して説明する。
図1は、基板処理装置100の要部の正面断面図、
図2は基板処理装置の断面斜視図である。
【0019】
基板処理装置100は、可撓性を有するシート状のマスクMのパターンを帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sに対して露光処理を行うものであって、照明部10、マスク保持部20、圧胴体(基板保持部、周回保持部)30と、制御部CONTとを主体に構成されている。なお、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、マスク保持部20及び基板支持部30の回転軸線と平行な方向をY方向とし、Z方向及びY方向と直交する方向をX方向として説明する。
【0020】
照明部10は、マスク保持部20に巻き付けられたマスクMの照明領域に向けて照明光を照射するものであって、蛍光灯と同様に直管型で放射状に露光用の照明光を発光するものや、円筒状の石英の棒の両端から照明光を導入し裏面側に拡散部材を設けてあるものが用いられ、マスク保持部20を支持する内筒21の内部空間に収容されている。
【0021】
マスク保持部20は、円筒状の保持部本体22と、保持部本体22の長さ方向両端部にそれぞれ設けられたホルダ23と、各ホルダ23に板バネ(伸縮吸収部)24を介して取り付けられた転動体(ギャップ形成部)25とを備えている。これら保持部本体22、ホルダ23、板バネ24、転動体25は、一体化された状態で設けられており、また、回転軸線AX1方向に連通して内筒21が挿通される貫通孔がそれぞれに形成されている。
【0022】
内筒21は、照明光を透過可能な円筒状の石英等、或いは照明部10からの照明光が通過するスリット状の開口部21aを備えた円筒状のセラミックス材や金属等で形成されている。保持部本体22は、その外周面にマスクMを所定半径の円筒面に沿って保持するマスク保持面22aが形成されている。ホルダ23は、金属材で円環状に形成され、
図3に示すように、保持部本体22の端部外周面と、硬化後に弾性接着性能を発現する接着剤23aによって接着されている。ホルダ23の形成材料としては、保持部本体22と同一の線膨張係数を有するものが好ましいが、線膨張係数に差がある場合には、保持部本体22とホルダ23との熱膨張の差で保持部本体22に大きな負荷が加わらないように、線膨張係数が大きいホルダ23が外周側から保持部本体22を保持する構成としている。
【0023】
転動体25は、外周側に回転軸線AX1回りに突設された圧胴設置部25aを有し、この圧胴設置部25aを圧胴体30の外周面と接触(摩擦係合)させることにより、転動体25が軸線AX1の回りに転動する。
圧胴設置部25aの外径は、保持部本体22のマスク保持面22aに保持されたマスクMの外側の面がなす外径よりも所定量大きく形成されている。具体的には、圧胴設置部25aの外径は、圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面に当接したときに、圧胴体30に保持された基板SとマスクMとの間に、
図3に示すように所定量のギャップGが形成される値に形成されている。
【0024】
また、転動体25は、内周側でエアベアリング26を介して内筒21に対して回転軸線AX1回りに非接触で回転自在に支持されている。そのため、保持部本体22、ホルダ23、板バネ24、転動体25は、回転軸線AX1回りに一体的に回転する。
【0025】
板バネ24は、保持部本体22の回転軸線AX1の伸縮を吸収するものであって、
図4に示すように、例えば鋼材でリング状(円環状)に形成されている。板バネ24は、
図3に示すように、スペーサ24Aを介して転動体25にY方向に所定量の隙間をあけて固定されている。同様に、板バネ24は、スペーサ24Bを介してホルダ23にY方向に所定量の隙間をあけて固定されている。スペーサ24Aは、回転軸線AX1からの距離が略同一の位置に、回転軸線AX1回りに等間隔で3つ設けられている。スペーサ24Bは、回転軸線AX1からの距離がスペーサ24Aよりも大きな位置に、回転軸線AX1回りの位置がスペーサ24Aの間となるように等間隔で3つ設けられている。
【0026】
従って、板バネ24を介して連結されたホルダ23(保持部本体22)と転動体25とは、回転軸線AX1回り方向については高い剛性で結合して一体的に回転し、回転軸線AX1方向については、板バネ24が容易に弾性変形することから、低い剛性の結合となって相対移動(微動)が可能な構成となっている。
【0027】
内筒21は、Y方向に間隔をあけて設けられたベース部Bから互いに接近する方向に延設された支持台27に板バネ28を介して載置されている。板バネ28のバネ定数は、マスク保持部20の自重及び転動体25を介して圧胴体30に加わる荷重、すなわち、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面を転動する際の摩擦力に応じて設定される。内筒21の内部空間には上述した照明部10が配設されており、照明部10の照明光出射方向で対向する位置には照明光が通過するように、Y方向に細長いスリット状の開口部21aが形成されている(
図1及び
図2参照)。
【0028】
圧胴体30は、Y軸と平行で、回転軸線AX1の−Z側に設定された回転軸線AX2回りに回転(周回)する円柱状に形成されており、
図2に示すように、内部には中空部30aが設けられ慣性モーメントが小さくなるように設定されている。圧胴体30の外周面は、基板Sを接触保持する基板保持面31とされている。この保持面31は、鏡面研磨された金属表面が良いが、基板Sとの摩擦力を高めて滑りを抑える為に、厚さが均一な薄いゴムシート、樹脂シート等を全周に被覆させたものでも良い。
圧胴体30のY方向両端面には、圧胴体30よりも小径、且つ同軸で突出する回転支持部32がベース部Bに回転軸線AX2回りに回転自在に支持されている。また、本実施形態では、圧胴体30を回転駆動することで圧胴体30とマスク保持部20とを同期して回転させる駆動装置33が設けられている。
【0029】
基板Sは、可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度や湿度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0030】
基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板SのY方向の寸法が1m以下又は50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0031】
続いて、上記構成の基板処理装置100の動作について説明する。
エアベアリング26を介して内筒21に支持され、マスクMを保持するマスク保持部20は、当該マスク保持部20の自重と板バネ28のバネ定数に応じた+Z側(上方)への付勢力との差分の荷重を、転動体25の圧胴設置部25aを介して圧胴体30に付与した状態で当接している。これにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間、すなわち、マスクMと基板Sとの間には、圧胴設置部25aの外径に応じた所定量のギャップが形成される。なお、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重を調整する際には、対応するバネ定数を有する板バネ28に交換するか、内筒21と支持台27との間に、予めスペーサを介在させた状態で板バネ28を設置しておき、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重に応じたスペーサに交換すればよい。
【0032】
そして、駆動装置33の駆動より圧胴体30が回転軸線AX1回りに回転するとともに、照明部10から照明光が照射され、開口部21aを介して保持部本体22を透過し、内周側からマスクMを照明する。圧胴体30の回転に伴って、圧胴体30の基板保持面31に巻き付けられて保持された基板Sは所定の速度で搬送されるとともに、圧胴設置部25aを介して圧胴体30の外周面に当接する転動体25が連れ回る。これにより、マスク保持部20に保持されたマスクMと基板Sとは、所定量のプロキシミティ・ギャップGに維持された状態で同期して移動する。そして、照明光に照明されたマスクMのパターン像は、基板Sの投影領域に逐次投影される。
【0033】
このとき、マスク保持部20及び圧胴体30は、圧胴設置部25aと基板保持面31とが当接する位置(径)で周速度が同一になるため、マスクMと基板Sとの相対移動速度を極力一致させるためには、マスクMの外周面の位置(径)及び基板Sの外周面の位置(径)、マスクMの厚さMt及び基板Sの厚さSt、保持部本体22のマスク保持面22aにおける半径r11、圧胴体30の基板保持面31における半径r2の比、等に応じて調整しておく。
そのためには、圧胴体30の基板保持面31のうち、圧胴設置部25aの外周面が当接する部分の半径と、基板Sを保持する部分の半径とを、
図3のように同じにせずに、意図的に異ならせる必要がある。具体的には、圧胴設置部25aの外周面と圧胴体30の外周面とが当接するZ方向の位置(径)が、マスクMの外周面と基板Sの外周面との間のギャップGの中間辺りに設定されるようにする。それには、圧胴設置部25aの外周面と当接する圧胴体30の外周面部分の半径を、半径r2に対して、St+G/2程度大きくしておけば良い。従って、例えば、基板Sの厚みStが200μm、ギャップGが100μmの場合、圧胴設置部25aの外周面と当接する圧胴体30の外周面部分の半径は半径r2に対して約250μm程度大きくすれば良い。
【0034】
上記の露光処理が連続的に行われると、照明光に照明された保持部本体22には熱膨張が生じ得る。保持部本体22の径方向(周方向)の熱膨張については、保持部本体22を外周側から保持するホルダ23が金属材で形成されて線膨張係数を保持部本体22の線膨張係数よりも大きくすることによって、保持部本体22を拘束しないため、保持部本体22に対して過剰な応力を与えることを回避できる。また、このときには、保持部本体22とホルダ23とが離間する方向に熱膨張することになるが、接着剤23aが弾性接着性能を備えているため、ホルダ23による保持部本体22の保持が緩むことも防止される。
【0035】
なお、ホルダ23の線膨張係数が保持部本体22の線膨張係数よりも小さい場合には、ホルダ23が保持部本体22を内周側から保持する構成を採ることが好ましいが、外周側から保持する構成であっても、上記接着剤23aが弾性変形することで、熱膨張時に保持部本体22に加わる応力は緩和される。
【0036】
また、保持部本体22の回転軸線AX1方向の熱膨張に対しては、板バネ24がスペーサ24Aで固定されている箇所を基点として、スペーサ24Bで固定されている箇所が転動体25に向かう方向に弾性変形する。このように、保持部本体22の熱膨張が板バネ24の弾性変形として吸収されるため、保持部本体22に回転軸線AX1方向の大きな応力が生じることが回避される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、圧胴設置部25aにおいて圧胴体30の外周面に当接する転動体25が圧胴体30と連れ回ることにより、マスクMと基板Sとが所定量のギャップを維持した状態で露光処理を実施できる。そのため、本実施形態では、マスクMと基板Sとの間のギャップ量の変動に起因して生じるパターンの像幅変動等を防ぐことができる。ギャップGの値は、基板Sに露光すべきパターン(マスクM上のパターン)の最少寸法や、照明部10からの照明光の角度特性(開口数)等に応じて、良好な範囲が変わり得るが、数十μm〜数百μm程度の範囲になる。
【0038】
また、本実施形態では、径方向については保持部本体22とホルダ23との間に弾性接着性能を備える接着剤23aを介在させ、回転軸線AX1方向については、板バネ24が弾性変形することにより、熱膨張に伴って保持部本体22に生じる応力を緩和しているため、その応力による保持部本体22の歪みが低減され、基板Sへのパターン形成に悪影響が及ぶこと(転写忠実度の劣化等)を抑制できる。
本実施形態の場合、転動体25は金属材料で構成するが、それ自身も材料による熱膨張が大きいと、圧胴設置部25aの直径(全周長)が変化することになるので、低熱膨張金属(インバー等)にしたり、或いは低熱膨張率のセラミックス材にすると良い。
【0039】
(第2実施形態)
次に、基板処理装置100の第2実施形態について、
図5及び
図6を参照して説明する。上記第1実施形態では、マスク保持面22aと基板保持面31との間にギャップを形成するギャップ形成部として、圧胴設置部25aを備える転動体25を例示したが、本実施形態では、圧胴体30に対するマスク保持部20の位置を調整する駆動装置を設ける場合について説明する。また、本実施形態では、回転軸線AX1、AX2が同一のXY平面上に配置されている(マスク保持部20と圧胴体30とが水平方向に並んで配置される)ものとして説明する。
これらの図において、
図1乃至
図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図5は、マスク保持部20の拡大断面図である。
マスク保持部20は、保持部本体22と、回転軸線AX1を軸線とする貫通孔を有し接着剤23aを介して+Y側の端部内周側から保持部本体22を保持するホルダ23Aと、回転軸線AX1を軸線とする回転軸34を有し接着剤23aを介して−Y側の端部内周側から保持部本体22を保持するホルダ23Bと、回転軸線AX1を軸線とする貫通孔を有し、エアベアリング35を介してホルダ23Aを外周側から回転軸線AX1回りに回転自在に支持する終端筒36とを備えている。マスク保持部20は、回転軸34に接続された駆動装置MTにより圧胴体30とは独立して回転駆動される。
【0041】
保持部本体22の内部空間には、終端筒36及びホルダ23Aの貫通孔を介して、Y方向に延在する固定ロッド37が挿入されており、一端部が固定板37によって終端筒36に固定されている。固定ロッド37には、上記照明部10が支持されるとともに、温度調整装置を構成する供給部39Aから温度調整用媒体が供給され、排出部39Bから排出することで温度調整用媒体が循環し、照明部10の温度上昇を効率的に抑えると共に、保持部本体22の内部空間の温度が調整される構成となっている。
【0042】
また、本実施形態の基板処理装置100には、マスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量を計測する計測部40と、計測部40の計測結果に応じて保持部本体22と圧胴体30とが離間・接近する方向にマスク保持部20を変位させる変位部41とがギャップ形成部として設けられている。
【0043】
計測部40は、固定ロッド37に支持された顕微鏡付のCCDカメラや光学的なフォーカス(高さ計測)センサー等で構成されており、圧胴体30の基板保持面31における保持部本体22と対向する位置(ここではX方向の位置)を測距することにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量を計測するものであり、計測されたギャップ量は制御部CONTに出力される。
【0044】
変位部41は、エアベアリング42を介して回転軸34を保持するとともに、X方向に延設されたガイド43に沿ってホルダ23AをX方向に駆動する駆動部44と、終端筒36を保持するとともに、X方向に延設されたガイド46に沿って終端筒36をX方向に駆動する駆動部47と、駆動部44、47を独立して駆動する上記の制御部CONTとにより構成されている。
【0045】
図6に示すように、露光領域よりも基板Sの搬送方向の上流側には、計測部40と同様の構成を有し、基板Sのアライメントマーク(不図示)を計測する計測部50が複数設けられている。本実施形態における計測部50は、基板Sの搬送方向に関しては間隔をあけて3箇所に、各箇所では基板Sの幅方向に間隔をあけて3つ(
図7参照)配設されており、計測結果を制御部CONTに出力する。
【0046】
上記構成の基板処理装置100では、計測部40が計測したマスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量に応じて、制御部CONTが駆動部44、47の駆動を制御して同一駆動量とすることにより、マスク保持部20を圧胴体30に対して離間・接近する方向に移動させて上記ギャップ量を調整する。また、制御部CONTは、駆動部44、47の駆動量を異ならせることにより、回転軸線AX1と回転軸線AX2との相対的な傾きを微調整することも可能である。
【0047】
また、計測部50で計測された基板Sのアライメントマーク位置に基づき、制御部CONTは露光処理前の基板Sにおける露光領域の面歪み等を予め計測し、上述したギャップ量調整や、回転軸線AX1と回転軸線AX2との相対的な傾き調整に反映させる。
【0048】
このように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、マスク保持部20を移動させることにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量を任意の値に調整することができる。従って、本実施形態では、温度変化等の環境変化で回転軸線AX1と回転軸線AX2との軸間距離が変化したり、保持部本体22や圧胴体30の径が変動したりした場合や、マスクM、基板Sの厚さが製造ロット等で変動する場合等であっても、容易にマスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量を所定量に調整することができ、マスクMのパターンを高精度に基板Sに露光することができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、基板処理装置100の第3実施形態について、
図7及び
図8を参照して説明する。上記第2実施形態では、駆動部44、47の駆動を制御してマスク保持部20を移動させることにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量、即ちマスクMの外周面と基板Sの外周面とのギャップGを調整する構成としたが、本実施形態では、マスク保持部20と圧胴体30との間に入子部を設け、入れ子部の位置を調整することにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量を調整する例について説明する。
これらの図において、
図5及び
図6に示す第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図7に示す保持部本体22は、+Y側の端部に設けられた終端筒36が支持部材51Aに支持されている。支持部材51Aは、ベース部B上にX方向に延在して設けられたガイド部52Aに非接触で移動自在に支持されている。また、支持部材51Aは、+X側に設けられたエアシリンダー(付勢部)53Aによって所定の付勢力で−X側に付勢されて与圧されている。同様に、保持部本体22は、−Y側の回転軸34がエアベアリング42を介して支持部材51Bに支持されている。支持部材51Bは、ベース部B上にX方向に延在して設けられたガイド部52Bに非接触で移動自在に支持されている。また、支持部材51Bは、+X側に設けられたエアシリンダー(付勢部)53Bによって所定の付勢力で−X側に付勢されて与圧されている。
【0051】
ベース部Bは、Y方向に間隔をあけて設けられており、ガイド部52A、52Bが支持される領域よりも−X側には、ガイド部52A、52Bよりも+Z側に突出し圧胴体30を支持する支持壁54を備えている。各支持部材51A、51Bと支持壁54との間にはZ方向に延在する溝部55が形成されている。
【0052】
図8に示すように、溝部55のX方向の幅は、+Z方向に向かうに従って漸次大きくなるように、YZ面に対して僅かなテーパーを持つように形成されている。より詳細には、支持壁54の+X側の側面(溝部55を形成する−X側の側面)は、YZ平面と平行に形成されており、支持部材51A、51Bの−X側の側面(溝部55を形成する+X側の側面)は、YZ平面と平行な面に対して+Z方向に向かうに従って、支持壁54の+X側の側面からの距離が漸次大きくなるように傾いて形成されている。この溝部55には、Z方向に移動自在に入子部56が挿入されている。
【0053】
図7に示すように、回転軸34に接続され、当該回転軸34を介してマスク保持部20(すなわちマスクM)を回転させる駆動装置(第1調整部)MTは、Y方向に移動可能なシフトステージ(第2調整部)48に設けられている。制御部CONTは、シフトステージ48の移動を制御することにより、マスク保持部20、マスクM及び駆動装置MTを一体的にY方向に移動させることができる。
【0054】
上記構成の基板処理装置100では、エアシリンダー53A、53Bによって−X方向に与圧された支持部材51A、51Bが、溝部55に挿入された入子部56に傾斜(テーパー)面が当接して移動が制限されることで、支持部材51A、51BのX方向の位置が規定される。支持部材51A、51Bの傾斜面が入子部56に当接する位置は、入子部56のZ方向の位置で変動する。そのため、入子部56のZ方向の位置を調整することにより、支持部材51A、51Bの移動が制限されて位置決めされるX方向の位置を規定することができる。
【0055】
すなわち、本実施形態では、入子部56のZ方向の位置を調整することにより、支持部材51A、51Bに支持されるマスク保持部20及びマスクMのX方向の位置を調整でき、結果としてマスク保持面22aと基板保持面31との間のギャップ量(マスクMと基板SのギャップG)を調整することができる。また、支持部材51A、51Bの移動を制限する入子部56のZ方向の位置を、支持部材51Aと支持部材51Bとの間で異ならせることにより、XY平面と平行な面内でY軸に対するマスク保持部20の回転軸線AX1の傾きを微小に調整することも可能である。
【0056】
なお、本実施形態における入子部56のZ方向への移動は、例えば制御部CONTによる制御下で、計測部50の計測結果に基づいてモータ等の駆動装置で行う構成としてもよい。
【0057】
一方、計測部(検出部)50で計測された基板Sのアライメントマーク位置に基づき、制御部CONTは、マスクMと基板Sとの回転軸線AX1回り方向(周方向)の相対位置関係に応じて駆動装置MTの回転動作を制御して、マスクMと基板Sとの回転軸線AX回り方向(周方向)の位置合わせを行う。また、制御部CONTは、計測されたマスクMと基板Sとの回転軸線AX1方向(Y方向)の相対位置関係に応じて、シフトステージ48を介してマスク保持部20、マスクM及び駆動装置MTを一体的にY方向(回転軸線AX1方向)に移動させることにより、マスクMと基板Sとの回転軸線AX1方向の位置合わせを行う。
【0058】
このように、本実施形態では、上述したマスクMと基板Sとのギャップ量の他に、回転軸線AX1回り方向の相対位置、及び回転軸線AX1方向の相対位置も容易に調整することが可能になる。
なお、マスクMと基板Sとの回転軸線AX1、AX2回り方向(周方向)の相対位置を調整する際には、駆動装置MTの駆動を制御する方法以外にも、例えば、マスク保持部20を構成する保持部本体22や回転軸34等の回転部分と、支持部材51A、51B等の固定部分との間に電磁ブレーキ(発電ブレーキ)等を設置し、電磁ブレーキの作動・作動停止により保持部本体22の回転力に一時的に負荷を与えて、回転モーメントを低下させることによって、基板Sに対してマスクMの回転軸線AX1回り方向の相対位置(角度位置)を調整する構成としてもよい。
【0059】
(第4実施形態)
次に、基板処理装置100の第4実施形態について、
図9乃至
図11を参照して説明する。上記第1実施形態では、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30に当接することで、マスク保持面22aと基板保持面31との間、すなわち、マスクMと基板Sとの間に所定量のギャップを形成する構成としたが、本実施形態では、基板Sの厚さStに応じてギャップ量Gを適正に維持すると共に、マスクMと基板Sの周速度を一致させる構成について説明する。
これらの図において、
図1乃至
図4に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
図9に示すように、本実施形態の全体構成は先の
図1と同様であるが、本実施形態では、圧胴体30のY方向の両側の外周面や、転動体25の圧胴設置部25aの外周面に、所定厚さのシム(補正部)SM1,SM2を環状に設けた点が異なる。
先の
図3に示したように、転動体25の圧胴設置部25aの半径をr1、圧胴体30の基板保持面31の半径をr2、マスク保持面22aの半径をr11、マスクMの厚さをMt、基板Sの厚さをSt、マスクMと基板Sとの所定のギャップ量をGとすると、回転軸線AX1と回転軸線AX2との軸間距離DXは、以下の式(1)で表される。
DX=r11+Mt+G+St+r2 …(1)
従って、圧胴設置部25aが圧胴体30の基板保持面31上を転動する場合には、圧胴設置部25aの半径r1は次式(2)で求められる。
r1=DX−r2 …(2)
【0061】
そのため、マスクM、基板S及びギャップGの値が決定されると、圧胴設置部25aの半径r1は上記式(1)、(2)から求められた値を有するものが用いられる。
【0062】
ところが、例えば基板Sについては、ロットの違い等に起因して、異なる厚さのものを使用する場合がある。これは基板SのみならずマスクMについても同様に起こりうる。
そこで、本実施形態では、基板SやマスクM等の厚さの変化を補正する補正部として、転動体25の圧胴設置部25aと圧胴体30との当接部にシムが設けられる構成となっている。
【0063】
すなわち、
図9に示されるように、圧胴設置部25aの外周面には、シム(補正部)SM1が着脱自在に設けられている。また、圧胴体30の外周面における圧胴設置部25aと対向する位置には、シム(補正部)SM2が着脱自在に設けられている。シムSM1を圧胴設置部25aの外周面に対して着脱自在とする手段としては、シムSM1に磁性部を備えさせ、マスク保持部20(圧胴設置部25a)に発磁部を備えさせる構成を採ることができる。
【0064】
具体的には、シムSM1を磁性材で形成する構成、シムSM1の全面あるいは一部に磁性粉体等の磁性材を含む層を形成する構成を採り、圧胴設置部25aの外周面を磁石で形成する構成、圧胴設置部25aの外周面に磁石を埋設する構成を採ることができる。磁石としては、永久磁石や電磁石を配設することができる。
【0065】
シムSM2を圧胴体30の外周面に対して着脱自在とする手段としては、シムSM1と同様に、シムSM2に磁性部を備えさせ、圧胴体30に発磁部を備えさせる構成を採ることができる。
【0066】
シムSM1は、圧胴設置部25aの外周面の略全周に亘って設けられている。同様に、シムSM2は、圧胴体30(基板保持面31)の外周面の略全周に亘って設けられている。より詳細には、シムSM1は、圧胴設置部25aの外周面に巻回されたときに、回転軸線AX1回り方向の端部同士が重ね合わされて径方向に突部を形成しないように、継ぎ部に隙間が形成される長さを有している。そして、
図10Aに示すように、シムSM1の周長方向の両端部は、回転軸線AX1に対して斜めに交差する方向に延在する隙間が一定幅で形成されるように、それぞれ同じ角度の斜め方向に形成されている。
この構成により、マスク保持部20及び圧胴体30が回転して圧胴体30との接触範囲Ta が移動する場合でも、常時シムSM1の一部が接触範囲Taに存在することになり、隙間の段差でマスク保持部20と圧胴体30との連れ回り時にギャップ量の変動や振動等が生じることが防止される。なお、この隙間を形成する端部の構成については、シムSM2についても同様である。
【0067】
上述したように、シムSM1、SM2の厚さは、
図11に示すマスクMと基板Sとのギャップ量Gを保持するために、基板SやマスクMの厚さに応じてそれぞれ設定される。この場合、圧胴設置部25aの半径r1は、シムSM1、SM2を設置可能なように、圧胴体30の外周面までの距離よりも小さく設定される。
従って、シムSM1、SM2の厚さをそれぞれt1、t2とすると、回転軸線AX1と回転軸線AX2との軸間距離DXは、以下の式(3)で表される。
DX=r1+r2+t1+t2=r11+Mt+G+St+r2 …(3)
式(3)からシムSM1、SM2の厚さの合計は、以下の式(4)で表される。
t1+t2=r11+Mt+G+St−r1 …(4)
そして、例えば、基板Sの厚さStが(St+α)に変化した場合には、シムSM1、SM2の厚さの合計をt1+t2+αとすることにより、基板Sの厚さが変化した場合でもギャップ量Gを一定に保持できる。
【0068】
ただし、マスク保持部20及び圧胴体30の周速度は、シムSM1、SM2の当接面tfにおける位置(回転軸線AX1、AX2からの距離)において同一であり、この位置から離間した位置にあるマスクMの表面(以下、マスク面)の周速度、基板Sの表面(以下、基板面)の周速度は、各面の回転軸線AX1、AX2からの距離に応じて変化する。そのため、各シムSM1、SM2の厚さは、マスク面及び基板面の相対周速度が同一となるようにそれぞれ設定する必要がある。
【0069】
例えば、変化した基板Sの厚さをSt’(=St+α)、基板Sの厚さSt’に対応するシムSM1、SM2の厚さをそれぞれT1、T2、マスク保持部20の角速度をω1、圧胴体30の角速度をω2、先に
図3を参酌して説明したように、当接面tfの位置がマスクMの外周面と基板Sの外周面との間、即ちギャップGのほぼ中間にあるとした場合、当接面tfにおける周速度が同一であるため、以下の式(5)が成り立つ。
(r1+T1)・ω1=(r2+T2)・ω2 …(5)
また、マスク面の周速度と基板面の周速度とを同一とするため、以下の式(6)が成り立つ。
(r11+Mt)・ω1=(r2+St’)・ω2 …(6)
上記の式(5)、(6)を整理すると、以下の式(7)が導出される。
(r2+T2)/(r1+T1)=(r2+St’)/(r11+Mt)…(7)
さらに、式(4)から、以下の式(8)が成り立つ。
T1+T2=r11+Mt+G+St’−r1 …(8)
【0070】
従って、本実施形態では、式(7)、(8)を満足する厚さT1、T2のシムSM1、SM2を用いることにより、基板Sの厚さが変化した場合でも、マスクMの外周面と基板Sの外周面とのギャップ量を保持しつつ、マスクMの外周面と基板Sの外周面との周速度が同一となるように補正することができる。また、本実施形態では、シムSM1、SM2がそれぞれ圧胴設置部25a、圧胴体30に磁着するため、基板Sや、マスクM等の厚さ変化に即して、容易に交換可能であり、作業効率の向上を図ることができる。さらに、本実施形態では、シムSM1、SM2の端部間における隙間が、回転軸線AX1、AX2方向と交差する方向に延在しているため、転動時に段差によるギャップ変動や振動が発生することを防止でき、高精度の露光処理を実施することが可能になる。
【0071】
なお、上記第4実施形態におけるシムSM1、SM2の端部を斜め方向に形成する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、端部間の隙間の少なくとも一部が回転軸線AX1、AX2方向と交差する方向に沿って形成されていればよく、例えば、
図10Bに示すように、回転軸線AX1、AX2方向に沿った隙間と、回転軸線AX1、AX2方向と直交する方向に沿った隙間とが交互に繰り返すような階段状に形成してもよい。
【0072】
また、端部間の隙間が回転軸線AX1、AX2方向に沿って形成される場合でも、
図10Cに示すように、回転軸線AX1、AX2回り方向で隙間の位置が異なるように、回転軸線AX1、AX2方向に複数のシムが配置される構成であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、マスク面と基板面の相対周速度が同一となるように、シムSM1、SM2の厚さを設定する例を用いて説明したが、例えば、基板Sの厚さ変化が許容範囲内であれば、シムSM1、SM2のいずれか一方の厚さを固定とし、他方のシムの厚さのみシム交換で対応する構成としてもよい。また、基板SやマスクMの厚さが大きくは変化しない場合には、初期調整時のギャップ調整において、必要な厚さのシムを接着剤で固定する構成としてもよい。
【0074】
また、例えば、前工程で基板Sが搬送方向に伸縮している場合には、基板Sの伸縮を補正するように、シムSM1、SM2の厚さ配分を調整してマスクMの外周面と基板Sの外周面との相対的な周速度に意図的に差を付けてもよい。
ここで、
図11中の基板Sの厚みStを100μm、ギャップGを100μm、シムSM1の厚みt1を含む圧胴設置部25aの半径(r1+t1)とシムSM2の厚みt2を含む圧胴体30の半径(r2+t2)とが共に150mm、そして当接面tfにおける周速度V0を50mm/Sとした場合、当接面tfがギャップGの中間(1/2)に位置する条件では、マスクMの外周面と基板Sの外周面とは、ギャップGを保ちつつ、共に49.983mm/Sの周速度になり、相対速度差はゼロとなる。
当接面tfの位置(Z方向)をギャップG内の何処に設定するかにより、周速度の僅かな相対差が生じる為、基板Sに露光されるパターンの周方向の寸法を、マスクM上のパターンの周方向の寸法に対して、或る範囲内で伸張、収縮させることが可能である。上記の数値例の場合、マスクM上のパターンの周長方向の寸法を750mmとすると、基板S上に露光されるパターンの搬送方向の寸法は、最大で±500μm程度、伸縮させることができる。
このような露光パターンの伸縮補正は、走査露光方向(基板Sの搬送方向)における相対倍率補正とも呼ばれるものであり、物理的な伸縮が大きい樹脂性の基板Sに形成されている下地パターンに対して正確な重ね合せ露光を行なう場合には、その相対倍率補正を積極的に活用することで、下地パターンに合わせた忠実なパターン転写が可能となる。
【0075】
(第5実施形態)
次に、基板処理装置100の第5実施形態について、
図12を参照して説明する。
上記第4実施形態では、シムSM1、SM2の厚さを調整することで基板S等の厚さ変化に対応する構成であったが、本実施形態では、転動体25を径方向に弾性変形させることで、基板S等の厚さ変化に対応させる構成について説明する。
この図において、
図9乃至
図11に示す第4実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、本実施形態における基板処理装置100においては、保持部本体22の端部を保持するホルダ23と転動体25との間に、転動体25の圧胴設置部25aの外周面を変位させる変位リング61が設けられている。変位リング61は、転動体25と対向する側に回転軸線AX1回りに形成され、転動体25と離間するのに従って漸次拡径する斜面61aを備えた突部が設けられている。そして、転動体25には、斜面61aに外側から嵌合する斜面25bが設けられている。また、回転軸線AX1方向で変位リング61とは逆側から転動体25に係合するヘッド部62bと、変位リング61と回転軸線AX1と平行な軸回りに螺合する軸部62aとを備える調整ねじ部(荷重付与部)62が、軸線AX1を中心とするXZ面と平行な円に沿って、等角度間隔で複数ヶ所に設けられている。本実施形態においては、圧胴設置部25aが圧胴体30の基板保持面31に当接することでマスク保持部20と圧胴体30とが連れ回りする構成である。
【0077】
この
図12において、マスク保持面22aと基板保持面31とのギャップ量(マスク面と基板面とのギャップ量G)を調整する際には、例えば、軸部62aが変位リング61に螺入する方向に調整ねじ62を回転させる。調整ねじ62のヘッド部62bは、変位リング61に係合しているため、軸部62aは変位リング61への螺入により回転軸線AX1と平行な軸方向に伸張するように弾性変形する。軸部62aの弾性復元力は、ヘッド部62bを介して転動体25に、変位リング61に接近する方向への荷重として作用する。
【0078】
変位リング61に接近する方向への荷重が加わった転動体25は、斜面25bが変位リング61の斜面61aに沿って拡径する方向に移動するため、変位リング61に接近する方向への荷重が拡径方向に変換されて圧胴設置部25aが弾性変形して拡径する。圧胴設置部25aが拡径することにより、拡径した量に対応してマスク保持面22aと基板保持面31とのギャップ量(マスク面と基板面とのギャップ量G)を大きくすることができる。ここで、拡径した量が大きすぎる場合には、上述した調整ねじ62を逆方向に回転させることにより、軸部62aの弾性変形量が少なくなり、転動体25に付与される変位リング61に接近する方向への荷重が減少することにより、圧胴設置部25aの拡径量が小さくなる。
【0079】
このように、本実施形態では、調整ねじ62を回転させることにより、変位リング61に接近する方向への荷重、斜面61a、25bの角度に応じて圧胴設置部25aが拡径する量を調整して、マスク保持面22aと基板保持面31とのギャップ量(マスク面と基板面とのギャップ量G)を所望の値に容易に調整して形成することが可能になる。
尚、調整ねじ62の回転によって、圧胴設置部25aの径を拡大する場合、先の
図11に示したように、当接面tfとマスクMの外周面のZ方向(径方向)の間隔が変化する為、マスクMの外周面と基板Sの外周面との相対周速度に差が生じることになるから、そのことも加味して、圧胴設置部25aの径の拡大量を決定するのが望ましい。
【0080】
なお、上記第5実施形態で説明した調整ねじ62の回転については、別途回転駆動装置を設け、調整すべきギャップ量に応じて回転駆動装置を介して調整ねじ62の回転量を制御する構成を採ってもよい。また、圧胴設置部25aを拡径する手段としては、上述した調整ねじ62の他に、ピエゾ素子等の圧電素子を用いて転動体25に回転軸線AX1方向の荷重を付与する構成としてもよい。さらに、上述した回転軸線AX1方向の荷重を径方向の荷重に変換する構成の他に、径方向に変位するように圧電素子を設け、圧電素子の変位量に応じて圧胴設置部25aを拡径あるいは縮径させる構成としてもよい。
【0081】
(第6実施形態)
次に、基板処理装置100の第6実施形態について、
図13乃び
図14を参照して説明する。
上記第1〜第5実施形態では、露光領域における基板Sは圧胴体30の外周面31に保持される構成として説明したが、本実施形態では、無端帯状で周回するベルトを用いて基板Sを平面状に保持する構成について説明する。
これらの図において、
図1乃至
図12に示す上記実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
本実施形態の基板処理装置100は、基板Sを供給する基板供給部11と、基板Sを回収する基板回収部12と、基板Sを搬送する基板搬送部90とを備えている。基板供給部11は、例えばロール状に巻かれた基板Sを送り出して供給する。この場合、基板供給部11には、基板Sを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部11は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構を含むものであればよい。
【0083】
基板回収部12は、露光処理が行われた基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部12には、基板供給部11と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部11において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0084】
基板搬送部90は、基板供給部11から供給された基板Sを案内する複数の案内ローラーR(
図13では、2つ)と、基板Sを支持する基板支持機構80とを有している。基板支持機構80は、案内ローラーRの間に配置されている。
【0085】
基板支持機構80は、ベルト部(無端ベルト)81、ベルト搬送部82及び案内ステージ(流体支持部)83を有している。また、基板支持機構80には、図示を省略しているが、ベルト部81を洗浄するベルト洗浄部、ベルト部81の静電気を除去する静電気除去部等が設けられている。
【0086】
ベルト部81は、例えばステンレスなどの金属材料を用いて無端状に形成されている。
ベルト部81は、外側に設けられた支持面(基板保持面)81aによって基板Sを裏面側から支持する。ベルト部81には、周方向に並んで配置される複数の貫通孔(不図示)が一周に亘って設けられている。各貫通孔は、ベルト部81の支持面81aと、当該支持面81aの裏側に設けられる裏面81bとの間を貫通して形成されている。この複数の貫通孔は、Y方向に複数列形成されている。ベルト部81の一部は、基板Sの裏面に対向して配置されている。
【0087】
ベルト搬送部82は、2つの搬送ローラー82a〜82bを有している。搬送ローラー82a〜82bには、ベルト部81が掛け回されている。搬送ローラー82bは、露光領域よりも基板Sの搬送方向の上流側(+X側)に配置されている。搬送ローラー82aは、露光領域よりも基板Sの搬送方向の下流側に配置されている。このため、ベルト部81が露光領域をX方向に横切るように移動する構成となっている。
【0088】
搬送ローラー82a及び搬送ローラー82bは、Y方向に延在して配置されると共に、X方向に並ぶように互いに間隔を空けて配置されている。
搬送ローラー82a、82bは、ベルト部81が張力を有する状態で、Y方向と平行な軸線AX3(
図14参照)周りに周回移動するように位置が調整されている。
【0089】
搬送ローラー82aは、ベルト部81を駆動する駆動ローラーとなる。搬送ローラー82aには、駆動部(周回駆動部)82eが設けられている。本実施形態では、例えば搬送ローラー82aが駆動ローラーであり、残りの搬送ローラー82bが従動ローラーである。駆動ローラーである搬送ローラー82aは、例えば多孔質材料によって形成されており、不図示の吸引装置に接続されている。この構成により、外周面にベルト部81を吸着させることができるため、当該ベルト部81に動力を伝達することができる。
【0090】
案内ステージ83は、例えば気体が通過可能な多孔質材料を用いて矩形の板状に形成されている。案内ステージ83の+Z側の面(案内面)83aは、XY平面に平行に形成されており、気体(流体)を基板Sに向けて噴出することで、気圧(流体圧)により基板Sを−Z側から非接触で支持する平面パッドとして機能する。案内ステージ83は、基板S及びベルト部81が案内面83aに沿ってX方向へ移動するように案内する。
【0091】
案内ステージ83は、X方向について搬送ローラー82aと搬送ローラー82bとの間に配置されている。また、案内ステージ83は、
図14に示すように、Y方向についてベルト部81に重なる位置に配置されている。案内ステージ33の案内面33aは、ベルト部31の裏面に対向して設けられている。案内ステージ33は、不図示の固定機構によって位置が固定されている。
【0092】
また、本実施形態では、駆動部82eの動力は輪列機構84によって、一体的に回転する回転軸86を介してマスク駆動ローラ(回転部)85に伝達される。輪列機構84としては、非接触で動力を伝達可能な磁気歯車を含むものを用いることができる。
【0093】
図14は、
図13に示した基板処理装置100をZY平面と平行な平面で破断した断面図である。
図14に示すように、マスク駆動ローラ85は、転動体25の配置に応じて、Y方向に間隔をあけて2つ設けられている。マスク駆動ローラ85の間において回転軸86は、間隔をあけて配置された一対の軸受87に支持されている。これら軸受87は、ピエゾ素子等で構成される昇降装置(移動部)88によってZ方向に微小駆動される。
【0094】
上記構成の基板処理装置100においては、昇降装置83によって軸受87を介して回転軸86をZ方向に移動させることにより、マスク駆動ローラ85及び転動体25を介して保持部本体22がZ方向に一体的に移動し、案内ステージ83に対してZ方向に相対移動する。
これにより、保持部本体22のマスク保持面22aと、ベルト部81の支持面81aとのギャップ量Gを調整することが可能になる。従って、マスク保持面22aに保持されたマスクMと、支持面81aに保持された基板Sとの間のギャップ量Gも所定量に調整される。
【0095】
マスクMと基板Sとのギャップ量が調整されると、基板処理装置100は、ロール方式によって有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する。以下、上記構成の基板処理装置100を用いて表示素子を製造する工程を説明する。
【0096】
まず、不図示のローラーに巻き付けられた帯状の基板Sを基板供給部11に取り付ける。この状態から基板供給部11から当該基板Sが送り出されるように、駆動部82eを作動させて搬送ローラー82aを回転させる。一方、駆動部82eの動力は、輪列機構84を介して回転軸86に伝達される。回転軸86の回転によりマスク駆動ローラ85が回転し、マスク駆動ローラ85に当接する転動体25が連れ回りすることで、保持部本体22aに保持されたマスクMが回転軸線AX1回りに回転する。従って、ベルト部81の周回動作に伴う基板Sの搬送と同期(連携)して、マスクMが回転することになる。この状態で照明部10からの照明光で照明されたマスクMのパターン像は、基板Sに逐次露光される。
【0097】
このように、本実施形態においても、基板Sの厚さ変化に対応して、保持部本体22のマスク保持面22aと、ベルト部81の支持面81aとのギャップ量を容易に調整することが可能になる。また、本実施形態では、ギャップの調整量が微小であり、また、例えばベルト部81と案内ステージ83の案内面83aとの間に、真空与圧型のエアベアリング層が形成される場合には、平面パッドを構成する案内面83aをZ方向に微動させることでギャップ量を調整する構成としてもよい。
【0098】
なお、上記第6実施形態では、マスク駆動ローラ85に転動体25が当接して連れ回ることによりマスクMが回転軸線AX回りに回転する構成を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば
図15に示すように、基板Sと離間した位置で転動体25がベルト部81に当接して連れ回ることにより、マスクMが回転する構成であってもよい。
【0099】
この構成の基板処理装置100では、第4実施形態で説明したシムSM1を基板Sの厚さに応じた厚さで圧胴設置部25aの外周面に設けることにより、マスク保持面22aと案内ステージ83の案内面83aとの間(マスク面と基板面との間)のギャップ量を調整することができる。
また、ギャップ調整量が微小である場合には、上述したエアベアリング層の厚さを調整することでギャップ量を調整することも可能である。具体的には、
図15に示されるように、案内ステージ83にエアを供給する供給部89を、流体圧調整部としての制御部CONTが制御し、エアパッド部における転動体25(圧胴設置部25a)が当接する領域のエア供給量を調整することにより、エアベアリング層の厚さを調整してベルト部81に対して転動体25を離間・接近する方向に移動させることができる。これにより、ベルト部81と転動体25との距離、すなわち、マスク保持面22aと案内面83aの間(マスク面と基板面との間)のギャップ量を容易に変更することが可能になる。
【0100】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0101】
例えば、上記実施形態では、保持部本体22の外周面にマスクMを保持する構成としたが、これに限定されるものではなく、保持部本体22の内周面でマスクMを保持させる構成としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、マスクMと基板Sとの相対位置を計測する計測部を設ける構成については、第2、第3実施形態でのみ説明したが、他の実施形態についても適用可能であることは言うまでもない。
【0103】
また、後述するデバイス製造システムSYSにおける処理装置U3として、上記実施形態の基板処理装置100を用いることができる。
【0104】
(第7実施形態)
以下、本発明に係る第7実施形態の基板処理装置を、
図16ないし
図20を参照して説明する。
以下の説明において、同様の構成要素については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。また、特別な説明がない限り、構成要素やそれらの説明に関しては、上記実施形態と同様であるものとする。
なお、本実施形態では、マスク保持部と基板保持部とが摩擦により同期回転(連れ回り)する構成の場合を例示して説明する。
【0105】
図16は、基板処理装置200の要部の正面断面図、
図17は基板処理装置200を構成するマスクユニットMUの正面図、
図18はマスクユニットMUの端部における部分拡大図である。
【0106】
基板処理装置200は、可撓性を有するシート状のマスクMのパターンを帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sに対して露光処理を行うものであって、照明部10、マスクユニットMU、基板保持ユニットSU、アライメント顕微鏡AL1、AL2、制御部(不図示)とを主体に構成されている。マスクMは、可撓性を有するシート状のガラス材で、例えば200〜200μm程度の厚さに形成されている。
【0107】
なお、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、マスクユニットMU及び基板保持ユニットSUの回転軸線AX1、AX2と平行な方向をY方向とし、Z方向及びY方向と直交する方向をX方向として説明する。
【0108】
照明部10は、マスクユニットMUにおけるマスク保持部20(後述)に巻き付けられたマスクMの照明領域に向けて照明光を照射するものであって、蛍光灯と同様に直管型で放射状に露光用の照明光を発光するものや、円筒状の石英の棒の両端から照明光を導入し裏面側に拡散部材を設けてあるもの、或いは高輝度の紫外線域の光を放出する半導体レーザやLED等の多数個を一列に並べたものが、マスク保持部20を支持する内筒21の内部空間に収容されている。
【0109】
マスクユニットMUは、マスク保持部20、転動体25を備えている。マスク保持部20は、保持部本体22とホルダ23とを備えている。これら保持部本体22、ホルダ23、転動体25は、一体化された状態で設けられており、また、回転軸線(所定の軸線)AX1方向に連通して内筒21が挿通される貫通孔がそれぞれに形成されている。
【0110】
保持部本体22は、回転軸線(所定の軸線)AX1を軸線とする円筒状のガラス材で形成されており、マスクMを所定半径の円筒面に沿って保持する外周面(周面)22aを備えている。外周面22aの周長は、
図17に示すように、マスクMが巻かれたときに、回転軸線AX1周り方向の両端が離間する長さに設定されている(以下の説明では、保持部本体22及びホルダ23において、回転軸線AX1周り方向(走査露光の方向)でマスクMの両端部が離間する領域をマスク離間領域Maと称する)。
【0111】
ホルダ23は、金属材で円環状に形成され、保持部本体22の長さ方向両端部にそれぞれ設けられ、内周側から保持部本体22を保持する保持部23aを有している。ホルダ23の形成材料としては、保持部本体22と同一の線膨張係数を有するものが好ましい。ホルダ23の外周面23bは保持部本体22の外周面22aよりも小径に形成されている。
また、各ホルダ23の外周面23bには、マスク離間領域Maを除いて回転軸線AX1周り方向に延びる溝部23cがY方向に間隔をあけて並行するように対で形成されるとともに、マスク離間領域Maと離間した位置で周方向の端部同士が接続され、周囲が溝部23cで囲まれた島部を形成する、0字状となる配置で形成されている。
【0112】
各溝部23cには、
図18に示すように、ホルダ23とマスクMとの間の隙間をシールするシール部70が、マスク保持部20の外周面22aと略面一となる突出量で装填されている。シール部70としては、例えばO−リングが用いられる。シール部70でシールされた空間、すなわち、ホルダ23、マスクM、シール部70で囲まれた閉空間は、吸引部VCによって負圧吸引される。これらシール部70及び吸引部VCによって、マスクMをマスク保持部20に着脱自在に固定する固定部が構成される。
【0113】
また、各ホルダ23には、
図17に示すように、マスク離間領域Maに位置する軸状の係合部(位置決めピン)71と、マスクMよりも−Y側に位置する軸状の係合部(位置決めピン)72とがそれぞれ設けられている。係合部71は、外周面にマスクMの周方向の一端縁が押し当てられたときに、マスク保持部20に対する当該マスクMの周方向の相対位置決めするものであって、マスクMの外周面と略面一となる高さで突設されている。係合部71の頂面には、マスクMとの相対位置関係の指標となる指標マーク(指標部)FMが形成されている。
【0114】
係合部72は、外周面にマスクMの−Y側の一端縁が押し当てられたときに、マスク保持部20に対する当該マスクMのY方向(幅方向)の相対位置決めするものであって、マスクMの外周面と略面一となる高さで突設されている。マスクMは、係合部71、72の双方に端縁を押し当てられることにより、マスク保持部20に対する相対位置が位置決めされる。そして、マスクMには、例えば、係合部71に押し当てられる端縁近傍に一つ、当該端縁と逆側の端縁近傍に二つ、それぞれ係合部71と設計上、同一のY位置に、パターンと所定の位置関係でマスクマークMMが形成される。
【0115】
内筒21は、照明光を透過可能な円筒状の石英等、或いは照明部10からの照明光が通過するスリット状の開口部21aを備えた円筒状のセラミックス材や金属等で形成されている。
【0116】
図16に戻り、転動体25は、ホルダ23を介して保持部本体22と物理的に結合(連結)されており、外周側に回転軸線AX1回りに突設され圧胴体30の外周面を転動する圧胴設置部25aを有している。圧胴設置部25aの外径は、保持部本体22のマスク保持面22aに保持されたマスクMの外側の面がなす外径よりも所定量大きく形成されている。具体的には、圧胴設置部25aの外径は、圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面に当接して保持部本体22が所定位置に支持されたときに、圧胴体30に保持された基板SとマスクMとの間に所定量のギャップが形成される値に形成されている。
【0117】
また、転動体25は、内周側でエアベアリング26を介して内筒21に対して回転軸線AX1回りに非接触で回転自在に支持されている。そのため、保持部本体22、ホルダ23、転動体25は、回転軸線AX1回りに一体的に回転する。
【0118】
内筒21は、Y方向に間隔をあけて設けられたベース部Bから互いに接近する方向に延設された支持台27に板バネ28を介して載置されている。板バネ28のバネ定数は、マスク保持部20の自重及び転動体25を介して圧胴体30に加わる荷重、すなわち、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面を転動する際の摩擦力に応じて設定される。内筒21の内部空間には上述した照明部10が配設されており、照明部10の照明光出射方向で対向する位置には照明光が通過する開口部21aが形成されている(
図16参照)。
【0119】
アライメント顕微鏡AL1、AL2は、マスクMとマスク保持部20との相対位置関係を検出するものであり、マスクMのマスクマークMM及び係合部71の指標マークFMを観察可能なように、各マークMM、FMと同一のY位置に配置されている。
【0120】
基板保持ユニットSUは、圧胴体(基板保持部)30を備えている。
圧胴体30は、Y軸と平行で、回転軸線AX1の−Z側に設定された回転軸線(第2の軸線)AX2回りに回転する円柱状に形成されており、内部には中空部が設けられ慣性モーメントが小さくなるように設定されている。圧胴体30の外周面は、基板Sを接触保持する基板保持面31とされている。圧胴体30のY方向両端面には、圧胴体30よりも小径、且つ同軸で突出する回転支持部32がベース部Bに回転軸線AX2回りに回転自在に支持されている。また、本実施形態では、圧胴体30を回転駆動することで圧胴体30とマスク保持部20とを同期して回転させる駆動装置33が設けられている。
【0121】
続いて、上記構成の基板処理装置200のうち、マスクユニットMUの組立手順について説明する。
まず、マスクMについては、例えば平坦性の良い短冊状の極薄ガラス板(例えば厚さ200〜500μm)の一方の面にクロム等の遮光層で線幅20μm以下の微細パターンを含む表示デバイス用の回路パターン等を形成した透過型の平面状シートマスクとして作成される。マスクMは、基板処理時に保持部本体22の外周面22aの半径に応じた曲率をもって装着されるため、周方向については装着時にマスクMの厚さ及び外周面22aの半径に応じて伸張する(外周面側)、或いは圧縮される(内周面側)。従って、周方向に関してマスクMのパターンは、形成時の大きさに対して、装着時の大きさは上記厚さ及び曲率に応じて拡大或いは縮小されたパターンとなる。そのため、パターン形成時には、この拡大或いは縮小を見込んだ大きさでパターンを形成しておく。
【0122】
上記のように作成されたマスクMは、保持部本体22の外周面22aに倣って湾曲させ、この外周面に巻き付けた(貼り付けた)状態で使用される。外周面22aにマスクMを巻き付ける際には、マスクMの周方向の一端縁を係合部71の外周面に押し当てつつ、マスクMの幅方向の一端縁を係合部72に押し当てて、マスク保持部20(保持部本体22)に対してマスクMを位置決めした状態で巻き付ける。マスクMを巻き付けた後に、吸引部VCを動作させてシール部70でシールされた閉空間を負圧吸引することにより、マスクMがY方向の両端部で吸着保持される。なお、マスクMと保持部本体22との間に空気層が形成されて屈折率差の大きい界面が生じると、干渉現象や多重反射等の影響により、基板Sに露光されるパターンの像質を悪化させることがある為、そのような大きな屈折率差の発生を抑えるように、マスクMと保持部本体22との間にガラス材と同程度の屈折率を有する純水や、油浸顕微鏡等で使われている油等の液体を介装させることが好ましい。
その場合の液体は、露光用の照明光の波長域において、充分な透過率(例えば90%以上)を有しているものが望ましい。
【0123】
また、そのような液体は、マスクMの周縁部から徐々に蒸発するので、保持部本体22の外周面22aのうちマスクMの周縁が位置する付近、或いは係合部71、72が設けられている付近に、たとえば、数μm〜数十μm程度の深さの親液性の溝(幅は1mm程度)の複数本を、外周面22aの一部に刻設しておき、その溝に向けて、保持部本体22の外周面22aの上方から、液体をスポイト状又は針状のノズルを介して、時々滴下する液体供給機構を設けておくと良い。
そのような構成にすると、複数の溝に滴下された液体は、保持部本体22が実用上の角速度(例えばマスクMのパターン面の周速として50〜200mm/S程度)で回転している間は溝内に捕捉される為、毛細管現象により保持部本体22の外周面22aとマスクMとの間にしみ込ませることができる。
勿論、そのような複数本の溝は、マスクM上のパターン形成領域の外側であって、露光用照明光を乱さないような位置に設けられる。
【0124】
マスクMが吸着保持されたマスクユニットMUについては、露光処理前に、予めパターンの位置情報を検出しておく。具体的には、マスク保持部20を回転軸線AX1周りに回転させつつ、アライメント顕微鏡AL1、AL2によってマスクマークMM及び指標マークFMをそれぞれ検出する。これにより、指標マークFMを基準とするマスクMの相対位置関係、すなわちパターンの相対位置関係が計測される。この相対位置関係を用いて所定の演算を行うことにより、マスクMに形成されたパターンについて、回転軸線AX1周り方向の位置、Y方向の位置、外周面22aに沿った方向の回転、及び倍率等、マスク保持部20に対するパターンの誤差情報が得られる。
【0125】
次に、基板処理装置200の動作について説明する。
エアベアリング26を介して内筒21に支持され、マスクMを保持するマスク保持部20は、当該マスク保持部20の自重と板バネ28のバネ定数に応じた+Z側への付勢力との差分の荷重を、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30に付与した状態で当接している。これにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間、すなわち、マスクMと基板Sとの間には、圧胴設置部25aの外径に応じた所定量のギャップが形成される。なお、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重を調整する際には、対応するバネ定数を有する板バネ28に交換するか、内筒21と支持台27との間に、予めスペーサを介在させた状態で板バネ28を設置しておき、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重に応じたスペーサに交換すればよい。
【0126】
そして、駆動装置33の駆動より圧胴体30が回転軸線AX1回りに回転するとともに、照明部10から照明光が照射され、開口部21aを介して保持部本体22を透過し、内周側からマスクMを照明する。圧胴体30の回転に伴って、圧胴体30の基板保持面31に巻き付けられて保持された基板Sは搬送されるとともに、圧胴設置部25aにおいて圧胴体30の外周面に当接する転動体25が連れ回ることにより、ホルダ23を介して回転駆動力が保持部本体22に伝達され、保持部本体22に保持されたマスクMのパターンが基板Sと所定量のギャップを一定に維持した状態で同期して移動する。そして、照明光に照明されたマスクMのパターン像は、基板Sの投影領域に逐次投影される。
【0127】
なお、マスクMのパターンを基板Sに投影するに際しては、予め求められたパターンの誤差情報に基づいて、基板Sの回転軸線AX2周り方向の位置、Y方向の位置、圧胴体30のマスク保持部20に対する相対的な回転速度、回転軸線AX1、AX2の相対位置関係、マスクMと基板Sとのギャップ量を調整することが好ましい。
【0128】
このように、本実施形態のマスクユニットMUでは、ガラス材で形成されたマスクMをガラス材で形成された保持部本体22で保持するため、容易にパターンを形成することができ、保持部本体22にパターンを直接形成する場合のような手間がかかってコスト増となることを抑制できる。また、本実施形態では、円筒面ではなく平面のマスクMに対してパターンを形成するため、より微細幅のパターン、例えば20μm以下の線幅のパターンであっても高精度に形成することができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、マスクMをマスク保持部20に装着する際に、係合部71、72にマスクMを係合させることで、容易にマスク保持部20に位置決めすることが可能である。しかも、本実施形態では、係合部71に指標マークFMを設けているため、別途指標マーク用の部材を設ける必要がなくなり、装置の小型化及び低価格化を図ることができる。また、本実施形態では、吸引部VCによる吸引/吸引停止を操作することにより、容易、且つ迅速にマスクMを交換することも可能になる。
【0130】
(デバイス製造システム)
次に、上記の基板処理装置200を備えたデバイス製造システムについて、
図19を参照して説明する。
図19は、デバイス製造システム(フレキシブル・ディスプレー製造ライン)SYSの一部の構成を示す図である。ここでは、供給ロールFR1から引き出された可撓性の基板P(シート、フィルム等)が、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,…Unを経て、回収ロールFR2に巻き上げられるまでの例を示している。上位制御装置CONT2は、製造ラインを構成する各処理装置U1〜Unを統括制御する。
【0131】
本実施形態のデバイス製造システムSYSは、1個のデバイスを製造するための各種の処理を、基板Pに対して連続して施す、所謂、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式のシステムであり、各種の処理が施された基板Pは、デバイス(例えば有機ELディスプレーの表示パネル)ごとに分割(ダイシング)されて、複数個のデバイスになる。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となるY方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となるX方向)の寸法が10m以上である。
【0132】
図19において、直交座標系XYZは、基板Pの表面(又は裏面)がXZ面と垂直となるように設定され、基板Pの搬送方向(長尺方向)と直交する幅方向がY方向に設定されるものとする。なお、その基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングの為の微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
【0133】
供給ロールFR1に巻かれている基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1によって引き出されて処理装置U1に搬送されるが、基板PのY方向(幅方向)の中心はエッジポジションコントローラEPC1によって、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるようにサーボ制御される。
【0134】
処理装置U1は、印刷方式で基板Pの表面に感光性機能液(フォトレジスト、感光性シランカップリング材、UV硬化樹脂液等)を、基板Pの搬送方向(長尺方向)に関して連続的又は選択的に塗布する塗布装置である。処理装置U1内には、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR2、この圧胴ローラDR2上で、基板Pの表面に感光性機能液を一様に塗布する為の塗布用ローラ等を含む塗布機構Gp1、基板Pに塗布された感光性機能液に含まれる溶剤または水分を急速に除去する為の乾燥機構Gp2等が設けられている。
【0135】
処理装置U2は、処理装置U1から搬送されてきた基板Pを所定温度(例えば、数10〜120℃程度)まで加熱して、表面に塗布された感光性機能層を安定にする為の加熱装置である。処理装置U2内には、基板Pを折返し搬送する為の複数のローラとエア・ターン・バー、搬入されてきた基板Pを加熱する為の加熱チャンバー部HA1、加熱された基板Pの温度を、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うように下げる為の冷却チャンバー部HA2、ニップされた駆動ローラDR3等が設けられている。
【0136】
基板処理装置200としての処理装置U3は、先の
図16〜
図18に示した露光装置であり、処理装置U2から搬送されてきた基板P(基板S)の感光性機能層に対して、ディスプレー用の回路パターンや配線パターンに対応した紫外線のパターニング光を照射する。処理装置U3内には、基板PのY方向(幅方向)の中心を一定位置に制御するエッジポジションコントローラEPC、ニップされた駆動ローラDR4、基板Pを所定のテンションで部分的に巻き付けて、基板P上のパターン露光される部分を一様な円筒面状に支持する回転ドラムDR5(圧胴体30)、及び、基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与える為の2組の駆動ローラDR6、DR7等が設けられている。
【0137】
さらに処理装置U3内には、透過型円筒マスクM(マスクユニットMU)と、その円筒マスクM内に設けられて、円筒マスクMの外周面に形成されたマスクパターンを照明する照明機構IU(照明部10)と、回転ドラムDR5によって円筒面状に支持される基板Pの一部分に、円筒マスクMのマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出するアライメント顕微鏡AM1、AM2とが設けられている。
【0138】
処理装置U4は、処理装置U3から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行なうウェット処理装置である。処理装置U4内には、Z方向に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを折り曲げて搬送する複数のローラと、ニップされた駆動ローラDR8等が設けられている。
【0139】
処理装置U5は、処理装置U4から搬送されてきた基板Pを暖めて、湿式プロセスで湿った基板Pの水分含有量を所定値に調整する加熱乾燥装置であるが、詳細は省略する。その後、幾つかの処理装置を経て、一連のプロセスの最後の処理装置Unを通った基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1を介して回収ロールFR2に巻き上げられる。その巻上げの際も、基板PのY方向(幅方向)の中心、或いはY方向の基板端が、Y方向にばらつかないように、エッジポジションコントローラEPC2によって、駆動ローラDR1と回収ロールFR2のY方向の相対位置が逐次補正制御される。
【0140】
上記のデバイス製造システムSYSでは、処理装置U3として上述した基板処理装置200が用いられているため、容易にパターンを形成することができ、保持部本体22にパターンを形成する場合のような手間がかかってコスト増となることを抑制でき、低コストで高精度のデバイスを製造することが可能になる。
尚、
図19に示した処理装置U3は、先の
図1〜
図15の各実施形態で説明した基板処理装置100であっても良い。
【0141】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0142】
例えば、上記実施形態では、マスクMを保持部本体22の外周面22aに巻き付ける(貼り付ける)構成としたが、これに限定されるものではなく、
図20に示すように、保持部本体22の内周面に貼り付ける構成としてもよい。この場合、照明部10をマスクユニットMUの外側に配置するとともに、マスクMの周方向の長さを保持部本体22の内周面の周長の半分未満とし、照明部10の照明光で照明されたマスクパターンからの光を、保持部本体22における照明光の入射位置と逆側から出射させる構成や、マスクパターンからの光を内筒21に設置した反射鏡部で回転軸線AX1が延びる方向に反射させてマスクユニットMUの外側に導く構成等を採ることができる。
【0143】
また、上記実施形態では、マスクMをマスク保持部20に固定するための固定部として、シール部70及び吸引部VCを用いる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、接着剤を用いてマスクMをマスク保持部20に固定する構成や、機械的なクランプ機構によりマスクMをマスク保持部20に挟持固定する挟持部を用いて固定する構成としてもよい。
また、静電吸着方式(クーロン力)によって、マスクMをマスク保持部20に吸着する構成であっても良い。
【0144】
以上のように、保持部本体22の内周面にマスクMを貼り付ける場合であっても、保持部本体22の内周面とマスクMとの間に、空気層が出来てしまうと基板Sに露光されるパターンの像質が劣化する可能性が高い為、先の実施形態と同様にして、保持部本体22の内周面とマスクMとの間に、マスクMの母材(ガラス等の透明薄板)と同程度の屈折率を有する液体を所定の厚みの層となるように充填するのが望ましい。
【0145】
(第8実施形態)
以下、本発明に係る第8実施形態の基板処理装置を、
図21ないし
図24参照して説明する。
以下の説明において、同様の構成要素については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。また、特別な説明がない限り、構成要素やそれらの説明に関しては、上記実施形態と同様であるものとする。
図21は、基板処理装置300の要部の正面断面図、
図22は基板処理装置の断面斜視図である。
【0146】
基板処理装置300は、可撓性を有するシート状のマスクMのパターンを帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sに対して露光処理を行うものであって、照明部10、マスクユニットMU2、基板保持ユニットSU、制御部CONTとを主体に構成されている。
なお、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、マスクユニットMU2及び基板保持ユニットSUの回転軸線と平行な方向をY方向とし、Z方向及びY方向と直交する方向をX方向として説明する。
【0147】
照明部10は、マスクユニットMU2におけるマスク保持部20(後述)に巻き付けられたマスクMの照明領域に向けて照明光を照射するものであって、蛍光灯と同様に直管型で放射状に露光用の照明光を発光するものや、円筒状の石英の棒の両端から照明光を導入し裏面側に拡散部材を設けてあるものが用いられ、マスク保持部20を支持する内筒21の内部空間に収容されている。
【0148】
マスクユニットMU2は、マスク保持部20、板バネ(弾性部材)24、転動体(支持部材)25を備えている。マスク保持部20は、円筒状の保持部本体(パターン保持部材)22と、保持部本体22の長さ方向両端部にそれぞれ設けられたホルダ(環状部)23とを備えている。これら保持部本体22、ホルダ23、板バネ24、転動体25は、一体化された状態で設けられており、また、回転軸線(所定の軸線)AX1方向に連通して内筒21が挿通される貫通孔がそれぞれに形成されている。
【0149】
内筒21は、照明光を透過可能な円筒状の石英等、或いは照明部10からの照明光が通過するスリット状の開口部21aを備えた円筒状のセラミックス材や金属等で形成されている。保持部本体22は、その外周面にマスクMを所定半径の円筒面に沿って保持するマスク保持面22aが形成されている。ホルダ23は、金属材で円環状に形成され、
図23に示すように、保持部本体22の端部外周面と、硬化後に弾性接着性能を発現する接着剤23aによって接着されている。ホルダ23の形成材料としては、保持部本体22と同一の線膨張係数を有するものが好ましいが、線膨張係数に差がある場合には、保持部本体22とホルダ23との熱膨張の差で保持部本体22に大きな負荷が加わらないように、線膨張係数が大きいホルダ23が外周側から保持部本体22を保持する構成としている。
【0150】
転動体25は、板バネ24、スペーサ24A、24B(
図23及び
図24参照)を介して保持部本体22と物理的に結合(連結)されており、外周側に回転軸線AX1回りに突設され圧胴体30の外周面を転動する圧胴設置部25aを有している。圧胴設置部25aの外径は、保持部本体22のマスク保持面22aに保持されたマスクMの外側の面がなす外径よりも所定量大きく形成されている。具体的には、圧胴設置部25aの外径は、圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面に当接して保持部本体22が所定位置に支持されたときに、圧胴体30に保持された基板SとマスクMとの間に所定量のギャップが形成される値に形成されている。
【0151】
また、転動体25は、内周側でエアベアリング26を介して内筒21に対して回転軸線AX1回りに非接触で回転自在に支持されている。そのため、保持部本体22、ホルダ23、板バネ24、転動体25は、回転軸線AX1回りに一体的に回転する。
【0152】
板バネ24は、保持部本体22の回転軸線AX1の伸縮を許容するものであって、
図24に示すように、例えば鋼材でリング状(円環状)に形成されている。板バネ24は、
図23に示すように、スペーサ24Aを介して転動体25にY方向に所定量の隙間をあけて固定されている。同様に、板バネ24は、スペーサ24Bを介してホルダ23にY方向に所定量の隙間をあけて固定されている。スペーサ24Aは、回転軸線AX1からの距離が略同一の位置に、回転軸線AX1回りに等間隔で3つ設けられている。スペーサ24Bは、回転軸線AX1からの距離がスペーサ24Aよりも大きな位置に、回転軸線AX1回りの位置がスペーサ24Aの間となるように等間隔で3つ設けられている。
【0153】
これら板バネ24、スペーサ24A、24Bは、伝達部として、連結したホルダ23、保持部本体22と転動体25との間で回転駆動力を伝達することで、板バネ24、スペーサ24A、24Bを介して連結されたホルダ23、保持部本体22と転動体25とを、回転軸線AX1回り方向については一体的に回転させ、回転軸線AX1方向については、伸縮許容部として板バネ24が弾性変形することにより、ホルダ23、保持部本体22と転動体25との相対的な微小移動が可能な構成となっている。
【0154】
図24に示したリング状の板バネ24は、詳細には
図25に示すような構成になっており、板バネ24の一方の面には、3つのスペーサ24Aが回転軸線AX1を中心として約120度の配置で固定され、板バネ24の他方の面には、3つのスペーサ24Bが回転軸線AX1を中心として約120度の配置で、且つ、表側のスペーサ24Aに対しては±60度の配置で固定される。そして、スペーサ24A、24Bの各厚みは同じものとし、周方向の寸法はなるべく小さく設定される。
3つのスペーサ24Aは、ネジによってリング状の転動体25の端面と板バネ24とを締結し、3つのスペーサ24Bは、ネジによってリング状のホルダ23の端面と板バネ24とを締結する。
【0155】
本実施形態では、このような構造で伸縮許容部を構成するが、その他、
図26に示すように、Y方向(軸線AX1が延びる方向)とリング状のホルダ23の径方向Rには弾性変形可能で、ホルダ23の接線方向Tには剛性が極めて高い金属性のフレクチャー構造体FLXを用意し、このフレクチャー構造体FLXによって、ホルダ23と転動体25とを3ヶ所(回転軸線AX1を中心として120度配置)で締結しても良い。
図26のようなフレクチャー構造体FLXは、1つでは径方向Rの剛性が極めて低いが、軸線AX1から等距離で、軸線AX1の周りに120度で3ヶ所に配置すると、各フレクチャー構造体FLXの径方向Rの変形自由度が相互に拘束し合い、ホルダ23と転動体25とは回転軸線AX1と直交したXZ面内方向には高い剛性で締結され、回転軸線AX1の延びるY方向には弾性的に変位可能に締結される。
【0156】
内筒21は、Y方向に間隔をあけて設けられたベース部Bから互いに接近する方向に延設された支持台27に板バネ28を介して載置されている。板バネ28のバネ定数は、マスク保持部20の自重及び転動体25を介して圧胴体30に加わる荷重、すなわち、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30の外周面を転動する際の摩擦力に応じて設定される。内筒21の内部空間には上述した照明部10が配設されており、照明部10の照明光出射方向で対向する位置には照明光が通過する開口部21aが形成されている(
図21及び
図22参照)。
【0157】
基板保持ユニットSUは、圧胴体(回転ドラム)30を備えている。
圧胴体30は、Y軸と平行で、回転軸線AX1の−Z側に設定された回転軸線(第2の軸線)AX2回りに回転する円柱状に形成されており、
図22に示すように、内部には中空部30aが設けられ慣性モーメントが小さくなるように設定されている。圧胴体30の外周面は、基板Sを接触保持する基板保持面31とされている。圧胴体30のY方向両端面には、圧胴体30よりも小径、且つ同軸で突出する回転支持部32がベース部Bに回転軸線AX2回りに回転自在に支持されている。また、本実施形態では、圧胴体30を回転駆動することで圧胴体30とマスク保持部20とを同期して回転させる駆動装置33が設けられている。
【0158】
続いて、上記構成の基板処理装置300の動作について説明する。
エアベアリング26を介して内筒21に支持され、マスクMを保持するマスク保持部20は、当該マスク保持部20の自重と板バネ28のバネ定数に応じた+Z側への付勢力との差分の荷重を、転動体25の圧胴設置部25aが圧胴体30に付与した状態で当接している。これにより、マスク保持面22aと基板保持面31との間、すなわち、マスクMと基板Sとの間には、圧胴設置部25aの外径に応じた所定量のギャップが形成される。なお、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重を調整する際には、対応するバネ定数を有する板バネ28に交換するか、内筒21と支持台27との間に、予めスペーサを介在させた状態で板バネ28を設置しておき、圧胴設置部25aが圧胴体30に付与する荷重に応じたスペーサに交換すればよい。
【0159】
そして、駆動装置33の駆動より圧胴体30が回転軸線AX1回りに回転するとともに、照明部10から照明光が照射され、開口部21aを介して保持部本体22を透過し、内周側からマスクMを照明する。圧胴体30の回転に伴って、圧胴体30の基板保持面31に巻き付けられて保持された基板Sは搬送されるとともに、圧胴設置部25aにおいて圧胴体30の外周面に当接する転動体25が連れ回ることにより、板バネ24、スペーサ24A、24Bを介して回転駆動力がホルダ23及び保持部本体22に伝達され、保持部本体22に保持されたマスクMのパターンが基板Sと所定量のギャップを一定に維持した状態で同期して移動する。そして、照明光に照明されたマスクMのパターン像は、基板Sの投影領域に逐次投影される。
【0160】
このとき、マスク保持部20及び圧胴体30は、圧胴設置部25aと基板保持面31とが当接する位置(径)で周速度が同一になるため、マスクMと基板Sとの相対移動速度を同一とするためには、マスクMの外周面の位置(径)及び基板Sの外周面の位置(径)は、マスクM及び基板Sの厚さ、保持部本体22のマスク保持面22aにおける直径、圧胴体30の基板保持面31における直径の比に応じて調整しておく。例えば、マスクM及び基板Sの厚さが同一で、且つマスク保持面22aにおける直径、圧胴体30の基板保持面31における直径が同一で保持部本体22及び圧胴体30が同一の角速度で回転する場合には、圧胴設置部25aと基板保持面31とが当接する位置からマスクMの外周面の位置までの距離と、圧胴設置部25aと基板保持面31とが当接する位置から基板Sの外周面の位置までの距離とを同一にすればよい。また、これ以外の場合には、マスクMの外周面の周速度と、基板Sの外周面の周速度とが同一となるように、保持部本体22及び圧胴体30のそれぞれについて、圧胴設置部25a及び基板保持面31の当接位置の径を設定することが好ましい。
【0161】
そこで、マスクMの外周面の周速度と基板Sの外周面の周速度とを同一に揃える一例を、
図27を参照して説明する。
図27は先の
図11で説明したシムによる径調節の手法を変形したものであり、
図23中の部材と同じ部材には同一の符号を付けてある。その変形部分は、
図27に示すように、基板保持面31のうち、圧胴設置部25aと当接する部分に、環状のシム(所定の厚み金属性のベルト)31Bを巻付けて、同図のYZ面内で見たときに、圧胴設置部25aの外周面とシム(所定の厚み金属性のベルト)31Bの外周面との当接位置を、マスクMと基板Sの間のギャップGのほぼ中間の位置Cxに設定する点である。
【0162】
位置Cxは、マスクMの回転軸線AX1からの半径として、r11+Mt+G/2に設定される位置であり、圧胴体30の回転軸線AX2からの半径として、r2+St+G/2に設定される位置でもある。
シム31Bは、そのような条件を満たすような厚みのものが選択(用意)されて、基板保持面31の外周面に巻き付けられるが、その厚みが一定でよい場合には、基板保持面31の圧胴設置部25aと当接する部分の径を、r2+St+G/2に加工すれば良い。また、シム31Bを交換可能に巻き付けることが出来る場合は、基板Sの厚さStやギャップGの寸法の変更に応じて、最適な厚さのシム31Bに貼り替えることができる。
【0163】
さて、上記の露光処理が連続的に行われると、照明光に照明された保持部本体22には熱膨張が生じる。保持部本体22の径方向の熱膨張については、保持部本体22を外周側から保持するホルダ23が金属材で形成されて線膨張係数が保持部本体22の線膨張係数よりも大きく熱膨張が許容されて保持部本体22を拘束しないため、保持部本体22に対して大きな荷重が加わることを回避できる。また、このときには、保持部本体22とホルダ23とが離間する方向に熱膨張することになるが、接着剤23aが弾性接着性能を備えているため、ホルダ23による保持部本体22の保持が緩むことも防止される。
【0164】
なお、ホルダ23の線膨張係数が保持部本体22の線膨張係数よりも小さい場合には、ホルダ23が保持部本体22を内周側から保持する構成を選択することが好ましいが、外周側から保持する構成であっても、上記接着剤23aが弾性変形することで、熱膨張時に保持部本体22に加わる荷重が緩和される。
【0165】
また、保持部本体22が回転軸線AX1方向に熱膨張した際には、板バネ24がスペーサ24Aで固定されている箇所を基点として、スペーサ24Bで固定されている箇所が転動体25に向かう方向に弾性変形する。このように、保持部本体22の熱膨張が板バネ24の弾性変形により許容されるため、保持部本体22に回転軸線AX1方向の大きな荷重が加わることが回避される。
【0166】
以上説明したように、本実施形態では、径方向については保持部本体22とホルダ23との間に弾性接着性能を備える接着剤23aを介在させ、回転軸線AX1方向については、板バネ24が弾性変形することにより、温度変化で生じた熱膨張が許容される。そのため、本実施形態では、熱膨張に伴って保持部本体22に加わる荷重が緩和されるため、加わった荷重で保持部本体22に歪み等が生じて、基板Sへのパターン形成に悪影響が及ぶことを抑制できる。
【0167】
図19に示したデバイス製造システムSYSでは、処理装置U3として上述した基板処理装置300を用いることができるため、温度変化による基板Sへのパターン形成に及ぶ悪影響を低減できるため、高精度にパターンが形成されたデバイスを製造することが可能になる。
【0168】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0169】
例えば、上記実施形態では、保持部本体22の外周面にパターンを有するシート材のマスクMを保持する構成としたが、これに限定されるものではなく、保持部本体22(透明円筒材料)の外周面に直接マスクパターンを形成する構成であってもよい。
また、保持部本体22の外周面ではなく、保持部本体22の内周面でマスクMを保持させる構成としてもよい。さらに、保持部本体22を円筒状ではなく円柱状とし、外周面に保持されたマスクMに対して照明部10が外周側から照明光を照射する構成であってもよい。
【0170】
また、上記実施形態では、転動体25と圧胴体30とが連れ回る(摩擦接触により回転する)ことで保持部本体22(マスクM)が回転する構成としたが、これに限定されるものではなく、モータ等の駆動装置により保持部本体22(マスクM)が独立して回転する構成であっても本発明を適用可能である。
その場合、転動体25の圧胴設置部25aは省略され、両側の転動体25は露光装置の本体に設置される内筒21にエアベアリング26を介して回転可能に軸支されると共に、モータの回転子等と結合される。モータの回転駆動力は、転動体25、板バネ24、ホルダ23を介して、保持部本体22(マスクM)に伝えられる。
このような構成の場合であっても、回転軸線AX1方向については、板バネ24が弾性変形することにより、温度変化で生じる保持部本体22(マスクM)の熱膨張が許容され、保持部本体22に不要な応力が発生することが緩和され、保持部本体22に歪み等が生じることを抑制できる。