特許第6304423号(P6304423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

<>
  • 特許6304423-基板処理装置 図000002
  • 特許6304423-基板処理装置 図000003
  • 特許6304423-基板処理装置 図000004
  • 特許6304423-基板処理装置 図000005
  • 特許6304423-基板処理装置 図000006
  • 特許6304423-基板処理装置 図000007
  • 特許6304423-基板処理装置 図000008
  • 特許6304423-基板処理装置 図000009
  • 特許6304423-基板処理装置 図000010
  • 特許6304423-基板処理装置 図000011
  • 特許6304423-基板処理装置 図000012
  • 特許6304423-基板処理装置 図000013
  • 特許6304423-基板処理装置 図000014
  • 特許6304423-基板処理装置 図000015
  • 特許6304423-基板処理装置 図000016
  • 特許6304423-基板処理装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304423
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/24 20060101AFI20180326BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20180326BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G03F7/24 Z
   H01L21/68 A
   B65G49/06
   H01L21/68 N
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-74303(P2017-74303)
(22)【出願日】2017年4月4日
(62)【分割の表示】特願2014-515508(P2014-515508)の分割
【原出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2017-126084(P2017-126084A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/648,956
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 弘樹
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−019037(JP,U)
【文献】 特開2011−033907(JP,A)
【文献】 特開2010−141035(JP,A)
【文献】 特開2007−249169(JP,A)
【文献】 特開2008−235470(JP,A)
【文献】 特開2011−221538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/30、
21/027、
21/46、
21/67、
21/673、
21/677、
21/68、
21/683、
G03F 7/20−7/24、
9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺の基板上に電子回路のパターンを転写する基板処理装置であって、
第1の軸線の回りに回転可能な転動体の円周面の一部で前記基板を支持して前記長尺の方向に搬送する基板搬送機構と、
第2の軸線の回りに回転可能な円筒マスクの複数を、前記第2の軸線が前記第1の軸線と平行になるように、前記基板の長尺の方向と交差する幅方向に並べて保持すると共に、前記複数の円筒マスクの各々の外周面に形成されたマスクパターンと前記転動体で支持される前記基板の表面とを所定の間隔に設定するマスク保持機構と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記円筒マスクを前記第2の軸線の回りに回転可能に保持した状態で、前記転動体に支持された前記基板との間に気体を供給する気体供給部を備える、
基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記気体供給部は、気体を噴出する部分に多孔質部材が用いられる、
基板処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、円筒部を有し、
前記円筒マスクは、前記円筒部に対して回転可能に保持される、
基板処理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記複数の円筒マスクの各々のマスクパターンが前記基板上に転写された際に、前記マスクパターンが前記基板の前記幅方向に接続されるように前記複数の円筒マスクを保持する、
基板処理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記複数の円筒マスクの各々のマスクパターンが前記基板上に転写された際に、前記マスクパターンの前記基板の前記幅方向の一部が互いに重なった状態で前記基板の幅方向に接続されるように前記複数の円筒マスクを保持する、
基板処理装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記複数の円筒マスクの各々の前記第2の軸線が前記基板の幅方向に千鳥状に配置されるように前記複数の円筒マスクを保持する、
基板処理装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記複数の円筒マスクの各々の前記第2の軸線が、前記転動体の前記第1の軸線と垂直な面内でみたとき、前記第1の軸線を中心とした同心円上に配置されるように、前記複数の円筒マスクを保持する、
基板処理装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記円筒マスクは透過型マスクであり、
前記マスク保持機構は、前記円筒マスクのパターンを内側から照明する照明装置を保持する、
基板処理装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記マスク保持機構は、前記円筒マスクを前記第2の軸線の方向と平行な方向に移動させる駆動装置を備える、
基板処理装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記円筒マスクの外周面に形成されたマスクパターンと前記転動体で支持される前記基板の表面とを所定の間隔に設定する為に、前記転動体の前記第1の軸線と前記円筒マスクの前記第2の軸線との間隔を調整する可動機構を、
さらに備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
本願は、2012年5月18日に出願された米国特許仮出願第61/648,956号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等の大画面表示素子においては、平面状のガラス基板上にITO等の透明電極やSi等の半導体物質を堆積した上に金属材料を蒸着し、フォトレジストを塗布して回路パターンを転写し、転写後にフォトレジストを現像後、エッチングすることで回路パターン等を形成している。ところが、表示素子の大画面化に伴ってガラス基板が大型化するため、基板搬送も困難になってきている。
そこで、可撓性を有する基板(例えば、ポリイミド、PET、金属箔等のフィルム部材など)上に表示素子を形成するロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)と呼ばれる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、回転可能な円筒状のマスクの外周部に近接して、送りローラに巻き付けて走行させられる可撓性の長尺シート(基板)を配置し、マスクのパターンを連続的に基板に露光する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/129819号
【特許文献2】実開昭60−019037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
回転マスクの周速度と基板の送り速度(周速度)とを所定の比率(例えば、1:1)で同期移動させる機構としては、例えば歯車を用いて回転力を伝達することが考えられるが、この場合、歯車の噛合に起因する振動、摩耗等が生じて高精度に速度の安定性を保って同期駆動させることは困難であり、ひいては基板に対してマスクのパターンを転写する際の精度(転写忠実度)に悪影響を与える可能性がある。
例えば、直径30cmの回転マスクの外周に、全周長の90%程度に渡って転写すべきマスクパターンが形成されている場合、マスクパターンの周方向の寸法は約85cm(30cm×π×0.9)となる。回転マスクのパターン面(外周面)の周速度を5cm/秒とし、転写すべきパターンの最少サイズ(線幅等)を5μmとすると、マスクパターン全体の転写時間は概ね17秒(85/5)になり、この間の周速度の安定性(等速性)が重要となる。
仮に、周速度の絶対値が平均して0.05%変動したとすると、1秒当たり、2.5μmの送り誤差が発生し、これが転写時間の間続くとすると、マスクパターンと基板との相対送り誤差は、最大で約43μm程度になり、これは最少パターンサイズ(5μm)を考慮した重ね合せ露光等を考える場合に許容し得ないものである。
また、回転マスクの振動的な速度ムラ(ワウ・フラッター)が±0.05%である場合には、±2.5μm/秒の相対送り誤差が局所的に生じ得るため、最少パターンサイズ(5μm)の転写忠実度を低下させることになる。
【0006】
本発明の態様は、マスクと基板とを高精度に同期駆動可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従えば、可撓性を有する長尺の基板上に電子回路のパターンを転写する基板処理装置であって、第1の軸線の回りに回転可能な転動体の円周面の一部で前記基板を支持して前記長尺の方向に搬送する基板搬送機構と、第2の軸線の回りに回転可能な円筒マスクの複数を、前記第2の軸線が前記第1の軸線と平行になるように、前記基板の長尺の方向と交差する幅方向に並べて保持すると共に、前記複数の円筒マスクの各々の外周面に形成されたマスクパターンと前記転動体で支持される前記基板の表面とを所定の間隔に設定するマスク保持機構と、を備える基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様では、マスクと基板とが高精度に同期して駆動可能になり、マスクのパターンを基板に高精度に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る基板処理装置の概略的な外観斜視図。
図2】基板処理装置におけるマスクユニットの概略的な外観斜視図。
図3】マスクユニットを、回転軸線を含む平面で破断した断面図。
図4図3におけるA部を拡大した図。
図5】回転マスクの回転を制御する駆動制御部内に設けられるサーボ系を示す図。
図6】回転マスクの展開図。
図7】回転ドラムに巻き付く基板の展開図。
図8】磁気歯車部の動作を説明する図。
図9】第2実施形態に係る基板処理装置の概略的な外観斜視図。
図10】固定プレート及びマスクユニットの部分拡大図。
図11】マスクユニットを回転軸線AX1B及び回転軸線AX2を含む平面で断面した図。
図12】第3実施形態に係る磁気歯車伝達機構の概略構成図。
図13】第3実施形態に係る磁気歯車伝達機構の概略構成図。
図14】デバイス製造システムの構成を示す図。
図15】磁気歯車伝達機構の別形態を示す図。
図16図15の磁気歯車伝達機構を利用した基板処理装置の別形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の基板処理装置の実施の形態を、図1から図14を参照して説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態では、複数のマスクのパターンが基板上で重ね合わされて転写される場合について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置100の概略的な外観斜視図、図2は基板処理装置100におけるマスクユニットMUの概略的な外観斜視図、図3はマスクユニットMUを、回転軸線AX1A(AX1B)(第1の回転軸)を含む平面で破断した断面図、図4図3におけるA部を拡大した図である。
【0012】
基板処理装置100は、所定半径で円筒面状に湾曲したマスクMのパターンを、可撓性を有する帯状(長尺)の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sに対して露光処理を行うものであって、照明部10(図1では不図示、図3参照)、マスクユニットMU1〜MU5、基板保持ユニットSU、磁気歯車伝達機構GD、制御部(不図示)を主体に構成されている。なお、以下の説明では、マスクユニットMU1〜MU5について、適宜マスクユニットMUと総称する。
【0013】
なお、本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、マスクユニットMU1〜MU5の回転軸線AX1A、AX1B、及び基板保持ユニットSUの回転軸線AX2と平行な方向をY方向とし、Z方向及びY方向と直交する方向をX方向として説明する。
【0014】
照明部10は、マスクユニットMUにおける回転マスク20の照明領域に向けて照明光を照射するものであって、蛍光灯と同様に直管型で放射状に露光用の照明光を発光するものや、円筒状の石英の棒の両端から照明光を導入し裏面側に拡散部材を設けてあるもの、或いは波長が400nm以下の紫外線域の光を発するLED等をY方向に複数個並べたものが用いられ、回転マスク20を支持する内筒21の内部空間に収容されている。
照明光の光源としては、例えばランプ光源から射出される輝線(g線、h線、i線)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、半導体レーザやLED等の固体光源が使われる。
【0015】
マスクユニットMU1〜MU5のうち、マスクユニットMU1〜MU3は回転軸線AX1Aに沿って順次配列されている。マスクユニットMU1〜MU5のうち、マスクユニットMU4〜MU5は回転軸線AX1Bに沿って順次配列されている。また、マスクユニットMU4は、Y方向に関してマスクユニットMU1、MU2の中間位置に配置され、マスクユニットMU5は、Y方向に関してマスクユニットMU2、MU3の中間位置に配置されている。
回転軸線AX1A、AX1Bは、回転軸線AX2周り方向に一定の角度間隔、例えば90°をあけて配置されている。
【0016】
各マスクユニットMU1〜MU5は、図2及び図3に示すように、回転マスク20、内筒21、エアパッド(マスク保持部)22、ホルダ23、駆動部MT、フランジ部25を備えている。円筒状の回転マスク20の両端部には、円環状のホルダ23が固着されて、一体化された状態で設けられている。この回転マスク20とホルダ23の内側には、回転軸線AX1A(又はAX1B)方向に、円筒状の内筒21が挿入される。
【0017】
回転マスク20は、照明光を透過可能な円筒状の石英等で形成されており、その外周面(周面)20aに所定のパターンが形成されている。また、回転マスク20の内周面と対向する内筒21の外周位置に設けられた流体軸受であるエアパッド22(気体供給部、詳細は後述)によって、回転マスク20は内筒21に対して、回転軸線AX1A(又はAX1B)方向、及び回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向に非接触(或いは低摩擦状態)で移動自在に支持されている。
ホルダ23は、金属材で円環状に形成され、図4に示すように、回転マスク20のY方向の端部外周面及び内周面を挟んで支持する。
【0018】
内筒21は、図示しないベース部(露光装置のボディ構造体)に設置されており、回転軸線AX1A(又はAX1B)方向の両端部にエアベアリング26を介して上記フランジ部25を回転自在に支持する。
フランジ部25の外周面に設けられた多孔質材料によるエアパッドAPは、回転マスク20の外周面20aのパターン領域と、図1に示した基板Sの被処理面とが所定の間隔で配置されるように、回転マスク20と内筒21とを、回転ドラム30に巻き付けられる基板Sに対して支持するものである。リング状のエアパッドAPは、その外周面と基板Sとの間に気体としてのエアを供給(噴出)する多孔質パッドで形成されている為、基板Sの表面と接触することなく、内筒21と回転マスク20を支持できる。
その多孔質エアパッドAPは、内筒21の回転軸線AX1A(又はAX1B)方向の両側部分に設けられたフランジ部25の各外周面に、回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向の全周にわたって、あるいは回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【0019】
駆動部MTは、ホルダ23を介して回転マスク20を回転軸線AX1A(又はAX1B)の延長方向(軸方向、Y方向)、及び回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向の各々に推力を与えて駆動するものであって、回転マスク20の回転軸線AX1A(又はAX1B)方向の両側に一対で設けられている。
各駆動部MTは、回転軸線AX1A(又はAX1B)の延長方向(軸方向)及び回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向の2軸方向について独立に推力を付与する、例えば、ボイスコイル型のモータで構成されており、発磁体(永久磁石)MGと、コイル体CUとを備えている。
なお、回転軸線AX1A(又はAX1B)の延長方向(軸方向)の推力については、一対の駆動部MTのうち一方のみが付与可能であればよい。
【0020】
発磁体MGは、ホルダ23のY方向の外側の面に、回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向の全周にわたり、且つ回転軸線AX1A(AX1B)方向に突出して設けられている。コイル体CUは、内筒21の外周面に対して隙間をもった状態でリング状の連結部24によってフランジ部25に一体的に固定されており、回転軸線AX1A(AX1B)を中心とする径方向に関して発磁体MGを挟み込むコ字状の断面形状を有している。
図2に示したリング状の連結部24の内部には、図4に詳細に示すように、磁気歯車伝達機構GDを構成する一方の磁気歯車部GM1の磁石列が周方向に一定ピッチで配置される。コイル体CUへの通電は、駆動制御部DCによって制御される。なお、コイル体CUは、必ずしも全周にわたって設ける必要はなく、周方向に所定間隔をあけて複数設ける構成(例えば、120°間隔で3箇所設ける構成)であってもよい。
また、コイル体CUは、フランジ部25(連結部24)と回転マスク20(及びホルダ23)との間に、回転軸線AX1A(又はAX1B)周り方向の推力(回転トルク)を与える為の回転推力用のコイル群と、回転軸線AX1Aの延長方向(軸方向、Y方向)の直線駆動力を与える並進推力用のコイル群とで構成され、各コイル群に通電する電流の大きさを駆動制御部DCによって個別に調整することで、回転推力と並進推力を独立に制御することができる。
【0021】
以上のようなマスクユニットMUの構成において、内筒21は露光装置本体に対して固定的に設置され、フランジ部25(連結部24)と回転マスク20とは共に内筒21に対して回転軸線AX1A(AX1B)を中心として非接触(低摩擦)状態で回転自在に支持される。
また、フランジ部25は、内筒21に対して回転軸線AX1A(AX1B)の延長方向(軸方向、Y方向)には微動しないように、ベアリング26によって拘束されている。その為、駆動部MTによる並進推力によって、回転マスク20は、両側のフランジ部25の間で、回転軸線AX1A(AX1B)の延長方向(軸方向、Y方向)に微動することになる。
さらに、リング状の連結部24の外周面に沿って設けられた磁気歯車部GM1を介して外部から付与される回転トルクによって、フランジ部25(及びコイル体CU)が内筒21の周りを所定の回転速度で転動(回転)する。
その際、同時に、コイル体CUのうちの回転推力用のコイル群に所定の電流を供給すると、回転マスク20もフランジ部25(連結部24)と同期(同調)した速度で回転する。
その回転推力用のコイル群に流す電流の大きさと向きを駆動制御部DCによってサーボ制御することにより、磁気歯車伝達機構GDを介して回動(回転)するフランジ部25(及び連結部24とコイル体CU)に対して回転マスク20の回転速度に差を与えたり、相対回転の方向を逆にしたり、或いは、回転マスク20を静止状態に維持したりすることができる。
【0022】
そのようなサーボ制御のために、本実施形態では、図5に示すようなサーボ系を設ける。図5は、図4の部分破断面をYZ面内で見た図であり、サーボ制御の為に、回転マスク20の外周面に、エンコーダ計測用の格子スケールGS2を全周にわたって形成し、その格子スケールGS2を読み取る為に、露光装置本体に設置されるエンコーダヘッドEH2を設ける。
駆動制御部DC内には、エンコーダヘッドEH2からの2相信号を入力して回転マスク20(格子スケールGS2)の回転角度位置を逐次計測するカウンター回路201と、カウンター回路201からの計測値を入力して、回転マスク20の回転速度と、指令情報200に基づく回転速度指令値との差分が所定値(記憶部REFに保持された基準値)から変化した場合に、その偏差信号を作り出す演算回路202と、その偏差信号をコイル体CU内の回転推力用のコイル群に駆動信号として与えるドライブ回路203と、コイル体CU内の並進推力用のコイル群に駆動信号を与えるドライブ回路204とが設けられている。
図5のサーボ系では、磁気歯車伝達機構GDを介して、フランジ部25(連結部24)が一定の回転速度で回っている場合は、それを基準として回転マスク20を同期回転させることができる。但し、ここでの同期回転とは、必ずしも同一速度で回転することに限定されるものではなく、フランジ部25の回転速度と回転マスク20の回転速度とが所定の比率を維持する場合も含むものである。
【0023】
また、図5のサーボ系において、露光時に重要なのは回転マスク20のマスクパターン面(外周面20a)の周速度であり、その周速度が予め定められた基準速度に対して偏差が生じたときに、ドライブ回路203によって、コイル体CU内の回転推力用のコイル群に駆動信号を与えるようにしても良い。
このようにすると、フランジ部25の回転速度が設定速度から異なっていたり、速度ムラが生じたりしても、そのような誤差要因に関わらず、回転マスク20を一定速度で安定に回転させることができる。さらに、フランジ部25の回転速度に関わらず、回転マスク20を設定された任意の速度で回転、或いは静止させることが可能である。
尚、格子スケールGS2を2次元格子として、エンコーダヘッドEH2もY方向(回転軸線AX1A,AX1Bの延長方向(軸方向))の変位を計測可能なものにすると、回転マスク20のY方向の位置変位を、露光装置本体(エンコーダヘッドEH2)を基準として高精度に計測でき、ドライブ回路204を介してコイル体CU内の並進推力用のコイル群に駆動信号を与えるサーボ系を簡単に構成することができる。
【0024】
一方、基板保持ユニットSUは、図1に示すように、回転ドラム(転動体)30を備えている。
回転ドラム30は、Y軸と平行で、回転軸線AX1Bの−Z側、且つ回転軸線AX1Aの+X側に設定された回転軸線AX2回りに回転する円柱状に形成されている。回転ドラム30の外周面は、基板Sを接触保持する基板保持面31とされている。回転ドラム30のY方向両端面には、回転ドラム30よりも小径、且つ同軸で突出する突出部32が設けられている。
また、本実施形態では、図1に示すように、回転ドラム30を回転駆動する駆動装置33が設けられている。駆動装置33は、上述した駆動制御部DCによって制御される。
【0025】
図6は、回転マスク20の展開図である。図6中の符号Xsは、回転マスク20の移動方向(回転方向)を示す。
図6(a)に示すように、マスクユニットMU1〜MU3における照明部10は、Y方向に関して、回転マスク20のパターン領域MAにわたる範囲を照明する照明領域IR1を備えている。同様に、図6(b)に示すように、マスクユニットMU4〜MU5における照明部10は、Y方向に関して、回転マスク20のパターン形成領域MAにわたる範囲を照明する照明領域IR2を備えている。
各照明領域IR1、IR2は、Y方向の両端部に三角部を備えた台形状に形成されている。照明領域IR1、IR2は、上記三角部の向き(すなわち、一対の平行線のうち、短辺の位置)がX方向に関して互いに逆向きに形成されている。
【0026】
本実施形態において、回転マスク20のパターン形成領域MAは、マスク保持部22の回転に伴って符号Xsの方向に移動し、照明領域IR1(照明領域IR2)を通過する。図7は、回転ドラム30に巻き付けられる基板Sの展開図である。図7中の符号Xsは、回転ドラム30の移動方向(回転方向)を示す。
図7に示すように、マスクユニットMU1〜MU5は、回転マスク20を透過したパターンからの照明光(露光光)で照明される転写領域PA1〜PA5が、Y方向に関して隣り合う領域と、端部(台形の三角部分)が重なるように千鳥状に配置されている。
そのため、例えば、回転ドラム30の回転によって転写領域PA1を通過する基板S上の領域は、回転ドラム30の回転によって転写領域PA2を通過する基板S上の領域と一部重複する。転写領域PA1と転写領域PA2は、周方向で重複する領域での露光量が、重複しない領域の露光量と実質的に同じになるように、それぞれの形状等が設定されている。
【0027】
磁気歯車伝達機構GDは、回転ドラム30の回転力を回転マスク20(連結部24)の回転力として非接触で(磁力を用いて)伝達するものであって、ベルト駆動機構VD、磁気歯車部GM1、GM2を備えている。図1に示すように、ベルト駆動機構VDは、回転ドラム30の突出部32及びプーリPL1、PL2にベルトVLが張設(張力を持った状態に設置)された構成となっている。
プーリPL1は、マスクユニットMU1〜MU3の−X側に、Y方向に延び軸周りに回転自在に配置されたシャフトST1の−Y側の端部に一体的に設けられている。プーリPL2は、マスクユニットMU4〜MU5の−X側に、Y方向に延び軸周りに回転自在に配置されたシャフトST2の−Y側の端部に一体的に設けられている。
【0028】
シャフトST1には、図2に示すように、リング状の連結部24の磁気歯車部GM1と対向する位置に円板状の磁気歯車部GM2が磁気歯車部GM1と隙間をあけて配置されている。
磁気歯車部GM2は、外周部に、図8に示すように、シャフトST1(シャフトST2)周りにS極S2とN極N2とが交互に所定ピッチ、所定周長で複数(図8ではそれぞれ2つずつ)配置された磁気パターン(永久磁石)を備えている。磁気歯車部GM1は、回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)周りにS極S1とN極N1が交互に、周面において磁気歯車部GM2と同一ピッチ、同一周長で複数(図8ではそれぞれ8つずつ)配置された磁気パターン(永久磁石)を備えている。
【0029】
上記回転ドラム30の突出部32、プーリPL1、PL2、磁気歯車部GM1、GM2の各外径は、回転マスク20(連結部24)の周速度と回転ドラム30の周速度(基板Sの搬送速度)とがほぼ同一となるように設定されている。
【0030】
上記構成の基板処理装置100のうち、磁気歯車伝達機構GDの動作について説明する。駆動装置33の駆動により回転ドラム30が回転軸線AX2(第2の回転軸)周りに回転すると、ベルト駆動機構VDにより、プーリPL1、PL2が突出部32との外径比に応じた速度でそれぞれ回転する。
【0031】
プーリPL1、PL2の回転は、シャフトST1、ST2を介して伝達され各磁気歯車部GM2が回転する。このとき、磁気歯車部GM2において、例えば、図8(a)に示すように、磁気歯車部GM1とS極S2が対向している場合には、互いに引き合う方向の磁力が作用することで磁気歯車部GM1のN極N1が対向している。
そして、磁気歯車部GM2が、例えば、図8中で時計回り方向に回転すると、図8(b)に示すように、N極N1に対して引き合う方向の磁力を作用させるS極S2が遠ざかるとともに、N極N1に対して反発する方向の磁力を作用させるN極N2が近づくことにより、これらの磁力が磁気歯車部GM1のN極N1に牽引力として作用し、磁気歯車部GM1は、磁気歯車部GM2との外径比(周長比)に応じた速度で回転する。
従って、回転マスク20は、発磁体MGとコイル体CUによる駆動部MTによって付与される回転駆動力と共に、磁気歯車伝達機構GDによって非接触で伝達された回転ドラム30の回転駆動力で、回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)周りに同期回転する。
【0032】
このように、駆動装置33の駆動により回転ドラム30が回転軸線AX2周りに回転すると、磁気歯車伝達機構GDによりマスクユニットMU1〜MU3における回転マスク20が回転軸線AX1A周りに回転するとともに、マスクユニットMU4〜MU5における回転マスク20が回転軸線AX1B周りに回転する。
そして、照明部10から照明光が照射されると、照明領域IR1(照明領域IR2)において内周側から回転マスク20のパターンを照明する。マスクユニットMU1〜MU3における各パターンからの露光光は、基板S上の転写領域PA1〜PA5にそれぞれ照射される。
【0033】
従って、マスクユニットMU1〜MU5における回転マスク20のそれぞれのパターンは、基板S上で幅方向に接続されて転写される。そして、回転マスク20の連続的な回転と、回転ドラム30の連続的な回転による基板Sの連続的な搬送により、回転マスク20のパターンは基板Sに繰り返し転写される。
【0034】
上記の露光処理中、あるいは露光処理前、あるいは露光処理後に、回転マスク20の回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)周り方向の位置、及び回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)方向の位置に関する合わせ込みは、例えば、回転マスク20のマスクマークと基板Sの基板マークとを計測した結果に基づいて、駆動制御部DCの通電制御により駆動部MTの発磁体MGを介して、ホルダ23及び回転マスク20を回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)周り方向、あるいは回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)方向に微動させることにより行われる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、回転ドラム30の回転力を非接触式の磁気歯車伝達機構GDにより、非接触の駆動部MTを介して回転マスク20の回転力として伝達するため、歯車等の接触式で回転力を伝達する際のように振動や摩耗、騒音、粉塵等を生じさせることなく、高精度の同期駆動が可能になる。特に、本実施形態では、磁気歯車部GM1、GM2を介して回転力を伝達するため、注油等も不要になり作業効率の向上及びクリーン化にも寄与できる。
また、本実施形態では、エアパッド22によって回転マスク20を非接触で回転可能に保持するため、回転マスク20を安定して保持することが可能になる。
【0036】
さらに、本実施形態では、複数のマスクユニットMU1〜MU5を配置し、各マスクユニットMU1〜MU5で設定されるパターンを基板S上で幅方向に接続しているため、大面積のパターンを形成することが可能なる。
また、本実施形態では、パターンを基板S上で幅方向に接続する際には、各パターンの一部が互いに重なった状態で接続させているため、パターンの位置が幅方向に誤差をもって転写された場合でも、非重複部に付与される露光エネルギー量と大きな差が生じることを防止できる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、基板処理装置100の第2実施形態について、図9から図11を参照して説明する。上記第1実施形態では、回転ドラム30の回転力をベルト駆動機構VDを介して回転マスク20の回転力として伝達する構成を例示したが、本実施形態では、ベルト駆動機構VDを用いない構成について説明する。
これらの図において、図1から図8に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
図9に示す基板処理装置100は、回転軸線AX1Aに沿って配置されたマスクユニットMU1〜MU2、回転軸線AX1Bに沿って配置されたマスクユニットMU3、基板保持ユニットSU、磁気歯車伝達機構GD(図11参照)を備えている。
本実施形態では、3つのマスクユニットMU1〜MU3が設けられているが、第1実施形態と同様に、各マスクユニットMU1〜MU3のパターンが基板Sの幅方向(Y方向)で端部を重ね合わせた状態で接続されるように基板S上の転写領域が設定されているが、その説明については省略する。
【0039】
回転軸線AX1Aは、回転軸線AX2よりも−X側で、回転軸線AX2周り方向について水平方向(XY面)に対して+Z側に角度θ1となる位置に配置され、回転軸線AX1Bは、回転軸線AX2よりも+X側で、回転軸線AX2周り方向について水平方向(XY面)に対して+Z側に角度θ2となる位置に配置されている。
角度θ1、θ2は、一例として45度に設定されるが、回転ドラム30に巻き付けられる基板Sの巻付け角(基板Sが回転ドラム30の外周面に密着している角度)をω°とすると、180°−(θ1+θ2)<ω°の関係になっていれば良い。
【0040】
マスクユニットMU1〜MU2は、回転ドラム30の−X側で回転軸線AX1Aと平行な軸線周りに角度θ1傾いて配置された固定プレート15Aに、回転軸線AX1Aと回転軸線AX2の両方に直交する線分の方向(以下、単に軸間方向と称する)に離間・接近自在(移動自在)に設けられている。
同様に、マスクユニットMU3は、回転ドラム30の+X側で回転軸線AX1Bと平行な軸線周りに角度θ2傾いて配置された固定プレート15Bに、回転軸線AX1Bと回転軸線AX2との軸間方向に離間・接近自在(移動自在)に設けられている。
なお、固定プレート15Aに設けられたマスクユニットMU1〜MU2と、固定プレート15Bに設けられたマスクユニットMU3とは同様の構成であるため、以下の説明では固定プレート15Bに設けられたマスクユニットMU3について代表的に説明する。
【0041】
図10は、固定プレート15B及びマスクユニットMU3の部分拡大図である。
図10に示すように、固定プレート15Bには、マスクユニットMU3をフランジ部27において、Y方向及び上記軸間方向に移動自在に支持するステージ部16が設けられている。
ステージ部16は、Y方向に沿って設けられたYガイド28Yに沿ってY方向に移動する。ステージ部16には軸間方向に沿って設けられた軸間ガイド28Jが設けられている。マスクユニットMU3は、フランジ部27に設けられたスライド部29が軸間ガイド28Jにガイドされて軸間方向に移動する。
【0042】
フランジ部27の側端に設けられるスライド部29の近傍には、軸間方向に沿ってスリット27aがスライド部29の長さ以上の範囲にわたって形成されている。スリット27aとスライド部29との間の肉厚は、マスクユニットMU3の自重が加わった際にも弾性変形可能な厚さに設定されている。
【0043】
図11は、マスクユニットMU3を回転軸線AX1B及び回転軸線AX2を含む平面で切断した断面図である。図11に示すように、マスクユニットMU3は、−Y側に位置するホルダ23とフランジ部25との間に設けられたスラストベアリングTBと、+Y側に位置するホルダ23とフランジ部25との間に設けられた超音波モータ17とを備えている。
【0044】
超音波モータ17は、回転マスク20及び磁気歯車部GM1の回転軸線AX1B周りの位置を調整するものであって、フランジ部25に固定されたリング状のステータ17Aと、ホルダ23に連結されたリング状のロータ17Bとで構成されている。
ロータ17Bは、ホルダ23に対して回転軸線AX1B周りには回転しないが、回転軸線AX1Bの延長方向(軸方向)には微動可能に結合されており、予圧バネ18によってステータ17A側に所定の付勢力で接触している。
【0045】
フランジ部27は、内筒21の両端部に固定されて設けられており、回転ドラム30と対向する面には、回転ドラム30の基板保持面31の半径に基板Sの厚さを加えた値の半径を有する円弧状に切り欠かれた保持部34が設けられている。保持部34は、図3又は図4で示したエアパッドAPと同様に、円弧状の表面から径方向に向けてエアを噴出する多孔質パッドで形成されている。
【0046】
回転ドラム30内には、Y方向で磁気歯車部GM1と対向する位置に、磁気歯車部GM2が基板保持面31と面一に全周にわたって埋設されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
上記構成の基板処理装置100においては、ステージ部16に支持されマスクユニットMU3の自重のうち角度θ2に応じた分力の荷重が、回転ドラム30の表面に巻き付けられた基板Sを介して回転ドラム30側に予圧として付与された状態で、マスクユニットMU3が支持される。
このとき、保持部34からはエアが噴出されるため、マスクユニットMU3は、回転マスク20と基板Sとの間に所定量のギャップ(プロキシミティ露光時のギャップ)を形成した状態で、非接触で基板S上に支持される。
【0048】
また、スライド部29及び軸間ガイド28Jの製造誤差あるいは設置誤差等により、保持部34が回転ドラム30(基板S)に支持されたときに、保持部34と回転ドラム30(基板S)の位置がずれていた場合には、保持部34と回転ドラム30とが偏った状態で支持されることがある。
この場合には、スリット27aとスライド部29との間の薄肉部が板バネとして機能し、偏荷重が解消される方向に弾性変形することにより、保持部34を回転ドラム30(基板S)の表面に所定の位置関係で支持させることができる。
【0049】
ここで、マスクユニットMU1、MU3における保持部34(フランジ部27)の一方が基板Sよりも外側の回転ドラム30上に位置する場合には、保持部34の他方との間で、基板Sの厚み分の段差が生じて回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)と回転軸線AX2とが平行でなくなる。
この場合には、この外側に位置する保持部34と対向する回転ドラム30の基板保持面31に基板Sと同一厚さのシムを貼設し、シムを介して回転ドラム30に支持させることにより、回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)と回転軸線AX2との平行状態を維持できる。
【0050】
そして、回転ドラム30が回転軸線AX2周りに回転すると、磁気歯車部GM2が回転するのに伴って磁力による牽引力で磁気歯車部GM1に回転力が非接触で伝達される。
磁気歯車部GM1に伝達された回転力は、フランジ部25、超音波モータ17、ホルダ23、スラストベアリングTB、を介して回転マスク20に伝達され、マスクユニットMU1〜MU2における回転マスク20が回転軸線AX1A周りに同期して回転するとともに、マスクユニットMU3における回転マスク20も回転軸線AX1B周りに同期して回転する。
【0051】
この構成において、基板Sに対して回転マスク20の回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)周り方向の位置(回転方向の位相)を調整するには、超音波モータ17のステータ17Aに周回方向の振動進行波を与えて、ロータ17Bをステータ17Aに対して所定量回転駆動させれば良い。
また、基板Sに対して回転マスク20の回転軸線AX1A(回転軸線AX1B)方向の位置調整は、ステージ部16を利用して、マスクユニットMU1〜MU3全体をY方向にシフトさせれば良い。
【0052】
また、保持部34の半径(曲率)は、予め設定された基板Sの厚さに応じて設定されているため、基板Sの厚さが変更された場合には、基板Sと保持部34との間のギャップ量は、保持部34の端部間の距離(すなわち保持部34を形成する円弧部の弦の長さ)に応じて、周方向で偏差が生じる。
そのため、保持部34の端部間の距離は、基板Sの厚さの変化範囲、ギャップ量の許容偏差に応じて設定される。
例えば回転ドラム30の基板保持面31の半径を125mm、基板Sの厚さの変化範囲を100μm、ギャップ量の許容偏差を3μmとすると、幾何計算により基板保持面31の半径の1/2程度よりも保持部34の端部間の距離を小さくすることで、保持部34の半径を変更することなく基板Sの厚さ変更に対応可能であることが得られる。
【0053】
このように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、回転ドラム30に磁気歯車部GM2を設けているため、別途ベルト駆動機構等の装置を用いる必要がなくなり、装置の小型化・低価格化を図ることができる。
さらに、ベルト駆動機構で生じる誤差要因を排除できるため、回転マスク20と回転ドラム30とをより高精度に同期駆動することが可能になる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、基板処理装置100の第3実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
上記第1実施形態では、磁気歯車伝達機構GDにおけるベルト駆動機構VDによって回転ドラム30の回転力が回転マスク20の回転力として常時伝達される構成であったが、本実施形態では回転力の伝達を中止する伝達解放部を設ける構成について説明する。
この図において、図1から図8に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図12に示すように、本実施形態における磁気歯車伝達機構GDは、ベルト駆動機構VD、伝達解放部40を備えている。
ベルト駆動機構VDにおけるシャフトST1(ST2)には、シャフトST1(ST2)より大径の接触部41、接触部41よりも小径の軸部42が設けられている。接触部41は、軸受43を介してプーリPL1(PL2)の内周側を相対的に回転自在に支持している。軸部42には軸受44を介してプッシャー支持部45が設けられている。
【0056】
伝達解放部40は、クラッチ部46、プッシャー47、付勢バネ48を備えている。
クラッチ部46は、プーリPL1(PL2)の端壁部39に形成された貫通孔39aよりも小径で軸部42に挿入される筒部46aと、筒部46aの接触部41と対向する側の端部に設けられ、貫通孔39aよりも大径に形成された接触部46bと、筒部46aのプッシャー支持部45と対向する側の端部に設けられ、貫通孔39aよりも大径に形成された大径部46cとを備えている。
大径部46cには、プッシャー47と対向する位置に、外径側に向かうに従って、軸部42の長さ方向で漸次プッシャー47から離れる方向に傾斜するテーパ面49が形成されている。
【0057】
付勢バネ48は、大径部46cとプーリPL1(PL2)の端壁部39との間に設けられ、これらに互いに離れる方向の付勢力を付与するものである。
【0058】
プッシャー47は、軸部42を挟んで一対で設けられ、テーパ面49と対向する位置に球部47aを備えている。
また、各プッシャー47は、図12に示すように、軸部42に近接し球部47aがテーパ面49に係合する伝達位置と、図13に示すように、軸部42から離れ球部47aのテーパ面49に対する係合が解除される解放位置との間を移動する。
プッシャー47は、伝達位置に位置する場合には、クラッチ部46の接触部46bを付勢バネ48の付勢力に抗して接触部41に接触させる。
【0059】
上記構成の磁気歯車伝達機構GDにおいては、プッシャー47が伝達位置に移動して、図12に示すように、クラッチ部46の接触部46bが接触部41に接触している場合には、回転ドラム30の回転力によりベルトVLを介してプーリPL1(PL2)が回転すると、付勢バネ48の付勢に伴う摩擦力で大径部46cが回転するとともに、互いに接触する接触部46b、41間の摩擦力で接触部41が回転する。
これにより、シャフトST1(ST2)を介して磁気歯車部GM2が回転することにより、図2に示した磁気歯車部GM1を介して回転マスク20に回転ドラム30の回転力が伝達される。
【0060】
一方、プッシャー47が解放位置に移動して、図13に示すように、クラッチ部46の接触部46bが接触部41から離れている場合には、接触部46b、41が離れることでシャフトST及び磁気歯車部GM2は回転しない。従って、回転ドラム30の回転力は、回転マスク20に伝達されないことになる。
そのため、プッシャー47を伝達位置に位置決めした状態で、回転ドラム30の回転力を回転マスク20に伝達して上述した露光処理を実施させ、プッシャー47を解放位置に位置決めすることで、回転ドラム30と回転マスク20との間の回転力の伝達を中止することが可能になる。
【0061】
(デバイス製造システム)
次に、上記の基板処理装置100を備えたデバイス製造システムについて、図14を参照して説明する。
図14は、デバイス製造システム(フレキシブル・ディスプレー製造ライン)SYSの一部の構成を示す図である。ここでは、供給ロールFR1から引き出された可撓性の基板P(シート、フィルム、極薄ガラスシート等)が、順次、n台の処理装置U1,U2,U3,U4,U5,…Unを経て、回収ロールFR2に巻き上げられるまでの例を示している。
上位制御装置CONTは、製造ラインを構成する各処理装置U1〜Unを統括制御する。尚、ここでは、先の各実施形態で説明した基板Sを基板Pとする。
【0062】
図14において、直交座標系XYZは、基板Pの表面(又は裏面)がXZ面と垂直となるように設定され、基板Pの搬送方向(長尺方向)と直交する幅方向がY方向に設定されるものとする。なお、その基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングの為の微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
【0063】
供給ロールFR1に巻かれている基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1によって引き出されて処理装置U1に搬送されるが、基板PのY方向(幅方向)の中心はエッジポジションコントローラEPC1によって、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるようにサーボ制御される。
【0064】
処理装置U1は、印刷方式で基板Pの表面に感光性機能液(フォトレジスト、感光性シランカップリング材、UV硬化樹脂液等)を、基板Pの搬送方向(長尺方向)に関して連続的又は選択的に塗布する塗布装置である。
処理装置U1内には、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR2、この圧胴ローラDR2上で、基板Pの表面に感光性機能液を一様に塗布する為の塗布用ローラ等を含む塗布機構Gp1、基板Pに塗布された感光性機能液に含まれる溶剤または水分を急速に除去する為の乾燥機構Gp2等が設けられている。
【0065】
処理装置U2は、処理装置U1から搬送されてきた基板Pを所定温度(例えば、数10〜120℃程度)まで加熱して、表面に塗布された感光性機能層を安定にする為の加熱装置である。
処理装置U2内には、基板Pを折返し搬送する為の複数のローラとエア・ターン・バー、搬入されてきた基板Pを加熱する為の加熱チャンバー部HA1、加熱された基板Pの温度を、後工程(処理装置U3)の環境温度と揃うように下げる為の冷却チャンバー部HA2、ニップされた駆動ローラDR3等が設けられている。
【0066】
基板処理装置100としての処理装置U3は、処理装置U2から搬送されてきた基板P(基板S)の感光性機能層に対して、ディスプレー用の回路パターンや配線パターンに対応した紫外線のパターニング光を照射する露光装置である。
処理装置U3内には、基板PのY方向(幅方向)の中心を一定位置に制御するエッジポジションコントローラEPC、ニップされた駆動ローラDR4、基板Pを所定のテンションで部分的に巻き付けて、基板P上のパターン露光される部分を一様な円筒面状に支持する回転ドラムDR5(回転ドラム30)、及び、基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与える為の2組の駆動ローラDR6、DR7等が設けられている。
【0067】
さらに処理装置U3内には、透過型円筒マスクDM(マスクユニットMU)と、その円筒マスクDM内に設けられて、円筒マスクDMの外周面に形成されたマスクパターンを照明する照明機構IU(照明部10)と、回転ドラムDR5によって円筒面状に支持される基板Pの一部分に、円筒マスクDMのマスクパターンの一部分の像と基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出するアライメント顕微鏡AM1、AM2とが設けられている。
【0068】
処理装置U4は、処理装置U3から搬送されてきた基板Pの感光性機能層に対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行なうウェット処理装置である。処理装置U4内には、Z方向に階層化された3つの処理槽BT1、BT2、BT3と、基板Pを折り曲げて搬送する複数のローラと、ニップされた駆動ローラDR8等が設けられている。
【0069】
処理装置U5は、処理装置U4から搬送されてきた基板Pを暖めて、湿式プロセスで湿った基板Pの水分含有量を所定値に調整する加熱乾燥装置であるが、詳細は省略する。
その後、幾つかの処理装置を経て、一連のプロセスの最後の処理装置Unを通った基板Pは、ニップされた駆動ローラDR1を介して回収ロールFR2に巻き上げられる。その巻上げの際も、基板PのY方向(幅方向)の中心、或いはY方向の基板端が、Y方向にばらつかないように、エッジポジションコントローラEPC2によって、駆動ローラDR1と回収ロールFR2のY方向の相対位置が逐次補正制御される。
【0070】
上記のデバイス製造システムSYSでは、処理装置U3として上述した基板処理装置100が用いられているため、歯車等の接触式で回転力を伝達する際に振動や摩耗、騒音、粉塵等を生じさせることなく、高精度な同期駆動が可能になり、比較的大きな寸法のマスクパターンを基板上に忠実に転写することができる。その為、より高精細化された表示パネルや電子回路等のデバイスを製造することが可能になる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、磁気歯車部GM1、GM2の回転軸線が互いに平行である構成を例示したが、これに限定されるものではない。磁気歯車の伝達形態として、図15のように、Z軸と平行な回転軸の回りに回転可能な第1の磁気歯車GMaの外周面に近接させて、Y軸と平行な回転軸の回りに回転可能な第2の磁気歯車GMbの外周面を配置するような場合でも、2つの磁気歯車GMa、GMb間で、回転力の伝達が可能である。
このように、互いに直交する方向に回転軸線が配置されている磁気歯車伝達機構としては、例えば、再公表公報WO2007−10780号(EP1906054A1)等に記載されている。
そこで、回転力を90度に変換可能な磁気歯車伝達機構を利用する場合は、例えば、図16に示すように、回転マスク20の外周面に磁気歯車部GM1A、回転ドラム30の外周面に磁気歯車部GM1Bをそれぞれ設け、磁気歯車部GM1A及び磁気歯車部GM1Bの回転軸線と直交する方向に延びるシャフトST1(ST2)を回転軸とする磁気歯車部GM2を、磁気歯車部GM1A、GM1Bに近接して設ける構成としてもよい。
この場合、磁気歯車部GM1Aが第1の磁気パターン部に相当し、磁気歯車部GM1Bが第2の磁気パターン部に相当し、シャフトST1(ST2)に設けた磁気歯車部GM2が第3の磁気パターン部に相当する。
このような構成にすると、シャフトST1(ST2)を延ばすことで、回転マスク20と回転ドラム30の間隔が広げられるので、回転マスク20のパターンの像を回転ドラム30に巻き付いた基板上に投影する為の投影光学系等を設けることができる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、マスクユニットMU1〜MU3を支持する固定プレート15A、15Bの傾斜角度を一定とする構成を例示したが、これに限られず、例えば、固定プレート15A、15Bの傾斜角度を調整する角度調整装置を設けてもよい。この構成では、固定プレート15A、15Bの傾斜角度に応じて、マスクユニットMU1〜MU3の自重のうち、回転ドラム30に予圧として付与される荷重を調整することができる。
【0074】
さらに、上記実施形態では、保持部34が回転ドラム30に支持された際に、回転マスク20と基板Sとの間に所定量のギャップが形成される構成としたが、例えば、保持部34を設けずに、マスクユニットMU1〜MU3を回転ドラム30に対してそれぞれ独立して駆動する駆動装置を設け、回転マスク20と基板Sとの間に形成すべきギャップ量に応じてマスクユニットMU1〜MU3のそれぞれの軸間方向の位置を、ピエゾアクチュエータ等の駆動源によって調整する構成としてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、回転マスク20にパターンが形成される構成としたが、これに限定されるものではなく、パターンを有するシート状のマスクを透明の円筒体(均一な肉厚の石英製のチューブ状の筒体等)に巻き付ける構成であってもよい。
【0076】
ところで、先の図1、又は図16では、回転マスク20と回転ドラム30との間で、磁気歯車によって回転駆動力を伝達し合う構成としたが、例えば、図16において、シャフトST1(ST2)を駆動源としての回転モータ(回転駆動源)に接続してもよい。
この場合、シャフトST1(ST2)に設けた2つの磁気歯車部GM2の回転トルクが、一方の磁気歯車部GM2と非接触で対向する磁気歯車部GM1A(回転マスク20)と、他方の磁気歯車部GM2と非接触で対向する磁気歯車部GM1B(回転ドラム30)とに伝達され、回転マスク20のパターン面(円筒面)の周速度と基板Sの搬送速度とが所定の速度関係(同期速度)に設定される。
【符号の説明】
【0077】
20…回転マスク、 22…エアパッド(気体供給部)、 30…回転ドラム(転動体)、 40…伝達解放部、 100…基板処理装置、 AX1A、AX1B…回転軸線(第1の回転軸)、 AX2…回転軸線(第2の回転軸)、 GD…磁気歯車伝達機構、 M…マスク、 MU、MU1〜MU5…マスクユニット(マスク保持部)、 S…基板、 SU…基板保持ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16