特許第6304509号(P6304509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304509移動体装置、移動方法、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304509
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】移動体装置、移動方法、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180326BHJP
   G03F 7/207 20060101ALI20180326BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   G03F7/207 H
   G03F7/207 Z
   B65G49/06 Z
   H01L21/68 A
   H01L21/68 K
【請求項の数】27
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-122156(P2016-122156)
(22)【出願日】2016年6月20日
(62)【分割の表示】特願2011-192321(P2011-192321)の分割
【原出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-191935(P2016-191935A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】61/380,454
(32)【優先日】2010年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/221,420
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】青木 保夫
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−072615(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/049603(WO,A1)
【文献】 特開2004−087593(JP,A)
【文献】 特開2005−285881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を非接触支持する第1支持部と、
前記第1支持部により非接触支持された前記物体を保持する保持部と、
前記第1支持部と前記保持部とを第1方向へ移動させる第1駆動部と、
前記第1支持部に非接触支持された前記物体の少なくとも一部が前記第1支持部に非接触支持されない位置へ移動されるように、前記保持部を前記第1支持部に対して前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させる第2駆動部と、を備える移動体装置。
【請求項2】
前記第2方向に関して前記第1支持部に並んで配置され、前記物体を非接触支持可能な第2支持部を備え、
前記第2駆動部は、前記第1支持部により非接触支持された前記物体が前記第2支持部に非接触支持されるように前記保持部を前記第2方向へ移動させる請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記第1駆動部は、前記第2支持部に非接触支持された前記物体が前記第2支持部に非接触支持されない位置へ移動されるよう、前記保持部と前記第1支持部とをそれぞれ前記第2支持部に対して前記第1方向へ相対移動させる請求項2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記第1支持部と前記保持部とを支持する支持装置を備え、
前記第1駆動部は、前記支持装置を前記第1方向へ移動させる請求項1〜3の何れか一項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記支持装置は、前記第1支持部により前記物体を支持するよりも下方の位置で前記保持部を支持する請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記支持装置は、前記第1及び第2方向に関して、前記第1支持部を支持する領域よりも外側の領域で前記保持部を支持する請求項4又は5に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記第1支持部は、前記物体と前記第1支持部との間に空気を供給する複数の第1供給孔を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記第2支持部は、前記物体と前記第2支持部との間に空気を供給する複数の第2供給孔を有する請求項7に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記第2支持部は、前記物体と前記第2支持部との間の空気を吸引する複数の吸引孔を有する請求項8に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記保持部に設けられ、前記第1および第2方向に関する前記保持部の位置を計測可能な計測部を備え、
前記第1及び第2駆動部は、前記計測部の出力に基づいて前記保持部を前記第1および第2方向へ移動させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動体装置と、
エネルギビームにより前記物体を露光し前記物体上に所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項12】
前記パターン形成装置は、前記第2支持部に支持される前記物体の一部の領域上に、前記所定のパターンを形成する請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
前記第2駆動部は、前記物体が移動されながら走査露光されるように、前記保持部を前記第2方向へ移動させる請求項11又は12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記第1支持部は、前記物体に設けられた複数領域のうち少なくとも露光対象の領域を非接触支持する請求項11〜13の何れか一項に記載の露光装置
【請求項15】
前記第1駆動部、前記物体内の露光対象領域を変更するように、前記第1支持と前記保持部とを前記第1方向へ移動させる請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記物体を非接触支持する前記第2支持部を、前記第1及び第2方向に交差する第3方向へ移動させる第3駆動部を備える請求項11〜16のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項17】
前記物体は、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる基板である請求項1116のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項18】
前記物体は、500mm以上のサイズを有する基板である請求項11〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項20】
請求項1118のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項21】
第1支持部により非接触支持された物体を保持部により保持し、前記第1支持部と前記第1支持部上の前記保持部とを第1方向へ移動させることと、
前記第1支持部に非接触支持された前記物体の少なくとも一部が前記第1支持部に非接触支持されない位置へ移動されるように、前記保持部を前記第1支持部に対して前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させることと、を含む移動方法。
【請求項22】
前記相対移動させることでは、前記第1支持部により非接触支持された前記物体が、前記第2方向に関して前記第1支持部に並んで配置された第2支持部に非接触支持されるように、前記保持部を前記第2方向へ移動させる請求項21に記載の移動方法。
【請求項23】
前記移動させることでは、前記第2支持部に非接触支持された前記物体が前記第2支持部から外れるように、前記第1支持部を前記第2支持部に対して前記第1方向へ相対移動させる請求項22に記載の移動方法。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項に記載の移動方法により物体を移動させることと、
エネルギビームにより前記物体を露光し前記物体上に所定のパターンを形成するパターン形成することと、を含む露光方法。
【請求項25】
前記相対移動させることでは、前記パターン形成装置により前記物体が移動されながら露光されるように、前記保持部を前記第2方向へ移動させる請求項24に記載の露光方法。
【請求項26】
前記移動させることでは、前記物体内の露光対象領域を変更するように、前記第1支持部と前記保持部とを前記第1方向へ移動させる請求項24又は25に記載の露光方法。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか一項に記載の露光方法により前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、移動方法、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、例えばステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが主として用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、露光対象の物体(ガラスプレート、あるいはウエハ(以下、「基板」と総称する))が基板ステージ装置上に載置される。そして、マスク(あるいはレチクル)に形成された回路パターンが、投影レンズ等の光学系を介した露光光の照射により基板に転写される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、近年、露光装置の露光対象である基板、特に液晶表示素子用の矩形のガラスプレートは、そのサイズが、例えば一辺3メートル以上になるなど大型化する傾向にあり、これに伴い基板ステージ装置も大型化し、その重量も増大している。このため、露光対象物(基板)を高速、高精度で位置制御でき、かつ小型、軽量のステージ装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0018950号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、物体を非接触支持する第1支持部と、前記第1支持部により非接触支持された前記物体を保持する保持部と、前記第1支持部と前記保持部とを第1方向へ移動させる第1駆動部と、前記第1支持部に非接触支持された前記物体の少なくとも一部が前記第1支持部に非接触支持されない位置へ移動されるように、前記保持部を前記第1支持部に対して前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させる第2駆動部と、を備える移動体装置が、提供される。
本発明の第の態様によれば、第1の態様に係る移動体装置と、
エネルギビームにより前記物体を露光し前記物体上に所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置が、提供される。
【0009】
本発明の第の態様によれば、第2の態様に係る露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が、提供される。
【0010】
本発明の第の態様によれば、第2の態様に係る露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
本発明の第5の態様によれば、第1支持部により非接触支持された物体を保持部により保持し、前記第1支持部と前記第1支持部上の前記保持部とを第1方向へ移動させることと、前記第1支持部に非接触支持された前記物体の少なくとも一部が前記第1支持部に非接触支持されない位置へ移動されるように、前記保持部を前記第1支持部に対して前記第1方向に交差する第2方向へ相対移動させることと、を含む移動方法が、提供される。
本発明の第6の態様によれば、第5の態様に係る移動方法により物体を移動させることと、エネルギビームにより前記物体を露光し前記物体上に所定のパターンを形成するパターン形成することと、を含む露光方法が、提供される。
本発明の第7の態様によれば、第6の態様に係る露光方法により前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の液晶露光装置が有する基板ステージ装置の平面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】基板ステージ装置が有する定点ステージ装置の断面図(図3の一部拡大図)である。
図5図5(A)及び図5(B)は、露光処理時における基板ステージ装置の動作を説明するための図(その1、及びその2)である。
図6図6(A)及び図6(B)は、露光処理時における基板ステージ装置の動作を説明するための図(その3、及びその4)である。
図7図7(A)及び図7(B)は、露光処理時における基板ステージ装置の動作を説明するための図(その5、及びその6)である。
図8図8(A)及び図8(B)は、露光処理時における基板ステージ装置の動作を説明するための図(その7、及びその8)である。
図9】第2の実施形態に係る基板ステージ装置の平面図である。
図10図9の基板ステージ装置を+X側から見た図である。
図11】第3の実施形態に係る基板ステージ装置の平面図である。
図12図12(A)は、図11のB−B線断面図、図12(B)は、図11の基板ステージ装置を+X側から見た側面図である。
図13図13(A)は、図11の基板ステージ装置が有する基板支持部材の断面図、図13(B)は、第3の実施形態に係る基板支持部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、図1図8(B)に基づいて説明する。
【0016】
図1には、第1の実施形態の液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)に用いられる矩形のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0017】
液晶露光装置10は、図1に示されるように、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、上記マスクステージMST及び投影光学系PLなどを支持する装置本体30、基板Pを保持する基板ステージ装置PST、及びこれらの制御系等を備えている。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0018】
照明系IOPは、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0019】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により固定されている。マスクステージMSTは、装置本体30の一部である鏡筒定盤31上に固定された一対のマスクステージガイド35上に非接触状態で搭載され、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(不図示)により走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含むマスク干渉計システムにより計測される。
【0020】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの図1における下方において、鏡筒定盤31に支持されている。本実施形態の投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様の構成を有している。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域が千鳥状に配置された複数の投影光学系(マルチレンズ投影光学系)を含み、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。本実施形態では、複数の投影光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。また、以下では投影光学系PLの千鳥状に配置された複数の投影領域をまとめて露光領域IA(図2参照)と呼ぶ。
【0021】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域IA)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターン(マスクパターン)が転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0022】
装置本体30は、前述した鏡筒定盤31、鏡筒定盤31の+Y側、及び−Y側の端部近傍のそれぞれを下方から支持する一対のサイドコラム32、及び一対のサイドコラム32のそれぞれを下方から支持する基板ステージ架台33を含む。基板ステージ架台33は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の板状部材(図2参照)から成る本体部33a、一対のサイドコラム32をそれぞれ支持する一対の支持部33b、及び一対の支持部33bと本体部33aとを接続する一対の接続部33cを含む。本体部33a、一対の支持部33b、及び一対の接続部33cは、一体的に形成されている。一対の支持部33bそれぞれは、クリーンルームの床11上に設置された防振装置34上に下方から支持されている。これにより、装置本体30に支持された上記マスクステージMST、及び投影光学系PLが床11に対して振動的に分離されている。
【0023】
本体部33aの上面には、図2に示されるように、一対のY固定子37が固定されている。一対のY固定子37は、Y軸に平行に延びる部材から成り、X軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。一対のY固定子37のそれぞれは、Y軸方向に配列された複数の永久磁石を含む磁石ユニットを有している。また、本体部33aの上面であって、+X側のY固定子37の+X側、及び−X側には、それぞれY軸に平行に延びるYリニアガイド部材38が互いに平行に固定されている。また、本体部33aの上面であって、−X側のY固定子37の+X側、及び−X側にも、それぞれY軸に平行に延びるYリニアガイド部材38が互いに平行に固定されている。なお、図2(及び図5(A)〜図8(B))では、基板ステージ架台33のうち、一対の支持部33b、及び一対の接続部33c(それぞれ図1参照)の図示が省略されている。
【0024】
図2に示されるように、基板ステージ装置PSTは、Yステップ定盤50、基板支持部材60、複数のエア浮上装置70、及び定点ステージ80などを備えている。
【0025】
Yステップ定盤50は、X軸方向を長手方向とする平面視矩形のXY平面に平行な板状部材から成り、本体部33aの上方に配置されている。Yステップ定盤50の幅(Y軸方向の寸法(長さ))は、基板Pの幅(Y軸方向の寸法(長さ))と同程度に(実際には幾分長く)設定されている。また、Yステップ定盤50の長手方向の寸法(長さ)は、基板PのX軸方向に関する移動範囲をカバーする寸法(長さ)に設定されており、本実施形態では、例えば基板PのX軸方向寸法の2.5倍程度に設定されている。図2及び図3から分かるように、Yステップ定盤50の中央部には、Y軸方向に長い長穴状の開口部50aが形成されている。
【0026】
Yステップ定盤50の下面には、図3に示されるように、一対のY可動子57が一対のY固定子37それぞれに対向して固定されている。各Y可動子57は、不図示のコイルを含むコイルユニットを有する。Yステップ定盤50は、一対のY固定子37と一対のY可動子57とから成る、例えば2つ(一対)のYリニアモータにより、基板ステージ架台33上でY軸方向に所定のストロークで駆動される。
【0027】
また、Yステップ定盤50の下面には、複数のYスライダ58が固定されている。Yスライダ58は、XZ断面逆U字状の部材から成り、Yリニアガイド部材38に低摩擦でスライド可能に係合している。Yスライダ58は、図1に示されるように、一本のYリニアガイド部材38に対して、例えば2つ設けられている。従って、本実施形態では、Yステップ定盤50の下面には、例えば4本のYリニアガイド部材38に対応して、例えば合計8つのYスライダ58が固定されている(図3では、8つのYスライダ58のうち、4つは、他の4つの紙面奥側に隠れている)。
【0028】
図2に戻り、Yステップ定盤50の上面における+Y側の端部近傍、及び−Y側の端部近傍には、それぞれX軸に平行に延びるXリニアガイド54が互いに平行に固定されている。
【0029】
基板支持部材60は、図2に示されるように、平面視U字状の部材から成り、基板Pを下方から支持する。基板支持部材60は、一対のX支持部材61と、一対のX支持部材61を連結する1つの連結部材62とを含む。
【0030】
一対のX支持部材61は、それぞれX軸方向を長手方向とするYZ断面矩形(図1参照)の棒状部材から成り、Y軸方向に所定間隔(基板PのY軸方向に関する寸法よりも幾分短い間隔)で互いに平行に配置されている。一対のX支持部材61それぞれの長手方向寸法は、基板PのX軸方向に関する寸法よりも幾分長く設定されている。基板Pは、+Y側、及び−Y側の端部近傍が、一対のX支持部材61により下方から支持される。
【0031】
一対のX支持部材61のそれぞれは、その上面に不図示の吸着パッドを有している。一対のX支持部材61は、基板PのY軸方向に関する両端部近傍を下方から、例えば真空吸着により吸着保持する。−Y側のX支持部材61の−Y側の側面には、Y軸に直交する反射面を有するY移動鏡68y(バーミラー)が取り付けられている。
【0032】
図1に示されるように、一対のX支持部材61のY軸方向に関する間隔は、一対のXリニアガイド54の間隔に対応している。一対のX支持部材61のそれぞれの下面には、YZ断面逆U字状の部材から成り、対応するXリニアガイド54に低摩擦でスライド可能に係合するXスライダ64が固定されている。なお、図1では紙面奥行き方向に重なっているため不図示とされているが、Xスライダ64は、一本のXリニアガイド54に対して、例えば2つ設けられている。
【0033】
連結部材62は、Y軸方向を長手方向とするXZ断面矩形(図3参照)の棒状部材から成り、一対のX支持部材61の−X側の端部相互間を連結している。ここで、連結部材62は、図1及び図3から分かるように、一対のX支持部材61それぞれの上面上に搭載されており、その下面のZ位置は、基板Pの下面のZ位置とほぼ同じとなっている。また、図2に示されるように、連結部材62の−X側の側面には、X軸に直交する反射面を有するX移動鏡68x(バーミラー)が取り付けられている。
【0034】
また、基板支持部材60は、不図示であるが、例えばYステップ定盤50の上面に固定された一対の固定子(例えばX軸方向に配列された複数の永久磁石を含む磁石ユニット)と、一対のX支持部材61のそれぞれの下面に固定された可動子(例えばコイルを含むコイルユニット)とから成る2つのXリニアモータにより、Yステップ定盤50上でX軸方向に所定のストロークで駆動される。基板支持部材60は、Yステップ定盤50がY軸方向に所定のストロークで駆動されることにより、そのYステップ定盤50と一体的にY軸方向に所定のストロークで駆動され、これと並行して(あるいは独立に)Yステップ定盤50上でX軸方向に所定のストロークで駆動されることにより、X軸方向、及びY軸方向に所定のストロークで駆動される。
【0035】
基板支持部材60のXY平面内の位置情報は、一対のX干渉計66x、及び一対のY干渉計66yを含む基板干渉計システムにより求められる。一対のX干渉計66x、及び一対のY干渉計66yは、不図示の固定部材を介して装置本体30に固定されている。X干渉計66x(あるいはY干渉計66y)は、不図示の光源からの光を不図示のビームスプリッタで分割し、その一方の光を測長光としてX移動鏡68x(あるいはY移動鏡68y)に、その他方の光を参照光として投影光学系PL(あるいは投影光学系PLと一体と見なせる部材)に取り付けられた固定鏡(不図示)にそれぞれ照射し、上記測長光のX移動鏡68x(あるいはY移動鏡68y)からの反射光、及び参照光の固定鏡からの反射光を再度重ね合わせて不図示の受光素子に入射させ、その光の干渉に基づいて固定鏡の反射面の位置を基準とするX移動鏡68x(あるいはY移動鏡68y)の反射面の位置(すなわち、基板支持部材60の変位)を求める。
【0036】
基板支持部材60を駆動するためのXリニアモータは、一対のX干渉計66xの出力に基づき、Yステップ定盤50を駆動するためのYリニアモータは、一対のY干渉計66y(あるいは不図示のYリニアエンコーダ)の出力に基づいて、それぞれ制御される。また、一対のY干渉計66yは、基板支持部材60のX軸方向の位置に関わらず、少なくとも一方のY干渉計66yからの測長光がY移動鏡68yに照射されるようにその間隔(及び台数)が設定されている。これに対し、一対のX干渉計66xは、基板支持部材60のY軸方向の位置に関わらず、常に一対のX干渉計66xからの測長光のそれぞれがX移動鏡68xに照射されるようにその間隔が設定されている。
【0037】
複数、本実施形態では、例えば10台のエア浮上装置70は、Yステップ定盤50の上面に固定されている。例えば10台のエア浮上装置70のうち、例えば5台は開口部50aの+X側であって、一対のXリニアガイド54間の領域にY軸方向に所定間隔で配置され、他の、例えば5台は開口部50a−X側であって、一対のXリニアガイド54間の領域にY軸方向に所定間隔で配置されている。例えば10台のエア浮上装置70のそれぞれは、配置が異なる点を除き、実質的に同じものである。
【0038】
各エア浮上装置70は、X軸方向に延びる(Y軸及びZ軸方向寸法に比べてX軸方向寸法が長い)直方体状の部材から成り、その長手方向寸法は、基板のX軸方向寸法と同程度に(実際は幾分短く)設定されている。各エア浮上装置70は、その上面(基板Pの下面に対向する面)に多孔質部材を有し、その多孔質部材が有する複数の微細な孔から加圧気体(例えば空気)を基板Pの下面に噴出することにより、基板Pを浮上させる。加圧気体は、外部からエア浮上装置70に供給されても良いし、エア浮上装置70が送風装置などを内蔵しても良い。また、加圧気体を噴出する孔は、機械的な加工により形成されたものであっても良い。複数のエア浮上装置70による基板Pの浮上量(エア浮上装置70の上面と基板Pの下面との距離)は、例えば数十マイクロメートルから数千マイクロメートル程度に設定されている。
【0039】
定点ステージ80は、図4に示されるように、基板ステージ架台33の本体部33a上に搭載された重量キャンセル装置81、重量キャンセル装置81に下方から支持されたエアチャック装置88、エアチャック装置88をθx、θy、及びZ軸の計3自由度方向に駆動する複数のZボイスコイルモータ95などを備えている。
【0040】
重量キャンセル装置81は、図3に示されるように、Yステップ定盤50に形成された開口部50a内に挿入されている。ここで、Yステップ定盤50がY軸方向に所定のストロークで移動する際、上記開口部50aを規定する開口端部と重量キャンセル装置81とが接触しないように、上記開口部50aを規定する開口端部間の寸法(及び/又は重量キャンセル装置81の外形寸法)が設定されている。なお、Yステップ定盤50がY軸方向に所定のストロークで移動する際に、重量キャンセル装置81とYステップ定盤50との接触を回避できれば、開口部50aの形状は特に限定されず、例えば円形であっても良い。
【0041】
図4に戻り、重量キャンセル装置81は、基板ステージ架台33(図1参照)の本体部33aに固定された筐体82、筐体82内に収容されたZ軸方向に伸縮可能な圧縮コイルばね83、及び圧縮コイルばね83上に搭載されたZスライダ84などを備えている。筐体82は、+Z側が開口した有底筒状の部材から成る。Zスライダ84は、Z軸に延びる筒状の部材から成り、Z軸方向に離間して配置されたXY平面に平行な一対の板ばねをそれぞれ含む複数の平行板ばね装置85を介して筐体82の内壁面に接続されている。平行板ばね装置85は、Zスライダ84の+X側、−X側、+Y側、及び−Y側に配置されている(+Y側、及び−Y側の平行板ばね装置85は不図示)。Zスライダ84は、平行板ばね装置85が有する板ばねの剛性(引張剛性)により筐体82に対するXY平面に平行な方向への相対移動が制限されるのに対し、Z軸方向には、板ばねの可撓性により、筐体82に対してZ軸方向に微少ストロークで相対移動可能となっている。Zスライダ84の上端部(+Z側の端部)は、筐体82の+Z側の端部から上方に突き出しており、エアチャック装置88を下方から支持している。また、Zスライダ84の上端面には、半球状の凹部84aが形成されている。
【0042】
重量キャンセル装置81は、圧縮コイルばね83の弾性力(重力方向上向き(+Z方向)の力)により、基板P、Zスライダ84、エアチャック装置88等の重量(重力加速度による下向き(−Z方向)の力)を打ち消すことにより、複数のZボイスコイルモータ95に対する負荷を低減する。なお、圧縮コイルばね83に替えて、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示される重量キャンセル装置のように、空気ばねなど荷重制御可能な部材を用いてエアチャック装置88等の重量をキャンセルしても良い。
【0043】
エアチャック装置88は、重量キャンセル装置81の上方(+Z側)に配置されている。エアチャック装置88は、ベース部材89、ベース部材89上に固定されたバキューム・プリロード・エアベアリング90、及びバキューム・プリロード・エアベアリング90の+X側及び−X側にそれぞれ配置された一対のエア浮上装置91を有している。
【0044】
ベース部材89は、XY平面に平行に配置された板状の部材から成り、その下面のZ位置は、図3に示されるように、Yステップ定盤50の上面のZ位置よりも高い位置となるように配置されている。図4に戻り、ベース部材89の下面中央には、半球面状の軸受面を有する球面エアベアリング92が固定されている。球面エアベアリング92は、Zスライダ84に形成された凹部84aに挿入されている。これにより、エアチャック装置88がXY平面に対して揺動自在(θx及びθy方向に回転自在)にZスライダ84に支持される。なお、エアチャック装置88をXY平面に対して揺動自在に支持する装置としては、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、複数のエアベアリングを用いた疑似球面軸受装置であっても良いし、弾性ヒンジ装置を用いても良い。
【0045】
バキューム・プリロード・エアベアリング90は、図2に示されるように、平面視でY軸方向を長手方向とする長方形の板状部材から成り、その面積は、露光領域IAの面積よりも幾分広く設定されている。バキューム・プリロード・エアベアリング90は、その上面に気体噴出孔、及び気体吸引孔を有しており、気体噴出孔から加圧気体(例えば空気)を基板Pの下面に向けて噴出するとともに、気体吸引孔から基板Pとの間の気体を吸引する。バキューム・プリロード・エアベアリング90は、基板Pの下面に噴出する気体の圧力と、基板Pの下面との間の負圧とのバランスにより、その上面と基板P下面との間に剛性の高い気体膜を形成し、基板Pをほぼ一定のクリアランス(隙間/ギャップ)を介して非接触で吸着保持する。バキューム・プリロード・エアベアリング90の上面(基板保持面)と、基板Pの下面との間の距離が、例えば数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度となるように、噴出される気体の流量又は圧力、及び吸引する気体の流量又は圧力が設定されている。
【0046】
ここで、図2に示されるように、バキューム・プリロード・エアベアリング90は、投影光学系PLの直下(−Z側)に配置されており、投影光学系PLの直下に位置する基板Pの露光領域IAに対応する部位(被露光部位)を吸着保持する。バキューム・プリロード・エアベアリング90は、基板Pに、いわゆるプリロードをかけるので、基板Pとの間に形成される気体膜の剛性を高くすることができ、仮に基板Pに歪み、あるいは反りがあったとしても、基板Pのうち投影光学系の直下に位置する被露光部位の形状を確実にバキューム・プリロード・エアベアリング90の上面に沿って矯正することができる。また、バキューム・プリロード・エアベアリング90は、基板PのXY平面内の位置を拘束しないので、基板Pは、バキューム・プリロード・エアベアリング90により被露光部位が吸着保持された状態であっても、照明光IL(図3参照)に対してXY平面に沿って相対移動することができる。この種の非接触式エアチャック装置(バキューム・プリロード・エアベアリング)については、例えば米国特許第7,607,647号明細書などに開示されている。なお、バキューム・プリロード・エアベアリング90から噴出される加圧気体は、外部から供給されても良いしバキューム・プリロード・エアベアリング90が送風装置などを内蔵しても良い。また、バキューム・プリロード・エアベアリング90の上面と基板P下面との間の気体を吸引する吸引装置(バキューム装置)も同様に、バキューム・プリロード・エアベアリング90の外部に設けられても良いし、バキューム・プリロード・エアベアリング90が内蔵しても良い。また、気体噴出孔、及び気体吸引孔は、機械的な加工により形成されたものであっても良いし、多孔質材料を用いても良い。また、バキューム・プリロードの方法としては、気体吸引を行わず、正圧気体のみを用いて(例えば、ベルヌーイチャック装置のように)負圧を発生させても良い。
【0047】
一対のエア浮上装置91のそれぞれは、上記エア浮上装置70と同様に、その上面から基板Pの下面に加圧気体(例えば空気)を噴出することにより、基板Pを浮上させる。一対のエア浮上装置91の上面のZ位置は、バキューム・プリロード・エアベアリング90の上面のZ位置とほぼ同じに設定されている。また、図3に示されるように、バキューム・プリロード・エアベアリング90、及び一対のエア浮上装置91の上面のZ位置は、複数のエア浮上装置70の上面のZ位置よりも幾分高い位置に設定されている。このため、上記複数のエア浮上装置70は、一対のエア浮上装置91に比べて、基板Pを高く浮上させることができる高浮上タイプの装置が用いられている。なお、一対のエア浮上装置91は、基板Pに向けて加圧気体を噴出するだけでなく、バキューム・プリロード・エアベアリング90と同様に、その上面と基板Pとの間の空気を吸引しても良い。この場合、バキューム・プリロード・エアベアリング90によるプリロードよりも弱い負荷となるように吸引圧を設定することが好ましい。
【0048】
複数のZボイスコイルモータ95のそれぞれは、図4に示されるように、床11上に設置されたベースフレーム98に固定されたZ固定子95aと、ベース部材89に固定されたZ可動子95bとを含む。Zボイスコイルモータ95は、例えば重量キャンセル装置81の+X側、−X側、+Y側、及び−Y側に配置され(+Y側、及び−Y側のZボイスコイルモータ95は不図示)、エアチャック装置88をθx、θy、及びZ軸の3自由度方向に微少ストロークで駆動できる。なお、複数のZボイスコイルモータ95は、少なくとも同一直線上にない3箇所に配置されていれば良い。
【0049】
ベースフレーム98は、本体部33aに形成された複数の貫通孔33dそれぞれに挿通された複数(例えばZボイスコイルモータ95に対応して4本)の脚部98aと、該複数の脚部98aに下方から支持された本体部98bとを含む。本体部98bは、平面視で円環状の板状部材から成り、その中央部に形成された開口部98c内に上記重量キャンセル装置81が挿入されている。複数の脚部98aのそれぞれは、本体部33aと非接触状態とされ、振動的に分離されている。従って、複数のZボイスコイルモータ95を用いてエアチャック装置88を駆動する際の反力が重量キャンセル装置81に伝わらないようになっている。
【0050】
複数のZボイスコイルモータ95により駆動されるエアチャック装置88の3自由度方向の位置情報は、本体部33aに固定された複数、本実施形態では、例えば4つのZセンサ96を用いて求められる。Zセンサ96は、重量キャンセル装置81の+X側、−X側、+Y側、−Y側それぞれに、1つずつ設けられている(+Y側、及び−Y側のZセンサは不図示)。Zセンサ96は、エアチャック装置88のベース部材89の下面に固定されたターゲット97を用いて、ベースフレーム98の本体部98b(本体部33a)とベース部材89とのZ軸方向の距離の変化を求める。図示しない主制御装置は、4つのZセンサ96の出力に基づいてエアチャック装置88のZ軸、θx、及びθy方向に関する位置情報を常時求め、その計測値に基づいて4つのZボイスコイルモータ95を適宜制御することによりエアチャック装置88の位置を制御する。複数のZセンサ96、及びターゲット97は、複数のZボイスコイルモータ95の近傍に配置されているので、高速で高応答の制御ができる。なお、Zセンサ96とターゲット97の配置は、逆でも良い。
【0051】
ここで、エアチャック装置88の最終的な位置は、バキューム・プリロード・エアベアリング90の上方を通過する基板Pの上面が、常に投影光学系PLの焦点深度内に位置するように制御される。図示しない主制御装置は、不図示の面位置計測系(オートフォーカスセンサ)により、基板Pの上面の位置(面位置)をモニタしつつ、その基板Pの上面が投影光学系PLの焦点深度内に常に位置するように(投影光学系PLが常に基板P上面に合焦するように)、エアチャック装置88を駆動制御(オートフォーカス制御)する。なお、Zセンサ96は、エアチャック装置88のZ軸、θx、及びθy方向に関する位置情報を求めることができれば良いので、例えば同一直線上にない3箇所に設けられていれば、3つでも良い。
【0052】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージMSTへのマスクのロード、及び不図示の基板ローダによって、基板支持部材60上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。
【0053】
ここで、図5(A)〜図8(B)に基づいて、上記露光動作時における基板ステージ装置PSTの動作の一例を説明する。なお、以下では、1枚の基板上に4つのショット領域が設定された場合(いわゆる4面採りの場合)を説明するが、1枚の基板P上に設定されるショット領域の数、及び配置は、適宜変更可能である。
【0054】
露光処理は、一例として、図5(A)に示されるように、基板Pの−Y側かつ−X側に設定された第1ショット領域S1、基板Pの+Y側かつ−X側に設定された第2ショット領域S2、基板Pの+Y側かつ+X側に設定された第3ショット領域S3、基板Pの−Y側かつ+X側に設定された第4ショット領域S4の順番で行われる。基板ステージ装置PSTでは、図5(A)に示されるように、第1のショット領域S1が露光領域IAの+X側に位置するように、一対のX干渉計66x、及び+Y側のY干渉計66yの出力に基づいて基板支持部材60のXY平面内の位置が制御される。
【0055】
この後、図5(B)に示されるように、照明光IL(図1参照)に対して基板支持部材60が一対のX干渉計66xの出力に基づいて−X方向に所定の一定速度で駆動され(図5(B)の矢印参照)、これにより、基板P上の第1ショット領域S1にマスクパターンが転写される。第1ショット領域S1への露光処理が終了すると、基板ステージ装置PSTでは、図6(A)に示されるように、第2ショット領域S2の+X側の端部が露光領域IA(図6(A)では不図示。図2参照)よりも幾分−X側に位置するように、一対のY干渉計66yの出力に基づいて基板支持部材60のXY平面内の位置が制御される(図6(A)の矢印参照)。
【0056】
次いで、図6(B)に示されるように、照明光IL(図1参照)に対して基板支持部材60が一対のX干渉計66xの出力に基づいて+X方向に所定の一定速度で駆動され(図6(B)の矢印参照)、これにより、基板P上の第2ショット領域S2にマスクパターンが転写される。この後、図7(A)に示されるように、第3のショット領域S3の−X側の端部が露光領域IA(図7(A)では不図示。図2参照)よりも幾分+X側に位置するように、一対のX干渉計66xの出力に基づいて基板支持部材60のXY平面内の位置が制御され(図7(A)の矢印参照)、図7(B)に示されるように、照明光IL(図1参照)に対して基板支持部材60が一対のX干渉計66xの出力に基づいて−X方向に所定の一定速度で駆動されることにより(図7(B)の矢印参照)、基板P上の第3ショット領域S3にマスクパターンが転写される。
【0057】
次いで、図8(A)に示されるように、第4のショット領域S4の+X側の端部が露光領域IA(図8(A)では不図示。図2参照)よりも幾分−X側に位置するように、−X側のY干渉計66yの出力に基づいて基板支持部材60のXY平面内の位置が制御され(図8(A)の矢印参照)、図8(B)に示されるように、照明光IL(図1参照)に対して基板支持部材60が一対のX干渉計66xの出力に基づいて+X方向に所定の一定速度で駆動されることにより(図8(B)の矢印参照)、基板P上の第4ショット領域S4にマスクパターンが転写される。
【0058】
主制御装置は、図5(A)〜図8(B)に示されるステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われている最中、基板P表面の被露光部位の面位置情報を計測する。そして、主制御装置は、その計測値に基づいてエアチャック装置88が有するバキューム・プリロード・エアベアリング90のZ軸、θx、及びθy方向それぞれの位置(面位置)を制御することにより、基板P表面のうち、投影光学系PLの直下に位置する被露光部位の面位置が投影光学系PLの焦点深度内に位置するように位置決めする。これにより、例えば仮に基板Pの表面にうねり、あるいは基板Pに厚みの誤差があったとしても、確実に基板Pの被露光部位の面位置を、投影光学系PLの焦点深度内に位置させることができ、露光精度を向上させることができる。また、基板Pのうち、露光領域IAに対応する部位以外の領域の大部分は、複数のエア浮上装置70により浮上支持される。従って、基板Pの自重による撓みが抑制される。
【0059】
このように、本第1の実施形態の液晶露光装置10の基板ステージ装置PSTは、基板表面のうち、露光領域に対応する位置の面位置をピンポイントで制御するので、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるステージ装置のように、基板Pと同程度の面積を有する基板ホルダ(すなわち基板Pの全体)をZ軸方向、及びチルト方向にそれぞれ駆動する場合に比べ、その重量を大幅に低減することができる。
【0060】
また、基板支持部材60は、基板Pの端部のみを保持する構成であるので、仮に基板Pが大型化しても基板支持部材60を駆動するためのXリニアモータは、出力の小さなもので良く、ランニングコストを低減することができる。また、電源設備などのインフラ整備も容易である。また、Xリニアモータの出力が小さくて良いのでイニシャルコストを低減することもできる。また、Xリニアモータの出力(推力)が小さいので、駆動反力が装置全体に与える影響(振動による露光精度への影響)も少ない。また、従来の上記基板ステージ装置に比べ、組み立て、調整、メンテナンスなどが容易である。また、部材の点数が少なく、且つ各部材が軽量であるので、輸送も容易である。なお、複数のエア浮上装置70を含み、Yステップ定盤50は、基板支持部材60に比べて大型であるが、基板PのZ軸方向の位置決めは定点ステージ80が行い、エア浮上装置70自体は基板Pを浮上させるだけなので剛性が要求されず、軽量なものを用いることができる。
【0061】
また、複数のエア浮上装置70による基板Pの浮上量が、例えば数十マイクロメートルから数千マイクロメートル程度に(すなわち定点ステージ80よりも浮上量が大きく)設定されているため、仮に基板Pに撓みが生じたり、エア浮上装置70の設置位置がずれたとしても基板Pとエア浮上装置70との接触が防止される。また、複数のエア浮上装置70から噴出される加圧気体の剛性が比較的低いので、定点ステージ80を用いて基板Pの面位置制御を行う際のZボイスコイルモータ95の負荷が小さい。
【0062】
また、基板Pを支持する基板支持部材60は、簡単な構成なので、重量を軽くすることが可能である。従って、基板支持部材60を駆動する際の反力が、Yステップ定盤50を介して装置本体30に伝わるが、その駆動反力自体が小さいので、駆動反力による装置振動(装置本体30の揺れ、あるいは振動励起による共振現象など)が発生しても、露光精度に影響を与えるおそれが少ない。
【0063】
また、Yステップ定盤50は、基板支持部材60に比べて重量が重いので、その駆動反力も基板支持部材60を駆動する場合に比べて大きいが、Yステップ定盤50を駆動するのは、基板PをY軸方向に長ストロークで移動させる際(すなわち、非露光時)なので、その駆動反力による上記装置振動が露光精度に影響を与えるおそれが少ない。
【0064】
《第2の実施形態》
次に第2の実施形態に係る基板ステージ装置について図9及び図10に基づいて説明する。第2の実施形態の基板ステージ装置PSTaは、基板Pを支持する基板支持部材160をYステップ定盤50に対してX軸、Y軸、及びθz方向に微少駆動することができる点が異なる。なお、本第2の実施形態の基板ステージ装置PSTaにおいて、上記第1の実施形態の基板ステージ装置PST(図2参照)と同じ構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0065】
基板ステージ装置PSTaは、一対のXキャリッジ20を有している。一対のXキャリッジ20は、Yステップ定盤150の上方であって、基板支持部材160の+Y側、−Y側にそれぞれ配置されている。各Xキャリッジ20は、XY平面に平行に配置されたX軸方向を長手方向とする平面視長方形の板状部材から成り、図10に示されるように、その下面の四隅部近傍には、YZ断面逆U字状のXスライダ24が固定されている(4つのスライダ24のうち、2つは他の2つの紙面奥側に隠れている)。
【0066】
これに対し、Yステップ定盤150の上面における+Y側、及び−Y側の端部近傍には、それぞれY軸方向に離間して配置された一対のXリニアガイド54が固定されている。+Y側のXキャリッジ20は、+Y側の一対のXリニアガイド54上にXスライダ24を介してスライド自在に搭載され、−Y側のXキャリッジ20は、−Y側の一対のXリニアガイド54上にXスライダ24を介してスライド自在に搭載されている。Xキャリッジ20は、Xキャリッジ20に固定された不図示のX可動子、及びX可動子に対応してYステップ定盤150に固定されたX固定子を含むXリニアモータにより、Yステップ定盤150上でX軸方向に所定のストロークで駆動される。Xキャリッジ20の位置情報は、Xキャリッジ20に固定された不図示のリニアエンコーダヘッド(検出器)と、Yステップ定盤150に固定された不図示のYリニアスケールとを含むYリニアエンコーダシステムにより求められる。一対のXキャリッジ20は、上記Yリニアエンコーダシステムの計測値に基づいて同期駆動される。
【0067】
また、Yステップ定盤150の上面における+Y側の端部近傍、及び−Y側の端部近傍であって、一対のXリニアガイド54の内側には、それぞれXガイド55が固定されている。Xガイド55は、X軸方向に延びるYZ断面矩形の部材から成り(図10参照)、その上面の平面度が非常に高く設定されている。2本のXガイド55の間隔は、基板支持部材160が有する一対のX支持部材61の間隔とほぼ一致している。
【0068】
基板支持部材160の一対のX支持部材61のそれぞれの下面には、図10に示されるように、Xガイド55の上面にその軸受面が対向するエアベアリング65が取り付けられている。基板支持部材160は、エアベアリング65の作用により、一対のXガイド55上に浮上支持されている。なお、上記第1の実施形態では、X支持部材61の下面にXスライダ64(図1参照)が固定されたが、本第2の実施形態の基板支持部材160は、Xスライダ64を有さない。
【0069】
図9に戻り、基板支持部材160は、2つのXボイスコイルモータ29x、及び2つのYボイスコイルモータ29yにより一対のXキャリッジ20に対してX軸、Y軸、及びθz方向に微少駆動される。2つのXボイスコイルモータ29xの一方、及び2つのYボイスコイルモータ29yの一方は、基板支持部材160の−Y側に配置され、2つのXボイスコイルモータ29xの他方、及び2つのYボイスコイルモータ29yの他方は、基板支持部材160の+Y側に配置されている。一方及び他方のXボイスコイルモータ29xは、互いに基板支持部材160と基板Pとを併せた系の重心位置CGに関して点対称となる位置に配置され、一方及び他方のYボイスコイルモータ29yは、互いに上記重心位置CGに関して点対称となる位置に配置されている。
【0070】
図10に示されるように、一方(−Y側)のYボイスコイルモータ29yは、−Y側のXキャリッジ20の上面に支持部材28を介して固定された固定子27y(例えばコイルを含むコイルユニットを有する)と、−Y側のX支持部材61の側面に固定された可動子67y(例えば磁石を含む磁石ユニットを有する)とを含む。なお、図10ではXボイスコイルモータ29xの紙面奥側に隠れているが、他方(+Y側)のYボイスコイルモータ29y(図9参照)の構成は、一方のYボイスコイルモータ29yと同じである。また、他方(+Y側)のXボイスコイルモータ29xは、+Y側のXキャリッジ20の上面に支持部材28を介して固定された固定子27xと、+Y側のX支持部材61の側面に固定された可動子67xとを含む。なお、図10ではYボイスコイルモータ29yの紙面奥側に隠れているが、一方(−Y側)のXボイスコイルモータ29xの構成は、他方のXボイスコイルモータ29xと同じである。
【0071】
図9に戻り、基板支持部材160は、一対のXキャリッジ20それぞれがYステップ定盤150上でX軸方向に所定のストロークで駆動される際、2つのXボイスコイルモータ29xにより一対のXキャリッジ20に対して同期駆動(一対のXキャリッジ20と同方向、同速度で駆動)される。これにより、一対のXキャリッジ20と基板支持部材160とが一体的にX軸方向に移動する。また、基板支持部材160は、Yステップ定盤150、及び一対のXキャリッジ20がY軸方向に所定のストロークで駆動される際、2つのYボイスコイルモータ29yにより一対のXキャリッジ20に対して同期駆動(一対のXキャリッジ20と同方向、同速度で駆動)される。これにより、Yステップ定盤150と基板支持部材160とが一体的にY軸方向に移動する。また、基板支持部材160は、2つのXボイスコイルモータ29x(あるいは2つのYボイスコイルモータ29y)により、重心位置CGを通過するZ軸に平行な軸線周り方向(θz方向)に適宜微少駆動される。基板支持部材160は、すなわち基板PのXY平面内(θz方向を含む)の位置情報は、一対のX干渉計66xにより求められる。なお、本第2の実施形態における基板ステージ装置PSTaのステップ・アンド・スキャン時の動作などは上記第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0072】
本第2の実施形態に係る基板ステージ装置PSTaによれば、上記第1の実施形態で得られる効果に加え、基板Pを保持する基板支持部材160がYステップ定盤150に対して非接触であり、XY平面に平行な方向に関して振動的に分離されているので、基板支持部材160を駆動する際のXリニアモータ(あるいはYリニアモータ)の反力、及び振動の伝達が抑制される。また、基板Pをスキャン方向に駆動する際に、クロススキャン方向、及びθz方向に微少駆動できるので、より高精度の露光が可能となる。また、基板支持部材160は、基板Pの端部のみを保持する構成であるので、仮に基板Pが大型化しても基板支持部材160を微少駆動するためのボイスコイルモータは、出力の小さなもので良く、ランニングコストを低減することができる。
【0073】
《第3の実施形態》
次に第3の実施形態について図11図13(A)に基づいて説明する。第3の実施形態は、上記第1の実施形態(図1など参照)に比べ、装置本体30、及び基板ステージ装置PSTの構成が異なる。なお、本第3の実施形態の装置本体130、及び基板ステージ装置PSTbにおいて、上記第1の実施形態と同じ構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0074】
図12(B)に示されるように、第3の実施形態に係る基板ステージ装置PSTbは、Yステップ定盤50が床11上に設置された架台40上に搭載されている。架台40は、図11に示されるように、実質的に同じものがX軸方向に離間して一対設けられており、Yステップ定盤50は、その2つの架台40上に架け渡されて搭載されている。一対の架台40それぞれの上面には、図11及び図12(A)から分かるように、Yステップ定盤50をY軸方向に直進案内するための複数のYリニアガイド部材38、及びYステップ定盤50をY軸方向に駆動するためのYリニアモータを構成するY固定子37が固定されている。
【0075】
また、装置本体130は、図11に示されるように、基板ステージ架台133の本体部133a、及び接続部133cのX軸方向の寸法が上記第1の実施形態における本体部33a及び接続部33c(それぞれ図1参照)よりも短く設定されている。本体部133aは、一対の支持部33bの長手方向の中央部間に架設されている。本体部133a上には、図12(A)に示されるように、定点ステージ80の重量キャンセル装置81が搭載されている。また、本体部133aには、ベースフレーム98の脚部98aが挿通される貫通孔が形成されている。
【0076】
ここで、上記一対の架台40は、図11に示されるように、一方が本体部133aの+X側に、他方が本体部133aの−X側に、それぞれ本体部133aと分離して(離間して)配置されており、基板ステージ架台133(すなわち装置本体130(図12(C)参照))に対して振動的に分離されている。従って、Yステップ定盤50をY軸方向に駆動する際の反力、及び振動などが装置本体130に伝達することを抑制できる。
【0077】
また、第3の実施形態に係る基板ステージ装置PSTbでは、定点ステージ80が装置本体130の一部である本体部133aに搭載され、Yステップ定盤50が一対の架台40上に搭載されているため、基板支持部材60bのZ位置(基板支持部材60bがXY平面に平行に沿って移動する際の移動平面のZ位置)と、定点ステージ80のZ位置とが、例えば防振装置34の作用により変化する可能性がある。このため、本第3の実施形態において、基板支持部材60bは、図13(A)に示されるように、X支持部材61bに対してZ軸方向に微少移動可能な保持部材161bを用いて基板Pを吸着保持するように(基板PをZ軸方向に関して拘束しないように)なっている(保持部材161bは、図11図12(B)では不図示)。保持部材161bは、X軸方向に延びる棒状の部材から成り、その上面に不図示の吸着パッドを有している(真空吸引用の配管などは不図示)。保持部材161bの下面における長手方向両端部近傍には、それぞれ下方(−Z側)に突き出したピン162bが取り付けられている。ピン162bは、X支持部材61bの上面に形成された凹部内に挿入され、その凹部内に収容された圧縮コイルばねに下方から支持されている。これにより、保持部材161b(すなわち基板P)は、X支持部材61bに対してZ軸方向(上下方向)に移動可能となる。従って、上述のように仮に基板支持部材60bのZ位置と定点ステージ80のZ位置とがずれたとしても、エア浮上装置70のZ位置に応じて基板PがX支持部材61bに対してZ軸方向に移動(上下動)するので、基板Pに対するZ軸方向の負荷が抑制される。なお、図13(B)に示される基板支持部材60cのように、複数の平行板ばね装置162cを用いて不図示の吸着パッドを有する保持部材161cをX支持部材61に対してZ軸方向に微少移動可能に構成しても良い。また、本第3の実施形態において、基板支持部材60b(又は60c)を上記第2の実施形態と同様に、Yステップ定盤50に対してY軸方向、及びθz方向に微少駆動可能に構成しても良い。
【0078】
なお、上記第1〜第3の実施形態における液晶露光装置の構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記第1及び第2の実施形態に係る基板支持部材60、160は、基板Pを下方から吸着保持する構成であったが、これに限らず、例えば基板Pの端部をY軸方向に(一方のX支持部材61側から他方のX支持部材61側に)押圧する押圧装置により基板を保持しても良い。この場合、基板Pのほぼ全面に露光処理を行うことができる。
【0079】
また、Yステップ定盤50、150、あるいは基板支持部材60、160、60b、60cを直進案内する一軸ガイド装置は、例えば石材、セラミックスなどにより形成されたガイド部材と複数の気体静圧軸受(エアベアリング)とを含む非接触一軸ガイド装置であっても良い。
【0080】
また、Yステップ定盤50、150、あるいは基板支持部材60、160、60b、60cを駆動する駆動装置としては、ボールねじと回転モータとを組み合わせた送りねじ装置、ベルト(あるいはロープ)と回転モータとを組み合わせたベルト駆動装置などであっても良い。
【0081】
また、基板支持部材60、160、60b、60cの位置情報は、リニアエンコーダシステムを用いて求めても良い。また、基板支持部材60、160、60b、60cが有する一対のX支持部材61(上記第3の実施形態では61b)それぞれの位置情報をリニアエンコーダシステムを用いて独立に求めても良く、この場合、一対のX支持部材61同士を機械的に連結しなくても良い(連結部材62が不要となる)。
【0082】
また、定点ステージ80(図4参照)において、エアチャック装置88を駆動するZボイスコイルモータ95の固定子95aは、その駆動反力が装置本体30に及ぼす影響が無視できる程度に小さい場合には、基板ステージ架台33(上記第3の実施形態では本体部133a)に固定されても良い。
【0083】
また、定点ステージ80において、エアチャック装置88をX軸方向に移動可能に構成し、スキャン露光動作を開始する前に、予めバキューム・プリロード・エアベアリング90を基板Pの移動方向の上流側(例えば、図5(A)に示される第1ショット領域S1の露光前では、露光領域IAの+X側)に位置させ、その位置で予め基板P上面の面位置調整を行い、基板Pがスキャン方向に移動するのに伴い、エアチャック装置88を基板P(基板支持部材60)と同期して移動させても良い(露光中は、露光領域IAの直下で停止させる)。
【0084】
また、上記第1の実施形態では、スキャン露光時において、基板PのY軸方向、及びθz方向への微少な位置決めを行わないが、この場合、マスクステージMSTをY軸方向、及びθz方向に微少駆動可能に構成し、マスクMを基板Pに追従させることにより位置合わせを行っても良い。
【0085】
また、カウンタマスを設け、Yステップ定盤50、基板支持部材60などの可動部材をリニアモータを用いて駆動する場合にその駆動反力を低減しても良い。
【0086】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0087】
また、上記各実施形態では、投影光学系PLが、複数本の投影光学ユニットを備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学ユニットの本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0088】
また、上記各実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は縮小系及び拡大系のいずれでも良い。
【0089】
なお、上記各実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0090】
なお、露光装置としては、サイズ(外径、対角線、一辺の少なくとも1つを含む)が500mm以上の基板、例えば液晶表示素子などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の大型基板を露光する露光装置に対して適用することが特に有効である。
【0091】
また、露光装置としては、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置、ステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用することができる。
【0092】
また、露光装置の用途としては、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記各実施形態を適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。
【0093】
また、物体を所定の二次元平面に沿って移動させる移動体装置(ステージ装置)としては、露光装置に限らず、例えば物体の検査に用いられる物体検査装置など、物体に関して所定の処理を行う物体処置装置に用いても良い。
【0094】
《デバイス製造方法》
次に、上記各実施形態に係る露光装置をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法について説明する。上記実施形態の露光装置10では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることができる。
〈パターン形成工程〉
まず、上述した各実施形態に係る露光装置を用いて、パターン像を感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に形成する、いわゆる光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成される。
〈カラーフィルタ形成工程〉
次に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列された、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルタを形成する。
〈セル組み立て工程〉
次に、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板、及びカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。例えば、パターン形成工程にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
〈モジュール組立工程〉
その後、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。
【0095】
この場合、パターン形成工程において、上記各実施形態に係る露光装置を用いて高スループットかつ高精度でプレートの露光が行われるので、結果的に、液晶表示素子の生産性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明の移動体装置及び移動方法は、物体を移動させるのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に所定のパターンを形成するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの製造に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【符号の説明】
【0097】
10…液晶露光装置、50…Yステップ定盤、60…基板支持部材、70…エア浮上装置、80…定点ステージ、88…エアチャック装置、90…バキューム・プリロード・エアベアリング、91…エア浮上装置、IA…露光領域、P…基板、PST…基板ステージ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13