【実施例】
【0038】
以下、本発明による金属−セラミックス接合基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0039】
[実施例1]
まず、縦51.5mm×横46.5mm×厚さ0.6mmの窒化アルミニウムの焼結体からなるセラミックス基板を用意した。
【0040】
このセラミックス基板について、負荷速度0.5mm/分、スパン間距離30mmの測定条件で、セラミックス基板の長手方向に垂直に上部の支点が当るように負荷することにより、(JIS R1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に準じた)3点曲げ試験を行って抗折強度を測定したところ、セラミックス基板の(初期の)抗折強度は、450MPaであった。
【0041】
また、このセラミックス基板について、X線応力測定装置(株式会社リガク製の微小部X線応力測定装置AutoMATEII)を用いて回折ピークの回折角を測定し、残留応力を算出したところ、セラミックス基板の被処理面の任意の4点(n=4)においてセラミックス基板に付与された残留応力の平均値は−26MPaの圧縮残留応力であった。なお、回折ピークの回折角の測定では、X線入射法としてψ
0一定法(X線源を固定してX線検出器のみを揺動させる測定方法)を使用し、検出器走査法として並傾法(格子面角度ψの設定面と回折角2θの走査面が同一面内にある光学系を用いた方法)を使用した。また、特性X線としてCr−Kα線を使用し、X線管電圧を40kV、X線管電流を40mA、X線ビーム径をφ2mm、X線照射時間を60秒とした。また、AlNの所定の結晶格子面として、無ひずみ状態で2θ=120.4°を中心とするAlNの(112)面を使用し、ψ角の揺動角を±1°、ψ測定点数を10点、解析角度を117.9°〜122.5°とした。
【0042】
さらに、このセラミックス基板の表面粗さについて、接触式表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製のSJ201P)による測定結果から、JIS B0601(1994年)に基づいて表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRa、十点平均粗さRzを算出したところ、算術平均粗さRaは0.207μm、十点平均粗さRzは2.105μmであった。
【0043】
次に、このセラミックス基板の各々の表面をウエットブラスト装置(マコー株式会社製のPFE−300)により処理した。このウエットブラスト処理は、水中に平均粒径(D
50)20〜24μmの球状アルミナ砥粒を20体積%含むスラリーを(開口面積46.5mm
2のノズルから)エアー圧(吐出圧力)0.125MPaでセラミックス基板の表面に(スラリーが噴射される被処理面の面積が48.8mm
2になるように)0.05秒間噴射することによって行った。なお、吐出圧力をP1(MPa)、スラリーによりセラミックス基板の被処理面に加わる圧力をP2(MPa)、ノズルの開口面積をS1(mm
2)、スラリーが噴射される被処理面の面積をS2(mm
2)として、P2=P1×S1/S2からセラミックス基板の被処理面に加わる圧力P2を求めたところ、0.119MPaであった。
【0044】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、上記と同様の方法により抗折強度を測定したところ、408MPaであった。
【0045】
また、ウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、上記と同様の方法により残留応力を求めたところ、セラミックス基板に付与された残留応力の平均値は−78MPaの圧縮残留応力であった。
【0046】
さらに、ウエットブラスト処理後のセラミックス基板の表面粗さについて、上記と同様の方法により算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、最大高さRyを算出したところ、算術平均粗さRaは0.180μm、十点平均粗さRzは0.860μm、最大高さRyは1.080μmであった。
【0047】
次に、このウエットブラスト処理後のセラミックス基板の両面に、30質量%のCuと1.5質量%のTiを含み、残部がAgからなるAg−Cu−Ti系ろう材ペーストを塗布した後、このろう材ペーストを介して、セラミックス基板の各々の面に、縦51.5mm×横46.5mm×厚さ0.25mmの無酸素銅からなる(回路パターン用)金属板と、縦51.5mm×横46.5mm×厚さ0.25mmの無酸素銅からなる(放熱用)金属板を重ねて接合炉に入れ、真空中で850℃に加熱して金属板をセラミックス基板に接合した。この接合体を炉から取り出した後、それぞれの金属板上に所定の回路パターン形状および放熱板形状のエッチングレジストを形成し、薬液でエッチングして不要な金属板およびろう材を除去し、その後、回路パターン形状および放熱板形状の金属板上にNi−P無電解めっきにより厚さ2μmのめっき皮膜を形成して、金属−セラミックス回路基板を作製した。
【0048】
このようにして作製した金属−セラミックス回路基板について、通炉処理(380℃で10分間加熱した後に室温に戻すヒートサイクル)前の(初期の)抗折強度を測定したところ、10枚の同じ金属−セラミックス回路基板の平均値で600MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度は、10枚の同じ金属−セラミックス回路基板の平均値で545MPa、10枚の同じ金属−セラミックス回路基板の最小値で419MPaであった。なお、金属−セラミックス回路基板の抗折強度は、セラミックス基板の抗折強度と同様の方法により測定した。また、通炉処理50回後に、金属−セラミックス回路基板から金属板を剥離して40倍の拡大鏡で目視観察したところ、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通するクラック(貫通クラック)がないことが確認された。
【0049】
なお、金属−セラミックス回路基板から金属板を剥離して、セラミックス基板の残留応力を、ウエットブラスト処理後のセラミックス基板の残留応力と同様の方法により求めたところ、(金属−セラミックス回路基板の作製前の)ウエットブラスト処理後のセラミックス基板の残留応力とほとんど変わらなかった。
【0050】
[実施例2]
吐出圧力を0.150MPaとし、被処理面の圧力を0.143MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0051】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は416MPa、残留応力は−90MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.182μm、十点平均粗さRzは0.980μm、最大高さRyは1.340μmであった。
【0052】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は650MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は500MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は427MPaであり、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認された。
【0053】
[実施例3]
吐出圧力を0.175MPaとし、被処理面の圧力を0.167MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0054】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は336MPa、残留応力は−80MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.176μm、十点平均粗さRzは0.780μm、最大高さRyは1.000μmであった。
【0055】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は615MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は505MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は377MPaであり、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認された。
【0056】
[実施例4]
吐出圧力を0.200MPaとし、被処理面の圧力を0.191MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0057】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は329MPa、残留応力は−95MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.180μm、十点平均粗さRzは0.820μm、最大高さRyは1.640μmであった。
【0058】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は600MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は550MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は475MPaであり、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認された。
【0059】
[実施例5]
吐出圧力を0.225MPaとし、被処理面の圧力を0.214MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0060】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は373MPa、残留応力は−75MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.207μm、十点平均粗さRzは0.967μm、最大高さRyは1.267μmであった。
【0061】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は597MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は550MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は394MPaであり、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認された。
【0062】
[実施例6]
球状アルミナ砥粒の平均粒径(D
50)を49〜53μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0063】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は339MPa、残留応力は−80MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.158μm、十点平均粗さRzは0.940μm、最大高さRyは1.260μmであった。
【0064】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は585MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は495MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は395MPaであり、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認された。
【0065】
[実施例7]
球状アルミナ砥粒の平均粒径(D
50)を49〜53μmとした以外は、実施例5と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0066】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は283MPa、残留応力は−100MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.160μm、十点平均粗さRzは1.001μm、最大高さRyは1.489μmであった。
【0067】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は534MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は464MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は393MPaであり、通炉処理25回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックがないことが確認されたが、通炉処理30回後でセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックが生じたことが確認された。
【0068】
[比較例1]
実施例1と同様のセラミックス基板の各々の表面をホーニング装置(株式会社石井表記製のジェットスクラブ研磨紙)により処理した。このホーニング処理は、平均粒径50μmのアルミナ(粒度#280)からなる砥粒を(開口面積3mm
2のノズルから)エアー圧(吐出圧力)0.300MPaでセラミックス基板の表面に、(砥粒が噴射される被処理面の面積が159mm
2になるように)15秒間噴射することによって行った。なお、吐出圧力をP1(MPa)、スラリーによりセラミックス基板の被処理面に加わる圧力をP2(MPa)、ノズルの開口面積をS1(mm
2)、スラリーが噴射される被処理面の面積をS2(mm
2)として、P2=P1×S1/S2からセラミックス基板の被処理面に加わる圧力P2を求めたところ、0.006MPaであった。
【0069】
このホーニング処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は549MPa、残留応力は−40MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.135μm、十点平均粗さRzは0.702μm、最大高さRyは0.980μmであった。
【0070】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は545MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は282MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は229MPaであり、通炉処理20回後でセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックが生じたことが確認された。
【0071】
[比較例2]
比較例1のホーニング処理を2回行った以外は、比較例1と同様の方法により、セラミックス基板のホーニング処理を行った。
【0072】
このホーニング処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は568MPa、残留応力は−43MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.153μm、十点平均粗さRzは0.794μm、最大高さRyは0.950μmであった。
【0073】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は555MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は330MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は275MPaであり、通炉処理20回後でセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックが生じたことが確認された。
【0074】
[比較例3]
水中に平均粒径57μmのアルミナ(粒度#320)からなる砥粒を20体積%含むスラリーを使用し、吐出圧力を0.150MPaとし、被処理面の圧力を0.143MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0075】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は434MPa、残留応力は−37MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.134μm、十点平均粗さRzは0.774μm、最大高さRyは0.922μmであった。
【0076】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は542MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は252MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は182MPaであり、通炉処理25回後でセラミックス基板にクラックが生じたことが確認された。
【0077】
[比較例4]
水中に平均粒径28μmのアルミナ(粒度#600)からなる砥粒を20体積%含むスラリーを使用し、吐出圧力を0.250MPaとし、被処理面の圧力を0.238MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0078】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は392MPa、残留応力は−38MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.186μm、十点平均粗さRzは1.294μm、最大高さRyは1.758μmであった。
【0079】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は547MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は248MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は210MPaであり、通炉処理20回後でセラミックス基板にクラックが生じたことが確認された。
【0080】
[比較例5]
吐出圧力を0.250MPaとし、被処理面の圧力を0.238MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板のウエットブラスト処理を行った。
【0081】
このウエットブラスト処理後のセラミックス基板について、実施例1と同様の方法により、抗折強度、残留応力および表面粗さを求めたところ、抗折強度は375MPa、残留応力は−80MPa、表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaは0.578μm、十点平均粗さRzは2.988μm、最大高さRyは3.966μmであった。
【0082】
また、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス接合基板を作製し、抗折強度を測定するとともに、通炉処理後の貫通クラックの有無を観察したところ、通炉処理前の(初期の)抗折強度の平均値は509MPaであり、通炉処理3回後の抗折強度の平均値は212MPa、通炉処理3回後の抗折強度の最小値は173MPaであり、通炉処理20回後でセラミックス基板にクラックが生じたことが確認された。
【0083】
また、実施例1〜7および比較例1〜5で得られたウエットブラスト処理後のセラミックス基板の残留応力層の厚さを求めるために、それぞれのセラミックス基板の表面を厚さ25μmだけ研磨加工により除去した後に、ビッカース圧子を研磨加工面に打ち込んで、圧痕から伸展したクラックの長さを測定することによって、破壊靭性値を算出したところ、いずれも2.1MPa・m
1/2以下あった。この結果から、これらのセラミックス基板の残留応力層の厚さは、いずれも25μm以下であることがわかった。
【0084】
なお、セラミックス基板の研磨加工は、研磨機として横型平面研削盤(ヨコハマセラミックス株式会社製のYCC−H1)を使用し、砥石(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を使用して行った。また、破壊靭性値は、JIS R1617(2002年)のIF(Indentation Fracture)法に準じて、ビッカース硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製のAVK−CO)により、押込荷重49N、保持時間15秒として、圧痕から伸展したクラックの長さを測定し、Kc=0.026(E
1/2P
1/2a)/C
3/2(式中、Kcは破壊靭性値(MPa・m
1/2)、Eはヤング率(Pa)=280MPa、Pは押込荷重(N)、Cはクラックの長さの平均の半分(m)、aは圧痕の対角線の長さの平均の半分(m))から算出した。
【0085】
また、実施例5および7と比較例1および5で得られた金属−セラミックス回路基板を厚さ方向に切断し、その断面の接合界面近傍を電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)(JEOL社製JSM−6700F)により1万倍に拡大して70視野について観察したところ、実施例5では15本、実施例7では16本、比較例1では2本、比較例5では20本の幅0.1μm以下の(金属−セラミックス回路基板の厚さ方向に5μm程度延びる)超微細クラックが存在し、これらの超微細クラック内にろう材が侵入していることがわかった。実施例5および7では、このようにろう材が侵入した超微細クラックの数が多いことから、通炉処理50回後でもセラミックス基板の厚さ方向に貫通クラックが生じるのを防止することができると考えられる。
【0086】
これらの実施例および比較例のセラミックス基板のウエットブラスト処理またはホーニング処理の条件を表1に示し、これらの処理後のセラミックス基板の抗折強度、残留応力、残留応力層の厚さ、表面粗さ、超微細クラック数を表2に示し、これらのセラミックス基板を使用して作製した金属−セラミックス回路基板の通炉処理前後の抗折強度および貫通クラックが生じる通炉処理回数を表3に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
表1〜表3からわかるように、金属−セラミックス回路基板の通炉処理3回後の抗折強度は、比較例1〜5では平均値で330MPa以下(最小値で275MPa以下)と低いのに対して、実施例1〜7では平均値で464MPa以上(最小値で377MPa以上)と高く、また、セラミックス基板に貫通クラックが生じる通炉処理回数は、比較例1〜5では25回以下と低いのに対して、実施例7では25〜30回であるものの、実施例1〜6では50回以上と高くなっている。これらの結果から、実施例1〜7の金属−セラミックス回路基板は、比較例1〜5の金属−セラミックス回路基板と比べて、耐ヒートサイクル特性に優れていることがわかる。