特許第6305040号(P6305040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305040
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   H01L21/304 643C
   H01L21/304 643A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-250959(P2013-250959)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-109327(P2015-109327A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】楊 云峰
(72)【発明者】
【氏名】山田 将二郎
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0048056(US,A1)
【文献】 特開昭61−296724(JP,A)
【文献】 特開平06−031207(JP,A)
【文献】 特開平07−024736(JP,A)
【文献】 米国特許第2504216(US,A)
【文献】 特開2012−190868(JP,A)
【文献】 特開2009−111220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を洗浄し、被洗浄物に付着した異物を除去する洗浄装置であって、
被洗浄物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被洗浄物に対面し、洗浄液を噴射して被洗浄物を洗浄する洗浄手段と、を備え、
該洗浄手段は、
該チャックテーブルに保持された被洗浄物に該洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、
該洗浄ノズルの噴射口を囲む環状のスリットから該洗浄液を噴出し、該スリットから該チャックテーブルに保持された被洗浄物まで続くスカート状の水膜を形成する水膜形成ノズルと、を有し、
該水膜形成ノズルは、
該洗浄ノズルを囲む環状に形成された環状流路と、
該環状流路の下端部に接続されるとともに、該洗浄ノズルを囲む環状に形成された噴射流路と、
該噴射流路の下流端に形成された環状の該スリットと、を含み、
該噴射流路は、該環状流路よりも狭く、外側へと向かうように湾曲しており、
該洗浄ノズルから噴射される該洗浄液の液柱はスカート状の該水膜で周囲を囲まれることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルから噴射される前記洗浄液は、エアーと混合した状態で噴射されることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の板状物を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にIC等のデバイスが形成された半導体ウェーハ等の板状物は、分割予定ライン(ストリート)に沿ってダイシングされ、各デバイスに対応する複数のチップへと分割される。ダイシング後の板状物は、切削屑等の異物で汚染されているので、この異物を除去するために洗浄装置で洗浄される。
【0003】
板状物を洗浄する洗浄装置は、洗浄用の空間を構成するチャンバーと、チャンバー内において板状物を吸引保持して回転するチャックテーブルと、チャックテーブルの上方から洗浄液を噴射する洗浄ノズルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。板状物を吸引保持したチャックテーブルを回転させて、洗浄ノズルから板状物に向けて洗浄液を噴射することで、板状物に付着した異物を除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−243833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した洗浄装置で噴射される洗浄液の圧力は非常に高いため、板状物との衝突によって洗浄液はミスト状に飛散する。飛散したミスト状の洗浄液には、板状物から除去された切削屑等の異物が含まれている。そのため、このミスト状の洗浄液が板状物に付着すると、せっかく洗浄した板状物が異物で再び汚染されてしまう。
【0006】
チャンバーの下部には、ミスト状に飛散した洗浄液を含むチャンバー内のエアーを排出する排出口が設けられている。しかしながら、この排出口のみでは、ミスト状に飛散した洗浄液の板状物への付着を十分に防ぐことができないという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ミスト状に飛散した洗浄液が被洗浄物に付着するのを防止できる洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、被洗浄物を洗浄し、被洗浄物に付着した異物を除去する洗浄装置であって、被洗浄物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被洗浄物に対面し、洗浄液を噴射して被洗浄物を洗浄する洗浄手段と、を備え、該洗浄手段は、該チャックテーブルに保持された被洗浄物に該洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、該洗浄ノズルの噴射口を囲む環状のスリットから該洗浄液を噴出し、該スリットから該チャックテーブルに保持された被洗浄物まで続くスカート状の水膜を形成する水膜形成ノズルと、を有し、該水膜形成ノズルは、該洗浄ノズルを囲む環状に形成される環状流路と、該環状流路の下端部に接続されるとともに、該洗浄ノズルを囲む環状に形成された噴射流路と、該噴射流路の下流端に形成された環状の該スリットと、を含み、該噴射流路は、該環状流路よりも狭く、外側へと向かうように湾曲しており、該洗浄ノズルから噴射される該洗浄液の液柱はスカート状の該水膜で周囲を囲まれることを特徴とする洗浄装置が提供される。
【0009】
本発明において、前記洗浄ノズルから噴射される前記洗浄液は、エアーと混合した状態で噴射されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄装置は、洗浄ノズルから噴射される洗浄液の周囲を囲み、スリットから被洗浄物まで続く洗浄液の水膜を形成する水膜形成ノズルを備えるので、洗浄ノズルから噴射される洗浄液と被洗浄物との衝突で発生するミスト状の洗浄液は、水膜形成ノズルで形成される水膜より外側の領域に飛散しない。
【0011】
このように、ミスト状の洗浄液が発生する領域を、水膜形成ノズルによって形成される水膜で囲むことにより、ミスト状の洗浄液の飛散を抑制できる。よって、ミスト状に飛散した洗浄液が被洗浄物に付着するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る洗浄装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2】洗浄ユニットを拡大した一部断面側面図である。
図3】洗浄ユニットによって生じる洗浄液の流れを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る洗浄装置の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、図1では、洗浄装置で洗浄される被洗浄物を併せて示している。図1に示すように、洗浄装置2は、基台4の上面に開口された円筒状の空間でなるチャンバー6を備えている。
【0014】
チャンバー6内には、被洗浄物11を吸引保持して回転する円盤状のチャックテーブル(スピンナテーブル)8が配置されている。チャックテーブル8の周囲には、被洗浄物11を支持する環状のフレーム17を四方から挟持固定する4個のクランプ10が設置されている。
【0015】
被洗浄物11は、例えば、円盤状の半導体ウェーハであり、その表面側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられている。デバイス領域は、格子状に配列されたストリート(分割予定ライン)でさらに複数の領域に区画されており、各領域にはIC等のデバイス13が形成されている。
【0016】
被洗浄物11の裏面側には、被洗浄物11より大径のダイシングテープ15が貼着されている。ダイシングテープ15の外周部分は、環状のフレーム17に固定されている。すなわち、被洗浄物11はダイシングテープ15を介してフレーム17に支持されている。なお、図1では、ストリートに沿って加工された後の被洗浄物11を示している。
【0017】
チャックテーブル8は、モータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、鉛直方向に伸びる回転軸の周りに回転する。チャックテーブル8の上面は、被洗浄物11を吸引保持する保持面8aとなっている。
【0018】
保持面8aは、チャックテーブル8の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されている。被洗浄物11は、保持面8aに作用する吸引源の負圧でチャックテーブル8に吸引保持される。
【0019】
チャンバー6の底部には、チャンバー6内に滞留するエアー等をチャンバー6外に排出する排出口12が設けられている。排出口12は、基台4の内部に形成された流路(不図示)を通じて排出ポンプ(不図示)と接続されている。
【0020】
チャックテーブル8の上方には、チャックテーブル8に吸引保持された被洗浄物11を洗浄する洗浄ユニット(洗浄手段)14が配置されている。この洗浄ユニット14は、L字状の支持アーム16を介して駆動機構(不図示)に連結されており、チャックテーブル8の上方において径方向に搖動される。
【0021】
図2は、洗浄ユニット14を拡大した一部断面側面図である。なお、図2では、洗浄ユニット14によって形成される洗浄液の流れを併せて示している。図2に示すように、洗浄ユニット14は、支持アーム16の連結具18に連結された円筒状の洗浄ノズル20と、洗浄ノズル20に係合された水膜形成ノズル22とを備えている。
【0022】
洗浄ノズル20の内部には、洗浄液を流す流路(不図示)が形成されている。この流路の上流端は、支持アーム16及び連結具18の内部に設けられた流路(不図示)と接続されており、洗浄ノズル20には、支持アーム16及び連結具18の内部に設けられた流路等を通じて、洗浄液供給源(不図示)からの洗浄液が供給される。
【0023】
洗浄ノズル20の下端面20aには、洗浄ノズル20の内部に形成された流路の下流端を外部に連通させる噴射口(不図示)が形成されている。洗浄液供給源から供給された洗浄液は、この噴射口を通じて、チャックテーブル8上の被洗浄物11に噴射される。
【0024】
洗浄ノズル20から被洗浄物11に噴射される洗浄液(液柱)A1は、被洗浄物11の表面(又は裏面)に垂直な柱状となる。なお、この洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1には、エアーが混合されていることが好ましい。これにより、被洗浄物11に付着した切削屑等の異物を効果的に除去できる。
【0025】
水膜形成ノズル22の中央には、この水膜形成ノズル22を上下に貫通する開口22aが形成されている。開口22aの内周の形状は、洗浄ノズル20の外周面20bの形状に合致しており、開口22aに洗浄ノズル20を挿通することで、水膜形成ノズル22は洗浄ノズル20に結合される。
【0026】
水膜形成ノズル22の上面には、開口22aと隣接する位置に配置された連結具24を介して、支持アーム16の流路から分岐された配管26が接続されている。この連結具24及び配管26によって、洗浄液供給源から水膜形成ノズル22に洗浄液を供給する分岐流路が形成されている。
【0027】
この分岐流路は、水膜形成ノズル22の上面に開口された供給口22bを通じて、水膜形成ノズル22の内部に形成された環状流路22cと接続されている。環状流路22cは、開口22aを囲む環状(同心円状)に形成されており、水膜形成ノズル22に供給された洗浄液は、この環状流路22cによって開口22aの周りに導かれる。
【0028】
環状流路22cの下端部には、開口22aを囲む環状の噴射流路22dが接続されている。この噴射流路22dは、下流側において水膜形成ノズル22の外側へと向かうように傾斜されている。また、噴射流路22dの幅は、下流側へと向かうにつれて徐々に狭くなっている。
【0029】
噴射流路22dの下流端には、噴射流路22dに供給された洗浄液を噴射する環状のスリット22eが形成されている。このスリット22eは、噴射流路22dと同様、開口22aを囲むように形成されている。また、スリット22eの隙間は、全周において一定になっている。さらに、スリット22eは、噴射流路22dを通過した洗浄液が斜め下方(又は、側方)に噴射されるように構成されている。
【0030】
上述のように、スリット22eの隙間は全周において一定になっているので、スリット22eから噴射される洗浄液(水膜)Bは、膜状になる。また、スリット22eは開口22aを囲む環状に形成されているので、スリット22eから噴射される洗浄液Bによって、開口22a内の洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1は囲まれる。
【0031】
このように、水膜形成ノズル22によって、洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1を囲む錘状(錐台状、スカート状)かつ膜状の洗浄液Bを噴射することで、洗浄液A1と被洗浄物11との衝突によって発生するミスト状の洗浄液の飛散を防止できる。なお、水膜形成ノズル22の下端部の内壁面22fは、洗浄液Bの噴射を阻害しないように、下方に向かって拡径されたなめらかな曲面形状となっている。
【0032】
次に、洗浄ユニット14によって生じる洗浄液の流れについて説明する。図3は、洗浄ユニット14によって生じる洗浄液の流れを模式的に示す平面図である。図2及び図3に示すように、被洗浄物11の洗浄を開始すると、洗浄ユニット14の洗浄ノズル20から柱状の洗浄液A1が噴射される。
【0033】
洗浄液A1が被洗浄物11に吹き付けられると、その一部は、切削屑等の異物を除去しながら被洗浄物11の表面を放射状(外向き)に流れる。しかしながら、洗浄液A1の噴射圧力は非常に高いため、被洗浄物11との衝突によって、表面を放射状に流れる洗浄液A2とは別に、ミスト状に飛散する洗浄液A3,Mが発生する。
【0034】
ミスト状に飛散する洗浄液A3,Mには、被洗浄物11から除去された切削屑等の異物が含まれている。そのため、このミスト状の洗浄液A3,Mが被洗浄物11の洗浄済み領域に付着すると、せっかく洗浄した被洗浄物11が異物で再び汚染されてしまう。
【0035】
これに対して、本実施の形態に係る洗浄装置2は、洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1を囲む錘状かつ膜状の洗浄液Bを噴射する水膜形成ノズル22を備えるので、ミスト状の洗浄液A3,Mを膜状の洗浄液Bに取り込んで、洗浄液Bより外側の領域への飛散を防止できる。
【0036】
なお、ミスト状の洗浄液A3,Mを取り込んだ洗浄液Bは、被洗浄物11の表面を放射状に流れる洗浄液A2と合流して、被洗浄物11の表面を放射状に流れる洗浄液Cとなり、被洗浄物11の外部に排出される。
【0037】
以上のように、本実施の形態に係る洗浄装置2は、洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1の周囲を囲み、スリット22eから被洗浄物11まで続く膜状の洗浄液(水膜)Bを噴射(形成)する水膜形成ノズル22を備えるので、洗浄ノズル20から噴射される洗浄液A1と被洗浄物11との衝突で発生するミスト状の洗浄液A3,Mは、水膜形成ノズルで噴射される膜状の洗浄液Bより外側の領域に飛散しない。
【0038】
このように、ミスト状の洗浄液A3,Mが発生する領域を、水膜形成ノズル22によって噴射される膜状の洗浄液Bで囲むことにより、ミスト状の洗浄液A3,Mの飛散を抑制できる。よって、ミスト状に飛散した洗浄液A3,Mが被洗浄物11に付着するのを防止できる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、1個の部品でなる水膜形成ノズル22を例示しているが、水膜形成ノズル22は複数の部品で構成されていても良い。
【0040】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0041】
2 洗浄装置
4 基台
6 チャンバー
8 チャックテーブル(スピンナテーブル)
8a 保持面
10 クランプ
12 排出口
14 洗浄ユニット(洗浄手段)
16 支持アーム
18 連結具
20 洗浄ノズル
20a 下端面
20b 外周面
22 水膜形成ノズル
22a 開口
22b 供給口
22c 環状流路
22d 噴射流路
22e スリット
22f 内壁面
24 連結具
26 配管
11 被洗浄物
13 デバイス
15 ダイシングテープ
17 フレーム
A1 洗浄液(液柱)
A2 洗浄液
A3 洗浄液
B 洗浄液(水膜)
C 洗浄液
M 洗浄液
図1
図2
図3