特許第6305280号(P6305280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305280
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】蛍光X線分析装置及びその試料表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   G01N23/223
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-173681(P2014-173681)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48216(P2016-48216A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年8月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】八木 勇夫
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033407(JP,A)
【文献】 特開2004−012238(JP,A)
【文献】 特開2004−191183(JP,A)
【文献】 米国特許第07856081(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を設置可能な試料台と、
前記試料台を移動可能な試料移動機構と、
前記試料に対して一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
前記試料台上の前記試料を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部と、
前記画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイスと、
前記ポインティングデバイスで入力した前記画面中の位置に印を表示する画像処理部と、
前記試料移動機構と前記画像処理部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記試料移動機構により前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させ
複数の前記試料を、前記試料台に並べて設置した場合、
前記制御部が、番号を前記印として表示可能であることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
請求項に記載の蛍光X線分析装置において、
前記撮像部が、前記試料の撮像倍率を変えて前記画像を任意の表示倍率へ変更する機能を有し、
前記画像処理部が、前記撮像倍率に対応した前記入力した位置に前記印を表示することを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項3】
試料を設置可能な試料台と、
前記試料台を移動可能な試料移動機構と、
前記試料に対して一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
前記試料台上の前記試料を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部と、
前記画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイスと、
前記ポインティングデバイスで入力した前記画面中の位置に印を表示する画像処理部と、
前記試料移動機構と前記画像処理部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記試料移動機構により前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させ、
前記制御部が、前記印が表示された前記画面を画像データとして保存する機能を有していることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項4】
試料を設置可能な試料台と、
前記試料台を移動可能な試料移動機構と、
前記試料に対して一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
前記試料台上の前記試料を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部と、
前記画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイスと、
前記ポインティングデバイスで入力した前記画面中の位置に印を表示する画像処理部と、
前記試料移動機構と前記画像処理部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記試料移動機構により前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させ、
前記制御部が、前記入力した前記画面中の位置と前記画像とに基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データを記憶する機能を有し、
前記画像処理部が、前記試料台の移動により前記印が前記画面の表示領域から外れて前記画面に表示されなくなった後に、前記試料台の移動により前記印の位置データに基づく前記印の位置が再び前記表示領域内に位置した際、前記印の位置データに基づいて前記表示領域内に前記印を再び表示することを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項5】
試料を設置可能な試料台と、
前記試料台を移動可能な試料移動機構と、
前記試料に対して一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
前記試料台上の前記試料を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部と、
前記画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイスと、
前記ポインティングデバイスで入力した前記画面中の位置に印を表示する画像処理部と、
前記試料移動機構と前記画像処理部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記試料移動機構により前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させ、
前記制御部が、前記画像に基づいた前記試料台上の前記試料の位置データと前記入力した前記画面中の位置に基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データとを記憶する機能と、
前記試料の位置データに基づいて前記試料と同じ位置で新たに試料を前記試料台に設置した際に、前記印の位置データに基づいた同じ位置で前記印を前記画面に表示させる機能とを有していることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項6】
試料台に設置された試料を撮像部で撮像し、該撮像した画像をディスプレイ部に表示させ、前記試料台を移動することで前記試料に対するX線照射の位置合わせを行った後、測定または分析を行う蛍光X線分析装置の試料表示方法であって、
前記撮像部で前記試料の画像を取得する撮像工程と、
画像処理部により前記ディスプレイ部の画面に前記画像を表示する表示工程と、
前記画面上の任意の位置にポインティングデバイスで印を入力する入力工程と、
前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させる表示同期工程とを有し、
前記入力した前記画面中の位置と前記画像とに基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データを記憶する位置記憶工程と、
前記画像処理部が、前記試料台の移動により前記印が前記画面の表示領域から外れて前記画面に表示されなくなった後に、前記試料台の移動により前記印の位置データに基づく前記印の位置が再び前記表示領域内に位置した際、前記印の位置データに基づいて前記表示領域内に前記印を再び表示する工程とを有することを特徴とする蛍光X線分析装置の試料表示方法。
【請求項7】
試料台に設置された試料を撮像部で撮像し、該撮像した画像をディスプレイ部に表示させ、前記試料台を移動することで前記試料に対するX線照射の位置合わせを行った後、測定または分析を行う蛍光X線分析装置の試料表示方法であって、
前記撮像部で前記試料の画像を取得する撮像工程と、
画像処理部により前記ディスプレイ部の画面に前記画像を表示する表示工程と、
前記画面上の任意の位置にポインティングデバイスで印を入力する入力工程と、
前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させる表示同期工程とを有し、
前記画像に基づいた前記試料台上の前記試料の位置データと前記入力した前記画面中の位置に基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データとを記憶する位置記憶工程と、
前記試料の位置データに基づいて前記試料と同じ位置で新たに試料を前記試料台に設置した際に、前記印の位置データに基づいた位置で前記印を前記画面に表示させる再表示工程とを有していることを特徴とする蛍光X線分析装置の試料表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質の検出等が可能で製品のスクリーニング等あるいはメッキ等の膜厚測定に使用される蛍光X線分析装置及びその試料表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析は、X線源から出射されたX線を試料に照射し、試料から放出される特性X線である蛍光X線をX線検出器で検出することで、そのエネルギーからスペクトルを取得し、試料の定性分析若しくは定量分析又は膜厚測定を行うものである。この蛍光X線分析は、試料を非破壊で迅速に分析可能なため、工程・品質管理などで広く用いられている。近年では、高精度化・高感度化が図られて微量測定が可能になり、特に材料や複合電子部品などに含まれる有害物質の検出を行う分析手法として普及が期待されている。
【0003】
従来、このような蛍光X線分析の装置では、試料台に設置された試料を観察用カメラなどの撮像装置からの画像で確認し、XYステージなどの移動機構を用いて試料台を移動させて試料の位置合わせを行ってから、測定又は分析を行っている(例えば、特許文献1)。特に、多数の同じ形状をした試料を試料台に設置して測定する場合、XYステージを移動しながら、操作者が画面上で試料の個数を数えるなどして、所定の試料が測定位置に来るようにXYステージを移動させて位置合わせしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記従来の蛍光X線分析装置では、操作者が試料台の所定位置に試料を合わせる必要があり、試料の詳細な位置決めを試料観察用のカメラ画像を見て行っているが、図3の(a)に示すように、同一形状の試料Sが多数並んでいるものを一定個数置きに測定する場合など、図3の(b)に示すように、試料台を移動した際に、カメラ画像で見ている試料Sが何番目の試料Sかがわからなくなる場合があった。すなわち、操作者が、カメラ画像で試料Sの個数を目視で数えて、所望の測定対象である試料Sを見つけ、位置合わせを行っていることから、作業が煩雑になる上、正しい箇所を測定していることを確認することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、同じ形状をした多数の試料やラインパターンなどを一定間隔置きに測定する場合などで作業性が向上し、測定箇所が正しいことを容易に確認することができる蛍光X線分析装置及びその試料表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る蛍光X線分析装置は、試料を設置可能な試料台と、前記試料台を移動可能な試料移動機構と、前記試料に対して一次X線を照射するX線源と、前記一次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、前記試料台上の前記試料を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部と、前記画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイスと、前記ポインティングデバイスで入力した前記画面中の位置に印を表示する画像処理部と、前記試料移動機構と前記画像処理部とを制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記試料移動機構により前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させることを特徴とする。
【0008】
この蛍光X線分析装置では、制御部が、試料移動機構により試料台を移動させた際に、画像処理部により画面中の印を試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させるので、試料台の移動に合わせて画面中の印も同じように移動することで、画面中の試料と印との相対位置がずれずに表示される。したがって、操作者は、試料台を移動させた場合でも、数字(番号),絵(図形等),文字又は記号等の印を目印にしてX線照射点と試料との位置合わせを簡単に行うことが可能になる。
【0009】
第2の発明に係る蛍光X線分析装置は、第1の発明において、複数の前記試料を、前記試料台に並べて設置した場合、前記制御部が、番号を前記印として表示可能であることを特徴とする。
すなわち、この蛍光X線分析装置では、複数の試料を試料台に並べて設置した場合、制御部が、番号を印として表示可能であるので、例えばポインティングデバイスで指定した位置に対応した試料の並び順、すなわち並んだ試料の端から数えた際の順番の番号を画面中に表示することで、何番目の試料であるかを容易に確認することができる。
【0010】
第3の発明に係る蛍光X線分析装置は、第1又は第2の発明において、前記撮像部が、前記試料の撮像倍率を変えて前記画像を任意の表示倍率へ変更する機能を有し、前記画像処理部が、前記撮像倍率に対応した前記入力した位置に前記印を表示することを特徴とする。
すなわち、この蛍光X線分析装置では、画像処理部が、撮像倍率に対応した前記入力した位置に印を表示するので、撮像倍率が変更されても撮像倍率に合わせて表示された印を目印にすることができる。
【0011】
第4の発明に係る蛍光X線分析装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記制御部が、前記印が表示された前記画面を画像データとして保存する機能を有していることを特徴とする。
すなわち、この蛍光X線分析装置では、制御部が、印が表示された画面を画像データとして保存する機能を有しているので、試料と印とが一緒に表示された画面の画像データによって測定後でも、どの試料を測定したかを容易に確認することができる。
【0012】
第5の発明に係る蛍光X線分析装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記制御部が、前記入力した前記画面中の位置と前記画像とに基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データを記憶する機能を有し、前記画像処理部が、前記試料台の移動により前記印が前記画面の表示領域から外れて前記画面に表示されなくなった後に、前記試料台の移動により前記印の位置データに基づく前記印の位置が再び前記表示領域内に位置した際、前記印の位置データに基づいて前記表示領域内に前記印を再び表示することを特徴とする。
すなわち、この蛍光X線分析装置では、画像処理部が、試料台の移動により印が画面の表示領域から外れて画面に表示されなくなった後に、試料台の移動により印の位置データに基づく印の位置が再び表示領域内に位置した際、印の位置データに基づいて表示領域内に印を再び表示するので、画面の表示領域から印が外れるほど試料台を移動させたり表示画像を拡大/縮小させたりしても、元の位置や表示倍率に戻した際に表示領域に印を表示させることができる。
【0013】
第6の発明に係る蛍光X線分析装置は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記制御部が、前記画像に基づいた前記試料台上の前記試料の位置データと前記入力した前記画面中の位置に基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データとを記憶する機能と、前記試料の位置データに基づいて前記試料と同じ位置で新たに試料を前記試料台に設置した際に、前記印の位置データに基づいた同じ位置で前記印を前記画面に表示させる機能とを有していることを特徴とする。
すなわち、この蛍光X線分析装置では、以前測定した試料と同じ位置で新たに試料を試料台に設置した際に、記憶した位置データに基づいて印をディスプレイ部に撮像した画像と共に重ねて表示させる機能を有しているので、新しい試料を試料台上の同じ位置に設置すれば、改めてポインティングデバイスで位置を入力して印を表示させなくても、測定箇所を特定することが可能となり、さらに操作性が向上する。
【0014】
第7の発明に係る蛍光X線分析装置の試料表示方法は、試料台に設置された試料を撮像部で撮像し、該撮像した画像をディスプレイ部に表示させ、前記試料台を移動することで前記試料に対するX線照射の位置合わせを行った後、測定または分析を行う蛍光X線分析装置の試料表示方法であって、前記撮像部で前記試料の画像を取得する撮像工程と、画像処理部により前記ディスプレイ部の画面に前記画像を表示する表示工程と、前記画面上の任意の位置にポインティングデバイスで印を入力する入力工程と、前記試料台を移動させた際に、前記画像処理部により前記画面中の前記印を前記試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させる表示同期工程とを有していることを特徴とする。
【0015】
第8の発明に係る蛍光X線分析装置の試料表示方法は、第7の発明において、前記撮像部が、前記試料の撮像倍率を変えて前記画像を任意の表示倍率へ変更する際、前記画像処理部により、前記撮像倍率に対応した前記入力した位置に前記印を表示する表示倍率変更工程を有することを特徴とする。
【0016】
第9の発明に係る蛍光X線分析装置の試料表示方法は、第7又は第8の発明において、前記入力した前記画面中の位置と前記画像とに基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データを記憶する位置記憶工程と、前記画像処理部が、前記試料台の移動により前記印が前記画面の表示領域から外れて前記画面に表示されなくなった後に、前記試料台の移動により前記印の位置データに基づく前記印の位置が再び前記表示領域内に位置した際、前記印の位置データに基づいて前記表示領域内に前記印を再び表示する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
第10の発明に係る蛍光X線分析装置の試料表示方法は、第7から第9の発明のいずれかにおいて、前記画像に基づいた前記試料台上の前記試料の位置データと前記入力した前記画面中の位置に基づいて前記試料台上に対応する前記印の位置データとを記憶する位置記憶工程と、前記試料の位置データに基づいて前記試料と同じ位置で新たに試料を前記試料台に設置した際に、前記印の位置データに基づいた位置で前記印を前記画面に表示させる再表示工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る蛍光X線分析装置及びその試料表示方法によれば、試料移動機構により試料台を移動させた際に、画像処理部により画面中の印を試料台と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させるので、画面中の印を目印にしてX線照射点と試料との位置合わせを簡単に行うことが可能になる。特に、同一形状の複数の試料が並んでいる場合でも、画面中の印を目印にして測定対象である所望の試料を見つけ、測定箇所が正しいことを画面から簡単に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る蛍光X線分析装置及びその試料表示方法の一実施形態を示す概略的な全体構成図である。
図2】本実施形態において、ディスプレイ部による画面中の試料と印とを示す移動前後の表示例である。
図3】本発明に係る蛍光X線分析装置及びその試料表示方法の従来例において、ディスプレイ部による画面中の試料の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る蛍光X線分析装置及びその試料表示方法の一実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の蛍光X線分析装置1は、図1及び図2に示すように、試料Sを設置可能な試料台2と、試料台2を移動可能な試料移動機構3と、試料Sに対して一次X線X1を照射するX線源4と、一次X線X1を照射された試料Sから発生する蛍光X線X2を検出する検出器5と、試料台2上の試料Sを撮像する撮像部6と、撮像部6で撮像した画像を画面に表示するディスプレイ部7と、画面中で特定の位置を指定して入力可能なポインティングデバイス8と、ポインティングデバイス8で入力した画面中の位置に印Mを表示する画像処理部9と、試料移動機構3と画像処理部9とを制御する制御部Cとを備えている。
【0022】
上記制御部Cは、試料移動機構3により試料台2を移動させた際に、画像処理部9により画面中の印Mを試料台2と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させる機能を有している。すなわち、制御部Cは、試料台2の移動に同期させてディスプレイ部7の画面上に表示される印Mも試料Sと共に相対的に移動させる。
特に、図2に示すように、複数の試料Sを試料台2に並べて設置した場合、制御部Cは、番号を印Mとして表示可能である。
【0023】
また、上記撮像部6は、試料Sの撮像倍率を変えて画像を任意の表示倍率へ変更する機能を有している。
さらに、画像処理部9は、撮像倍率に対応した前記入力した位置に印Mを表示する機能を有している。例えば、撮像倍率が大きくなってディスプレイ部7の画面に表示される画像の表示倍率が大きくなった場合でも、その倍率に同期して画面中において試料台2上の同じ位置に印Mが表示される。
また、制御部Cは、印Mが表示された画面を画像データとして保存する機能を有している。
【0024】
また、制御部Cは、前記入力した画面中の位置と画像とに基づいて試料台2上に対応する印Mの位置データを記憶する機能を有している。すなわち、制御部Cは、入力された画面中の印Mの位置が、試料台2上のどの位置に対応するかを画像データから解析し、試料台2上の印Mの位置情報をデータとして記憶する。
さらに、画像処理部9は、試料台2の移動により印Mが画面の表示領域から外れて画面に表示されなくなった後に、試料台2の移動により印Mの位置データに基づく印Mの位置が再び表示領域内に位置した際、印Mの位置データに基づいて表示領域内に印Mを再び表示する機能を有している。
【0025】
さらに、制御部Cは、画像に基づいた試料台2上の試料Sの位置データと前記入力した画面中の位置に基づいて試料台2上に対応する印Mの位置データとを記憶する機能と、試料Sの位置データに基づいて試料Sと同じ位置で新たに試料Sを試料台2に設置した際に、印Mの位置データに基づいた同じ位置で印Mを画面に表示させる機能とを有している。
【0026】
また、この蛍光X線分析装置1は、検出器5に接続され検出器5からの信号を分析する分析器10と、X線源4,検出器5,撮像部6,試料台2及び試料移動機構3を収納する筐体11とを備えている。
上記試料台2は、複数の試料Sが載置可能であり、少なくとも平面方向(X方向及びY方向)に進退可能なXYステージである試料移動機構3上に設置されている。
上記撮像部6は、CCD等を搭載した観察用カメラであり、試料台2の上部に設置されており、試料台2上の試料Sを撮像可能である。
【0027】
上記X線源4は、一次X線X1を照射可能なX線管球であって、管球内のフィラメント(陰極)から発生した熱電子がフィラメント(陰極)とターゲット(陽極)との間に印加された電圧により加速されターゲットのW(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)などに衝突して発生したX線を一次X線X1としてベリリウム箔などの窓から出射するものである。
【0028】
上記検出器5は、X線入射窓(図示略)に設置されている半導体検出素子(例えば、pin構造ダイオードであるSi(シリコン)素子)(図示略)を備え、X線光子1個が入射すると、このX線光子1個に対応する電流パルスが発生するものである。この電流パルスの瞬間的な電流値が、入射した特性X線のエネルギーに比例している。また、検出器5は、半導体検出素子で発生した電流パルスを電圧パルスに変換、増幅し、信号として出力するように設定されている。
【0029】
上記分析器10は、上記信号から電圧パルスの波高を得てエネルギースペクトルを生成する波高分析器(マルチチャンネルアナライザー)である。
上記制御部Cは、CPU等で構成されたコンピュータであり、X線源4,検出器5,ディスプレイ部7等の各部にも接続され、これらを制御すると共に分析結果をディスプレイ部7に表示する機能を有している。
【0030】
上記ポインティングデバイス8としては、マウス、トラックボール、タッチパッド等が採用可能である。本実施形態では、マウスをポインティングデバイス8として用いている。
上記印Mは、数字(番号),絵(図形等),文字又は記号等のマークであり、ポインティングデバイス8で位置を指定した後にキーボードを用いて入力しても構わないと共に、ポインティングデバイス8で直接画面上に線を引いて記入するように設定しても構わない。
上記ディスプレイ部7では、中央に十字線が表示されており、この十字線の交点がX線照射点Pとなるように設定されている。
【0031】
次に、本実施形態のX線分析装置1を用いた試料表示方法について説明する。
本実施形態の試料表示方法は、試料台2に設置された試料Sを撮像部6で撮像し、該撮像した画像をディスプレイ部7に表示させ、試料台2を移動することで試料Sに対するX線照射の位置合わせを行った後、測定または分析を行う方法である。この試料表示方法は、撮像部6で試料Sの画像を取得する撮像工程と、画像処理部9によりディスプレイ部7の画面に前記画像を表示する表示工程と、画面上の任意の位置にポインティングデバイス8で印Mを入力する入力工程と、試料台2を移動させた際に、画像処理部9により画面中の印Mを試料台2と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させる表示同期工程とを有している。
【0032】
以下、本実施形態の試料表示方法を用いてX線分析装置1において複数の試料Sを測定する手順について具体的に説明する。
例えば図2の(a)に示すように、複数の試料Sが試料台2上に一列に並べられている場合、ポインティングデバイス8によりディスプレイ部7の画面上に番号(数字)を印Mとして記入する。すなわち、並んだ試料Sのうち一番左端の試料Sの上部近傍をポインティングデバイス8で指定し、1番目の試料Sである印Mとして「1」と入力し、画面に表示する。
【0033】
これによって、スーパーインポーズ的に試料Sと印Mとが一緒に重ねて画面表示される。次に、左端から5番目の試料Sの上部近傍に、5番目の試料Sである印Mとして「5」と入力し、画面に表示する。さらに、5つ置きに試料Sの上部近傍をポインティングデバイス8で指定し、左端から数えた際の試料Sの番号を印Mとして入力し、画面に表示する。
【0034】
このようにディスプレイ部7の画面上には、5つ置きに印Mとして試料Sの近傍に数字が記入、表示された状態となる。この状態で、これら試料Sの中で一定個数置き、例えば10個置きに抜き取り測定を行う場合、まず試料移動機構3により「5」の印Mが上に表示された試料Sに、X線照射点Pを位置合わせし、この試料Sの蛍光X線分析を行う。この際、制御部Cは、試料台2の移動に同期して画面中の印Mも同方向に同距離だけ移動するように画像処理部9を制御する。これにより、試料移動機構3による位置合わせに応じて画面中の印Mが試料Sと共に相対的に移動する。
【0035】
次に、試料移動機構3により試料台2を左に移動させ、「15」の印Mが上に表示された試料Sに、X線照射点Pを位置合わせし、この試料Sの蛍光X線分析を行う。この際も、制御部Cは、画像処理部9により試料台2の移動に合わせて画面中の印Mを試料Sと共に移動させて表示させる。なお、移動によって印Mが画面から外れても、元の位置に再度移動で戻せば対応する位置に印Mは画面上に再び表示される。このようにして、10個置きに印Mの数字を目印にして試料移動機構3により試料台2を移動させることで、所望の測定対象である試料SにX線照射点Pを容易に位置合わせすることができる。
【0036】
また、広域の画像を表示させて試料Sの目的の測定位置に印Mを入力し、測定する任意の倍率に画像の拡大率を変えても、印Mは入力した目的の位置に表示される。広域の画像では、試料Sの目的の測定位置に印Mを入力することで、全体の中のどの部分を測定位置としたかが明確となる。よって、このようなメリットを残しつつ、試料画像の倍率を上げた場合でも、入力した印Mが目的位置に表示されることにより、表示画像の拡大/縮小により表示される視野領域から一旦外れた試料Sを再度視野領域内に戻した際であっても、印Mが同期しているため測定位置を正しく認識することができる。その際の印Mの表示の大きさは、元の倍率または測定倍率の間で一定又は倍率に合わせて可変するなど見やすい大きさを設定することができる。なお、試料台2の移動に伴い、視野領域から一旦外れた試料Sを再度視野領域内に戻した場合でも、入力した印Mが目的位置に表示される。
【0037】
なお、制御部Cは、各測定の際に、同時にディスプレイ部7に表示されている印Mが試料Sと共にディスプレイ部7に表示されている画面を画像データとして保存する。これにより、試料Sと印Mとが一緒に表示された画面の画像データによって測定後でも、どの試料Sを測定したかを容易に確認することができる。
【0038】
また、試料Sの測定が終了した後、新たに同じ形状の試料Sを測定する場合、以前と同じ試料台2の位置に新たに試料Sを設置すると共に、制御部Cに記憶させている印Mを、記憶させている位置データに基づいてディスプレイ部7の画面に表示させる。これによって、以前試料Sを測定した際と同様の位置に表示された印Mを目印にして、新たな試料Sについても同様に測定することができる。
【0039】
このように本実施形態の蛍光X線分析装置1及びその試料表示方法では、試料移動機構3により試料台2を移動させた際に、画像処理部9により画面中の印Mを試料台2と同じ移動方向に同じ移動距離だけ移動させて表示させるので、試料台2の移動に合わせて画面中の印Mも同じように移動することで、画面中の試料Sと印Mとの相対位置がずれることなく表示される。したがって、操作者は、試料台2を移動させた場合でも、数字(番号),絵(図形等),文字又は記号等の印Mを目印にしてX線照射点Pと試料Sとの位置合わせを簡単に行うことが可能になる。
【0040】
また、複数の試料Sを試料台2に並べて設置した場合、制御部Cが、番号を印として表示可能であるので、ポインティングデバイス8で指定した位置に対応した試料Sの並び順、すなわち並んだ試料の端から数えた際の順番の番号を画面中に表示することで、何番目の試料Sであるかを容易に確認することができる。特に、同一形状の試料Sが試料台2に多数並んでおり、これらの試料Sについて数個置きに抜き取り分析を行う場合などに適している。
【0041】
また、画像処理部9が、撮像倍率に対応した前記入力した位置に印Mを表示するので、撮像倍率が変更されても撮像倍率に合わせて表示された印Mを目印にすることができる。
さらに、画像処理部9が、試料台2の移動により印Mが画面の表示領域から外れて画面に表示されなくなった後に、試料台2の移動により印Mの位置データに基づく印Mの位置が再び表示領域内に位置した際、印Mの位置データに基づいて表示領域内に印Mを再び表示するので、画面の表示領域から印Mが外れるほど試料台2を移動させたり表示画像を拡大/縮小させたりしても、元の位置や表示倍率に戻した際に表示領域に印Mを表示させることができる。
【0042】
また、制御部Cが、印Mが表示された画面を画像データとして保存する機能を有しているので、試料Sと印Mとが一緒に表示された画面の画像データによって測定後でも、どの試料Sを測定したかを容易に確認することができる。
さらに、以前測定した試料Sと同じ位置で新たに試料Sを試料台2に設置した際に、記憶した位置データに基づいて印Mをディスプレイ部7に撮像した画像と共に重ねて表示させる機能を有しているので、新しい試料Sを設置して測定する際に、前回の印Mを同じ位置に再現して表示させることができる。したがって、新しい試料Sを設置し測定する度に、改めてポインティングデバイス8で位置を入力して印を表示させる必要が無くなり、さらに操作性が向上する。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、波高分析器でX線のエネルギーと強度とを測定するエネルギー分散方式の蛍光X線分析装置に適用したが、蛍光X線を分光結晶により分光し、X線の波長と強度を測定する波長分散方式の蛍光X線分析装置に適用しても構わない。
また、上記実施形態では、X線源と検出器とを試料の上方に配置しているが、試料台の下方に配置し、試料の下側を分析または測定しても構わない。さらに、検出器については、真空管タイプのものなどでも構わない。
【0045】
また、上記実施形態では、試料台に並べられた複数の試料について測定を行ったが、試料台に半導体装置や電子部品等の試料に形成されたラインパターンについて、複数箇所を測定するものに適用しても構わない。この場合、ディスプレイ部に画面に表示されたラインパターンの複数箇所又はその近傍に、それぞれ印をポインティングデバイスで記入し表示することで、ラインパターンにおける測定箇所を容易に確認することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…蛍光X線分析装置、2…試料台、3…試料移動機構、4…X線源、5…検出器、6…撮像部、7…ディスプレイ部、8…ポインティングデバイス、9…画像処理部、C…制御部、M…印、S…試料、X1…一次X線、X2…蛍光X線
図1
図2
図3