【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、溶融炭酸塩型燃料電池中でのメタンの水蒸気改質(特に、直接内部改質)用の触媒組成物であって、成分a)としての、ニッケルと、さらにはアルミニウムとマグネシウム、ケイ素、ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の他の元素との複合酸化物を含むニッケル触媒と、成分b)としての、水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]と水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]、酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる群から選ばれる他の一種の酸素含有アルミニウム化合物を含み、該触媒組成物が成分a)とb)の物理的混合物であるものに関する。
【0014】
本発明の触媒組成物では、「物理的混合物」とは、成分a)とb)が明らかに分離状態で存在し多相系となっている不均一混合物をさす。
【0015】
このような物理的混合物を得るには、以下に述べるように、好ましくは粉末状粒子として成分a)とb)を併用してよく混合する。混合は公知の何れのミキサーで行ってもよく、例えばドラムフープミキサー、粉末ミキサー、ターンブルミキサ、または他の本目的に適当なミキサーで行うことができる。
【0016】
本発明の触媒組成物の触媒活性相(成分a)は、例えば、ニッケルとアルミニウムとジルコニウムを含むか、ニッケルとマグネシウムとケイ素を含むことができるが、これらの元素/混合物に限定されない。先行技術から公知の高活性ニッケル含有触媒(特に、前改質や改質、水素化用の共沈触媒)が好ましい。例としては、BASF社の前改質触媒と改質触媒、具体的には60〜70質量%のNiOとさらにSiO
2とMgOと
Cr2O3を含む触媒G1−80と、60〜75質量%のNiOとさらにAl
2O
3とZrO
2を含む触媒G1−85があげられる。
【0017】
成分b)は、水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]、水酸化酸化アルミニウ
ム[AlO(OH)]または酸化アルミニウム[Al
2O
3]またはこれらの混合物を含むことができる。「水酸化アルミニウム」は、ギブサイト[γ−Al(OH)
3]、バイヤライト[α−Al(OH)
3]、またはゾル−ゲル法で得られる非晶質水酸化物をさす。水酸化酸化アルミニウムの場合、ベーマイト[γ−AlO(OH)]の使用が好ましい。ある好ましい実施様態においては、成分b)として高表面積の酸化アルミニウム相が使われ、例えばカイ−酸化アルミニウム(χ−Al
2O
3)、イータ−酸化アルミニウム(η−Al
2O
3)、ロー−酸化アルミニウム(ρ−Al
2O
3)、カッパ−酸化アルミニウム(κ−Al
2O
3)、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al
2O
3)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al
2O
3)、またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al
2O
3)が使われる。この酸化アルミニウム相は、γ−Al
2O
3、δ−Al
2O
3、またはθ−Al
2O
3、またはこれら三相の混合物を含むことが特に好ましい。成分b)の相の組成は、例えばX線回折で決定できる。
【0018】
本発明の触媒組成物の一つの好ましい実施様態は、ニッケルとアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物を成分a)として含み、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al
2O
3)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al
2O
3)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al
2O
3)またはこれらの混合物を成分b)として含む。
【0019】
この触媒組成物中の成分b)の量は、触媒組成物の総質量に対して1〜60質量%の範囲であり、好ましくは5〜50質量%の範囲、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。
【0020】
また、本発明の触媒組成物では、成分a)の粒子の粒度d
50が0.5〜1500μmであり、好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは1〜500μm、非常に特に好ましくは50〜300μmであり、成分b)の粒子の粒度d
50が0.3〜500μmであり、好ましくは0.5〜250μm、特に好ましくは1〜200μm、非常に特に好ましくは10〜150μmである。
【0021】
このd
50は、50%の粒子がこの値(粒子径)を持つことを意味する。触媒の粒度と粒度分布の測定は、測定範囲が0.02〜2000μmであるマルバーンマスターサイザー2000
(登録商標)を使用するレーザー光散乱で行われる。評価は、フラウンホーファー法で行われる。
【0022】
また、本発明の触媒組成物では、成分a)のBET表面積が20〜300m
2/gの範囲、好ましくは30〜250m
2/gの範囲、特に好ましくは50〜200m
2/gの範囲であり、成分b)のBET表面積が、20〜400m
2/gの範囲、好ましくは30〜300m
2/gの範囲、特に好ましくは50〜200m
2/gの範囲である。
【0023】
BET表面積の測定は、DIN66131に準じて行われる。評価は、5測定点を用いる多点法で行われる。測定直前の乾燥は200℃で行われる。p/p0=0.065〜0.208の圧力範囲を測定する。
【0024】
本発明はまた、ペレットまたは押出物に加工された触媒組成物であって、成分a)としての、ニッケルと、さらにはアルミニウムとマグネシウム、ケイ素、ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の他の元素との複合酸化物を含むニッケル触媒と、成分b)としての、水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]と水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]、酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる群から選ばれる他の一種の酸素含有アルミニウム化合物を含み、該触媒組成物が成分a)とb)の物理的混合物であるものを含む触媒材料を提供する。
【0025】
本発明の触媒材料の一つの好ましい実施様態は、バインダーや潤滑剤、他の加工助剤とは別に、実質的にニッケルとアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物を成分a)として含み、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al
2O
3)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al
2O
3)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al
2O
3)またはこれらの混合物を成分b)として含むペレット状のものである。
【0026】
溶融炭酸塩型燃料電池では、直径が0.8〜5mmの範囲(好ましくは1〜3mmの範囲、特に好ましくは1.5〜2.5mmの範囲であり、高さが1〜10mmの範囲(好ましくは1〜5mmの範囲、特に好ましくは1.5〜4mmの範囲)であるペレットが用いられる。
【0027】
本発明の触媒材料の、特に成分a)とb)に関する他の好ましい実施様態については、本発明の触媒組成物について上に説明したことを参照されたい。
【0028】
本発明はまた、上記触媒組成物の製造方法であって、以下の加工工程をその順で含む方法を提供する。
【0029】
a)成分a)及び/又はその可溶性出発化合物の溶液または分散液の製造; b)塩基の添加によるこの溶液または分散液からの固体の析出;
c)この固体の分離と乾燥;
d)必要なら、この固体の焼成;
e)必要なら、この固体の圧密化;
f)この固体のある均一な粒度への粉砕
g)この固体と成分b)の均一な混合。
【0030】
第一の加工工程である工程a)では、成分a)の溶液または分散液が、通常、例えば酢酸などの酸中への溶解または分散で製造される。必要なら、成分a)そのものに代えて、成分a)の出発化合物を使用することもできる。例えばその金属の硝酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩が、酸性水溶液中に、例えば硝酸を含む酸性水溶液中に溶解される。溶液中あるいは分散液中の塩の比率は、触媒組成物の所望最終組成に応じて化学量論的に計算され、決定される。
【0031】
工程b)では、この溶液または分散液から、固体が触媒組成物前駆体として析出させられる。これは従来法で行われ、好ましくは塩基の添加により、例えば水酸化ナトリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液の添加により、溶液または分散液のpHを増加させて行われる。
【0032】
生成する固体析出生成物は一般的には、例えば濾過またはデカンテーションで上澄液溶液から分離され、硝酸ナトリウムなどの可溶性成分がなくなるまで水で洗浄してから、工程c)の乾燥にかける。その際、この析出生成物は通常さらなる加工の前に、従来の乾燥方法により乾燥される。一般に、やや高温での、例えば少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましくは少なくとも120℃で、10分間〜12時間、好ましくは20分間〜6時間、特に好ましくは30分間〜2時間の処理を行えば、この目的に十分である。析出物を直接あるいは水洗後に噴霧乾燥してさらに加工可能な乾燥粉末とすることも可能であり、また特に好ましい。
【0033】
乾燥後にこの析出し乾燥された触媒組成物中間体を、必要なら焼成工程d)にかけてもよい。用いる焼成温度は、一般的には少なくとも250℃であり、好ましくは少なくとも300℃、特に好ましくは少なくとも350℃であり、また一般的には500℃以下、好ましくは450℃以下、特に好ましくは410℃以下である。焼成時間は、一般的には少なくとも10分間であり、好ましくは少なくとも20分間、特に好ましくは少なくとも30分間であり、また一般的には12時間以下、好ましくは6時間以下、特に好ましくは4時間以下である。乾燥工程c)と焼成工程d)は、相互に直接連結していてもよい。
【0034】
乾燥工程c)または焼成工程d)の後、この触媒組成物中間体を成形工程e)にかけることができる。これは、例えばローラーコンパクターで実施できる。
【0035】
この製造工程の間に、触媒組成物の成分a)が、加工工程d)とe)の少なくとも一つに、必要なら両方にかけられる。この焼成工程では、特にBET表面積と気孔容積が通常の方法で設定される。周知のように、焼成時間と焼成温度が増加するとBET表面積と気孔容積は減少する。
【0036】
炭酸イオン含量(CO
32−として計算)が焼成生成物の総質量に対して10質量%以下となり、そのBET表面積が少なくとも20m
2/gであり300m
2/g以下の範囲となるまでこの焼成を行うことが好ましい。
【0037】
加工工程f)での成分a)の固体の粉砕は、いずれの粉砕機で行ってもよく、例えばハンマーミルで行ってよく、所望粒度をもつ粒子の分離はサイクロンを用いて行うことができる。適当な大きさの触媒粒子の選別には、他の方法も考えられ、例えば遠心分離や沈降も考えられる。
【0038】
この粉砕工程では、成分a)の固体が、一般的にはd
50が0.5〜1500μmの均一な粒度になるまで、好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは1〜500μm、非常に特に好ましくは50〜300μmの均一な粒度になるまで粉砕される。
【0039】
本発明の触媒組成物の最後の製造工程では、これらの成分a)とb)が併用されてよく混合される。混合は、公知の何れのミキサー中で行うこともでき、例えばドラムフープミキサーか粉末ミキサー、ターンブルミキサ、他の本目的に適当なミキサー中で行うことができる。
【0040】
この混合物に他の添加物(例えば、バインダーや潤滑剤、他の加工助剤)を添加することもできる。これらは、成分a)とb)の添加前に、添加後に、あるいはこれらと同時に添加できる。潤滑剤(例えば、グラファイトやステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、他の先行技術から公知の潤滑剤)は、本発明の触媒組成物を適当な形状に成形する際に役立つ。
【0041】
本発明はまた、上記触媒材料の製造方法であって、上に包括的に述べた触媒組成物の粉末または顆粒を、打錠または押出により成型する方法を提供する。特に、以下の方法が考えられる:
−前処理粉末の前圧縮と打錠でのペレット形成、
−液体との混合と、混錬/パンミル粉砕、押し出しによる棒状押出物の形成。
【0042】
本方法のある好ましい実施様態は、前処理粉末を打錠し、偏心式プレスまたはロータリープレス中でペレットを形成することである。
【0043】
この触媒材料と触媒組成物は、特に燃料電池中の改質触媒としての利用に好適であり、特に溶融炭酸塩型燃料電池中でのメタンの直接内部改質用の改質触媒としての利用に好適である。