特許第6305341号(P6305341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305341燃料電池中でのメタン水蒸気改質用の触媒組成物
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  • 特許6305341-燃料電池中でのメタン水蒸気改質用の触媒組成物 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305341
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】燃料電池中でのメタン水蒸気改質用の触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20180326BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20180326BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180326BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20180326BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20180326BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20180326BHJP
【FI】
   B01J23/755 M
   B01J37/03 B
   B01J37/08
   B01J37/00 C
   B01J37/00 D
   C01B3/40
   H01M8/0606
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-540595(P2014-540595)
(86)(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公表番号】特表2015-504356(P2015-504356A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】IB2012056155
(87)【国際公開番号】WO2013068904
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】11188453.2
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ミラノフ,アンドリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァブ,エッケハルト
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,アレクサンダー
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0891903(KR,B1)
【文献】 特開2007−313496(JP,A)
【文献】 特開2004−000900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/755
B01J 37/00
B01J 37/03
B01J 37/08
C01B 3/40
H01M 8/0606
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンの水蒸気改質用の触媒組成物であって、成分a)としての、ニッケル、アルミニウム及びジルコニウムの複合酸化物と、成分b)としての、水酸化アルミニウム[Al(OH)]、水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]及び酸化アルミニウム(Al)からなる群から選ばれる他の酸素含有アルミニウム化合物を含み、該触媒組成物が成分a)とb)の物理的混合物である触媒組成物。
【請求項2】
ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al)またはこれらの混合物を成分b)として含む請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
成分b)が、触媒組成物の総量に対して1〜60質量%の量で存在する請求項1又は2のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項4】
成分a)とb)が粉末状粒子として存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
成分a)の粒子の粒度のd50が0.5〜1500μmであり、成分b)の粒子の粒度のd50が0.3〜500μmである請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
成分a)のBET表面積が20〜300m/gの範囲であり、成分b)のBET表面積が20〜400m/gの範囲である請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む触媒材料であって、ペレットまたは押出物に加工された材料。
【請求項8】
バインダーと潤滑剤と他の加工助剤とは別に、a)ニッケル、アルミニウム及びジルコニウムの複合酸化物と、b)ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al)またはこれらの混合物とから構成されるペレット状の請求項7に記載の触媒材料。
【請求項9】
直径が0.8〜5mmの範囲であり、高さが1〜10mmの範囲である請求項8に記載の触媒ペレット。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒組成物の製造方法であって、以下の加工工程をその順で含む方法:
a)成分a)及び/又はその可溶性出発化合物の溶液または分散液の製造;
b)塩基の添加による該溶液または分散液からの固体の析出;
c)該固体の分離と乾燥;
d)工程c)で得られた固体の焼成;
e)該固体の圧密化。
f)該固体の均一な粒度への粉砕
g)該固体と成分b)の均一な混合。
【請求項11】
相当する触媒組成物の粉末または顆粒の打錠または押出成型による請求項7〜9の何れか1項に記載の触媒材料の製造方法。
【請求項12】
ペレットの製造に偏心型プレスまたはロータリープレスが用いられる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の触媒材料の燃料電池中の改質触媒としての利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物と、これにより製造される、燃料電池中(特に溶融炭酸塩型燃料電池中)でのメタン水蒸気改質用の触媒材料に関する。本発明はまた、このような触媒組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融炭酸塩型燃料電池(「MCFC」)は、カソード(正極)とアノード(負極)とその間にある電解質マトリックスの間における電気化学反応により発電が起こる高温作動型の燃料電池である。この種の電池では、混合炭酸アルカリ溶融体(例えば、炭酸リチウムと炭酸カリウムの)の溶融共晶(なお、これにより、支持体材料(例えば、LiAlO/Alからなる支持体膜)が含浸されている)が、電解質として用いられる。
【0003】
この燃料電池の運転に必要な水素は、水蒸気改質反応により直接電池中で発生させることができる。メタンの水蒸気改質反応は、例えば次のように表わされる:
【0004】
CH + HO → CO + 3H (1)
CO + HO → CO + H (2)
【0005】
最初の反応は強吸熱性であり、電気化学反応で放出される熱を直接消費することができる。この反応は、改質触媒(例えば、Ni触媒)を必要とする触媒反応であり、燃料電池運転の出発原料としては、天然ガス(必要なら、さらにメタン、石油系ガス、ナフサ、重油または原油)を使用することができる。
【0006】
メタンの水蒸気改質に関する他の情報が、数多くの文献引用に見いだされる(例えば、以下を参照:「触媒的水蒸気改質」、“Catalysis” Science and Technology, Vol. 5, Springer Verlag, Berlin, 1985、あるいは“Catalysis” Vol. 3, Specialist Periodical Reports, London 1980, The Chemical Society)。市販のメタン水蒸気改質用ニッケル触媒が、例えば、Catalysis Science and Technology, J.R. Andersen and M. Boudart, Vol. 5, Springer−Verlag, Berlin 1984に記載されている。
【0007】
現在では、通常この改質の一部が前改質器で行われている。これは、電池に入るとすぐに水素が必要となるため有利である。しかしながら、この電池中ではさらなる部分の改質が必要となる。このプロセスは、直接内部改質(DIR)とも呼ばれる。なお、第一には熱交換が可能であるため、第二には化学平衡のシフトがあるため、この吸熱的改質が電気化学反応のすぐ近くで起こることが好ましい。
【0008】
580℃〜675℃の範囲の温度での溶融炭酸塩型の燃料電池の運転を行うと、
アルカリ金属化合物(例えば、KOH、NaOHまたはLiOH)の形の電解質の一部の気化が認められる。これらのアルカリ金属イオンが、冒頭に述べた改質触媒上に付着して望まざる被毒を引き起こし、その活性を低下させることがある。
【0009】
この問題を克服するため、DE10156033A1では、アノードと触媒の間の支持体(例えば紙)上でのカリウム吸着材料の使用が提案されている。これにより、第一には急速に吸着材料の飽和が起こり、第二には電解質からカリウムが不可逆的に除かれ、KOH再生成の方向への平衡のシフトが起こる。また、触媒含有層と多孔性集電体層の間で大きな圧力低下を示すか、低いガス交換を示す極微細孔の層の場合にのみ、効果的なK吸着が保証される。
【0010】
この問題を克服するために、DE102007009556A1では、少なくとも200mm/gと高い気孔容積をもつメタン水蒸気改質用触媒が提案されている。これらの触媒のカリウムイオンに対する感度は低いものの、この種の触媒の不活性化挙動は、依然として不満足である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE10156033A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、MCFC中での直接内部改質するシステムであって、これによりアルカリ金属(例えば、カリウムイオン及び/又はリチウムイオン)による触媒被毒が効果的に防止され、上述の問題を軽減化することのできるシステムを提供することである。このためには、失活速度が小さく、また同時にアルカリ金属イオンに対して高い安定性をもつ触媒を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、溶融炭酸塩型燃料電池中でのメタンの水蒸気改質(特に、直接内部改質)用の触媒組成物であって、成分a)としての、ニッケルと、さらにはアルミニウムとマグネシウム、ケイ素、ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の他の元素との複合酸化物を含むニッケル触媒と、成分b)としての、水酸化アルミニウム[Al(OH)]と水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]、酸化アルミニウム(Al)からなる群から選ばれる他の一種の酸素含有アルミニウム化合物を含み、該触媒組成物が成分a)とb)の物理的混合物であるものに関する。
【0014】
本発明の触媒組成物では、「物理的混合物」とは、成分a)とb)が明らかに分離状態で存在し多相系となっている不均一混合物をさす。
【0015】
このような物理的混合物を得るには、以下に述べるように、好ましくは粉末状粒子として成分a)とb)を併用してよく混合する。混合は公知の何れのミキサーで行ってもよく、例えばドラムフープミキサー、粉末ミキサー、ターンブルミキサ、または他の本目的に適当なミキサーで行うことができる。
【0016】
本発明の触媒組成物の触媒活性相(成分a)は、例えば、ニッケルとアルミニウムとジルコニウムを含むか、ニッケルとマグネシウムとケイ素を含むことができるが、これらの元素/混合物に限定されない。先行技術から公知の高活性ニッケル含有触媒(特に、前改質や改質、水素化用の共沈触媒)が好ましい。例としては、BASF社の前改質触媒と改質触媒、具体的には60〜70質量%のNiOとさらにSiOとMgOとCrを含む触媒G1−80と、60〜75質量%のNiOとさらにAlとZrOを含む触媒G1−85があげられる。
【0017】
成分b)は、水酸化アルミニウム[Al(OH)]、水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]または酸化アルミニウム[Al]またはこれらの混合物を含むことができる。「水酸化アルミニウム」は、ギブサイト[γ−Al(OH)]、バイヤライト[α−Al(OH)]、またはゾル−ゲル法で得られる非晶質水酸化物をさす。水酸化酸化アルミニウムの場合、ベーマイト[γ−AlO(OH)]の使用が好ましい。ある好ましい実施様態においては、成分b)として高表面積の酸化アルミニウム相が使われ、例えばカイ−酸化アルミニウム(χ−Al)、イータ−酸化アルミニウム(η−Al)、ロー−酸化アルミニウム(ρ−Al)、カッパ−酸化アルミニウム(κ−Al)、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al)、またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al)が使われる。この酸化アルミニウム相は、γ−Al、δ−Al3、またはθ−Al3、またはこれら三相の混合物を含むことが特に好ましい。成分b)の相の組成は、例えばX線回折で決定できる。
【0018】
本発明の触媒組成物の一つの好ましい実施様態は、ニッケルとアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物を成分a)として含み、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al)またはこれらの混合物を成分b)として含む。
【0019】
この触媒組成物中の成分b)の量は、触媒組成物の総質量に対して1〜60質量%の範囲であり、好ましくは5〜50質量%の範囲、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。
【0020】
また、本発明の触媒組成物では、成分a)の粒子の粒度d50が0.5〜1500μmであり、好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは1〜500μm、非常に特に好ましくは50〜300μmであり、成分b)の粒子の粒度d50が0.3〜500μmであり、好ましくは0.5〜250μm、特に好ましくは1〜200μm、非常に特に好ましくは10〜150μmである。
【0021】
このd50は、50%の粒子がこの値(粒子径)を持つことを意味する。触媒の粒度と粒度分布の測定は、測定範囲が0.02〜2000μmであるマルバーンマスターサイザー2000(登録商標)を使用するレーザー光散乱で行われる。評価は、フラウンホーファー法で行われる。
【0022】
また、本発明の触媒組成物では、成分a)のBET表面積が20〜300m/gの範囲、好ましくは30〜250m/gの範囲、特に好ましくは50〜200m/gの範囲であり、成分b)のBET表面積が、20〜400m/gの範囲、好ましくは30〜300m/gの範囲、特に好ましくは50〜200m/gの範囲である。
【0023】
BET表面積の測定は、DIN66131に準じて行われる。評価は、5測定点を用いる多点法で行われる。測定直前の乾燥は200℃で行われる。p/p0=0.065〜0.208の圧力範囲を測定する。
【0024】
本発明はまた、ペレットまたは押出物に加工された触媒組成物であって、成分a)としての、ニッケルと、さらにはアルミニウムとマグネシウム、ケイ素、ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の他の元素との複合酸化物を含むニッケル触媒と、成分b)としての、水酸化アルミニウム[Al(OH)]と水酸化酸化アルミニウム[AlO(OH)]、酸化アルミニウム(Al)からなる群から選ばれる他の一種の酸素含有アルミニウム化合物を含み、該触媒組成物が成分a)とb)の物理的混合物であるものを含む触媒材料を提供する。
【0025】
本発明の触媒材料の一つの好ましい実施様態は、バインダーや潤滑剤、他の加工助剤とは別に、実質的にニッケルとアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物を成分a)として含み、ガンマ−酸化アルミニウム(γ−Al)、デルタ−酸化アルミニウム(δ−Al)またはシータ−酸化アルミニウム(θ−Al)またはこれらの混合物を成分b)として含むペレット状のものである。
【0026】
溶融炭酸塩型燃料電池では、直径が0.8〜5mmの範囲(好ましくは1〜3mmの範囲、特に好ましくは1.5〜2.5mmの範囲であり、高さが1〜10mmの範囲(好ましくは1〜5mmの範囲、特に好ましくは1.5〜4mmの範囲)であるペレットが用いられる。
【0027】
本発明の触媒材料の、特に成分a)とb)に関する他の好ましい実施様態については、本発明の触媒組成物について上に説明したことを参照されたい。
【0028】
本発明はまた、上記触媒組成物の製造方法であって、以下の加工工程をその順で含む方法を提供する。
【0029】
a)成分a)及び/又はその可溶性出発化合物の溶液または分散液の製造; b)塩基の添加によるこの溶液または分散液からの固体の析出;
c)この固体の分離と乾燥;
d)必要なら、この固体の焼成;
e)必要なら、この固体の圧密化;
f)この固体のある均一な粒度への粉砕
g)この固体と成分b)の均一な混合。
【0030】
第一の加工工程である工程a)では、成分a)の溶液または分散液が、通常、例えば酢酸などの酸中への溶解または分散で製造される。必要なら、成分a)そのものに代えて、成分a)の出発化合物を使用することもできる。例えばその金属の硝酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩が、酸性水溶液中に、例えば硝酸を含む酸性水溶液中に溶解される。溶液中あるいは分散液中の塩の比率は、触媒組成物の所望最終組成に応じて化学量論的に計算され、決定される。
【0031】
工程b)では、この溶液または分散液から、固体が触媒組成物前駆体として析出させられる。これは従来法で行われ、好ましくは塩基の添加により、例えば水酸化ナトリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液の添加により、溶液または分散液のpHを増加させて行われる。
【0032】
生成する固体析出生成物は一般的には、例えば濾過またはデカンテーションで上澄液溶液から分離され、硝酸ナトリウムなどの可溶性成分がなくなるまで水で洗浄してから、工程c)の乾燥にかける。その際、この析出生成物は通常さらなる加工の前に、従来の乾燥方法により乾燥される。一般に、やや高温での、例えば少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、特に好ましくは少なくとも120℃で、10分間〜12時間、好ましくは20分間〜6時間、特に好ましくは30分間〜2時間の処理を行えば、この目的に十分である。析出物を直接あるいは水洗後に噴霧乾燥してさらに加工可能な乾燥粉末とすることも可能であり、また特に好ましい。
【0033】
乾燥後にこの析出し乾燥された触媒組成物中間体を、必要なら焼成工程d)にかけてもよい。用いる焼成温度は、一般的には少なくとも250℃であり、好ましくは少なくとも300℃、特に好ましくは少なくとも350℃であり、また一般的には500℃以下、好ましくは450℃以下、特に好ましくは410℃以下である。焼成時間は、一般的には少なくとも10分間であり、好ましくは少なくとも20分間、特に好ましくは少なくとも30分間であり、また一般的には12時間以下、好ましくは6時間以下、特に好ましくは4時間以下である。乾燥工程c)と焼成工程d)は、相互に直接連結していてもよい。
【0034】
乾燥工程c)または焼成工程d)の後、この触媒組成物中間体を成形工程e)にかけることができる。これは、例えばローラーコンパクターで実施できる。
【0035】
この製造工程の間に、触媒組成物の成分a)が、加工工程d)とe)の少なくとも一つに、必要なら両方にかけられる。この焼成工程では、特にBET表面積と気孔容積が通常の方法で設定される。周知のように、焼成時間と焼成温度が増加するとBET表面積と気孔容積は減少する。
【0036】
炭酸イオン含量(CO2−として計算)が焼成生成物の総質量に対して10質量%以下となり、そのBET表面積が少なくとも20m/gであり300m/g以下の範囲となるまでこの焼成を行うことが好ましい。
【0037】
加工工程f)での成分a)の固体の粉砕は、いずれの粉砕機で行ってもよく、例えばハンマーミルで行ってよく、所望粒度をもつ粒子の分離はサイクロンを用いて行うことができる。適当な大きさの触媒粒子の選別には、他の方法も考えられ、例えば遠心分離や沈降も考えられる。
【0038】
この粉砕工程では、成分a)の固体が、一般的にはd50が0.5〜1500μmの均一な粒度になるまで、好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは1〜500μm、非常に特に好ましくは50〜300μmの均一な粒度になるまで粉砕される。
【0039】
本発明の触媒組成物の最後の製造工程では、これらの成分a)とb)が併用されてよく混合される。混合は、公知の何れのミキサー中で行うこともでき、例えばドラムフープミキサーか粉末ミキサー、ターンブルミキサ、他の本目的に適当なミキサー中で行うことができる。
【0040】
この混合物に他の添加物(例えば、バインダーや潤滑剤、他の加工助剤)を添加することもできる。これらは、成分a)とb)の添加前に、添加後に、あるいはこれらと同時に添加できる。潤滑剤(例えば、グラファイトやステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、他の先行技術から公知の潤滑剤)は、本発明の触媒組成物を適当な形状に成形する際に役立つ。
【0041】
本発明はまた、上記触媒材料の製造方法であって、上に包括的に述べた触媒組成物の粉末または顆粒を、打錠または押出により成型する方法を提供する。特に、以下の方法が考えられる:
−前処理粉末の前圧縮と打錠でのペレット形成、
−液体との混合と、混錬/パンミル粉砕、押し出しによる棒状押出物の形成。
【0042】
本方法のある好ましい実施様態は、前処理粉末を打錠し、偏心式プレスまたはロータリープレス中でペレットを形成することである。
【0043】
この触媒材料と触媒組成物は、特に燃料電池中の改質触媒としての利用に好適であり、特に溶融炭酸塩型燃料電池中でのメタンの直接内部改質用の改質触媒としての利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】活性測定の結果である。
【0045】
本発明を、実施例により説明する。
【0046】
実施例1(本発明の触媒材料の製造)
420gの、均一なニッケルとアルミニウムとジルコニウム酸化物混合物からなる焼成粉末(BET表面積=160m/g、NiO=72質量%、Al=19質量%、ZrO=9質量%、d50=137μm)を改質−活性な相(成分a)として用いた。180gの、γ−Alとδ−Alとθ−Alを含む酸化アルミニウム粉末(BET=126m/g、d50=116μm、サソールドイツ社)を成分b)として用いた。次いで、この混合粉末物を3質量%のグラファイトと混合し、ドラムフープミキサー(J. エンゲルスマン社)により良く混合した。このようにして得られた混合物をコンパクターで圧縮し、次いで水圧偏心式プレス(キリアンSP300、キリアン社)で処理して固体ペレット(直径=2.5mm;高さ=2.5mm)を得た(全体としての触媒の酸化物組成:50.4質量%のNiO、43.65質量%のAl、5.95質量%のZrO)。
【0047】
比較例
500gの同じニッケルとアルミニウムとジルコニウムの酸化物からなる焼成粉末(BET表面積=160m/g、NiO=72質量%、Al=19質量%、ZrO=9質量%)を用いて比較用触媒を製造した。この粉末を3質量%のグラファイトと混合し、ドラムフープミキサー(J.エンゲルスマン社)により良く混合した。このようにして得られた混合物をコンパクターで圧縮し、次いで水圧偏心式プレス(キリアンSP300、キリアン社)で処理して固体ペレット(直径=2.5mm;高さ=2.5mm)を得た。
【0048】
触媒試験
触媒の改質活性試験は、約50cmの等温加熱ゾーンをもつ縦型反応器を使用して行った。試験対象の触媒を、窒素下にて600℃に加熱された等温ゾーン中にある反応器片面に設け、次いで水素により15時間(一夜)還元させた。次いで反応器温度を700℃にまで上げ、以下の混合ガス[18%のCH、7%のH、2%のCO、73%のHO(体積%)]を用いて、空間速度を60000h−1として2.5時間改質を行った。このようにして得たメタン変換率を、アルカリ金属水酸化物蒸気による触媒不活性化挙動の検討の出発点として使用した。
【0049】
この試験のために、反応器を室温に冷却し、不活性ガス(N)下で触媒とは反対の側から、LiCOとKCOの混合物(モル比62:38;25質量%のLi/K−CO)で含浸されたLiAlO/αAlペレット(20×5mm)を供給した。次いでこの反応器を加熱して不活性化試験を開始した。試験の全期間中(約1400時間)、定期的にメタン変換率を測定した。
【0050】
活性測定の結果を図1に示す。これから、本発明の触媒が、試験の全時間中実質的変化がない非常に安定なメタン変換活性値を持つことがわかる。これ対して、比較用触媒は高い初期のメタン変換率を示すが、アルカリ金属水酸化物または炭酸アルカリの蒸気の存在の結果、この変換率が連続的に低下し、約800時間後には本発明の触媒のメタン変換率より小さくなる。
図1