特許第6305513号(P6305513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305513強化されたポリアルキレンテレフタレートの組成物、その製造方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305513
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】強化されたポリアルキレンテレフタレートの組成物、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20180326BHJP
   C08K 7/12 20060101ALI20180326BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K7/12
   C08L27/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-504651(P2016-504651)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-514747(P2016-514747A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014056024
(87)【国際公開番号】WO2014154731
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2013/073479
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジェングオ リウ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大
(72)【発明者】
【氏名】フイ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン クニーゼル
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−176691(JP,A)
【文献】 特開2002−356611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ポリアルキレンテレフタレート
ii)(ポリアルキレンイソフタレート)コ(ポリアルキレンテレフタレート)、
iii)ポリアルキレンテレフタレート強化するための繊維、及び
iv)任意で、1種以上の添加剤
を含有する組成物の使用であって、
成分i)におけるアルキレンは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、及びシクロヘキセンジメチレン基から成る群から選択され、
成分ii)におけるアルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンから成る群から選択され、
前記組成物を、1種以上のさらなる熱可塑性材料とともに溶融させて成形製品にし、
前記さらなる熱可塑性材料が、ポリビニルクロリドである、
前記使用。
【請求項2】
溶融による作製が、ブロー成形、射出成形、又は押出成形である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記成形製品が、配管、窓用異形材、接続部品、タンク、又は他の押出成形された異形材部品である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
i)ポリアルキレンテレフタレート
ii)(ポリアルキレンイソフタレート)コ(ポリアルキレンテレフタレート)、
iii)ポリアルキレンテレフタレート強化するための繊維、及び
iv)任意で、1種以上の添加剤
を含有する組成物を含む成形製品であって、
成分i)におけるアルキレンは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、及びシクロヘキセンジメチレン基から成る群から選択され、
成分ii)におけるアルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンから成る群から選択され、
さらに1種以上のさらなる熱可塑性材料を含有し、
前記さらなる熱可塑性材料が、ポリビニルクロリドである、
前記成形製品。
【請求項5】
配管、窓用異形材、接続部品、タンク、又は他の押出成形された異形材部品である、請求項4に記載の成形製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性され強化されたポリアルキレンテレフタレートの組成物に関し、この組成物は、加工性(例えば加工温度の低さ、溶融流動性の高さ)に優れ、また材料性能(例えば別の熱可塑性材料とともに成形される製品を作製する際の反りの少なさ)が良好であり、機械的特性が高い。本発明はまた、前記組成物の製造と使用に関する。
【0002】
熱可塑性ポリエステル、すなわちポリアルキレンテレフタレート(PAT)、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)は一般的に、PAT強化繊維、例えばグラスファイバー(GF)で強化され、市販で手に入る。PATは通常、溶融成形技術(例えば押出成形、ブロー成形、又は射出成形)によって製品になる。加工温度が低いことにより、PATは加工がしやすくなる。PATの溶融流動性が速くなるからである。加工温度は融点によって示されるため、低い加工温度を求めて留意すべきパラメータはたいてい、PATの融点である。その一方で、溶融流動性を変性によって増大させることが可能であれば、溶融流動性を増加させることが有利になり得ることは、明らかである。このため、加工温度(又は融点)、及び/又はより高い溶融流動性もまた、物品を作製するためのサイクル時間を減少させる。
【0003】
近年では、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTが、押出成形されたポリビニルクロリド(PVC)異形材において鋼を置き換えるために、強化材料として使用されている。US 2010/0319843A1では、PBTストリップとPVC異形材は別個に製造され、PVC異形材異形材を強化するために、PBTストリップが、金属挿入物の代替物として、PVC異形材に挿入される。しかしながら、グラスファイバー含分が増加するにつれ、グラスファイバーで強化されたPATには、加工性と性能が低いという問題がある(例えば反りが大きい、加工温度が高い、溶融流動性が低い)。多くの射出成形、ブロー成形、及び押出成形用途で使用可能な、グラスファイバーで強化されたPATにとっては、反りの小ささと、加工性の悪さを改善することが必須である。
【0004】
グラスファイバーで強化されたPATが、他の熱可塑性材料を有する複合材構造を形成するために用いられる場合、グラスファイバーで強化されたPATの用途はまた、PATの加工温度が高いことによっても制限される。例えばEP 2431152 A2では、グラスファイバー充填したPBTをPVCと共押出成形して、共押出成形されたPVC異形材が製造される。しかしながら、ガラス充填されたPBTの融点(ひいては加工温度)は高すぎる。溶融されたPBT材料は、変色、分解、及びPVC異形材への接着性の弱さにつながり、全般的に特性が悪かった。
【0005】
そこで、グラスファイバー含分が高く、加工温度が低く、反りが少なく、流動性が高く、かつ/又は機械的特性が良好な強化PATを製造するための手段を見出す必要がある。
【0006】
JP 41784725 Aでは、エチレングリコール、イソフタル酸、及びテレフタル酸のターポリマー(PEIT)と、PBTとをブレンドして、融点が低いPBTを得る。しかしながらJP 41784725 Aは、PATを強化するためにグラスファイバーを用いることを開示していない。実際に、この出願のPEITで変性したPBTは、繊維工業においてテキスタイル層の熱結合性を改善することを目的としていた。このような組成物又は用途のために、グラスファイバーを組み込む必要は何ら無い。さらに、PEITで変性されたPBTの融点は、例えばPVCにより複合材構造を形成するために使用するには、まだ高すぎる。
【0007】
従って本発明の目的は、PAT(より具体的にはPBT又はPET)を含有する組成物を提供することであって、当該組成物は、PAT強化繊維(特にグラスファイバー:GF)によって強化されており、かつアルキレンジオール、イソフタル酸、及びテレフタル酸のターポリマーであるPAIT(特にPEIT)によって変性されており、このためこの製品は、優れた加工特性(例えば低い加工温度、高い流動性、良好な機械的特性、及び反りの少なさ)を有する。
【0008】
本発明のさらなる目的は、前記組成物の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、溶融成形(例えばブロー成形、射出成形、又は共押出)によって成形製品を作製するために、単独で、又は他の熱可塑性材料とともに、前記組成物を使用することである。
【0010】
本発明の最終的な目的は、前記組成物を用いて成形製品を提供することである。この目的は、i)ポリアルキレンテレフタレート、ii)(ポリアルキレンイソフタレート)コ(ポリアルキレンテレフタレート)、iii)ポリアルキレンテレフタレート強化繊維、及び任意でiv)1種以上の添加剤を含有する組成物によって達成され、ここで成分i)におけるアルキレンは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、及びシクロヘキセンジメチレン基から成る群から選択され、成分ii)におけるアルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンから成る群から選択される。上記目的はまた、前記組成物の製造方法によって達成され、ここで成分i)〜iii)、及び任意でiv)、又はこれらの成分の前駆体は、成分i)及びii)が溶融により加工可能な条件でコンパウンド化される。上記目的はまた、前記組成物の使用によって達成され、ここで前記組成物は、任意で1種以上のさらなる熱可塑性材料とともに、溶融により作製され、成形製品となる。上記目的はさらに、第一の熱可塑性材料を第二の熱可塑性材料によって変性する方法によって達成され、ここで第二の熱可塑性材料は、第一の熱可塑性材料とともに溶融により作製され、変性された第一の熱可塑性材料の融点が低下する。上記目的はさらに、前記方法により作製され、かつ変性された第一の熱可塑性材料の使用によって達成され、ここで変性された第一の熱可塑性材料は溶融によって、任意でさらなる第三の熱可塑性材料とともに、作製される。
【0011】
PAT(特にPBT又はPET)を、PAIT(特にPEIT)及びPAT強化繊維(特にグラスファイバー:GF)とブレンドすることにより、本発明の目的が達成できることが判明した。このようにして作製された、PAITで変性され、繊維強化されたPATは加工特性が優れており、例えば溶融物の溶融流動性が高く、融点が低下しており(このため、加工温度が低い)、他の熱可塑性材料(例えばPVC)とともに成形製品を作製するために使用した場合、製品の反りが少ない。PAITで変性された繊維強化PATは、単独で、又は他の熱可塑性樹脂(例えばPVC)と組み合わせて複合材構造にすることにより、成形品にすることができる。
【0012】
図1〜3は、例IIIにおいて、PEITで変性されグラスファイバー(GF)で強化されたPBTのDSCである。
【0013】
図4は、PVCを、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTとともに共押出することにより作製した異形材を示す写真である。
【0014】
PAT、PAIT、及びPAT強化繊維を含有する組成物は好ましくは、PAT、PAIT、及びPAT強化繊維をコンパウンド化することにより得られる。
【0015】
本発明の1つの態様においてPATは、アルキレンジオールとアルキレンテレフタレートとの熱可塑性コポリマーである。PATは好ましくは、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリシクロヘキセンジメチレンテレフタレートから成る群から選択される。PATは最も好ましくは、PET、及びPBTから選択される。当業者には、PATの混合物も使用可能なことが理解できる。
【0016】
PATの適切な特定(例えば分子量、及び組成物中におけるPATの含量)は、所望の機械的特性及び加工性を達成するため、当業者であれば慣用の方法によって決定できる。
【0017】
本発明の1つの態様においてPAITは、アルキレンジオール、イソフタル酸、及びテレフタル酸の熱可塑性ターポリマーである。PAITは好ましくは、ポリメチレンテレフタレート−コ−ポリメチレンイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート−コ−ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート−コ−ポリプロピレンイソフタレート、及びポリブチレンテレフタレート−コ−ポリブチレンイソフタレートから成る群から選択される。これらのコポリマーは、あらゆる構造様式(例えばランダム、交互、又はブロック状のコポリマー)を有するものであってよい。PATは最も好ましくは、PEIT、及びPBITから選択される。当業者には、PAITの混合物も使用可能なことが理解できる。
【0018】
PAITの適切な特定(例えば分子量、テレフタレート単位とイソフタレート単位のモル比、及び組成物中におけるPAITの含量)は、所望の機械的特性及び加工性を達成するため、当業者であれば慣用の方法によって決定できる。PAITにおけるイソフタレート単位の含分は好ましくは、PAITにおけるイソフタレート単位とテレフタレート単位の総数に対して、ゼロより高く、より好ましくは5〜50モル%、さらにより好ましくは10〜40モル%、最も好ましくは15〜25モル%であることに留意すべきである。
【0019】
本発明の1つの態様においてPAT強化繊維は、PATを強化するために使用可能なあらゆる繊維材料である。PAT強化繊維は好ましくは、ガラス繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維、及びセラミック繊維から成る群から選択される。しかしながら当業者であれば、繊維はこれらに限られないことが理解できる。最も好ましくは、PAT強化繊維は、グラスファイバー(GF)である。上記PAT強化繊維の様々な組み合わせと混合物が使用可能であると理解されるべきである。
【0020】
より好ましいPAT強化繊維は、官能性構造(例えば、PATのカルボキシ基と反応させてエーテル結合にするためのエポキシ基)を有するものである。官能性構造とPAT若しくは中間化合物との反応によってまた、繊維が良好な接着性を有し、これにより作製される製品の物理特性が改善することが保証される。官能性構造は好ましくはポリウレタン構造であり、より好ましくはビス(シクロヘキシルイソシアナト)メタン、1,6−ヘキサンジオール、及びアジピン酸ポリエステルの反応生成物、並びにビスフェノールグリシジルエーテルである。
【0021】
PAT強化繊維の適切な特定、及び組成物中の繊維含量は、所望の機械的特性及び加工性を達成するため、当業者であれば慣用の方法によって決定できる。
【0022】
当業者には、組成物がさらに他の公知の添加剤を含有できることが理解できる。
【0023】
例えば、本発明の1つの態様では、組成物がさらに1種以上の潤滑剤を含有することができる。存在する場合、潤滑剤は好ましくは、炭素原子数が10〜40の飽和脂肪族カルボン酸と、飽和脂肪族アルコールとのエステル、又は前記カルボン酸と、炭素原子数が2〜40のアミンとのアミドである。潤滑剤が疎水性の高い脂肪酸鎖を有する場合、潤滑剤はさらに、組成物及び熱可塑性ポリマーの耐加水分解性に役立つと考えられる。好ましい潤滑剤は、ペンタエリトリトールテトラステアレートである。存在する場合に潤滑剤は好ましくは、それぞれ組成物の全質量に対して、約0.01〜5質量%、より好ましくは約0.01〜3質量%、最も好ましくは約0.01〜2質量%の量で存在する。
【0024】
本発明の1つの態様では、組成物が1種以上の熱酸化防止剤を含有することができる。存在する場合に熱酸化防止剤は好ましくは、立体障害性フェノール基を有する。当業者であれば、変色に対して組成物及び熱可塑性ポリマーを安定させるため、また熱酸化分解を防止するために、様々な熱酸化防止剤が使用可能なことが理解できる。1つの態様では、熱酸化防止剤は、ペンタエリトリトテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、オクタデシル−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び4,4’−(2,2−ジフェニルプロピル)ジフェニルアミンから成る群から選択される材料1種以上である。当業者であれば、上記熱酸化防止剤の様々な組み合わせと混合物もまた、本発明により利用可能なことが理解できる。好ましい熱酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。存在する場合に熱酸化防止剤は好ましくは、それぞれ組成物の全質量に対して、0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、最も好ましくは0.01〜1.5質量%の量で存在する。
【0025】
本発明の1つの態様では、組成物が1種以上の求核剤を含有することができる。存在する場合に求核剤は好ましくは、タルク、カオリン、マイカ、炭酸ナトリウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムから成る群から少なくとも1種が選択されるが、これらに限られることはない。当業者であれば、上記求核剤の様々な組み合わせと混合物もまた、本発明により利用可能なことが理解できる。存在する場合に求核剤は好ましくは、それぞれ組成物の全質量に対して、約0.01〜2質量%、より好ましくは約0.01〜1質量%、最も好ましくは約0.01〜0.1質量%の量で存在する。
【0026】
本発明の1つの態様では、組成物が1種以上の顔料を含有することができる。存在する場合に顔料は、無機若しくは有機の化合物を含有することができ、製品に特別な効果及び/又は色を付与することができる。当業者には分かることだが、顔料は担体マトリックス(例えばプラスチック製樹脂)中に分散されていてもよい。1つの態様では、顔料がカーボンブラック顔料である。当業者には、顔料があらゆる公知の顔料、又は公知の顔料の組み合わせであり得ることが理解できる。存在する場合に顔料は、それぞれ組成物の全質量に対して、約0.05〜5質量%、より好ましくは約0.5〜3質量%、最も好ましくは約0.5〜1.5質量%の量で存在する。この顔料の量には、存在する場合には担体マトリックスの量が含まれている。担体マトリックスを用いる場合、顔料は好ましくは、顔料と担体マトリックスの総質量に対して、10〜50質量%の量で存在する。
【0027】
本発明の1つの態様では、PAT、PAIT、及びPATで強化された繊維、及び任意の添加剤は、上記のように慣用の方法でコンパウンド化して、PAITで変性された繊維強化PAT組成物にする。この組成物の製造方法は好ましくは、PAT、PAIT、及びPATで強化された繊維を、上記他の任意成分とともに用意する工程と、前記成分をコンパウンド化する工程(通常は約150〜350℃の間の温度で行われる)とを有する。当業者にはこれらの工程が、より高い、又はより低い温度でも行えることが理解できる。本発明による方法は、コンパウンド機、一軸式押出機、二軸式押出機、リング状押出機、混合機、及び反応容器などから成る群から選択される装置で行うことができる。好ましい装置は、二軸式押出機である。当業者であれば、他の装置も使用可能なことが理解できる。
【0028】
特定の理論やメカニズムに限定するつもりはないが、コポリマーを作製するためのコンパウンド化の間にエステル交換が起こり、良好な性能(例えば低い融点、高い溶融流動性、及び反りの少なさ)が得られると考えられる。
【0029】
PAIT変性された繊維強化PATは、それから加熱し、(好ましくは押出成形法、ブロー成形法、又は射出成形法により)成形して、製品にすることができる。当業者には、本発明は製品を作るための特定の方法に制限されないことが理解できる。或いは、組成物は他の熱可塑性材料(好ましくはPVC)を慣用の手段(例えば共押出)で強化して、複合材構造にするためにも使用できる。
【0030】
以下で本発明を説明するが、ここでは熱可塑性PATとしてPBTを、PAITとしてPEITを、そしてPAT強化繊維としてグラスファイバー(GF)を用いて、融点が低く、溶融流動性が高く、他の熱可塑性材料(例えばPVC)とともに製品を作製するために使用した場合に成形若しくは押出成形された製品の反りが少ない組成物を作製し、グラスファイバー(GF)で強化したPBTと比較する。しかしながら当業者であれば、本発明がこれらの材料に限られないことが分かるであろう。
【0031】
PBTは市販で手に入る材料であり、入手したままの状態で、さらなる処理をせずに使用する。PBTの融点は通常、約225℃である。PBTは好ましくは、粘度数が80〜170、より好ましくは100〜150である。PBTの含分は、組成物の全質量に対して好ましくは15〜75質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
【0032】
PEITは市販で手に入る材料であり、入手したままの状態で、さらなる処理をせずに使用する。PEITの融点は通常、約100〜200℃である。PEITは好ましくは、融点が110〜180℃である。PEITの含分は、組成物の全質量に対して好ましくは15〜75質量%、より好ましくは20〜50質量%である。PEIT含分が高くなると融点が低くなるため、加工温度が低くなる。
【0033】
グラスファイバー(GF)は市販で手に入る材料であり、入手したままの状態で、さらなる処理をせずに使用する。グラスファイバー(GF)の含分は、組成物の全質量に対して好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜55質量%である。
【0034】
組成物を製造するための方法には通常、成分をドライブレンドし、ペレット化してペレットにする工程が含まれる。ペレットは、押出成形してペレットにする。当業者には、他の方法も使用可能なことが理解できる。
【0035】
PEIT変性され、グラスファイバーで繊維強化されたPAT組成物は、加熱し、(好ましくは押出成形法、ブロー成形法、又は射出成形法により)成形して、成形製品にすることができる。当業者には、本発明は製品を作るための特定の方法に制限されないことが理解できる。
【0036】
或いは、組成物は他の熱可塑性材料(好ましくはPVC)を慣用の手段(例えば共押出)で強化して、複合材構造にするためにも使用できる。
【0037】
PVC及びPBTの共押出成形は、PVC/PBTの複合材構造を製造するための簡便な方法である。しかしながら、PVC/PBTを共押出するためには、PVCとPBTの融点がそれぞれ約200℃、約225℃と著しく異なるので、技術的な障害がある。この事実により、押出成形は230〜240℃に温度を上昇させて行う。この温度範囲では、PVCは既に深刻な熱分解を起こし始め、所望の製品を得ることが困難になる。本発明によれば、変性された強化PBTは、融点が約200℃と低い一方、他の重要な特性と二次的な特性は維持される。これにより、PVCとPBTを慣用の方法で共押出することが可能になる。
【0038】
PVCとPBTを共押出するため、PBTの融点は、PEITの含分を上記PEIT含分の範囲内にある特定の値に制御することによって調整され、これによって変性され強化されたPBTの所望の融点が得られ、変色、変形、反り、及び共押出成形におけるPVCの分解が回避される。PEITの含分が高ければ高いほど、PEITで変性され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTの融点が低くなる。
【0039】
当業者であれば、PBTをPET若しくは他のPAT(例えばポリシクロヘキセンジメチレンテレフタレート)と置き換え可能なこと、及び/又はPEITをプロピレングリコール、イソフタル酸、及びテレフタル酸のターポリマー、若しくはブチレングリコール、イソフタル酸、及びテレフタル酸のターポリマーと置き換え可能なことは明らかである。このような場合、本発明はPBT及びPEITのための方法と同様に実施可能なこともまた、当業者には明らかである。
【0040】
PATをPAITで変性し、PATをPAT強化繊維で強化することにより、加工性(例えば加工温度の低さ、溶融流動性の高さ)に優れ、また材料性能(例えば別の熱可塑性材料とともに成形される製品を作製する際の反りの少なさ)が良好であり、機械的特性が高いPATが得られる。このようなPATにより慣用の方法で、単独で、又は他の熱可塑性材料とともに、良好な外観又は機械的特性を有する成形製品が得られる。
【0041】
本発明を以下の実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】例2において、PEITで変性されグラスファイバー(GF)で強化されたPBTのDSCである。
図2】例3において、PEITで変性されグラスファイバー(GF)で強化されたPBTのDSCである。
図3】表IにおけるUltradur B4500 NATに代えて、PBTとしてUltradur B2550を用いた一連の別の実験における様々な混合比について、DSCにより得られる加熱曲線を示す。
図4】PVCを、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTとともに共押出することにより作製した異形材を示す写真である。
【0043】
例I:PEITで変性され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTの製造
PEITで変性され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTを、表Iに記載の組成物を慣用の二軸式押出機でコンパウンド化することにより、標準的なPBT押出成形条件(表II参照)で製造する。
【表1】
【表2】
【0044】
例II:PEITで変性され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTの機械的特性
機械的特性は、標準的な手法により測定する。メルトボリュームフローレート(MVR)は、ISO 1133に従って測定する。破断点引張伸び、引張破断強度、引張弾性率は、ISO 527に従って測定する。シャルピー衝撃強度は、ISO 179に従って測定する。融点と再結晶点は、DSCにより特定する。それぞれの結果が、表IIIに示してある。
【表3】
【0045】
PEIT変性によって明らかに(例2〜例4)、機械的特性、例えば破断点引張伸び、引張弾性率、MVR(流動性)、シャルピー衝撃強度が、GFで強化されたPBT(例1)と比較して改善できる。
【0046】
例III:PEITで変性され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTの融点
PBTの融点はDSCにより特定し、図1〜3に示してある。
【0047】
図1及び2は、例2及び例3のDSC結果を示す。特定された融点、及び再結晶温度は、表IVにまとめてある。
【表4】
【0048】
PEITレベルが増加することにより(18.00質量%、又は21.70質量%)、PEITで変性されGFで強化されたPBTの融点は、PBTの融点の融点(225℃)からそれぞれ、210℃、195℃に低下する。
【0049】
図3は、表IにおけるUltradur B4500 NATに代えて、PBTとしてUltradur B2550を用いた一連の別の実験における様々な混合比について、DSCにより得られる加熱曲線を示し、融点が180℃のPEITを、全ての実験で使用する。図3中のLMPは、PEITと同じ意味であることに注意されたい。PBT及びPEITの含分は、Tg及びTmとともに、表Vに示してある。PEITレベルが上昇するにつれて、作製されるPATの融点が減少することが分かる。
【表5】
【0050】
例IV:PVCと、PEITで強化され、グラスファイバー(GF)で強化されたPBTとから作製されたPVC異形材
図4に示したPVC異形材を、表IIに記載のGFで強化されたPBT(例1)、及びPEITで変性され、表IIに記載のGFで強化されたPBT(例3)ともに、表VIで特定した押出成形温度で共押出することにより、PVC異形材を作製した。
【0051】
図4は、PVCを、GFで強化されたPBTとともに共押出することにより作製した異形材の写真を示し、ここではPBTが左側の空隙のほとんどを満たしている一方、右側の空隙は一部しか満たされていない。
【0052】
異形材の反りは、GB/T 8814-2004のsection 6.4.に従って測定する。
【0053】
PBTの充填度と、PVCへの接着性を特定するために、異形材を引き剥がして、PBTの部分を露出させる。露出したPBT部分を、異形材の残りの部分から剥ぎ取り、秤量する。異形材に充填されるPBTの体積は、剥ぎ取られたPBT部分の質量と、PBTの比質量から測定する。充填度は、PBTを充填した設計空隙の体積のパーセンテージとして計算する。PVCへの接着性は、PVCからPBTを剥がすために必要な力から概算で測定する。
【0054】
材料の特性が、表VIにまとめてある。
【表6】
【0055】
GFで強化されたPBTを用いた場合、PBTが溶融しないため、205℃および215℃の温度でPVCと一緒に共押出することは不可能であることが分かる。245℃という温度でのみ、GFで強化されたPBTは加工できる。その一方、PEIT変性によって、PEITで変性されGFで強化されたPBTは、205℃という低い加工温度で加工でき、加工温度が低くなっている。
【0056】
また、作製された製品について、PEITで変性されGFで強化されたPBT(例えば例3)により、共押出されたPVC異形材の反りは、13〜17分の1に減少し、充填度はより低い温度であっても30〜40%から100%に改善し、PVCに対する接着性も、大きく改善する。
【0057】
当業者であれば、ブチレン基がテトラメチレン基として理解されるべきであることが分かる。
図1
図2
図3
図4