特許第6305751号(P6305751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305751
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ショットキーダイオードとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20180326BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01L21/28 B
   H01L21/28 301B
   H01L21/02 B
   H01L21/20
   H01L29/48 D
   H01L29/48 P
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-259098(P2013-259098)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-115585(P2015-115585A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134614
【弁理士】
【氏名又は名称】橋元 正
(72)【発明者】
【氏名】新井 学
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−179662(JP,A)
【文献】 特開2009−231506(JP,A)
【文献】 特開2007−305964(JP,A)
【文献】 特開2010−027817(JP,A)
【文献】 特開2005−259797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/329
H01L 29/47
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のシリコンカーバイド基板の第1の主面に第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜を形成したエピタキシャル基板の前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と第1導電型と反対極性の第2導電型のシリコン基板の表面とを真空装置で対向して配置し、
対向して配置される前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と前記シリコン基板の表面にプラズマを照射して活性化させ、
対向して配置される前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と前記シリコン基板の表面を接触させ、前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を加圧することにより、前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面にショットキー接合を形成し
ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることを特徴とするショットキーダイオードの製造方法。
【請求項2】
ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面を、アニール温度600〜1000℃でアニールすることを特徴とする請求項1記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項3】
ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることにより、測定される内蔵電位の値を1.0Vにすることを特徴とする請求項1又は2記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項4】
ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることにより、測定されるターンオン電圧の値を0.7Vにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項5】
前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を接合した後に前記シリコンカーバイド基板の第2の主面に第1の電極を形成する際に、接合された前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板をアニールすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項6】
前記シリコンカーバイド基板の第2の主面に第1の電極を形成し、アニールした後に、前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を接合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のショットキーダイオードの製造方法。
【請求項7】
第1導電型のシリコンカーバイド基板と、
前記シリコンカーバイド基板の第1の主面に形成される第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜と、
第1の主面と第2の主面を有し前記第1導電型と極性の異なる第2導電型のシリコン基板から形成され、前記第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面に設けられ、前記第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜との界面にショットキー接合を形成する第2導電型のシリコン層を備え、
測定される内蔵電位が1.0Vの値をとることを特徴とするショットキーダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーダイオードとその製造方法に係り、特に、シリコンカーバイド・ショットキーダイオードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンカーバイド(炭化珪素、SiC)は、その禁制体幅がシリコンに比べて約3倍、絶縁破壊電界が約10倍、熱伝導率が約3倍大きいため、種々の半導体装置の材料として期待されている。さらに、シリコンカーバイドは、熱酸化によりシリコン酸化膜を形成することが可能で、不純物ドーピングによるn型、p型の導電型制御も可能なため、従来のシリコンデバイスで実現されている種々の構造を有するデバイスを作製できるという、他の化合物半導体材料と大きく異なる特徴を備えている。
【0003】
このようなことから、シリコンカーバイドとシリコンの両方を組み合わせて、シリコンカーバイドとシリコンの間にヘテロ接合を有する半導体装置が提案され、研究及び開発がなされている、シリコンカーバイドとシリコンの間にヘテロ接合を有する半導体装置として、例えば、高耐圧高速スイッチングpnダイオードや、ショットキーダイオード、バイポーラトランジスタ、及び高耐圧低オン抵抗の金属−酸化膜−半導体接合電界効果トランジスタ(MOSFET)を含む種々の電界効果トランジスタ(FET)などがある。
【0004】
シリコンカーバイドを用いた半導体装置の性能を向上するためには、シリコンカーバイドとシリコンの間のヘテロ接合界面を制御することが重要である。このため、シリコンカーバイドとシリコンの間のヘテロ接合界面とこのようなヘテロ接合を備える半導体装置について、研究及び開発が行われている。
例えば、非特許文献1と非特許文献2では、シリコンカーバイドとシリコンの間にヘテロ接合を有する半導体装置について検討が行われている。
また、最近の研究としては、非特許文献3では、シリコンカーバイドとシリコン界面を備えるショットキーダイオードの特性について研究が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Yamagami et al., Material Science Forum Vols. 717-720(2012) pp1005-1008
【非特許文献2】A. Perez-Tomas et al., Journal of Applied Physics 014505(2007)
【非特許文献3】J. Liang et al., 10th Topical Workshop on HeterostructureMicroelectronics TWHM Final Program and Abstracts, 133-134(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリコンカーバイドとシリコンの間には大きな格子不整合が存在する。このため、シリコンカーバイドとシリコン界面に発生する結晶欠陥により、破壊電圧が低下したり、再結合電流や逆方向のリーク電流が増大するという半導体装置の性能を低下させる問題が生じていた。
【0007】
本発明は、シリコンカーバイドとシリコン界面に発生する結晶欠陥により生じる半導体装置の性能の低下を抑制し、シリコンカーバイドとシリコンを用いる性能に優れたショットキーダイオードとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のショットキーダイオードの製造方法は、第1導電型のシリコンカーバイド基板の第1の主面に第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜を形成したエピタキシャル基板の前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と第1導電型と反対極性の第2導電型のシリコン基板の表面とを真空装置で対向して配置し、対向して配置される前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と前記シリコン基板の表面にプラズマを照射して活性化させ、対向して配置される前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面と前記シリコン基板の表面を接触させ、前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を加圧することにより、前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面にショットキー接合を形成しショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることを特徴とする。
本発明のショットキーダイオードの製造方法は、ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面を、アニール温度600〜1000℃でアニールすることを特徴としても良い。
本発明のショットキーダイオードの製造方法は、ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることにより、測定される内蔵電位の値を1.0Vにすることを特徴としても良い。
本発明のショットキーダイオードの製造方法は、ショットキー接合が形成された前記シリコンカーバイド・エピタキシャル膜と前記シリコン基板の界面をアニールすることにより、測定されるターンオン電圧の値を0.7Vにすることを特徴としても良い。
【0009】
本発明のショットキーダイオードの製造方法は、前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を接合した後に前記シリコンカーバイド基板の第2の主面に第1の電極を形成する際に、接合された前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板をアニールすることを特徴としても良い。
【0010】
本発明のショットキーダイオードの製造方法は、前記シリコンカーバイド基板の第2の主面に第1の電極を形成し、アニールした後に、前記エピタキシャル基板と前記シリコン基板を接合することを特徴としても良い。
【0011】
本発明のショットキーダイオードは、第1導電型のシリコンカーバイド基板と、前記シリコンカーバイド基板の第1の主面に形成される第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜と、第1の主面と第2の主面を有し前記第1導電型と極性の異なる第2導電型のシリコン基板から形成され、前記第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面に設けられ、前記第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜との界面にショットキー接合を形成する第2導電型のシリコン層を備え、測定される内蔵電位が1.0Vの値をとることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法により、シリコンエピタキシャル基板のn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面とp型シリコン基板の第1の主面に、プラズマを照射し、活性化した後に、n型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面とシリコン基板の第1の主面が、室温で加圧接合して、アニールすることにより、本発明の拡散ポテンシャルの値が小さく優れた電圧電流特性を有するショットキーダイオードが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第1の実施例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第2の実施例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第3の実施例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードのC−V特性の測定結果を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの電圧電流特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードを示す図である。
本発明の実施形態に係るショットキーダイオード1は、第1導電型のシリコンカーバイド基板3と、第1導電型のシリコンカーバイド基板3の第1の主面に形成される第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜5と、第1導電型にドーピングされたシリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面に形成され、第1導電型と極性の異なる第2導電型のシリコン層9を有する。
本発明の実施形態に係るショットキーダイオード1が使用される用途の必要に応じて、第1導電型のシリコンカーバイド基板3の第2の主面に第1の電極10が設けられ、第2導電型のシリコン層9の最上面に第2の電極11が設けられる。
【0018】
第2導電型のシリコン層9は、第2導電型のシリコン基板8から形成される。第2導電型のシリコン基板は、第1の主面と第2の主面を有する。本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造過程において、第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面と第2導電型のシリコン基板8の第1の主面が共にアルゴン・プラズマ照射により活性化された後に加圧接合される。そして、第2導電型のシリコン層9は、この加圧接合されたシリコン基板8から形成される。なお、本発明の実施形態に係るショットキーダイオード1において、第1導電型のシリコンカーバイド・エピタキシャル膜と第2導電型のシリコン層の界面をアニールすることによりショットキーダイオードの所望の特性が実現される。
本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の詳細と所望の特性については以下に記載する。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、第1導電型がn型で第2導電型がp型の場合を例として説明する。第1導電型がn型で第2導電型がp型の場合には、第1の電極がカソードとなり、第2の電極がアノードとなる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第1の実施例を示す図である。
n+型シリコンカーバイド基板3の結晶軸<0001>を有する第1の主面に不純物濃度が1×1014〜1×1017cm−3のn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5を成長したシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を用意する。(図2(a))
【0021】
上述のシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6のn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とp+型シリコン基板8の第1の主面を真空装置内に対向して配置する。そして、対向するp+型シリコン基板の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面にアルゴン・プラズマを照射し、活性化する。ここで、シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6とp+型シリコン基板は、共に単結晶基板である。(図2(b))
【0022】
p+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を室温で接触させて、p+型シリコン基板8とシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6に力を加えて、p+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を加圧接合する。(図2(c))
【0023】
その後、p+型シリコン基板8とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜4の界面をアニールする。アニール温度は、600〜1000℃とする。なお、後述する図2(e)においてn+型シリコンカーバイド基板3の第2の主面(裏面)にカソード電極12を形成する際のアニールと兼ねることも可能である。(図2(d))
【0024】
フォトリソグラフィーにより、p+型シリコン基板8の第2の主面の一部の領域をレジスト膜で被覆する。そして、p+型シリコン基板8のうちレジスト膜で被覆されていない領域をエッチングにより除去して、n−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を部分的に露出させる。これにより、p型シリコン基板8からp型シリコン層9が形成され、このp型シリコン層9がアノードパッド9aとなる。
次に、n+型シリコンカーバイド基板3の第2の主面(裏面)に、ニッケル(Ni)を堆積してカソード電極12を形成し、約1000℃でアニールする。この際に、p型シリコン層9とn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の界面をアニールされるようにしても良い。(図2(e))
【0025】
部分的に露出したn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とアノードパッド9aの表面にアルミニウム(Al)を堆積する。次に、アノードパッド9aの表面を被覆するレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクで被覆されていない領域のアルミニウムを除去して、アノードパッドの9a表面にアノード電極14を形成する。(図2(f)
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第2の実施例を示す図である。
n+型シリコンカーバイド基板3の結晶軸<0001>を有する第1の主面に不純物濃度が1×1014〜3×1017cm−3のn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5を成長したシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を用意する。(図3(a))
【0027】
シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6の裏面(シリコンカーバイド基板の第2の主面)に、ニッケル(Ni)を堆積してカソード電極22を形成し、約1000℃でアニールする。(図3(b))
【0028】
上述のシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6のn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とp+型シリコン基板8の第1の主面を真空装置内に対向して配置する。そして、対向するp+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面にアルゴン・プラズマを照射し、活性化する。ここで、シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6とp+型シリコン基板は、共に単結晶基板である。(図3(c))
【0029】
p+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を接触させて、p+型シリコン基板8とシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6に力を加えて、p+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を加圧接合する。(図3(d))
【0030】
フォトリソグラフィーにより、p+型シリコン基板8の第2の主面の一部の領域をレジスト膜で被覆する。そして、p+型シリコン基板8のうちレジスト膜で被覆されていない領域をエッチングにより除去して、シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を部分的に露出させる。これにより、p+型シリコン基板8からp+型シリコン層9が形成され、このp+型シリコン層9がアノードパッド9aとなる。(図3(e))
【0031】
次に、貼り合わせにより接合されたアノードパッド9aを備えるシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を600〜1000℃でアニールする。これにより、p+型シリコン基板8から形成されたアノードパッド9aとn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の界面がアニールされ、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの特性を実現することが可能になる。(図3(e))
【0032】
部分的に露出したシリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とアノードパッド9aの表面にアルミニウム(Al)を堆積する。次に、アノードパッドの表面を被覆するレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクで被覆されていない領域のアルミニウムを除去して、アノードパッド9aの表面にアノード電極24を形成する。(図3(f))
【0033】
図4は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法の第3の実施例を示す図である。
n+型シリコンカーバイド基板3の結晶軸<0001>を有する第1の主面に不純物濃度が1×1014〜1×1017cm−3のn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5を形成したシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を用意する。(図4(a))
【0034】
シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を構成するn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面に、後にアノード電極を形成する領域の周辺に整合するようにp型の不純物を選択的にイオン注入して、後にガードリング層となるp型領域18を形成する。(図4(b))
【0035】
シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6の裏面(シリコンカーバイド基板3の第2の主面)に、ニッケル(Ni)を堆積してカソード電極32を形成し、約1000℃でアニールする。(図4(c))
【0036】
上述のシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6のn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とp+型シリコン基板8の第1の主面を真空装置内に対向して配置する。そして、対向するp+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面にアルゴン・プラズマを照射し、活性化する。ここで、シリコンカーバイド・エピタキシャル基板6とp+型シリコン基板は、共に単結晶基板である。(図4(d))
【0037】
p+型シリコン基板8の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を接触させて、シリコン基板8とシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6に力を加えて、p+型シリコン基板の第1の主面とn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を加圧接合する。(図4(e))
【0038】
フォトリソグラフィーにより、p+型シリコン基板8の第2の主面の一部の領域をレジスト膜で被覆する。そして、p+型シリコン基板8のうちレジスト膜で被覆されていない領域をエッチングにより除去して、シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面を部分的に露出させる。これにより、p+型シリコン層9が、p型ガードリング領域18と対応する位置に、p+型シリコン基板8から形成される。このp+型シリコン層9がアノードパッド9aとなる。(図4(f))
【0039】
次に、貼り合わせにより接合されたアノードパッド9aを備えるシリコンカーバイド・エピタキシャル基板6を600〜1000℃でアニールする。これにより、p+型シリコン基板8から形成されたアノードパッド9aとn−型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の界面がアニールされ、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの特性を実現することが可能になる。(図4(f))
【0040】
部分的に露出したシリコンカーバイド・エピタキシャル膜5の表面とアノードパッド9aの表面にアルミニウム(Al)を堆積する。次に、アノードパッド9aの表面を被覆するレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクで被覆されていない領域のアルミニウムを除去して、アノードパッド9aの表面にアノード電極34を形成する。(図4(g))
【0041】
本発明の実施形態のショットキーダイオードの製造法の第3の実施例により、p型シリコン基板8から形成されるアノードパッド9aと対応する位置に、p型ガードリング領域18が形成される。これにより、耐電圧性に優れたショットキーダイオードが作成される。
【0042】
本発明の実施形態と各実施例において、シリコンカーバイド・エピタキシャル基板のn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面とp型シリコン基板の第1の主面にアルゴン・プラズマを照射する場合について説明したが、アルゴン・プラズマの代わりにキセノン・プラズマを照射しても良い。
【0043】
本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの測定結果について以下に記載する。
測定は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと本発明の実施形態に到る過程で作成された試作ショットキーダイオードについて行った。
【0044】
測定された本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと試作ショットキーダイオードは、共に、シリコンカーバイド・エピタキシャル基板とシリコン基板を貼り合わせて接合することにより作成された。シリコンカーバイド・エピタキシャル基板では、不純物濃度1×1019cm−3のn型シリコンカーバイド単結晶基板の第1の主面に、不純物濃度2×1018cm−3のn型シリコンカーバイドバッファー層を介して、不純物濃度1×1017cm−3のn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜が形成された。シリコン基板として、不純物濃度2×1019cm−3のp型シリコン単結晶基板が使用された。
【0045】
本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと試作ショットキーダイオードの作成する過程において、共に、シリコンエピタキシャル基板のn型シリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面とp型シリコン基板の第1の主面に、アルゴン・プラズマを照射し、活性化された後に、該第1の主面がシリコンカーバイド・エピタキシャル膜の表面とシリコン基板の第1の主面が、室温で加圧接合されて、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと試作ショットキーダイオードが作成された。さらに、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードは、加圧接合された後にアニール処理された。他方、試作ショットキーダイオードは、加圧接合された後にアニール処理されなかった。
本発明の実施形態に係るショットキーダイオードの上述のアニール処理は、例えば、1000℃で1分間行われた。
【0046】
図5は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと試作ショットキーダイオードのC−V特性の測定結果を示す。測定は、室温でC−V測定周波数100kHzにより行われた。
1000℃で1分間アニールした本発明の実施形態に係るショットキーダイオードでは、C−V特性の測定値に外挿して得られる拡散ポテンシャルVdの値は、1.0Vである。
他方、アニールが行われていない試作ショットキーダイオードでは、C−V特性の測定値に外挿して得られる拡散ポテンシャルVdの値は、1.6Vである。本発明の実施形態に係るショットキーダイオードでは、拡散ポテンシャルの値が低くなっていることを理解できる。
【0047】
図6は、本発明の実施形態に係るショットキーダイオードと試作ショットキーダイオードの電圧電流特性を示す。アニールされていない試作ショットキーダイオードと比較して、アニールした本発明の実施形態に係るショットキーダイオードでは、n値が、1.5から1.1に低減し、ターンオン電圧が、1.6Vから0.7Vに低減している。ここで、ターンオン電圧は、100mA/cmのときのVfをいう。本発明の実施形態に係るショットキーダイオードでは、ダイオード特性が向上している。逆方向のリーク電流も低減していることからヘテロ接合界面の欠陥も減少していることが分かる。このように、本願で提案する手法により良好なヘテロ界面が形成可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1:ショットキーダイオード
3:シリコンカーバイド基板
5:シリコンカーバイド・エピタキシャル膜
6:シリコンカーバイド・エピタキシャル基板
8:シリコン基板
9:シリコン層
9a:アノードパッド
10:第1の電極
11:第2の電極
12、22、32:カソード電極
14、24、34:アノード電極
18:ガードリング領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6