特許第6305853号(P6305853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305853
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180326BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20180326BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   H01L21/78 X
   H01L21/304 631
   B23K26/53
   B23K26/364
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-140432(P2014-140432)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-18881(P2016-18881A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−89709(JP,A)
【文献】 特開2012−24784(JP,A)
【文献】 特開2011−187479(JP,A)
【文献】 特開2014−99522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
B23K 26/53
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に積層された機能層が格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画され、該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハの加工方法であって、
機能層に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに幅方向中央の両側に沿って照射し、少なくとも2本のレーザー加工溝を形成することにより機能層を分割予定ラインに沿って分断するレーザー加工溝形成工程と、
基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から分割予定ラインに沿って照射し、基板の内部に分割予定ラインに沿って破断起点となる改質層を形成する改質層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該改質層形成工程を実施した後に、ウエーハの基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程と、ダイシングテープを介してウエーハに外力を付与することによりウエーハを個々のデバイスに分割する分割工程を実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該改質層形成工程を実施する前または実施した後にウエーハの機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、該保護部材貼着工程が実施された後にウエーハの基板の裏面を研削して所定の厚みに形成するとともにウエーハを改質層を破断起点として分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割する裏面研削工程と、ウエーハの基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともにウエーハの機能層の表面に貼着されている保護部材を剥離するウエーハ支持工程とを実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に積層された機能層によってデバイスが形成されたウエーハを、デバイスを区画する複数の分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された機能層によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスが分割予定ラインによって区画されており、この分割予定ラインに沿って分割することによって個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
近時においては、IC、LSI等の半導体デバイスの処理能力を向上するために、シリコン等の基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)が積層された機能層によって半導体デバイスを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0004】
このような半導体ウエーハの分割予定ラインに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定して形成されている。
【0005】
しかるに、上述したLow−k膜は、切削ブレードによってに切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードにより分割予定ラインに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離がデバイスにまで達しデバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
一方、近年半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を位置付けて被加工物に対して透過性を有する赤外光領域のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかるに、表面に低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)が積層されたウエーハを上述したレーザー加工方法を用いて分割しようとしても分割予定ラインに沿って確実に分割することができない。即ち、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する赤外光領域のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成した後に分割予定ラインに沿って外力を付与しても、低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)等の機能層を確実に破断することができない。また、ウエーハが分割予定ラインに沿って破断されたとしても機能層が剥離して個々の分割されたデバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0008】
上述した問題を解消するために、機能層に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに沿って照射して機能層をアブレーション加工してレーザー加工溝を形成することによって除去し、その後、基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を基板の裏面側から分割予定ラインに対応する内部に位置付けて照射し、基板の内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献1】特開2012−89709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、分割予定ラインに対応する内部に改質層を形成すると機能層を除去するために形成されたレーザー加工溝を避けるように改質層からクラックが成長し、ウエーハに外力を付与することにより個々のデバイスに分割すると分割予定ラインから外れた位置で分割され、デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0011】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、基板の表面に低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)等の機能層が積層されたウエーハをデバイスを区画する分割予定ラインに沿って確実に分割することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、基板の表面に積層された機能層が格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画され、該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハの加工方法であって、
機能層に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに幅方向中央の両側に沿って照射し、少なくとも2本のレーザー加工溝を形成することにより機能層を分割予定ラインに沿って分断するレーザー加工溝形成工程と、
基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から分割予定ラインに沿って照射し、基板の内部に分割予定ラインに沿って破断起点となる改質層を形成する改質層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0013】
上記改質層形成工程を実施した後に、ウエーハの基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程と、ダイシングテープを介してウエーハに外力を付与することによりウエーハを個々のデバイスに分割する分割工程を実施する。
また、上記改質層形成工程を実施する前または実施した後にウエーハの機能層の表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、該保護部材貼着工程が実施された後にウエーハの基板の裏面を研削して所定の厚みに形成するとともにウエーハを改質層を破断起点として分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割する裏面研削工程と、ウエーハの基板の裏面にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともにウエーハの機能層の表面に貼着されている保護部材を剥離するウエーハ支持工程とを実施する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるウエーハの分割方法は、機能層に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに幅方向中央の両側に沿って照射し、少なくとも2本のレーザー加工溝を形成することにより機能層を分割予定ラインに沿って分断するレーザー加工溝形成工程と、基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から分割予定ラインに沿って照射し、基板の内部に分割予定ラインに沿って破断起点となる改質層を形成する改質層形成工程とを含んでおり、改質層形成工程において改質層が形成されると、ウエーハの基板には改質層からクラックが発生するが、このクラックは機能層を分断して形成された少なくとも2条のレーザー加工溝間の範囲で成長し、分割予定ラインから外れた領域には成長しない。従って、ウエーハに外力を付与することにより強度が低下せしめられている改質層が形成された分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割する際に、改質層から発生したクラックが更に成長するが、このクラックは機能層を分断して形成された少なくとも2条のレーザー加工溝間の範囲で成長し、分割予定ラインから外れた領域には成長しないのでデバイスに達することはないため、分割予定ラインに沿って分割されたデバイスの品質を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるウエーハの加工方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハを示す斜視図および要部拡大断面図。
図2】本発明によるウエーハの加工方法におけるレーザー加工溝形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図3】本発明によるウエーハの加工方法におけるレーザー加工溝形成工程の説明図。
図4】本発明によるウエーハの加工方法における改質層形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図5】本発明によるウエーハの加工方法における改質層形成工程の説明図。
図6】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の説明図。
図7】本発明によるウエーハの加工方法における分割工程を実施するためのテープ拡張装置の斜視図。
図8】本発明によるウエーハの加工方法における分割工程の説明図。
図9】本発明によるウエーハの加工方法におけるピックアップ工程の説明図。
図10】本発明によるウエーハの加工方法における保護部材貼着工程の説明図。
図11】本発明によるウエーハの加工方法における裏面研削工程の説明図。
図12】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるウエーハの加工方法について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0017】
図1の(a)および(b)には、本発明によるウエーハの加工方法によって加工される半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図1の(a)および(b)に示す半導体ウエーハ2は、厚みが600μmのシリコン等の基板20の表面20aに絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層21によって複数のIC、LSI等のデバイス22がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス22は、格子状に形成された分割予定ライン23によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、機能層21を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっており、厚みが10μmに設定されている。
【0018】
上述した半導体ウエーハ2を分割予定ライン23に沿って個々のデバイスに分割するには、先ず機能層21に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン23に幅方向中央の両側に沿って照射し、少なくとも2本のレーザー加工溝を形成することにより機能層21を分割予定ライン23に沿って分断するレーザー加工溝形成工程を実施する。このレーザー加工溝形成工程は、図2に示すレーザー加工装置3を用いて実施する。図2に示すレーザー加工装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32と、チャックテーブル31上に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって図2において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって図2において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0019】
上記レーザー光線照射手段32は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング321を含んでいる。ケーシング321内には図示しないパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング321の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器322が装着されている。なお、レーザー光線照射手段32は、集光器322によって集光されるパルスレーザー光線の集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(図示せず)を備えている。
【0020】
上記レーザー光線照射手段32を構成するケーシング321の先端部に装着された撮像手段33は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0021】
上述したレーザー加工装置3を用いて、機能層21に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン23に幅方向中央の両側に沿って照射し、少なくとも2本のレーザー加工溝を形成することにより機能層21を分割予定ライン23に沿って分断するレーザー加工溝形成工程について、図2および図3を参照して説明する。
先ず、上述した図2に示すレーザー加工装置3のチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、機能層21の表面21aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない加工送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0022】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン23と、該分割予定ライン23に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された分割予定ライン23に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0023】
上述したアライメント工程を実施したならば、図3で示すようにチャックテーブル31をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322が位置するレーザー光線照射領域に移動し、図3の(a)で示すように半導体ウエーハ2に形成された所定の分割予定ライン23の一端(図3の(a)において左端)が集光器322の直下に位置するように位置付ける。このとき、分割予定ライン23の幅方向中央から一方の側に5〜10μmの位置が集光器322の直下に位置するように位置付ける。次に、レーザー光線照射手段32の集光器322からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル31を図3の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図3の(b)で示すように分割予定ライン23の他端(図3の(b)において右端)が集光器322の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。このレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを分割予定ライン23の表面付近に合わせる。
【0024】
次に、チャックテーブル31を紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)に10〜20μm移動する。この結果、分割予定ライン23の幅方向中央から他方の側に5〜10μmの位置が集光器322の直下に位置付けられることになる。そして、レーザー光線照射手段32の集光器322からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル31を図3の(b)において矢印X2で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめ、図3の(a)に示す位置に達したらパルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。
【0025】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ2には図3の(c)に示すように機能層21の厚さより深い、即ち基板20に至る2条のレーザー加工溝24、24が形成される。この結果、機能層21は、2条のレーザー加工溝24、24によって分断される。そして、上述したレーザー加工溝形成工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン23に沿って実施する。
【0026】
なお、上記レーザー加工溝形成工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の波長 :355nm
平均出力 :2W
繰り返し周波数 :200kHz
集光スポット径 :φ6μm
加工送り速度 :500mm/秒
【0027】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の基板20に対して透過性を有する波長のレーザー光線を半導体ウエーハ2の基板20の裏面20b側から分割予定ライン23に沿って照射し、基板20の内部に分割予定ライン23に沿って破断起点となる改質層を形成する改質層形成工程を実施する。この改質層形成工程は、図4に示すレーザー加工装置30を用いて実施する。なお、レーザー加工装置30は、上記図2に示すレーザー加工装置3と同様に構成されており、同一部材には同一符号を付して詳細な説明は省略する。レーザー加工装置30を用いて実施する改質層形成行程について、図4及び図5を参照して説明する。
【0028】
先ず、図4に示すレーザー加工装置30のチャックテーブル31上に上記レーザー加工溝形成工程が実施された半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21a側を載置し、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2を吸着保持する。従って、チャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにして半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない移動機構によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0029】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。このアライメント作業は、レーザー加工溝形成工程におけるアライメント作業と実質的に同様である。なお、このアライメント作業においては、半導体ウエーハ2の分割予定ライン23が形成されている機能層21の表面21aは下側に位置しているが、撮像手段33が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面2bから透かして分割予定ライン23を撮像することができる。
【0030】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2に形成されている分割予定ライン23を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図5の(a)で示すようにチャックテーブル31をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン23の一端(図5の(a)において左端)をレーザー光線照射手段32の集光器322の直下に位置付ける。このとき、分割予定ライン23の幅方向中央位置が集光器322の直下に位置するように位置付ける。そして、集光器322から基板20に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル31を図5の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる。そして、図5の(b)で示すように集光器322の照射位置が分割予定ライン23の他端の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。この改質層形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ2の基板20の内部に合わせることにより、図5の(b)および図5の(c)に示すように半導体ウエーハ2の基板20の内部に分割予定ライン23に沿って改質層25が形成される。このようして改質層25が形成されると、図5の(c)に示すように半導体ウエーハ2の基板20には改質層25からクラック26が発生するが、このクラック26は機能層21を分断して形成された2条のレーザー加工溝24、24間の範囲で成長し、分割予定ライン23から外れた領域には成長しない。
上述した改質層形成工程を半導体ウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン23に沿って実施する。
【0031】
上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4スレーザー
波長 :1064nm
出力 :0.5W
繰り返し周波数 :100kHz
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :200mm/秒
【0032】
上述した改質層形成工程を実施したならば、半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bにダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図6の(a)および(b)に示すように上記改質層形成工程が実施された半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bを環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着する。なお、図6の(a)および(b)に示す実施形態においては、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bを貼着する例を示したが、半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bにダイシングテープTを貼着するとともにダイシングテープTの外周部を環状のフレームFに同時に装着してもよい。
【0033】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、ダイシングテープTを介して半導体ウエーハ2に外力を付与することにより半導体ウエーハ2を個々のデバイスに分割する分割工程を実施する。この分割工程は、図7に示すテープ拡張装置4を用いて実施する。図7に示すテープ拡張装置4は、上記環状のフレームFを保持するフレーム保持手段41と、該フレーム保持手段41に保持された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTを拡張するテープ拡張手段42と、ピックアップコレット43を具備している。フレーム保持手段41は、環状のフレーム保持部材411と、該フレーム保持部材411の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ412とからなっている。フレーム保持部材411の上面は環状のフレームFを載置する載置面411aを形成しており、この載置面411a上に環状のフレームFが載置される。そして、載置面411a上に載置された環状のフレームFは、クランプ412によってフレーム保持部材411に固定される。このように構成されたフレーム保持手段41は、テープ拡張手段42によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0034】
テープ拡張手段42は、上記環状のフレーム保持部材411の内側に配設される拡張ドラム421を具備している。この拡張ドラム421は、環状のフレームFの内径より小さく該環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着される半導体ウエーハ2の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム421は、下端に支持フランジ422を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段42は、上記環状のフレーム保持部材411を上下方向に進退可能な支持手段423を具備している。この支持手段423は、上記支持フランジ422上に配設された複数のエアシリンダ423aからなっており、そのピストンロッド423bが上記環状のフレーム保持部材411の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ423aからなる支持手段423は、図8の(a)に示すように環状のフレーム保持部材411を載置面411aが拡張ドラム421の上端と略同一高さとなる基準位置と、図8の(b)に示すように拡張ドラム421の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。
【0035】
以上のように構成されたテープ拡張装置4を用いて実施する分割工程について図8を参照して説明する。即ち、半導体ウエーハ2が貼着されているダイシングテープTが装着された環状のフレームFを、図8の(a)に示すようにフレーム保持手段41を構成するフレーム保持部材411の載置面411a上に載置し、クランプ412によってフレーム保持部材411に固定する(フレーム保持工程)。このとき、フレーム保持部材411は図8の(a)に示す基準位置に位置付けられている。
【0036】
上述したフレーム保持工程を実施したならば、図8の(b)に示すようにテープ拡張手段42を構成する支持手段423としての複数のエアシリンダ423aを作動して、環状のフレーム保持部材411を拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材411の載置面411a上に固定されている環状のフレームFも下降するため、図8の(b)に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTは拡張ドラム421の上端縁に接して拡張せしめられる(テープ拡張工程)。この結果、ダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ2は放射状に引張力が作用する。このように半導体ウエーハ2に放射状に引張力が作用すると、分割予定ライン23に沿って形成された改質層25は強度が低下せしめられているので、半導体ウエーハ2を構成する基板20は強度が低下せしめられている改質層25が破断起点となって分割予定ライン23に沿って破断され個々のデバイス22に分割される。この分割工程においては、上述した改質層形成工程において改質層25から発生したクラック26が更に成長するが、このクラック26は機能層21を分断して形成された2条のレーザー加工溝24、24間の範囲で成長し、分割予定ライン23から外れた領域には成長しないのでデバイス22に達することはないため、分割予定ライン23に沿って分割されたデバイス22の品質を低下させることはない。
【0037】
上述した分割工程を実施したならば、図9に示すようにピックアップコレット43を作動してデバイス22を吸着し、ダイシングテープTから剥離してピックアップする。なお、ピックアップ工程においては、個々のデバイス22間の隙間Sが広げられているので、隣接するデバイス22と接触することなく容易にピックアップすることができる。
【0038】
次に、上述した改質層形成工程が実施された半導体ウエーハ2を個々のデバイスに分割する他の実施形態について説明する。
先ず、上述した改質層形成工程が実施された半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21aに保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、図10に示すように半導体ウエーハ2を構成する機能層21に形成されたデバイス22を保護するために、半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21aに保護部材としての保護テープ5を貼着する。この保護テープ5は、図示の実施形態においては厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート状基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ5μm程度塗布されている。なお、保護部材貼着工程は、上述した改質層形成工程を実施する前に実施してもよい。
【0039】
次に、半導体ウエーハ2の基板20の裏面20bを研削して所定の厚みに形成するとともに半導体ウエーハ2を改質層を破断起点として分割予定ライン23に沿って個々のデバイスに分割する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図11の(a)に示す研削装置6を用いて実施する。図11の(a)に示す研削装置6は、被加工物を保持する保持手段としてのチャックテーブル61と、該チャックテーブル61に保持された被加工物を研削する研削手段62を具備している。チャックテーブル61は、上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって図11の(a)において矢印Aで示す方向に回転せしめられる。研削手段62は、スピンドルハウジング63と、該スピンドルハウジング63に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル64と、該回転スピンドル64の下端に装着されたマウンター65と、該マウンター65の下面に取り付けられた研削ホイール66とを具備している。この研削ホイール66は、円環状の基台67と、該基台67の下面に環状に装着された研削砥石68とからなっており、基台67がマウンター65の下面に締結ボルト69によって取り付けられている。
【0040】
上述した研削装置6を用いて上記裏面研削工程を実施するには、図11の(a)に示すようにチャックテーブル61の上面(保持面)に半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21aに貼着されている保護テープ5側を載置する。そして、図示しない吸引手段によってチャックテーブル61上に半導体ウエーハ2を保護テープ5を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル61上に保持された半導体ウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにチャックテーブル61上に半導体ウエーハ2を保護テープ5を介して吸引保持したならば、チャックテーブル61を図11の(a)において矢印Aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段62の研削ホイール66を図11の(a)において矢印Bで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめて、図11の(b)に示すように研削砥石68を被加工面である半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bに接触せしめ、研削ホイール66を矢印Cで示すように例えば1μm/秒の研削送り速度で下方(チャックテーブル61の保持面に対し垂直な方向)に所定量研削送りする。この結果、基板20の裏面20bが研削されて半導体ウエーハ2は所定の厚み(例えば100μm)に形成されるとともに、改質層25が形成され強度が低下せしめられている分割予定ライン23に沿って個々のデバイス22に分割される。この裏面研削工程においては、上述した改質層形成工程において改質層25から発生したクラック26が更に成長するが、このクラック26は機能層21を分断して形成された2条のレーザー加工溝24、24間の範囲で成長し、分割予定ライン23から外れた領域には成長しないのでデバイス22に達することはないため、分割予定ライン23に沿って分割されたデバイス22の品質を低下させることはない。
【0041】
上述した裏面研削工程を実施したならば、半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bにダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するとともに半導体ウエーハ2を構成する機能層21の表面21aに貼着されている保護部材としての保護テープ5を剥離するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図12に示すように上記改質層形成工程が実施された半導体ウエーハ2を構成する基板20の裏面20bを環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着する。そして、機能層21の表面21aに貼着されている保護テープ5を剥離する。
【0042】
上述したようにウエーハ支持工程を実施したならば、分割予定ライン23に沿って分割されたデバイス22をダイシングテープTから剥離してピックアップするピックアップ工程に搬送される。このピックアップ工程は上記図7に示すテープ拡張装置4を用いて図9に示すように実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
2:半導体ウエーハ
20:基板
21:機能層
22:デバイス
23:分割予定ライン
3:レーザー加工溝形成工程を実施するレーザー加工装置
30:改質層形成工程を実施するレーザー加工装置
31:チャックテーブル
32:レーザー光線照射手段
322:集光器
4:テープ拡張装置
41:フレーム保持手段
42:テープ拡張手段
43:ピックアップコレット
5:保護テープ
6:研削装置
61:チャックテーブル
62:研削手段
66:研削ホイール
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12