特許第6306124号(P6306124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306124
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】結核検査用バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20180326BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180326BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20180326BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20180326BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
   G01N33/569 F
   G01N33/53 D
   C12Q1/68 A
   C07K14/47
   !C12N15/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-214285(P2016-214285)
(22)【出願日】2016年11月1日
(62)【分割の表示】特願2012-84996(P2012-84996)の分割
【原出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2017-32588(P2017-32588A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】仲 哲治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 穣
(72)【発明者】
【氏名】世良田 聡
(72)【発明者】
【氏名】松本 智成
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−545960(JP,A)
【文献】 特開2010−286279(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/092219(WO,A1)
【文献】 特開2011−083279(JP,A)
【文献】 特開2004−003912(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/113953(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/066008(WO,A2)
【文献】 特表2011−526152(JP,A)
【文献】 特表2009−503518(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046616(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)からなる、結核患者における結核の疾患活動性を判断するためのバイオマーカー。
【請求項2】
LRGからなる、結核患者に結核治療薬を投与したときの治療効果を評価するためのバイオマーカー。
【請求項3】
前記結核治療薬がイソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)である、請求項2に記載のバイオマーカー。
【請求項4】
LRG遺伝子産物を検出する手段を含む、結核患者における結核の疾患活動性を判断するための診断剤。
【請求項5】
LRG遺伝子産物を検出する手段を含む、結核患者に結核治療薬を投与したときの治療効果を評価するための診断剤。
【請求項6】
前記LRG遺伝子産物は、LRGタンパク質、LRG遺伝子の転写産物、またはそれらの分解産物である、請求項4または5に記載の診断剤。
【請求項7】
前記結核治療薬がイソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)である、請求項5に記載の診断剤。
【請求項8】
前記手段は、(a)LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー、または(b)LRGを特異的に認識する抗体を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の診断剤。
【請求項9】
結核患者における結核の疾患活動性を試験するために、LRG遺伝子産物を検出または定量する方法。
【請求項10】
結核患者に結核治療薬を投与したときの治療効果の評価の試験をするために、LRG遺伝子産物を検出または定量する方法。
【請求項11】
結核患者における結核の疾患活動性を試験するために、生体から分離した生体検体について、LRG遺伝子産物を検出または定量する方法。
【請求項12】
結核患者に結核治療薬を投与したときの治療効果の評価のための試験をするために、生体から分離した生体検体について、LRG遺伝子産物を検出または定量する方法。
【請求項13】
前記結核治療薬がイソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)である、請求項10または12に記載の方法。
【請求項14】
前記生体検体が細胞、細胞を含有する組織、血液、尿、髄液、体腔穿刺液またはリンパ液である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
下記(i)または(ii):
(i)疾患活動性の高い結核の患者および疾患活動性の低い結核の患者から分離した生体検
体のLRG遺伝子産物の濃度、
(ii)予め作成された結核の疾患活動性とLRG遺伝子産物の濃度との間の相関図と前記検出または定量されたLRG遺伝子産物の濃度を比較することをさらに含む、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記検出または定量は、請求項4〜8のいずれか1項に記載の診断剤を用いてなされる、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
下記(a)または(b):
(a)LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー(b)LRGを特異的に認識する抗体
を含む、結核患者における結核の疾患活動性を判断するためのキット。
【請求項18】
下記(a)または(b):
(a)LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー(b)LRGを特異的に認識する抗体
を含む、結核患者に結核治療薬を投与したときの治療効果を評価するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結核検査用バイオマーカーに関する。より詳しくは、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(leucine rich alpha 2 glycoprotein:LRG)からなる結核検査用バイオマーカー、疾患活動性を判断しうるバイオマーカー、さらに詳しくは治療薬の有効性を判断しうるバイオマーカーに関し、さらに該バイオマーカーを検出又は定量することによる結核の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結核とは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる感染症であり、一度発病すると、再発する可能性も高い。国際的にも、三大感染症の一つとされ、HIVや後天性免疫不全症候群との合併結核のまん延や、多剤耐性菌結核の伝播が大きな問題になっている。日本においても、結核患者数は減少傾向にあるものの、2009年には約24,000人の新規患者が発生するなど、依然として主要な感染症である。
結核の診断方法としては、結核が疑われる患者の痰を採取、培養し、結核菌の有無を調べる喀痰培養検査、痰から結核菌のDNAあるいはRNAがあるかどうかをPCR法により調べる検査等が挙げられる。
喀痰培養検査は、検査結果が出るまでに数週間の時間が必要であり、より迅速な検査方法が求められていた。また、PCR法による検査では、検査結果はすぐ得られるものの、死んだ結核菌が含まれている場合でも陽性となることが問題であった。
【0003】
ベーチェット病、関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン氏病などの自己免疫疾患の炎症マーカーとして、C−reactive protein(CRP)が臨床上よく用いられる。CRPは、炎症に伴って上昇するインターロイキン−6(IL−6)などの炎症性サイトカインによって肝臓で合成される急性期タンパク質のひとつである。急性期タンパク質には、CRPの他にα1−アシドグリコプロテイン、ハプトグロビン、シアル酸などがあり、血清中のこれらの物質の濃度増加は、炎症性疾患の診断や経過の推移の判定に用いられる。これらの炎症マーカーは、体内に炎症があればその程度に応じて異常値を示すが、炎症性疾患のみならず、炎症マーカーによっては、組織破壊・細胞壊死を伴う悪性腫瘍や、急性心筋梗塞、貧血、溶血、妊娠、外傷など様々な病態で異常値を示すことがあり、各マーカーにより各疾患に対する特異度や感度が異なる場合がある。そこで、自己免疫疾患において疾患活動性を判断しうる新規なマーカー、さらには治療薬の有効性を判断しうる新規なバイオマーカーが求められており、検討したところ、ロイシンリッチα2グリコプロテイン(以下、単に「LRG」という)が、関節リウマチやクローン病、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患の活動性と相関することを本発明者らが初めて見出し、報告した(非特許文献1、2)。
【0004】
LRGは血清タンパク質のひとつで、約50kDaの糖タンパク質であり、好中球から分泌されることが報告されている(非特許文献3)。上述の如く、LRGが自己免疫疾患のバイオマーカーとなりうることは非特許文献1、2に開示されているものの、LRGと結核の関係についての報告はされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ann Rheum Dis Published Online First:22 October 2009. doi:10.1136/ard.2009.118919
【非特許文献2】Serada S,Naka T et al“Serum leucine−rich alpha−2 glycoprotein is a disease activity biomarker in ulcerative colitis”Inflamm Bowel Dis 2012 in press
【非特許文献3】J Leukoc Biol.2002 72(3):478−85.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、結核を迅速に精度よく診断するバイオマーカー、疾患活動性を判断しうる結核検査用バイオマーカー、さらに詳しくは治療薬の有効性を判断しうる検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、検討を重ねた結果、結核患者の血清中のLRG濃度が健常者と比較して有意に高いことを見出した。また、結核患者に結核治療剤を投与した場合に、治療後の血清中のLRG濃度が、治療前に比べて低かったことから、LRGは結核のバイオマーカー及び薬剤投与に伴う疾患活動性の指標マーカーとなりうることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下よりなる。
[1]ロイシンリッチα2グリコプロテインからなる、結核検査用バイオマーカー。
[2]生体から分離した生体検体について、前記[1]に記載のバイオマーカーを検出または定量することを特徴とする結核検査方法。
[3]生体検体が細胞、細胞を含有する組織、血液、尿、髄液、体腔穿刺液またはリンパ液である、前記[2]に記載の結核検査方法。
[4]下記(a)または(b):
(a)ロイシンリッチα2グリコプロテイン遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)ロイシンリッチα2グリコプロテインを特異的に認識する抗体
を用いて検出または定量することを特徴とする、前記[2]又は[3]に記載の結核検査方法。
[5]生体から分離した生体検体について、前記[1]に記載のバイオマーカーを検出または定量することを特徴とする、結核に対する抗結核薬による治療奏功性の予測方法。
[6]抗結核薬がイソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)である、前記[5]記載の治療奏功性の予測方法。
[7]生体から分離した生体検体について、前記[1]に記載のバイオマーカーを検出または定量することを特徴とする、結核の疾患活動性判定方法。
[8]下記(a)または(b):
(a)ロイシンリッチα2グリコプロテイン遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)ロイシンリッチα2グリコプロテインを特異的に認識する抗体
を含有してなる、前記[2]〜[4]のいずれか1つに記載の方法を用いる結核検査用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明のLRGは、結核の検査用バイオマーカーとなりうる。LRGをバイオマーカーとして検出又は定量することにより、結核の検査を行うことができ、また疾患活動性を評価することができる。また、結核治療薬を投与したときの治療効果を評価しうるバイオマーカーともなる。具体的には、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)などの抗結核薬による治療を行った際の疾患活動性を本発明のバイオマーカーにより評価することができる。その結果、例えば薬剤投与終了時の判断や投与薬剤や治療方針の変更などに対して、最も効果的な方法を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】結核患者、健常者の血清LRG濃度を測定した結果を示す図である。
図2】結核患者の結核治療薬による治療前後の血清LRG濃度を測定した結果を示す図である。
図3】結核患者の血清LRG濃度と塗抹陽性度の相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の結核検査用バイオマーカーは、LRGからなる。ここでLRGとは、約50kDaの糖タンパク質であり、健常人血清では約3.0μg/mL濃度含まれていることが知られている。また、LRGは好中球から分泌されることが報告されている(非特許文献3)。また、LRGは顆粒球で発現することも報告されているが、LRGの発現はIL−6の刺激により誘導されるものではない。かかるLRGは、ベーチェット病、キャッスルマン氏病又は関節リウマチ等の自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎のバイオマーカーとなりうることが、本発明者らにより報告されている(非特許文献1、2)。自己免疫疾患のマーカーとして汎用されていたCRPは、炎症に伴って上昇するIL−6などの炎症性サイトカインによって肝臓で合成される急性期タンパク質のひとつであるのに対し、LRGはIL−6の影響を受けにくいことが確認されている(非特許文献1、2)。一方、血中LRGは、炎症バイオマーカーであるのみならず、上記の疾患における疾患活動性とも相関する有用な分子であり、LRGはCRPとは異なるメカニズムにより発現するバイオマーカーである。
【0012】
また、本発明は、生体から分離した生体検体について、LRGを検出または定量することを特徴とする結核検査方法を提供する。結核は、M.tuberculosisの感染であれば、特に限定はされないが、例として、肺結核、結核性髄膜炎または結核性リンパ節炎が挙げられる。
【0013】
本発明の検査方法において検出または定量されるLRGタンパク質のアミノ酸配列は公知であり、当該タンパク質をコードするDNA配列も公知である(GenBank Accession No.NM_052972.2)。本発明の検査方法において検出または定量されるLRGは、タンパク質を構成するアミノ酸配列が、上記で特定されるアミノ酸配列であってもよいし、当該アミノ酸配列とは1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されていても良い。さらには、LRGタンパク質全体であってもよいし、部分タンパク質であってもよい。以下、本明細書において「LRGタンパク質」とは、上述のように、GenBank Accession No.NP_443204.1で特定されるアミノ酸配列、又は前記特定されるアミノ酸配列から1〜複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、導入されているアミノ酸配列から構成されるタンパク質や、LRGの部分タンパク質も含む意味で用いられる。また、本発明の検査方法において検出または定量されるLRG遺伝子の転写産物は、上記LRGをコードする塩基配列と同一または実質的に同一な塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。LRGをコードする塩基配列と実質的に同一なDNAとしては、例えば、該塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、特に好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
【0014】
本発明の検査方法が適用できる生体は、特に制限されないが、例えば、結核に罹患しているおそれがある生体、もしくは罹患していることが疑われる生体、あるいは現に結核に罹患している生体であって、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等が挙げられる。好ましくは、ヒトである。
【0015】
本発明の検査方法に用いられる生体検体としては、検査対象である上記生体から分離されるものであって、検出または定量する対象であるLRG遺伝子産物(例、RNA、タンパク質、その分解産物など)を含有し得る細胞、細胞を含有する組織、血液(血清、血漿等)、尿、髄液、体腔穿刺液(胸水、腹水)またはリンパ液等であれば特に制限されない。例えば、脳、髄膜、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋、リンパ節、血液(血清、血漿等)、尿、髄液、体腔穿刺液(胸水、腹水)またはリンパ液などが挙げられるが、好ましくは肺、髄膜、リンパ節、血液(血清、血漿等)、尿、髄液、体腔穿刺液(胸水、腹水)またはリンパ液、より好ましくは血液(血清、血漿等)またはリンパ液、特に好ましくは血清である。生体検体が血清の場合、LRGの検出を容易にするために、予め発現量の高い血清タンパク質、例えばアルブミン、免疫グロブリンG(IgG)、トランスフェリン、免疫グロブリンA(IgA)、ハプトグロビン、α1アンチトリプシン、フィブリノゲン、α2マクログロブリン、免疫グロブリンM(IgM)、α1−酸性糖タンパク質、補体C3、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、トランスサイレチンなどを除去するための前処理を行っても良い。
【0016】
生体から分離した生体検体におけるLRGの検出または定量は、該生体検体からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれるLRG遺伝子の転写産物を検出または定量することにより調べることができる。
従って、一実施態様において、本発明の検査方法は、LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマーを用いて測定することを特徴とする。
【0017】
RNA画分の調製は、グアニジン−CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit;QIAGEN製等)を用いて、微量生体検体から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。RNA画分中のLRG遺伝子の転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット、DNAチップ解析等)を用いる方法、あるいはPCR(RT−PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)を用いる方法などが挙げられる。微量生体検体から迅速且つ簡便に定量性よくLRG遺伝子の発現変動を検出できる点で競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が好ましい。
【0018】
ノーザンブロットまたはドットブロットハイブリダイゼーションによる場合、LRG遺伝子の検出は、例えば、LRGの転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブを用いて行うことができる。そのような核酸プローブは、前述の公知のLRGヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約18〜約500塩基、より好ましくは約18〜約200塩基、いっそう好ましくは約18〜約50塩基の連続したヌクレオチド配列またはその相補配列を含むポリヌクレオチドである。該核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、プローブとして用いられる核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、アンチセンス鎖を用いることができる。
【0019】
また、本発明の検査方法に用いられる核酸プローブは、前述の公知のLRGについて示されるヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。ストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1%SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
【0020】
LRG遺伝子の発現を検出し得るプローブとして機能する核酸は、該遺伝子の転写産物の一部もしくは全部を増幅し得る後述するプライマーセットを用い、生体(例:ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット等)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織、骨格筋など]由来のcDNAもしくはゲノムDNAを鋳型としてPCR法によって所望の長さの核酸を増幅するか、前記した細胞・組織由来のcDNAもしくはゲノムDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション等により上記LRG遺伝子もしくはcDNAをクローニングし、必要に応じて制限酵素等を用いて適当な長さの断片とすることにより取得することができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行なうことができる。あるいは、該核酸は、公知のLRGについて示される塩基配列情報に基づいて、該塩基配列および/またはその相補鎖配列の一部もしくは全部を市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによっても得ることができる。
【0021】
該核酸は、標的核酸の検出・定量を可能とするために、標識剤により標識されていることが好ましい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジンを用いることもできる。
【0022】
ノーザンハイブリダイゼーションによる場合は、上記のようにして調製したRNA画分をゲル電気泳動にて分離した後、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等のメンブレンに転写し、上記のようにして調製された標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中、特異的にハイブリダイゼーションさせた後、適当な方法でメンブレンに結合した標識量をバンド毎に測定することにより、LRG遺伝子の発現量を測定することができる。ドットブロットの場合も、RNA画分をスポットしたメンブレンを同様にハイブリダイゼーション反応に付し、スポットの標識量を測定することにより、LRG遺伝子の発現量を測定することができる。
【0023】
別の好ましい実施態様によれば、LRG遺伝子の発現を測定する方法として定量的PCR法が用いられる。定量的PCRとしては、例えば、競合PCRやリアルタイムPCRなどがある。
PCRにおいてプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、例えば、LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プライマーを挙げることができる。1つの好ましい態様においては、本発明の検査方法に用いられる核酸プライマーとしては、例えば、公知のLRGについて示されるヌクレオチド配列に含まれる、約15塩基以上、好ましくは約15〜約50塩基、より好ましくは約15〜約30塩基、いっそう好ましくは約15〜約25塩基の連続したヌクレオチド配列の長さを有し、約100bp〜数kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたポリヌクレオチド(センス鎖)配列に相補的なポリヌクレオチド、及び前記のポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド(アンチセンス鎖)にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのセットが挙げられる。
【0024】
あるいは、生体から分離した生体検体におけるLRGの検出または定量は、該生体検体からタンパク質画分を調製し、該画分中に含まれる該遺伝子の翻訳産物(即ち、LRG)を検出または定量することにより調べることができる。LRGの検出または定量は、LRGを特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的測定法(例:ELISA、FIA、RIA、ウェスタンブロット等)によって行うこともできる。
従って、一実施態様において、本発明の検査方法は、LRG遺伝子の翻訳産物を特異的に検出し得る抗体を用いて測定することを特徴とする。
【0025】
LRGを特異的に認識する抗体は、LRGポリペプチドやその抗原性を有する部分ペプチド、具体的には、前述の公知のLRGに示されるペプチド配列の全部またはエピトープに当たる部分を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp.Opin.Ther.Patents,Vol.6,No.5,p.441−456,1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
【0026】
個々の免疫学的測定法を本発明の検査方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてLRGの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70(Immunochemical Techniques(PartA))、同書Vol.73(Immunochemical Techniques(PartB))、同書Vol.74(Immunochemical Techniques(PartC))、同書Vol.84(Immunochemical Techniques(PartD:Selected Immunoassays))、同書Vol.92(Immunochemical Techniques(PartE:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書Vol.121(Immunochemical Techniques(PartI:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
【0027】
また、別の実施態様では、LRGの検出は、ハイスループットなタンパク質の発現・定量解析が可能なiTRAQTM試薬(ABI社)及び質量分析計の組み合わせによりプロテオーム解析を用いて測定することを特徴とする。
【0028】
本発明の結核検査方法において、LRGの検出又は定量により、結核の検査を行うことができる。結核の検査には、治療後の疾患活動性の評価や、生物学的製剤による治療をうける自己免疫疾患において結核発症の検査を行うことも含まれる。関節リウマチなどの自己免疫疾患においてIL−6受容体阻害抗体など生物学的製剤による治療を受ける患者においては、IL−6シグナルが阻害されるため、副作用として感染症併発のリスクが高くなる。そして、感染症を併発した患者においてはIL−6シグナルが遮断されているため、IL−6により発現誘導が起きるCRPなどの感染症の血清マーカーは常に正常値を示すため、感染症検出マーカーとなり得ない。IL−6受容体阻害抗体など生物学的製剤治療を受ける自己免疫疾患患者において、疾患活動性に変化がないが、血中LRG濃度が上昇した際には結核をはじめとする感染症併発が強く疑われるため、このような状況において血中LRG濃度が上昇した際は結核をはじめとする感染症検出マーカーとなり得る。ここで、IL−6阻害療法とはIL−6やその受容体に対する阻害抗体を含む治療法を意味する。
【0029】
後述の実施例に示されるように、健常人と比較して結核の患者において血清中のLRG濃度が高い。結核の検査は、LRGの濃度と結核への罹患率との間のこのような正の相関に基づき行われる。
【0030】
例えば、健常人及び対象患者からの生体検体におけるLRGの濃度を定量し、対象患者からの生体検体におけるLRGの濃度を、健常人からの生体検体におけるLRGの濃度と比較する。あるいは、LRGの濃度と結核の罹患の有無との相関図をあらかじめ作成しておき、対象患者におけるLRG濃度をその相関図と比較してもよい。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0031】
そして、対象患者においてLRGが、健常人に比べて高値で検出若しくは定量された場合には、上記のような結核に罹患している可能性が高いと判断することができる。
【0032】
また、後述の実施例に示されるように、疾患活動性と、LRGの濃度との関係について解析した結果、結核患者の血清において、疾患活動性の高い患者は、LRGが有意に高値を示したことが確認された。結核の疾患活動性の評価は、LRG濃度と疾患活動性との間のこのような正の相関に基づき行われる。
【0033】
例えば、活動性の高い結核の患者及び、活動性の低い結核の患者から、生体検体を採取し、対象患者から採取された生体検体におけるLRG濃度が活動性の高い結核の患者及び活動性の低い結核の患者のそれと比較される。あるいは、生体検体におけるLRG濃度と結核の疾患活動性との間の相関図をあらかじめ作成しておき、対象患者から採取された生体検体におけるLRG濃度をその相関図と比較してもよい。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0034】
そして、LRG濃度の比較結果より、対象患者のLRG濃度が相対的に高い場合には、結核の疾患活動性が高いと判断することができる。
【0035】
したがって、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)またはストレプトマイシン(SM)などの抗結核治療薬投与に伴い、患者の血清LRGを定量し、解析することで、結核の疾患活動性を評価することができ、投与した結核治療薬の有効性や、薬剤抵抗性などを客観的に判断することができる。
【0036】
ここで、投与した結核治療薬の有効性や、薬剤抵抗性などを客観的に判断するための検査は、結核治療薬の投与前後に採取して得た血清LRGを定量し、各LRG量を比較することにより、行うことができる。
【0037】
具体的には、以下の工程を含む方法による。
1)結核治療剤の投与前及び投与後に対象患者から生体検体(例、血清)を分離取得し、各検査用検体とする工程;
2)上記1)の検査用検体について、本発明の結核検査方法により検査を行う工程;
3)上記2)で得られた結果をもとに、結核治療剤の投与前及び投与後の各検査用検体中のLRG量比を算出する工程。
【0038】
更に、後述の実施例に示されるように、結核の患者において、生体検体中のLRG濃度が高いほど、結核の疾患活動性が高い。このような、LRG濃度と結核の疾患活動性との間の正の相関に基づき、結核に対する抗結核薬による治療効果を評価することが出来る。
【0039】
たとえば、結核治療薬による治療前、および治療後の患者から生体検体を採取し、対象患者から採取された生体検体におけるLRG発現量について治療前の発現量と比較される。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0040】
そして、LRG発現量の比較結果より治療後の患者のLRG発現量が、治療前の患者より相対的に低い場合には、結核治療薬による治療効果があったと判断することができる。
【0041】
さらに、本発明は、結核検査用のキット(診断剤)にも及ぶ。本発明の結核検査用キットは、上述の本発明の検査方法(生物学的製剤による治療を受ける自己免疫疾患患者の結核発症の検出マーカーを含む)を簡便に実施するためのキットであればよく、特に限定されない。該検査するためのキットは、
(a)LRG遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー、または
(b)LRGを特異的に認識する抗体
を含有してなる。該判定するためのキットが2以上の上記核酸および/または抗体を含む場合、各核酸または抗体は互いにLRG遺伝子の塩基配列上の異なる部分を特異的に認識、またはLRGの異なるエピトープを特異的に認識し得るものである。
【0042】
本発明のキットが前記(a)の核酸を含有する試薬を構成として含む場合、該核酸としては、本発明の検査方法において前記したプローブ用核酸もしくはプライマー用オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0043】
LRG遺伝子の発現を検出し得る核酸は、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。
あるいは、該核酸は、適当な固相に固定化された状態で提供することもできる。固相としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
該検査するためのキットに含有される核酸は、同一の方法(例:ノーザンブロット、ドットブロット、DNAアレイ技術、定量RT−PCR等)によりLRG遺伝子の発現を検出し得るように構築されていることが特に好ましい。
【0045】
本発明のキットが前記(b)の抗体を含有する試薬を構成として含む場合、該抗体としては、本発明の検査方法において前記した抗体が挙げられる。
【0046】
本発明のキットを構成する試薬は、LRG遺伝子の発現を検出し得る核酸や抗体に加えて、該遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質であって、共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない物質をさらに含有することができる。あるいは、該試薬は、LRG遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質を含有する別個の試薬とともに提供されてもよい。例えば、LRG遺伝子の発現を検出するための反応がPCRの場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、dNTPs、耐熱性DNAポリメラーゼ等が挙げられる。競合PCRやリアルタイムPCRを用いる場合は、competitor核酸や蛍光試薬(上記インターカレーターや蛍光プローブ等)などをさらに含むことができる。また、LRG遺伝子の発現を検出するための反応が抗原抗体反応の場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、compeptitor抗体、標識された二次抗体(例えば、一次抗体がウサギ抗ヒトLRG抗体の場合、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等で標識されたマウス抗ウサギIgGなど)、ブロッキング液等が挙げられる。プロテオーム解析による場合は、市販の試薬、例えばiTRAQTM試薬やICATTM試薬(いずれもABI社)などを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
【0048】
(実施例1)結核患者のELISA法による血清LRGの評価
結核患者(TB患者)40名、健常者(HC)50名、合計90名より採血し、血清を調製した。血清は1000倍に希釈し、血清中LRG濃度をELISA法により測定した。ELISAにはHuman LRG Assay Kit(IBL社)を使用した。
【0049】
その結果、血清中LRG濃度が、結核患者において有意に高いことが確認できた(表1・図1)。また、治療に伴って有意に血中LRG濃度が低下することが確認された(表1・図1)。これにより、LRG濃度の検査は、結核を診断するバイオマーカーとなり得ることが確認された。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例2)結核患者の治療前・治療後におけるELISA法による血清LRGの評価 40名の結核患者(TB患者)より結核治療薬による治療前と治療後(1ヶ月後、3ヶ月後)に採血し、血清を調製し、それぞれ血清は1000倍に希釈し、血清LRG濃度を測定した。
【0052】
その結果、血清中LRG濃度が、結核治療薬による治療後の結核患者において、治療前に比べて血清中LRG濃度が有意に低いことが確認された(表2・図2)。これにより、LRG濃度の検査は、結核の疾患活動性・治療効果を評価するバイオマーカーとなり得ることが確認された。
【0053】
【表2】
【0054】
(実施例3)結核患者の疾患活動性とELISA法による血清LRG
実施例2の結核患者の治療前・後の血清中LRG濃度測定結果と、それぞれのCRP値及び塗抹陽性度を比較した。その結果、血清中LRG濃度は、塗抹陽性度と相関がみられ、CRP値は塗抹陽性度と相関がみられなかった(表3・図3)。血清中LRG濃度は、CRP値と比較し、より疾患活動性を反映することが示された。
【0055】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上詳述したように、本発明の結核検査用バイオマーカーであるLRGは、結核の検査用バイオマーカーとなりうる。LRGをバイオマーカーとして、検出又は定量することにより、上記結核の検査を行うことができ、疾患活動性を評価することができる。結核治療薬を投与したときの治療効果を評価しうるバイオマーカーともなる。具体的には、結核患者に結核治療薬を投与した場合の疾患活動性や、生物学的低製剤投与時の自己免疫疾患において結核発症の診断を本発明のバイオマーカーにより評価することができる。これにより、結核治療薬の有効性を確認したり、自己免疫疾患患者において生物学的製剤治療時の感染症合併を有する患者を早期に発見することができる。その結果、例えば薬剤投与終了時の判断や投与薬剤の変更などに対して、最も効果的な方法を選択することができる。
図1
図2
図3