(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ビスフェノール類から誘導される2個のグルシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)黒色顔料、及び(E)溶剤、を含有する黒色感光性組成物であり、(E)溶剤が、大気圧下における沸点が200℃〜260℃、25℃における溶剤粘度が2.0〜3.2mPa・s、及び表面張力が24〜28dyn/cmである高沸点溶剤を含有し、この高沸点溶剤の含有量が全溶剤量の1〜10質量%であることを特徴とする黒色感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の黒色感光性樹脂組成物における(A)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグルシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂である。ここで、(a)/(b)のモル比が0.1〜10であることが好ましい。
【0016】
(A)の原料となるビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、9,9−フルオレニル基を有するものが特に好適に利用される。
【0017】
次に、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得る。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(I)のエポキシ化合物を得ることになる。
【化1】
一般式(I)の式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表す。lは0〜10の数である。好ましいR
1、R
2、R
3、及びR
4は水素原子であり、好ましいAは9,9−フルオレニル基である。また、lは通常複数の値が混在するため平均値0〜10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0〜3である。lの値が上限値を超えると、当該エポキシ化合物を使用して合成したアルカリ可溶性樹脂を用いた黒色感光性樹脂組成物としたとき、該組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性を十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする。
【0018】
次に、一般式(I)の化合物に、不飽和基含有モノカルボン酸としてアクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの両方を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する反応物に、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を、好ましくは(a)/(b)のモル比が0.1〜10となる範囲で反応させて、下記一般式(II)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を得る。
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
5は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して水素原子又は−OC−Z−(COOH)
m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1〜2の数を表す)を表し、nは1〜20の数を表す。)
【0019】
このエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物(II)は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つアルカリ可溶性樹脂であるため、本発明の黒色感光性樹脂組成物の(A)として優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え、良好なパターン形状が得られるものである。
【0020】
本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。
【0021】
また、本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、又は、芳香族多価カルボン酸又はその酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸やその酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸二無水物が挙げられ、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。
【0022】
本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に使用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、好ましくは0.1〜10であるのがよく、より好ましくは0.2〜3.0となる範囲である。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると最適分子量が得られず、(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物において、アルカリ現像性、耐熱性、耐溶剤性、パターン形状等が劣化するので好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量が大きくなり、アルカリ溶解性が悪化する傾向がある。
【0023】
また、本発明の(A)である一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、重量平均分子量(Mw)が2000〜10000の間であることが好ましく、3000〜7000の間であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000に満たないと(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物の現像時のパターンの密着性が維持できず、パターン剥がれが生じ、また、重量平均分子量(Mw)が10000を超えると現像残渣や未露光部の残膜が残り易くなる。更に、(A)は、その酸価が30〜200KOHmg/gの範囲にあることが望ましい。この値が30KOHmg/gより小さいと(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物のアルカリ現像が悪化する傾向になることから、強アルカリ等の特殊な現像条件が必要となる。一方、200KOHmg/gを超えると(A)を使用した黒色感光性樹脂組成物へのアルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎ、剥離現像が起きることから何れも好ましくない。
【0024】
本発明で利用される一般式(II)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、上述の工程により、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、一般式(I)のエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と当モルの不飽和基含有モノカルボン酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90〜130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。
【0025】
本発明の黒色感光性樹脂組成物における(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、当該少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を3個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0026】
本発明の黒色感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。この中でも、高感度の黒色感光性樹脂組成物を得られやすい観点から、o-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0027】
本発明の黒色感光性樹脂組成物における(D)黒色顔料は、混色有機顔料又は無機系顔料等を特に制限なく用いることができる。黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、酸窒化チタン、チタン窒化物等を挙げることができる。これらの遮光材(黒色顔料)は、1種類単独でも2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との親和性が良好な点で好ましい。
【0028】
本発明の黒色感光性樹脂組成物における、(E)溶剤は、一般的な黒色感光性組成物に用いられる数種類の溶剤を使用でき、以下で説明するような特定の高沸点溶剤を含有する。すなわち、使用される特定の高沸点溶剤としては、大気圧下における沸点が200℃〜260℃である。また、25℃において溶剤粘度が2.0〜3.2mPa・sである。更に、表面張力が23〜32dyn/cmである。大気化における沸点は250〜260℃がより好ましく、25℃における溶融粘度については2.2〜2.8mPa・sがより好ましく、表面張力については24〜28dyn/cmあることがより好ましい。
【0029】
また、高沸点溶剤の含有量は、全溶剤量の1〜10質量%とすること、より好ましくは2〜4質量%とすることで、減圧乾燥時の塗膜欠陥を抑制する効果がある。また、高沸点溶剤が減圧乾燥の最終段階まで残存することにより、表面あれや乾燥ムラが抑制されるとともに面内膜厚均一性にも優れた塗膜が得られる。高沸点溶剤が減圧乾燥の最終段階まで残存しているという条件を満たすためには、高沸点溶剤の100℃、60秒加熱後の重量減少率が3%以下であることが好ましい。
【0030】
高沸点溶剤として、具体的には1,3−ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(BDB)を挙げることができる。これらの中で、ジエチレングリコールジブチルエーテル(BDB)がより好ましい。
【0031】
また、(E)溶剤については、高沸点溶剤以外に他の溶剤を含有する。他の溶剤として、1種又は複数種類の溶剤を含有させることができ、特に限定されるものでもない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを数種類用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0032】
また、本発明の黒色感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0033】
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分を主成分として含有する。黒色感光性樹脂組成物においては、好ましくは、(E)溶剤を除いた固形分(光硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中に、(A)100質量部に対して、(B)が10〜60質量部、(C)が(A)と(B)の合計質量に対して2〜40質量部である。より好ましくは、(A)100質量部に対して、(B)が30〜50質量部、(C)が(A)と(B)の合計質量に対して3〜30質量部である。また、(D)黒色顔料については、固形分に対して含有量が1〜80質量%以下の範囲であるのがよく、より好ましくは、20〜60質量%の範囲である。
【0034】
本発明の黒色感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法としては、フォトリソグラフィー法を利用する方法が挙げられる。その形成方法としては、先ず、黒色感光性樹脂組成物を基板表面に塗布し、次いで溶剤を乾燥させた(プリベーク)後、得られた塗膜にフォトマスクを介して紫外線を照射して露光部を硬化させ、アルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行うことにより、パターンを形成し、更に熱硬化(ポストベーク)を行う方法が挙げられる。ここで、黒色感光性樹脂組成物を塗布する基板としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が用いられる。
【0035】
黒色感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法を採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、塗膜が形成される。プリベークは23℃、20〜100Paで15〜60秒間減圧乾燥(VCD)により溶剤を除去した後、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。このプリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度で1〜3分間行われる。
【0036】
プリベーク後に行われる露光は、露光機によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分の感光性樹脂及び感光性モノマーを感光させる。露光機及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行う。
【0037】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の塗膜を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03〜1質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜27℃の温度で現像するのが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0038】
このようにして現像した後、200〜240℃の温度、20〜60分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた黒色膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これは、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[黒色感光性樹脂組成物の作製]
表1に示す各溶剤を使用し、表2に示す組成によって配合を行い、実施例1〜4および比較例1、2の黒色感光性樹脂組成物を調製した。下記に各組成に使用した成分を示す。
(A)アルカリ可溶性樹脂:フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート酸付加物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度56.5%、新日鉄住金化学(株)製 商品名V−259ME)
(B)光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬(株)製 商品名DPHA)
(C)光重合開始剤:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)カルバゾール−3−イル]エタノン=O−アセチルオキシム(BASF社製 商品名イルガキュアOXE02)
(D)黒色顔料:カーボンブラック濃度25w%、高分子分散剤6w%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤のカーボンブラック分散体
(E)溶剤:
(E)−1 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(E)−2 :ジエチレングリコールジメチルエーテル(MDM)
(E)−3 :ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)
(E)−4a :ジエチレングリコールジブチルエーテル(BDB)
(E)−4b :ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)
(E)−4c :1,3−ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA)
(E)−4d :ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)
(E)−5 :ジエチレングリコールジエチルエーテル(EDE)
(F)界面活性剤
(G)シランカップリング剤
(1%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す重量変化率は、ホットプレート温度を100℃に設定し、シャーレーをホットプレート上に設置し、各溶剤を滴下し60秒後の溶剤の重量減少を測定した。溶液粘度は、E型粘度計(RE−85L、東機産業社製)を用いて25℃における溶液粘度を測定した。表面張力は、全自動表面張力計(BVP−Z型、協和界面科学社製)を用いて23℃において測定した。
【0043】
【表2】
【0044】
[乾燥ムラの評価]
実施例1〜4、比較例1、2の黒色感光性樹脂組成物をガラス板(5インチ角)およびスピンコーターを用いて、乾燥後膜厚を1.6μmなる条件で塗布・乾燥した後にナトリウムランプ光を照射して塗布面を観察した。乾燥条件はVCD 23℃ 50Pa 30秒、およびホットプレート加熱100℃ 90秒で行った。下記基準に基づく評価結果を表3に示す。
・判定基準
○ 塗布面に白いモヤが認められないもの
× 塗布面に白いモヤが認められるもの
【0045】
[表面粗さ (Å)]
実施例1〜4、比較例1、2の黒色感光性樹脂組成物をガラス板(5インチ角)およびスピンコーターを用いて、乾燥後(乾燥条件は乾燥ムラ評価時と同様)膜厚が1.6μmになる条件で塗布・乾燥した後に、触針式膜厚計(KLA−Tencor社製、P−15)を用いて、表面粗さ(Å)を測定した。下記基準に基づく評価結果を表3に示す。
・判定基準
○ 60Å以下
△ 60Å以上100Å以下
× 100Å以上
【0046】
[クレーター観察]
実施例1〜4、比較例1、2の黒色感光性樹脂組成物をガラス板(5インチ角)およびスピンコーターを用いて、乾燥後(乾燥条件は乾燥ムラ評価時と同様)膜厚を1.6μmなる条件で塗布・乾燥した後に、金属顕微鏡を用い塗布面の観察を実施した。下記基準に基づく評価結果を表3に示す。
・判定基準
○ 塗布面にクレーターが認められないもの
× 塗布面にクレーターが認められるもの
【0047】
[膜厚均一性]
実施例1〜4、比較例1、2の黒色感光性樹脂組成物をガラス板(5インチ角)およびスピンコーターを用いて、乾燥後(乾燥条件は乾燥ムラ評価時と同様)膜厚を1.6μmなる条件で塗布・乾燥した後に、触針式膜厚計(KLA−Tencor社製、P−15)を用いて、基板上5ヶ所(中央部+四隅)の膜厚測定を実施した。下記基準に基づく評価結果を表3に示す。
・判定基準
○ 標準偏差が0.05μm以下
△ 標準偏差が0.05μm以上0.1μm未満
× 標準偏差が0.1μm以上
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果から明らかなように、少なくとも乾燥ムラ、表面状態に関する評価が優れた硬化膜を得るには、本発明に係る高沸点溶剤を含んだ樹脂組成物が適していることがわかる。更に、高沸店溶剤の選択基準として粘度および表面張力の領域を見極めることで、塗布・乾燥工程での塗膜流動の抑制に効果を発し、膜厚の均一性に優れていることが明らかになった。