(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする、請求項1に記載のマスク検査装置。
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする、請求項6に記載のマスク評価方法。
マスクに光を照射して前記マスクの欠陥を検査するマスク検査装置と、露光装置で前記マスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する空間像計測装置を組み合わせて、マスクを評価するマスク評価システムであって、
前記マスク検査装置は、
マスクに光を照射して光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記マスクの設計データから参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記光学画像と前記参照画像を比較して、しきい値に基づき欠陥と判断する箇所の座標を取得する比較部と、
前記欠陥と判断した箇所の座標及び前記欠陥と判断した箇所を包含する前記参照画像を含む前記欠陥に付随する情報を前記空間像計測装置へ供給するインターフェース部と、
を有し、
前記空間像計測装置は、
前記空間像計測装置に用いる前記参照画像から、前記欠陥と判断した箇所の座標に対応する比較基準情報を生成する比較基準情報生成部と、
フィルタを通過した照明光で前記マスクを照明し、アパーチャを介して焦点面に設けられたCCDカメラで転写露光された前記欠陥と判断した箇所に対応した空間像を取得する光学系と、
前記比較基準情報と、前記欠陥と判断した箇所の座標に対応する空間像とを用いて、致命度の判断をする致命度判断部と、
前記致命度を前記マスク検査装置に供給するインターフェース部と、
を有し、
前記マスク検査装置は、前記致命度と前記比較部で欠陥の判断に用いる前記しきい値との相関に基づいて前記しきい値を再設定する、
ことを特徴とするマスク評価システム。
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする、請求項11に記載のマスク評価システム。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(Large Scale Integration; LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路寸法は微細化の一途を辿っている。そして、半導体素子においては、回路パターンが形成された原画パターン(マスク又はレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパ又はスキャナと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造されている。
【0003】
多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。一方、最先端のデバイスでは、十数nmの線幅のパターン形成が要求される状況となってきている。ここで、歩留まりを低下させる大きな要因として、マスクパターンの欠陥が挙げられる。半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴い、マスクパターンの欠陥も微細化している。
【0004】
マスクの寸法精度を高めることで、プロセス諸条件の変動を吸収しようとしてきたこともあり、マスク検査においては、極めて小さなパターンの欠陥を検出することが必要になっている。こうしたことから、マスクのパターンを検査する検査装置に対して高い検査精度が要求されている。
【0005】
マスク検査装置では、光源から出射された光が光学系を介してマスクに照射される。マスクはステージ上に保持され載置されており、ステージが移動することによって、照射された光がマスク上を走査する。マスクを透過あるいは反射した光は、レンズを介してセンサに結像する。そして、センサで撮像された光学画像を基にマスクの欠陥検査が行われる。
【0006】
マスク検査装置におけるマスク検査方法としては、ダイ−ダイ比較(Die-to-Die)検査方法と、ダイ−データベース(Die-to-Database)比較検査方法とが知られている。ダイ−ダイ比較検査方法は、異なる位置にある同一パターンの光学画像同士を比較する方法である。一方、ダイ−データベース検査方法は、マスク作成時に使用した描画データから生成される参照画像と、実際のマスクパターンの光学画像とを比較する方法である。
【0007】
光学画像を生成するために、電荷蓄積型のTDI(Time Delay Integration)センサと、このTDIセンサの出力を増幅するセンサアンプとが用いられている。透過光で検査する場合においては、例えば、ハーフトーン型位相シフトマスクは遮光膜とガラス基板のコントラストがある程度得られるため、クロムマスクと同様に検出光学系で受光したセンサ画像の光強度信号でマスクパターンを認識して欠陥判定を行う手法を採用している。
【0008】
欠陥の形状によっては、マスク面の反射光を利用する方がコントラストを得やすい場合があり、異物検査機能などの用途で反射検査光学系を用いた検査方法もある。また、マスク厚のばらつきによる透過照明光の焦点ズレを容易に補正することにより、検出感度の高い欠陥検査を行う手法を採用している。
【0009】
上記のとおりLSIの微細化に伴い、マスク上のパターンはデータ量と複雑度が急速に増大し、このためマスク検査時間の増大を招いている。また、検出すべき欠陥サイズが微小となるに連れ、マスク検査装置の光学解像度や検出S/N比の不足が著しくなり、疑似欠陥の多発を招いている。また、マスク上のパターンは、複雑なOPC(Optical Proximity Correction)やRET(Resolution Enhancement Techniques)パターンが付加された結果、ウェハ上に転写されるべきパターン形状と大幅に乖離したものとなり、欠陥の判定が困難になっている。
【0010】
すなわち、マスク検査装置が検出した欠陥は、マスク上のパターンの形状異常を検出したものであり、実際に、ウェハに露光転写された場合、その欠陥がウェハパターンの線幅誤差やブリッジ欠陥に波及するかは判別できないことがある。
【0011】
マスクの製造を行うマスクショップでは、上記の欠陥の判別において、例えば、マスクが露光装置で転写露光される空間像を光学的に模擬する装置を備えることで対応している。この装置では、欠陥箇所の模擬露光転写橡を得て、欠陥箇所と健全箇所との比較で欠陥箇所のOK(可)又はNG(不可)を判断している。
【0012】
評価装置としては、リソグラフィシミュレーション顕微鏡、すなわち、露光装置でマスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する装置が用いられており、実際のウェハ露光条件と等価な光学条件で空間像を観察し、設計データと比較することで欠陥を判断している。
【0013】
露光装置でマスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する装置は、例えば、エアリアルイメージ測定システム(Aerial Image Measurement System:カールツァイス社製AIMS(登録商標))などが知られている(特許文献1参照)。以下、露光装置でマスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する装置は、空間像計測装置と総称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年のパターン微細化に伴う様々な超解像技術の進歩で、パターンに複雑な形状のOPCパターン(補助パターン)を施し、露光転写されたウェハ上の線幅均質化や位置ずれ補正がなされるようになっている。そして、このような複雑なOPCパターン箇所で欠陥を検出した場合には、OPCパターンを含めてそのパターンに一致する健全な手本となる箇所が存在しづらくなっている。
【0016】
そこで、空間像計測装置において、マスク検査装置と同様にマスクの設計や描画の元となった設計パターンデータや描画データを取り込んで、転写露光条件を踏まえた理想的な模擬ウェハ空間推定像を得て、健全箇所の手本とする手法が用いられようとしている。
【0017】
マスク検査装置で検出した欠陥は、検査後にオペレータがレビューし、パターン修正の要否を判断して欠陥分類し、修正すべき箇所の座標や画像を添えて修正工程に送る運用が確立している。修正機では、添付された座標と画像を元に修正すべき箇所を特定して、パターンの添削修正を行っている。
【0018】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、マスク検査装置と空間像計測装置の連携方法を工夫することで、マスクの欠陥を、ウェハ空間への転写影響度の尺度で致命度を判断し、修正すべき欠陥のみを指摘し修正することで、マスク製造の製造工程時間の短縮を図ることができ、マスクの検査及び評価の効率を改善できるマスク検査装置、マスク評価方法及びマスク評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様は、マスクに光を照射して光学画像を取得する光学画像取得部と、前記マスクの設計データから参照画像を生成する参照画像生成部と、前記光学画像と前記参照画像を比較する比較部と前記比較部が欠陥と判断した箇所の座標を取得し、前記設計データから前記座標を包含する所定寸法範囲のパターンデータを抽出するパターンデータ抽出部と、前記欠陥座標及び前記抽出したパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、空間像計測装置に供給するインターフェース部とを有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第1の態様において、前記パターンデータ抽出部は、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし抽出するとともに、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出することが好ましい。
【0021】
本発明の第1の態様において、前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記欠陥箇所の参照画像及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様において、前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して生成した比較基準情報と、前記空間像計測装置で転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて前記欠陥箇所の致命度を判断する致命度判断部から前記致命度が供給され、前記供給された致命度と前記比較部で欠陥の判定に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定することが好ましい。
【0023】
本発明の第1の態様において、前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とすることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様は、マスクに光を照射して前記マスクの欠陥を検査するマスク検査装置と、露光装置で前記マスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する空間像計測装置を組み合わせて、マスクを評価するマスク評価方法であって、前記マスクに光を照射して取得した光学画像と、前記マスクの設計データから生成した参照画像を比較するステップと、前記設計データから前記比較により欠陥と判断した箇所の座標を包含する所定寸法範囲のパターンデータを抽出するステップと、前記欠陥座標及び前記抽出したパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、前記マスク検査装置から前記空間像計測装置へ供給するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第2の態様において、前記パターンデータを抽出するステップでは、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出するステップを含むことが好ましい。
【0026】
本発明の第2の態様において、前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記マスクの検査条件及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の第2の態様において、前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して生成した比較基準情報と、前記空間像計測装置で転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて判断した前記欠陥の致命度を、前記空間像計測装置から前記マスク検査装置に供給するステップと、前記供給された致命度と前記欠陥の判断に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定するするステップとを含むことが好ましい。
【0028】
本発明の第2の態様において、前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であるのが好ましい。
【0029】
本発明の第3の態様は、マスクに光を照射して前記マスクの欠陥を検査するマスク検査装置と、露光装置で前記マスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する空間像計測装置を組み合わせて、マスクを評価するマスク評価システムであって、前記マスク検査装置は、マスクに光を照射して光学画像を取得する光学画像取得部と、前記マスクの設計データから参照画像を生成する参照画像生成部と、前記光学画像と前記参照画像を比較する比較部と、前記比較部が欠陥と判断した箇所の座標を取得し、前記設計データから前記座標を包含する所定寸法範囲を抽出するパターンデータ抽出部と、前記欠陥座標及び前記抽出されたパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、前記空間像計測装置へ供給するインターフェース部とを有し、前記空間像計測装置は、前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して比較基準情報を生成する比較基準情報生成部と、フィルタを通過した照明光で前記マスクを照明し、アパーチャを介して焦点面に設けられたCCDカメラで転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を取得する光学系と、前記比較基準情報と、前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて致命度の判断をする致命度判断部とを有することを特徴とするものである。
【0030】
本発明の第3の態様において、前記パターンデータ抽出部は、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし抽出するとともに、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出ことが好ましい。
【0031】
本発明の第3の態様において、前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記欠陥箇所の参照画像及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことが好ましい。
【0032】
本発明の第3の態様において、前記致命度と前記比較部で欠陥の判定に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定することが好ましい。
【0033】
本発明の第3の態様において、前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることが好ましい。また、前記致命度判断部は、独立した構成であり、前記空間像計測装置から前記比較基準情報と、前記欠陥箇所に対応した空間像が供給され、致命度の判断をすることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のマスク検査装置、マスク評価方法及びマスク評価システムによれば、マスク検査装置と空間像計測装置の連携方法を工夫することで、マスクの欠陥を、ウェハ空間への転写影響度の尺度で致命度を判断し、修正すべき欠陥のみを指摘し修正することで、マスク製造の製造工程時間の短縮を図ることができ、マスクの検査及び評価の効率を改善できるマスク検査装置、マスク評価方法及びマスク評価システムを提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明のマスク評価システムの一例としてのマスク評価システム100を示す概略図である。
【0037】
図1に示すマスク評価システム100では、本実施の形態で必要な構成部を記載しているが、検査に必要な他の公知の構成部が含まれていてもよい。また、本明細書において、「〜部」及び「〜回路」などと記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置などの記録装置に記録される。
【0038】
図1に示すマスク評価システム100は、マスク検査装置200及び空間像計測装置300を有している。マスク検査装置200と空間像計測装置300は、イーサネット(登録商標)などのネットワークを介して接続するか又は専用のデータバスを介して直接的に接続している。マスク検査装置200及び空間像計測装置300については、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0039】
図2は、マスク検査装置200の構成を示す概略図である。
【0040】
図2に示す光学画像を取得する光学画像取得部210は、ステージ2、オートローダ制御回路3、オートローダ3A、ステージ制御回路4、モータ4A,4B,4C、レーザ測長手段5、位置回路5A、光源6、ビームスプリッタ7、光学系8,9、TDIセンサ11,11A及びセンサアンプ12で構成されている。以下、マスク検査装置200の各構成について説明する。
【0041】
マスク検査装置200は、検査対象であるマスク1を保持するステージ2を有している。マスク1は、オートローダ3Aからステージ2上に搬送される。オートローダ3Aは、オートローダ制御回路3により制御される。
【0042】
ステージ2は、駆動手段の一例として、X方向モータ4Aと、Y方向モータ4Bと、θ方向(水平回転方向)モータ4Cとによって、X方向、Y方向及びθ方向に駆動される。これらのモータ4A,4B,4Cの駆動制御は、ステージ制御回路4によって実行される。
【0043】
ステージ2のX方向及びY方向の位置は、例えば、レーザ干渉計等のレーザ測長手段5と、このレーザ測長手段5に接続された位置回路5Aとによって検出される。マスク1は、例えば、X方向に一定速度で連続移動しながらセンサの撮像が行われ、終端でY方向に移動した後、X方向に逆向きに一定速度で連続移動しながらセンサの撮像を行うといったことを、繰り返して被検査マスクの検査領域全面を撮像する。
【0044】
また、マスク検査装置200は、光照射手段の一例としてレーザ光を発する光源6を備えている。マスク検査装置200は、光源6から発せられたレーザ光を、ビームスプリッタ7を介してマスク1に照射し透過させる光学系8と、光源6から発せられたレーザ光を、ビームスプリッタ7を介してマスク1に照射し反射させる光学系9を有している。
【0045】
光学系8は、ミラー8a、対物レンズ8b及び画像センサの一例であるTDIセンサ11に透過光を結像させる対物レンズ8cを有している。また、光学系9は、ミラー9a、ビームスプリッタ9b及び画像センサの一例であるTDIセンサ11Aに反射光を結像させる対物レンズ9cを有している。以下、光学系8と光学系9を区別する必要がない場合は、光学系8の構成を用いて説明する。
【0046】
TDIセンサ11は、例えば、2048画素×512画素(1画素が70nm×70nmの場合、144μm×36μm)の撮像領域を有する2次元のCCDセンサで構成されている。すなわち、TDIセンサ11は、TDI方向に複数段(例えば、512段)のラインによって構成され、各ラインLは複数の画素(例えば、2048画素)によって構成されている。
【0047】
また、TDIセンサ11は、TDI方向(512段方向)とステージ2のX方向が一致するように設置され、ステージ2が移動することにより、TDIセンサ11がマスク1に対して相対的に移動することになり、TDIセンサ11にマスク1のパターンが撮像されることになる。
【0048】
ステージ2の移動方向が反転されると、TDIセンサ11の移動方向も反転され、TDIセンサ11がマスク1に対して相対的に移動することになる。なお、本実施形態で使用されるマスク検査装置200では、画像センサとしてTDIセンサ11を用いているが、TDIセンサ11に代えてラインセンサやエリアセンサのような他の画像センサを用いてもよい。
【0049】
TDIセンサ11は、センサアンプ12と接続されている。センサアンプ12は、TDIセンサ11から入力された各画素の光量信号をノーマライズされた光学画像とする。センサアンプ12から出力された光学画像は、位置回路5Aから出力されたステージ2でのマスク1の位置を示すデータとともに、比較部の一例である比較回路15に入力される。
【0050】
また、マスク検査装置200は、展開回路13及び光学画像に対する比較基準となる参照画像を生成する参照画像生成部としての参照回路14を備えている。
【0051】
展開回路13は、記憶装置21に記憶されたCADデータ(作図データ)等を展開し、展開データを参照回路14に出力する。すなわち、展開回路13は、例えば、記憶装置21から制御計算機20を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータを二値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。
【0052】
参照回路14は、展開回路13から入力される展開データにリサイズ処理、コーナー丸め処理及び点広がり分布関数(PSF:Point Spread Function)フィルタ処理を一括して施すことにより参照画像を生成し、この参照画像を比較回路15に出力する。
【0053】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、例えば、記憶装置21に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路13に送られる。展開回路13では、設計パターンデータがイメージデータ(設計画素データ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路14に送られて参照データの生成に用いられる。
【0054】
比較回路15は、センサアンプ12から入力された光学画像と、参照回路14から入力された参照画像を比較する。比較回路15では、この比較によりパターンの形状の差異に基づいてパターン形状欠陥を検出し、この比較により欠陥と判断した箇所の座標を特定する。
【0055】
比較回路15では、センサアンプ12から得られた光学画像と、参照回路14で生成された参照画像を、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較し、誤差が所定の値を超えた場合にその箇所を欠陥と判断する。欠陥と判断した場合には、例えば、その座標がパターンデータ抽出回路16に供給され、また、その座標と欠陥判定の根拠となったセンサ撮影画像及び参照画像が、インターフェース17を介して空間像計測装置300に供給される。
【0056】
また、比較回路15の検査結果は、例えば、記憶装置21に格納され、その後、オペレータが格納された検査結果を記憶装置21から読み出してディスプレイなどの表示装置22に表示させ確認することができる。なお、記憶装置21は、例えば、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、半導体メモリなどである。
【0057】
なお、比較回路15では、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムが用いられ、比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定されるが、透過画像同士での比較、反射画像同士での比較であってもよい。
【0058】
パターンデータ抽出部の一例としてのパターンデータ抽出回路16は、比較回路15が欠陥と判断し特定した箇所の座標を取得し、設計データから座標を包含する所定寸法範囲の設計パターンデータを抽出する所定寸法範囲を抽出する。
【0059】
すなわち、パターンデータ抽出回路16は、設計パターンデータと欠陥個所の座標を用いて、設計パターンデータから欠陥箇所付近のパターンを視認するのに必要な分だけのデータを抽出する。このデータは、図形記述の集合体であるクラスタ、セル、フレーム又はストライプと呼ぶ集合体が階層的に表現されているものであり、所定寸法範囲は、例えば、クラスタ又はセルの単位である。なお、この所定寸法範囲は、実用的には一辺数十から数百ミクロン程度の矩形領域である。
【0060】
また、パターンデータ抽出回路16は、設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの所定寸法範囲と同一な箇所を抽出する。すなわち、参照画像を生成するのに使用したパターンデータを処理するとともに、そのパターンデータと対になって使用される検査感度指定用のパターンデータについても、座標同一な箇所を抽出する。
【0061】
検査感度指定用のパターンデータは、各パターンの重要度を設計パターンデータに加えてパターン重要度情報として明示したものである。このような重要度情報を抽出することで、パターンの重要度の高い欠陥箇所を優先して評価できる。
【0062】
インターフェース部の一例としてのインターフェース17は、パターンデータ抽出回路16で抽出されたパターンデータを含む欠陥に付随する情報を、空間像計測装置300へ供給するように構成されている。
【0063】
欠陥に付随する情報は、欠陥座標、欠陥箇所の光学画像、マスクの検査条件及び空間像計測装置300の露光条件などである。欠陥に付随する情報は、参照回路14、比較回路15、パターンデータ抽出回路16、記憶装置21などから、インターフェース17を介して空間像計測装置300に供給されるものであり、上記の例示に限定されず、空間像計測装置300が必要とする情報であればよい。
【0064】
マスク検査装置200は、通常のパターン欠陥検査のほか、センサアンプ12のオフセット及びゲインの調整、ステージ2のアライメントなどの全体的な制御を実行する制御計算機20を備えている。この制御計算機20には、上記の位置回路5A、オートローダ制御回路3、ステージ制御回路4、展開回路13、参照回路14、比較回路15、パターンデータ抽出回路16、インターフェース17、記憶装置21、表示装置22などが接続されている。
【0065】
図3は、空間像計測装置300の構成を示す概略図である。空間像計測装置300は、半導体用露光装置と同じ波長の光源を有し、露光装置と等価の照明光学系を持つリソグラフィシミュレーション顕微鏡の一例である。
【0066】
図3に示すように、空間像計測装置300は、比較基準情報生成部310、光学系320及致命度判断部330を有し、光学系320は、瞳フィルタなどのフィルタ321、アパーチャ322及びCCDカメラ323を有する。なお、空間像計測装置300は、マスク検査装置200と同様に全体の制御を実行する制御計算機、マスク検査装置200に対するインターフェース部などを備えているが省略する。
【0067】
比較基準情報生成部310は、空間像計測装置300に用いる参照画像から上記の欠陥に付随する情報として供給された欠陥箇所を反映して比較基準情報を生成する。すなわち、この比較基準情報は、マスク検査装置200で欠陥と判断された情報、つまり欠陥座標や抽出されたパターンデータなどの情報を反映させて、空間像計測装置300で用いる参照画像から欠陥に対応する情報を生成している。
【0068】
空間像計測装置300に載置されたマスク1には、照明光が照射される。この照明光は、フィルタ321を通過してマスク1に照射され、アパーチャ322を介して焦点面に設けられたCCDカメラ323で転写露光される。すなわち、空間像計測装置300では、マスク1の欠陥箇所を転写露光することで空間像を採取する。
【0069】
致命度判断部330は、欠陥箇所に基づいた参照画像から生成された比較基準情報と、欠陥箇所に基づいた空間像を用いて致命度を判断する。具体的には、上記の比較基準情報と空間像に基づいて、線幅及びホール径の誤差の計算値を求め、致命度の判断をする。なお、本実施形態では、致命度判断部330は、空間像計測装置300の構成としているが、これに限定されない。例えば、致命度判断部は、独立した装置として、空間像計測装置300から比較基準情報と、欠陥箇所に対応した空間像が供給され、致命度の判断をする構成であってもよい。
【0070】
致命度判断部330で判断された致命度は、空間像計測装置300からマスク検査装置200に供給される。そして、供給された致命度と比較回路15で欠陥の判定に用いるしきい値との相関が生成される。すなわち、この相関は、空間像計測装置300で得られた欠陥箇所に対応した比較基準画像(比較基準情報)と空間像から得られる線幅及びホール径の誤差の計算値を意図することで、マスク判定欠陥のしきい値の再設定を可能にしている。
【0071】
この相関は、致命度が大であると判断されている場合、しきい値を厳しく、つまり小さくするという関係であり、一方、致命度が小であると判断されている場合、しきい値を緩く、つまり大きくするという関係である。
【0072】
一例として、欠陥箇所がアシストバーを有している場合において、メインパターンとアシストバーが合わさった空間像の線幅が,正常箇所と異常個所とで誤差10%を超えたときに欠陥と判断する。一方、空間像計測装置300の評価では、誤差10%を超えたときであっても良品と判断し、そして、この誤差が20%のときに不良品と判断する処理が行われる。このような場合に、この結果を意図したしきい値を再設定するとよい。すなわち、この場合には、致命度は小となるように判断されているので、しきい値は緩く、つまり大きくなるように所定の値で再設定するとよい。
【0073】
上記の相関は、欠陥と判断された箇所における致命度としきい値に基づいている。そして、この欠陥箇所の形状、面積などの検査パラメータを用いた欠陥アルゴリズムの結果を、他の欠陥箇所に適用してもよい。例えば、欠陥アルゴリズムの結果、検査領域がアシストバーと特定された場合に、既に得ている相関の結果を用いてこの領域のしきい値を再設定すればよい。
【0074】
上記のとおりマスク検査装置200は、空間像計測装置300の致命度判断部330で処理された致命度、又は、上記の単独で構成された致命度判断部で処理された致命度が供給され、この致命度と欠陥処理を行うためのしきい値との相関を得て、新たなしきい値を設定することができる。
【0075】
このように空間像計測装置300は、ウェハ空間での転写影響度の尺度で、致命度を判断している。すなわち、マスク検査装置200が検出した欠陥は、マスク上のパターンの形状異常を検出したものであり、実際に、ウェハに露光転写された場合、その欠陥がウェハパターンの線幅誤差、断線、ブリッジ欠陥などに波及するかは判別できない。したがって、空間像計測装置300で欠陥を評価し、例えば、断線など影響度の大きいものは、致命度が大であり、一方、断線などなく影響度の小さいものは、致命度が小というように判断する。
【0076】
マスク検査装置200では、致命度が供給され比較回路15で欠陥の判定に用いられる値と、この致命度の相関でしきい値を再設定する。この再設定は、致命度が大であれば、しきい値は小さくなるように再設定され、一方、致命度が小であれば、しきい値は大きくなるように再設定される。例えば、欠陥箇所がアシストバーの場合、致命度が小と判断され、しきい値を緩くすることで、良品が不良品として判断されることを避けることができる。
【0077】
また、空間像計測装置300は、マスク1を実際の露光装置で露光した状況と、ほぼ等価な状況で、空間像を取得することができ、この空間像計測装置300を用いることで、マスク作成段階で、マスクの品質を、実際の露光装置と同様の環境で評価ができ、例えば、ホットスポットの検出も可能である。また、空間像計測装置300は、限られた領域での検査であるが、転写されるパターンである転写像により転写欠陥の状況を把握する。
【0078】
なお、露光転写される露光イメージを推定するリソグラフィシミュレーションは、表面の観察を行い情報量も少なくマスクプロセス起因の欠陥を検知できない構成である。一方、空間像計測装置300では、実際のマスクの透過像としての空間像を用いる構成でありリソグラフィシミュレーションとは異なるものである。
【0079】
図4は、本実施形態のデータの流れを示す模式図である。
【0080】
図4に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ〈層〉毎に作成されて各マスクに形成される設計パターンデータが格納される。マスク検査装置200では、OASISなどの設計中間データ202を直接読み込めるようには構成されていない。
【0081】
すなわち、マスク検査装置200の各製造メーカは、独自のフォーマットデータを用いている。このため、設計中間データ202は、レイヤ毎にマスク検査装置200に固有のパターンデータであるフォーマットデータ203に変換される。この変換後のフォーマットデータ203は、マスク検査装置200に入力される。なお、このフォーマットデータ203は、マスク検査装置200に固有のデータとすることができるが、描画装置と互換性のあるデータとしてもよい。
【0082】
フォーマットデータ203は、例えば、マスク検査装置200の記憶装置21に格納される。フォーマットデータ203の数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタ又はセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタ又はセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。
【0083】
クラスタ又はセルは、フレーム又はストライプに配置される。フレーム又はストライプは、例えば、幅が数百μmで、長さがフォトマスクのX方向又はY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域である。
【0084】
記憶装置21に入力されたフォーマットデータ203(設計パターンデータ)は、マスク検査の進行に伴って、観測中のパターンに必要な箇所のデータが、展開回路13に読み出される。展開回路13は、フォーマットデータ203の図形形状(図形コード)、図形寸法、配置位置などを解釈する。そして、展開回路13では、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンデータとして二値又は多値の設計画像データを展開するデータ展開処理が行われる。
【0085】
展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。上記のように二値又は多値のイメ一ジデータ(ビットパタ一ンデ一夕)に変換されたパターンデータは、参照データ(参照画像)を発生する参照回路14に送られる。参照回路14では、マスク観察像と比較するための適切な画像フィルタ処理が施され、参照パターンを発生する。
【0086】
ここで、フィルタ処理について説明する。
図5は、フィルタ処理を示す模式図である。マスク1のパターンは、マスクの製造仕上がり寸法を設計寸法通りにするために、製造工程で線幅を加減することがある。また、マスク製造プロセスの過程でパターンのコーナーが丸まってしまうことがある。このため、検査装置で観測する光学画像(マスク観測像)は、設計パターンと厳密には一致しない。さらに、センサアンプ12から得られた光学画像は、光学系の解像特性やフォトダイオードアレイのアパーチャ効果などによって、ぼやけを生じた状態、言い換えれば空間的なローパスフィルタが作用した状態になる。
【0087】
したがって、設計側の二値又は多値のイメージデータである設計パターンデータにフィルタ処理を施し、つまり光学画像と合わせる処理を行うことで、光学画像と高い精度で比較することができる参照画像が生成されることになる。すなわち、検査に先だって検査対象となるマスク1を観察し、その製造プロセスや検査装置の光学系による変化を模擬したフィルタ係数を学習して、設計パターンデータに2次元のデジタルフィルタ処理を施し、参照画像が光学画像に近似するような処理を行っている。
【0088】
図4及び
図6を用いて光学画像の取得方法について説明する。
図4に示す光学画像取得部210によって、マスク1の光学画像が取得される。マスク1は、XYθの各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたテーブル2上に載置される。光源6から導かれた検出光は、光学系8,9を介してマスク1に照射され、このマスク1のパターンは、TDIセンサ11,11Aに結像する。
【0089】
図6は、マスク1に形成されたパターンの光学画像の取得手順を示す模式図である。
図6に示すマスク1は、
図2のステージ2の上に載置されているものとする。また、マスク1上の検査領域は、
図6に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク1のX方向又はY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0090】
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、
図6で示す光学画像を取得する際には、各ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・が連続的に走査されるようにステージ2の動作が制御される。具体的には、ステージ2が
図6に示す−X方向に移動しながら、マスク1の光学画像が取得される。そして、
図2に示すTDIセンサ11に
図6に示すような走査幅Wの画像が連続的に入力される。
【0091】
すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した後、第2のストライプ20
2における画像が取得される。この場合、ステージ2が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20
1における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像が取得され、走査幅Wの画像が、TDIセンサ11に連続的に入力される。
【0092】
また、第3のストライプ20
3における画像を取得する場合には、ステージ2が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20
2における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した方向(−X方向)にステージ2が移動する。なお、
図6の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、ハッチングされた部分は、光学画像の取得が済んだ領域を示している。
【0093】
次に、TDIセンサ11,11Aに結像したパターンの像は、光電変換され、さらにセンサアンプ12によってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、A/D変換されたセンサデータ(光学画像)は、センサアンプ12から比較回路15に送られる。
【0094】
参照回路14で生成された比較基準パターンイメージは、位置回路5Aから出力されたステージ2上でのマスク1の位置を示すデータとともに、比較回路15に送られる。比較回路15では、参照パターンイメージと、マスタ観測パターンデータとが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較され欠陥判定処理が行われる。
【0095】
また、比較回路15では、複数の比較判定アルゴリズムを並列に適用し、いずれかのアルゴリズム反応値が所定のしきい値を超えれば欠陥とみなす。比較の結果、欠陥と判定された場合には、例えば、その座標と、欠陥判定の根拠となったパターンイメージ(参照画像と光学画像)が、装置内に一時的に記憶される。
【0096】
比較回路15での検査結果は保存され、欠陥と判定された検査結果の座標は、パターンデータ抽出回路16に送られる。
図4に示すようにパターンデータ抽出回路16(データベースパターンデータ抽出機能)は、この座標に基づいてフォーマットデータ203(オリジナル設計パターンデータ)から欠陥座標を包含する領域を抽出する。
【0097】
図4に示すパターンデータ抽出回路16の(a)は、マスク1に描画されるオリジナル設計パターンを模式的に示した図である。また、(b)は、マスク1上で検出された欠陥個所を模式的に示した図である。欠陥が検出された箇所は、例えば、マスク中心を原点とするX−Y座標系で記録されている。また、データベース検査の基準画像生成用のパターンデータ、つまり(a)に示すオリジナル設計パターンデータも同様にマスク1の中心を原点とするX−Y座標系で記述されている。
【0098】
なお、座標系は、マスクをガラス面から見た場合と膜面から見た場合とで、Y軸又はX軸対称に反転するが、ここでは欠陥検出座標とデータベースパターンはいずれもガラス面から見た座標系で一致しているものとしている。
【0099】
本実施の形態においては、
図4のパターンデータ抽出回路16の(c)に示すように、例えば、オリジナル設計パターンデータと欠陥個所の座標を用いて、オリジナル設計パターンデータから欠陥箇所付近のパターンを視認するのに必要な分だけのデータを抽出している。パターンデータは、図形記述の集合体であるクラスタ又はセル、さらにフレーム又はストライプと呼ぶ集合体という具合に階層的に表現されている。クラスタ、セル、フレーム、ストライプなどの集合体には、それぞれ所定寸法範囲の矩形であって、例えば、左下頂点を原点としている。
【0100】
なお、欠陥箇所の参照パターン像は、複数のクラスタ又はセル、さらにフレーム又はストライプに跨っている場合がある。このため、欠陥箇所のパターンに対応するデータベースデータを必要充分な範囲で記録するには、図形一つ一つを登録するのではなく、欠陥箇所の座標からX、Yそれぞれ所定寸法範囲に原点が存在する複数のクラスタ又はセルを登録するのが実用的である。
【0101】
欠陥箇所の座標を含む検査結果情報と抽出されたパターンデータは、インターフェース17を介して空間像計測装置300に供給される。すなわち、設計パターンデータから、所定範囲内に原点が存在するクラスタ又はセルを抽出して作成されたファイルは、入力した設計パターンデータと同一フォーマット、又は汎用性の高いOASISフォーマットデータに変換されて、インターフェース17を介して空間像計測装置300に供給される。
【0102】
欠陥箇所の座標を含む検査結果情報として抽出されたパターンデータは、上記の欠陥に付随する情報であり、より具体的には、欠陥形状を含むマスク観測像、検査装置内で生成した欠陥箇所に対応する参照画像、欠陥箇所の座標、検査装置が判定した欠陥の程度を示す尺度(大・中・小)や欠陥検出アルゴリズムの反応値、透過光で検出したか反射光で検出したかの区別、正確な画素寸法、検査装置内で参照画像とセンサ観測像(光学画像)をアライメントした補正量、検査装置の白黒キャリブレ―ション振幅、検査装置の光源波長などである。
【0103】
また、空間像計測装置300が露光空間像を正確に推定するために必要な露光条件なども提供することが有効である。露光条件等の項目は、例えば、露光装置の光源波長、光源形状(例えば輪帯照明の場合の外径、内径、ダイポール照明の極数、ダイポールのXY方向)などである。
【0104】
これらの情報は、マスク検査装置200でマスク一枚を検査し終わってからすべての欠陥検出分を一斉に提供する方法のほか、マスク検査装置200で検査進行中に、欠陥を検出する都度、又は一定量の進度の都度、そこまでに得られた欠陥情報を提供する方法であってもよい。
【0105】
空間像計測装置300は、上記のとおりマスク1の欠陥転写特性評価方法に用いる光学系320を有しており、この光学系320は、半導体用露光装置と同じ波長の光源を持ち、露光装置と等価の照明光学系である。
図3に示すように、照明光学系のフィルタ321を通過した照明光でマスク1を照明し、アパーチャ322を介して焦点面に設けたCCDカメラ323で転写画像を取得する。
【0106】
マスクパターンとしての転写特性の評価は、予め無欠陥パターン部にて製品としてOK(可)となる所定の基準値を算出しておき、欠陥部あるいは欠陥修正後のパターン部の転写画像を取得し、CD(Critical Dimension;微小寸法)値及び光強度を測定し、OK(可)又は不可(NG)かの合否判定を行っている。なお、線幅の太りや細くなる程度は、正常部と欠陥部の推定線幅をナノメータ単位の寸法の次元で規定する場合と、正常部に対する欠陥部の推定線幅の比率で規定する場合とがある。
【0107】
このようにマスク検査装置200で検査したマスク1を、さらに空間像計測装置300で評価して、欠陥箇所の転写像への影響度を評価することによって、マスク検査装置200が検出した欠陥箇所のうち、転写影響度の高い欠陥箇所のみを修正してマスクを出荷できるようになれば、真に修正すべき箇所のみを修正することでマスク製造時間を短縮したり、マスクを再製作する無駄を省くことができるようになる。
【0108】
具体的には、上記のとおりマスク検査装置200が検出した欠陥箇所を、空間像計測装置300で観測し、露光推定状態での欠陥致命度を評価し、致命度が大きい箇所のみオペレータがレビューするようにしてもよい。
【0109】
レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が問題となるものであるかどうかを判断する動作である。レビュー装置では、欠陥1つ1つの欠陥箇所が観察できるように、マスク1が載置されたテーブルを移動させながら、マスク1の欠陥箇所の画像を表示する。
【0110】
また、同時に、欠陥判定の判断条件や、判定根拠になったマスクパターンイメージや、参照画像データ及び露光推定画像データも確認できるよう、画面上にこれらを並べて表示する。これにより、マスクパターンを修正すべき判断が容易になる。なお、一般に、マスク1からウェハへは、1/4程度の縮小投影が行われるので、並べて表示する際にはこの縮尺も考慮する。欠陥リストには欠陥致命度が高い情報も添えられていて、優先的にレビューするよう仕組みを用意するのがよい。
【0111】
レビュー工程では、1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク1は、欠陥情報リストとともに、修正装置に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凹系の欠陥か凸系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リストには、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0112】
また、マスク検査装置200では、比較回路15で欠陥の判定に用いられるしきい値と致命度の相関で、しきい値を再設定している。この再設定は、上記のとおり致命度が大であると判断された欠陥箇所では、しきい値は小さくなるように所定の値に設定され、致命度が小であると判断された欠陥箇所では、しきい値は大きくなるように所定の値に設定される。
【0113】
なお、上記のマスク評価システム100は、マスク検査装置200が、データベースパターンデータ抽出機能としてのパターンデータ抽出回路16を有しているがこれに限定されず、例えば、パターンデータ抽出回路16を独立したパターンデータ抽出装置とする構成であってもよい。
【0114】
以上述べた本実施形態のマスク検査装置、マスク評価方法及びマスク評価システムによれば、マスク検査装置で欠陥検出時に採取したマスク欠陥画像と欠陥座標を、修正機に送る場合と同様に、空間像計測装置に供給することにより、欠陥箇所の基準像生成が容易になり、欠陥箇所の模擬露光転写像における良否判定を効率よく行うことができる。
【0115】
また、欠陥箇所の近傍のデータベースからパターンデータを抽出して保管しておき、空間像計測装置にマスク欠陥像と抽出パターンデータを一緒に供給することにより、さらに高精度な模擬露光転写像における良否判定を効率よく行うことができる。
【0116】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0117】
また、上記各実施の形態では、装置構成や制御手法など、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いてもよい。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査装置、評価方法又は評価システムは、本発明の範囲に包含される。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
マスクに光を照射して光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記マスクの設計データから参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記光学画像と前記参照画像を比較する比較部と、
前記比較部が欠陥と判断した箇所の座標を取得し、前記設計データから前記座標を包含する所定寸法範囲のパターンデータを抽出するパターンデータ抽出部と、
前記欠陥座標及び前記抽出したパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、空間像計測装置に供給するインターフェース部とを有することを特徴とするマスク検査装置。
[C2]
前記パターンデータ抽出部は、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし抽出するとともに、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出することを特徴とする[C1]に記載のマスク検査装置。
[C3]
前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記欠陥箇所の参照画像及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことを特徴とする[C1]又は[C2]に記載のマスク検査装置。
[C4]
前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して生成した比較基準情報と、前記空間像計測装置で転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて前記欠陥箇所の致命度を判断する致命度判断部から前記致命度が供給され、前記供給された致命度と前記比較部で欠陥の判定に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定することを特徴とする[C1]から[C3]のいずれか1項に記載のマスク検査装置。
[C5]
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする[C4]に記載のマスク検査装置。
[C6]
マスクに光を照射して前記マスクの欠陥を検査するマスク検査装置と、露光装置で前記マスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する空間像計測装置を組み合わせて、マスクを評価するマスク評価方法であって、
前記マスクに光を照射して取得した光学画像と、前記マスクの設計データから生成した参照画像を比較するステップと、
前記設計データから前記比較により欠陥と判断した箇所の座標を包含する所定寸法範囲のパターンデータを抽出するステップと、
前記欠陥座標及び前記抽出したパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、前記マスク検査装置から前記空間像計測装置へ供給するステップとを含むことを特徴とするマスク評価方法。
[C7]
前記パターンデータを抽出するステップでは、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出するステップを含むことを特徴とする[C6]に記載のマスク評価方法。
[C8]
前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記マスクの検査条件及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことを特徴とする[C6]又は[C7]に記載のマスク評価方法。
[C9]
前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して生成した比較基準情報と、前記空間像計測装置で転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて判断した前記欠陥の致命度を、前記空間像計測装置から前記マスク検査装置に供給するステップと、
前記供給された致命度と前記欠陥の判断に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定するするステップとを含むことを特徴とする[C6]から[C8]のいずれか1項に記載のマスク評価方法。
[C10]
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする[C9]に記載のマスク評価方法。
[C11]
マスクに光を照射して前記マスクの欠陥を検査するマスク検査装置と、露光装置で前記マスクから転写露光される空間像を光学的に模擬する空間像計測装置を組み合わせて、マスクを評価するマスク評価システムであって、
前記マスク検査装置は、
マスクに光を照射して光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記マスクの設計データから参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記光学画像と前記参照画像を比較する比較部と、
前記比較部が欠陥と判断した箇所の座標を取得し、前記設計データから前記座標を包含する所定寸法範囲を抽出するパターンデータ抽出部と、
前記欠陥座標及び前記抽出されたパターンデータを含む前記欠陥に付随する情報を、前記空間像計測装置へ供給するインターフェース部とを有し、
前記空間像計測装置は、
前記空間像計測装置に用いる参照画像から前記欠陥座標を反映して比較基準情報を生成する比較基準情報生成部と、
フィルタを通過した照明光で前記マスクを照明し、アパーチャを介して焦点面に設けられたCCDカメラで転写露光された前記欠陥箇所に対応した空間像を取得する光学系と、
前記比較基準情報と、前記欠陥箇所に対応した空間像を用いて、線幅及びホール径の誤差の計算値に基づいて致命度の判断をする致命度判断部とを有することを特徴とするマスク評価システム。
[C12]
前記パターンデータ抽出部は、前記所定寸法範囲を前記設計データのクラスタ又はセルの単位とし抽出するとともに、前記設計データと対で使用される検査感度指定用のパターンデータの前記所定寸法範囲と同一な箇所を抽出することを特徴とする[C11]に記載のマスク評価システム。
[C13]
前記欠陥に付随する情報は、前記欠陥箇所の光学画像、前記欠陥箇所の参照画像及び前記空間像計測装置の露光条件を含むことを特徴とする[C11]又は[C12]に記載のマスク評価システム。
[C14]
前記致命度と前記比較部で欠陥の判定に用いるしきい値との相関を生成し、前記相関に基づいて前記しきい値を再設定することを特徴とする[C11]から[C13]のいずれか1項に記載のマスク評価システム。
[C15]
前記相関は、前記致命度が大であると判断されている場合、前記しきい値を小さくするという関係であり、前記致命度が小であると判断されている場合、前記しきい値を大きくするという関係であることを特徴とする[C14]に記載のマスク評価システム。
[C16]
前記致命度判断部は、独立した構成であり、前記空間像計測装置から前記比較基準情報と、前記欠陥箇所に対応した空間像が供給され、致命度の判断をすることを特徴とする[C11]から[C15]のいずれか1項に記載のマスク評価システム。