(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹凸形状が、5μm以下の最小ピッチを有する線状の凹部、5μm以下の最小ピッチを有する線状の凸部、5μm以下の最小径を有するドット状の凹部、及び、5μm以下の最小径を有するドット状の凸部からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0015】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、ある方向に「沿って」とは、ある方向に「平行に」との意味である。
【0016】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。また、「(チオ)エポキシ」とは、エポキシ及びチオエポキシの両方を包含する。また、「イソ(チオ)シアネート」とは、イソシアネート及びイソチオシアネートの両方を包含する。
【0017】
[1.複層フィルムの製造方法]
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造方法によって製造される液晶組成物の硬化物の膜の断面を模式的に示す断面図である。また、
図2は、本発明の第一実施形態に係る製造方法において用いる基材フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、
図1に示すように凹凸形状を有する面110を有する、液晶組成物の硬化物の膜100を製造するための方法である。以下、適宜、前記の液晶組成物の硬化物の膜を「硬化物膜」と呼ぶ。また、硬化物膜の凹凸形状を有する面を、適宜、「凹凸面」と呼ぶ。ここで、凹凸形状とは、凹部を含む形状であってもよく、凸部を含む形状であってもよく、凹部及び凸部の両方を含む形状であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る製造方法では、
図2に示すように、硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状を反転させた形状を有する面210を有する基材フィルム200を型として用いて、硬化物膜100の製造を行う。以下、適宜、基材フィルム200の面210の形状を「型形状」と呼ぶ。また、硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状を反転させた形状とは、凹凸面110に平行な対称面に対して凹凸面110の凹凸形状と面対称な形状のことをいう。さらに、凹凸面110に平行な対称面とは、凹凸面110の凹凸形状を無視して巨視的に凹凸面110をみた場合に、その巨視的に見た凹凸面110に平行な面のことをいう。
【0020】
具体的には、本実施形態に係る製造方法は、(I)基材フィルム200の前記型形状を有する面210に、流体状の液晶組成物を塗布して、液晶組成物の膜を形成する工程と、(II)形成された液晶組成物の膜を硬化して硬化物膜を得る工程とを含む。
【0021】
[1.1.液晶組成物]
液晶組成物は、液晶性化合物を含む流体状の材料である。ここで便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
【0022】
液晶性化合物としては、重合性を有する液晶性化合物が好ましい。重合性を有する液晶性化合物を含む液晶組成物は、その液晶性化合物を重合させることにより、容易に硬化させることができる。
【0023】
また、液晶性化合物が示す液晶性の種類は、製造される硬化物膜の用途に応じて任意に選択しうる。例えば、液晶性化合物としてコレステリック液晶性化合物を用いてもよい。コレステリック液晶性化合物は、コレステリック液晶性を呈しうる化合物である。このようなコレステリック液晶性化合物を含む液晶組成物を用いることにより、基材フィルム200の面210に液晶組成物の膜を形成した場合に当該膜において液晶性化合物がコレステリック液晶相を呈するので、硬化物膜としてコレステリック樹脂層を製造することができる。具体的には、液晶性化合物をコレステリック規則性を呈した状態で重合させることで液晶組成物の膜を硬化させることによって、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性のコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0024】
コレステリック樹脂層とは、コレステリック規則性を有する樹脂層のことをいう。コレステリック規則性を有する樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、更に次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0025】
コレステリック樹脂層は、通常、円偏光分離機能を有する。すなわち、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。また、コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。コレステリック樹脂層は、なるべく高い反射率を有し、その結果、反射すべき波長範囲における平均反射率が高いものが好ましい。これにより、硬化物膜を識別媒体として用いた場合に、真正性の識別を明確に行なうことができる。また、硬化物膜を加飾用途に用いた場合に、デザインの自由度を高めることができる。
【0026】
コレステリック樹脂層が円偏光分離機能を発揮する波長は、一般に、コレステリック樹脂層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度が連続的にずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。広い波長範囲において円偏光分離機能を発揮しうるコレステリック樹脂層は、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層、などが挙げられる。
【0027】
このようなコレステリック樹脂層が得られる液晶組成物として、本実施形態では、下記式(1)で表される化合物、及び、特定の棒状液晶性化合物を含む液晶組成物を用いた例を示して説明する。このような液晶組成物では、通常、棒状液晶性化合物がコレステリック液晶性化合物として機能できるので、本実施形態に係る製造方法により硬化物膜としてコレステリック樹脂層を製造できる。
【0028】
R
1−A
1−B−A
2−R
2 (1)
式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、任意の結合基が介在していてもよい(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
【0029】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1個〜2個のアルキル基、及びアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0030】
R
1及びR
2として好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0031】
また、R
1及びR
2の少なくとも一方は、反応性基であることが好ましい。R
1及びR
2の少なくとも一方として反応性基を有することにより、前記式(1)で表される化合物が硬化時に硬化物膜中に固定され、より強固な層を形成することができる。ここで反応性基とは、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
【0032】
式(1)において、A
1及びA
2はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。A
1及びA
2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0033】
A
1及びA
2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一性がより高くなる。
【0034】
式(1)において、Bは、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される。
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−O−(C=O)−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
【0035】
式(1)で表される化合物は、少なくとも一種類が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、式(1)で表される化合物は、複数の光学異性体を組み合わせて用いることが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマーの混合物、複数種類のジアステレオマーの混合物、又は、エナンチオマーとジアステレオマーとの混合物を用いてもよい。式(1)で表される化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0036】
式(1)で表される化合物が液晶性を有する場合には、屈折率異方性Δnが高いことが好ましい。屈折率異方性Δnが高い液晶性化合物を式(1)で表される化合物として用いることによって、それを含む液晶組成物の屈折率異方性Δnを向上させることができ、円偏光を反射可能な波長範囲が広いコレステリック樹脂層を作製することができる。式(1)で表される化合物の少なくとも一種の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。ここで、屈折率異方性Δnは、セナルモン法により測定しうる。例えば、硬化樹脂層を光学顕微鏡(ECLIPSE E600POL(透過・反射タイプ)に鋭敏色板、λ/4波長板、セナルモンコンペンセータ、GIFフィルター546nmを装着、ニコン社製)を用いて消光位(θ)を観察することからレタデーション(Re)をRe=λ(546nm)×θ/180の計算式により算出し、別に求めた液晶層の膜厚(d)から計算式Δn=Re/dによりΔnを算出できる。
【0037】
式(1)で表される化合物として特に好ましい具体例としては、下記の化合物(A1)〜(A9)が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0040】
本実施形態に示す例において前記の式(1)で表される化合物と組み合わせて用いる液晶性化合物としては、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いうる。この棒状液晶性化合物としては、例えば、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
R
3−C
3−D
3−C
5−M−C
6−D
4−C
4−R
4 式(2)
【0041】
式(2)において、R
3及びR
4は、反応性基であり、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。これらの反応性基を有することにより、液晶組成物を硬化させた際に、実用に耐えうる膜強度を有した硬化物を得ることができる。ここで、実用に耐えうる膜強度とは、鉛筆硬度(JIS K5400)で、通常HB以上、好ましくはH以上である。膜強度をこのように高くすることにより、硬化物膜に傷をつきにくくできるので、ハンドリング性を高めることができる。
【0042】
式(2)において、D
3及びD
4は、単結合、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0043】
式(2)において、C
3〜C
6は、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−からなる群より選択される基を表す。
【0044】
式(2)において、Mは、メソゲン基を表す。具体的には、Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2個〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−O−(C=O)−O−、−CH
2−(C=O)−O−、及び−CH
2O−(C=O)−等の結合基によって結合された基を表す。
【0045】
前記メソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R
5、−O−C(=O)−R
5、−C(=O)−O−R
5、−O−C(=O)−O−R
5、−NR
5−C(=O)−R
5、−C(=O)−NR
5R
7、または−O−C(=O)−NR
5R
7が挙げられる。ここで、R
5及びR
7は、水素原子又は炭素数1個〜10個のアルキル基を表す。R
5及びR
7がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
6−C(=O)−、−C(=O)−NR
6−、−NR
6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R
6は、水素原子または炭素数1個〜6個のアルキル基を表す。
【0046】
前記「置換基を有してもよい炭素数1個〜10個のアルキル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2個〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3個〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2個〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2個〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
また、前記の棒状液晶性化合物は、非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、式(2)において、メソゲン基Mを中心として、R
3−C
3−D
3−C
5−と−C
6−D
4−C
4−R
4が異なる構造のことをいう。棒状液晶性化合物として非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0048】
棒状液晶性化合物の屈折率異方性Δnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。屈折率異方性Δnが0.30以上の棒状液晶性化合物を用いると、棒状液晶性化合物の紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高い屈折率異方性Δnを有する棒状液晶性化合物を用いることにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0049】
棒状液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)〜(B9)が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(式(1)で表される化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)で示される重量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.65以下、特に好ましくは0.45以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、液晶組成物の膜において配向均一性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、配向均一性を高くできる。また、液晶組成物の液晶相の安定性を高くできる。さらに、液晶組成物の屈折率異方性Δnを高くできるので、例えば、円偏光の選択反射性能等のような所望の光学的性能を有するコレステリック樹脂層を安定して得ることができる。ここで、合計重量とは、1種類を用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。
【0052】
また、式(1)で表される化合物と棒状液晶性化合物とを組み合わせて用いる場合、式(1)で表される化合物の分子量が600未満であることが好ましく、棒状液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が、それよりも分子量の大きい棒状液晶性化合物の隙間に入り込むことができるので、配向均一性を向上させることができる。
【0053】
液晶組成物は、カイラル剤を含みうる。通常、コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類及び構造により適宜選択できる。ねじれを右方向とする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を用い、ねじれ方向を左方向とする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を用いることで、実現できる。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、液晶組成物中で、通常1重量%〜60重量%である。
【0055】
液晶組成物は、硬化物膜の機械的強度の向上及び耐久性の向上のために、架橋剤を含みうる。架橋剤は、例えば、液晶組成物の膜の硬化時に反応したり、硬化後の熱処理によって反応を促進したり、湿気により自然に反応が進行したりすることによって、硬化物膜の架橋密度を高めることができる。架橋剤としては、例えば、紫外線、熱、湿気等で反応しうるものを用いうる。中でも、架橋剤としては、液晶性化合物の配向均一性を悪化させないものが好ましい。
【0056】
架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いてもよい。触媒を用いることにより、硬化物膜の膜強度及び耐久性向上に加えて、生産性を向上させることができる。
【0057】
架橋剤の量は、液晶組成物の膜を硬化して得られる硬化物膜における架橋剤の量が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、架橋密度を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶組成物の膜の安定性を高めることができる。
【0058】
液晶組成物は、光重合開始剤を含みうる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させうる化合物が使用できる。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて公知の光増感剤又は重合促進剤としての三級アミン化合物を用いて、硬化性をコントロールしてもよい。
【0059】
光重合開始剤の量は、液晶組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。光重合開始剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合度を高くできるので、硬化物膜の機械的強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶性化合物の配向を良好にできるので、液晶組成物の液晶相を安定にできる。
【0060】
液晶組成物は、界面活性剤を含みうる。界面活性剤としては、例えば、配向を阻害しないものを適宜選択して使用しうる。このような界面活性剤としては、例えば、疎水基部分にシロキサン又はフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社のPolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社のフタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社のサーフロンのKH−40;等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
界面活性剤の量は、硬化物膜における界面活性剤の量が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、液晶組成物の空気界面における配向規制力を高くできるので、配向欠陥を防止できる。また、上限値以下にすることにより、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込むことによる配向均一性の低下を防止できる。
【0062】
液晶組成物は、必要に応じてさらに任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、溶媒;ポットライフ向上のための重合禁止剤;耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤及び光安定化剤;等を挙げることができる。また、これらの任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの任意の成分の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。
【0063】
前記の液晶組成物は流体状であるので、微小な隙間に容易に侵入できる。そのため、このような流体状の液晶組成物を用いれば、基材フィルムの型形状に含まれる凹部及び凸部の寸法が小さくても、その型形状を液晶組成物の膜及び当該膜から得られる硬化物膜に正確に且つ容易に写し取ることができる。
【0064】
基材フィルムの型形状を硬化物膜に正確に転写するためには、液晶組成物の粘度は小さいことが好ましい。他方、硬化物膜の厚みを設定する際の自由度を高めるためには、液晶組成物の粘度はある程度高いことが好ましい。これらの観点から、液晶組成物の粘度は、好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは1mPa・s以上、特に好ましくは3mPa・s以上であり、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。
【0065】
[1.2.基材フィルム]
図2に示すように、基材フィルム200は、液晶組成物を塗布される面210を有するフィルムである。基材フィルム200において液晶組成物を塗布される面210は、所定の型形状を有する面である。この面210の型形状は、製造しようとする硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状を反転させた形状となっている。
【0066】
したがって、基材フィルム200の面210の型形状は、通常、硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状が有する凹部と同じ大きさの凸部を有し、硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状が有する凸部と同じ大きさの凹部を有する。そのため、例えば、基材フィルム200の面210の型形状は、通常、硬化物膜100の凹凸面110の凹凸形状が有する段差と同じ大きさの段差を有する。また、例えば、硬化物膜100の凹凸面110が線状の凹部を有する場合、基材フィルム200の面210の型形状は、硬化物膜100の線状の凹部と同じピッチを有する線状の凸部を有する。さらに、例えば、硬化物膜100の凹凸面110が線状の凸部を有する場合、基材フィルム200の面210の型形状は、硬化物膜100の線状の凸部と同じピッチを有する線状の凹部を有する。また、例えば、硬化物膜100の凹凸面110がドット状の凹部を有する場合、基材フィルム200の面210の型形状は、硬化物膜100のドット状の凹部と同じ径を有するドット状の凸部を有する。さらに、例えば、硬化物膜100の凹凸面110がドット状の凸部を有する場合、基材フィルム200の面210の型形状は、硬化物膜100のドット状の凸部と同じ径を有するドット状の凹部を有する。
【0067】
基材フィルム200としては、例えば、樹脂フィルムを用いうる。中でも、熱プレスによって型形状を容易に形成できるので、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状オレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。また、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点からは、鎖状オレフィン樹脂及びシクロオレフィン樹脂が好ましく、シクロオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0068】
基材フィルム200は、一層のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、二層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。また、基材フィルム200は、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよい。さらに、基材フィルム200は、等方なフィルムであってもよく、異方性を有するフィルムであってもよい。
【0069】
基材フィルム200の型形状を有する面210には、表面処理が施されていてもよい。このような表面処理としては、例えば、ラビング処理、エネルギー線照射処理、薬品処理などが挙げられる。面210にラビング処理を施す場合、その面210の型形状が微小な凹部を含むと、その凹部の底にはラビング材が届き難いことがありえる。しかし、その場合でも、通常は、凹部の周辺に施されたラビング処理の作用によって、凹部に塗布された液晶組成物は配向可能である。
【0070】
また、基材フィルム200としては、長尺のフィルムを用いることが好ましい。「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。基材フィルム200として長尺のフィルムを用いることにより、硬化物膜の連続的な製造が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0071】
基材フィルム200の厚みT
200は、製造時のハンドリング性、材料のコスト、薄型化及び軽量化の観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0072】
基材フィルム200は、例えば、平坦な面を有するフィルムを用意した後で、そのフィルムの面に所望の型形状を形成することにより製造しうる。型形状を形成する方法としては、例えば、熱プレス、エッチング、レーザー加工などが挙げられる。中でも、基材フィルム200として熱可塑性樹脂を用いている場合には、型形状の形成が容易であるため、熱プレスを用いることが好ましい。
【0073】
[1.3.塗布工程]
図3は、本発明の第一実施形態に係る製造方法において、基材フィルム200の型形状を有する面210に、液晶組成物を塗布して、液晶組成物の膜300を形成した様子を模式的に示す断面図である。
基材フィルム200及び流体状の液晶組成物を用意した後で、基材フィルム200の型形状を有する面210に液晶組成物を塗布する工程を行う。これにより、
図3に示すように、基材フィルム200の面210に、液晶組成物の膜300が形成される。通常、液晶組成物は流動性が良好なので、液晶組成物は基材フィルム200の面210のすみずみにまで浸入できる。したがって、基材フィルム200の面210と液晶組成物の膜300との間には、空気層等の層が介在しないので、液晶組成物の膜300に基材フィルム200の面210の型形状を正確に写し取ることができる。
【0074】
液晶組成物の塗布方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等が挙げられる。
【0075】
[1.4.硬化工程]
図4は、本発明の第一実施形態に係る製造方法において、基材フィルム200の面210に形成された液晶組成物の膜300を硬化させて硬化物膜100を得る様子を模式的に示す断面図である。
基材フィルム200の面210に液晶組成物の膜300を形成した後で、この液晶組成物の膜300を硬化する。これにより、
図4に示すように、基材フィルム200の面210に、硬化物膜100が得られる。本実施形態では式(1)で表される化合物及び棒状液晶性化合物を含む液晶組成物を用いたので、得られる硬化物膜100はコレステリック樹脂層である。
【0076】
液晶組成物の膜300を硬化させる方法は、当該液晶組成物に含まれる成分に応じて適切な方法を選択しうる。本実施形態のように式(1)で表される化合物及び棒状液晶性化合物を含む液晶組成物を用いた場合には、例えば、光照射を行なうことが好ましい。中でも、硬化物膜100として得られるコレステリック樹脂層の反射帯域を広げる観点では、1回以上の光照射及び加温処理の組み合わせを含む硬化処理を行うことが好ましい。光照射及び加温処理により、液晶性化合物のらせん構造のピッチを液晶組成物の膜の厚み方向において連続的に変化させた状態で、その膜を硬化させることができる。そのため、この硬化処理により、コレステリック樹脂層の反射帯域を拡張することができる。
【0077】
加熱処理の際の条件は、例えば、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは140℃以下の温度において、通常1秒以上、好ましくは5秒以上、また、通常3分以下、好ましくは120秒以下の時間としうる。
【0078】
また、光照射に用いる光とは、可視光のみならず、紫外線及びその他の電磁波を含みうる。光照射は、例えば、波長200nm〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行ってもよい。この際、照射される光のエネルギーは、例えば、0.01mJ/cm
2〜50mJ/cm
2としうる。
【0079】
前記のように、例えば0.01mJ/cm
2〜50mJ/cm
2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させることができるので、得られるコレステリック樹脂層の反射帯域を効果的に広くすることができる。さらに、前記のようにして反射帯域の拡張を行った後に、例えば50mJ/cm
2〜10,000mJ/cm
2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させることにより、機械的強度の高いコレステリック樹脂層を得ることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行ってもよい。
【0080】
以上のようにして、所望の凹凸形状を有する凹凸面110を有する硬化物膜100を製造することができる。この硬化物膜100は、基材フィルム200の面210に設けられた液晶組成物の膜300が硬化した膜であるので、その基材フィルム200側の凹凸面110の形状は、基材フィルム200の面210の型形状を反転させた凹凸形状となる。
【0081】
本実施形態では、流動性に優れ、基材フィルム200の面210の型形状に含まれる微小な隙間に容易に浸入できる液晶組成物を用いたので、基材フィルム200の面210の型形状を、硬化物膜100の凹凸面110に転写性良く転写することができる。
【0082】
また、上述した製造方法は、液晶組成物の塗布及び硬化という簡単な操作により行なうことができる。また、凹凸面110の凹凸形状の形成のために加圧が不要であるので、転写性のばらつき、及び、離型不良を防止できる。さらに、基材フィルム200を硬化物膜100から剥がすこと無く、例えば支持フィルム及び保護フィルム等として引き続き使用する場合には、工程数を減らすことができる。このように、上述した製造方法によれば、正確に形成された所望の凹凸形状を有する凹凸面110を有する硬化物膜100を簡単且つ安定して製造できる。そのため、品質及び歩留まりの向上を実現することができる。
【0083】
[1.5.任意の工程]
本実施形態に係る製造方法では、更に任意の工程を行なってもよい。
例えば、基材フィルム200の型形状を有する面210に液晶組成物の膜300を形成した後、硬化させる前に、必要に応じて、配向処理を行ってもよい。配向処理は、例えば液晶組成物の膜を50℃〜150℃で0.5分間〜10分間加温することにより行いうる。配向処理を施すことにより、膜中の液晶性化合物を良好に配向させることができる。また、液晶組成物が溶媒を含む場合は、通常、配向処理を行うことによって溶媒が除去される乾燥工程も進行する。
【0084】
また、例えば、硬化物膜100を形成した後で、硬化物膜100の基材フィルム200とは反対側の面120に更に別の層を設けてもよい。その具体例としては、硬化物膜100の基材フィルム200とは反対側の面120に液晶組成物の塗布及び硬化を行なうことにより、その面120に更に硬化物膜を形成することが挙げられる。これにより、2以上の層を含む硬化物膜を得ることができる。
【0085】
さらに、例えば、硬化物膜100を形成した後で、得られた硬化物膜100を基材フィルム200から剥離してもよい。
【0086】
[1.6.硬化物膜]
図4に示すように、上述した製造方法によって得られる硬化物膜100は、その基材フィルム200側の凹凸面110に所望の凹凸形状を有する。
【0087】
凹凸面110が有する凹凸形状の具体的な形状は、硬化物膜100の用途に応じて任意に設定しうる。例えば、硬化物膜100をホログラム像を表示するためのホログラム層として用いたい場合には、そのホログラム像を表示しうる凹凸形状を硬化物膜100の凹凸面110に形成しうる。凹凸形状の具体例を挙げると、一方向に延在する直線状の凹部又は凸部を複数含む形状、所定の間隔をあけて配列されたドット状の凹部又は凸部を複数含む形状;などが挙げられる。
【0088】
上述した製造方法は、従来は微小な凹凸形状を形成することが困難であった液晶組成物の硬化物の膜に、所望の形状の凹凸形状を正確に形成できることを利点の一つとしている。この利点を有効に活用する観点では、硬化物膜100の凹凸面110が有する凹凸形状は、微小な段差Hを有することが好ましい。具体的には、
図1に示すように、凹凸面110の凹凸形状は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.7μm以下、特に好ましくは0.5μm以下の段差Hを有する。また、前記の段差Hの下限は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。
【0089】
また、所望の微小な形状の凹凸形状を正確に形成できるとの利点を有効に活用する観点では、凹凸面110の凹凸形状に含まれる凹部及び凸部の面内方向における大きさは、小さいことが好ましい。ここで面内方向とは、凹凸面110の凹凸形状を無視して巨視的に凹凸面110をみた場合に、その巨視的に見た凹凸面110に平行な方向のことをいう。例えば、凹凸面110の凹凸形状が、線状の凹部、線状の凸部、ドット状の凹部、及び、ドット状の凸部からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する場合に、線状の凹部及び凸部の最小ピッチが所定の範囲に収まることが好ましく、ドット状の凹部及び凸部の最小径が所定の範囲に収まることが好ましい。これらの大きさの具体的な範囲は硬化物膜の用途に応じて設定できる。例えば、凹凸面110の凹凸形状によってホログラム像を表示させたい場合には、線状の凹部及び凸部の最小ピッチは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下である。また、ドット状の凹部及び凸部の最小径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0090】
本実施形態のように硬化物膜100がコレステリック樹脂層である場合、その硬化物膜100は、所定の範囲の光を反射しうる反射帯域を有する。中でも、硬化物膜100は、可視光領域に反射帯域を有することが好ましい。これにより、硬化物膜100の色を調整することが可能となり、硬化物膜100の視認性及びデザイン性を向上させることができる。ここで、可視光領域とは、波長400nm以上800nm以下の波長領域を示す。
【0091】
硬化物膜100が反射帯域を有する場合、その反射帯域における硬化物膜100の自然光(非偏光)の透過率は、通常65%以下、好ましくは62%以下、より好ましくは60%以下である。また、前記の透過率の下限は、理想的には50%であるが、現実的には55%以上である。
【0092】
硬化物膜100が反射帯域を有する場合、その反射帯域の波長幅は、好ましくは150nm以上、好ましくは200nm以上、より好ましくは250nm以上である。ここで、反射帯域の波長幅とは、その反射帯域における最大反射率の半値幅を表す。このように広い反射帯域を有する硬化物膜100にホログラム像を表示させることで、そのホログラム像の視認性を高めることができる。硬化物膜100の反射帯域の波長幅の上限に制限は無いが、通常500nm以下である。
【0093】
硬化物膜100の厚みT
100に制限は無く、用途に応じて任意に設定しうる。例えば、本実施形態のように硬化物膜100が円偏光分離機能を有する場合には、十分な反射率を得る観点から、硬化物膜100の厚みT
100は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。また、薄膜化の観点から、硬化物膜100の厚みT
100は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0094】
[2.硬化物膜の用途]
上述した製造方法で製造された硬化物膜の用途は任意である。例えば、硬化物膜を物品の表面に貼り付けて用いてもよい。硬化物膜の適用対象としては、例えば、偽造防止物品、セキュリティ物品、加飾性物品などが挙げられる。このような用途は、特に、硬化物膜の凹凸面によってホログラム像を表示させうる場合に、好適である。
【0095】
偽造防止物品としては、例えば、真正性識別用のラベル、シールなどが挙げられる。
セキュリティ物品としては、例えば、金券、商品券、チケット、証明書、セキュリティカード等の認証媒体等が挙げられる。
加飾性物品としては、例えば、装飾品、文具、家具、自動車(内外装)、家電、パーソナルコンピューター、化粧品パッケージ等が挙げられる。
【0096】
中でも、硬化物膜が円偏光分離機能を有する場合、真正性識別用の識別媒体に適用することが好ましい。以下、真正性識別用の識別媒体の実施形態について、図面を示して説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態によっては制限されない。
【0097】
以下に説明する本発明の第二実施形態に係る識別媒体は、真正性識別用の表示領域を有する識別媒体である。この識別媒体は、表示領域において、下地層、及び前記下地層上に設けられた円偏光分離機能を有する硬化物膜を有する。この実施形態に係る説明においては、別に断らない限り、識別媒体は、その観察される面を上に向けて水平に載置したものとして説明する。従って、観察された際に相対的に観察者に近い側(平面図における手前側、断面図における上側)を単に上側、相対的に観察者から遠い側を単に下側と表現することがある。
【0098】
図5は、本発明の第二実施形態に係る識別媒体400を模式的に示す平面図である。
図6は、
図5に示す識別媒体400を、
図5中の破線に沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。
【0099】
図5及び
図6に示される識別媒体400は、基材411と、基材411の上面に設けられた下地層421と、下地層421の上面に設けられた硬化物膜441とを有する。
硬化物膜441は、粘着層431を介して、下地層421に粘着している。この実施形態において、硬化物膜441は、可視光領域において、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させうる円偏光分離機能を有する層である。また、硬化物膜441の上面442には、回折格子として機能しうる凹凸形状(図示省略)が形成されていて、これにより、硬化物膜441は、上面442で反射された光を、見る角度により色が変化するホログラム光として表示できる構成を有する。
また、下地層421は、硬化物膜441が円偏光分離機能を発現できる波長領域の光の少なくとも一部を吸収しうる層であり、例えば黒色の層を用いうる。
【0100】
図5及び
図6に示される通り、識別媒体400は、矩形の境界枠F内の領域として、表示領域F
Rを有する。表示領域F
Rは、基材411の面に平行に二次元的に規定される領域である。
表示領域F
R内において、下地層421が、表示領域F
Rの全部を覆って設けられている。また、表示領域F
R内において、硬化物膜441は、文字に対応する領域F
L内のみに設けられ、これにより、文字に対応する形の模様が形成されている。
【0101】
図7は、
図5及び
図6に示す識別媒体400の、表示領域F
R内の層、並びに、これらの層を透過し又はこれらの層において反射する光の経路を模式的に示す部分断面図である。ただし、
図6において示した粘着層431は、簡略化のため
図7においては図示していない。また、識別媒体400の上面に入射した光の反射は、層の表面だけでなく層の内部でも発生しうるが、
図7においては模式的な表現として、反射は層の表面において発生しているものとして図示する。
【0102】
図7を参照して、識別媒体400の真正性識別の作用を説明する。実際の識別媒体においては、下記に説明する以外にも、例えば様々な吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を模式的に説明する。また、
図7に示す例では、硬化物膜441として、可視光領域において右円偏光の大部分を反射させ、右円偏光の残りの一部及び左円偏光の全部を透過させる層を設けている。
【0103】
図7に示す識別媒体400の上面に、右円偏光A1Rが入射した場合、その大部分は反射光A2Rとなり、残りの一部は透過光A3Rとなる。透過光A3Rは、硬化物膜441の下側にある下地層421の上面に到達し、ここで一部が吸収され、残りの一部は反射される。反射された光は反射光A4Rとして出射する。
一方、識別媒体400の上面に、左円偏光A1Lが入射した場合、その全部が、硬化物膜441の下側にある下地層421の上面に到達し、ここで一部が吸収され、残りの一部は反射される。反射された光は反射光A2Lとして出射する。
【0104】
このような作用を有する識別媒体400の、真正性識別の操作の例としては、下記(I)及び(II)の操作が挙げられる。
【0105】
(I)入射光として、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光を用い、
(I−R)識別媒体400を、右円偏光のみを透過するフィルターを通して観察した場合と、
(I−L)識別媒体400を、左円偏光のみを透過するフィルターを通して観察した場合と
での、観察される像を対比する。
【0106】
(II)(II−R)入射光として右円偏光のみを含む光を用いて識別媒体400を観察した場合と、
(II−L)入射光として左円偏光のみを含む光を用いて識別媒体400を観察した場合と
での、観察される像とを対比する。
【0107】
上記(I)の操作において、入射光としては、自然光等の通常の非偏光を用いうる。このような入射光に照らされた識別媒体400を、右円偏光のみを透過するフィルターを通して観察した場合((I−R)の場合)、観察者は右円偏光の反射光A2R及びA4Rを観察することとなる。したがって、硬化物膜441は、光の大部分を反射する層として観察される。そのため、表示領域F
Rにおいては、硬化物膜441における反射に基づく色が主に観察され、硬化物膜441が設けられた領域F
Lによって規定される模様が像として観察される。ここで、硬化物膜441で反射される光A2Rのうち、硬化物膜441の上面442で反射された光は、ホログラム光として観察される。そのため、硬化物膜441で反射される光A2Rによって表示される模様は、見る角度により色が変化する模様として観察される。
【0108】
一方、入射光に照らされた識別媒体400を、左円偏光のみを透過するフィルターを通して観察した場合((I−L)の場合)、観察者は左円偏光の反射光A2Lを観察することとなる。したがって、硬化物膜441は透明な層として観察される。そのため、表示領域F
Rにおいては、硬化物膜441により規定される模様は観察されず、硬化物膜441により規定される模様の無い像が観察される。
【0109】
したがって、このような像の差異が観察された場合、この識別媒体400は真正なものであると判断することができる。また、このような像の差異が観察されない場合、識別媒体は、非真正なものであると判断することができる。
【0110】
また、上記(II)の操作において、入射光として右円偏光のみを含む光を用いて識別媒体400を観察した場合((II−R)の場合)、右円偏光のみに基づく像を観察することになり、一方、入射光として左円偏光のみを含む光を用いて識別媒体400を観察した場合((II−L)の場合)、左円偏光のみに基づく像を観察することになり、それぞれ、上記(I−R)及び(I−L)の場合と同様の像が観察される。したがって、上記(I)の操作と同様に、真正性が識別できる。
【0111】
また、前記の識別媒体400において、例えば、表示領域F
Rの全体に硬化物膜441を形成し、且つ、表示領域F
Rの一部に模様を形成するように下地層421を設けることによっても、同様の要領で真正性を識別しうる識別媒体を得ることができる。
【0112】
上述したような識別媒体は、真正性の識別を求められる任意の分野に適用可能である。具体的な用途を挙げると、例えば、医薬品、化粧品、香水およびトナーなどの容器、開封シール、包装物、紙幣、証券、金券、旅券、電子機器、バッグ、衣服、布地、クレジットカード、セキュリティカード、情報を図形化したコード(例えばバーコード等の1次元のコード、並びにQRコード(登録商標)等の2次元のコード)を付した物品、並びに各種証明等に施す偽造防止のための識別標識等が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0114】
[試薬の説明]
後述する実施例及び比較例で用いたコレステリック液晶組成物1及び2の組成は、下記表1の通りである。
【0115】
【表1】
【0116】
また、表1において、化合物(1)及び(2)は、以下の化合物を示す。
【0117】
【化3】
【0118】
【化4】
【0119】
[製造例1.型形状を有する面を有する基材フィルムの製造]
図8は、製造例1において使用した金型の一部を模式的に示す斜視図である。製造例1で使用したニッケル製の金型500は、
図8に示すように、凹凸形状を有する面510を有していた。具体的には、金型500の面510には、一方向に並んだ複数の直線状の凸部520が形成されていた。各凸部520は、その延在方向に垂直な平面で切った断面が矩形となっていて、その上面521並びに側面522及び523はいずれも平面であった。また、凸部520同士の間の領域530は平面となっていた。凸部520の上面521と凸部520同士の間の領域530との段差Hは0.2μmであった。また、凸部520の上面521の幅Lは1.0μm、凸部520同士の間の領域530の幅Sは1.0μmであった。ここで幅とは、金型500の面510の面内方向であって、凸部520の延在方向に垂直な方向の寸法をいう。
【0120】
シクロオレフィン樹脂からなる基材フィルム(日本ゼオン社製「ZF16−100」)上に、前記の金型の凹凸形状を有する面をあてがい、電熱プレス機で温度210℃、圧力5MPaで5分間加圧した。100℃まで冷却した後、金型を離して、凹凸形状が転写された基材フィルムを得た。この基材フィルムの金型にあてがわれた面には、金型が有する凹凸形状を反転させた型形状が形成されていた。
【0121】
基材フィルムの型形状を有する面に光を照射して観察した。その結果、基材フィルムの型形状を有する面での反射光は、分光作用により、見る角度により色が変化するホログラム光が観察された。このホログラム光は、いわゆるレインボーホログラム光である。
【0122】
[実施例1]
基材フィルムの型形状を有する面に、ラビング処理を施した後、表1に示す組成を有する流体状のコレステリック液晶組成物1を#6のワイヤーバーを用いて塗布して、コレステリック液晶組成物1の膜を形成した。このコレステリック液晶組成物1の膜に、100℃で5分間かけて配向処理を施した後、窒素雰囲気下で1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その膜を硬化させた。これにより、基材フィルムと、厚み2.8μmのコレステリック樹脂層とを有する複層フィルムを得た。
【0123】
この複層フィルムのコレステリック樹脂層側の面に粘着シートを貼り、ガラス板に貼り合わせた。その後、コレステリック樹脂層から基材フィルムを剥がして、コレステリック樹脂層の凹凸形状を有する面を露出させた。この露出したコレステリック樹脂層の面を観察したところ、目視角度により色が変化する明るい反射光(ホログラム光)が認められた。
【0124】
[実施例2]
基材フィルムの型形状を有する面に、ラビング処理を施した後、表1に示す組成を有する流体状のコレステリック液晶組成物2を#6のワイヤーバーを用いて塗布して、コレステリック液晶組成物2の膜を形成した。このコレステリック液晶組成物2の膜に、120℃で5分間かけて配向処理を施した後、窒素雰囲気下で1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その膜を硬化させた。これにより、基材フィルムと、厚み2.8μmのコレステリック樹脂層とを有する複層フィルムを得た。
【0125】
この複層フィルムのコレステリック樹脂層側の面に粘着シートを貼り、ガラス板に貼り合わせた。その後、コレステリック樹脂層から基材フィルムを剥がして、コレステリック樹脂層の凹凸形状を有する面を露出させた。この露出したコレステリック樹脂層の面を観察したところ、目視角度により色が変化する明るい反射光(ホログラム光)が認められた。
【0126】
[比較例1]
片方の面に易接着処理が施されたポリエステルシート(東洋紡社製「A4100」)を基材フィルムとして用意した。このポリエステルシートの易接着処理が施されていない面に、ラビング処理を施した後、表1に示す組成を有する流体状のコレステリック液晶組成物1を#6のワイヤーバーを用いて塗布して、コレステリック液晶組成物1の膜を形成した。このコレステリック液晶組成物1の膜に、100℃で5分間かけて配向処理を施した後、窒素雰囲気下で1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その膜を硬化させた。これにより、ポリエステルシートと、厚み2.8μmのコレステリック樹脂層とを有するプレス前フィルムを得た。
【0127】
このプレス前フィルムのコレステリック樹脂層側の面に製造例1で用いた金型をあてがい、電熱プレス機で温度80℃、圧力1MPa〜3MPaで5分間加圧した。60℃まで冷却した後、金型を離した。金型をあてがわれていたコレステリック樹脂層の表面を観察したところ、色のついた反射光はほとんど認められなかった。
【0128】
[比較例2]
比較例1と同様にして、プレス前フィルムを製造した。
このプレス前フィルムのコレステリック樹脂層側の面に製造例1で用いた金型をあてがい、電熱プレス機で温度80℃、圧力4MPa〜20MPaで5分間加圧した。60℃まで冷却した後、金型を離そうとしたところ、コレステリック樹脂層の一部が金型に付着して、コレステリック樹脂層は破損した。
【0129】
[比較例3]
片方の面に易接着処理が施されたポリエステルシート(東洋紡社製「A4100」)を基材フィルムとして用意した。このポリエステルシートの易接着処理が施されていない面に、ラビング処理を施した後、表1に示す組成を有する流体状のコレステリック液晶組成物2を#6のワイヤーバーを用いて塗布して、コレステリック液晶組成物2の膜を形成した。このコレステリック液晶組成物2の膜に、120℃で5分間かけて配向処理を施した後、窒素雰囲気下で1000mJ/cm
2の紫外線を照射して、その膜を硬化させた。これにより、ポリエステルシートと、厚み2.8μmのコレステリック樹脂層とを有するプレス前フィルムを得た。
【0130】
このプレス前フィルムのコレステリック樹脂層側の面に製造例1で用いた金型をあてがい、電熱プレス機で温度80℃、圧力1MPa〜3MPaで5分間加圧した。60℃まで冷却した後、金型を離した。金型をあてがわれていたコレステリック樹脂層の表面を観察したところ、色のついた反射光はほとんど認められなかった。
【0131】
[比較例4]
比較例3と同様にして、プレス前フィルムを製造した。
このプレス前フィルムのコレステリック樹脂層側の面に製造例1で用いた金型をあてがい、電熱プレス機で温度80℃、圧力3MPa〜20MPaで5分間加圧した。60℃まで冷却した後、金型を離そうとしてところ、コレステリック樹脂層の一部が金型に付着して、コレステリック樹脂層は破損した。
【0132】
[検討]
前記の実施例及び比較例の結果を、表2に示す。
表2において、「鋳型」とは、型形状を有する面を有する基材フィルムに液晶組成物を塗布し硬化させることによってコレステリック樹脂層の面に凹凸形状を形成する方法を採用したことを示す。
また、表2において、「ホログラム光」の欄の記号の意味は、以下の通りである。
A:明るい
B:殆ど視認されず
C:剥離不良
【0133】
【表2】
【0134】
比較例1及び3においては、目視角度により色が変化する明るい反射光が観察されなかったことから、コレステリック樹脂層に所望の凹凸形状を形成できなかったことがわかる。また、比較例2及び4では、金型をコレステリック樹脂層から剥離する際、コレステリック樹脂層の一部がポリエステルシートから剥がれ、コレステリック樹脂層の破損を生じることになった。これらの事項から、従来の方法では、コレステリック樹脂層に所望の凹凸形状を安定して形成することが困難であったことが確認された。
【0135】
これに対し、実施例においては、目視角度により色が変化する明るい反射光(ホログラム光)が観察されたことから、コレステリック樹脂層に所望の凹凸形状が形成できたことがわかる。また、実施例において実施した製造方法は、コレステリック液晶組成物を塗布及び硬化させるという単純な工程で実施できるものであり、簡単な方法であった。以上のことから、本発明の製造方法により、正確に形成された所望の凹凸形状を有する面を有するコレステリック樹脂層を簡単に製造できることが確認された。