(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1半導体層と前記第1半導体層上の一部の領域に積層した第2半導体層とを有する半導体構造体と、前記第1半導体層および前記第2半導体層のそれぞれに接続した電極と、を備えたフリップチップ実装用の発光素子を、区画線に沿って分割することにより個片化して製造する発光素子の製造方法であって、
前記半導体構造体を形成する半導体形成工程と、
前記半導体構造体の上に保護膜を形成し、前記半導体構造体の前記第1半導体層および前記第2半導体層のそれぞれの上の前記保護膜で被覆されていない領域に、前記電極を形成する電極形成工程と、
前記保護膜および前記電極を形成した前記半導体構造体を、前記電極における外部との電気的接続のための接続領域と、前記区画線に沿った所定の幅の区画領域を含む領域と、を除いて被覆する絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、
前記絶縁部材で被覆された半導体構造体を、前記区画線に沿って分割することにより個片化して、前記区画領域が除去された発光素子にする個片化工程と、を行い、
前記電極形成工程の後であって前記絶縁部材形成工程の前に、前記電極の前記接続領域に、導電性材料でバンプを形成するバンプ形成工程をさらに行い、
前記絶縁部材形成工程の前記平坦化作業において、前記バンプを、上面が前記絶縁部材の上面と同じ高さになるように、前記絶縁部材と共に平坦化することを特徴とする発光素子の製造方法。
前記絶縁部材形成工程は、前記電極を形成した前記半導体構造体の上に前記絶縁部材で被覆しない領域を被覆するようにパターンマスクを形成した後に絶縁材料で被覆して、上面において前記パターンマスクが露出するように前記絶縁材料を除去した後に、前記パターンマスクを除去することによって、前記絶縁部材を形成することを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
前記絶縁部材形成工程において、前記絶縁部材の上面を平坦化する平坦化作業を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記絶縁部材形成工程の後であって前記個片化工程の前に、一部が前記絶縁部材の上面に形成されて前記電極のそれぞれと電気的に接続する電極接合層を形成する電極接合層形成工程をさらに行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記半導体形成工程は、前記第1半導体層および前記第2半導体層を構成する各層を積層した後に、上面の一部の領域に前記第1半導体層が露出するように前記第2半導体層を除去し、
前記一部の領域は、前記第1半導体層に接続する前記電極を形成する領域と、前記区画領域と、をそれぞれ含む領域であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
第1半導体層と前記第1半導体層上の一部の領域に積層した第2半導体層とを有する半導体構造体と、前記第1半導体層および前記第2半導体層のそれぞれに接続した電極と、を備えた発光素子を、区画線に沿って分割することにより個片化して製造する発光素子の製造方法であって、
前記半導体構造体を形成する半導体形成工程と、
前記半導体構造体の前記第1半導体層および前記第2半導体層のそれぞれの上に、前記電極を形成する電極形成工程と、
前記電極を形成した前記半導体構造体を、前記電極における外部との電気的接続のための接続領域と、前記区画線に沿った所定の幅の区画領域を含む領域と、を除いて被覆する絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、
前記絶縁部材で被覆された半導体構造体を、前記区画線に沿って分割することにより個片化して、前記区画領域が除去された発光素子にする個片化工程と、を行い、
前記絶縁部材形成工程は、前記電極を形成した前記半導体構造体の上に前記絶縁部材で被覆しない領域を被覆するようにパターンマスクを形成した後に絶縁材料で被覆して、上面において前記パターンマスクが露出するように前記絶縁材料を除去した後に、前記パターンマスクを除去することによって、前記絶縁部材を形成し、
前記絶縁部材形成工程の後であって前記個片化工程の前に、一部が前記絶縁部材の上面に形成されて前記電極のそれぞれと電気的に接続する電極接合層を形成する電極接合層形成工程をさらに行うことを特徴とする発光素子の製造方法。
前記半導体形成工程は、前記第1半導体層および前記第2半導体層を構成する各層を積層した後に、上面の一部の領域に前記第1半導体層が露出するように前記第2半導体層を除去し、
前記一部の領域は、前記第1半導体層に接続する前記電極を形成する領域と、前記区画領域と、をそれぞれ含む領域であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
第1半導体層と前記第1半導体層上の一部の領域に積層した第2半導体層とを有する半導体構造体と、前記第1半導体層および前記第2半導体層のそれぞれに接続した電極と、を備えた発光素子を、区画線に沿って分割することにより個片化して製造する発光素子の製造方法であって、
前記電極を形成した前記半導体構造体を、前記電極における外部との電気的接続のための接続領域と、前記区画線に沿った所定の幅の区画領域を含む領域と、を除いて被覆する絶縁部材を形成する絶縁部材形成工程と、
前記区画線に沿って、前記半導体構造体を発光素子ごとに個片化する個片化工程と、を有し、
前記絶縁部材形成工程において、少なくとも前記区画領域上にマスクを形成した後に、前記半導体構造体上を絶縁材料で被覆し、
上面側から前記マスクが露出するように前記絶縁材料を除去した後に、前記マスクを除去することによって、前記絶縁部材を形成し、
前記絶縁部材形成工程の後であって前記個片化工程の前に、一部が前記絶縁部材の上面に形成されて前記電極のそれぞれと電気的に接続する電極接合層を形成する電極接合層形成工程をさらに行うことを特徴とする発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る発光素子の製造方法について、図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る発光素子の製造方法について、製造される発光素子を、
図1を参照して説明する。なお、本明細書における発光素子の上下は、製造時における積層方向(下から上に積層される)であり、または、図面を参照して説明する際には、別途記載ない限り、その図面における上下とする。また、図面は、それぞれ要部を詳細に表すために寸法は一致しない。
【0011】
〔第1実施形態:発光素子〕
発光素子10は、電圧を印加することで自ら発光する半導体素子(半導体発光素子)であり、例えば窒化物半導体等から構成される発光ダイオード(LED)を適用できる。
図1に示すように、本実施形態において、発光素子10は、平面視形状が一辺(長辺)の長さ(以下、チップ長)L0の長方形である。発光素子10は、透光性の基板2上に半導体構造体1が形成され、その上に、保護膜4、そしてn側の電極としてn側パッド電極51が、p側の電極として全面電極31、カバー電極32およびp側パッド電極52がそれぞれ設けられ、さらにその上にバンプ71,72およびこれらの間を埋める絶縁部材6が設けられて、上面が平坦に形成されている。さらに発光素子10は、バンプ71,72のそれぞれの上に、実装のための導電性の接合部材として、接合層91,92を備える。なお、
図1(a)において、保護膜4は省略し、絶縁部材6および接合層91,92は破線で輪郭線のみを示す。さらに
図1(b)において、絶縁部材6は透明として輪郭線のみを示す。これらは、後記の変形例および第2実施形態においても、別途記載ない限り同様とする。発光素子10は、上面を配線基板への実装面とし、基板2の側すなわち下面を光の主な出射面とするフリップチップ実装対応の発光素子である。以下、発光素子10の要素について詳細に説明する。
【0012】
(基板)
基板2は、半導体構造体1(活性層12)が発光した光を透過し、後記するように窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる基板材料であればよく、大きさや厚さ等は特に限定されない。このような基板材料としては、C面、R面、A面のいずれかを主面とするサファイア、(111)面を主面とするスピネル(MgA1
2O
4)のような絶縁性基板、また炭化ケイ素(SiC)、ZnS、ZnO、Si、GaAs、ダイヤモンド、および窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジム等の酸化物基板が挙げられる。また、窒化物半導体の成長時等の、発光素子10の製造段階においては、多数の発光素子10が1枚の基板2(ウェハ)に形成されるので、基板2は基台としてある程度の強度を要し、十分な厚さとする必要がある。一方、発光素子10を構成する半導体構造体1やバンプ71,72等が形成された後は、分割し易いように、裏面から基板2を研削(バックグラインド)する等して薄肉化されることが好ましい。
【0013】
(半導体構造体)
半導体構造体1は、n型半導体層(第1半導体層)11、活性層12、p型半導体層(第2半導体層)13を順次、エピタキシャル成長させて積層してなり、これらの各層としては、特に限定されるものではないが、例えばIn
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)等の窒化ガリウム系化合物半導体が好適に用いられる。n型半導体層11、活性層12、およびp型半導体層13は、それぞれ単層構造でもよいが、組成および膜厚の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に発光層である活性層12は、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸または多重量子井戸構造であることが好ましく、さらに井戸層がInを含む窒化物半導体であることが好ましい。また、基板2上に、任意に基板2との格子定数の不整合を緩和させるためのバッファ層等の下地層(図示せず)を介してn型半導体層11を形成してもよい。
【0014】
発光素子10は、上側にn型半導体層11とp型半導体層13のそれぞれに接続する電極が形成されるため、半導体構造体1は、平面視における一部の領域には活性層12およびp型半導体層13が積層されずにn型半導体層11のみとして、その上にn側パッド電極51を接続できるようにする。このような半導体構造体1は、基板2上にn型半導体層11、活性層12、p型半導体層13を順次、成長させて積層した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、n側パッド電極51が形成される領域(n側コンタクト領域)においてn型半導体層11が露出するようにp型半導体層13および活性層12を除去して形成される。さらに半導体構造体1は、平面視における周縁部でも、n側コンタクト領域と同様にp型半導体層13および活性層12が除去されていることが好ましい。すなわち発光素子10は、側面(端面)の4面に段差が形成されている。半導体構造体1は、このような形状とすることで、発光素子10の製造において、当該発光素子10が面方向に連結した状態(ウェハ20、
図8参照)で、個片化(スクライブまたはダイシング)を容易にするための溝が形成される。なお、
図1(a)において、平面視形状が重複して積層している、基板2とn型半導体層11、活性層12とp型半導体層13については、それぞれ上から「11/2」、「13/12」と表す。
【0015】
(電極)
p型半導体層13は、上に、全面電極31、カバー電極32、p側パッド電極52が順に積層されて、p側のバンプ72へ電気的に接続する。全面電極31は、p型半導体層13に電流を面内均一に拡散するための電極であり、またフリップチップ実装をする発光素子10において、活性層12で発光した光を光取出し面である基板2の側へ反射するための反射層としても機能する。カバー電極32は、全面電極31と同様にp型半導体層13の全面に電流を拡散するとともに、全面電極31の上面および側面を被覆して、全面電極31をp側パッド電極52に接触しないように遮蔽し、全面電極31の材料、特にAgのマイグレーションを防止するためのバリア層として機能する。したがって、全面電極31は、p型半導体層13の上面におけるできるだけ多くの、より全面に近い領域に形成されるが、その端面を被覆するカバー電極32が設けられるように、平面視でカバー電極32よりも一回り小さく形成される。n側パッド電極51およびp側パッド電極52は、発光素子10の外部から電流を供給する端子であり、バンプ71,72を電解めっきにて形成する際のシード電極でもある。
【0016】
全面電極31は、p型半導体層13と電気的に良好に接続できるオーミック電極であることが好ましく、また、少なくとも活性層12で発光する光の波長に対して、良好な反射率を有することが好ましい。したがって、全面電極31は、光の反射率の高いAgやその合金からなる膜の単層膜、あるいは前記Ag等の膜を最下層とするNi,Ti等との多層膜を好適に用いることができる。より好ましくは、Agを最下層(p型半導体層13側)とするAg/Ni/Ti/Pt、Ag/Ni/Ti/Ru、Ag/Ni/Ru等の多層膜を用いることができ、この多層膜の膜厚は、例えば、それぞれ1000nm程度とすることができる。全面電極31は、これらの材料を、例えば、スパッタリングや蒸着により、順次積層して形成することができる。
【0017】
カバー電極32は、例えば、Ti,Au,W,Al,Cu等の金属、またはこれらの金属の合金の単層膜、あるいはこれらの金属または合金の多層膜を用いることができる。特に、Tiを最下層(全面電極31側)とするTi(最下層)/Au/W/Tiの多層膜を用いることが好ましい。
【0018】
p側パッド電極52がカバー電極32および全面電極31を介してp型半導体層13に電気的に接続するのに対して、n側パッド電極51はn型半導体層11に直接に接続(接触)する。パッド電極51,52は、一般的な半導体素子と同様に、Au,Cu,Ni,Ti,Al,Pt等の金属やこれらの合金のような金属電極材料の単層、または多層膜を用いることができる。パッド電極51,52は、例えば、Cu単層またはCu/Ni積層膜を下層とし、AuまたはAuSn合金を上層とする多層膜とすることができる。また、n側パッド電極51は、n型半導体層11との良好な電気的コンタクトを得るために、最下層にTi,Al、またはAlCuSi合金、AlCu合金等が適用されることが好ましく、具体的には、下から、Ti/Au、Ti/Ni/Au、Al/Ti/Au、Al/Ti/Pt/Au、Ti/Pt/Au、AlCuSi/Ti/Pt/Au等の多層膜が挙げられる。
【0019】
(保護膜)
保護膜4は、半導体構造体1の露出した表面(上面および端面)や、電極における外部との接続領域を除く表面を被覆する。本実施形態で製造される発光素子10においては、保護膜4は、半導体構造体1の表面およびカバー電極32の上面において、パッド電極51,52の形成されていない領域に形成される。したがって、
図1(a)において、保護膜4(図示省略)は、開口部がパッド電極51,52の輪郭線と一致する。これは、後記製造方法にて説明するように、パッド電極51,52が、保護膜4の形成後に同じマスクを用いて形成されることによる。保護膜4は、Si,Ti,Ta,Nb,Zr,Mg等の酸化物(SiO
2,TiO
2,Ta
2O
5,Nb
2O
5,ZrO
2,MgO)、Si窒化物(例えばSi
3N
4)、AlN等の窒化物、あるいはフッ化マグネシウム(MgF
2)等が適用できる。これらの材料は、発光素子10の製造時に蒸着法、スパッタ法等の公知の方法によって成膜することができる。
【0020】
(絶縁部材)
絶縁部材6は、パッド電極51,52の高さ位置の差を埋めて、パッド電極51,52を下地とするバンプ71,72の上面を含めて、発光素子10の上面を平坦にするために設けられ、さらに発光素子10のチップ強度を補填する効果も有する。ただし、絶縁部材6は、
図1(a)に破線で示すように、発光素子10において、平面視で周縁が当該発光素子10(基板2およびn型半導体層11)よりも内側になるように形成される。一方で、本実施形態においては、絶縁部材6は、半導体構造体1のp型半導体層13および活性層12の周縁よりも外側まで設けられ、このような形状により、活性層12から側方へ出射した光を反射して下方(基板2側)へ多く出射させる。
【0021】
絶縁部材6は、半導体構造体1(活性層12)の発光した光や外光の透過し難い光透過率の低い材料で形成されることが好ましい。また、詳しくは後記製造方法にて説明するが、絶縁部材6は、製造時において、半導体構造体1上の、先に形成されたバンプ71,72間の隙間等に充填されるように形成されるために、液状の材料を固化させて形成することができ、固化させた後に、金属材料からなるバンプ71,72と共に研削されるためにある程度の強度(硬さ)を有する材料を適用する。さらに絶縁部材6は、リフトオフ法にて成形されるために、レジストマスクの除去の際、また後続の接合層91,92の形成におけるレジストマスクの形成(現像)と除去の際の、耐薬品性を有する材料を適用する。このような材料として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、PPA、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、絶縁部材6は、半導体構造体1の側面(端面)から出射した光を反射させるために、反射率の高い白色であることが好ましい。さらに絶縁部材6は、反射率をいっそう高くするために、前記樹脂材料に、半導体構造体1が発光した光を吸収し難く、かつ母材である当該樹脂に対して屈折率差のある反射材料(例えばTiO
2,SiO
2,Al
2O
3,ZrO
2,MgO等)の粉末を、予め分散させて形成してもよい。
【0022】
(バンプ)
バンプ71,72は、発光素子10において互いに高さ位置の異なるパッド電極51,52を、実装基板(図示せず)の同一平面上の配線(リード電極)に電気的に接続するために、それぞれ下面でパッド電極51,52に接続して、発光素子10の実装面である上面で面一に形成される。したがって、n側のバンプ71の方がp側のバンプ72よりも厚みがある。なお、本発明に係る発光素子の製造方法による発光素子において、バンプ71,72は、側面(周面)全体を絶縁部材6で被覆されているので、狭義のバンプのように、フリップチップ実装の際にそれ自体がリード電極に押圧接触されて圧着するものではない。したがって、後記するように、発光素子10は、バンプ71,72上にリード電極と接合させるための接合層91,92を備える。
【0023】
バンプ71,72は、十分な厚さに生産性よく形成されるように、めっき膜であることが好ましく、パッド電極51,52をシード電極とした電解めっきで成膜可能な金属電極材料が適用される。具体的には、バンプ71,72として、Cu,Au,AuSn等の単層膜や、Cu/Ni/Au、Cu/Ni/AuSn等の多層膜が挙げられる。
【0024】
(接合層)
接合層91,92は、絶縁部材6の上面に形成され、それぞれバンプ71,72を介して、パッド電極51,52に電気的に接続して設けられている。接合層91,92は、バンプ71,72を実装基板(図示せず)の配線(リード電極)に電気的に接続しつつ接着するための導電性の接合部材である。接合層91,92は、絶縁部材6の平坦化された上面に形成されるので、リード電極との接合に必要かつ互いに同じ厚さに形成されればよく、Au−Sn,Sn−Cu,Sn−Ag−Cu等の共晶合金を適用することができ、あるいはボール(半球)状のAuバンプ等のいわゆる狭義のバンプとしてもよい。
【0025】
〔第1実施形態:発光素子の製造方法〕
本発明の第1実施形態に係る発光素子の製造方法を、
図2〜9を参照して説明する。なお、製造過程における模式図である
図5〜9は、ウェハにおける発光素子(チップ)の1個とこれに連結したチップの一部を示す。また、
図5〜9においては、発光素子を構成する各要素について、加工前の状態のものにも同じ符号を付す。
【0026】
発光素子10は、
図2に示すように、基板2上に半導体構造体1を形成する半導体形成工程S10、全面電極31、カバー電極32およびパッド電極51,52を形成する電極形成工程S20、バンプ71,72を形成するバンプ形成工程S30を行ってウェハが製造される。そして、
図3,4に示すように、このウェハ上に絶縁部材6を形成する絶縁部材形成工程S40、接合層91,92を形成する接合層形成工程(電極接合層形成工程)S50、ウェハを分割する個片化工程S60を行って、発光素子10(チップ)が製造される。
【0027】
このように、発光素子10は、最後にウェハを分割してチップとなる。ここで、
図8に、分割前の連結した状態の発光素子10(ウェハ20と表す)の一部を示す。
図8に示すように、ウェハ20はマトリクス状に連結した発光素子10であり、隣り合うチップ(発光素子10,10)間の境界の中心線を区画線と称し、一点鎖線で表す。ウェハ20はこの区画線に沿って分割され、そのために、区画線上のある程度の幅の領域が失われる。詳しくは、ウェハ20は、スクライブで分割される場合には、予め(例えば半導体形成工程S10時に)割断(ブレーク)のための溝が形成されるので、この溝における半導体構造体1、少なくともp型半導体層13および活性層12が除去される。また、ウェハ20は、ダイシングで分割(切断)される場合には、切断時に少なくともブレード幅(厚み)の分が削られる。さらにウェハ20は、ブレークやダイシングによる加工で、区画線に沿って、すなわちチップ周縁に、欠け(チッピング)を生じ得る。この失われる領域、正確にはチッピング等も含めた失われる可能性のある領域は、発光素子10の領域外の「しろ」として予めウェハ20に設けられるものであり、ストリート(または、スペーシング、スクライブライン、ダイシングレーン等)と称される。
図8(a)に、幅w1のストリート(区画領域)10sを、ハッチングを付して表す。
【0028】
はじめに、絶縁部材が形成される前のウェハの製造方法、すなわち工程S10〜S30の一例を説明する。
【0029】
(半導体形成工程:半導体成長)
基板2上に、n型半導体層11、活性層12、およびp型半導体層13を構成するそれぞれの窒化物半導体を順に成長させ(S11)、その後、窒素雰囲気でアニールを行って、p型半導体層13を低抵抗化する。
【0030】
なお、本発明に係る発光素子の製造方法において、半導体構造体1の形成方法としては、特に限定されないが、MOVPE(有機金属気相成長法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)等、窒化物半導体の成長方法として公知の方法を好適に用いることができる。特に、MOCVDは結晶性よく成長させることができるので好ましい。また、半導体構造体1の各層11,12,13は、種々の半導体の成長方法を使用目的により適宜選択して成長させることが好ましい。
【0031】
(半導体形成工程:n側コンタクト領域形成)
n側パッド電極51を接続するためのコンタクト領域として、表面(上面)の一部にn型半導体層11を露出させるため、p型半導体層13および活性層12をエッチングする。同時に、発光素子10(チップ)の周縁となる領域も前記n側コンタクト領域と同じ深さまでエッチングする(S12)。このとき、後続の個片化工程S60のために、ストリート10s(
図8(a)参照)上を、正確にはストリート10sの幅w1以上の幅の領域をエッチングして、溝を形成する。この溝は、スクライブにおいては、前記した通りブレークの起点となり、一方、ダイシングにおいては、半導体構造体1(p型半導体層13および活性層12)がブレードにより物理的衝撃を受けないように予め除去された状態となる。詳しくは、半導体構造体1の各層を成長させた基板2(以下、ウェハという)上に、フォトレジストにてn側コンタクト領域およびストリート10sを空けたマスクを形成する。そして、反応性イオンエッチング(RIE)にて、p型半導体層13および活性層12、さらにn型半導体層11の上部を除去して、その表面にn型半導体層11におけるn側コンタクト層(図示省略)を露出させる。
【0032】
(電極形成工程:全面電極およびカバー電極の形成)
p型半導体層13上に、全面電極31をスパッタ法およびリフトオフ法等にて形成する(S21)。さらにp型半導体層13上に、カバー電極32を同様に、全面電極31よりも平面視で一回り大きく形成する(S22)。この工程S22完了時の断面図を
図5(a)に示す。ここで、
図5(a)に示す一点鎖線は、ウェハ20の完成後の個片化工程S60における区画線であり、発光素子10の長辺方向(図面における横方向)の間隔(ピッチ)をL1(>L0)とする。
【0033】
(電極形成工程:保護膜およびパッド電極の形成)
ウェハ全面(半導体構造体1およびカバー電極32の表面全体)に、保護膜4を形成するSiO
2等の絶縁膜を成膜する(S23)。次に、
図5(b)に示すように、ウェハ(絶縁膜)上に、パッド電極51,52が形成される領域を空けたレジストマスクPR1を形成する(S24)。そして、エッチングにて絶縁膜を除去して保護膜4を形成する(S25)。次に、
図5(c)に示すように、レジストマスクPR1の上に、パッド電極51,52を形成する金属膜を成膜する(S28)。これにより、半導体構造体1およびカバー電極32の表面の保護膜4で被覆されていない領域に、n側パッド電極51およびp側パッド電極52が形成される。
【0034】
(バンプ形成工程)
図5(d)に示すように、レジストマスクPR1およびその上の金属膜のさらに上に、バンプ71,72が形成される領域を空けたレジストマスクPR2を形成する(S31)。そして、
図6(a)に示すように、めっきにてパッド電極51,52上にバンプ71,72を形成する(S32)。次に、レジストマスクPR2を除去し(S33)、引き続いてレジストマスクPR1をその上の金属膜と共に除去する(リフトオフ、S29)。これにより、
図6(b)に示す半導体構造体1が形成されたバンプ付きのウェハが製造される。
【0035】
このようにして得られたバンプ付きのウェハから、下記の絶縁部材で表面(上面)がバンプも含めて平坦化された発光素子(チップ)を製造する、第1実施形態に係る発光素子の製造方法を以下に説明する。
【0036】
(絶縁部材形成工程)
図6(c)に示すように、ウェハ上に、区画線に沿って、所定の幅d1のレジストマスクPR3を形成する(S41)。ここで、幅d1は、ストリート10s(
図8(a)参照)の幅w1以上の幅(d1≧w1)に設ける。また、レジストマスクPR3は、その上面が発光素子10の完成時における上面の高さ位置よりも高くなる厚さに形成する。次に、絶縁部材6を形成する液状の樹脂材料をウェハ上に塗布し、
図7(a)の破線で示すように、発光素子10の完成時における上面の高さ位置よりも高く、好ましくはp側のバンプ72の上面以上の高さに形成して硬化させる(S42)。そして、硬化した樹脂材料(絶縁部材6)を上から研削して、
図7(a)の実線で示すように、レジストマスクPR3、およびバンプ71,72をウェハ上面に露出させ(頭出し)、かつ上面を平坦化する(S44)。これにより、一対の電極の外部との電気的接続のための接続領域であるバンプ71,72が設けられた領域、ならびにレジストマスクPR3が形成されている領域、すなわちストリート(区画領域)10sを含む領域のそれぞれを除いて、絶縁部材6がウェハ上に被覆される。
【0037】
(接合層形成工程)
図7(b)に示すように、バンプ71,72上の接合層91,92が形成される領域を空けたレジストマスクPR4を形成する(S51)。次に、
図7(c)に示すように、レジストマスクPR4の上に、接合層91,92を形成する金属膜を成膜する(S52)。これにより、レジストマスクPR4が形成されていない領域に、接合層91,92が形成される。次に、レジストマスクPR4および区画線上にあるレジストマスクPR3を除去する(S53)。これにより、
図8に示すように、発光素子10が連結して、その区画線に沿った平面視格子状の、ストリート(区画領域)10sを含む、幅d1の隙間を空けた絶縁部材6が形成されたウェハ20が得られ、さらに発光素子10のそれぞれのバンプ71,72上に接合層91,92(
図8(a)では輪郭線のみを破線で示す)が形成される。
【0038】
(個片化工程)
図9(a)に示すように、ウェハ20の絶縁部材6が形成された側を粘着シートSHT1と貼り合わせ(S61)、基板2を研削して(裏面研削、バックグラインド)、
図9(a)に実線で示すようにウェハ20の分割が可能な厚さに薄肉化する(S62)。次に、
図9(b)に示すように、ウェハ20を区画線に沿って分割して(S63)、1個の発光素子10(チップ)が完成する。この分割により、区画線上のストリート10sが削られて、得られる発光素子10は、チップ長L0が(L1−w1)となる(
図8(a)参照)。なお、粘着シートSHT1は、半導体素子(半導体装置)の製造において、バックグラインド用、ダイシング用等として半導体素子(ウェハ、チップ)を保護するために使用されるものが適用される。
【0039】
第1実施形態に係る発光素子の製造方法によれば、個片化工程S60(分割S63)において、切断(ダイシング)または割断(ブレーク)により欠落する領域(ストリート10s)に絶縁部材6がなく、加工(切断または割断)されるのが、薄肉化した基板2、半導体構造体1のn型半導体層11、および保護膜4のみであるので、薄いブレードによるダイシングやレーザスクライブ等の、ストリート幅w1の狭い分割方法を適用することができ、また絶縁部材6が剥離する虞もない。したがって、ウェハへのレイアウト段階で、隣り合うチップ間に設けられるストリートの幅を狭くして、ウェハ1枚あたりの発光素子の取得数を多くすることができる。
【0040】
第1実施形態に係る発光素子の製造方法にて製造される発光素子10は、半導体形成工程S10のn側コンタクト領域形成(S12)にて、半導体構造体1が、上(p型半導体層13側)に向かって面積を縮小した側面がテーパ状に形成されていてもよい(図示せず)。このような発光素子10は、半導体構造体1の側面(端面)が傾斜していることで、側方へ出射した光が絶縁部材6で反射して基板2側へ出射し易い。また、下(底)に向かって狭く(細く)なる溝がストリート10sに形成されることで、個片化工程S60において、特にスクライブにてウェハ20を分割する場合に、ブレークの位置精度が高くなる。
【0041】
また、第1実施形態に係る発光素子の製造方法にて製造される発光素子10は、p型半導体層13上の全面電極31に代えて誘電体の多層膜を反射膜として備えた発光素子を製造することもできる。このような発光素子は、p型半導体層の略全面に透明電極材料である導電性酸化膜を被覆し、その上に多数の孔を形成した多層膜を積層し、さらにその上にp側パッド電極を形成して、多層膜の孔で導電性酸化膜に接続する(図示せず)。
【0042】
第1実施形態に係る発光素子の製造方法にて製造される発光素子10は、バンプ71,72上に実装時の接合部材となる接合層91,92が設けられているが、接合部材を発光素子10(チップ)に設けずに、実装時に、はんだやAgペースト等をバンプ71,72表面または配線基板のリード電極に塗布、滴下して接合することもできる。また、発光素子10は、半導体構造体1(活性層12)の端面に保護膜4を介して絶縁部材6で被覆することで、側方へ出射する光を反射させて基板2側へ高効率で出射する構成としたが、側方へも光を出射する構成とすることもできる。また、発光素子10は、出射した光を波長変換させる場合は、配線基板への実装後に、蛍光体を添加した透光性の樹脂材料で封止すればよいが、発光素子10(チップ)の段階で蛍光体を含有する樹脂で被覆した発光素子としてもよい。以下、
図10〜12を参照して、本発明の第1実施形態の変形例(適宜、第1の変形例という)に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法で製造される発光素子について説明する。第1実施形態と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
〔第1実施形態:第1の変形例〕
図10に示すように、第1実施形態の第1の変形例に係る発光素子の製造方法で製造される発光素子10Aは、
図1に示す発光素子10から基板2を除いて、下面(光の主な出射面)および側面を波長変換部材8で被覆してなる。さらに発光素子10Aは、接合層91,92を備えないので、配線基板(図示省略)への実装時には、はんだ等の接合部材を用いる。また、発光素子10Aは、絶縁部材6Aが、平面視周縁部における半導体構造体1のp型半導体層13および活性層12が除去されていない領域(n側コンタクト領域を除く)の内側に設けられている。したがって、発光素子10Aは、半導体構造体1(活性層12)から側方へ出射した光が絶縁部材6Aで遮られずに、当該半導体構造体1の外へ出射して、さらに側面に被覆した波長変換部材8により波長変換されて取り出される。なお、本変形例のように波長変換部材を備えた発光素子については、その製造過程において波長変換部材を形成される前の状態を「発光素子(10A)」等と括弧付きの符号を付して表す。絶縁部材6Aは、発光素子10に設けられた絶縁部材6と同一材料で形成することができ、平面視形状が異なるのみである。以下に、波長変換部材8について説明する。
【0044】
(波長変換部材)
波長変換部材8は、蛍光体を添加した透光性の樹脂材料で形成される。波長変換部材8は、発光素子10Aにおける下面と側面を一体に被覆して形成されるために、液状の材料を固化させて形成することができるように、バインダとなる樹脂材料は、具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。蛍光体は公知の材料を適用すればよく、例えば、Ce等で賦活されたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体や、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活された、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等を用いることができる。これらの材料から、半導体構造体1の発光色と組み合わせて、所望の色調の光が得られるように選択する。例えば、緑色や黄色を発光するYAG系蛍光体やクロロシリケート蛍光体等のシリケート系蛍光体、赤色を発光する(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu等のSCASN系蛍光体、CaAlSiN
3:Eu等のCASN系蛍光体が挙げられ、また2種類以上の蛍光体を混合して用いてもよい。
【0045】
本変形例に係る発光素子の製造方法は、絶縁部材6Aを形成する前、すなわちバンプ形成工程S30までは、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する(
図2、および
図5から
図6(b)までを参照)。絶縁部材形成工程S40以降(
図3、
図4参照)の第1実施形態と異なる工程について説明する。
【0046】
(絶縁部材形成工程)
本変形例においては、絶縁部材形成工程S40の手順は第1実施形態と同様であるが、形成する絶縁部材6Aの平面視形状が異なり、また、後続の接合層形成工程S50を行わない(
図3参照)。詳しくは、
図6(c)に示すレジストマスクPR3を、半導体構造体1の端面まで被覆するように幅広(幅d2、
図11(a)参照)に形成する(S41)。そして、第1実施形態と同様、
図7(a)に示すように、絶縁部材6A(図中、6)を形成する樹脂材料をウェハ上に塗布して硬化させ(S42)、ウェハ上面を平坦化する(S44)。次に、レジストマスクPR3を除去する(S45)。これにより、
図8(a)に示すように、発光素子(10A)が連結して、その区画線に沿った平面視格子状の、幅d2(図中、d1)の隙間を空けた絶縁部材6A(図中、6)が形成されたウェハ20A(接合層91,92を除く)が得られる。
【0047】
(個片化工程)
第1実施形態と同様に、ウェハ20Aを粘着シートSHT1(
図11(a)参照)と貼り合わせ(S61)、基板2を研削して薄肉化し(S62)、
図11(a)に示すように、ウェハ20Aを区画線に沿って分割して(S63)、1個の発光素子(10A)に個片化することができる。最後に、以下の通り、波長変換部材8を形成する波長変換部材形成工程S70を行って、発光素子10Aが完成する。
【0048】
(波長変換部材形成工程)
図11(a)に示すように、個片化工程S60完了時において、発光素子(10A)は、粘着シートSHT1上に幅w1の間隔を空けてマトリクス状に配列されている。この状態で、粘着シートSHT1を下にして蛍光体を添加した樹脂材料を塗布することにより、側面にも波長変換部材8で被覆することができる。しかし、発光素子10Aのチップ間に、波長変換部材8すなわち樹脂の厚い層が形成されるので、削り取られる領域の幅を前記の幅w1以下として切断することが困難である。そこで、波長変換部材8を形成する前に、発光素子(10A)を粘着シートSHT1から剥離して、
図12(a)に示すように、より広い間隔となるピッチL2(>L1)で粘着シートSHT2上に配列して貼り合わせる(S71)。なお、
図12においては、それ以前の工程における発光素子10(10A)とは上下に180°回転させて示す。
【0049】
レーザリフトオフ(LLO)で基板2を半導体構造体1(n型半導体層11)から剥離する(S72)。次に、
図12(b)に示すように、蛍光体を添加した液状の樹脂材料を塗布して、隣り合う発光素子(10A)、(10A)間の隙間を充填し、発光素子(10A)の上面(半導体構造体1の上)を被覆してさらに表面(上面)を平坦に均して、固化させる(S73)。次に、発光素子(10A)、(10A)間の中心線(
図12(a)に一点鎖線で示す)に沿って波長変換部材8を切断し、発光素子10Aが完成する(S74)。さらに必要に応じて、発光素子10Aを粘着シートSHT2から剥離して、切断面(側面)や上面(光の主な取出し面)の波長変換部材8を研磨してもよい。
【0050】
本変形例に係る発光素子の製造方法によれば、波長変換部材形成工程S70において、チップ同士の間隔を十分に空けて配列してから波長変換部材8を形成するので、厚い樹脂の層である波長変換部材8を切断可能な厚いブレード(幅w2)を用いても、半導体構造体1へのダメージを生じず、また発光素子10Aの側面にも十分な厚さに波長変換部材8が形成される。さらに、ウェハ20Aにおいてストリート10s(
図8(a)参照)上に絶縁部材6Aの隙間d2を広く設けられているため、絶縁部材6Aにより厚膜化したウェハ20Aであっても、個片化工程S60において、
図11(a)に白抜き矢印で示すように、粘着シートSHT1の側から押し込むように折り曲げて割断し易い。
【0051】
なお、発光素子10Aにおいては、絶縁部材6Aが半導体構造体1(活性層12)の端面を被覆しない構成とすることで、隙間d2を広くして、個片化工程S60における割断(S63)の容易なウェハ20Aとしたが、発光素子10(
図1参照)と同様に絶縁部材6が活性層12等の端面を被覆して、光を下方へ効率的に出射する構成としてもよい。このような構成とする場合、
図11(b)に示すように、上(実装面側)に向かって面積を縮小した側面がテーパ状の絶縁部材6Bを形成することにより、同様に割断し易いウェハとすることができる。このような絶縁部材6Bは、絶縁部材形成工程S40において、レジストマスクPR3(
図6(c)参照)を、上へ広がった側面が逆テーパ状に形成することで得られる(図示せず)。
【0052】
本変形例に係る発光素子の製造方法においては、波長変換部材形成工程S70において、波長変換部材8を形成する前に基板2を除去した(S72)が、基板2を残存させたままでもよい。また、第1実施形態と同様に、接合層形成工程S50(
図3、
図7(b)、(c)参照)を行って、接合層91,92を設けた発光素子を製造することもできる(図示せず)。
【0053】
前記の第1実施形態およびその第1の変形例に係る発光素子の製造方法では、n型半導体層(n側コンタクト領域)、p型半導体層のそれぞれの直上に、外部との電気的接続のための接続領域としてn側、p側のバンプを形成したが、n側コンタクト領域の平面視形状にかかわらず、所望の配置および形状のバンプを設けた発光素子を製造することもできる。また、例えばn側、p側の各電極(パッド電極、バンプ)が2箇所以上に設けられた大型の発光素子を製造することもできる。以下、
図13を参照して、本発明の第1実施形態の別の変形例(適宜、第2の変形例という)に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法で製造される発光素子について説明する。第1実施形態およびその第1変形例と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
〔第1実施形態:第2の変形例〕
図13(a)に示すように、本変形例に係る発光素子の製造方法で製造される発光素子10Bは、平面視形状が略正方形で、左右対称な構造である。そこで
図13(a)においては、中心線の左側に基板2Bから保護膜4Bまでを示し、右側にパッド電極51B,52B、ならびに輪郭線でバンプ71B,72Bと絶縁部材6とを示す。発光素子10Bは、前記第1の変形例の発光素子10A(
図10参照)と同様に、バンプ71B,72B上に接合層を備えず、また、各要素について、形状が異なること以外は第1実施形態における発光素子10(
図1参照)と同様の構成である。
【0055】
発光素子10Bは、一対のバンプ71B,72Bが、
図13(a)における縦方向に並んで設けられ、互いに略同一な、横方向に長い角丸長方形の平面視形状である。ただし、n側のバンプ71Bは、p側のバンプ72Bとの識別のために、平面視で凹部を有する。また、発光素子10Bは、半導体構造体1Bが、
図13(a)の平面視における横方向に並んだ3箇所のn側コンタクト領域を形成され、さらにn側コンタクト領域のそれぞれが当該発光素子10Bにおける略全長にわたるように縦に長く形成されて、その上の略全域にわたってn側の電極が接続されることで、n型半導体層11へ電流が面内均一に供給される。
【0056】
ここで、第1実施形態の発光素子10のように、n型半導体層11に直接にパッド電極51Bを接続すると、その直上を避けてp側のバンプ72Bを設ける必要があり、
図13(a)に示すような横に長い一体のバンプ72Bを形成することができない。そこで、発光素子10Bは、カバー電極32Bが、p型半導体層13上(全面電極31B上)だけでなくn型半導体層11上にも形成され、さらにカバー電極32Bの上が保護膜4Bに被覆されている。保護膜4Bは、発光素子10Bにおいて、n側のカバー電極32Bとバンプ71B、p側のカバー電極32Bとバンプ72Bが、それぞれ平面視で重複する位置に開口部4hが形成されるように、上面全体を被覆する。そして発光素子10Bは、保護膜4Bの上に、バンプ71B,72Bよりも平面視で一回り大きいパッド電極51B,52Bが形成されている。パッド電極51B,52Bは、それぞれ保護膜4Bの開口部4hのみで、それぞれが対応する極性のカバー電極32Bに接続するので、互いに短絡することなく、n型半導体層11、p型半導体層13に電気的に接続する。また、発光素子10(
図1参照)と同様に、バンプ71B,72Bよりも平面視形状の大きなパッド電極51B,52Bが形成されているので、これらをシード電極として、電解めっきにてバンプ71B,72Bを形成し易い。
【0057】
前記の通り、発光素子10Bは、保護膜4Bに一部の領域で重複してパッド電極51B,52Bが形成される。したがって、本変形例に係る発光素子の製造方法は、保護膜4Bの形成からパッド電極51B,52Bの形成まで、すなわち電極形成工程S20の一部の工程のみが第1実施形態と異なり、半導体形成工程S10まで、およびバンプ形成工程S30以降は、第1実施形態と同様である(
図2〜4参照)。以下、第1実施形態と異なる工程について説明する。
【0058】
(電極形成工程:全面電極およびカバー電極の形成)
半導体構造体1Bのp型半導体層13上に、全面電極31Bを形成する(S21)。さらにp型半導体層13上に全面電極31Bを被覆するカバー電極32Bを形成し、このとき、n型半導体層11(n側コンタクト領域)上にもカバー電極32Bを形成する(S22)。
【0059】
(電極形成工程:保護膜およびパッド電極の形成)
ウェハ全面(半導体構造体1Bおよびカバー電極32Bの表面全体)に、保護膜4Bを形成する絶縁膜を成膜する(S23)。次に、ウェハ(絶縁膜)上に、保護膜4Bの開口部4hが形成される領域を空けたレジストマスクPR1を形成し(S24)、エッチングにて絶縁膜を除去して保護膜4Bを形成した(S25)後、レジストマスクPR1を除去する(S26)。次に、保護膜4Bの上に、パッド電極51B,52Bが形成される領域を空けたレジストマスク(図示せず)を形成して(S27)、その上にパッド電極51B,52Bを形成する金属膜を成膜する(S28)。このように、保護膜4Bとパッド電極51B,52Bとを別々のレジストマスクで形成することにより、平面視で保護膜4Bの開口部4hよりも大きいパッド電極51B,52Bが形成される。
【0060】
(バンプ形成工程、絶縁部材形成工程、個片化工程)
第1実施形態の第1の変形例と同様に、バンプ形成工程S30(
図2参照)、絶縁部材形成工程S40(
図3参照)を行うことで、面方向に連結した発光素子10Bに、平面視で格子状の隙間を空けた絶縁部材6が形成されたウェハ(図示省略)が形成される。最後に個片化工程S60(
図4参照)を行って、発光素子10B(チップ)が完成する。
【0061】
本変形例に係る発光素子の製造方法によれば、n側コンタクト領域の平面視形状にかかわらず、一対のバンプのそれぞれの形状と配置を設計することができ、特に広範囲に分散してn側コンタクト領域が形成される大型の発光素子を製造するのに好適である。
【0062】
発光素子10Bにおいては、絶縁部材6が、発光素子10A(
図10、
図11(a)参照)と同様に半導体構造体1B(活性層12)の端面を被覆しない構成として、側方へも光を出射する構成とすることもできる。あるいは、
図11(b)に示した絶縁部材6Bのように、絶縁部材6が半導体構造体1B(活性層12)の端面を被覆する構成として、絶縁部材6の側面をテーパ状に形成することもできる。これらの構成とすることにより、個片化工程S60において割断し易いウェハとすることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
第1実施形態およびその変形例に係る発光素子の製造方法においては、ウェハにバンプを形成して、その周囲を被覆する絶縁部材と共に研削することで、平坦な上面で外部(配線基板)との電気的接続を容易としたが、バンプを設けずに、平坦な上面で外部との電気的接続を容易にした構成(バンプレス)とすることもできる。以下、
図14〜17および
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法で製造される発光素子について説明する。第1実施形態およびその変形例と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
図14に示すように、第2実施形態に係る発光素子の製造方法で製造される発光素子10Cは、
図1に示す発光素子10のバンプ71,72を省略して、接合層91A,92Aを直接にパッド電極51,52に接続してなる。したがって、発光素子10Cは、上面に絶縁部材6の穴が形成されて、その内壁に沿って接合層91A,92Aが形成されている。この絶縁部材6の穴は、第1実施形態の発光素子10におけるバンプ71,72と同一の位置および形状であり、すなわち絶縁部材6は、発光素子10におけるものと同一形状である。また、発光素子10Cは、下面(基板2の裏面)に波長変換部材8Aが被覆されている。さらに発光素子10Cは、平面視周縁部において、半導体構造体1Cをn型半導体層11まで完全に除去し、さらに基板2の上部まで除去されて、保護膜4および絶縁部材6で被覆されている。したがって、発光素子10Cは、半導体構造体1C(活性層12)から側方へ出射した光の多くが絶縁部材6で反射して、下方へ特に効率的に出射する構成となり、さらに下面に被覆した波長変換部材8Aにより波長変換される。波長変換部材8Aは、発光素子10Aに設けられた波長変換部材8と同一の材料で形成することができ、形状が異なるのみである。
【0065】
第2実施形態に係る発光素子の製造方法は、半導体形成工程S10において、エッチングにてn側コンタクト領域およびストリート10s(
図8(a)参照)にn型半導体層11を露出させた(S12)後、ストリート10sのみにおいてさらにエッチングにてn型半導体層11を完全に除去して、さらにその下の基板2の上部まで除去する(図示省略)。その後は、第1実施形態と同様に電極形成工程S20(
図2参照)を行って、全面電極31、カバー電極32、およびパッド電極51,52を形成する(
図2のS10〜S20、および
図5(a)〜(c)参照)。本実施形態においては、バンプ形成工程S30を行わないので、パッド電極51,52を形成する金属膜の成膜(S28、
図5(c)参照)の次に、レジスト除去(S29)にて、レジストマスクPR1およびその上の金属膜を除去する(リフトオフ)。これにより、
図17(a)に示すような、半導体構造体1Cが形成され、上面にパッド電極51,52が設けられたウェハが製造される。このウェハに対して、絶縁部材6を形成する絶縁部材形成工程S40A、接合層91A,92Aを形成する接合層形成工程S50Aを行う。以降の第1実施形態と異なる工程について説明する。
【0066】
(絶縁部材形成工程)
本実施形態においては、絶縁部材形成工程S40Aは第1実施形態の絶縁部材形成工程S40とほぼ同様の手順であるが、上面に露出させるバンプ71,72が設けられていないので、レジストマスクによりパッド電極51,52上に開口部を形成する。詳しくは、
図17(b)に示すように、区画線(ストリート10s)上だけでなく、パッド電極51,52上をマスクするレジストマスクPR3Aを形成する(S41)。レジストマスクPR3Aは、第1実施形態のレジストマスクPR3(
図6(c)参照)と同様に、その上面が発光素子10Cの完成時における上面の高さ位置よりも高くなる厚さに形成する。次に、絶縁部材6を形成する液状の樹脂材料をウェハ上に塗布し、
図17(c)の破線で示すように、発光素子10Cの完成時における上面の高さ位置よりも高く形成して硬化させる(S42)。そして、硬化した樹脂材料(絶縁部材6)を上から研削して、
図17(c)の実線で示すように、レジストマスクPR3Aをストリート10s上およびパッド電極51,52上のすべてにおいてウェハ上面に露出させ(頭出し)、かつ上面を平坦化する(S44A)。これにより、レジストマスクPR3Aが形成されている領域、すなわちパッド電極51,52における外部と電気的に接続する領域、ならびにストリート(区画領域)10sを含む領域のそれぞれを除いて、絶縁部材6がウェハ上に設けられる。次に、
図17(d)に示すように、レジストマスクPR3Aを完全に除去して、絶縁部材6が形成される(S45)。
【0067】
(接合層形成工程)
図17(e)に示すように、パッド電極51,52上の絶縁部材6の開口部を含む領域であって、接合層91A,92Aが形成される領域を除いて、レジストマスクPR4を形成する(S51)。次に、レジストマスクPR4から、接合層91A,92Aを形成する金属膜を成膜する(S52)。これにより、レジストマスクPR4が形成されていない領域に、接合層91A,92Aがパッド電極51,52に接続して形成される(図示省略)。次に、レジストマスクPR4を除去する(S53A)。これにより、
図8(a)に示すように、発光素子(10C)が連結して、その区画線に沿った平面視格子状の、幅d1の隙間、およびパッド電極51,52上の開口部を空けた絶縁部材6が形成されたウェハ20C(バンプ71,72を除く)が得られ、さらにパッド電極51,52に接続した接合層91A,92A(輪郭線のみを破線で示す)が形成される。
【0068】
(波長変換部材形成工程、個片化工程)
発光素子10Cは、波長変換部材8Aを裏面にのみ備えるので、
図16に示すように、ウェハの分割前に波長変換部材8Aを形成する。まず、第1実施形態と同様に、ウェハ20Cの絶縁部材6が形成された側を粘着シートSHT1と貼り合わせ(S61)、基板2を研削(裏面研削)することによって、波長変換部材8Aが積層された状態でウェハの分割が可能な厚さに薄肉化する(S62)。次に、ウェハの裏面(基板2表面)に、第1実施形態の第1の変形例と同様に、蛍光体を添加した液状の樹脂材料を塗布して、平坦に均して固化させる(S73A)。最後に、発光素子10C,10C間の中心線(区画線)に沿ってウェハ20C(波長変換部材8A、基板2および保護膜4)を切断し(S63A)、発光素子10Cが完成する。
【0069】
本実施形態に係る発光素子の製造方法においては、波長変換部材8Aで被覆されて厚膜化したウェハ20Cを切断する(S63A)。したがって、ウェハ20Cを幅(厚み)d1以下の薄いブレードで切断することが困難な場合は、厚いブレードで波長変換部材8Aを完全に、あるいはさらに基板2の一部までを切断し(ハーフカット)、その次に薄いブレードでウェハ20Cを完全に切断すればよい。また、ウェハ20Cは、ハーフカットにより区画線上における波長変換部材8Aが除去されるので、その後に、レーザを用いたり、ブレークにて分割することもできる。このように、ウェハ20Cは、半導体構造体1Cが形成された側の面に波長変換部材8Aが形成されていないので、半導体構造体1Cに影響なく分割することができる。
【0070】
第2実施形態に係る発光素子の製造方法によれば、バンプを設けなくても上面を絶縁部材で平坦化して、かつこの上面で外部(配線基板)へ電気的に接続できる発光素子を製造することができる。また、切断または割断により欠落する幅w1の領域(ストリート10s)において、半導体構造体1Cが形成された側には、絶縁部材6や波長変換部材8Aのような樹脂材料が設けられていない。このため、ウェハの分割(S63A)において、絶縁部材6が剥離することなく、薄いブレードによるダイシングやレーザスクライブ等の、ストリート幅w1の狭い分割方法を適用することができる。
【0071】
発光素子10Cは、半導体形成工程S10で、ストリートにおけるn型半導体層11の除去(2回目のエッチング)で、上に広がった溝形状に形成されてもよい。あるいは、第1実施形態の発光素子10と同様に、2回目のエッチングを行わなくてもよい。
【0072】
なお、発光素子10Cは、基板2に波長変換部材8Aを積層しているが、第1実施形態の第1の変形例(
図10参照)のように、基板2を完全に除去して、n型半導体層11に波長変換部材8Aを積層してもよい(図示せず)。すなわち、
図16に示すように、裏面研削(S62)に代えて、LLO等により基板2を半導体構造体1C(1)から剥離する(S72A)。この場合、半導体形成工程S10での2回目のエッチングでストリート10sにおけるn型半導体層11が完全に除去されていると、基板2の剥離と同時にウェハが分割されて、後続の蛍光体入り樹脂8Aの塗布による形成(S73A)で樹脂材料が実装面まで浸入することになる(
図12(b)参照)。したがって、2回目のエッチングを行わずに、ストリート10sに(好ましくは、ウェハ全面に)n型半導体層11を残存させた半導体構造体1とすることが好ましい(
図9(a)のウェハ20参照)。
【0073】
発光素子10Cは、第1実施形態の第1の変形例のように、ウェハにおいて隙間d2の広い絶縁部材6Aを形成してもよい(
図11(a)参照)。あるいは、発光素子10Cは、
図11(b)に示す絶縁部材6Bのように、側面がテーパ状の絶縁部材を形成してもよい。このような絶縁部材を形成する場合、レジストマスクPR3Aにより同時にパッド電極51,52上の開口部が成形されるため、絶縁部材の開口部が上方に広がった形状となる(図示せず)。
【0074】
発光素子10Cのようにバンプを設けない発光素子は、第1実施形態の第1の変形例(
図10参照)のように側面にも波長変換部材8を設けてもよいし、第1実施形態(
図1参照)のように波長変換部材8Aを設けない構成としてもよく、あるいは、第1実施形態の第2の変形例(
図13参照)のように、n側コンタクト領域が広範囲に形成された構成としてもよい。また、第1実施形態のバンプを備えた発光素子10(ウェハ20)のように、裏面に波長変換部材8Aを設けてもよい(図示せず)。
【0075】
〔第3実施形態〕
第1、第2実施形態に係る発光素子の製造方法においては、リフトオフ法に表面研削(頭出し)を併せることで、絶縁部材をパターン形成しているが、絶縁部材を、レジストマスクと同様の感光性の材料で形成することで、レジストマスクを用いずに前記実施形態と同じ形状に成形することができる。以下、
図18〜20を参照して、本発明の第3実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。第1、第2実施形態と同一の要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
第3実施形態に係る発光素子の製造方法においては、絶縁部材の形成方法のみが第1、第2実施形態と異なる。ここで、絶縁部材6は、前記した通り、発光素子の完成時において第1、第2実施形態と同じ形状であるため、同一の名称および符号で表すが、本実施形態においては以下の材料を適用する。
【0077】
(絶縁部材)
絶縁部材6は、第1、第2実施形態と同様に、絶縁体であり、光透過率が低く反射率が高い材料であることが好ましく、液状の材料を固化させて形成することができて固化させた後はある程度の強度(硬さ)を有し、後続の接合層91,92の形成(接合層形成工程S50A)におけるレジストマスクの形成(現像)と除去の際の耐薬品性を有する材料を適用する。さらに本実施形態では、リフトオフ法によらずに所望のパターンに成形するために、光硬化性樹脂を適用する。具体的には、感光性のシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0078】
第3実施形態に係る発光素子の製造方法にて、
図1に示す発光素子10および
図10に示す発光素子10Aを製造する方法を説明する。第3実施形態に係る発光素子の製造方法は、絶縁部材形成工程S40を除いて第1実施形態と同様であるので、説明を省略する(
図2、および
図3から
図6(b)までを参照)。以下、本実施形態に係る発光素子の製造方法の絶縁部材形成工程S40Bについて、
図18および
図19を参照して説明する。
【0079】
(絶縁部材形成工程)
ウェハ上の全面に、絶縁部材6を形成する樹脂材料を、その上面が発光素子10の完成時における上面の高さ位置よりも高くなる厚さに、好ましくはp側のバンプ72の上面以上の高さに塗布する(S42A)。次に、レチクルマスク(図示省略)を用いた露光により、
図19(a)に示すように、平面視において区画線に沿った幅d1の格子状の隙間を空けたパターンに加工、硬化させる(S43)。そして、硬化した樹脂材料(絶縁部材6)を上から研削して、
図19(b)に示すように、バンプ71,72をウェハ上面に露出させ(頭出し)、かつ上面を平坦化する(S44B)ことにより、絶縁部材6が形成される。
【0080】
絶縁部材形成工程S40Bの次に接合層形成工程S50を行うことで、第1実施形態に係る発光素子の製造方法と同様に、
図8に示すように、発光素子10が連結して、その区画線に沿った平面視格子状の隙間を幅d1で空けた絶縁部材6が形成されたウェハ20が得られ、さらにバンプ71,72上に接合層91,92が形成される。最後に個片化工程S60(
図4、
図9参照)を行って、発光素子10が完成する。接合層91,92を備えない発光素子10Aを製造する場合は、絶縁部材形成工程S40Bの後、接合層形成工程S50を行わずに、個片化工程S60、さらに波長変換部材形成工程S70を行えばよい(
図4、
図11(a)、
図12参照)。
【0081】
〔第3実施形態:変形例〕
本実施形態に係る発光素子の製造方法にて、バンプを備えない
図14に示す発光素子10Cを製造することもできる。第3実施形態の変形例に係る発光素子の製造方法として、絶縁部材形成工程S40Cについて、
図20および適宜
図17を参照して説明する。
【0082】
(絶縁部材形成工程)
電極形成工程S20のレジスト除去(S29)が完了した
図17(a)に示すウェハ上の全面に、絶縁部材6を形成する樹脂材料を、その上面が発光素子10Cの完成時における上面の高さ位置よりも高くなる厚さに塗布する(S42A)。次に、レチクルマスク(図示省略)を用いた露光により、平面視において区画線に沿った幅d1の格子状の隙間、およびパッド電極51,52上の開口部を空けたパターンに加工、硬化させる(S43)。そして、硬化した樹脂材料(絶縁部材6)を上から研削して上面を平坦化する(S44C)ことにより、
図17(d)に示すように、絶縁部材6が形成される。
【0083】
絶縁部材形成工程S40Bの次に、
図17(e)に示すように接合層形成工程S50Aを行うことで、第2実施形態に係る発光素子の製造方法と同様に、
図8(a)に示すように、発光素子(10C)が連結して、その区画線に沿った平面視格子状の、幅d1の隙間、およびパッド電極51,52上の開口部を空けた絶縁部材6が形成されたウェハ20C(バンプ71,72を除く)が得られ、さらにパッド電極51,52に接続した接合層91A,92Aが形成される。最後に個片化工程S60A(
図16参照)を行って、発光素子10Cが完成する。
【0084】
本変形例の絶縁部材形成工程S40Cにおいては、樹脂材料の塗布(S42A)において、樹脂材料の厚さを硬化収縮等も加味して発光素子10Cの完成時における上面の高さに調整し、さらに上面を必要な平坦性に形成することで、次のパターン形成(S43)により絶縁部材6が形成され、絶縁部材6の研削(S44C)を行わない態様とすることもできる。また、本実施形態またはその変形例において、パターン形成(S43)の際に露光条件等を制御することで、
図11(b)に示すような側面がテーパ状の絶縁部材6Bを形成することができる。
【0085】
第3実施形態およびその変形例に係る発光素子の製造方法においては、絶縁部材6を形成する樹脂材料を感光性のものとすることで、1工程のレジストマスクが不要となる。なお、絶縁部材形成工程S40B,S40Cのパターン形成(S43)により形成される絶縁部材6の形状は、第1、第2実施形態に係る発光素子の製造方法におけるレジストマスクPR3,PR3A(
図6(c)、
図17(b)参照)のパターンを反転させたものである。
【0086】
第3実施形態およびその変形例に係る発光素子の製造方法によれば、絶縁部材6が第1、第2実施形態に係る発光素子の製造方法によるものと同一形状に形成され、個片化工程S60,S60Aにおいて、切断または割断により欠落する領域(ストリート10s)に絶縁部材6が設けられていないので、薄いブレードによるダイシングやレーザスクライブ等の、ストリート幅w1の狭い分割方法を適用することができる。
【0087】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法によって製造される発光素子について説明する。前記した他の実施形態またはその変形例と同一の要素については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0088】
[発光素子の構成]
まず、
図21を参照して、第4実施形態に係る発光素子の製造方法によって製造される発光素子10Dについて説明する。
図21に示すように、発光素子10Dは、
図10に示した第1実施形態の第1の変形例に係る発光素子10Aと同様に、半導体材料を結晶成長させるための基板2(
図23(a)参照)が除去された半導体構造体1を備え、波長変換部材8が半導体構造体1の側面および下面、並びに絶縁部材6およびマスク部材61の側面を被覆するように設けられている。
また、発光素子10Dは、平面視において、半導体構造体1の外形と絶縁部材6の外形とマスク部材61の外形とが一致するように形成されている。
【0089】
また、半導体構造体1の上面に形成された段差の境界部の側面、すなわち、p型半導体層13および活性層12の側面は、透光性の保護膜4を介して、光反射性を付与された絶縁部材6によって被覆されている。このため、活性層12で発光し、半導体構造体1内を横方向に伝播する光は、絶縁部材6によって反射されて半導体構造体1に戻され、波長変換部材8を介して半導体構造体1の下面または側面から外部に取り出される。これによって、発光素子10Dから出力される光の配光特性を向上させることができる。
なお、波長変換部材8は、半導体構造体1からの光が外部に取り出される面を被覆するように設けられていればよく、絶縁部材6が光反射性を有する場合は、絶縁部材6の側面に設けなくともよい。
【0090】
本実施形態における発光素子10Dは、発光素子10Aとは、バンプ71,72の上面に接合層91,92を有していることと、絶縁部材6の上面を被覆するようにマスク部材61を有していることとが異なる。また、半導体構造体1の下層部であるn型半導体層11の下面および側面は、粗面化されることによって、凹凸形状1aを有している。凹凸形状1aを設けることにより、半導体構造体1からの光取出し効率を向上させることができる。
なお、発光素子10Aや他の実施形態においても、基板2が除去された構成の場合は、n型半導体挿11の下面、または下面および側面を粗面化するようにしてもよい。
【0091】
また、本実施形態における発光素子10Dは、平面視で、接合層91,92が、それぞれ対応する極性のパッド電極51,52よりも小さく形成されているが、これに限定されるものではなく、接合層91,92の方が大きくなるように形成されてもよい。さらに、パッド電極51,52、バンプ71,72および接合層91,92の個数、形状、配置領域などは適宜に変更することができる。
【0092】
(マスク部材)
マスク部材61は、半導体構造体1が形成されたウェハにおいて、発光素子10Dの区画領域における半導体構造体1をエッチングによって除去する際に用いたマスクが残存しているものである。マスク部材61は、半導体構造体1をエッチングする際のマスクとして使用可能な耐エッチング性を有し、絶縁部材6との密着性が良好な材料を用いることが好ましく、例えば、SiO
2などの絶縁材料を用いることができる。マスク部材61は、完成後の発光素子10Dには無くてもよく、エッチングのマスクとして用いた後に除去するようにしてもよい。
【0093】
[発光素子の製造方法]
次に、
図22〜
図26を参照(適宜
図21参照)して、第4実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
【0094】
(半導体形成工程、電極形成工程、バンプ形成工程)
まず、第1実施形態と同様にして、半導体形成工程S10と、電極形成工程S20と、バンプ形成工程S30とを行うことにより、
図23(a)に示すように、基板2上に半導体構造体1と、全面電極31(
図21(b)参照)、カバー電極32(
図21(b)参照)、保護膜4およびパッド電極51,52と、バンプ71,72とを順次に形成する。
【0095】
なお、製造工程を説明するための断面図である
図22〜
図26、並びに後記する
図29〜
図31、
図34〜
図36および
図39〜
図42の各図においては、半導体構造体1の詳細な構造、並びに全面電極31およびカバー電極32の記載を省略している。これらの図において、半導体構造体1に段差が形成されているが、下段側の領域は、p型半導体層13、活性層12およびn型半導体層11の一部が除去され、その上面はn型半導体層11である。また、半導体構造体1の上段側の領域は、活性層12およびp型半導体層13を有しており、p型半導体層13の上面の略全面を被覆するように、全面電極31(不図示)およびカバー電極32(不図示)が設けられている。また、半導体構造体1の上段側の領域において、p側パッド電極52はカバー電極32上に設けられており、p側パッド電極52が形成された領域を除き、カバー電極32は保護膜4によって被覆されている。
【0096】
また、
図23(a)に示すように、本実施形態では、発光素子の区画線BDに沿った区画領域は、保護膜エッチング工程S25(
図2参照)において保護膜4が除去されることで保護膜4に開口部4aが形成されている。このため、開口部4aにおいて、半導体構造体1のn型半導体層11が露出している。また、開口部4aは、幅が絶縁部材6の隙間の幅d1以上となるように形成される。
なお、区画線BDに沿った領域に保護膜4を設けないようにすることで、後記する基板面露出工程S80Dにおいて、保護膜4と同種の絶縁材料を用いてマスク部材61(
図24参照)を形成し、半導体構造体1をエッチングする際のマスクとして用いることができる。
【0097】
(絶縁部材形成工程)
次に、絶縁部材形成工程S40Dにおいて絶縁部材6を形成する。本実施形態における絶縁部材形成工程S40Dには、3つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S141と、樹脂塗布工程S142と、表面研削工程S143とが含まれる。
【0098】
まず、レジストマスク形成工程S141において、フォトリソグラフィ法によって、
図23(b)に示すように、区画線BDに沿った幅d1の領域を被覆するようにパターニングされたレジストマスクPR5を形成する。本実施形態では、レジストマスクPR5は、保護膜4の開口部4a内に露出する半導体構造体1のn型半導体層11上に形成されている。また、レジストマスクPR5は、半導体構造体1に形成されている段差の境界から離間して設けることが好ましい。これによって、後記する樹脂塗布工程S142において、光反射性を有する絶縁部材6によって、p型半導体層13および活性層12の側面が、保護膜4を介して被覆されるように絶縁部材6を形成することができる。
なお、レジストマスク形成工程S141は、第1実施形態においてレジストマスクPR3(
図6(c)参照)を形成するレジストマスク形成工程S41(
図3参照)と同様に行うことができる。
【0099】
次に、樹脂塗布工程S142において、
図23(c)に示すように、絶縁部材6を形成する液状の樹脂材料をウェハ上に、研削線X1よりも高くなるような厚さに塗布し、塗布した樹脂材料を硬化させる。これによって、バンプ71,72およびレジストマスクPR5が絶縁部材6に埋設された状態となる。ここで、研削線X1は、発光素子10Dが完成した際の絶縁部材6の高さである。
なお、樹脂塗布工程S142は、第1実施形態における樹脂塗布工程S42と同様にして行うことができる。
【0100】
次に、表面研削工程S143において、絶縁部材6を内在するバンプ71,72およびレジストマスクPR5とともに研削線X1の高さまで、上面が平坦化されるように研削する。これによって、
図23(d)に示すように、バンプ71,72およびレジストマスクPR5の上面が絶縁部材6から露出するとともに、絶縁部材6の形状が完成する。
なお、表面研削工程S143は、第1実施形態における表面研削工程S44と同様にして行うことができる。
【0101】
(基板面露出工程)
次に、基板面露出工程S80Dにおいて、区画領域における半導体構造体1を除去することによって、区画領域に基板2を露出させる。基板面露出工程S80Dは、3つのサブ工程として、マスク成膜工程S181と、レジスト除去工程S182と、半導体層エッチング工程S183とが含まれる。
【0102】
まず、マスク成膜工程S181において、スパッタ法や蒸着法などによって、
図24(a)に示すように、ウェハ上にマスク材料(例えば、SiO
2)を用いて成膜することで、マスク部材61を形成する。
次に、レジスト除去工程S182において、レジストマスクPR5を、その上面に形成されたマスク部材61とともに除去することによって、
図24(b)に示すように、マスク部材61および絶縁部材6に、区画線BDに沿って幅d1の開口部6aが形成され、開口部6a内において半導体構造体1が露出する。
【0103】
次に、半導体層エッチング工程S183において、マスク部材61をマスクとして半導体構造体1をエッチングすることによって、
図24(c)に示すように、区画線BDに沿った幅d1の領域、すなわち、平面視で絶縁部材6の開口部6aが形成された領域について、基板2を露出させる。
なお、半導体層エッチング工程S183の終了後に、適宜な薬剤を用いてマスク部材61を除去するようにしてもよい。
【0104】
(接合層形成工程)
次に、接合層形成工程S50Dにおいて、接合層91,92を形成する。
本実施形態における接合層形成工程S50Dは、第1実施形態における接合層形成工程S50(
図3参照)と同様に、リフトオフによるパターン形成法を用いるものである。そのために、接合層形成工程S50Dは、4つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S151と、マスク部材エッチング工程S152と、接合層成膜工程S153と、レジスト除去工程S154とが含まれる。
【0105】
まず、レジストマスク形成工程S151において、フォトリソグラフィ法によって、
図24(d)に示すように、ウェハ上に、バンプ71,72の上方である接合層91,92を設ける領域に開口を有するレジストマスクPR6を形成する。
次に、マスク部材エッチング工程S152において、レジストマスクPR6をマスクとしてマスク部材61をエッチングすることによって、
図25(a)に示すように、バンプ71,72の上面を露出させる。
【0106】
次に、接合層成膜工程S153において、
図25(b)に示すように、ウェハ上に、接合層91,92を形成する金属膜90を成膜する。なお、接合層成膜工程S153は、第1実施形態における接合層成膜工程S52と同様にして行うことができる。
次に、レジスト除去工程S154において、レジストマスクPR6を、その上面に形成された金属膜90とともに除去することによって金属膜90がパターニングされ、
図25(c)に示すように、接合層91,92が形成される。また、レジストマスクPR6を除去することによって、絶縁部材6およびマスク部材61の区画線BDに沿った領域に、幅d1の隙間が形成される。
【0107】
(個片化工程)
次に、個片化工程S60Dにおいて、発光素子10Dを個片化する。本実施形態における個片化工程S60Dは、3つのサブ工程として、シート貼合せ工程S161と、基板剥離工程S162と、半導体層粗面化工程S163とが含まれる。
【0108】
まず、シート貼合せ工程S161において、
図25(d)に示すように、ウェハの絶縁部材6が形成された側の面を粘着シートSHT1と貼り合わせる。なお、粘着シートSHT1は、第1実施形態におけるシート貼合せ工程S61(
図4参照)で用いる粘着シートSHT1と同様のものを用いることができる。
【0109】
次に、基板剥離工程S162において、LLO法などによって、
図26(a)に示すように、基板2を剥離することで除去する。本実施形態では、接合層形成工程S50Dを終了後は、各発光素子は基板2のみで連結されている。このため、基板2を剥離して完全に除去することにより、発光素子が個片化される。なお、個片化された発光素子は、粘着シートによって連結されているだけであるから、コレットなど用いて個々の発光素子を粘着シートからピックアップすることができる状態である。
【0110】
なお、前記したように、ウェハを分割するときに、ダイシングやレーザスクライブなどにより実際に除去される領域の幅をw1とすると、分割の際の位置精度を考慮したマージンを含めて、区画領域として確保すべき領域の幅がd1である(
図7および
図8参照)。
これに対して、本実施形態のように、LLO法などで基板2を完全に除去することで発光素子を個片化する場合は、基板面露出工程S80Dにおいて、エッチングによって除去される半導体構造体1の幅が、幅w1に相当する。従って、個片化の際に、基板2を切断するために必要となる領域の幅w1を別途に考慮する必要がなく、幅d1は、半導体構造体1をエッチングする際の加工精度に基づいて定めることができる。
【0111】
次に、半導体層粗面化工程S163において、
図26(b)に示すように、基板2が除去されることによって露出した半導体構造体1の下面および側面を、例えば、ウェットエッチングにより粗面化することによって、凹凸形状1aを形成する。この工程は省略するようにしてもよいが、半導体構造体1からの光取出し面となる下面および側面を粗面化することにより、光取出し効率を向上させることができる。
【0112】
(波長変換部材形成工程)
次に、波長変換部材形成工程S70Dにおいて、個片化された発光素子の下面および側面に波長変換部材8を形成する。
波長変換部材8は、第1実施形態の第1の変形例における波長変換部材形成工程S70(
図4参照)と同様にして形成することができる。
【0113】
また、波長変換部材8は、スプレー法を用いて、さらに簡便な方法で形成することもできる。以下に、スプレー法を用いた波長変換部材8の形成方法について説明する。
本実施形態における波長変換部材形成工程S70Dには、2つのサブ工程として、蛍光体入り樹脂塗布工程S171と、切断工程S172とが含まれる。
【0114】
まず、蛍光体入り樹脂塗布工程S171において、
図26(c)に示すように、蛍光体の粒子を含有した液状の樹脂(蛍光体入り樹脂)を、半導体構造体1の下面および側面、並びに絶縁部材6の側面に塗布した後に硬化させることによって、波長変換部材8を形成する。
【0115】
なお、蛍光体入り樹脂の塗布は、スプレー法を用いることが好ましく、樹脂材料として熱硬化性の樹脂を用いてパルス状にスプレー噴射するパルススプレー法を用いることがさらに好ましい。パルススプレー法によれば、溶媒に蛍光体の粒子と熱硬化性樹脂とを含有させたスラリーを、パルス状に、すなわち間欠的に噴射することにより、単位時間当たりの噴射量を少なくすることができる。このため、スプレー装置を、少ない噴射量でスプレー噴射させながら低速で移動させることにより、凹凸形状を有する塗布面の側面や角部にも均一に塗布することができる。また、スラリーを少量ずつ塗布するごとに塗布膜を加熱して硬化させて薄膜を形成する操作を繰り返すようにして波長変換部材8を形成してもよい。これによって、前記操作の繰り返し回数、すなわち蛍光体を含有する薄膜の積層数を調整することで、波長変換部材8を、精度よい膜厚で形成することができる。
【0116】
また、スプレー法によりスラリーを少量ずつ塗布することにより、スプレーノズルから一定以上離れるほど塗布量が低減されるように塗布することができる。従って、
図26(c)において、ウェハの下方からスプレー噴射することにより、開口部6a内の奥側(粘着シートSHT1側)ほど薄くなるように、より好ましくは、奥側には塗布されないように蛍光体入り樹脂を塗布することができる。
ここで、下方とは、
図26(c)における下方であって、重力場における下方を意味するものではない。従って、粘着シートSHT1を重力場の下側となるようにウェハを載置し、上方からスプレー噴射して塗布するようにしてもよい。
【0117】
また、蛍光体入り樹脂塗布工程S171において、側面に形成する波長変換部材8の膜厚に対して、開口部6aの幅d1(
図24(c)参照)が十分でない場合は、波長変換部材8を形成する前の発光素子10Dを粘着シートSHT1からピックアップして、別の粘着シート上に、発光素子10Dの側面の塗布に十分な間隔をあけて再配列させるようにしてもよい。また、粘着シートSHT1として、延伸性を有するエキスパンドシートを用い、蛍光体入り樹脂の塗布を行う前に、粘着シートSHT1を延伸させることで、発光素子10Dの間隔を広げるようにしてもよい。
【0118】
次に、切断工程S172において、波長変換部材8によって連結された発光素子10Dを、区画線BDに沿って切断することによって再度個片化する。
樹脂層である波長変換部材8は、ダイシング法により切断することができるが、より簡便な方法で行うこともできる。
蛍光体入り樹脂塗布工程S171において、開口部6a内の奥側(粘着シートSHT1側)ほど薄くなるように、蛍光体入り樹脂を塗布することにより、発光素子10Dが波長変換部材8によって強固に連結されない。このため、例えば、粘着シートSHT1として、延伸性を有するエキスパンドシートを用い、粘着シートSHT1を面方向に延伸させることで、波長変換部材8を引き千切りによって切断することができる。
さらにまた、蛍光体入り樹脂塗布工程S171において、開口部6a内の奥側(粘着シートSHT1側)に蛍光体入り樹脂を塗布しないようにすることにより、発光素子10Dが波長変換部材8によって連結されないため、切断工程S172を省略することができる。
以上の手順により、発光素子10Dが完成する。
【0119】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法によって製造される発光素子について説明する。前記した他の実施形態またはその変形例と同一の要素については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0120】
[発光素子の構成]
まず、
図27を参照して、第5実施形態に係る発光素子の製造方法によって製造される発光素子10Eについて説明する。
図27に示すように、発光素子10Eは、
図21に示した第4実施形態に係る発光素子10Dに対して、絶縁部材6の上面を被覆するマスク部材61を有さず、絶縁部材6の側面を被覆するマスク部材62を有することが異なる。また、発光素子10Eにおいて、波長変換部材8は、マスク部材62を介して絶縁部材6の側面を被覆している。また、発光素子10Eは、平面視において、半導体構造体1の外形とマスク部材62の外形とが一致するように形成されている。
【0121】
(マスク部材)
マスク部材62は、半導体構造体1が形成されたウェハにおいて、発光素子10Eの区画領域における半導体構造体1をエッチングによって除去する際に用いたマスクが残存しているものである。第4実施形態におけるマスク部材61とは異なり、本実施形態におけるマスク部材62は、エッチング用のマスクとして用いられる際に、絶縁部材6の上面に加えて、開口部6a(
図24(b)参照)内の側面も被覆するように形成される。完成後の発光素子10Eにおけるマスク部材62は、絶縁部材6の開口部6a内の側面に形成された部位が残存したものである。
また、本実施形態におけるマスク部材62は、フォトレジストを用いて形成され、フォトリソグラフィ法によってパターニングされる。
【0122】
[発光素子の製造方法]
次に、
図28〜
図31を参照(適宜
図27参照)して、第5実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
【0123】
(半導体形成工程、電極形成工程、バンプ形成工程)
まず、第4実施形態と同様にして、半導体形成工程S10と、電極形成工程S20と、バンプ形成工程S30とを行うことにより、
図23(a)に示すように、基板2上に半導体構造体1と、全面電極31(
図21(b)参照)、カバー電極32(
図21(b)参照)、保護膜4およびパッド電極51,52と、バンプ71,72とを順次に形成する。
【0124】
(絶縁部材形成工程)
次に、絶縁部材形成工程S40Eにおいて絶縁部材6を形成する。第5実施形態における絶縁部材形成工程S40Eには、4つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S241と、樹脂塗布工程S242と、表面研削工程S243と、レジスト除去工程S244とが含まれる。
【0125】
まず、レジストマスク形成工程S241、樹脂塗布工程S242および表面研削工程S243を、それぞれ第4実施形態におけるレジストマスク形成工程S141、樹脂塗布工程S142および表面研削工程S143と同様に行う。従って、表面研削工程S243を行った後は、
図23(d)に示すように、絶縁部材6の上面と同一面となるように、バンプ71,72の上面およびレジストマスクPR5の上面が露出した状態となる。
次に、レジスト除去工程S244において、レジストマスクPR5を除去することによって、
図29(a)に示すように、区画線BDに沿った幅d1の領域の半導体構造体1を露出させる。
【0126】
(基板面露出工程)
次に、基板面露出工程S80Eにおいて、区画領域における半導体構造体1を除去することによって、区画領域に基板2を露出させる。基板面露出工程S80Eは、3つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S281と、半導体層エッチング工程S282と、表面研削工程S283とが含まれる。
【0127】
まず、レジストマスク形成工程S281において、フォトリソグラフィ法によって、
図29(b)に示すように、マスク部材62を形成する。マスク部材62は、絶縁部材6の開口部6a内の底面を除き、ウェハ全体を被覆するように形成される。但し、開口部6a内において、絶縁部材6の側面を被覆するマスク部材62の厚さ分だけ、半導体構造体1の上面が被覆される。従って、絶縁部材6の開口部6aは、マスク部材62の膜厚分だけ幅が狭くなる。この幅をd3とすると、d3<d1である(
図29(a)および
図29(c)を比較参照)。
【0128】
次に、半導体層エッチング工程S282において、マスク部材62をマスクとして半導体構造体1をエッチングすることによって、
図29(c)に示すように、区画線BDに沿った幅d3の領域において基板2を露出させる。
【0129】
次に、表面研削工程S283において、ウェハの上面側から研削線X2の高さまで、上面が平坦化されるように研削する。これによって、
図29(d)に示すように、ウェハの上面に形成されたマスク部材62が除去されて、バンプ71,72の上面が露出する。
【0130】
(接合層形成工程)
次に、接合層形成工程S50Eにおいて、接合層91,92を形成する。
本実施形態における接合層形成工程S50Eは、エッチングによるパターン形成法を用いるものである。そのために、接合層形成工程S50Eは、4つのサブ工程として、接合層成膜工程S251と、レジストマスク形成工程S252と、接合層エッチング工程S253と、レジスト除去工程S254とが含まれる。
【0131】
まず、接合層成膜工程S251において、
図30(a)に示すように、ウェハ上に、接合層91,92を形成する金属膜90を成膜する。なお、接合層成膜工程S251は、第1実施形態における接合層成膜工程S52と同様にして行うことができる。
次に、レジストマスク形成工程S252において、フォトリソグラフィ法によって、
図30(b)に示すように、ウェハ上に、バンプ71,72の上方である接合層91,92を設ける領域を被覆するレジストマスクPR7を形成する。
【0132】
次に、接合層エッチング工程S253において、
図30(c)に示すように、レジストマスクPR7をマスクとして金属膜90をエッチングすることによって、接合層91,92のパターンを形成する。また、当該エッチングによって、不要な金属膜90を除去することで、区画線BDに沿った幅d3の領域に再び隙間が形成され、各素子は基板2のみによって連結された状態となる。
次に、レジスト除去工程S254において、
図30(d)に示すように、レジストマスクPR7を除去することによって、接合層91,92が形成される。
【0133】
(個片化工程)
次に、個片化工程S60Dにおいて、発光素子を個片化する。第5実施形態における発光素子の個片化は、第4実施形態における個片化工程S60Dと同様にして行うものである。
すなわち、まず、シート貼合せ工程S161(
図22参照)において、
図31(a)に示すように、ウェハの絶縁部材6が形成された側の面を粘着シートSHT1と貼り合わせる。
【0134】
次に、基板剥離工程S162(
図22参照)において、LLO法などによって、
図31(b)に示すように、基板2を剥離することで除去する。本実施形態においても、接合層形成工程S50Eを終了後は、各発光素子は基板2のみで連結されている。このため、基板2を剥離して完全に除去することにより、発光素子が個片化される。
次に、半導体層粗面化工程S163(
図22参照)において、
図31(c)に示すように、半導体構造体1の下面および側面を粗面化することによって、凹凸形状1aを形成する。
【0135】
(波長変換部材形成工程)
次に、第4実施形態と同様にして、波長変換部材形成工程S70Dを行うことによって、
図31(d)に示すように、個片化された発光素子の下面および側面に波長変換部材8を形成する。
以上の手順により、発光素子10Eが完成する。
【0136】
なお、本実施形態においては、区画線BDに沿って形成された絶縁部材6の隙間である開口部6aの幅が、マスク部材62に被覆された分だけ狭くなっているが、第4実施形態と同様に、波長変換部材8を形成する際に、または/および、個々の発光素子10Eに切断する際に、発光素子10Eの配列間隔を広げるようにしてもよい。
【0137】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法によって製造される発光素子について説明する。前記した他の実施形態またはその変形例と同一の要素については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0138】
[発光素子の構成]
まず、
図32を参照して、第6実施形態に係る発光素子の製造方法によって製造される発光素子10Fについて説明する。
図32に示すように、発光素子10Fは、
図27に示した第5実施形態に係る発光素子10Eに対して、絶縁部材6の側面を被覆するマスク部材62を有さないことが異なる。また、発光素子10Fは、発光素子10Eのように側面が平らに形成されたものではなく、段差が設けられている。すなわち、発光素子10Fは、高さ方向について、絶縁部材6が設けられた上部領域が、絶縁部材6が設けられていない下部領域よりも、発光素子10Eのマスク部材62(
図27参照)の厚さに相当する分だけ、内側になるように形成されている。
【0139】
[発光素子の製造方法]
次に、
図33〜
図36を参照(適宜
図32参照)して、第6実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
【0140】
まず、第5実施形態と同様にして、半導体形成工程S10と、電極形成工程S20と、バンプ形成工程S30と、絶縁部材形成工程S40Eとを行うことにより、
図29(a)に示した状態のウェハを形成する。
【0141】
(基板面露出工程)
次に、基板面露出工程S80Fにおいて、区画領域における半導体構造体1を除去することによって、区画領域に基板2を露出させる。基板面露出工程S80Fは、3つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S381と、半導体層エッチング工程S382と、レジスト除去工程S383と、が含まれる。
【0142】
レジストマスク形成工程S381および半導体層エッチング工程S382は、それぞれ第5実施形態における基板面露出工程S80Eのレジストマスク形成工程S281および半導体層エッチング工程S282と同様に行う。これによって、
図34(a)に示すように、マスク部材62をマスクとして、区画線BDに沿った幅d3の領域について、半導体構造体1が除去されることで基板2が露出した状態となる。この状態は、
図29(c)に示した状態と同じである。
【0143】
次に、レジスト除去工程S383において、適宜な薬剤などを用いて、
図34(b)に示すように、マスク部材62をすべて除去する。これによって、区画線BDに沿った領域は、絶縁部材6が形成されている上部領域が幅d1で開口するとともに、絶縁部材6が形成されていない下部領域が幅d3で開口した状態となる。
【0144】
(接合層形成工程)
次に、第5実施形態と同様に、接合層形成工程S50Eを行うことにより、接合層91,92を形成する。
すなわち、まず、接合層成膜工程S251(
図28参照)において、
図34(c)に示すように、ウェハ上に金属膜90を成膜する。
次に、レジストマスク形成工程S252(
図28参照)において、
図34(d)に示すように、ウェハ上に、バンプ71,72の上方である接合層91,92を設ける領域を被覆するレジストマスクPR8を形成する。なお、レジストマスクPR8は、第5実施形態におけるレジストマスクPR7と同様にして形成される。
【0145】
次に、接合層エッチング工程S253(
図28参照)において、
図35(a)に示すように、レジストマスクPR8をマスクとして金属膜90をエッチングすることによって、接合層91,92のパターンを形成する。
次に、レジスト除去工程S254(
図28参照)において、
図35(b)に示すように、レジストマスクPR8を除去することによって、接合層91,92が形成される。
【0146】
(個片化工程)
次に、第4実施形態および第5実施形態と同様に、個片化工程S60Dを行うことにより、発光素子を個片化する。
すなわち、まず、シート貼合せ工程S161(
図22参照)において、
図35(c)に示すように、ウェハの絶縁部材6が形成された側の面を粘着シートSHT1と貼り合わせる。
【0147】
次に、基板剥離工程S162(
図22参照)において、LLO法などによって、
図35(d)に示すように、基板2を剥離することで除去する。本実施形態においても、接合層形成工程S50Eを終了後は、各発光素子は基板2のみで連結されている。このため、基板2を剥離して完全に除去することにより、発光素子が個片化される。
次に、半導体層粗面化工程S163(
図22参照)において、
図36(a)に示すように、半導体構造体1の下面および側面を粗面化することによって、凹凸形状1aを形成する。
【0148】
(波長変換部材形成工程)
次に、第4実施形態および第5実施形態と同様にして、波長変換部材形成工程S70Dを行うことによって、
図36(b)に示すように、個片化された発光素子の下面および側面に波長変換部材8を形成する。
以上の手順により、発光素子10Fが完成する。
【0149】
なお、本実施形態においては、区画線BDに沿って形成された絶縁部材6の隙間である開口部6aの幅はd1であるが、半導体構造体1の側面における隙間の幅はd3と狭くなっている。このため、第4実施形態と同様に、波長変換部材8を形成する際に、または/および、個々の発光素子10Fに切断する際に、発光素子10Fの配列間隔を広げるようにしてもよい。
【0150】
また、本実施形態においては、波長変換部材8を設けることが好ましい領域である半導体構造体1の側面において、隙間の幅d3が、絶縁部材6の側面における隙間の幅d1より小さくなっており、底面視すると、絶縁部材6の側面が、半導体構造体1の側面の内側に隠されることとなる。すなわち、
図36(b)において、発光素子10Fの下方からスプレー法により蛍光体入り樹脂を塗布する場合は、絶縁部材6の側面に塗布されにくい形状となっている。従って、スプレー法により蛍光体入り樹脂を塗布するようにすることで、絶縁部材6の側面に波長変換部材8を薄く形成したり、絶縁部材6の側面に波長変換部材8を形成しないようにするために、より適した構造となっている。これによって、波長変換部材8を形成した後の切断工程S172(
図22参照)で、波長変換部材8を容易に切断したり、切断工程S172(
図22参照)を省略することができる。
【0151】
〔第7実施形態〕
次に、本発明の第7実施形態に係る発光素子の製造方法およびこの製造方法によって製造される発光素子について説明する。前記した他の実施形態またはその変形例と同一の要素については、同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0152】
[発光素子の構成]
まず、
図37を参照して、第7実施形態に係る発光素子の製造方法によって製造される発光素子10Gについて説明する。
図37に示すように、発光素子10Gは、
図32に示した第6実施形態に係る発光素子10Fに対して、基板2を有することと、絶縁部材6が、半導体構造体1の側面部を、厚さ方向についてすべて被覆するように設けられていることと、波長変換部材8が設けられていないこととが異なる。また、発光素子10Gは、基板2を剥離されずに有しているため、半導体構造体1の下面および側面が粗面化されていない。
【0153】
本実施形態においては、発光素子10Gの半導体構造体1の側面のすべてを、光反射性を有する絶縁部材6で被覆することによって、半導体構造体1からの光を、半導体構造体1の下面からのみ外部に取り出される。このため、発光素子10Gの下面の法線方向に出射される光の強度分布を一様にすることができる。
【0154】
[発光素子の製造方法]
次に、
図38〜
図42を参照(適宜
図37参照)して、第7実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
【0155】
(半導体形成工程、電極形成工程、バンプ形成工程)
まず、第4実施形態ないし第6実施形態と同様にして、半導体形成工程S10と、電極形成工程S20と、バンプ形成工程S30とを行うことにより、
図23(a)に示すように、基板2上に半導体構造体1と、全面電極31(
図21(b)参照)、カバー電極32(
図21(b)参照)、保護膜4およびパッド電極51,52と、バンプ71,72とを順次に形成する。
【0156】
(基板面露出工程)
次に、基板面露出工程S80Gにおいて、区画領域における半導体構造体1を除去することによって、区画領域に基板2を露出させるとともに、半導体構造体1の厚さ方向の全領域に亘って側面を露出させる。基板面露出工程S80Gは、3つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S481と、半導体層エッチング工程S482と、レジスト除去工程S483とが含まれる。
【0157】
まず、レジストマスク形成工程S481において、フォトリソグラフィ法によって、
図39(a)に示すように、ウェハ上にレジストマスクPR9を形成する。レジストマスクPR9は、区画線BDに沿った幅d4の領域に開口部PR9aを有するように形成される。
【0158】
ここで、後記する個片化工程S60Gにおいて、レーザスクライブ法や幅の薄いブレードを用いたダイシング法により分割するために確保すべき幅をd1とすると、d4>d1となるように幅d4が定められる。そして、半導体構造体1の側面に形成される絶縁部材6の厚さは、幅d1と幅d4との差分の1/2に相当する厚さとなる。従って、絶縁部材6が反射膜として十分に機能するように、幅d1および幅d4を定めることが好ましい。
【0159】
次に、半導体層エッチング工程S482において、
図39(b)に示すように、レジストマスクPR9をエッチングマスクとして半導体構造体1をエッチングすることによって、区画線BDに沿った幅d4の領域について基板2を露出させる。
次に、レジスト除去工程S483において、適宜な薬剤などを用いて、
図39(c)に示すように、レジストマスクPR9を除去する。
【0160】
(絶縁部材形成工程)
次に、絶縁部材形成工程S40Gにおいて、ウェハ上に絶縁部材6を形成する。本実施形態における絶縁部材形成工程S40Gには、4つのサブ工程として、レジストマスク形成工程S441と、樹脂塗布工程S442と、表面研削工程S443と、レジスト除去工程S444とが含まれる。
なお、本実施形態における絶縁部材形成工程S40Gの各サブ工程は、第4実施形態における絶縁部材形成工程S40Dの対応するサブ工程と同様に行うことができるが、第4実施形態では、レジストマスクPR5(
図23(b)参照)を半導体構造体1の露出面上に形成するのに対して、本実施形態では、レジストマスクPR10を基板2の露出面上に形成することが異なる。
【0161】
まず、レジストマスク形成工程S441において、フォトリソグラフィ法によって、
図39(d)に示すように、基板2の露出面を被覆するように、区画線BDに沿って幅d1にパターニングされたレジストマスクPR10を形成する。このとき、レジストマスクPR10は、半導体構造体1の側面から離間して設けられる。
【0162】
次に、樹脂塗布工程S442において、
図40(a)に示すように、絶縁部材6を形成する液状の樹脂材料をウェハ上に、研削線X3よりも高くなるような厚さに塗布し、塗布した樹脂材料を硬化させる。これによって、バンプ71,72およびレジストマスクPR10が絶縁部材6に埋設された状態となる。ここで、研削線X3は、発光素子10Gが完成した際の絶縁部材6の高さである。
【0163】
次に、表面研削工程S443において、絶縁部材6を内在するバンプ71,72およびレジストマスクPR10とともに研削線X3の高さまで、上面が平坦化されるように研削する。これによって、
図40(b)に示すように、バンプ71,72およびレジストマスクPR10の上面が絶縁部材6から露出する。
【0164】
次に、レジスト除去工程S444において、レジストマスクPR10を除去することによって、
図40(c)に示すように、区画線BDに沿った幅d1の領域において半導体構造体1を露出させる。
なお、レジスト除去工程S444を行わずに、後記する接合層形成工程S50Gのレジスト除去工程S454でレジストマスクPR10を除去するようにしてもよい。
【0165】
(接合層形成工程)
次に、第5実施形態および第6実施形態と同様に、接合層形成工程S50Eを行うことにより、接合層91,92を形成する。
すなわち、まず、接合層成膜工程S251(
図28参照)において、
図40(d)に示すように、ウェハ上に金属膜90を成膜する。
次に、レジストマスク形成工程S252(
図28参照)において、
図41(a)に示すように、ウェハ上に、バンプ71,72の上方である接合層91,92を設ける領域を被覆するレジストマスクPR11を形成する。なお、レジストマスクPR11は、第5実施形態におけるレジストマスクPR7と同様にして形成される。
【0166】
次に、接合層エッチング工程S253(
図28参照)において、
図41(b)に示すように、レジストマスクPR11をマスクとして金属膜90をエッチングすることによって、接合層91,92のパターンを形成する。
次に、レジスト除去工程S254(
図28参照)において、
図41(c)に示すように、レジストマスクPR11を除去することによって、接合層91,92が完成する。
【0167】
(個片化工程)
次に、個片化工程S60Gを行うことにより、発光素子を個片化する。本実施形態における個片化工程S60Gは、2つのサブ工程として、シート貼合せ工程S461と、ウェハ分割工程S462とが含まれる。
【0168】
まず、シート貼合せ工程S461において、第1実施形態におけるシート貼合せ工程S61(
図4参照)と同様にして、
図41(d)に示すように、ウェハの絶縁部材6が形成された側の面を粘着シートSHT1と貼り合わせる。
次に、ウェハ分割工程S462において、
図42に示すように、区画線BDに沿って基板2を切断することにより、個々の発光素子10Gに分割する。なお、本実施形態におけるウェハ分割工程S462は、第1実施形態におけるウェハ分割工程S63(
図4参照)と同様に行うことができ、例えば、レーザスクライブ法によって区画線BDに沿って基板2に加工を施し、ブレイキング法により割断することができる。
【0169】
なお、本実施形態の個片化工程S60Gにおいても、第1実施形態の個片化工程S60と同様に、シート貼合せ工程S461とウェハ分割工程S462との間に、裏面研削工程S62(
図4参照)を行い、基板2を薄肉化するようにしてもよい。
以上の手順により、発光素子10Gが完成する。
【0170】
〔その他の変形例〕
なお、前記した各実施形態に説明した工程は、適宜に入れ替えて構成することもできる。
例えば、第1実施形態における接合層形成工程S50や第4実施形態における接合層形成工程S50Dは、リフトオフによるパターン形成法を用いるものであるが、第5実施形態における接合層形成工程S50Eのように、エッチングによるパターン形成法を用いるようにしてもよい。
また、第5実施形態ないし第7実施形態において、接合層形成工程S50Eに代えて、第1実施形態における接合層形成工程S50や第4実施形態における接合層形成工程S50Dのように、リフトオフによるパターン形成法を用いるようにしてもよい。
【0171】
また、第4実施形態ないし第7実施形態において、第2実施形態のように、バンプ71,72を介さずに、接合層91,92を、パッド電極51,52と直接接合するように形成してもよい。
【0172】
また、第4実施形態ないし第6実施形態において、基板2を剥離除去せずに、第1実施形態の個片化工程S60や第7実施形態の個片化工程S60Gのように、基板2を割断することで、発光素子を個片化するようにしてもよい。
また、第7実施形態において、個片化工程S60Gに代えて、第4実施形態の個片化工程S60Dを行い、さらに波長変換部材形成工程S70Dを行うことで、波長変換部材8を形成するようにしてもよい。すなわち、第7実施形態において、基板2の割断に代えて、基板2を剥離除去することで個片化するようにしてもよい。また、基板2を除去した後で、光取出し効率が向上するように、露出した半導体構造体1の下面を粗面化することで凹凸形状1a(例えば、
図26(b)参照)を形成するようにしてもよい。さらに、半導体構造体1の下面を粗面化した後で、または粗面化せずに、半導体構造体1の下面側に波長変換部材8(例えば、
図26(c)参照)を形成するようにしてもよい。
さらにまた、第4実施形態ないし第6実施形態において、基板2を剥離除去せずに、第3実施形態またはその変形例と同様にして、基板2の下面側に波長変換部材8を形成するようにしてもよい。また、第7実施形態においても、第3実施形態またはその変形例と同様にして、基板2の下面側に波長変換部材8を形成するようにしてもよい。
【0173】
以上説明したように、各実施形態に係る発光素子の製造方法は、第1半導体層(n型半導体層11)と第1半導体層上の一部の領域に積層した第2半導体層(p型半導体層13)とを有する半導体構造体(1,1B,1C)と、第1半導体層(11)および第2半導体層(13)のそれぞれに接続した電極(n側パッド電極51,p側パッド電極52,51B,52B)と、を備えた発光素子(10,10A〜10G)を、区画線に沿って分割することにより個片化して製造する発光素子の製造方法である。
そして、電極(51,52,51B,52B)を形成した半導体構造体1を、電極(51,52,51B,52B)における外部との電気的接続のための接続領域と、区画線に沿った所定の幅(w1)の区画領域を含む領域(幅d1)と、を除いて被覆する絶縁部材(6,6A,6B)を形成する絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)と、区画線に沿って、半導体構造体(1,1B,1C)を発光素子(10,10A〜10G)ごとに個片化する個片化工程(S60,S60A,S60D,S60G)と、を有し、絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)において、少なくとも区画領域上にマスク(PR3,PR3A,PR5,PR10)を形成した後に、半導体構造体(1,1B,1C)上を絶縁材料で被覆し、上面側からマスク(PR3,PR3A,PR5,PR10)が露出するように絶縁材料を除去した後に、マスク(PR3,PR3A,PR5,PR10)を除去することによって、絶縁部材(6,6A,6B)を形成するものである。
絶縁材料を上面側から除去することで絶縁部材(6,6A,6B)の高さ方向の形状が形成されるため、支持体としての絶縁部材(6,6A,6B)を、精度よい厚さで形成することができる。また、個片化するために絶縁部材(6,6A,6B)を切断する必要がないため、個片化のための切り代として確保すべき区画領域の幅を狭くすることができる。
【0174】
また、絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)において、マスク(PR3,PR3A,PR5,PR10)が露出するように絶縁材料を除去する際に、絶縁部材(6,6A,6B)の上面を平坦化するようにしてもよい。
これによって、実装面となる絶縁部材(6,6A,6B)の上面が平坦に形成されるため、信頼性の高い実装が可能な発光素子(10,10A〜10G)を製造することができる。
【0175】
また、絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)の前に、電極(51,52,51B,52B)の接続領域に、導電性材料でバンプ(71,72)を形成するバンプ形成工程(S30)をさらに行い、絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)において、バンプ(71,72)の上面が絶縁部材の上面と同じ高さになるように、バンプ(71,72)を絶縁部材(6,6A,6B)と共に平坦化するようにしてもよい。
これによって、実装面となる絶縁部材(6,6A,6B)の上面が、バンプ(71,72)を含めて平坦に形成されるため、信頼性の高い実装が可能な発光素子(10,10A〜10G)を製造することができる。
【0176】
また、絶縁部材形成工程(S40,S40A,S40D,S40E,S40G)の後であって個片化工程(S60,S60A,S60D,S60G)の前に、一部が絶縁部材(6,6A,6B)の上面に形成されて電極(51,52,51B,52B)のそれぞれと電気的に接続する電極接合層(91,92,91A,92A)を形成する電極接合層形成工程(S50,S50A,S50D,S50E)をさらに行うようにしてもよい。
これによって、実装時の接合性の高い発光素子(10,10A〜10G)を製造することができる。
【0177】
また、半導体構造体(1)は、半導体材料を結晶成長さるための基板(2)上に形成されており、個片化工程(S60D)よりも前に、区画領域について、半導体構造体(1)をすべて除去する半導体構造体除去工程(基板面露出工程S80D,D80E,S80F)をさらに有し、個片化工程(S60D)において、基板(2)を除去することにより、発光素子(10A〜10F)を個片化するようにしてもよい。
これによって、発光素子(10A〜10F)を容易に個片化することができる。また、基板(2)を切断するための領域を別途に確保する必要がないため、半導体構造体除去工程(基板面露出工程S80D,D80E,S80F)において、半導体構造体(1)を除去可能な幅を個片化のために必要な区画領域の幅とすることができる。
【0178】
以上、本発明に係る発光素子の製造方法について、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。