【文献】
Chein-Yu Kao,et al.,New bit-rearrangement method to enhance HARQ performance,IEEE C802.16m-08/1144,2008年 9月 5日
【文献】
M. Nakamura,Optical 8-Dimensional Time-Polarization Modulation Using Square-QAM-Constellation and a Simple Decoding Algorithm,Opto-Electronics and Communications Conference(OECC), 2015,2015年,pp.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結合部は、前記データの総合の誤り率と前記複数の誤り訂正装置の総合の電力を考慮して、前記複数の伝送路と前記複数の誤り訂正回路の結合状態を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の誤り訂正装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信装置を示す図である。ここでは、送信データを2つの偏波(X偏波、Y偏波)に分けて伝送する場合について説明する。
【0011】
送信装置において、データは、分配器1によりXとYの2つの偏波に分配され、送信デジタル信号処理部2によりそれぞれ誤り訂正のための符号化が行われる。この符号化は誤り訂正の方法によって異なる。符号化されたそれぞれの送信データは、光変調器3を介して光ファイバ4へ転送される。なお、送信データは符号化以前に種々のデジタル信号処理が施される。
【0012】
受信装置において、受信データは、光復調器5によりX偏波の受信データとY偏波の受信データに分離され、デジタル信号処理部6へ送られる。ここで、X偏波の受信データは、信号空間上の座標データ(Xi、Xq)で表され、Y偏波の受信データは、信号空間上の座標データ(Yi、Yq)で表される。
【0013】
デジタル信号処理部6は、伝送途中において生じた波長分散、偏波分散及び周波数/位相変動をデジタル信号処理より補償する。補償された受信データは、各偏波ごとに判定部7に供給され、座標データからデジタルデータへ判定が行われる。この場合、次に接続される誤り訂正の方法に依存した形式でデジタルデータが算出される。例えば、データの確からしさを示す尤度情報が付加される場合もある。
【0014】
判定部7からのデジタルデータ(場合によっては尤度情報も含む)は、第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bに供給され、誤り訂正が行われる。これにより、誤り率特性が改善される。最後に、統合部9がX偏波側のデータとY偏波側のデータを統合する。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1に係る通信装置に用いられる誤り訂正装置を示す図である。ただし、
図1の通信装置から誤り訂正装置に関連する部分のみを抜粋している。第1及び第2の符号化部10a,10bと送信側結合部11は
図1の送信デジタル信号処理部2に含まれている。受信側結合部12は
図1のデジタル信号処理部6に含まれている。第1及び第2の符号化部10a,10b及び第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bはFEC(Feedforward Error Correction)である。
【0016】
伝送路I、IIは、1つの光ファイバ又は1つのレーザからの光などの1つのキャリア内に構成された複数の伝送路であり、送信装置、伝送媒体、及び受信装置を一体化して表している。例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調と16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調のデータを1つの光キャリア上で伝送する場合、QPSKによる伝送が伝送路Iで示され、16QAMによる伝送は伝送路IIで示される。なお、本発明は光キャリアに限定されず、光通信を含む全ての通信に適用可能である。従って、1つのキャリアを1つのチャネル帯域と称することもできる。また、複数の伝送路I、IIを異なるキャリアで伝送する場合にも本発明を適用することができる。
【0017】
送信側の第1及び第2の符号化部10a,10bは、送信データのうち一連の長さのビットデータ(符号化長)に対してある符号化処理を施し、符号語として出力する。この符号化処理は、データ自体に所定の規則を与えたり、データから得られる関連ビットを付加したりするなど、誤り訂正方法によって異なる。所定のデータ長毎に処理する場合もあれば、連続的に処理する場合もある。
【0018】
受信側の第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bは、符号化したデータ(符号語)から、誤ったと推定されるビットを検出し訂正する。誤り訂正は、符号化長(符号語)単位で行われ、符号化長は、数百バイトから数千バイトになる場合もある。
【0019】
第1及び第2の符号化部10a,10bと伝送路I,IIは、送信側結合部11により、設定した割合に従って結合される。伝送路I,IIと第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bは受信側結合部12により、設定した割合に従って結合される。この場合、1対1の結合ではなく、複数対複数の結合となる。第1及び第2の符号化部10a,10bによって符号化された符号語毎に複数の伝送路I,IIに割り当てることができるが、1つの符号語が分割されて複数の伝送路I,IIに割り当てられてもよい。
【0020】
ここで、伝送路Iは相対的に雑音に強い高伝送特性を有する伝送路であり、伝送路IIは伝送路Iよりも雑音に弱い低伝送特性を有する伝送路である。例えば、伝送路IがQPSKによる伝送路であり、伝送路IIが16QAMによる伝送路であれば、伝送路Iの方が伝送路IIに比べて伝送特性が良くなる。
【0021】
また、第1の誤り訂正回路8aは、相対的に誤り訂正能力は高いが、回路規模及び消費電力は大きい。第2の誤り訂正回路8bは、第1の誤り訂正回路8aよりも誤り訂正能力は低いが、回路規模及び消費電力は小さい。例えば、第1の誤り訂正回路8aはLDPC(Low Density Parity Check)符号による誤り訂正を行い、第2の誤り訂正回路8bはリードソロモン符号による誤り訂正を行う。一般的には、LDPC符号の方がリードソロモン符号よりも誤り訂正能力は高く、回路規模や電力が大きい。勿論、同じ誤り訂正の方法においても、符号長等に応じて、上述した特性の差異を構成することはできる。なお、誤り訂正方法は、上述の方法に限られず、畳み込み符号及びViterbi復号等の他の誤り訂正方法でもよい。
【0022】
図3は、第1及び第2の誤り訂正回路の訂正作用を示す図である。横軸は誤り訂正を行う前の誤り率BERinを示し、縦軸は誤り訂正を行った後の誤り率BERoutを示す。BER(Bit Error Rate)はビット毎の誤り率である。第1の誤り訂正回路8aによる誤り訂正作用FEC_A[BERin]、第2の誤り訂正回路8bによる誤り訂正作用FEC_B[BERin]は以下の式で表される。
BERout_A=FEC_A[BERin]
BERout_B=FEC_B[BERin]
【0023】
入力の誤り率BERinよりも出力の誤り率BERoutが減少することによって誤り訂正効果が示される。同じ入力の誤り率BERinに対して、第1の誤り訂正回路8aの出力の誤り率BERout_Aは第2の誤り訂正回路8bの出力の誤り率BERout_Bよりも小さい。このことは、第1の誤り訂正回路8aの方が第2の誤り訂正回路8bよりも誤り訂正能力が高いことを示している。
【0024】
図4及び
図5は、本発明の誤り訂正装置の誤り率特性を示す図である。
図4及び
図5で伝送路Iの誤り率特性P
I、伝送路IIの誤り率特性P
IIは共通である。
図4は更に第1の誤り訂正回路8aと結合される伝送路I,IIの総合伝送路誤り率特性P
(I+II)_A、及び、伝送路I,IIが第1の誤り訂正回路8aと結合された場合の誤り率特性P
A(I+II)を示す。
図5は更に第2の誤り訂正回路8bと結合される伝送路I,IIの総合伝送路誤り率特性P
(I+II)_B、及び、伝送路I,IIが第2の誤り訂正回路8bと結合された場合の誤り率特性P
B(I+II)を示す。SNRは信号対雑音比(Signal to noise)である。例えば、伝送路IがQPSKによる伝送、伝送路IIが16QAMによる伝送である場合、伝送路Iの誤り率特性P
Iの方が伝送路IIの誤り率特性P
IIよりも良い。なお、
図4及び
図5は、イメージ図であり、実際の誤り率特性とは異なる場合がある。
【0025】
分配器1において第1の符号化部10aに割り当てられた伝送レートR1[Gbps]のうち、伝送路Iと結合される伝送レートをR
I_A[Gbps]、伝送路IIと結合される伝送レートをR
II_A[Gbps]とすると、総合伝送路誤り率特性P
(I+II)_Aは下式で示される。
【数1】
【0026】
更に、それらが第1の誤り訂正回路8aと結合された場合、誤り率特性P
A(I+II)は下式で示される。
P
A(I+II)=FEC_A[P
(I+II)_A]
【0027】
図3にはFEC_Aによって誤り率自体が改善される様子が示されているが、入力SNRに対する誤り率特性P
A(I+II)は
図4の左側の実線で描かれた曲線となる。ここで、誤り訂正を行う前の総合伝送路誤り率特性P
(I+II)_A、は
図4の右側の実線で描かれた曲線である。それらの同じ誤り率に対する入力SNRの差分が、第1の誤り訂正回路8aの誤り訂正能力を示す。一般的に、これはNCG(Net Coding Gain)と称される誤り訂正能力を示す指標である。
【0028】
同様に、分配器1において第2の符号化部10bに割り当てられた伝送レートR2[Gbps]のうち、伝送路Iと結合される伝送レートをR
I_B[Gbps]、伝送路IIと結合される伝送レートをR
II_B[Gbps]とすると、総合伝送路誤り率特性P
(I+II)_Bは下式で示される。
【数2】
【0029】
更に、それらが第2の誤り訂正回路8bと結合された場合、誤り率特性P
B(I+II)は下式で示される。
P
B(I+II)=FEC_B[P
(I+II)_B]
ここでは第2の誤り訂正回路8bのNCGは第1の誤り訂正回路8aよりも小さい。
【0030】
送信側結合部11と受信側結合部12は同期して同様の動作を行う。即ち、送信側結合部11は、第1の符号化部10aの出力データを伝送路I及び伝送路IIに分配し、第2の符号化部10bの出力データを伝送路I及び伝送路IIに分配する。受信側結合部12は、伝送路I及び伝送路IIに分配された第1の符号化部10aからのデータを第1の誤り訂正回路8aに結合し、伝送路I及び伝送路IIに分配された第2の符号化部10bからのデータを第2の誤り訂正回路8bに結合する。
【0031】
ここで、送信側結合部11は、第1の符号化部10a又は第2の符号化部10bの出力データである符号語を複数の伝送路I,IIに分配する際、符号化単位(即ち符号語毎)だけでなく、符号語内のデータを伝送路I,IIに分配できる。この分配は数ビット単位で行うことができる。これにより、符号化長が長い場合や連続的な符号化が行われる場合でも、容易に複数の伝送路との結合が可能となり、分配の割合の緻密な調整が可能となる。なお、符号化内のデータを分配する場合、総合誤り率の計算は非線形となり、複雑である。その計算方法は、以下の動作説明の中で示す。
【0032】
続いて、全体の動作を説明する。総合データレートR0[Gbps]の入力データは第1の符号化部10aに供給されるR1[Gbps]データと、第2の符号化部10bに供給されるR2[Gbps]データに分配される。この分配の割合も、その後の送信側結合部11での結合方法のアルゴリズムの一環である。第1及び第2の符号化部10a,10bにおいて符号化されたデータは、それぞれ送信側結合部11に供給される。ここで、一般的には符号化によってデータの情報量は変わる場合があるが、ここでは説明の簡易化のため同じ伝送レートで表す。送信側結合部11は、R1[Gpbs]のデータのうち、R
I_A[Gbps]を伝送路Iへ供給し、残りのR
II_A[Gbps]を伝送路IIに供給する。更に、R2[Gpbs]のデータのうち、R
I_B[Gbps]を伝送路Iへ供給し、残りのR
II_B[Gbps]を伝送路IIに供給する。
【0033】
次に、伝送路I及び伝送路IIを伝送したデータはそれぞれ受信側結合部12に供給される。受信側結合部12は、伝送路Iからのデータのうち、R
I_A[Gbps]を第1の誤り訂正回路8aに結合し、残りのR
I_B[Gbps]を第2の誤り訂正回路8bに結合する。更に、伝送路IIからのデータのうち、R
II_A[Gbps]を第1の誤り訂正回路8aに結合し、R
II_B[Gbps]を第2の誤り訂正回路8bに結合する。
【0034】
最後に、第1の誤り訂正回路8aが再生したR1[Gbps]のデータを出力し、第2の誤り訂正回路8bが再生したR2[Gbps]のデータを出力する。統合部9はこれらを統合してR0[Gbps]の出力データを出力する。
【0035】
ここで、系全体の総合誤り特性P
Tは、第1の誤り訂正回路8aと複数の伝送路I,IIと結合した誤り率特性P
A(I+II)と、第2の誤り訂正回路8bと複数の伝送路I,IIと結合した誤り率特性P
B(I+II)と、それらの配分率R1/R0、及びR2/R0とから以下の式で求まる。ただし、R0=R1+R2、R1=R
I_A+R
II_A、R2=
I_B+R
II_Bである。なお、分配の割合は予め受信側結合部12に設定する。
【数3】
【0036】
以下に、結合部におけるデータの分配方法について説明する。結合部におけるデータの分配に当たり、低電力な第2の誤り訂正回路8bをより多く使用することで装置全体の電力を低減できる。ただし、伝送特性の高い伝送路Iを伝送したデータは、誤り訂正能力が相対的に低い第2の誤り訂正回路8bに結合させることが好ましい。一方、伝送特性の低い伝送路IIを伝送したデータは、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合させることが好ましい。この際に、
図4及び
図5示すように誤り率特性P
A(I+II)と誤り率特性P
B(I+II)とがほぼ同じ特性になるように調整すると、最適化設計が容易になる。この時、送信電力も合わせて調整すると、設計が更に容易になる。以下では、特に送信電力の調整については言及しないが、設計には送信電力の調整も含まれる。
【0037】
表1に、上記の方針に従って入力データ120[Gpbs]を割り当てた例を示す。表1は、伝送路Iと第1の誤り訂正回路8aを結合した場合、伝送路Iと第2の誤り訂正回路8bを結合した場合、伝送路IIと第1の誤り訂正回路8aを結合した場合、伝送路IIと第2の誤り訂正回路8bを結合した場合について、それぞれ伝送レートを示している。
【表1】
【0038】
この時の総合誤り率P
Tは、以下の式で表される。
【数4】
【0039】
なお、複数の伝送路と複数の誤り訂正回路との結合方法、即ちデータの配分方法は、総合の誤り率P
Tと総合の電力を考慮して決定する。具体的には、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに全て結合した場合の誤り率に対する許容値を定め、総合の誤り率P
Tが許容値内に収まるように低電力な第2の誤り訂正回路8bに結合する割合を増やしていく。
【0040】
以上説明したように、データを伝送する際に、低電力化のためにはできる限り通常性能/低電力な誤り訂正回路を使いたい。一方、伝送特性の向上のためにはできる限り高性能/高電力な誤り訂正回路を使いたい。そこで、本実施の形態では、伝送特性が高い第1の伝送路Iを訂正能力及び消費電力が低い第2の誤り訂正回路8bに第1の誤り訂正回路8aよりも多くの割合で結合させ、伝送特性が低い第2の伝送路IIを訂正能力及び消費電力が高い第1の誤り訂正回路8aに第2の誤り訂正回路8bよりも多くの割合で結合させる。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。
【0041】
また、一般的には、複数のキャリア又は複数のチャネル帯域内に、それぞれ複数の変調方式又は複数の伝送特性に対応する複数の伝送路を構成する。しかし、本実施の形態では、1つのキャリア又は1つのチャネル帯域内に複数の伝送路を構成する。なお、1つのチャネル帯域内は、1つのキャリア(搬送波)と同義である。ただし、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のように複数のサブキャリアからなる方式は、OFDMの複数のサブキャリアが1つのキャリアで伝送されるため、複数のサブキャリアの一束を1つのキャリア又は1つのチャネルとみなす。
【0042】
また、FECで符号化した一連の出力である1つの符号語を複数の伝送路に割り当てる。例えば、1つの符号語を伝送路Iと伝送路IIに割り当てる。符号語毎に別々の伝送路に割り当てる方法もあるが(例えば、第1の符号語は伝送路Iに、第2の符号語は伝送路IIに割り当てる)、符号長が長くなると、割当ての緻密な調整ができなくなる場合がある。
【0043】
図6は、伝送路の例を示す図である。これらの複数の伝送路は、1つのキャリア又は1つのチャネル帯域内に構成されている。例1は、多値化ビットの高位のビットと低位のビットで伝送特性が異なることを利用して、それらを複数の伝送路として構成する方法である。例えば、4ビットで示す16QAMでは、上位2ビットは下位2ビットよりも相対的に雑音に強い。例2〜例4は、複数の変調方式(例えば、QPSK変調と16QAM変調)を複数の伝送路として構成する方法である。例えば、QPSK変調と16QAM変調では、QPSK変調の方が16QAM変調よりも相対的に雑音に強い。例2は、OFDMのサブキャリア毎に変調方式を変える。例3は、時分割で変調方式を変える。例4は、偏波毎に変調方式を変える。これらの伝送路の例について以下の実施の形態2〜6で詳細に説明する。
【0044】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る通信装置を示す図である。本実施の形態はコヒーレント光通信に適用した通信装置である。コヒーレント光通信は、一般的には、X偏波とY偏波による伝送で構成される。Y偏波による伝送構成もX偏波と同様であるため、ここではX偏波による伝送のみを示し、Y偏波による伝送構成は省略する。
【0045】
送信装置において、入力データを第1及び第2の符号化部10a,10bで符号化した後、送信側結合部11で複数の伝送路と結合する。複数の伝送路に結合されたデータは、マッピング回路13で多値化変調され、光変調器3から光信号として出力される。なお、一般的には、送信装置で一連のデジタル信号処理が行われるがここでは省略している。
【0046】
受信装置において、光復調器5が受信信号を光信号から電気信号に変換した後、デジタル信号処理部6がデジタル信号処理を行う。その出力を判定部7が座標データからビットデータに変換し、複数の伝送路のデータに分ける。それらのデータは受信側結合部12を介して第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bに結合される。
【0047】
本実施の形態では、2つの伝送路と2つのFECとを組み合わせてデータが伝送される。FECとしては、高性能で高電力な第1の誤り訂正回路8aと、通常性能で低電力な第2の誤り訂正回路8bを用いる。更に、本実施の形態では、多値化ビットの高位のビットと低位のビットで伝送特性が異なることを利用して、それらを複数の伝送路として構成している。その方法について以下に示す。
【0048】
図8〜10は、本発明の実施の形態2で使用する16QAMの信号マッピングの例を示す図である。ただし、ここに示したマッピングは一例であり、これに限られない。16QAMでは、入力データに対して、4ビット(b0、b1、b2、b3)毎に、16点の信号点が割り当てられる。ここでは、(b0、b1)を高位ビット、(b2、b3)を低位ビットと定義する。
図9は、高位ビット(b0、b1)のみを表示した図であり、
図10は、低位ビット(b2、b3)のみを表示した図である。
【0049】
図9で示される高位ビットに着目すると、各象限における4つの信号点は同じ値で示されている。例えば、第一象限の4つの信号点の値は、全て(0、0)である。一方、
図10で示される低位ビットに着目すると、各象限における4つの信号点はそれぞれ異なる値で示されている。例えば、第一象限の4つの信号点の値は、(1、1)、(0、1)、(1、0)及び(0、0)である。この場合、高位ビットによる伝送における異なる値の信号点間の平均的な距離は、低位ビットによる伝送における異なる値の信号点間の平均的な距離よりも大きい。これらの距離は、データ誤りを引き起こす雑音に対する耐力に関連している。従って、高位ビットによる伝送の方が、低位ビットによる伝送よりも、雑音に対する耐力が大きく、伝送特性が良くなることが分る。
【0050】
これを利用して、伝送路Iを高位ビットによる伝送で構成し、伝送路IIを低位ビットによる伝送で構成する。具体的には、送信側結合部11が、第1及び第2の符号化部10a,10bからのデータを高位ビット(b0、b1)及び低位ビット(b2、b3)に分配してマッピング回路13へ供給する。受信側結合部12が、判定部7からのデータの高位ビット(b0、b1)及び低位ビット(b2、b3)を送信側結合部11と逆の方法で第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bに割り当てる。この方法によって、伝送路Iとしての高位ビット伝送及び伝送路IIとしての低位ビット伝送と第1及び第2の誤り訂正回路8a,8bを自由に結合することができる。
【0051】
図11は、本発明の実施の形態2に係る通信装置の動作原理を説明する図である。この時の割り当ての例を以下に示す。
【表2】
【0052】
送信装置において、総合データレート120Gbpsの入力データが、分配器1により、第1の符号化部10aに供給されるR1=40Gbpsデータと、第2の符号化部10bに供給されるR2=80Gbpsデータに分配される。第1の符号化部10a及び第2の符号化部10bで符号化されたデータは、それぞれ送信側結合部11に供給される。この際にデータ量が増える場合があるが、ここでは説明の簡易化のため、入力データと同じデータ量とする。
【0053】
送信側結合部11は、第1の符号化部10aの40Gbpsの出力全てをマッピングの低位ビット(b2、b3)に割り当てる。これにより、第1の符号化部10aの出力40Gbpsは、低位ビットの伝送路Iと結合される。この例では第1の符号化部10aの出力から、高位ビット(b0、b1)への割り当てはない。
【0054】
一方、第2の符号化部10bの出力80Gbpsのうち、60Gbpsのデータはマッピングの高位ビット(b0、b1)に割り当てられ、20Gbpsはマッピングの低位ビット(b2、b3)に割り当てられる。マッピング以降については、高位ビット伝送も低位ビット伝送も共に60Gbpsとなり、30Gシンボル/sでの伝送となる。
【0055】
受信装置において、60Gbpsの高位ビット(b0、b1)と60Gbpsの低位ビット(b2、b3)が受信側結合部12へ供給される。この時、誤り訂正方法によっては、尤度情報も付加される。受信側結合部12は、60Gbpsの高位ビットのデータ全てを第2の誤り訂正回路8bに供給する。また、60Gbpsの低位ビットのうち、40Gbpsのデータを第1の誤り訂正回路8aに供給し、20Gbpsのデータを第2の誤り訂正回路8bに供給する。
【0056】
上述した処理によって、総合データレート120Gbpsの入力データのうち80Gbpsが低電力な第2の誤り訂正回路8bに割り当てられ、高電力な第1の誤り訂正回路8aに40Gbpsが割り当てられる。従って、全てのデータが高電力な第1の誤り訂正回路8aに割り当てられる場合に比べて、大幅な低電力化が達成できる。
【0057】
また、総合の誤り率P
Tは実施の形態1と同様に計算できる。伝送特性が相対的に低い伝送路IIが、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合される割合が増えているため、総合の誤り率は容認できる範囲内となる。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。
【0058】
実施の形態3.
図12は、本発明の実施の形態3に係る通信装置を示す図である。本実施の形態では、実施の形態2に係る16QAMの通信装置と比べて、変調方式を64QAMに変更している。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0059】
64QAM変調では、6ビット(b0、b1、b2、b3、b4、b5)毎に、64点の信号点が割り当てられる。ここでは、(b0、b1)を高位ビット、(b2、b3)を中位ビット、(b4、b5)を低位ビットと定義する。高位ビット伝送、中位ビット伝送、及び低位ビット伝送は高位ほど良い伝送特性となり、16QAMの場合と同様に、それぞれ伝送路I、伝送路II、伝送路IIIを構成する。従って、送信側結合部11からマッピング回路13へ供給されるFEC符号化データは、3通りの伝送ビット(高位ビット、中位ビット、低位ビット)に割り当てられる。また、受信側における判定部7から受信側結合部12へ供給されるデータも、送信側と同じ割合で逆方向に割り当てられる。割当ての例を以下に示す。また、本実施の形態でも、総合の誤り率は16QAMと同様に求めることができる。
【表3】
【0060】
本実施の形態では、120Gbpsの入力データのうち80Gbpsが低電力な第2の誤り訂正回路8bに結合され、全てのデータが高電力な第1の誤り訂正回路8aに割り当てられる場合に比べて、大幅な低電力化が達成できる。また、伝送特性が相対的に低い伝送路IIIが、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合される割合が増えているため、総合の誤り率は容認できる範囲内となる。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。また、64QAMのような多値化のビット数が多い場合は、緻密な結合調整が可能となり、結合の最適化を行いやすい。
【0061】
実施の形態4.
図13は、本発明の実施の形態4に係る通信装置を示す図である。本実施の形態では、複数の伝送路の構成方法が、実施の形態2の多値化のビットを利用する方法から、OFDMのサブキャリア毎に変調方式を切り替える方法に変更されている。
【0062】
送信側結合部11で複数の伝送路に結合されたデータは、QPSK変調部14及び16QAM変調部15で変調され、OFDM16を通って光変調器3から光信号として出力される。受信装置において、光復調器5の出力信号がOFDM17を通ってQPSK復調部18及び16QAM復調部19で復調される。
【0063】
OFDMでは、入力データを一般的に複数のサブキャリアに分けて伝送する。この時、サブキャリアによって変調方式を変えることで、伝送特性の異なる複数の伝送路を構成することができる。例えば、QPSK変調したデータと、16QAM変調したデータを別々のサブキャリアで伝送できる。一般的に、QPSK変調の方が16QAM変調よりも伝送特性が高い。従って、QPSK変調による伝送が実施の形態1の伝送路I、16QAMによる伝送が伝送路IIに対応する。
【0064】
誤り訂正能力と消費電力が高い第1の誤り訂正回路8a及び誤り訂正能力と消費電力が相対的に低い第2の誤り訂正回路8bと、伝送路I及び伝送路IIとの結合方法は実施の形態1と同様に決定することができる。以下に結合方法の一例を示すが、上述したように総合の誤り率と電力からそのシステムにおける最適な結合方法を決める。
【表4】
【0065】
なお、OFDMのサブキャリアによって、複数の伝送路を構成する場合、その他の変調方式(例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、64QAM)を用いることによって、より多くの伝送路を構成することができる。また、割り当てるサブキャリア数も任意に変えられるので、伝送路Iと伝送路IIのデータレートを同じにする必要はない。
【0066】
120Gbpsの入力データのうち80Gbpsが低電力な第2の誤り訂正回路8bに結合され、全てのデータが高電力な第1の誤り訂正回路8aに割り当てられる場合に比べて、大幅な低電力化が達成できる。また、伝送特性が相対的に低い伝送路II(16QAM@サブキャリア2)が、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合される割合が増えている。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。また、OFDMのサブキャリアによって伝送特性の異なる複数の変調方式が容易に構成できるので、より緻密な結合調整が可能となり、結合の最適化が行いやすい。
【0067】
実施の形態5.
図14は、本発明の実施の形態5に係る通信装置を示す図である。本実施の形態では、複数の伝送路の構成方法が、実施の形態4のOFDMのサブキャリア毎に変調方式を切り替える方法から、時分割に変調方式を切り替える方法に変更されている。
【0068】
送信側結合部11で複数の伝送路に結合されたデータは、QPSK/16QAM時分割切替部20を通って光変調器3から光信号として出力される。受信装置において、光復調器5の出力信号がQPSK/16QAM時分割切替部21を通ってデジタル信号処理部6に入力される。
【0069】
送信フレームが構成されている場合、フレームの中で又はフレーム毎に、伝送特性の異なる複数の変調方式でデータを伝送することができる。或いは、1シンボル又は数シンボル毎に切り替えることもできる。ここで、シンボルとは多値化したビット列の単位である(QPSKでは2ビット=1シンボル)。例えば、QPSK変調と16QAM変調を切り替えることができる。一般的に、QPSK変調の方が16QAM変調よりも伝送特性が高い。従って、QPSK変調による伝送が実施の形態1の伝送路I、16QAMによる伝送が伝送路IIに対応する。これらは時分割で伝送を行う。
【0070】
誤り訂正能力と消費電力が高い第1の誤り訂正回路8a及び誤り訂正能力と消費電力が相対的に低い第2の誤り訂正回路8bと、伝送路I及び伝送路IIとの結合方法は実施の形態1と同様に決定することができる。以下に結合方法の一例を示すが、上述したように総合の誤り率と電力からそのシステムにおける最適な結合方法を決める。
【表5】
【0071】
なお、時分割で複数の伝送路を構成する場合、その他の変調方式(例えば、BPSK、64QAM)を用いることによって、より多くの伝送路を構成することができる。また、割り当てる時間によって、伝送路Iと伝送路IIのデータレートを同じにする必要はない。更に、変調方式毎、即ち伝送路毎に、送信電力を変えSNRを変えることで、総合誤り率の最適化が行いやすくなる。
【0072】
120Gbpsの入力データのうち80Gbpsが低電力な第2の誤り訂正回路8bに結合され、全てのデータが高電力な第1の誤り訂正回路8aに割り当てられる場合に比べて、大幅な低電力化が達成できる。また、伝送特性が相対的に低い伝送路II(16QAM@タイムスロット2)が、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合される割合が増えている。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。
【0073】
実施の形態6.
図15は、本発明の実施の形態6に係る通信装置を示す図である。本実施の形態では、複数の伝送路の構成方法が、実施の形態4のOFDMのサブキャリア毎に変調方式を切り替える方法から、偏波毎に変調方式を切り替える方法に変更されている。即ち、X偏波はQPSK変調で伝送し、Y偏波は16QAM変調で伝送する。一般的に、QPSK変調の方が16QAM変調よりも伝送特性が高い。従って、QPSK変調による伝送が実施の形態1の伝送路I、16QAMによる伝送が伝送路IIに対応する。実施の形態3及び4ではX偏波のみを用いて説明したが、本実施の形態ではX偏波及びY偏波の両方を用いて複数の伝送路を構成する方法を説明する。
【0074】
誤り訂正能力と消費電力が高い第1の誤り訂正回路8a及び誤り訂正能力と消費電力が相対的に低い第2の誤り訂正回路8bと、伝送路I及び伝送路IIとの結合方法は実施の形態1と同様に決定することができる。以下に結合方法の一例を示すが、上述したように総合の誤り率と電力からそのシステムにおける最適な結合方法を決める。なお、偏波によって複数の伝送路を構成する場合、変調方式毎、即ち伝送路毎に、送信電力を変えSNRを変えることで、総合誤り率の最適化が行いやすくなる。
【表6】
【0075】
120Gbpsの入力データのうち80Gbpsが低電力な第2の誤り訂正回路8bに結合され、全てのデータが高電力な第1の誤り訂正回路8aに割り当てられる場合に比べて、大幅な低電力化が達成できる。また、伝送特性が相対的に低い伝送路II(16QAM@Y偏波)が、誤り訂正能力の高い第1の誤り訂正回路8aに結合される割合が増えている。これにより、消費電力を抑えつつ総合の伝送特性を向上することができる。
【0076】
なお、実施の形態3〜5では、複数の変調方式としてQPSKと16QAMについて例示したが、これに限らず、あらゆる変調方式が適用可能である。他の変調方式として、BPSK、8QAM、64QAM、256QAM等も適用可能である。
【0077】
また、実施の形態1〜5を互いに組み合わせてもよい。例えば、実施の形態1,2の多値化ビットを利用する方法と実施の形態3の時分割に伝送する方法を組み合わせることもできる。このような組合せにより更に誤り率の最適化を図ることができる。
【0078】
また、実施の形態1〜5の誤り訂正方法を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステム又はプログラマブルロジックデバイスに読み込ませ、実行することにより誤り訂正を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【解決手段】複数の誤り訂正回路は、複数の伝送路で伝送されたデータの誤りを訂正する。結合部12は、複数の伝送路を複数の誤り訂正回路に結合させる。複数の伝送路は、第1の伝送路Iと、第1の伝送路よりも伝送特性が低い第2の伝送路IIとを有する。複数の誤り訂正回路は、第1の誤り訂正回路8aと、第1の誤り訂正回路8aよりも訂正能力及び消費電力の低い第2の誤り訂正回路8bとを有する。結合部12は、第1の伝送路Iを第2の誤り訂正回路8bに第1の誤り訂正回路8aよりも多くの割合で結合させ、第2の伝送路IIを第1の誤り訂正回路8aに第2の誤り訂正回路8bよりも多くの割合で結合させる。