(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[近接センサ101の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る、近接センサ101のブロック図である。
本発明の実施形態に係る近接センサ101は、ヘリカルアンテナ103を有する第一発振回路102と、ループアンテナ105を有する第二発振回路と、ミキサ106以降の信号処理回路に分けることができる。
ミキサ106、BPF107、そしてAM検波回路108は、第一発振回路102から出力される第一の周波数f1の信号と、第二発振回路104から出力される第二の周波数f2の信号に基づいて、任意の検出対象の近接状態を検出する近接検出部と考えることができる。
【0012】
第一発振回路102は、第一の周波数f1の信号を発振して、ヘリカルアンテナ103から第一の周波数f1の電波を発する。なお、第一発振回路102は、ヘリカルアンテナ103の分布定数の変化に追従して発振周波数が変わる、共振回路でもある。
第二発振回路104は、第二の周波数f2の信号を発振して、ループアンテナ105から第二の周波数f2の電波を発する。なお、第二発振回路104は、ループアンテナ105の分布定数の変化に追従して発振周波数が変わる、共振回路でもある。
【0013】
第一発振回路102から出力される第一の周波数f1の信号と、第二発振回路104から出力される第二の周波数f2の信号は、それぞれミキサ106に入力される。ミキサ106はアナログ乗算器であり、f1±f2の信号を出力する。
ミキサ106の出力信号はバンドパスフィルタ(以下「BPF」と略)107に入力される。BPF107は、f1±f2の信号から|f1−f2|の信号を取り出す。
BPF107から出力される、特定の周波数範囲の信号は、例えば周知のダイオードよりなるAM検波回路108によって包絡線検波が行われる。そして、ローパスフィルタ(以下「LPF」と略)である第一LPF109を通じてノイズ成分が除去され、第一出力端子110から第一出力信号が出力される。
以上が、本発明の実施形態に係る、近接センサ101の基本構成である。なお、FM検波回路111、第二LPF112、マイコン113及び第二出力端子114の構成及び動作説明は後述する。
【0014】
[第一発振回路102の具体例]
図2Aは、第一発振回路102の回路図である。
図2Bは、第一発振回路102の回路図中、点線で囲んだ部分の等価回路である。
第一発振回路102は、周知のベース接地型コルピッツ発振回路である。
NPNトランジスタであるトランジスタ201のベースは、抵抗R202とR203によって固定バイアス電流が供給されると共に、コンデンサC204によって交流的に接地されている。
トランジスタ201のコレクタと電源端子+Bとの間には、コンデンサC205とコイルL206が並列接続されている。
トランジスタ201のコレクタとエミッタとの間には、コンデンサC207が接続されている。
トランジスタ201のエミッタと接地ノードとの間には、コンデンサC208と抵抗R209が並列接続されている。
トランジスタ201のコレクタには、コンデンサC210を介してヘリカルアンテナ103が接続されている。
第一発振回路102の出力信号は、トランジスタ201のコレクタからコンデンサC210を通じて得られる。
【0015】
図2Aの点線部分で囲まれた、コンデンサC205とC210とコイルL206とヘリカルアンテナ103は、
図2Bに示す交流等価回路として見做すことができる。
図2B中、コンデンサC205には抵抗成分R
cが含まれている。また、コイルL206とヘリカルアンテナ103には抵抗成分R
Lが含まれている。
ヘリカルアンテナ103はコイルL206と直列接続され、分布定数の変化によってインダクタンスが変化する。ヘリカルアンテナ103における分布定数の変化は、人体等が近接することによって引き起こされる。すなわち、共振回路の一部をなすコイルL206とヘリカルアンテナ103のうち、ヘリカルアンテナ103のインダクタンスが変化することで、第一発振回路102の発振周波数は変化する。
図2Aに示すコルピッツ発振回路は、周知のコルピッツ発振回路の共振回路を構成するコイルに、コンデンサC210を通じてヘリカルアンテナ103を接続したものと解することができる。
【0016】
[第二発振回路104、ミキサ106及びBPF107の具体例]
図3Aは、第二発振回路104の回路図である。
図3Bは、ミキサ106の回路図である。
図3Cは、BPF107の回路図である。
先ず、
図3Aを参照して、第二発振回路104の構成を説明する。
第二発振回路104は、周知のコルピッツ発振回路である。
図2Aのコルピッツ発振回路とは異なり、トランジスタ301のベース−エミッタ間にコンデンサC302とC303とループアンテナ105、すなわちコイルによる共振回路が設けられている。
ループアンテナ105はトランジスタ301のベースと接地ノードとの間に接続されている。また、ループアンテナ105と並列に、コンデンサC302とC303が直列接続されている。そして、コンデンサC302とC303の接続点はトランジスタ301のエミッタに接続されている。トランジスタ301のエミッタと接地ノードとの間には、抵抗R304が接続されている。
トランジスタ301のコレクタと電源端子+Bとの間には、抵抗R305が接続されている。また、トランジスタ301のコレクタ−ベース間には抵抗R306が接続されており、したがって抵抗R306は周知の自己バイアス回路を構成する。
第二発振回路104の出力信号は、トランジスタ301のコレクタからコンデンサC307を通じて得られる。
【0017】
図3A中、ループアンテナ105は分布定数の変化によってインダクタンスが変化する。ループアンテナ105における分布定数の変化は、人体等が近接することによって引き起こされる。すなわち、共振回路の一部をなすループアンテナ105のインダクタンスが変化することで、第二発振回路104の発振周波数は変化する。
なお、第一発振回路102及び第二発振回路104はコルピッツ発振回路を用いたが、発振回路はこれに限られない。周知のハートレー発振回路等、LC共振回路を用いる発振回路であればよい。
【0018】
次に、
図3Bを参照して、ミキサ106の構成を説明する。
ミキサ106は多種多様な実施態様が考えられるが、高周波において容易に実現できるものは、
図3Bに示すデュアルゲートFET311である。
抵抗R312が接地ノードとの間に接続されているデュアルゲートFET311の第一ゲートには、第一発振回路102の出力信号が印加される。
抵抗R313が接地ノードとの間に接続されているデュアルゲートFET311の第二ゲートには、第二発振回路104の出力信号が印加される。
すると、抵抗R314を通じて電源端子+Bに接続されているデュアルゲートFET311のドレインから乗算出力信号が得られる。
【0019】
次に、
図3Cを参照して、BPF107の構成を説明する。
典型的なBPF107は、信号線路に一段目となるコイルL321とコンデンサC322の直列共振回路が設けられ、コンデンサC322の他端と接地ノードとの間には二段目となるコイルL323とコンデンサC324の並列共振回路が設けられる。以下、この回路素子の組み合わせが必要に応じて直列接続され、最後の段は直列共振回路(コイルL325及びコンデンサC326)で終わる。
【0020】
[近接センサ101の動作]
図4Aは、近接センサ101の概略的外観図である。
図4Bは、人体が近接する前の、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105の周波数特性である。
図4Cは、人体が近接した時の、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105の周波数特性である。
図5は、近接センサ101と人体との距離と、ミキサ106から得られる信号の周波数との関係を示すグラフである。
【0021】
先ず、
図4Aを参照して、近接センサ101の構成を説明する。
図1から
図3C迄の説明によって、近接センサ101の回路構成は簡素なものであることが判る。近接センサ101は、およそ5cm四方の基板上に、手作業でも容易に実装できる。チップ部品を使用すれば、近接センサ101は2.5cm四方の基板上でも実装可能である。また、第一発振回路102及び第二発振回路104にて採用する発振周波数を適切に選択することで、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105の大きさも小さくすることができる。
【0022】
人体の近接状態を的確に検出するため、これら二つのアンテナは、回路基板からあまり離れていない場所にあることが望ましい。
図4Aに示す近接センサ101では、ループアンテナ105の内周にヘリカルアンテナ103が設けられている。また、例えば、フレキシブル基板上に近接センサ101の回路と共にこれらアンテナも実装することで、小型化を達成すると共に、量産の歩留まりも向上できる。
【0023】
図4Aに示すように構成された近接センサ101に対し、人体401が遠方から徐々に近づくと、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105の周波数特性が変化する。
図4Bは、人体401が近接する前の、ヘリカルアンテナ103の周波数特性P402と、ループアンテナ105の周波数特性P403を示す。なお、説明を簡単にするために、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105の中心周波数と、第一発振回路102と第二発振回路104が一致しているものと仮定する。
本発明の実施形態に係る近接センサ101において、第一発振回路102と第二発振回路104は同じ周波数で共振するように設計されている。このため、
図4Bではヘリカルアンテナ103とループアンテナ105が同じ中心周波数を示している。
図4B中、ヘリカルアンテナ103は曲線P402に示されるように、狭い周波数帯域で強いゲインを持つ。一方、ループアンテナ105は曲線P403に示されるように、広い周波数帯域で低いゲインを持つ。
【0024】
次に、
図4Cは、人体401が近接した後の、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105の周波数特性である。
図4C中、ヘリカルアンテナ103は曲線P404に示されるように、人体401が近接すると共振周波数が低くなる。このため、第一発振回路102の発振周波数はf1からf1’に変化する。この時の周波数移動幅Δf1(=f1−f1’)は比較的大きい。
これに対し、ループアンテナ105は曲線P405に示されるように、人体401が近接すると共振周波数が高くなる。このため、第二発振回路104の発振周波数はf2からf2’に変化する。この時の周波数移動幅Δf2(=f2’−f2)はΔf1と比べると小さい。
【0025】
人間は水分を多く含む誘電体である。この誘電体がループアンテナに近づくと、ループアンテナのインダクタンスが下がる。インダクタンスが下がれば、ループアンテナの共振周波数は高くなる。ループアンテナと誘電体との距離に対する共振周波数の変化については、「携帯端末装置とそのrfidアンテナ共振周波数調整方法」WO2013/89195号公報にも記載されている。
一方、誘電体がヘリカルアンテナ等、開放端を有するアンテナに近づくと、アンテナを取り巻く空間のキャパシタンスが上がる。キャパシタンスが上がれば、開放端を有するアンテナの共振周波数は低くなる。開放端を有するアンテナと誘電体との距離に対する共振周波数の変化については、「アンテナ装置」WO2010/47032号公報にも記載されている。
【0026】
以上のことから、近接センサ101と人体401との距離と、ミキサ106から得られる周波数差信号の周波数との関係をグラフにすると、
図5のようになる。
第一発振回路102の発振周波数である周波数f1及び第二発振回路104の発振周波数である周波数f2を同じ周波数に設定しておくと、ミキサ106から得られる信号のうち、周波数差信号|f1−f2|(=f2−f1)は、原理的にはゼロとなる。そして、人体401が近接センサ101に近接することによって、第一発振回路102の周波数f1は大きな周波数変動を伴って低くなり、第二発振回路104の周波数f2は小さな周波数変動を伴って高くなる。すなわち、周波数差信号f2−f1が所定の周波数の信号となって表れる。最終的に、近接センサ101のヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105と人体401との距離がゼロになると、周波数差信号f2−f1は所定の周波数に至る。このため、
図5に示すグラフは一次関数に近い曲線で表される。
なお、
図5の縦軸は周波数の常用対数表示である。
【0027】
BPF107の中心周波数及び帯域幅、すなわち通過帯域を適切に設定すると、近接センサ101は、近接センサ101に対する人体401の距離に応じた、適切な検出出力信号を得ることができる。
BPF107の通過帯域を、人体401が近接センサ101に対し、所定の距離に近づくことによって周波数差信号f2−f1が明確に現れる周波数であるΔfaと、人体401が十分近接センサ101に近接した場合の周波数差信号f2−f1の周波数であるΔfbを含むように設定すると、周波数差信号f2−f1がΔfaからΔfbの範囲にある時、BPF107は有意なゲインの出力信号を出力する。この、BPF107の出力信号をAM検波回路108でAM検波して、ノイズ成分をLPFで除去すると、人体401が近接した状態を示す論理信号として利用可能な信号が得られる。したがって、近接センサ101は人体401が所定の距離に近接した状態を適切に検出し、第一出力信号として出力できる。
更に、BPF107の通過帯域は、近接センサ101に対する人体401の距離と相関性がある。したがって、BPF107の通過帯域の設定次第で、近接センサ101に対する人体401の検出距離を自由に設定できる。
【0028】
一例として、第一発振回路102の発振周波数f1及び第二発振回路104の発振周波数f2を120MHzに設定した、近接センサ101の試作機を製作した。すると、人体401が試作機のヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に1m程度近接すると、第一発振回路102の発振周波数f1’は119MHz程度迄下がり、第二発振回路104の発振周波数f2’は120.2MHz程度迄上がった。このため、周波数差信号f2’−f1’は凡そ1MHz程度の周波数の信号となって現れ、試作機は有意に人体401の存在を検出できた。
【0029】
なお、人体401がアンテナに近接していない時と近接している時とで、周波数差信号f2−f1の変動幅が大きければ、必ずしもf1とf2が同じでなくてもよい。一般的に、周波数が高くなればなるほど、アンテナの共振周波数の変動幅は大きくなる。したがって、周波数差信号f2−f1の周波数変動を有意に検出できるならば、第一発振回路102と第二発振回路104の発振周波数のマージンに余裕を持たせることができる。
好ましくは、人体401がアンテナに近接していない時、周波数差信号f2−f1の周波数はBPF107の検出限界以下であることが好ましい。例えば、BPF107の低周波側カットオフ周波数が1MHzである場合、周波数差信号f2−f1の周波数は100kHz以下、好ましくは50kHzを下回ることが望ましい。
【0030】
[FM検波回路111の動作]
以上、本発明の実施形態に係る近接センサ101は、BPF107とAM検波回路108を通じて、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105と人体401との距離に応じた第一出力信号を第一出力端子110から得られることを説明した。
一方、FM検波回路111は、周波数差信号f2−f1の周波数及び位相の変化に応じた信号を出力する。つまり、FM検波回路111はヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105と人体401との距離ではなく、人体401の移動速度に応じた信号を出力する。この信号を、第二LPF112でノイズ成分を除去した後、第一出力信号と共にA/D変換器を内蔵するマイコン113に入力する。そして、第一出力信号が論理の「真」を示している間に、第二LPF112から得られる信号の電圧を、所定の閾値と比較する。すると、人の手がヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対して所定の距離の範囲にある時の、手の移動速度に応じた判定結果を示す第二出力信号を、第二出力端子114から得ることができる。
例えば、手をゆっくり近づけたら比較的暗いルームライトを点灯させ、手を早く近づけたら明るいルームライトを点灯させる、というように、近接センサ101のアプリケーションの動作に変化を持たせることが可能になる。また、FM検波回路111の出力信号から人体401の動きを検出できるので、FM検波回路111の出力信号をLPFとコンパレータで二値化して、睡眠時の人体401の動きを計測する、睡眠計のセンサとしての利用が可能である。
【0031】
また、FM検波回路111が有意な出力信号を出力している時は、検出対象である人体401が近接していることを意味する。そこで、FM検波回路111の出力信号をアナログ電圧として扱うのではなく、デジタルの論理信号として扱い、AM検波回路108の第一出力信号とFM検波回路111の出力信号との論理積を第二出力信号として出力することで、電波の反射や外来ノイズ等に起因する、AM検波回路108の第一出力信号に混入するノイズの影響を減らすことが期待できる。この場合、マイコン113はAM検波回路108の第一出力信号とFM検波回路111の出力信号の論理積を出力する、論理信号出力部(ANDゲート)として機能する。
【0032】
以上説明した実施形態には、以下に記す応用例が可能である。
(1)上述の実施形態では、BPF107は一つだけだったが、BPF107を二つ以上設けることも考えられる。
例えば、第一のBPFは、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対する人体401の距離が1mから50cmの範囲にある時に、周波数差信号f2−f1を出力するように、BPFの帯域幅と阻止周波数における減衰量を適切に設計する。
そして、第二のBPFは、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対する人体401の距離が30cm以内の範囲にある時に、周波数差信号f2−f1を出力するように、BPFの帯域幅と阻止周波数における減衰量を適切に設計する。
【0033】
第一のBPFの後続には第一のAM検波回路108を、第二のBPFの後続には第二のAM検波回路108を、それぞれ接続する。すると、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対する人体401の距離に応じて、第一のAM検波回路108と第二のAM検波回路108とで、異なる出力信号が得られる。
更に、第一のAM検波回路108から得られる信号に基
づいてタイマを起動して、第二のAM検波回路108から得られる信号の時間差を計測すると、前述のFM検波回路111と類似する、手の移動速度に応じた判定結果を得ることもできる。
【0034】
(2)BPF107を用いる代わりに、ミキサ106の出力からf1+f2信号を除去するLPFを設け、その後に周知のFFT(高速フーリエ変換)を用いて、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対する人体401の距離に対応する、特定の周波数成分の有無を検出してもよい。
【0035】
(3)上述の実施形態における近接センサ101は、第一発振回路102と第二発振回路104とを、それぞれほぼ同一の周波数で発振させ、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105に人体401が近接すると、それぞれの発振周波数が変化することによって現れる周波数差信号f2−f1を検出する仕組みであった。
これに対し、逆に予め第一発振回路102と第二発振回路104とを異なる周波数で発振させ、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105に人体401が近接すると、それぞれの発振周波数が変化することによって、周波数の差がゼロに近似するように構成してもよい。具体的には、第二発振回路104の発振周波数を、第一発振回路102の発振周波数に対して低めに設定する。人体近接時にはそれぞれの発振周波数の差が小さくなる。この周波数差信号f2−f1が、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105に人体401が近接した時に現れなくなるように、AM検波回路108の後段には第一LPF109の代わりに、またFM検波回路111の後段には第二LPF112の代わりに、ハイパスフィルタ(HPF)を設ける。
【0036】
上述した本実施形態では、ヘリカルアンテナ103、すなわち開放端を有するアンテナを共振回路の素子の一部として用いる第一発振回路102と、ループアンテナ105、すなわち開放端を有さず、両端が回路に接続されるアンテナを共振回路の素子の一部として用いる第二発振回路104とを、それぞれほぼ同一の周波数で発振させるようにした、近接センサ101について説明した。
このような近接センサ101において、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105に人体401が近接すると、ヘリカルアンテナ103に接続される第一発振回路102は発振周波数が低くなるのに対し、ループアンテナ105に接続される第二発振回路104は発振周波数が高くなる。この、各々の発振回路における発振周波数の変化を、ミキサ106(乗算器)で周波数差信号を生成した後、BPF107で抽出する。抽出された周波数差信号の周波数は、ヘリカルアンテナ103及びループアンテナ105に対する人体401の距離が近づくに連れて高くなる。この信号を、BPF107で抽出した後、包絡線検波を通して、近接の検出に用いる。BPF107の中心周波数及び帯域幅を適切に設定することで、ヘリカルアンテナ103とループアンテナ105に対する人体401の距離に応じた信号を得ることができる。
【0037】
本実施形態の近接センサ101は、従来のドップラーセンサに比べて、扱う信号の周波数が凡そ数十〜数百MHz程度と低い。このため、安価な小信号用トランジスタを利用できる等、回路素子の価格が安価である。また、扱う信号の周波数が低いので、BPF107を含めて回路の実装が容易である。
更に、本実施形態の近接センサ101は、従来のドップラーセンサに比べて、回路規模が極めて小さい。周知のように、AM検波回路108はダイオード一個で済む。第一出力信号だけを取り出す場合、本実施形態の近接センサ101を実装するために必要な、ダイオードを除く半導体素子は、第一発振回路102にトランジスタ201一個、第二発振回路104にトランジスタ301一個、ミキサ106にデュアルゲートFET311一個の、合計三個で済む。したがって、安価に製造できると共に、量産も容易である。
【0038】
更に、本実施形態の近接センサ101は、従来のドップラーセンサとは異なり、電波を測定対象物に照射するために用いない。本実施形態の近接センサ101は、あくまでもアンテナの分布定数の変化を検出する。すなわち、第一発振回路102及び第二発振回路104共々、電波を発するための電力を必要としない。したがって、従来のドップラーセンサと比べて、消費電力が極めて小さい。この点においても、本実施形態の近接センサ101は半導体素子に安価なものを利用できる。
更に、二つの発振回路の周波数差信号を検出するので、温度変化に伴う回路定数の変化に基づく周波数ドリフトは、ミキサ106を通過した時点で打ち消される。したがって、原理的に温度変動が極めて少ないので温度変動に強く、堅牢で、扱い易く、適用範囲が広い。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性あるいは不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。