特許第6309078号(P6309078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309078低減されたデブリ生成を有するレーザ生成プラズマEUV源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309078
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】低減されたデブリ生成を有するレーザ生成プラズマEUV源
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180402BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20180402BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   H05H1/24
   H05G2/00 K
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-255082(P2016-255082)
(22)【出願日】2016年12月28日
(62)【分割の表示】特願2014-529865(P2014-529865)の分割
【原出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2017-97369(P2017-97369A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】13/227,586
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ギルダルド
(72)【発明者】
【氏名】ワック ダニエル
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−250842(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102277(WO,A1)
【文献】 特開2001−135877(JP,A)
【文献】 特開2003−272892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H05G 2/00
H01L 21/027
H01J 35/00−35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極紫外線(EUV)光を生成するための方法であって、
ターゲット材を支持基板上に支持するステップと、
前記ターゲット材の表面をアブレーションして非熱的に熱消散無しに前記ターゲット材の一部を前記表面から分離し放出するための第1レーザビームを提供するステップであって、前記第1レーザビームは、前記ターゲット材の熱伝導により吸収されるレーザエネルギの熱消散時間よりも複数オーダー早いパルス継続時間を有し、前記第1レーザビームは紫外線波長域の範囲内の波長を有し、前記ターゲット材が前記第1レーザビームによってアブレーションされたときに前記アブレーションの進入深さが前記ターゲット材の光吸収深さに近くなるように前記第1レーザビームの前記パルス継続時間、前記波長、および強度が調節され、これにより前記ターゲット材への熱損傷を低減させ前記ターゲット材が前記第1レーザビームによってアブレーションされたときに前記ターゲット材の前記表面から放出される前記ターゲット材の前記一部の高速な相変化をもたらす、ステップと、
前記第1レーザビームの前記パルス継続時間および前記第1レーザビームの前記波長に基づきアブレーション速度を計算するステップと、
前記アブレーション速度に基づき、質量制限されたターゲットプルームを形成するために必要な物質の量を生成するために前記第1レーザビームから必要なパルス数を決定するステップと、
前記質量制限されたターゲットプルームを成形して、前記質量制限されたターゲットプルームが第2レーザビームにより照射されたときに収集効率を高めデブリの生成を低減させるための前記前記第1レーザビームと前記ターゲット材の前記表面との間の入射角を決定するステップと、
前記決定されたパルス数にしたがって前記第1レーザビームを利用して前記ターゲット材の前記表面を非熱的にアブレーションし、熱消散無しに前記ターゲット材の前記表面から放出された前記質量制限されたターゲットプルームを形成するステップと、
前記第2レーザビームを利用して前記質量制限されたターゲットプルームを照射することでEUV放射のための高温プラズマを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1レーザビームの前記パルス継続時間が、気相の化学種のみを生成する前記ターゲット材の非熱的アブレーションを提供するように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2レーザビームは、パルス赤外線またはCOレーザビームである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲット材の前記表面上にキャビティを画成し、放出される前記ターゲット材の前記一部を制限し成形するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲット材に吸収材を注入しレーザ波長の特定の範囲の吸収を向上させるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
極紫外線(EUV)光を生成するための装置であって、
ターゲット材を封入するよう構成され、少なくとも第1窓および第2窓を有する筐体と、
前記ターゲット材を前記筐体内に固定および支持するための支持基板と、
第1窓を通して前記ターゲット材の表面上に焦点を合わされた第1レーザビームを提供し、前記筐体内に配置された前記ターゲット材の前記表面を非熱的にアブレーションし、それにより、熱消散無しに前記ターゲット材の前記表面から放出された質量制限されたターゲットプルームを形成するよう構成された第1レーザ装置であって、前記第1レーザビームは、所定の入射角から所定のパルス数にしたがって前記ターゲット材の前記表面をアブレーションして前記質量制限されたターゲットプルームを形成するよう構成され、前記所定の入射角は、前記質量制限されたターゲットプルームを成形して、前記質量制限されたターゲットプルームが第2レーザビームにより照射されたときに収集効率を高めデブリの生成を低減させるよう決定される前記第1レーザビームと前記ターゲット材の前記表面との間の角度であり、前記所定のパルス数は、前記質量制限されたターゲットプルームを形成するための前記第1レーザビームのアブレーション速度に基づいて計算され、前記第1レーザビームは、前記ターゲット材の電子格子緩和時間よりも短いパルス継続時間を有し、前記第1レーザビームは紫外線波長域の範囲内の波長を有し、前記ターゲット材が前記第1レーザビームによってアブレーションされたときに前記アブレーションの進入深さが前記ターゲット材の光吸収深さに近くなるように前記第1レーザビームの前記パルス継続時間、前記波長、および強度が調節され、これにより前記ターゲット材への熱損傷を低減させ前記ターゲット材が前記第1レーザビームによってアブレーションされたときに前記ターゲット材の前記表面から放出される前記質量制限されたターゲットプルームの高速な相変化をもたらす、第1レーザ装置と、
前記第2窓を通して前記第2レーザビームを提供し、それにより前記筐体内の前記質量制限されたターゲットプルームを照射するよう構成され、前記照射された質量制限されたターゲットプルームはEUV放射のための高温プラズマを生成する、第2レーザ装置と、
を含む装置。
【請求項7】
前記第1レーザビームは、気相の化学種のみを生成する前記ターゲット材の非熱的アブレーションを提供するように構成される短パルス紫外線レーザビームである、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第2レーザビームは、パルス赤外線またはCOレーザビームである、
請求項6に記載の装置。
【請求項9】
光路において前記ターゲット材と前記第1レーザ装置との間に配置されたアパーチャであって、前記第1レーザビームを成形することにより前記プルームの形状を制御するよう構成されたアパーチャ、
をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記筐体は、真空チャンバまたは高圧チャンバのうちの少なくとも1つである、
請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記筐体の第3窓を通して第3レーザビームを提供し、それにより前記筐体内に配置された前記ターゲット材を非熱的にアブレーションするよう構成された第3レーザ装置と、
をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項12】
前記筐体の第4窓を通して第4レーザビームを提供し、それにより前記筐体内の前記プルームを前記第2レーザビームと合同して照射するよう構成された第4レーザ装置と、
をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
極紫外線(EUV)光を生成するための装置であって、
ターゲット材を封入するよう構成され、少なくとも第1窓および第2窓を有する筐体と、
前記ターゲット材を前記筐体内に固定および支持するための支持基板と、
第1レーザビームを提供して所定の入射角から所定のパルス数にしたがって前記ターゲット材の表面をアブレーションして前記ターゲット材の前記表面から放出される質量制限されたターゲットプルームを形成するよう構成された第1レーザ装置であって、前記所定の入射角は、前記質量制限されたターゲットプルームを成形して、前記質量制限されたターゲットプルームが第2レーザビームにより照射されたときに収集効率を高めデブリの生成を低減させるよう決定される前記第1レーザビームと前記ターゲット材の前記表面との間の角度であり、前記所定のパルス数は、前記質量制限されたターゲットプルームを形成するための前記第1レーザビームのアブレーション速度に基づいて計算され、前記第1レーザビームは、前記ターゲット材の熱伝導により吸収されるレーザエネルギの熱消散時間よりも数オーダー早いパルス継続時間を有し、前記第1レーザビームは紫外線波長域の範囲内の波長を有し、前記ターゲット材が前記第1レーザビームによってアブレーションされたときに前記アブレーションの進入深さが前記ターゲット材の光吸収深さに近くなるように前記第1レーザビームの前記パルス継続時間、前記波長、および強度が調節され、これにより非熱的に前記ターゲット材の一部を前記表面から分離し放出して熱消散無しに前記質量制限されたターゲットプルームを形成する、第1レーザ装置と、
前記第2窓を通して第2レーザビームを提供し、前記筐体内の前記質量制限されたターゲットプルームを照射するよう構成され、前記照射された質量制限されたターゲットプルームにEUV放射のための高温プラズマを生成させる第2レーザ装置と、
を含む装置。
【請求項14】
前記第1レーザビームの前記パルス継続時間が、気相の化学種のみを生成する前記ターゲット材の非熱的アブレーションを提供するように構成される、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第2レーザビームは、パルス赤外線またはCOレーザビームである、
請求項13に記載の装置。
【請求項16】
光路において前記ターゲット材と前記第1レーザ装置との間に配置されたアパーチャであって、前記第1レーザビームを成形し、それにより前記プルームの形状を制御するよう構成されたアパーチャ、
をさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記ターゲット材には、レーザ波長の特定の範囲の吸収を向上させるための吸収材が注入されている、
請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記ターゲット材には、351nm〜355nmのレーザ波長の吸収を向上させるためのアントラセンを含む吸収材が注入されている、
請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に極紫外線に関し、より詳細には、レーザ生成プラズマを介して極紫外線を生成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極紫外線(EUV)光は、高エネルギー紫外線放射であり、一般に約10nm〜約120nmの範囲の波長を有する電磁放射であると定義される。EUVはレーザ生成プラズマにより人工的に生成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のレーザ生成プラズマ(LPP)EUV生成器では、EUV光生成物質が液滴としてチャンバ内に放出され得る。次にレーザビームがチャンバ内の液滴を照射し得る。レーザビームを液滴に照射すると、液滴はプラズマ状態に励起され、EUV光を生成する。一方、この過程で液滴の一部が断片化および分散され、その結果、デブリが形成される。係るデブリはプラズマに変形することがなく、チャンバ内に留まり得る。
【0004】
そのため、低減されたデブリを有するレーザ生成プラズマを介してEUV光を生成するための方法および装置が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は極紫外線(EUV)光を生成するための方法を対象とする。この方法は第1レーザビームを利用してターゲット材を非熱的にアブレーションすることを含み得る。第1レーザビームは、非熱的にターゲット材の一部を放出させ、それによりプルームを形成するよう構成され得る。この方法は、第2レーザビームを利用してプルームを照射し、EUV放射のための高温プラズマを生成することをさらに含み得る。
【0006】
本開示のさらなる実施形態はEUV光を生成するための装置を対象とする。この装置は筐体と、第1レーザ装置と、第2レーザ装置と、を備え得る。筐体はターゲット材を封入するよう構成され得る。第1レーザ装置は、第1窓を通して第1レーザビームを提供し、筐体内に配置されたターゲット材を非熱的にアブレーションし、それによりプルームを形成するよう構成され得る。第2レーザ装置は、第2窓を通して第2レーザビームを提供し、それにより筐体内のプルームを照射するよう構成され得る。なお、照射されたプルームはEUV放射のための高温プラズマを生成する。一実施形態において第1レーザビームは、ターゲット材の熱伝導により吸収されるレーザエネルギーの消散時間よりも短いパルス継続時間を有し得る。それにより非熱的にターゲット材の一部が放出され、それによりプルームが形成される。
【0007】
上述の全般的な説明および以下の詳細な説明の両方が、単に代表的且つ説明的であり、本開示を必ずしも限定するものではないことを理解すべきである。添付の図面は、本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成するものであって、本開示の主題を図示する。説明および図面はともに本開示の原理を説明するよう機能する。
【0008】
本開示の多くの利点は、以下の添付の図面を参照することにより、当業者によってより明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】EUV光を生成するための装置を示す図である。
図2】EUV光を生成するための他の装置を示す図である。
図3】EUV光を生成するための方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面に図示される本開示の主題について、ここで詳細に参照する。
【0011】
本開示は、固体または液体の準平面ターゲットからのレーザ生成プラズマを介してEUV光を生成するための方法および装置を対象とする。本開示に係る方法および装置は、使用されないターゲット材に通常は関連するデブリを最小化する。一実施形態において、ターゲット材は超短パルスレーザビームにより非熱的にアブレーションされ、それによりターゲット材表面の上方でプルームが形成される。この非熱的に形成されたプルームは引き続き高強度パルスレーザビームを用いて照射され、それによりEUV放射のための高温プラズマ(例えば20〜40eV)が生成され得る。
【0012】
全般に図1および図2を参照する。図1はEUV光を生成するための装置100を示す図である。装置100は筐体102を備え、筐体102はターゲット材104を封入するよう構成される。ターゲット材104は疑似平坦表面106を有する固体または液体のEUV光生成物質である。係る物質は例えばスズ(Sn)、キセノン(Xe)などを含み得る。筐体102は1つまたは複数の窓を備え、それによりレーザビームが筐体102に進入することが可能となる。係る窓はフッ化カルシウム(CaF)、高品質の二酸化シリコン(SiO)などから形成され得る。
【0013】
装置100は、第1レーザ装置108と第2レーザ装置110とをさらに備える。第1レーザ装置108は、第1窓114を通して(例えばピコ秒またはフェムト秒のオーダの)超短パルスアブレーションレーザビーム112を提供し、それにより筐体102内に配置されたターゲット材を非熱的にアブレーションするよう構成される。係るレーザアブレーションにより物質除去速度(アブレーション速度)が(レーザおよび物質特性に応じて)単位パルスあたり単分子層の1/10を越え得る。それにより、初期の電子的(または振動的)な光励起が運動エネルギーに変換された結果、原子、イオン、分子、およびクラスタがターゲット材104の表面から放出することとなる。すなわち、短パルスアブレーションレーザビーム112が非熱的にターゲット材104の一部を放出させ、それによりプルーム116がターゲット材104の表面上方で形成され得る。
【0014】
次にプルーム116が、第2レーザ装置110からのレーザビームにより照射され得る。一実施形態において、第2レーザ装置110は、第2窓118を通して高強度パルス赤外線(IR)またはCOレーザビーム124を提供し、それにより筐体102内のプルーム116を照射するよう構成される。次に、照射されたプルームがEUV放射のための高温プラズマ(例えば20〜40eV)を生成する。
【0015】
本発明に係る装置100は13.5nmのEUVを生成するために利用され得る。その場合、筐体102は真空チャンバとして構成され得る。装置100は他の様々な波長を有するEUV放射を生成するためにも利用され得る。その場合、筐体102は必ずしも真空チャンバである必要はない。例えば、高圧チャンバは、120nmを越える波長を有するEUVを生成するために利用され得る。
【0016】
本開示に係る非熱的アブレーション加工は従来のシステムに比して有利である。例えば、超短パルスアブレーションレーザビームを利用することにより、ターゲット材が直接的に気体に変換され、アブレーション加工を熱消散なしに(またはほとんどなしに)行うことが可能となる。加えて、非熱的なアブレーション加工では気相の化学種のみが生成され、効果的なEUV光生成のためにパルスの個数を最適化することができる。したがって、ガスが過度に生成されること、およびシステム内の他の場所に搬送ならびに堆積されることが回避され得る。この手法では、液滴の幾何学的形状がターゲット材のために用いられる場合における困難(例えば液滴銃(droplet gun)の信頼性、位置およびタイミングの制御の他にも、従来のシステムに関連するその他の困難など)に遭遇することなく、質量制限されたターゲットが達成され得る。
【0017】
一実施形態において、ターゲット材104は、図1に示すように、前面(表面106に対向する側部)から垂直な入射角で、または垂直方向から所与の角度θで、アブレーションレーザビーム112により照射され得る。代替的に、図2に示すように、ターゲット材104は、ターゲット材104の表面106上に集束するアブレーションレーザビーム112により裏面から透明基板120を通して照射され得る。入射角は垂直な入射角でもよく、または垂直方向から所与の角度γでもよい。
【0018】
また、プルーム116が引き続きIRまたはCOレーザビーム124により照射される場合に、効率を高めるために、アブレーション加工により形成されるプルーム116が成形されてもよいと考えられる。様々な技術がプルーム116の成形に利用され得る。例えば、ターゲット材104の表面にキャビティ(例えば溝部など)を画成すると、アブレーション加工の前および/またはその間に膨張が制限および成形される。別の場合には、アパーチャまたはマスク122が光路においてターゲット材104とレーザ装置108との間に配置されてもよい。アパーチャ122はアブレーションエリア/形状を成形するために用いられ得る。係る成形により、生成されるプルーム116の形状が制御され得る。さらに別の場合には、2つ以上のレーザ装置108がターゲット材104をアブレーションするために利用され得、これらのレーザ装置により提供されるアブレーションレーザビームは、プルーム116を成形するために傾けられ得る。
【0019】
また、筐体102内のプルーム116を照射するために2つ以上のレーザ装置110を用いることも考えられる。係るレーザ装置110は、様々な角度からプルーム116を照射するレーザビーム124(例えばIRまたはCOレーザビーム)を提供するために様々な場所に配置され得る。一実施形態において、アブレーションレーザビーム112とレーザビーム124とが、ほぼ異なる波長、異なるパルス幅、および異なる照射強度を有するよう設定され得る。レーザビーム124はアブレーション加工により形成されるプルーム116に集束し得る。事前設定された平面/場所で望ましいLPPを生成するために、レーザビーム124を用いる照射の時間がアブレーションレーザビーム112を用いる照射の時間よりも遅延されることが好ましいこともある。
【0020】
本開示に係る非熱的なアブレーション加工の効率がアブレーションレーザビーム112およびターゲット材104の特性に基づいて最適化され得ることがさらに考えられる。係る特性は入射角、アスペクト比、ターゲット材特性、表面仕上げなどを含むが、これら限定されない。例えば、単位表面積あたりターゲット材104に吸収されるエネルギーはパルス継続時間tにおけるレーザフルエンスに依存し得る。したがってアブレーション速度はフルエンスの関数として表され得る。通常のアブレーション閾値はターゲット材およびレーザ波長に応じて0.1〜1J/cmのオーダであり得る。単位パルスあたりのアブレーションされる物質の量(深さおよび体積)は、以下で詳細に説明するようにアブレーションレーザビーム112のパルス継続時間および波長に基づいて決定され得る。
【0021】
アブレーションレーザビームのパルス継続時間は単位パルスあたりのアブレーション速度に影響を与えるパラメータの1つである。例えば、ターゲット材の進入深さはターゲット材の拡散率およびパルス継続時間に基づいて計算され得る。短レーザパルスは、吸収する体積内のエネルギー付与を制限し、付随する(主に熱)エネルギーの伝搬を最小化し得る。例えば、パルス幅が当該物質の電子格子緩和時間よりも小さい場合、高いエネルギー密度が当該物質の薄い表面下の層に形成され得る。この結果、高速なイオン化と、付与されたエネルギーの大部分が放出される物質により保持される状態での物質除去とが実現される。これは、熱拡散および/または溶融が顕著に低減されることを意味する。また、これは、電子的プロセスが熱的プロセスよりも高速であることと、アブレーション加工が熱消散なしに(または、ほとんどなしに)生じることができることと、を暗に示す。その結果は、プラズマ形成がより小さい状態で、固体から気体への直接的変換である。
【0022】
一実施形態において、レーザパルス継続時間tは熱伝導tthにより吸収されるレーザエネルギーの消散時間よりも短く設定される。レーザ相互作用時間の短縮化はターゲット材に加わる熱的負荷を低減させる。これにより、溶融と、熱の影響を受ける体積とが低減される。一般に、パルスがナノ秒よりも短縮されると熱進入深さが光吸収深さに近づき、その結果正味熱損傷が最小化される。さらに、パルスの短縮化にともない各パルスに対するパワー密度または照射(W/cm)が上昇し、その結果、照射が高いほど相変化が高速化されるため、アブレーション速度が改善され熱的損傷が低減され得る。熱的効果を完全に回避することができるように、アブレーション速度の機構が熱伝導よりも数オーダだけ早く起こり得る。ナノ秒〜フェムト秒の範囲の広いスペクトルのパルス継続時間を有するレーザシステム/装置を利用することが有利であり得ると考えられる。
【0023】
アブレーションレーザビームの波長は、単位パルスあたりのアブレーション速度に影響を与える別のパラメータである。例えば、ターゲット材との波長相互作用は、進入深さに影響を及ぼし得、次に進入深さがアブレーション速度に影響を及ぼし得る。体積に対する最小の熱エネルギー伝達を有するレーザアブレーションに関して、供給されたエネルギーを有するレーザパルスはその物質の結合エネルギーを越える必要がある。加えて、ターゲット材特性および表面仕上げも考慮に入れる必要があり得る。さらに、多光子過程による非線形吸収が高強度において重要となり得る。これは自由キャリアが吸収の向上に寄与する場合に起こり得る。非線形吸収多光子過程は考慮に入れる必要があり得、進入深さおよび除去速度を向上または調節するために利用され得る。
【0024】
一実施形態において、紫外線(UV)レーザ波長の利用は、UVエネルギーが化学結合の解離エネルギーに近づくため、非常に効果的である。このことは、共有結合の光化学的分解により物質が除去されることを生じさせ、その結果非熱的なアブレーション加工が提供され得る。係る非熱的なアブレーション加工は、熱の影響を受けるゾーンが存在しない状態で、非常に良好な特徴を達成し得る。正確な物質除去速度がレーザ光のレーザパルス進入深さに依存し得ることが理解される。各種の式を用いて、進入深さを計算することができる。なお、これらの方程式は、レーザ波長ならびにレーザの減衰係数、吸収係数、強度などの他のパラメータの関数として表され得る。
【0025】
代表的な一実装において、SnまたはSn混合物がターゲット材104として利用され得、短パルス(例えばピコ秒〜フェムト秒)UVレーザ112がアブレーション加工のために利用され得る。効果的にEUVを生成すること、および使用されないSn物質の量を低減することについては、LPP EUVを生成するためのSnプルームを最大化することが有利であり得る。約20〜100nmの固体Sn物質が、要求されるEUV(例えば検査システムの使用のためなど)を生成するために十分であり、SnまたはSn混合物の進入深さが数十nmであると判定されたものと仮定する。これは、単一パルス〜数パルスがSnプルームに対して必要となる物質量を生成するために十分であり得ることを示唆するであろう。
【0026】
実験結果により、約355nmのレーザ進入深さに対してレーザパルスの90%がターゲット材の最初の20nmに吸収されたことが示されている。これは、超短パルス(例えばフェムト秒)に対して、単位パルスあたり20nmものアブレーションが可能であることを暗示し得る。必要とされる物質の正確な量に応じて、数パルスまたは必要な数のパルスを用いることができる。(例えば放出されるアブレーション物質の量を調節するために)より強力な吸収が要求される場合、ターゲット材(例えばSnなど)に強力な吸収材が注入され得る。係る吸収材は例えばアントラセンなどを含み得る。これにより、300nm以下で動作するUVレーザよりも小さい電子励起を含むレーザ波長(例えば351nmおよび355nmなど)の最大吸収が可能となる。さらに、単位パルスあたりより多量の物質除去が望まれる場合は、より長い波長が利用され得る。
【0027】
アブレーションレーザビームのパルス継続時間および波長特性に加えて、例えばアブレーション加工のために利用されるレーザ装置108の個数、各アブレーションレーザビームの入射角などのその他の要因を考慮に入れてもよい。アブレーション速度の計算は、過剰な量の物質が放出された場合に堆積され得る潜在的なデブリを最小化する一方でプルーム(EUV生成のための)を形成するために必要となる物質の最適量を生成するためにアブレーションレーザビームから必要とされるパルスの理想的な個数を判定することを支援し得る。
【0028】
図3を参照すると、本開示に係るEUV光を生成するための方法300が示される。ステップ302は第1レーザビームを利用してターゲット材を非熱的にアブレーションし得る。第1レーザビームは、非熱的にターゲット材の一部を放出させ、それによりプルームを形成するよう構成される。一実施形態において第1レーザビームはターゲット材の熱伝導により吸収されるレーザエネルギーの消散時間よりも短いパルス継続時間を有する短パルスレーザビームである。引き続きステップ304は第2レーザビームを利用してプルームを照射し、それによりEUV放射のための高温プラズマを生成し得る。一実施形態において、第2レーザビームは高強度パルス赤外線またはCOレーザビームである。
【0029】
これらのステップがEUV光の継続的な生成のために反復され得ると考えられる。第1レーザビームおよび/または第2レーザビームのための特定のパラメータ(強度、パルス継続時間、パルスの個数など)は、EUV光の所望量、ターゲット材の特性、利用可能な空間、費用、およびその他の要因を含むが、これらに限定されない特定の要件に基づいて決定されると理解される。
【0030】
本開示のシステムおよび方法と、係るシステムおよび方法に付随する特長と、は前述の説明により理解されると考えられ、様々な変更例が、開示された主題から逸脱することなく、またはその物質的特長の必ずしも全部を犠牲にすることなく、これらの構成品の形態、構成、および配列において可能であることは明白であろう。説明された形態は単に説明を目的とするものである。
図1
図2
図3