特許第6309448号(P6309448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309448
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】被覆燐光体及びこれ含む発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20180402BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20180402BHJP
   H01L 33/44 20100101ALI20180402BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20180402BHJP
【FI】
   C09K11/08 D
   C09K11/08 G
   C09K11/88CPA
   C09K11/88CQE
   H01L33/44
   H01L33/50
【請求項の数】22
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-513678(P2014-513678)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2014-519540(P2014-519540A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012040102
(87)【国際公開番号】WO2012166855
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2014年2月3日
【審判番号】不服2016-4879(P2016-4879/J1)
【審判請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】13/152,833
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】セイベル ハリー エイ
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ ブライアン トーマス
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 國島 明弘
【審判官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507498(JP,A)
【文献】 特表2012−524414(JP,A)
【文献】 特表2011−503266(JP,A)
【文献】 特開2011−26535(JP,A)
【文献】 特表2010−506006(JP,A)
【文献】 特開2010−198890(JP,A)
【文献】 特表2009−526089(JP,A)
【文献】 特表2009−506195(JP,A)
【文献】 特開2009−293035(JP,A)
【文献】 特開2007−324475(JP,A)
【文献】 特開2007−169452(JP,A)
【文献】 特表2006−519500(JP,A)
【文献】 特開2006−265326(JP,A)
【文献】 特開2003−110146(JP,A)
【文献】 特開2002−223008(JP,A)
【文献】 特開2002−43630(JP,A)
【文献】 特開平8−92549(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0241590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/08
C09K11/88
H01L33/44
H01L33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐光体を被覆する方法であって、
(a)窒化物燐光体をコロイドシリカ及びコロイドアルミナのうちの少なくとも1つ、並びに酸触媒を含むゾルに接触させ、
(b)前記燐光体を200℃から600℃の範囲の温度で加熱し、もって被覆燐光体を形成する段階と、
を含み、
前記窒化物燐光体を前記ゾルと接触させる前に、前記ゾルを24時間から32時間にわたって反応させ、
前記ゾルは、シリカ、アルミナ、又はホウ酸塩の前駆体を含まないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ゾルは、溶剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランから構成される群から選択された少なくとも1つの溶剤を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸触媒は、塩酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸触媒は、酢酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ゾルは、アルミナ及び/又は硫酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
段階(a)及び(b)が、同じゾルを用いて繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
段階(a)及び(b)が、異なるゾルを用いて繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
段階(a)及び(b)が、同じゾルを用いて繰り返され、かつ異なるゾルを用いても繰り返されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
固体光源と、
前記固体光源を覆うレンズと、
アルミナ、及び/又はシリカで被覆され、前記固体光源と光学的に結合された燐光体であって、85℃及び85%相対湿度で840時間後に0.0015未満のdu’v’を有する前記燐光体と、
を含み、
前記燐光体のコーティングの厚みは、1μmから8μmの範囲にあることを特徴とする発光デバイス。
【請求項11】
前記燐光体は、反応性燐光体であることを特徴とする請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記反応性燐光体は、窒化物燐光体を含むことを特徴とする請求項11に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記反応性燐光体は、オキシ窒化物燐光体を含むことを特徴とする請求項11に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記反応性燐光体は、Eu及び/又はPrによって活性化された(Sr1-xCax)(Ga1-yAly2(S1-zSez4及びEuによって活性化された(Ca1-xSrx)(S1-ySey)のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項11に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記燐光体は、2から25ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有することを特徴とする請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項16】
緑色及び/又は黄色燐光体を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記レンズは、前記燐光体を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項18】
前記燐光体は、前記固体光源上に被覆されていることを特徴とする請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項19】
前記窒化物燐光体を、前記ゾルと16時間から24時間にわたって反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記燐光体を200℃で2〜6時間加熱する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記窒化物燐光体を室温で前記ゾルと反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記窒化物燐光体を、前記ゾルに接触させる前に室温で反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆燐光体材料に関する。本発明はまた、被覆燐光体材料を含む半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、光を発生させることができる公知の固体照明デバイスである。一般的に、LEDは、例えば、サファイア基板、シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ガリウム基板、又はヒ化ガリウム基板のような半導体層又は非半導体層上にエピタキシャル成長させることができる複数の半導体層を含む。これらのエピタキシャル層内には、1つ又はそれよりも多くの半導体活性層が形成される。活性層にわたって十分な電圧が印加されると、n型半導体層内の電子とp型半導体層内の正孔とが、活性層に向けて流れる。電子と正孔は、互いに向けて流れるので、電子の一部は、正孔と「衝突」して再結合することになる。これが起こる度に光の光子が放出され、これが、LEDが光を如何にして発生させるかである。LEDによって発生する光の波長分布は、一般的に、使用される半導体材料と、デバイスの活性層を構成する薄いエピタキシャル層の構造とに依存する。
【0003】
LEDは、典型的には、厳密に「ピーク」波長(すなわち、光検出器によって検出される時に、LEDの放射測定放出スペクトルがその最大値に達する単一の波長)付近に中心がある幅狭の波長分布を有する。例えば、典型的なLEDのパワースペクトル分布は、幅が最大照度の半分の位置で測定される場合に(半値全幅「FWHM」幅と呼ぶ)、例えば、約10〜30nmの全幅を有することができる。従って、LEDは、多くの場合に、その「ピーク」波長又は代替的にその「優勢」波長によって識別される。LEDの優勢波長は、人間の目によって知覚される時にLEDによって放出される光と同じ見かけ色を有する単色光の波長である。すなわち、優勢波長は、優勢波長が光の異なる波長に対する人間の目の感度を考慮する点で、ピーク波長とは異なる。
【0004】
殆どのLEDは、単一の色を有する光を放出するように見えるほぼ単色の光源であるので、白色光を発生させる固体発光デバイスを提供するために、異なる色の光を放出する複数のLEDを含むLEDランプが使用されている。これらのデバイスでは、個々のLEDチップによって放出される異なる色の光が組み合わされて望ましい強度及び/又は色の白色光を生成する。例えば、赤色、緑色、青色発光LEDを同時に励起することにより、得られる組合せ光は、光源の赤色LEDと緑色LEDと青色LEDとの相対強度に応じて白色又は近白色に見える場合がある。
【0005】
白色光は、LEDによって放出された光の一部を他の色の光に変換する発光材料で単色LEDを取り囲むことによって生成することができる。単色LEDによって放出され、波長変換材料を通過する光と、波長変換材料によって放出される異なる色の光との組合せは、白色又は近白色光を生成することができる。例えば、単一の青色放出LEDチップ(例えば、窒化インジウムガリウム及び/又は窒化ガリウムで作成されたもの)は、例えば、このLEDによって放出される青色光の一部の波長を「下方変換」し、その色を黄色に変化させるセリウムドープのイットリウムアルミニウムガーネット(Y3_xCexAl512という化学式を有し、一般的にYAG:Ceと記す)のような黄色の燐光体、ポリマー、又は色素との組合せに使用することができる。窒化インジウムガリウムから作成される青色LEDは、高い効率(例えば、60%の高さまでの外部量子効率)を提供する。青色LED/黄色燐光体ランプでは、青色LEDチップは、約450〜470ナノメートルの優勢波長を有する放出光を生成し、燐光体は、青色放出光に応答して約545〜565ナノメートルのピーク波長を有する黄色の螢光を生成する。青色光の一部は、下方変換されずに燐光体(及び/又は燐光体粒子の間)を通過し、一方、光のうちの相当な部分は燐光体によって吸収され、燐光体は、励起状態になって黄色光を放出する(すなわち、青色光は黄色光に下方変換される)。青色光と黄色光の組合せは、観察者に対して白色に見える場合がある。そのような光は、一般的に冷白色として知覚される。別の手法では、紫色放出LED又は紫外色放出LEDからの光は、このLEDを多色の燐光体又は色素によって取り囲むことによって白色光に変換することができる。いずれの場合にも、特に、単一色のLEDが青色光又は紫外線を放出する場合に、光の演色性を改善するために、すなわち、光をより「暖かく」見せるために、赤色放出燐光体粒子を追加することができる。
【0006】
一部の場合には、赤色放出燐光体として窒化物及び/又はオキシ窒化物を使用することができる。一例として、(Ca1-x-ySrxEuy)AlSiN3ベースの燐光体が赤色放出に使用されてきた(本明細書では「赤色燐光体」とも呼ぶ)。一部の場合には、窒化物燐光体の表面は、酸化物になるか又はそうでなければ経時的に環境と反応する可能性がある。一部の場合には、それによって燐光体及び燐光体を含むデバイスの信頼性及び性能が影響を受ける可能性がある。
【0007】
上述したように、燐光体は、発光材料の1つの公知の部類である。燐光体とは、1つの波長の光を吸収して可視スペクトル内の異なる波長の光を再放出するあらゆる材料を吸収と再放出の間の遅延及びこれらに係わる波長に関わらず意味することができる。従って、本明細書では、「燐光体」という用語を時に蛍光性材料及び/又は燐光性材料と呼ばれる材料を指す上で使用することができる。一般的に、燐光体は、第1の波長を有する光を吸収し、かつ第1の波長とは異なる第2の波長を有する光を再放出することができる。例えば、「下方変換」燐光体は、短い波長を有する光を吸収し、かつ長い波長を有する光を再放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第12/271,945号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/466,782号明細書
【特許文献3】米国特許出願出願番号第13/152,863号明細書
【特許文献4】米国特許出願出願番号第13/153,155号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0283864号明細書
【特許文献6】米国特許出願出願番号第11/656,759号明細書
【特許文献7】米国特許出願出願番号第11/899,790号明細書
【特許文献8】米国特許出願第11/473,089号明細書
【特許文献9】米国特許出願出願番号第11/982,275号明細書
【特許文献10】米国特許出願第12/757,891号明細書
【特許文献11】米国特許出願出願番号第12/717,048号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/0179611号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LEDは、液晶ディスプレイのための背面照明、インジケータランプ、自動車のヘッドライト、懐中電灯、特殊照明用途を含む多くの用途に使用され、かつ一般的な点灯及び照明用途における従来の白熱照明及び/又は蛍光照明の代替としてさえも使用される。これらの用途の多くでは、特定の性質を有する光を発生させる光源を提供することが望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に従って提供するのは、燐光体上にコーティングを形成するために燐光体をシリカ、アルミナ、ホウ酸塩、及びその前駆体のうちの少なくとも1つを含むゾルに接触させる段階と、燐光体を加熱する段階とを含む燐光体を被覆する方法である。
【0011】
一部の実施形態において、燐光体は反応性燐光体である。本明細書に説明する方法により、いずれの適切な反応性燐光体も被覆することができる。しかし、一部の実施形態において、反応性燐光体は、オキシ窒化物燐光体を含む窒化物燐光体を含む。一部の実施形態において、反応性燐光体は、Eu及び/又はPrによって活性化された(Sr1-xCax)(Ga1-yAly2(S1-zSez4及びEuによって活性化された(Ca1-xSrx)(S1-ySey)のうちの少なくとも一方を含む。
【0012】
一部の実施形態において、ゾルは、溶剤と、酸又は塩基とを含む。一部の実施形態において、ゾルは、コロイドシリカを含む。一部の実施形態において、ゾルは、トリアルキルホウ酸塩を含む。一部の実施形態において、ゾルは、アルミナ及び/又は硫酸アルミニウムを含む。
【0013】
本発明の一部の実施形態において、燐光体は、100℃から800℃の範囲の温度で加熱され、一部の実施形態において、200℃から600℃の範囲の温度で加熱される。
【0014】
反応性燐光体上にコーティングを形成するために燐光体をシリカ、アルミナ、ホウ酸塩、及びその前駆体のうちの少なくとも1つを含むゾルと接触させる段階は、一度実施することができ、一部の場合は、同じ燐光体上で繰返し実施することができる。後者の場合は、工程は、同じゾル及び/又は異なるゾルを用いて繰り返すことができる。
【0015】
同じく本明細書に提供するのは、アルミナ、シリカ、及び/又はホウ酸塩で被覆された燐光体である。一部の実施形態において、被覆燐光体は、85℃及び85%相対湿度で840時間後に0.0015未満のdu’v’を有する。更に、一部の実施形態において、被覆燐光体は、2から25ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する。
【0016】
更に、本明細書に同じく提供するのは、固体光源と本発明の実施形態による被覆燐光体とを含む発光デバイスである。一部の実施形態において、緑色及び/又は黄色燐光体のような他の燐光体もデバイスに含めることができる。
【0017】
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、以下に続く本発明の例示的な実施形態のより具体的な説明及び添付図面からより明らかになるであろう。図面は必ずしも正確な縮尺のものではないが、その代わりに本発明の原理を示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の実施形態による異なる固体発光デバイスの図である。
図1B】本発明の実施形態による異なる固体発光デバイスの図である。
図1C】本発明の実施形態による異なる固体発光デバイスの図である。
図1D】本発明の実施形態による異なる固体発光デバイスの図である。
図2A】本発明の実施形態により燐光体組成物をLEDチップウェーハに付加するのに使用することができる製作段階を示す断面図である。
図2B】本発明の実施形態により燐光体組成物をLEDチップウェーハに付加するのに使用することができる製作段階を示す断面図である。
図2C】本発明の実施形態により燐光体組成物をLEDチップウェーハに付加するのに使用することができる製作段階を示す断面図である。
図2D】本発明の実施形態により燐光体組成物をLEDチップウェーハに付加するのに使用することができる製作段階を示す断面図である。
図2E】本発明の実施形態により燐光体組成物をLEDチップウェーハに付加するのに使用することができる製作段階を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態による被覆燐光体を含む発光デバイスと非被覆燐光体を含むデバイスとの両方が85℃及び85%相対湿度で加熱された時の経時的なduv色シフトの変化を示す図である。
図4】本発明の実施形態による被覆燐光体を含む発光デバイスと非被覆燐光体を含むデバイスとの相対光束を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書に使用する時の「アルキル」という用語は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ブタジエニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、及びアレニル基を含む線状(すなわち、「直鎖」)、分枝、又は環状の飽和した又は少なくとも部分的に不飽和及び一部の場合は完全に不飽和の(すなわち、アルケニル及びアルキニル)炭化水素鎖を含むC1-20を指す。「分枝」は、メチル、エチル、又はプロピルのような低級アルキル基が線状アルキル鎖に結合されたアルキル基を指す。例示的な分枝アルキル基は、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルを含むがこれらに限定されない。「低級アルキル」は、1個から約8個の炭素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、又は8個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、C1-8アルキル)を指す。「高級アルキル」は、約10個から約20個の炭素原子、例えば、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の炭素原子を有するアルキル基を指す。ある一定の実施形態において、「アルキル」は、特にC1-5直鎖アルキルを指す。他の実施形態において、「アルキル」は、特にC1-5分枝鎖アルキルを指す。
【0020】
アルキル基は、任意的に、同じか又は異なる場合がある1つ又はそれよりも多くのアルキル基置換基で置換することができる(「置換アルキル」)。「アルキル基置換基」という用語は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、及びシクロアルキルを含むがこれらに限定されない。任意的に、アルキル鎖に沿って1つ又はそれよりも多くの酸素原子、硫黄原子、又は置換又は非置換の窒素原子を挿入することができ、この場合に、窒素置換基は、水素、低級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも呼ぶ)、又はアリールである。
【0021】
すなわち、本明細書に使用する時の「置換アルキル」という用語は、アルキル基の1つ又はそれよりも多くの原子又は官能基が、例えば、アルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫酸塩、及びメルカプトを含む別の原子又は官能基で置換された本明細書で定めるアルキル基を含む。
【0022】
本明細書に使用する時の「アルコキシル」は、アルキル−O−基を指し、この場合に、アルキルは、上述したものである。本明細書に使用する時の「アルコキシル」という用語は、例えば、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、ブトキシル、t−ブトキシル、及びペントキシルを指すことができる。「アルコキシル」と交換可能に「オキシアルキル」という用語を使用することができる。一部の実施形態において、アルコキシルは、1個、2個、3個、4個、又は5個の炭素を有する。
【0023】
本明細書に使用する時の「シラン」という用語は、シリコン原子に結合された本明細書に説明する有機基のうちのいずれかのもの(例えば、アルキル、アリール、及びアルコキシ)などを含む4つの有機基を含むあらゆる化合物を指す。
【0024】
本明細書に使用する時の「アルコキシシラン」という用語は、シリコン原子に結合された1個、2個、3個、又は4個のアルコキシ基を含むシランを指す。例えば、テトラアルコキシシランは、Si(OR)4を指し、この場合のRはアルキルである。各アルキル基は、同じか又は異なる場合がある。「アルキルアルコキシシラン」は、アルコキシ基のうちの1つ又はそれよりも多くがアルキル基で置換されたアルコキシシランを指す。すなわち、アルキルアルコキシシランは、少なくとも1つのアルキル−Si結合を含む。
【0025】
本明細書に使用する時の「アルミナ」という用語は、Al23という化学式を典型的に有する酸化アルミニウムを指す。
【0026】
本明細書に使用する時の「シリカ」という用語は、酸化珪素、典型的には二酸化珪素を指す。
【0027】
本明細書に使用する時の「コロイドシリカ」及び「コロイドアルミナ」という用語は、液体中に分散した、例えば、本明細書で説明する溶剤中に分散したそれぞれシリカ微粒子及びアルミナ微粒子を指す。
【0028】
本明細書に使用する時の「反応性燐光体」という用語は、酸素及び/又は水と反応することができる燐光体を含む経時的に環境と反応することができる燐光体を含む。反応性燐光体の例は窒化物燐光体である。「窒化物燐光体」という用語は、窒化物燐光体とオキシ窒化物燐光体の両方を含む。窒化物燐光体の例は、Ca1-xSrxAlSiN3、Ca2Si58、Sr2Si58、Ba2Si58、BaSi710、BaYSi47、Y5(Si043N、Y4Si272、YSi02N、Y2Si334、Y2Si3-xAlx3+x4-x、Ca1.5Si9Al316、Y0.5Si9Al31.514.5、CaSiN2、Y2Si46C、及び/又はY6Si1120Oを含む。そのような材料は、Ce、Eu、Sm、Yb、Gd、及び/又はTbのうちの少なくとも1つを含む活性剤材料を含むことができる。他の反応性燐光体は、例えば、Eu又はEuとPrとで活性化される(Sr1-xCax)(Ga1-yAly)(S1-zSez)及び例えばEuで活性化される(Ca1-xSrx)(S1-ySey)を含む。一部の実施形態において、反応性燐光体は、2008年11月17日出願の米国特許出願第12/271,945号明細書、2009年5月15日出願の米国特許出願第12/466,782号明細書、2011年6月3日出願の「赤色窒化物燐光体(Red Nitride Phosphors)」という名称の米国特許出願出願番号第13/152,863号明細書、及び2011年6月3日出願の「赤色窒化物燐光体組成物を決定して作る方法(Methods of Determining and Making Red Nitride Phosphor Compositions)」という名称の米国特許出願出願番号第13/153,155号明細書に見出されるものであり、これらの文献の各々の内容は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0029】
本発明の一部の実施形態に従って提供するものは、(a)燐光体上にコーティングを形成するために燐光体をシリカ、ホウ酸塩、アルミナ、及びその前駆体のうちの少なくとも1つを含むゾルに接触させる段階と(b)燐光体を加熱する段階とを含む燐光体を被覆する方法である。ゾルは、シリカ、ホウ酸塩、及びアルミナ(及び/又はこれらの前駆体)のうちの1つだけを含むことができ、又はこれらのいずれかの組合せを含むことができる。更に、以下により詳細に解説するように、ゾル中には他の成分を含めることができる。一部の実施形態において、燐光体は、反応性燐光体である。本明細書に使用する「ゾル」という用語は、均一な溶液と不均一な溶液の両方を指し、従って、真溶液及び同じく分散液及びコロイド液などを含む。
【0030】
一部の実施形態において、ゾルは、シリカ前駆体としてシランを含む。あらゆる適切なシラン又はその混合物をゾル中に含めることができる。しかし、一部の実施形態において、シランは、アルコキシシラン、例えば、Si(OR)4という化学式を有するテトラアルコキシシランを含み、この場合に、各Rは、独立してH、アルキル、又は置換アルキルである。従って、アルコキシシラン内のR基は、同じか又は異なる場合がある。特定の実施形態において、テトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−n−プロポキシシラン(TPOS)、及び/又はテトラ−n−ブトキシシラン(TBOS)を含むことができる。本発明の一部の実施形態において、アルコキシシランは、R’−Si(OR)3という化学式を有するアルキルアルコキシシランを含むことができ、この場合に、R’は有機官能基(例えば、アルキル、アリール、又はアルキルアリール)であり、各Rは、独立してH、アルキル、又は置換アルキルである。従って、各Rは、同じか又は異なる場合があり、各R基は、R’と同じか又は異なる場合がある。特定の実施形態において、アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、エチルトリメトキシシラン(ETMOS)、プロピルトリメトキシシラン(PTMOS)、ブチルトリメトキシシラン(BTMOS)、ブチルトリエトキシシラン(BTEOS)、及び/又はオクタデシルトリメトキシシラン(ODTMOS)を含むことができる。本発明の一部の実施形態において、骨格アルコキシシランは、R’R’’−Si(OR)2という化学式を有するアルコキシシランを含むことができ、この場合R’及びR’’は、各々独立して有機官能基(例えば、アルキル、アリール、又はアルキルアリール)であり、各Rは、独立してH、アルキル、又は置換アルキルである。本発明の一部の実施形態において、アルコキシシランはR’R’’R’’’−SiORという化学式を有するアルコキシシランであり、この場合に、R’、R’’、及びR’’’は、各々独立して有機官能基(例えば、アルキル、アリール、又はアルキルアリール)であり、Rは、H、アルキル、又は置換アルキルである。
【0031】
本発明の一部の実施形態に使用することができるアルコキシシランの例は、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、アミルトリメトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)メチルトリエトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)メチルトリメトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)ジメチルメトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)メチルジエトキシシラン、ビス(3−シアノプロピル)ジエトキシシラン、ビス(3−シアノプロピル)ジメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ブロモメチルジメチルメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、tert−ジフェニルメトキシシラン、n−ブチルジメトキシシラン、n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、4−クロロブチルジメチルメトキシシラン、4−クロロブチルジメチルエトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリエトキシシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−シアノエチルメチルトリメトキシシラン、(シアノメチルフェネチル)トリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシジエトキシメチルシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン、ジエチル(トリエトキシシリルプロピル)マロネート、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、2,3−ジメチルプロピルジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン、ジビニルエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘプチルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、n−ヘキシトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルジメチルメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(4−メトキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチル−n−オクタデシルジメトキシシラン、メチル(2−フェネチル)ジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチル−n−プロピルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ネオフィルメチルジエトキシシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フタロシアナトジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)−l−トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、トリエチルエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(p,m−クロロメチル)フェニルエタン、トリメチルエトキシシラン、2−(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレート、p−トリメチルシロキシニトロベンゼン、トリフェニルエトキシシラン、n−ウンデシルトリエトキシシランビニルジメチルエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシランを含む。
【0032】
本発明の一部の実施形態において、ゾルは、シリカを含むことができる。あらゆる適切な形態のシリカをゾル中に含めることができるが、一部の実施形態において、シリカはコロイドシリカとして存在する。特定の場合には、シリカは、0.1μmから2μmの範囲の平均粒子サイズを有することができる。本発明の一部の実施形態に従って使用することができるコロイドシリカの例は、アルミナで被覆され、塩化物対イオンによって安定化されたコロイドシリカを有するLudox(登録商標)CL、及びをアルミン酸ナトリウムによって安定化されたコロイドシリカを有するLudox(登録商標)AMを含む。Ludox(登録商標)材料は、「W.R.Grace Inc.」によって生産されている。
【0033】
一部の実施形態において、ゾルは、アルミナを含むことができる。あらゆる適切な形態のアルミナをゾル中に含めることができるが、一部の実施形態において、アルミナは、コロイドアルミナとして存在する。特定の場合には、アルミナ/ボランは、0.1μmから2μmの範囲の平均粒子サイズを有することができる。本発明の一部の実施形態に対して使用することができる種類のコロイドアルミナの例は、「Nyacol(登録商標)Nano Technologies,Inc.」によって生産されているNyacol(登録商標)Al20である。一部の実施形態において、ゾルは、アルミナ前駆体を含む。アルミナ前駆体の例は、アルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムブトキシドを含む水酸化アルミニウム及びアルミニウムアルコキシドを含む。
【0034】
一部の実施形態において、ゾルは、ホウ酸塩及び/又はホウ酸塩前駆体を含むことができる。ホウ酸塩前駆体の例は、トリエチルボラン及びホウ素アルコキシドのようなトリアルキルボランを含む。
【0035】
当業者は理解されるように、これらの前駆体は、シリカ、アルミナ、及び/又はホウ酸塩を形成するように反応することができ、ゾル中と、燐光体上へのコーティングの後との両方において反応することができる。
【0036】
ゾルは溶剤を含む。ゾル中に使用される溶剤の体積及び種類は異なる場合がある。あらゆる適切な溶剤を使用することができる。しかし、溶剤の例は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物を含む。
【0037】
ゾル中に含まれるシリカ、ホウ酸塩、アルミナ、及び/又はこれらの前駆体の特定の濃縮、並びに溶剤の量は異なる場合がある。
【0038】
本発明の一部の実施形態において、ゾルは、塩基触媒を含むことができる。塩基触媒は、コーティングを作るための処理を開始することができる。あらゆる適切な塩基触媒を使用することができる。しかし、塩基触媒の例は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、フッ化物(NaF)、及び有機塩基を含む。一部の実施形態において、ゾル中の塩基触媒の濃度は、約0.1Mから2Mの範囲にある。一部の実施形態において、中性又は酸性のpHにある水溶液又はアルコール溶液中の酸触媒をゾル中に含めることができる。あらゆる適切な酸触媒を使用することができる。しかし、酸触媒の例は、塩酸及び硫酸を含む。一部の実施形態において、ゾル中の酸触媒の濃度は、約0.1Mから2Mの範囲にある。
【0039】
本発明の一部の実施形態において、ゾル中に添加剤を含めることができる。そのような添加剤は、ゾル、コロイドを安定化させるか、又は反応性を調整するように機能することができ、又はコーティングの性質及び/又は組成を変更するために含めることができる。添加剤の例は、硫酸アルミニウムを含む。一部の実施形態において、コーティングの乾燥を容易にするためにゾル中に乾燥制御添加剤を含めることができる。そのような乾燥制御添加剤は、亀裂のないゲルの乾燥を可能にすることができる。乾燥制御添加剤の例は、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルアミン、アミン、アセトニトリル、ジオキサン、グリセロール、蓚酸、界面活性剤、及びこれらの混合物を含む。
【0040】
ゾルと燐光体は、燐光体をゾルに導入することによって接触させることができる。ゾルは、燐光体との接触の前に反応させることができ、燐光体との接触の前に、例えば、0.1時間から40時間の範囲の時間にわたって撹拌することができる。特定の場合には、ゾルは、燐光体との接触の前に24時間から32時間の範囲の時間にわたって反応させ、及び/又は撹拌することができる。燐光体がゾル中に導入された状態で、燐光体は、同じく例えば0.1時間から32時間の範囲の時間にわたってゾルと反応させ、及び/又は撹拌することができる。特定の場合には、燐光体は、16時間から24時間の範囲の時間にわたってゾルと反応させ、及び/又は撹拌することができる。
【0041】
燐光体を被覆するあらゆる方法を使用することができる。例えば、一部の実施形態において、コーティング手順を1回、数回、又は多数回繰り返すことができる。付加的なコーティング層は、同じゾルを用いて得ることができ、及び/又は当業者に公知のゾル又は本明細書に説明するゾルのいずれでもよい異なるゾルを用いて得ることができる。コーティングを形成するために、燐光体は、ゾルで被覆することができる。本発明の一部の実施形態において、燐光体を被覆する方法は、浸漬コーティング、拡散コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、はけ塗り、吸着、圧延、及び/又は電着によってコーティングを燐光体に付加する段階を含む。他の方法を使用することができ、これらの方法は、当業者には公知である。
【0042】
一部の実施形態において、本発明の実施形態によるゾルは、基板に付加された後に、更に処理することができる。例えば、コーティングは、ゾル−ゲルコーティングを形成するために真空乾燥、光硬化、又は熱硬化させることができる。更に別の例として、ゾル前駆体溶液の成分の完全な共凝縮を促進するために、及びゾル溶剤の蒸発中の割裂/破壊を阻止するために乾燥剤を添加することができる。更に、コーティング及び基板は、コーティング調製中に使用されるものよりも塩基濃度が最大で数桁高い塩基性溶液に露出することにより、シロキサン、酸化アルミニウム、又はボランの網状体を更に熟成させることができる(すなわち、シラノールのシロキサン架橋への完全な変換を促進する)。別の実施形態において、コーティングを強化するために、コーティングのラジカル重合化及び/又は光重合化を実施することができる。
【0043】
本発明の一部の実施形態において、被覆燐光体は、100℃から800℃の範囲の温度まで加熱され、一部の実施形態において、200℃から600℃の範囲の温度まで加熱される。高温で不活性のままに残るもの及び/又は望ましいガス又は他の加熱環境を可能にすることができるものを含むあらゆる適切な装置を使用することができる。加熱は、コーティングが燐光体に接着するのを促進し、及び/又は被覆燐光体の基板への接着を改善することができる。燐光体の熱硬化は、空気、アルゴン、又は窒素のような不活性ガス、還元塩基(例えば、95%N2/5%H2)、及び酸化雰囲気を含むがこれらに限定されないあらゆる適切な環境中で実施することができる。
【0044】
同じく本明細書では、アルミナ、ホウ酸塩、及び/又はシリカで被覆された燐光体、例えば、本明細書に説明する方法によって得られた燐光体を提供する。被覆燐光体は、非被覆燐光体よりも改善された信頼性を有することができる。一部の場合には、高温及び高相対湿度の条件(例えば、85℃及び85%RH)の下で被覆された燐光体を含む発光デバイスは、デバイスが、長期間(例えば、336時間又は840時間のバーンイン時間)にわたる光束及び色の維持に対して測定された場合に、非被覆燐光体と比較して95%程度の色シフト(du’v’)の低下を示す。本発明の一部の実施形態において、被覆燐光体のdu’v’は、0.0015を超えない。
【0045】
被覆燐光体は、あらゆる適切な形態にあるとすることができるが、一部の場合には、燐光体は、微粒子形態で存在する。一部の場合には、燐光体粒子は、2.0μmから25μmの範囲の平均粒子サイズを有する。燐光体は、米国特許出願公開第2008/0283864号明細書に記載されているような単結晶のような他の形態で存在させることができ、この文献は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0046】
本発明の実施形態によるコーティングは、あらゆる適切な厚みのものとすることができる。厚みは、コーティング内に含まれる層の数と、コーティングを付加するのに使用される方法とに基づくことができる。一部の実施形態において、コーティングの合計厚みは、約0.01μmから約10μmの範囲にあるとすることができる。特定の実施形態において、コーティングの合計厚みは、約0.05μmから約1μmの範囲にあり、一部の実施形態において、約1μmから約8μmの範囲にある。一部の実施形態において、コーティングの厚みは約1μmよりも小さい。
【0047】
同じく本発明の実施形態に従って提供するものは、本発明の実施形態による被覆燐光体を含む発光デバイスである。一部の実施形態において、発光デバイスは、固体光源と、本発明の実施形態による被覆燐光体とを含むことができる。一部の場合には、高温及び高相対湿度の条件(例えば、85℃及び85%RH)の下で被覆された燐光体を含む発光デバイスは、デバイスが、長期間(例えば、336時間又は840時間のバーンイン時間)にわたる光束及び色の維持に対して測定された場合に、非被覆燐光体と比較して95%程度の色シフト(du’v’)の低下を示す。本発明の一部の実施形態において、被覆燐光体のdu’v’は、0.0015を超えない。更に、一部の場合には、発光デバイスは、被覆燐光体を1つ又はそれよりも多くの他の燐光体と混合することにより、温白色光を放出することができる。例えば、x及びyが約0から約1の範囲の値を含む場合に、(Y1-xLux3(Al1-yGay512:Ce、(Tb1-xREx3Al512:Ce燐光体(TAG)、(Ba1-x-ySrxMgy2SiO4:Eu(BOSE)、SIALON、及び緑色から黄色を放出する他のオキシ窒化物燐光体を含むあらゆる適切な他の燐光体を本明細書に説明する被覆燐光体と混合することができる。
【0048】
次に、図1A図1Dを参照して、本発明の実施形態による燐光体組成物を含む固体発光デバイス30を以下に説明する。固体発光デバイス30は、パッケージ化されたLEDを含む。特に、図1Aは、レンズのない固体発光デバイス30の斜視図である。図Bは、反対側から見たデバイス30の斜視図である。図1Cは、LEDチップを覆うレンズを有するデバイス30の側面図である。図1Dは、デバイス30の底面斜視図である。
【0049】
図1Aに示すように、固体発光デバイス30は、単一のLEDチップ又は「ダイ」34がその上に装着された基板/サブマウント(「サブマウント」)32を含む。サブマウント32は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、有機絶縁体、プリント回路基板(PCB)、サファイア、又はシリコンのような多くの異なる材料で形成することができる。LED34は、異なる方式で配置された多くの異なる半導体層を有することができる。LED構造、並びにその製作及び作動は、当業技術で公知であり、従って、本明細書では簡単にしか解説しない。LED34の層は、例えば、金属有機化学気相蒸着(MOCVD)のような公知の処理を用いて製作することができる。LED34の層は、全てが成長基板上に順次形成された第1及び第2の逆型ドープのエピタキシャル層の間に圧着された少なくとも1つの活性層/活性領域を含むことができる。典型的には、多くのLEDは、例えば、サファイア、シリコンカーバイド、窒化アルミニウム(AlN)、又は窒化ガリウム(GaN)のような成長基板上で成長され、成長した半導体ウェーハが形成され、次に、このウェーハは、個々のLEDダイに単体化され、LEDダイは、パッケージ内に装着され、パッケージ化された個々のLEDが生成される。成長基板は、単体化された最終LEDの一部として残ることができ、又は代替的に、成長基板は、完全又は部分的に除去することができる。成長基板が残る実施形態において、成長基板は、光抽出を高めるように成形し、及び/又は織り目加工することができる。
【0050】
LED34内には、バッファ層、核形成層、接触層、及び電流拡散層、並びに光抽出層及び要素を含むがこれらに限定されない付加的な層及び要素を含むことができることも理解しなければならない。逆型ドープ層は、複数の層及び部分層、並びに超格子構造及び中間層を含むことができることも理解しなければならない。活性領域は、例えば、単一の量子井戸(SQW)、複数の量子井戸(MQW)、二重ヘテロ構造、又は超格子構造を含むことができる。活性領域及びドープ層は、例えば、GaN、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、及び/又は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)のようなIII族窒化物ベースの材料系を含む異なる材料系から製作することができる。一部の実施形態において、ドープ層は、GaN層及び/又はAlGaN層であり、活性領域は、InGaN層である。
【0051】
LED34は、約380nmから約470nmの範囲に優勢波長を有する放射線を放出する紫外色、紫色、又は青色のLEDとすることができる。
【0052】
LED34は、その上面上に導電性の電流拡散構造36、並びに上面がワイヤ結合に向けて利用可能な1つ又はそれよりも多くの接点38を含むことができる。拡散構造36及び接点38は、両方共にAu、Cu、Ni、In、Al、Ag、又はこれらの組合せのような導電材料、導電性酸化物、及び透明導電性酸化物で作ることができる。電流拡散構造36は、電流が接点38からLED34の上面内に拡散するのを促進するように離間したパターンでLED34上に配置された導電フィンガ37を含むことができる。作動時には、ワイヤ結合を通じて接点38に電気信号が印加され、この電気信号は、電流拡散構造36のフィンガ37を通じてLED34内に拡散する。多くの場合に、電流拡散構造は、上面がp型であるLEDに使用されるが、n型材料に対しても使用することができる。
【0053】
LED34は、本発明の実施形態による燐光体組成物39で被覆することができる。燐光体組成物39は、本発明の開示に解説する燐光体組成物のうちのいずれかを含むことができることは認められるであろう。
【0054】
燐光体組成物39は、多くの異なる方法を用いてLED34上に被覆することができ、適切な方法は、両方共に「ウェーハレベルの燐光体コーティング法及び本方法を利用して製作されたデバイス(Wafer Level Phosphor Coating Method and Devices Fabricated Utilizing Method)」という名称の米国特許出願出願番号第11/656,759号明細書及び第11/899,790号明細書に記載されている。代替的に、燐光体組成物39は、電気泳動堆積(EPD)のような他の方法を用いてLED34上に被覆することができ、適切なEPD法は、「半導体デバイスの閉ループ電気泳動堆積(Close Loop Electrophoretic Deposition of Semiconductor Devices)」という名称の米国特許出願第11/473,089号明細書に記載されている。燐光体組成物39をLED34上に被覆する一例示的方法に対して、本明細書で図2A〜2Eを参照して説明する。
【0055】
環境的な保護及び/又は機械的な保護の両方を与えるために、サブマウント32の上面40上にはLED34を覆う光学要素又はレンズ70が形成される(図1C図1Dを参照されたい)。レンズ70は、「発光ダイオードパッケージ及びそれを製作する方法(Light Emitting Diode Package and Method for Fabricating Same)」という名称の米国特許出願出願番号第11/982,275号明細書に記載されているような異なる成形技術を用いて成形することができる。レンズ70は、例えば、半球のような多くの異なる形状のものとすることができる。レンズ70には、シリコーン、プラスチック、エポキシ、又はガラスのような多くの異なる材料を使用することができる。光抽出及び/又は粒子を散乱させるのを改善するために、レンズ70を織り目加工することができる。一部の実施形態において、レンズ70は、燐光体組成物39を含むことができ、及び/又は燐光体組成物39をLEDチップ34の上に直接被覆する代わりに及び/又はそれに加えて、LED34の上の所定位置に燐光体組成物39を保持するために使用することができる。
【0056】
固体発光デバイス30は、異なるサイズ又はフットプリントを有するLEDパッケージを含むことができる。一部の実施形態において、LEDチップ34の表面積は、サブマウント32の表面積の10%又は更に15%よりも大きい表面積を覆うことができる。一部の実施形態において、レンズ70の直径D(又は正方形レンズでは幅D)に対するLEDチップ34の幅Wの比は、0.5よりも大きいとすることができる。例えば、一部の実施形態において、固体発光デバイス30は、約3.45平方mmのサブマウント32と、約2.55mmの最大直径を有する半球レンズとを有するLEDパッケージを含むことができる。LEDパッケージは、約1.4平方mmのLEDチップを保持するように配置することができる。この実施形態において、LEDチップ34の表面積は、サブマウント32の表面積の16%よりも大きい表面積を覆う。
【0057】
サブマウント32の上面40は、一体的な第1の接触パッド44を有するダイ取り付けパッド42を含むことができるパターン付き導電性特徴部を有することができる。サブマウント32の上面40上には、更に第2の接触パッド46が含まれ、LED34は、取り付けパッド42のほぼ中心に装着される。取り付けパッド42、並びに第1及び第2の接触パッド44、46は、例えば、銅のような金属又は他の導電材料を含むことができる。銅パッド42,44、46は、銅シード層上にメッキすることができ、それは、逆に、チタン接着層上に形成されている。パッド42、44,46は、標準のリソグラフィ工程を用いてパターン化することができる。これらのパターン付き導電性特徴部は、公知の接触法を用いてLED34への電気接続のための導電経路を与える。LED34は、公知の方法及び材料を用いて取り付けパッド42に装着することができる。
【0058】
第2の接触パッド46と取り付けパッド42の間には、下方にサブマウント32の面に達する間隙48が含まれる(図1Aを参照されたい)。LED34には、第2のパッド46及び第1のパッド44を通じて電気信号が印加され、第1のパッド44上の電気信号は、取り付けパッド42を通じてLED34に直接進み、第2のパッド46からの信号は、ワイヤ結合を通じてLED34内に進む。間隙48は、LED34に印加される信号の短絡を防ぐために、第2のパッド46と取り付けパッド42の間に電気絶縁を与える。
【0059】
図1C及び図1Dを参照すると、少なくとも部分的に第1及び第2の接触パッド44、46それぞれと位置合せするようにサブマウント32の背面54上に形成された第1及び第2の表面装着パッド50、52を通じて第1及び第2の接触パッド44、46に外部電気接触を与えることにより、電気信号をパッケージ30に印加することができる。第1の装着パッド50に印加される信号が第1の接触パッド44に伝達されるように、サブマウント32を通じて第1の装着パッド50と第2の接触パッド44の間に導電ビア56が形成される。同様に、第2の装着パッド52と第2の接触パッド46の間には、これらの2つの間で電気信号を伝導させるための導電ビア56が形成される。第1及び第2の装着パッド50、52は、LEDパッケージ30の表面装着を可能にし、LED34に印加される電気信号は、第1の装着パッド50と第2の装着パッド52の間に印加される。
【0060】
パッド42、44、46は、LED34から熱を伝導させて逃がすための延長熱伝導経路を与える。取り付けパッド42は、LED34よりも大きいサブマウント32の表面を覆い、LED34の縁部からサブマウント32の縁部に向けて延びている。接触パッド44、46も、ビア56とサブマウント32の縁部の間のサブマウント32の表面を覆う。パッド42、44、46を延ばすことにより、LED34からの熱拡散を改善することができ、それによってLEDの作動寿命を改善することができ、及び/又はより高い作動電力を可能にすることができる。
【0061】
更に、LEDパッケージ30は、サブマウント32の背面54上で第1の装着パッド50と第2の装着パッド52の間に金属化区域66を含む。金属化区域66は、熱伝導性材料で作ることができ、LED34との少なくとも部分的な垂直アラインメントに置くことができる。一部の実施形態において、金属化区域66は、サブマウント32の上面上の要素又はサブマウント32の背面上の第1及び第2の装着パッド50、52と電気接触状態にない。LEDからの熱は、取り付けパッド42及びパッド44、46によってサブマウント32の上面40にわたって拡散するが、より大量の熱は、LED34の直下及びその付近でサブマウント32内に進入することになる。より容易に熱を消散させることができる金属化66内にこの熱が拡散することを可能にすることにより、金属化区域66は、この消散を促進することができる。熱は、サブマウント32の上面40からビア56を通じて伝導することができ、第1及び第2の装着パッド50、52内に拡散することができ、そこで消散することができる。
【0062】
図1A図1Dは、本発明の実施形態による燐光体組成物を含むことができる一例示的パッケージLEDを示すことが認められるであろう。付加的な例示的パッケージLEDは、例えば、2010年4月9日出願の米国特許出願第12/757,891号明細書に開示されている。本発明の実施形態による燐光体組成物は、いずれかの他のパッケージLED構造に対して使用することができることも同じく認められるであろう。本明細書に説明する燐光体組成物は、燐光体が直接LED上に存在せず、LEDに光学的に結合される分離燐光体用途に対して使用することができる。
【0063】
上述したように、一部の実施形態において、本発明の実施形態による燐光体組成物は、半導体ウェーハの面上にこのウェーハが個々のLEDチップに単体化される前に直接に被覆することができる。次に、燐光体組成物を付加するための1つのそのような工程を図2A図2Eに関して解説する。図2A図2Eの例では、燐光体組成物は、複数のLEDチップ110上に被覆される。この実施形態において、各LEDチップ110は、上部接点124と底部接点122とを有する垂直に構造化されたデバイスである。
【0064】
図2Aを参照すると、LEDチップ110(2つのみを示す)は、その製作工程のウェーハレベル(すなわち、ウェーハが個々のLEDチップに分離/単体化される前)において示されている。LEDチップ110の各々は、基板120上に形成された半導体LEDを含む。LEDチップ110の各々は、第1及び第2の接点122、124を有する。第1の接点122は、基板120の底部上にあり、第2の接点124は、LEDチップ110の上部上にある。この特定の実施形態において、上部接点124は、p型接点であり、基板120の底部にある接点122は、n型接点である。しかし、他の実施形態において、接点122、124を異なって配置することができることが認められるであろう。例えば、一部の実施形態において、接点122と接点124の両方をLEDチップ110の上面上に形成することができる。
【0065】
図2Bに示すように、上部接点124上には、LEDチップ110が燐光体組成物で被覆された後にp型接点124に電気接触を取るために利用される導電性の接触台座128が形成される。台座128は、多くの異なる導電材料で形成することができ、電解メッキ、マスク堆積(電子ビーム、スパッタリング)、無電解メッキ、又はスタッドバンピングのような多くの異なる公知の物理的又は化学的な堆積工程を用いて形成することができる。台座128の高さは、燐光体組成物の望ましい厚みに依存して異なる場合があり、LEDからの燐光体組成物の上面に適合するか又はその上方に延びるように十分に高くなければならない。
【0066】
図2Cに示すように、ウェーハは、LEDチップ110、接点122、及び台座128の各々を覆う燐光体組成物コーティング132によって覆い尽くされる。燐光体組成物コーティング132は、結合剤と、本発明の実施形態による燐光体組成物とを含むことができる。結合剤に使用される材料は、例えば、シリコーン、エポキシ、ガラス、無機ガラス、スピンオンガラス、誘電体、BCB、ポリイミド、及びポリマーなどのような硬化後にロバストであり、かつ可視波長スペクトル内で実質的に透明な材料とすることができる。燐光体組成物コーティング132は、スピンコーティング、分注、電気泳動堆積、静電堆積、印刷、噴射印刷、又はスクリーン印刷のような異なる工程を用いて付加することができる。更に別の適切なコーティング技術は、2010年3月3日出願の米国特許出願出願番号第12/717,048号明細書に開示されており、この文献の内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。次に、燐光体組成物コーティング132は、適切な硬化法(例えば、熱、紫外線(UV)、赤外線(IR)、又は空気による硬化)を用いて硬化させることができる。
【0067】
燐光体粒子のサイズ、燐光体充填量の百分率、結合剤材料の種類、燐光体の種類と放出光の波長の間の適合効率、及び燐光体組成物コーティング132の厚みを含むがこれらに限定されない異なるファクタが、最終LEDチップ110内の燐光体組成物コーティング132によって吸収されることになるLED光量を決定する。望ましい組合せスペクトル出力を得る上で、多くの他の燐光体を単独又は組合せで使用することができることが理解されるであろう。
【0068】
最終コーティング132が、光を実質的に散乱かつ混合する小さいサイズと、光を効率良く変換する大きいサイズとの望ましい組合せを有することができるように、燐光体組成物コーティング132が付加される前に、異なるサイズの燐光体を必要に応じて燐光体組成物コーティング132内に含めることができる。
【0069】
コーティング132は、結合剤中に異なる濃度又は充填量の燐光体材料を有することができ、典型的な濃度は、30重量%から70重量%の範囲にある。一部の実施形態において、燐光体濃度は、45重量%から70重量%の範囲にあり、結合剤にわたってほぼ一様に分散させることができる。他の実施形態において、コーティング132は、異なる濃度又は種類の燐光体からなる複数の層を含むことができ、複数の層は、異なる結合剤材料を含むことができる。層のうちの1つ又はそれよりも多くは、燐光体なしで設けることができる。例えば、燐光体充填層に先行して、無色のシリコーンからなる第1のコーティングを堆積させることができる。別の例として、コーティングは、例えば、1つの種類の燐光体を有する第1の層をLEDチップ110上に含み、第2の種類の燐光体を含む第2の層を第1の層上に直接に含む2層コーティングを含むことができる。同じ層内に複数の燐光体を含む多層を含む多くの他の層構造が可能であり、層の間及び/又はコーティングと下にあるLEDチップ110の間に介在する層又は要素を設けることができる。
【0070】
燐光体組成物コーティング132によるLEDチップ110の最初の被覆の後に、台座128を露出させるための更に別の処理が必要である。次に、図2Dを参照すると、コーティング132の上面を通じて台座128を露出させるために、コーティング132は、薄肉化又は平坦化される。薄肉化工程は、台座128を露出させ、コーティング132を平坦化し、かつコーティング132の最終厚みの制御を可能にする。ウェーハにわたるLED110の作動特性と選択される燐光体(又は蛍光体)材料の性質とに基づいて、望ましい色点/色範囲に到達し、かつ依然として台座128を露出させるコーティング132の最終厚みを計算することができる。コーティング132の厚みは、ウェーハにわたって均一又は不均一とすることができる。
【0071】
図2Eに示すように、コーティング132が付加された後に、ダイスカット、けがき分割、又はエッチングのような公知の方法を用いて、ウェーハから個々のLEDチップ110を単体化することができる。単体化工程は、各々が実質的に同じ厚みのコーティング132を有し、その結果、実質的に同量の燐光体、従って、実質的に同じ放出特性を有するLEDチップ110の各々を分離する。LEDチップ110の単体化の後に、コーティング132の層は、LED110の側面上に残り、LED110の側面から放出される光もコーティング132及びその燐光体粒子を通過する。その結果、横方向放出光の少なくとも一部の変換がもたらされ、それによって異なる視線角度においてより不変性の高い発光特性を有するLEDチップ110を提供することができる。
【0072】
単体化に続いて、燐光体を追加する更に別の処理を必要とせずに、LEDチップ110をパッケージ内に装着するか又はサブマウント又はプリント回路基板(PCB)に装着することができる。一実施形態において、パッケージ/サブマウント/PCBは、台座128が電気的に接続される従来のパッケージリードを有することができる。次に、LEDチップ110及び電気接続部を従来のカプセル封入部が取り囲むことができる。
【0073】
上述の被覆工程は、LEDと燐光体組成物とを含む本発明の実施形態による固体発光デバイスを製作する一例示的方法を与えるが、多くの他の製作法が利用可能であることが認められるであろう。例えば、2007年9月7日に出願され、全体の内容が引用によって本明細書に組み込まれている米国特許出願出願番号第11/899,790号明細書(米国特許出願公開第2008/0179611号明細書)は、燐光体組成物コーティングを固体発光デバイス上に被覆する様々な付加的な方法を開示している。更に他の実施形態において、発光デバイスは、半田接合又は導電性エポキシを用いて反射性カップ上に装着することができるLEDチップを含み、燐光体組成物は、例えば、内部に懸濁する燐光体を有するシリコーンのような封入材料を含むことができる。この燐光体組成物は、例えば、反射性カップを部分的又は完全に充填するように使用することができる。
【0074】
本発明は、垂直幾何学形状を有するLEDに関して記載したが、本発明は、他の幾何学形状、例えば、LEDチップの同じ側に両方の接点を有する横向きのLEDに適用することができることを理解しなければならない。
【0075】
多くの異なる実施形態を以上の説明及び図面との関連で本明細書に開示した。これらの実施形態の全ての組合せ及び部分結合を逐一記載し、例示するのは過度に冗長的であり、曖昧性を高めることになることは理解されるであろう。従って、図面を含む本明細書は、本明細書に説明する実施形態の全ての組合せ及び部分結合、並びにこれらを作って使用する方式及び工程の書面による完全な説明を構成すると解釈しなければならず、あらゆるそのような組合せ及び部分結合に対する特許請求を裏付けるものとする。
【0076】
上記では、本発明の実施形態は、LEDを含む固体発光デバイスに関して主に解説したが、本発明の更に別の実施形態により、上記解説した燐光体組成物を含むレーザダイオード及び/又は他の固体照明デバイスを提供することができることが認められるであろう。従って、本発明の実施形態は、LEDに限定されず、レーザダイオードのような他の固体照明デバイスを含むことができることが認められるであろう。
【実施例】
【0077】
例示的方法1
エタノールと、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)(30重量%)と、水と、酢酸(1M)とを含む溶液、1時間。次に、この溶液を赤色窒化物燐光体と15分間混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には0.5時間から5時間のような所定の時間量にわたって350℃で加熱乾燥する。
【0078】
例示的方法2
イソプロパノールと、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)(30重量%)と、塩酸(1M)又は水酸化アンモニウム(1M)とを含む溶液を調製し、24時間〜32時間にわたって反応させる。次に、この溶液を赤色窒化物燐光体と16時間から24時間にわたって混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には2〜6時間のような所定の時間量にわたって200℃で加熱乾燥する。
【0079】
例示的方法3
水と、市販のLudoxCL(登録商標)と、塩酸(1M)とを含む溶液を24時間から32時間にわたって反応させる。次に、この溶液を窒化物燐光体と16時間から24時間にわたって混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には2〜6時間のような所定の時間量にわたって200℃で加熱乾燥する。
【0080】
例示的方法4
水と、市販のLudoxAM(登録商標)と、塩酸(1M)とを含む溶液を24時間から32時間にわたって反応させる。次に、この溶液を窒化物燐光体と16時間から24時間にわたって混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には2〜6時間のような所定の時間量にわたって200℃で加熱乾燥する。
【0081】
例示的方法5
水と、TEOS(30重量%)と、トリエチルホウ酸塩(TEBorate)(30重量%)と、イソプロパノールと、塩酸(1M)とを含む溶液を24時間から32時間にわたって反応させる。次に、この溶液を窒化物燐光体と16時間から24時間にわたって混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には2〜6時間のような所定の時間量にわたって200℃で加熱乾燥する。
【0082】
例示的方法6
水と、市販のLudoxAM(登録商標)と、塩酸(1M)又は水酸化アンモニウム(1M)とを含む溶液を24時間から32時間にわたって反応させる。次に、この溶液を窒化物燐光体と16時間から24時間にわたって混合し、その後に、溶液を燐光体から分離して燐光体を乾燥し、一部の場合には2〜6時間のような所定の時間量にわたって200℃で加熱乾燥する。この後、この手順をもう一度繰返し、得られる燐光体を水と、市販のNyacolAL(登録商標)20と、硫酸アルミニウムとを含む溶液中に導入し、次に、pH6.5に達するように硫酸及び/又は水酸化アンモニウムを添加する。
【0083】
結果
図3を参照すると、例示的方法1から得られた非被覆燐光体及び被覆燐光体が、85℃及び湿度85%で経時的な色維持に対して調査された。図3で分るように、サンプルは、放出色に関して840時間にわたって間隔を置いて検査された。被覆されたサンプルは、840時間を通して実質的に色を維持したが(du’v’は、0.0015を下回った)、非被覆燐光体から放出された色は経時的に変化した。図4を参照すると、例示的方法1からの被覆燐光体及び非被覆燐光体が、光束に対して検査された。非被覆燐光体には1という輝度が与えられており、被覆燐光体が非被覆燐光体よりも僅か0.7%しか下回らない輝度を有することが示された。例示的方法2〜6によって得られた被覆燐光体に対して類似の検査を実施し、そのような燐光体においてもまた、85℃及び湿度85%で長期間にわたって改善された色維持が見られた。更に、他の方法によって調製された燐光体の光束は、コーティングにより有意な影響を受けなかった(非被覆燐光体よりも1%又はそれ未満だけ暗い)。
【0084】
図3及び図4は、本発明の実施形態による被覆燐光体が、有意な光束低下を有することなく、非被覆燐光体よりも改善された信頼性及び安定性を有することができることを示している。従って、そのような燐光体を含む発光デバイスは、改善された信頼性及び安定性を有すると同時に望ましい光学特性も有することができる。
【0085】
これらの発明が関係し、かつ以上の説明及び関連図面に提供した教示の利益を受ける当業者は、本明細書に開示した本発明の多くの修正及び他の実施形態を想起するであろう。従って、本発明が、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態が、特許請求の範囲に含まれるように意図されることは理解されるものとする。本明細書では特定の用語を用いたが、これらの用語は、一般的かつ説明的な意味に用いたものであり、限定目的に用いたものではない。
【符号の説明】
【0086】
0 放出色に関する検査時間
24 放出色に関する検査時間
96 放出色に関する検査時間
840 放出色に関する検査時間
du’v’ 色シフト
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4